説明

ロータリ式充填設備の非常停止制御方法およびロータリ式充填設備

【課題】固形物混じりの液体を精度良く容器に充填する。
【解決手段】旋回テーブル11の外周部に、一定ピッチで配設された充填部にピンチバルブ14を設け、このピンチバルブ14に弾性チューブ21と、上流側で弾性チューブ21を挟圧して開閉するストップバルブ30と、下流側で弾性チューブ21を挟圧して充填流量を調整可能なスローダウンバルブ40とを設けたロータリ式充填設備を非常停止する際に、充填区間の充填部における充填をそれぞれ継続し、低速充填区間で、目的充填速度に対する、ロードセルにより検出した計測充填重量との比率と、充填液の圧力に関する補正率と、補正が完了した充填部数に対する充填区間の充填部数の比率とにより、スローダウンバルブ40の下流弁体42の突出補正量を演算し、スローダウンバルブ駆動装置43を操作して下流弁体42の突出位置を補正し流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された充填液タンクからマニホールド(分岐部)を介して複数の充填部の充填ノズルに充填液を供給し、容器に連続して充填するロータリ式充填設備において、非常停止した時に、充填中の容器に充填を継続して行う非常停止制御方法およびロータリ式充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
充填ノズルと充填バルブとを有する複数の充填部を具備した充填設備において、充填液タンクに圧縮エアを供給してその圧力により充填液をマニホールドを介して充填部の充填ノズルに加圧供給する圧力式充填装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105987号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器に連続充填する装置として、充填ノズルと充填バルブと有する複数の充填部を旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配設したロータリ式充填装置があり、このロータリ式充填装置において、加圧された充填液タンクの充填液を、その圧力によりマニホールドから各充填部に供給するものがある。
【0005】
このようなロータリ式充填装置において、充填ラインの上流側や下流側に配置された機器、たとえばキャッパーなどに不具合が生じて、充填装置を非常停止した場合、旋回テーブル上にある容器への充填を継続して行い、一定の充填量となるように制御している。この時、充填液タンクからの圧力が、数少ない充填ノズルに負荷されて充填流量が増加するため、充填液タンクの圧力を減圧制御している。
【0006】
しかし、充填液タンクの圧力を減圧制御した場合であっても、充填量が不均一となって、充填不良の容器が多発するといった問題があった。
本発明は上記問題点を解決して、非常停止時であっても、充填中の容器に充填を継続して一定の充填重量で精度良く充填できるロータリ式充填設備の非常停止制御方法およびロータリ式充填設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
旋回テーブルの外周部に一定ピッチで複数の充填部を配置し、充填液タンクで加圧された充填液を、分岐部から分配配管を介して前記充填部に供給するとともに、充填部でピンチバルブにより充填ノズルから、充填部にそれぞれ保持された容器に供給し、前記ピンチバルブで、前記分配配管に設けられた弾性チューブを上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを操作して容器に充填するロータリ式充填設備における非常停止制御方法であって、
旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の充填部では容器への充填を継続して行い、
前記充填区間の所定位置で充填重量を計測し、充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とにより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、
旋回テーブルの外周部に一定ピッチで複数の充填部を配置し、充填液タンクで加圧された充填液を、分岐部から分配配管を介して前記充填部に供給するとともに、充填部でピンチバルブにより充填ノズルから、充填部にそれぞれ保持された容器に供給し、前記ピンチバルブで、前記分配配管に設けられた弾性チューブを上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを操作し、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で、まずストップバルブとスローダウンバルブを全開して容器に高速充填を行い、次いでストップバルブを全開すると同時にスローダウンバルブにより弾性チューブを一部閉鎖して容器に低速充填を行うロータリ式充填設備における非常停止制御方法であって、
旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の充填部で容器への充填を継続して、高速充填と低速充填とを順次行い、
低速充填区間の所定位置で充填重量を計測して、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とにより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、
充填区間で、1個の充填部の容器への充填が終了するごとに、各充填部の充填重量を計測して、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算する時に、当該突出補正量に、充填中の充填部の数に対する充填区間の充填部の数の比率から求められる補正係数を乗算するものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、
充填液タンクで加圧された充填液が、旋回テーブルの分岐部から分配配管を介して充填液がそれぞれ供給される複数の充填部を、旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配置し、前記充填部に、容器を保持する容器保持部と、前記分配配管が接続されて容器に充填液を充填する充填ノズルと、当該充填ノズルへの充填液の充填流量を制御するピンチバルブとを設け、前記ピンチバルブに、前記分岐配管に設けられた弾性チューブを上流側で上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブを下流側で下流弁体により挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを設け、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で充填を行う充填コントローラを設けたロータリ式充填設備において、
