説明

ロータリ耕耘装置

【課題】チェン伝動ケースの前方に藁除去用のディスクを設けるが該ディスクと伝動ケースの間に堆積して溜まり易く、ディスクの回転を阻害し、却って藁の堆積を助長してディスクを追加した効果が期待できない。
【解決手段】耕耘部の一側に耕耘軸(10)の一端側を支持し該耕耘軸(10)を回転連動する伝動機構を内装した伝動ケース(11)を設け、この伝動ケース(11)の前側に支持フレーム(21)を設け、この支持フレーム(21)に前端縁が後端縁に対して耕耘部外方に位置すべく平面視で傾斜し横軸回りに回転するディスク(24)を設け、このディスク(24)の回転中心近傍位置から伝動ケース(11)下端近傍位置に渡って棒状又は板体からなり前記支持フレーム(21)に支持され又は伝動ケース(11)下端側に支持される藁類侵入防止体(25,25A,25B,25C)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に散在する藁屑類の堆積による詰まりをなくしたロータリ耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘装置の横側方を覆うサイドカバーの前部を円弧状に切り欠き、ディスクを設け、このディスクの向きを操作ハンドルで向き変更可能に構成している。そして、排藁の多い圃場においては、ディスクを外向きとし、ディスクの前縁部が土や排藁等を内側へ移送しながらこれらを耕耘装置に導き、かつチェンケースの通過部を予め掘り起こす。このため、排藁が多いときにこれらが藁がチェンケースの前部に引っかかってこれが既耕地を引きずり圃場にくぼみを生じたり、藁の塊が生じることを防止する技術が公知である(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭63−155302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記公知公報のものは、ディスクで押さえ込んだ藁がチェンケースで押され、隙間に溜まり易く、こうして藁が溜まるとディスクが回転しなくなり、却って藁の堆積を助長してディスクを追加した効果が期待できない。
【0004】
そこで、本発明は、チェンケース前部に溜まり難くすることによって当初の効果を発揮させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、請求項1に記載の発明は、耕耘部の一側に耕耘軸(10)の一端側を支持し該耕耘軸(10)を回転連動する伝動機構を内装した伝動ケース(11)を設け、この伝動ケース(11)の前側に支持フレーム(21)を設け、この支持フレーム(21)に前端縁が後端縁に対して耕耘部外方に位置すべく平面視で傾斜し横軸回りに回転するディスク(24)を設け、このディスク(24)の回転中心近傍位置から伝動ケース(11)下端近傍位置に渡って棒状又は板体からなり前記支持フレーム(21)に支持され又は伝動ケース(11)下端側に支持される藁類侵入防止体(25,25A,25B,25C)を設けてなるロータリ耕耘装置の構成とする。
【0006】
ロータリ耕耘装置(1)による耕耘作業を開始すると、耕耘部の耕耘爪(13,13…)が回転し土壌は耕耘される。伝動ケース(11)の前方において、ディスク(24)は回転しながらその傾斜姿勢で土や藁を内側へ寄せて耕耘部に導き、伝動ケース(11)の通過前側の藁を除き、伝動ケース(11)の通過を容易にする。
【発明の効果】
【0007】
ディスク(24)に連れ回りながら該ディスク(24)の外側付近に藁が堆積し、やがて伝動ケース(11)とディスク(24)後縁との間に溜まろうとするが、該ディスク(24)と伝動ケース(11)との間に藁類侵入防止体(25)が設けられているから、溜まろうとする藁類が外方から耕耘部へ侵入することを防ぎ藁溜まりを無くして、耕耘作業を継続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ本発明に係る耕耘装置について説明する。
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。まず、構成から説明すると、図1に示す符号1は従来周知のロータリ耕耘装置で、トラクタ2機体後部に3点リンク機構を構成するロアリンク3,3とトップリンク4とで連結され、リフトアーム5,リフトロッド6の昇降連動によって昇降可能に設けられている。
【0009】
