説明

ローラ、ローラ成形装置、ローラ成形用金型、ローラ製造方法、記録装置

【課題】ローラ外周面と端面の双方にゲートボスが形成されることを防止しながら、ローラ外周面の端部が高い樹脂圧によって膨らむことを防止する。
【解決手段】搬送従動ローラ35は、回転軸34を挿通させる軸穴35bが形成される内層36と、内層36の外側に形成されて用紙の記録面に接する外層37と、を備えて構成されている。内層36の回転軸線方向端面36aは、外層37の内部に位置しており、これによって内層36を樹脂成形する為の金型におけるゲートを、外層37の内部に配置することができ、また同様に外層37を樹脂成形する為の金型におけるゲートを、当該外層37の内部であって、搬送従動ローラ35の軸線方向中央寄りに配置することができる。これにより、ローラ端面にゲートボスが形成されず、またローラ端面に高い樹脂圧が掛かることによるローラ外周面端部の跳ね上がりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラ、並びにこれを備えた記録装置及び液体噴射装置に関する。また本発明は、前記ローラを成形する成形装置及び成形用金型並びにローラ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例としてのインクジェットプリンタを一例として説明する。インクジェットプリンタは、インクジェット記録ヘッドの上流側に被記録媒体の一例としての記録用紙を搬送する搬送手段を備えている。搬送手段は、回転駆動される駆動ローラと、当該駆動ローラに圧接して従動回転する従動ローラとを備えて構成されており、駆動ローラと従動ローラとによって記録用紙を挟圧しつつ駆動ローラが回転することにより、記録用紙がインクジェット記録ヘッドと対向する領域に搬送される。駆動ローラに圧接して従動回転する従来の従動ローラとしては、例えば特許文献1〜3に示されるものがある。
【0003】
ここで、従動ローラは記録用紙の記録面に強く圧接することから、ローラ外周面にバリ等が存在していると、記録面にローラ痕を付けてしまう虞がある。特に、従動ローラは外周面において軸方向の端部(角部)が鋭利に形成され易く、またバリが生じ易い。そこで、特許文献3記載の従動ローラは、軸方向中央部の外径を軸方向両端部の外径よりも大きく形成することで、鋭利に形成され易い軸方向両端部の記録用紙への接触を防止する様にしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−286348号公報
【特許文献2】特開平11−314789号公報
【特許文献3】特開2001−97593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従動ローラの成形用金型においては、特許文献3の図3にも示される様に金型ゲートがローラの回転軸線方向端面の一方側(以下では単に「ローラ端面」と言う)に配置される。これは、仮に金型ゲートをローラ外周面に配置すると、ゲートボス(突起)がローラ外周面に残り、これが記録面にダメージを与えるからである。
【0006】
しかしながら、金型ゲートをローラ端面に配置した場合には、ゲートボスがローラ端面に形成されることとなるので、当該ゲートボスが、従動ローラの回転軸線方向位置を規制する規制部材との間における摺動負荷を増大させ、円滑な回転が妨げられるといった問題があった。また、この様な問題を解消する為に、前記ゲートボスを除去するべく研磨等の2次加工が必要となる場合もあった。
【0007】
加えて、金型ゲート近傍は樹脂圧力が強いので、金型ゲートをローラ端面に配置しても、ローラ外周面の端部が外側(半径方向)に突出する様に跳ね上がり、この結果ローラ外周面の端部が記録面に強く接して記録面にダメージを与えるといった問題もあった。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑み成されたものであり、その目的は、ローラ外周面とローラ端面の双方にゲートボスが形成されることを防止しながら、ローラ外周面の端部が樹脂圧によって跳ね上がることを防止し、もって記録用紙の記録面に殆どダメージを与えることの無いローラを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の本発明の第1の態様は、回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであって、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避していることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、内層と外層の2層構造を有するローラにおいて、内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、外層の回転軸線方向端面より内側に退避しているので、内層を樹脂成形によって形成する際の金型ゲートを内層の回転軸線方向端面に配置しても、内層に残るゲートボスが外層の内側に形成されることとなり、ローラ端面には形成されない。また、外層を樹脂成形によって形成する際の金型ゲートを外層の内側に配置することができるので、外層に残るゲートボスも、当該外層の内側に形成されることとなり、ゲートボスがローラ外周面にもローラ端面にも形成されない。
【0011】