各充填部に充填液の充填重量を計測する充填重量計測器をそれぞれ設け、
前記充填コントローラは、旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の各充填部で容器への充填をそれぞれ継続して、前記充填区間の所定位置で前記充填重量計測器により充填重量を計測し、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するように構成されたものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、
充填液タンクで加圧された充填液が、旋回テーブルの分岐部から分配配管を介して充填液がそれぞれ供給される複数の充填部を、旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配置し、前記充填部に、容器を保持する容器保持部と、前記分配配管が接続されて容器に充填液を充填する充填ノズルと、当該充填ノズルへの充填液の充填流量を制御するピンチバルブとを設け、前記ピンチバルブに、前記分岐配管に設けられた弾性チューブを上流側で上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブを下流側で下流弁体により挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを設け、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で、まずストップバルブとスローダウンバルブを全開して容器に高速充填を行い、次いでストップバルブを全開すると同時にスローダウンバルブにより弾性チューブを一部閉鎖して容器に低速充填を行う充填コントローラを設けたロータリ式充填設備において、
各充填部に充填液の充填重量を計測する充填重量計測器をそれぞれ設け、
前記充填コントローラは、旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の各充填部で容器への充填をそれぞれ継続して前記高速充填と前記低速充填とを行い、さらに前記低速充填区間の所定位置で前記充填重量計測器により充填重量を計測し、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するように構成されたものである。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の構成において、
充填コントローラは、
1個の充填部の充填が終了するごとに、充填重量計測器により各充填部の容器への充填重量に計測して、この計測充填重量により、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算する時に、当該突出補正量に、充填中の充填部の数に対する充填区間の充填部の比率からなる補正係数を乗算して、下流弁体の突出補正量を求めるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および4記載の構成によれば、非常停止された旋回テーブルにおいて、充填区間の充填中の各充填部では、充填を継続して行い、充填開始から充填完了までの目標充填速度に対して、計測充填重量から求められた計測充填速度と、充填液の圧力に関する補正率とにより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を求め、充填速度を制御することで、非常停止時の充填部で、各容器に充填液を精度良く均一に充填することができ、充填不良の発生を減少することができる。
【0014】
請求項2および5記載の構成によれば、非常停止された旋回テーブルにおいて、充填区間で充填中の各充填部では、高速充填から低速充填を順次継続して行い、低速充填区間では、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正位置を演算し、目標充填速度に対して、計測充填重量から求められた計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とにより演算して、下流弁体の突出位置を補正することで、容器への充填流量を制御して目標最終充填重量への充填精度を、さらに精度良くすることができ、これにより非常停止時の充填不良を大幅に減少させることができる。
【0015】
請求項3および6記載の発明によれば、1個の充填部における充填が完了するごとに充填部が減少し、加圧された充填液が供給される分配数が減少することにより、残りの分配配管に高圧で充填液が供給されて充填量が増加することがあっても、1個の充填部で充填が完了するごとに、演算された下流弁体の突出補正量を、充填中の充填部の数に対する充填区間における充填部の数の比率から求められる補正係数で補正することにより、さらに正確に充填速度を制御して、充填中の容器を目標最終充填重量になるようにそれぞれ高精度で供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るロータリ式充填設備の実施例を示す概略平面図である。
【図2】ロータリ式充填設備の概略側面図である。
【図3】ピンチバルブを示す拡大側面図である。
【図4】ロータリ式充填設備における充填手順を説明する平面図である。
【図5】(a)〜(f)はピンチバルブの充填動作を説明する側面図で、(a)は充填待機時、(b)はスタートスロー充填時、(c)は高速充填時、(d)は低速充填時、(e)は充填停止時、(f)はサックバック時を示す。
【図6】ロータリ式充填設備の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図7】バルブのタイムチャートと、このタイムチャートに対応する充填重量の変化を示すグラフである。
【図8】高速充填区間の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】低速充填区間の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】データテーブルに収納される充填液のデータを説明する説明図である。