上記ロータリ耕耘装置1は、耕耘軸10が伝動チェン等を内装する伝動ケース11及びサイドプレート12との間に支持して設けられる所謂サイドドライブ形態とし、この耕耘軸10の周囲には多数の耕耘爪13,13を配設して耕耘部を構成する。耕耘部の上方は上面カバー14、後面はこの上面カバー14の後端部に回動自在に設けたリヤカバー15、側面は耕耘軸10の左右側方を覆う側面カバー16,16によって囲われている。なお、側板カバー16につき、伝動ケース11と重ねて装着されたロータリ枠組一部を構成する主側面カバー16aと、伝動ケース11後部において該主側面カバー16aに装着されて耕耘土壌の飛散を阻止する副側面カバー16bとからなっている。
【0010】
前記ロータリ耕耘装置1の上部中央にはギヤ伝動ケース17を設け、トラクタ2後部に突出させて設けるPTO軸18の回転駆動力が入力軸19を介してギヤ伝動ケース17内伝動ギヤ群(図示せず)に伝動されるべく構成する。そして、該ギヤ伝動ケース17内伝動ギヤ群を介して前記伝動ケース11内伝動機構に伝達すべく構成する。
【0011】
前記伝動ケース11の下部には、前方に向けて支持フレーム21を設ける。即ち、前記主側面カバー16aの前部であって伝動ケース11よりも前側に露出する部分にボルト22,22止めし、その前側を平面視で耕耘部から遠ざかる外方に向け折曲形成して設けている。
【0012】
そして、この支持プレート21の前側に横軸23を介して椀型のディスク24を、前端縁が後端縁に対して耕耘部外方に位置すべく平面視で傾斜して設ける。もって、なお、ディスク24の下端は標準耕耘作業姿勢において、伝動ケース11の下端側に被せた補強板11aの下端と略同高さに設定している。したがって、上記傾斜と相まって伝動ケース11の左右幅に渡ってディスク24が土中に作用し得る構成となっている。上記横軸23は大小2段の段付ボルト形態で、ディスク24中心のボス部24aを貫通し細径部に支持フレーム21の通孔21aを貫通してナット23aで締結することによって該ディスク24は遊転支持されている。
【0013】
前記ディスク24の横軸23部近傍から伝動ケース11の下端部近傍に渡って棒状の藁類侵入防止体25を設ける。該藁類侵入防止体25は、前記支持フレーム21の前側下部にボルト止めされるスクレーパ用ブラケット26に溶接手段によって一体構成されていて、前記ディスク24の回転中心近傍位置から伝動ケース11の補強板11a下端部近傍位置に渡って配置される。即ち、棒状の藁類侵入防止体25前端は湾曲させて前記ボス部24aの下半部を囲うよう延出し、後端は伝動ケース11下部の補強板11aの最下端まで延出させてなる。このように構成された藁類侵入防止体25は、伝動ケース11とディスク24後縁との間に形成される間隔部27を塞ぎ状に設けられる。
【0014】
前記スクレーパ用ブラケット26には、ディスク24の凸側湾曲表面に接近する縁部28をもって、ディスク24の付着土を掻き落とすスクレーパを構成している。
上例のロータリ耕耘装置1による耕耘作業を開始すると、耕耘部の耕耘爪13,13…が回転し土壌は耕耘される。伝動ケース11の前方において、ディスク24は自転しながら前縁部で土や藁を内側へ寄せて耕耘部に導くと共に、伝動ケース11の通過前側を予め掘り起こして、伝動ケース11の通過を容易にする。
【0015】
ところで、ディスク24に連れ回りながらディスク24の外側付近に藁が堆積し、やがてディスク24が回らなくなり、伝動ケース11とディスク24後縁との間に形成される間隔部27に溜まろうとするが、本実施例では該ディスク24と伝動ケース11との間隔部27に棒状の藁類侵入防止体25が設けられているから、間隔部27に溜まろうとする藁類の外側から耕耘部への侵入を防ぎ藁溜まりを抑制できる。
【0016】
なお、棒状の藁類侵入防止体25前端はディスク24の回転中心近傍にあるため、藁がディスク24に最も強く押し込まれる位置に上記前端を位置させることで前端への藁の巻き付きを極力防止できる効果があり、また、該藁類侵入防止体25前端は湾曲させて前記ボス部24aの下半部を囲うよう延出させているため、湾曲形状によって藁の引っかかりを少なくでき後方への流れを円滑になし得る。
【0017】
一方棒状の藁類侵入防止体25の後端を伝動ケース11の下端まで延長させたことにより、藁侵入防止効果を伝動ケース11の下端まで作用させることができる。
前記ディスク24は土中への作用に伴って回転し、土が付着するが、スクレーパ用縁部28で掻き落とすことができ、土付着によるディスク24の回転阻害を来たさず、土寄せ性能を良好に継続させることができる。また、このスクレーパ用縁部28を形成するブラケット26に棒状の藁類侵入防止体25を取り付けてなるからブラケット26部分を兼用できて構成の簡素化による藁類の引っ掛かりをなくすると共にコストダウンとなる。
【0018】