従ってローラ外周面とローラ端面のいずれにもゲートボスが形成されない様にすることが可能となり、被記録媒体の記録面にダメージを与えることが無く且つ回転に際してゲートボスにより摺動負荷が増大することも無い。また、金型ゲートをローラの回転軸線方向中央寄りに配置することができるので、ローラの回転軸線方向端部に大きな樹脂圧が生じることを防止でき、ローラ外周面の軸線方向端部が樹脂圧によって外側に跳ね上がることが防止され、記録面にダメージを与えることが無い。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のローラにおいて、前記回転軸が前記軸穴の内周面と接触する領域の回転軸線方向における位置が、前記ローラ外周面との関係において当該ローラ外周面の両端部領域を除く中央領域に位置することを特徴とする。
本態様によれば、前記回転軸が前記軸穴の内周面と接触する領域の回転軸線方向における位置が、前記ローラ外周面との関係において当該ローラ外周面の両端部領域を除く中央領域に位置するので、回転軸に荷重を加えることによりローラを被記録媒体に弾接させる際に、ローラ外周面の軸方向端部が被記録媒体に圧接しないか、または圧接してもその際の圧接力が小さくなる。即ち、被記録媒体にダメージを与えやすいローラ外周面の軸方向端部が被記録媒体に圧接しないか、または圧接してもその際の圧接力が小さくなることから、被記録媒体にダメージを与えず、記録品質の低下を防止することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際に用いるローラ成形装置であって、前記内層を形成する為の金型ゲートが、前記外層の内側に位置することとなる前記内層の回転軸線方向端面部分に配置されるとともに、前記外層を形成する為の金型ゲートが、前記外層の内側に配置されていることを特徴とする。本態様によれば、ローラ外周面とローラ端面のいずれにもゲートボスが形成されず、もって上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載のローラ成形装置において、前記外層を形成する為の金型ゲートは、前記外層の内側に位置する前記内層の回転軸線方向端面と対向する位置に配置され、前記外層を形成する為の金型ゲートから流れ込む樹脂が、前記ローラの半径方向に流れ、その後、前記ローラの回転軸線方向に流れる様に構成されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記外層を形成する為の金型ゲートから流れ込む樹脂が、前記ローラの半径方向に流れ、その後、前記ローラの回転軸線方向に流れる様に構成されているので、樹脂圧力によってローラ外周面の回転軸線方向端部に大きな樹脂圧が生じることを防止でき、ローラ外周面の軸線方向端部が樹脂圧によって外側に跳ね上がることをより確実に防止することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際の前記第1色目成形に用いるローラ成形用金型であって、金型ゲートが、前記外層の内部に位置することとなる前記内層の回転軸線方向端面部分に配置されていることを特徴とする。本態様によれば、内層に残るゲートボスがローラ端面に生じることを防止でき、もって回転の際にゲートボスが外側に露出することに起因して摺動負荷が増大することを防止できる。
【0017】
本発明の第6の態様は、回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際の前記第2色目成形に用いるローラ成形用金型であって、金型ゲートが、前記外層の内側に配置されていることを特徴とする。本態様によれば、外層に残るゲートボスが、ローラ外周面とローラ端面の双方に生じることがなく、従って被記録媒体の記録面にダメージを与えず、且つ回転の際にゲートボスが外側に露出することに起因して摺動負荷が増大することも防止できる。
【0018】
本発明の第7の態様は、回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラを2色成形によって製造するローラ製造方法であって、第1色目成形において、金型ゲートがローラ回転軸線方向端面部分に位置する様形成された金型を用いて前記内層を形成し、第2色目成形において、金型ゲートが前記内層の回転軸線方向端面と対向する様配置されるとともに前記内層の回転軸線方向端面が前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避する様形成された金型を用いて前記外層を形成することを特徴とする。本態様によれば、内層に残るゲートボス及び外層に残るゲートボスの双方が、ローラ外周面にもローラ端面にも発生せず、もって上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0019】
本発明の第8の態様は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、前記記録手段の上流側に設けられ、回転駆動される駆動ローラと、前記搬送駆動ローラに弾接して従動回転する、第1のまたは第2の態様に記載のローラと、を備えたことを特徴とする。本態様によれば、記録装置において、上記第1のまたは第2の態様と同様な作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図8を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明に係る「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一実施形態であるインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の側断面概略図、図2は紙案内上ユニット9の斜視図、図3(A)、(B)は本発明に係る「ローラ」としての搬送従動ローラ35の外観斜視図、図4は同回転軸線方向に平行な面で切断した断面図、図5は第1色目成形用の金型Assy100の断面図、図6は図5の部分拡大図、図7は第2色目成形用の金型Assy200の断面図、図8は図7の部分拡大図である。