【図11】図7に示す高速充填時の制御を説明するグラフの部分拡大図である。
【図12】非常停止時のスローダウンバルブにおける開閉動作を説明する側面図である。
【図13】非常停止時の充填動作を説明するグラフである。
【図14】(a)〜(c)はそれぞれ非常停止時の充填完了の充填部を示すロータリ式充填設備の概略平面図で、(a)は充填停止直後、(b)は充填中、(c)は充填終了前を示す。
【図15】非常停止後の経過時間と充填完了した充填部数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
この充填設備は、図1〜図4に示すように、旋回テーブル11の外周部に、容器保持部12と充填ノズル13とピンチバルブ14とを有する充填部10を一定ピッチで設置したロータリ式充填設備であって、入口コンベヤ1からタイミングスクリュー2を介して搬入された容器Bを、入口スターホイール3を介して容器入口7で充填部10の容器保持部12に順次搬入し、旋回経路上で、スタートスロー充填区間、高速充填区間および低速充填区間を通過させて一定重量の充填液を容器Bにそれぞれ充填し、容器出口8から出口スターホイール4を介して排出コンベヤ5に排出するものである。
【0018】
(全体構造)
基台6上には、旋回駆動モータ(図6)に減速機構を介して鉛直軸心O周りに所定速度で回転駆動される旋回テーブル11が設けられ、この旋回テーブル11の外周部に一定ピッチで複数(図では30個)の第1〜第30充填部10が配設されている。
【0019】
旋回テーブル11上に設置された旋回フレーム17には、鉛直回転軸56の上端側に充填液供給用のロータリージョイント15が配置され、旋回テーブル11の外方に配置された充填液タンク16とロータリージョイント15とが液供給管18を介して接続されている。そして、このロータリージョイント15の下部に配置された分岐部19の分岐口から各充填ノズル13に、充填流路を形成する分配配管20がそれぞれ接続され、充填ノズル13の上流側の各分配配管20にピンチバルブ14がそれぞれ設けられている。前記充填液タンク16は、充填液を加圧供給するために、加圧ポンプ16aから高圧エアにより充填圧が負荷されており、充填液の粘度が高い場合には、充填液タンク16に高圧のエアが供給されている。そしてこの充填圧により、前記充填液タンク16の充填液が液供給管18から分岐部19および分配配管20を介して各充填ノズル13に供給される。
【0020】
(ピンチバルブ)
このピンチバルブ14は、図3に示すように、分配配管20の出口から順に、シリコン製の一体成形品である弾性チューブ21と、中間固定管22と、調整管23と、充填ノズル13とが、それぞれフランジ部と連結具とを介して接続されている。そして分配配管20の出口と中間固定管22とが、ピンチバルブ14の設置用のバルブ取付フレーム24により支持されており、このバルブ取付フレーム24に上流側のストップバルブ30と、下流側のスローダウンバルブ40とがそれぞれ取り付けられている。
【0021】
ストップバルブ30は、バルブ取付フレーム24の一側支持部24aに上流弁受体31が取り付けられている。またバルブ取付フレーム24の他側支持部24bに、直線駆動装置であるストップバルブ駆動装置(電動式シリンダ)33が設置されており、ストップバルブ駆動装置33の出退ロッドの先端部に上流弁受体31に対向して上流弁体32が取り付けられている。したがって、ストップバルブ駆動装置33により上流弁体32を出退して上流弁体32と上流弁受体31との間で弾性チューブ21を挟圧し、充填流路を開閉することができる。またストップバルブ駆動装置33は、図示しないが、出力ロッドに連結されたボールねじ軸、このボールねじ軸に螺合されるナット部材、このナット部材を連動部材(タイミングベルト・タイミングプーリ)を介して回転駆動する電動モータ34、およびこの電動モータ34の回転方向および回転角から出力ロッド(上流弁体32)の出退位置を検出可能なストップバルブ用(ロータリ)エンコーダ35とを具備した電動式シリンダにより構成されている。ここで、このストップバルブ30は、ストップバルブ用エンコーダ35により位置検出される上流弁体32が後退した全開位置を、弾性チューブ21から完全に離間された位置とせずに、弾性チューブ21を少し挟圧して開口面積を調整可能な全開調整位置とし、高速充填区間で、ストップバルブ駆動装置33により上流弁体32を出退操作して充填速度を制御できるように設定される。
【0022】
スローダウンバルブ40は、バルブ取付フレーム24の一側支持部24aに下流弁受体41が取り付けられている。またバルブ取付フレーム24の他側支持部24bに直線駆動装置であるスローダウンバルブ駆動装置(電動式シリンダ)43が設置されており、このスローダウンバルブ駆動装置43の出退ロッドの先端部に、下流弁受体41に対向して下流弁体42が取り付けられている。スローダウンバルブ駆動装置43は、図示しないが、出力ロッドに連結されたボールねじ軸、このボールねじ軸に螺合されるナット部材、このナット部材を連動部材(タイミングベルト・タイミングプーリ)を介して回転駆動する電動モータ44、およびこの電動モータ44の回転方向および回転角から出力ロッド(下流弁体42)の出退位置を検出可能なスローダウンバルブ用(ロータリ)エンコーダ45とを具備した電動式シリンダにより構成されている。したがって、スローダウンバルブ駆動装置43により、高速充填区間で下流弁体42を後退して弾性チューブ21を開放するとともに、低速充填区間で下流弁体42を絞り調整位置まで前進して弾性チューブ21を挟圧し、弾性チューブ21の一部を閉鎖して低速充填することができる。そしてこの低速充填区間で、スローダウンバルブ駆動装置43により下流弁体42を出退操作して充填速度を制御することができる。さらに、サックバック位置では、ストップバルブ30により弾性チューブ21が閉鎖された充填停止状態で、下流弁体42を後退させて充填ノズル13から充填液を吸引することができる。この時、下流弁体42の後退ストロークを調整することにより、充填ノズル13からの充填液の吸引量を制御することができる。
【0023】
なお、前記ストップバルブ駆動装置33およびスローダウンバルブ駆動装置43には、電動モータ34,44の回転方向および回転角から弁体32,42の出退位置を検出可能なエンコーダ35,45を設けて、弁体32,42の出退位置を検出して調整可能に構成したが、弁体32,42の出退位置を検出可能なものであれば、電圧アクチュエータやリニアモータ、ラック・ピニオン式移動装置などであってもよい。