図6,7は藁類侵入防止体の第2の実施例を示すもので、板体で構成し支持プレート21と相俟って側面視において間隔部27の大部分を覆う構成としている。具体的には、前記主側面カバー16aに藁類侵入防止体25A部分を一体成形し、その前端はR形状に成形して前記ボス部24aの下半部を囲うようになし、後端は伝動ケース11の補強板11a下端部近傍位置に至る形状としている。
【0019】
また、図8,9の第3の実施例の場合は、藁類侵入防止体25Bを前記伝動ケース11の下部に被せる補強板11aと一体的に成形するものである。
図6〜図9のように構成すると、藁類侵入防止体25A,25Bを支持プレート21と相俟って側面視において前記間隔部27の大部分を覆うことができ、藁類の侵入を略完全に防止できる効果がある。なお、主側面カバー16aや補強板11aと一体成形することができ各別の取り付け構成を必要としないで製作、組み付け作業を簡素化できる。
【0020】
上記の場合は、主側面カバー16aや補強板11aを利用して藁類侵入防止体25A,25Bを形成したが、伝動ケース11のケース用プレート部材を延長して形成してもよい。
【0021】
さらに図10,11は前記支持フレーム21を延長し、上下幅のやや狭い藁類侵入防止体25Cを一体的に形成する第4の実施例構成である。第1の実施例と同様に支持プレート21の着脱のみでディスク24及び藁類侵入防止体25を一挙に着脱できて組立て作業やメンテナンス作業に便利である。
【0022】
以上の実施例では、ディスク24の回転は横軸23に遊転状態に設けて土中に一部侵入して牽引されることで自転する構成とし藁類を押し込み可能に構成したが、ディスク24を支持する横軸23を駆動力を伝達しディスク24を強制回転させることによって藁類の切断、押し込み作用を向上させる構成としてもよい。また、棒状の藁類侵入防止体25を伝動ケース11側に取り付ける構成、例えば補強板11aに溶接固定するなど、としてもよい。
【0023】
図12,13は参考例を示し、伝動ケース11の外方に耕耘軸10と同芯の軸30に回転円板31を設けてなる。該回転円板31の外径は、伝動ケース11の下端よりやや下方に作用し、かつ耕耘爪13回転軌跡Z外周よりも短径に設定している。このように構成すると、伝動ケース11の外側近傍の藁、特に絡み付きによって堆積しようとする藁塊を押し込んでほぐし、伝動ケース11による堆積藁類の押し込みを防止できる。なお、回転円板31は駆動形態でもよく軸30に遊転としてもよい。このような回転円板31を前記ディスク24や藁類侵入防止体25と並設することによって、藁の塊化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】全体側面図
【図2】ロータリ耕耘装置の側面図
【図3】ロータリ耕耘装置の平面図
【図4】ディスクの拡大断面図
【図5】ディスク装着状態を示す斜視図
【図6】第2実施例を示すロータリ耕耘装置の側面図
【図7】第2実施例を示すロータリ耕耘装置一部の平面図
【図8】第3実施例を示すロータリ耕耘装置の側面図
【図9】第3実施例を示すロータリ耕耘装置一部の平面図
【図10】第4実施例を示すロータリ耕耘装置の側面図
【図11】第4実施例を示すロータリ耕耘装置の平面図
【図12】参考例を示すロータリ耕耘装置の側面図
【図13】参考例を示すロータリ耕耘装置の平面図
【符号の説明】
【0025】
1 ロータリ耕耘装置
2 トラクタ
10 耕耘軸
11 伝動ケース
21 支持フレーム
24 ディスク
25 藁類侵入防止体
25A 藁類侵入防止体
25B 藁類侵入防止体
25C 藁類侵入防止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘部の一側に耕耘軸(10)の一端側を支持し該耕耘軸(10)を回転連動する伝動機構を内装した伝動ケース(11)を設け、この伝動ケース(11)の前側に支持フレーム(21)を設け、この支持フレーム(21)に前端縁が後端縁に対して耕耘部外方に位置すべく平面視で傾斜し横軸回りに回転するディスク(24)を設け、このディスク(24)の回転中心近傍位置から伝動ケース(11)下端近傍位置に渡って棒状又は板体からなり前記支持フレーム(21)に支持され又は伝動ケース(11)下端側に支持される藁類侵入防止体(25,25A,25B,25C)を設けてなるロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−136385(P2008−136385A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324152(P2006−324152)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】