【0024】
各充填部10には、充填ノズル13を昇降して、ノズル口を容器Bの口部に接近または挿入させるためのノズル昇降装置54(図6)が設けられている。なお、ノズル昇降装置に替えて、容器Bを昇降してノズル口を容器Bの口部に接近または挿入させる容器昇降装置であってもよい。
【0025】
また容器保持部12には、容器保持具(図示せず)により支持台25上に保持された容器Bを介して充填重量を計測するロードセル(充填重量計測器)26がそれぞれ設けられている。
【0026】
(充填制御機構)
充填設備の制御機構を図4、図6を参照して説明する。
旋回テーブル11に外周部には、たとえば図4に示すように、30個の充填部10が配置されており、これら第1〜第30充填部10には、ノズル昇降シリンダ54、ロードセル26と、ピンチバルブ14とがそれぞれ設置されている。
【0027】
旋回駆動モータ52により旋回テーブル11と共に回転駆動される鉛直回転軸56には、その上端部に第1〜第30充填部10の旋回位置をそれぞれ検出する旋回用(ロータリ)エンコーダ55が設けられており、旋回用エンコーダ55により、容器入口7、充填開始位置0と、高速充填区間および低速充填区間における第1〜第4計測位置θ1〜θ4、最終充填量確認位置W5および容器出口8が検出される。この旋回用エンコーダ55と、前述したロードセル26、ストップバルブ用エンコーダ35、スローダウンバルブ用エンコーダ45の各検出信号がそれぞれ充填コントローラ51に入力されている。またロードセル26の検出値により、高速充填開始位置W1、低速充填開始位置W2、充填終了位置W3が検出される。
【0028】
操作器53は、充填状態を表示する表示部と、充填液の種類(液体のみか、固形物含有液体)と性状(粘度と泡立ち度、固形物の有無とその大きさなど)のデータを入力する入力部を具備し、目的の充填液のデータをそれぞれ充填コントローラ51に入力するように構成されており、充填コントローラ51では、入力された充填液のデータに基づいてデータテーブル27から必要なデータを選択取得する。
【0029】
ここで、タイマー28により、充填終了時からサックバックまでの時間がカウントされているが、充填開始位置からの経過時間をカウントして、高速充填区間および低速充填区間における第1〜第4計測位置θ1〜θ4を検出するようにしてもよい。またタイマー28により、充填終了位置から、容器B内の充填液が安定する時間をカウントして、最終充填量確認位置W5を検出するようにしてもよい。
【0030】
そしてこれら前記充填コントローラ51とタイマー28とデータテーブル27とにより、充填制御装置50が構成されている。
(充填液のデータ)
ここで、容器Bに充填する充填液の種類や性状(性質)が異なると、充填精度が低下するおそれがあるため、充填液の種類や性状と充填動作の関係を図10を参照して簡単に説明する。
【0031】
ここで充填液の種類は、含有固形物の有無をいい、性状は、粘度、泡立ち度および充填液に含有される固形物の大きさなどをいう。
a.充填液の粘度が高いものは比較的泡立ち度が少なく、バルブ30,40の開閉速度を比較的高速で行うことができる。また固形物を含有しない充填液は、低速充填区間で、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくしても詰まることがないため、低速充填区間の流量を小さくすることにより、充填精度を向上させることができる。ここで低速充填区間の流量が小さいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も少なく、サックバック時の吸引量を少なくする必要がある。これは、吸引量が多いと、空気を吸い込んで液垂れが発生することがあるためである。また粘度が高い充填液は、充填ノズル13の出口の外周部に付着しやすい傾向があり、外周部に付着した充填液は、少し待機時間を設けることにより充填液を充填ノズル13の出口に集めることができ、その後にサックバックすることで、液垂れを効果的に防止できる。
【0032】
b.粘度が高い充填液に固形物が含まれる場合、バルブ30,40の開閉速度を比較的高速で行うことができるが、低速充填区間で、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくすると、固形物が詰まって流量が変化し、充填精度が低下しやすい。このため、固形物が大きい場合は、弾性チューブ21の開口面積を大きくし、固形物が小さい場合は、弾性チューブ21の開口面積を幾分大きくして、固形物の詰まりを防止する。また低速充填区間の流量が大きいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も多いため、サックバック時の吸引量を大きくする必要がある。ここで吸引量が少ないと、残液が液垂れするおそれがある。
【0033】
c.粘度が低い充填液は、比較的泡立ちが多くなりやすいため、バルブ30,40の開閉速度を中速〜低速で行うことにより、泡立ちを抑制することができる。また、固形物を含有しない充填液は、スローダウンバルブによる低速充填時に、流量を比較的小さくしても詰まることがないため、低速充填時の流量を小さくして、充填精度を向上させることができる。また低速充填時の流量が小さいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も少なく、サックバック時の吸引量を小さくして、空気の吸い込みを防止する。
【0034】
d.粘度が低い充填液に固形物が含まれた場合、比較的泡立ちが多くなりやすいために、バルブ30,40の開閉速度を比較的低速で行う。また低速充填時に、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくすると、固形物が詰まりやすい。このため、固形物が大きい場合は、弾性チューブ21の開口面積を大きくし、固形物が小さい場合は、弾性チューブ21の開口面積を幾分大きくして、固形物の詰まりを防止する。さらに低速充填時の流量が大きいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も比較的多いため、サックバック時の吸引量を大きくする。
【0035】
この実施例では、多様な液の種類および性状と、充填設備の能力を考慮して、実験により多くの種類の充填液を実験し、ストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の開閉速度(弁体32,42の出退速度)や、高速充填時および低速充填時の開度(出退位置)、サックバック量などの各データを取得し、これら充填液の種類および性状ごとのデータをデータテーブル27に記憶させる。また試運転時に、各充填部10におけるストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の開閉状態に対する充填速度の特性データを取得し、各充填部10ごとの補正量もデータテーブル27に記憶させる。
【0036】
(基本充填動作)
まず、各充填部10におけるピンチバルブ14による基本的な充填動作を図4、図5および図7を参照して説明する。
【0037】
1)容器入口7から充填開始位置0までの充填待機区間は、容器Bを安定させるもので、図5(a)に示すように、ストップバルブ30が全閉位置で、スローダウンバルブ40が絞り調整位置(一部開放)にある。
【0038】
2)旋回用エンコーダ55により充填開始位置0が検出されてスタートスロー充填になると、図5(b)に示すように、上流弁体32が全開調整位置に後退されてストップバルブ30が全開され、絞り調整位置の下流弁体42により、充填液が低速で充填される。このスタートスロー充填は、充填開始時に多く充填液が一度に容器Bの口部に供給されると、充填液の流れと、容器Bの口部から流出される空気の流れとが衝突して充填液が噴きこぼれるのを防止するためである。
【0039】
3)ロードセル26により計測充填重量が目標初期充填重量VsSが検出されて、高速充填開始位置(スタートスロー充填終了)W1になると、高速充填が開始され、図5(c)に示すように、上流弁体32が全開調整位置にある状態で、下流弁体42が全開位置まで後退されることにより、充填液が高速で充填される。
【0040】
4)ロードセル26により計測充填重量が目標中間充填重量VsMが検出されて、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2になると、図5(d)に示すように、下流弁体42が絞り調整位置まで前進されることにより、充填液が絞られて低速で充填される。この低速充填により充填精度が向上される。
【0041】
5)ロードセル26により計測充填重量が目標最終充填重量VsFが検出されて、充填停止位置(低速充填終了位置)W3になると、図5(e)に示すように、上流弁体32が全開調整位置から全閉位置に前進され、弾性チューブ21が全閉されて充填が停止される。
【0042】
6)旋回用エンコーダ55の検出信号によりサックバック位置W4が検出されると、図5(f)に示すように、下流弁体42が絞り調整位置から全開位置まで後退されて、充填ノズル13内の充填液を吸引する。この時、下流弁体42の後退ストロークが調整されてサックバックの吸引量が調整される。
【0043】
7)旋回用エンコーダ55の検出信号により最終充填量確認位置W5が検出されると、充填液が安定した状態で充填重量が検出されて、規格範囲の良品と規格範囲外の不良品とが判断され、下流側に配置された不良品排出装置(図示せず)で不良品容器Bが排出される。
【0044】
(充填制御)
図7、図8を参照して、高速充填時の充填制御について説明する。
第1〜第30充填部10では、ロードセル26により容器Bの充填重量がリアルタイムで計測され、旋回用エンコーダ55により第1〜第30充填部10の位置がそれぞれ検出されている。そして、充填開始からスタートスロー充填された容器Bの充填重量が目標初期充填重量VsSになると、スローダウンバルブ40が全開されて高速充填が開始される(STEP.1)。
【0045】
高速充填区間では、充填部10が第1計測位置θ1になる(STEP.2)と、ロードセル26により計測された充填液の計測充填重量Vc1が、データテーブル27から取得された基準充填重量Vs1の閾値の範囲にあるかどうかが判断される(STEP.3)。
【0046】
計測充填重量Vc1が基準充填重量Vs1の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から、閾値を逸脱した量に応じたストップバルブ30の補正量を取得し(STEP.4)、この補正量に基づいて、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2において目標中間充填重量VsMとなるようにストップバルブ駆動装置33を操作し、ストップバルブ30の開度を制御する(STEP.5)。
【0047】
第2計測位置θ2に達する(STEP.6)と、第2計測位置θ2でも第1計測位置θ1と同様に、充填液の計測充填重量Vc2が、基準充填重量Vs2の閾値の範囲にあるかどうかを判断し(STEP.7)、計測充填重量Vc2が基準充填重量Vs2の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から補正量を取得し(STEP.8)、この補正量に基づいて、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2において目標中間充填重量VsMとなるようにストップバルブ駆動装置33を操作し、ストップバルブ30の開度を制御する(STEP.9)。
【0048】
そして充填液の計測充填重量が目標中間充填重量VsMとなると、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2となる。
次に低速充填時の充填制御を、図7、図9を参照して説明する。
【0049】
目標中間充填重量VsMになると、スローダウンバルブ40の下流弁体42が絞り調整位置まで前進されて低速充填が開始される(STEP.11)。
低速充填区間では、充填部10が第3計測位置θ3(旋回テーブル11の旋回角)に達する(STEP.12)と、ロードセル26の計測充填重量Vc3が、データテーブル27から取得された基準充填重量Vs3の閾値の範囲にあるかどうかを判断する(STEP.13)。
【0050】
計測充填重量Vc3が基準充填重量Vs3の閾値を越えた場合、データテーブル27からスローダウンバルブ40の補正量を取得し(STEP.14)、この補正量に基づいて、充填終了位置W3において目標最終充填重量VsFとなるようにスローダウンバルブ駆動装置43を操作し、スローダウンバルブ40の開度を制御する(STEP.15)。
【0051】
次に第4計測位置θ4に達する(STEP.16)と、第3計測位置θ3と同様に、ロードセル26により計測された充填液の計測充填重量Vc4が、データテーブル27の基準充填重量Vs4の閾値の範囲にあるかどうかを判断し(STEP.17)、計測充填重量Vc4が基準充填重量Vs4の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から、この逸脱量に応じたスローダウンバルブ40の補正量を取得する(STEP.18)。そして、この補正量に基づいて、充填終了位置W3において目標最終充填重量VsFとなるようにスローダウンバルブ駆動装置43を操作し、スローダウンバルブ40の開度を制御する(STEP.19)。
【0052】
充填部10の計測重量が目標最終充填重量VsFとなると、充填終了位置W3となってストップバルブ30を閉鎖し低速充填を終了する。
なお、計測位置を高速充填区間および低速充填区間で2回ずつ設けたが、1回ずつまたは3回以上であってもよい。
【0053】
また、上記データテーブル27におけるストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の補正量は、閾値を逸脱した量に対応して、充填終了位置W2,W3における目標中間、最終充填重量VsM,VsFと、計測重量Vs1〜4とが一致するデータが記録されているが、充填コントローラ51において、第1〜第4計測位置01〜04ごとに、下記の(式1)で演算することもできる。
【0054】
すなわち、図11に示すように、第1計測位置θ1では、高速充填開始位置W1から第1計測位置θ1までの旋回移動時間:t1、高速充填開始位置W1から低速充填開始位置W2までの旋回移動時間:T、高速充填区間の基準充填重量:(VsM−Vss)、第1計測位置θ1の計測充填重量:Vc1、第1計測位置θ1の基準充填重量:Vs1とすると、高速充填区間の残余時間はT−t1、第1計測位置θ1から低速充填開始位置W2までに必要な充填重量:VsM−Vs1である。
【0055】
したがって、第1計測位置θ1から低速充填開始位置W2までの時間当たりの充填重量=(VsM−Vc1)/(T1−t1)…(式1)となり、この充填重量となるように、ストップバルブ駆動装置33を操作して上流弁体32の位置を制御すればよい。また他の計測位置θ2〜θ4についても同様に演算してストップバルブ駆動装置33またはスローダウンバルブ駆動装置43を操作することができる。
【0056】
(充填設備の実施例の効果)
上記実施例によれば、スローダウンバルブ40に、下流弁体42の出退位置を調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置43を設けて、低速充填区間における充填重量をロードセル26により検出し、この計測充填重量によりデータテーブル27から取得した補正量に基づいてスローダウンバルブ駆動装置43を操作し下流弁体42を出退して充填流量を制御することにより、容器Bへの充填量を精度良く制御することができる。したがって、下流弁体42により開口面積が絞られた弾性チューブ21に、固形物が詰まって充填重量が変化することがあっても、データテーブル27から取得した補正量に基づいて充填コントローラ51によりスローダウンバルブ駆動装置43を操作し充填流量を制御し、容器Bに高精度で充填することができる。
【0057】
またストップバルブ30に、上流弁体32の出退位置を調整可能な電動式のストップバルブ駆動装置33を設けたので、高速充填区間に充填速度が変化して充填重量の変化がロードセル26の計測により検出されると、充填コントローラ51によりデータテーブル27から取得した補正量に基づいてストップバルブ駆動装置33を操作し、高速充填区間の充填速度を制御することができる。したがって、ロータリ式充填設備の第1〜第30充填部10における各弾性チューブ21の成形品固有の特性や経年変化による充填流量の変化に確実に対応することができ、またあらゆる種類の充填液であっても、精度良く充填することができる。
【0058】
さらに、充填液の種類(含有固形物の有無)と性状(粘度や泡立ち度、固形物の大きさなど)に対応するストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の操作速度や操作量や、旋回テーブル11の旋回角に対応した基準充填重量のデータを具備したデータテーブル27を設けたので、充填液が変更される品種替え時に、操作器53の入力手段から充填液の種類と性状のデータとを充填制御コントローラ51に入力することにより、データテーブル27からストップバルブ駆動装置33とスローダウンバルブ駆動装置43の操作量および操作速度と基準充填重量のデータを取得して自動的に設定することができ、作業員によるピンチバルブ14の設定変更が不要となり、品種替えに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0059】
さらにまた、旋回テーブル11の外周部に一定ピッチで配置された充填部10のピンチバルブ14をそれぞれ個別に制御することができ、各充填部10ごとの充填精度を均一にすることができて、連続充填する容器Bへの充填精度を向上させることができる。
【0060】
(非常停止制御)
充填コントローラ51には、充填設備における充填ラインの上流側の容器供給装置や、下流側のキャッパーなどに不具合があった場合には、非常停止を行うが、この非常停止された場合で充填中の各容器は、それぞれの充填が継続されて目標最終充填重量VsFになるように制御される。
【0061】
たとえば図14に示すように、緊急停止された旋回テーブル11の充填区間(スタートスロー充填区間、高速充填区間、低速充填区間)にあるたとえば10個の充填部10について充填が継続され、充填終了位置W3の充填部10から上流側に順次充填が終了する。この緊急停止信号に基づいて、タイマー28のカウントが開始され、たとえば所定時間ごとに、ロードセル26により、充填中の充填部10の計測充填重量がそれぞれ検出されている。そして低速充填を行う充填部10について、下記の(式A)に基づいて、スローダウンバルブ40の下流弁体42の突出補正量ΔXを求め、スローダウンバルブ駆動装置43により補正制御する。
【0062】
すなわち、図12に示すように、スローダウンバルブ40において、充填液の種類や性状ごとに設定された全開位置から絞り調整位置までの下流弁体42の目標突出量X1(mm)、目標突出量X1から補正する下流弁体42の突出補正量ΔX(mm)とすると、(式A)により突出補正量ΔX(mm)は、たとえば充填区間の容器Bの充填が1個ずつ完了するごとに求められ、スローダウンバルブ駆動装置43が補正制御される。
【数1】

【0063】
【数2】

【0064】
【数3】

【0065】
(式A)において、Qは、図13に示すように、低速充填区間の目標充填速度(g/秒)で、(式C)に示す通りであり、Vは、低速充填開始位置W2から充填終了位置W3までの目標充填重量、またtは、低速充填開始位置W2から充填終了位置W3までの目標時間である。
【0066】
またQxは、低速充填開始位置W2から計測位置txまでの計測充填速度(g/秒)で、(式B)の通りであり、Vxは、低速充填開始位置W2から計測位置txまでの計測充填重量、またtxは低速充填開始位置W2から計測位置までの計測経過時間である。したがって、Qx/Qは、目標充填速度に対する計測充填速度の比率(割合)を示している。
【0067】
また(式A)において、ηは、充填液の種類や性状に対応して選択される充填圧力に関する補正率で、0.1〜0.9の設定値(固定値)である。
上記(式A)によれば、非常停止された旋回テーブル11における充填区間にある各充填部10でそれぞれ充填を継続して行い、目標突出量X1に、低速充填区間の目標充填速度Q=V/tに対する計測充填速度Qx=Vx/txの比率と、充填液の圧力に関する補正率ηを乗算して下流弁体42の突出補正量ΔXを求め、充填ノズル13からの充填量を制御することで、非常停止時であっても、充填中の充填部10で各容器Bに目標最終充填重量VsFの充填液を精度良く充填することができ、充填不良の発生を減少させることができる。
【0068】
(式D)は、非常停止した旋回テーブル11において、充填区間の充填部10の容器Bにさらに高精度に充填するために、(式A)の突出補正量に補正係数Kを乗算することにより、充填が完了して減少する充填中の充填部10の数に起因して、増大する充填圧に対応するようにしたものである。
【数4】

【0069】
(式D)において、Kは、充填区間の充填部10の数/充填中の充填部10の数で求められる補正係数である。たとえば図14(a)に示すように、充填区間の容器数が10個、充填中の充填部10の数が10個の場合、K=10/10=1である。また図14(b)に示すように、充填区間の充填部10の数が10個、充填中の充填部10の数が7個の場合には、K=10/7=1.43…である。さらに図14(c)に示すように、充填区間の充填部10の数が10個、充填中の充填部10の数が2個の場合、K=10/2=5である。このように補正係数Kは、図15に示すように、充填区間の充填部10が1個ずつ充填完了するごとに増加する係数で、充填液タンク16から一定の充填圧で供給される充填液の分配数が少なくなると、残りの充填部10の充填液に大きな充填圧が負荷されて充填重量が増大するのを防止するため、下流弁体42の突出量を増加させて絞ることにより、低速充填の充填速度を低下させている。この場合、緊急停止信号に基づいて、タイマー28のカウントが開始され、1つの充填部10の充填が完了する間に少なくとも1回または複数回、ロードセル26により、充填中の充填部10の計測充填重量がそれぞれ検出されて、突出補正量ΔXを演算する必要がある。
【0070】
ここで、たとえば目標突出量X1=10(mm)、補正率η=0.8、図14(c)に示すように、充填区間の充填部10の数が10個、充填中の充填部10の数が2個で、補正係数K=5、Qx=40g/秒、Q=15g/秒の場合、(式Dから)
補正突出量ΔX(mm)=10×{0.8×5×[(40/15)÷100]}=1.07となる。
【0071】
上記(式D)によれば、容器Bへの充填が1個完了するごとに、ロードセル26により計測充填重量を計測して、下流弁体42の突出補正量ΔXを求める際に、充填中の充填部10が減少するごとに増大する充填圧を考慮して、補正係数Kで補正することにより、さらに正確に流量調整して、充填中の容器にそれぞれ目標最終充填重量VsFに精度良く充填液を供給することができる。
【0072】
(非常停止制御の実施例の効果)
上記実施例によれば、非常停止された旋回テーブル11において、充填区間における充填中の各充填部10で高速充填と低速充填とを継続して行い、低速充填区間では1個の充填部で充填が完了するごとに、ロードセル26で各容器Bの計測充填重量Vxを計測して下流弁体42の突出補正量ΔXを、目標突出量X1に、低速充填区間の目標充填速度Q=V/tに対して、計測充填重量から求められた計測充填速度Qx=Vx/txの比率と、充填液の圧力に関する補正率ηと、充填中の充填部の数に対する充填区間の充填部の数から求められる補正係数Kとを乗算して求め、スローダウンバルブ駆動装置43を操作して下流弁体42の絞り調整位置を補正することで、充填速度を制御して、各容器を目標最終充填重量VsFまで高精度で充填することができ、これにより非常停止時の充填不良を大幅に減少させることができる。
【0073】
なお、上記実施例では、高速充填を行うストップバルブ30のストップバルブ駆動装置33と、低速充填を行うスローダウンバルブ40のスローダウンバルブ駆動装置43に位置制御可能な電動式シリンダを使用したが、スローダウンバルブ駆動装置43にのみ位置制御可能な電動式シリンダを使用して、低速充填時にのみ流量制御することもできる。
【符号の説明】
【0074】
B 容器
10 充填部
11 旋回テーブル
12 容器保持部
13 充填ノズル
14 ピンチバルブ
15 ロータリージョイント
16 充填液タンク
17 旋回フレーム
18 液供給管
19 分岐部
20 分配配管(充填流路)
21 弾性チューブ
25 支持台
26 ロードセル(充填重量計測器)
27 データテーブル
28 タイマー
30 ストップバルブ
31 上流弁受体
32 上流弁体
33 ストップバルブ駆動装置
33a ストップバルブ用エンコーダ
34 電動モータ
35 ストップバルブ用エンコーダ
40 スローダウンバルブ
41 下流弁受体
42 下流弁体
43 スローダウンバルブ駆動装置
43a スローダウンバルブ用エンコーダ
44 電動モータ
45 スローダウンバルブ用エンコーダ
50 充填制御装置
51 充填コントローラ
52 旋回駆動モータ
53 操作器
55 旋回用エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回テーブルの外周部に一定ピッチで複数の充填部を配置し、充填液タンクで加圧された充填液を、分岐部から分配配管を介して前記充填部に供給するとともに、充填部でピンチバルブにより充填ノズルから、充填部にそれぞれ保持された容器に供給し、前記ピンチバルブで、前記分配配管に設けられた弾性チューブを上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを操作して容器に充填するロータリ式充填設備における非常停止制御方法であって、
旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の充填部では容器への充填を継続して行い、
前記充填区間の所定位置で充填重量を計測し、充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とにより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御する
ことを特徴とするロータリ式充填設備における非常停止制御方法。
【請求項2】
旋回テーブルの外周部に一定ピッチで複数の充填部を配置し、充填液タンクで加圧された充填液を、分岐部から分配配管を介して前記充填部に供給するとともに、充填部でピンチバルブにより充填ノズルから、充填部にそれぞれ保持された容器に供給し、前記ピンチバルブで、前記分配配管に設けられた弾性チューブを上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを操作し、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で、まずストップバルブとスローダウンバルブを全開して容器に高速充填を行い、次いでストップバルブを全開すると同時にスローダウンバルブにより弾性チューブを一部閉鎖して容器に低速充填を行うロータリ式充填設備における非常停止制御方法であって、
旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の充填部で容器への充填を継続して、高速充填と低速充填とを順次行い、
低速充填区間の所定位置で充填重量を計測して、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とにより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御する
ことを特徴とするロータリ式充填設備における非常停止制御方法。
【請求項3】
充填区間で、1個の充填部の容器への充填が終了するごとに、各充填部の充填重量を計測して、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算する時に、当該突出補正量に、充填中の充填部の数に対する充填区間の充填部の数の比率から求められる補正係数を乗算する
ことを特徴とする請求項1または2記載のロータリ式充填設備における非常停止制御方法。
【請求項4】
充填液タンクで加圧された充填液が、旋回テーブルの分岐部から分配配管を介して充填液がそれぞれ供給される複数の充填部を、旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配置し、前記充填部に、容器を保持する容器保持部と、前記分配配管が接続されて容器に充填液を充填する充填ノズルと、当該充填ノズルへの充填液の充填流量を制御するピンチバルブとを設け、前記ピンチバルブに、前記分岐配管に設けられた弾性チューブを上流側で上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブを下流側で下流弁体により挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを設け、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で充填を行う充填コントローラを設けたロータリ式充填設備において、
各充填部に充填液の充填重量を計測する充填重量計測器をそれぞれ設け、
前記充填コントローラは、旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の各充填部で容器への充填をそれぞれ継続して、前記充填区間の所定位置で前記充填重量計測器により充填重量を計測し、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するように構成された
ことを特徴とするロータリ式充填設備。
【請求項5】
充填液タンクで加圧された充填液が、旋回テーブルの分岐部から分配配管を介して充填液がそれぞれ供給される複数の充填部を、旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配置し、前記充填部に、容器を保持する容器保持部と、前記分配配管が接続されて容器に充填液を充填する充填ノズルと、当該充填ノズルへの充填液の充填流量を制御するピンチバルブとを設け、前記ピンチバルブに、前記分岐配管に設けられた弾性チューブを上流側で上流弁体により挟圧して開閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブを下流側で下流弁体により挟圧して開閉し流量調整可能なスローダウンバルブとを設け、旋回経路上に設定された充填開始位置から充填終了位置の間の充填区間で、まずストップバルブとスローダウンバルブを全開して容器に高速充填を行い、次いでストップバルブを全開すると同時にスローダウンバルブにより弾性チューブを一部閉鎖して容器に低速充填を行う充填コントローラを設けたロータリ式充填設備において、
各充填部に充填液の充填重量を計測する充填重量計測器をそれぞれ設け、
前記充填コントローラは、旋回テーブルを非常停止した後、前記充填区間の各充填部で容器への充填をそれぞれ継続して前記高速充填と前記低速充填とを行い、さらに前記低速充填区間の所定位置で前記充填重量計測器により充填重量を計測し、低速充填区間の目標充填速度に対する計測充填速度の比率と、充填液の圧力に関する補正率とより、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算して充填量を制御するように構成された
ことを特徴とするロータリ式充填設備。
【請求項6】
充填コントローラは、
1個の充填部の充填が終了するごとに、充填重量計測器により各充填部の容器への充填重量に計測して、この計測充填重量により、スローダウンバルブの下流弁体の突出補正量を演算する時に、当該突出補正量に、充填中の充填部の数に対する充填区間の充填部の比率からなる補正係数を乗算して、下流弁体の突出補正量を求めるように構成された
ことを特徴とする請求項4または5記載のロータリ式充填設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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