【0021】
以下、図1を参照しつつプリンタ1の全体構成について概説する。プリンタ1は、装置後部にリア給送装置2を、装置底部にフロント給送装置3をそれぞれ備え、これら2つの給送装置から、搬送手段5へと「被記録媒体」或いは「被噴射媒体」としての記録用紙を給送する。記録用紙は搬送手段5によって記録手段4(記録ヘッド48)へと搬送され、記録が実行された後、排出手段6によって図示しないスタッカへと排出される。
【0022】
以下、用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。
リア給送装置2は、ホッパ12と、給送ローラ11と、リタードローラ13と、戻しレバー14と、更に図示しないその他の構成要素を備えている。
ホッパ12は板状体から成り、上部の揺動支点12aを中心に揺動可能に設けられ、揺動することにより、ホッパ12上に傾斜姿勢に支持された用紙Pを給送ローラ11に圧接させる圧接姿勢と、給送ローラ11から離間させる離間姿勢と、を切り換える。
【0023】
給送ローラ11は円形状を成し、回転することにより、圧接した最上位の用紙Pを下流側へ給送する。リタードローラ13は外周が弾性材によって形成されるとともに給送ローラ11と圧接可能に設けられ、且つ、トルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられていて、給送ロ−ラ11との間で用紙Pを挟圧することにより、用紙の重送を防止する。用紙戻しレバー14は、給送ロ−ラ11とリタードローラ13との間に滞留する用紙(重送されようとした次位以降の用紙)の先端をホッパ12上に戻す。
【0024】
一方、プリンタ1の底部に設けられ、用紙を装置前方からセットする様構成されたフロント給送装置3は、給紙カセット25と、ピックアップローラ26と、給送ローラ28と、分離ローラ29と、アシストローラ30と、を備えている。
図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラ26は、装置前方側から装着及び取り外し可能な給紙カセット25にセットされた用紙Pの最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを給紙カセット25から繰り出す。給送ローラ28は図示しないモータによって回転駆動され、給紙カセット25から繰り出された最上位の用紙Pを湾曲反転させて、紙案内後44を経て搬送駆動ローラ39へと給送する。
【0025】
給送ローラ28の外周面と対向する位置には、給送ローラ28に対して進退可能となるよう分離ローラ29が設けられており、給紙カセット25から最上位の用紙Pが繰り出される際には、給送ローラ28に圧接してニップ点を形成することにより、給送されるべき最上位の用紙Pに連られて給紙カセット25から繰り出された次位以降の用紙P先端を当該ニップ点近傍に留める。アシストローラ30は、給送ローラ28の外周面と接する様設けられており、用紙Pを給送ローラ28との間でニップすることにより、給送ローラ28の回転に伴う用紙Pの給送をアシストする。
【0026】
次に、リア給送装置2及びフロント給送装置3の下流側には、給送される用紙Pを搬送手段5へと案内する紙案内後44と、紙案内上ユニット9と、が設けられており、リア給送装置2及びフロント給送装置3によって給送される用紙Pは、紙案内上ユニット9と紙案内後44とによって搬送手段5へ案内される。尚、符号40は、リア給送装置2から給送される用紙Pの給送姿勢を形成するガイドローラを示している。
【0027】
搬送手段5は、モータによって回転駆動される搬送駆動ローラ39と、該搬送駆動ローラ39に圧接して従動回転するよう紙案内上43に軸支される搬送従動ローラ35とを備えて構成されている。搬送駆動ローラ39は用紙幅方向に延びる金属軸の外周面に耐摩耗性粒子がほぼ均一に分散されて成る付着層を備えて成され、搬送従動ローラ35は外周面がポリアセタール樹脂等の低摩擦材料によって成され、搬送駆動ローラ39の軸線方向に複数配設されている。
【0028】
搬送従動ローラ35を支持する紙案内ユニット9は、図2に示す様にサブフレ−ム8と、紙案内上43と、軸31と、2つのコイルばね32と、2つのコイルばね33と、回転軸34と、3つの搬送従動ローラ35と、を備えて構成されており、これら構成要素がアッセンブリされることにより、ユニット体としての紙案内上ユニット9が構成されている。
【0029】
紙案内上43は、軸31を介してサブフレ−ム8に対して揺動可能に設けられ、そしてこのサブフレーム8がメインフレ−ム7に取り付けられることにより、紙案内上43が用紙搬送経路を側視して揺動可能に設けられる。軸31は2つのコイルばね32のコイル部と、2つのコイルばね33のコイル部と、を挿通しており、2つのコイルばね32はサブフレ−ム8と紙案内上43との間で付勢力を発揮し、2つのコイルばね33はサブフレ−ム8と回転軸34との間で付勢力を発揮して、これら付勢力により搬送従動ローラ35が搬送駆動ローラ39に弾接する。
【0030】
図1に戻って、搬送手段5に到達した用紙Pは、搬送駆動ローラ39と搬送従動ローラ35とによってニップされた状態で搬送駆動ローラ39が回転することにより、下流側の記録手段4(記録ヘッド48)の側へと搬送される。
記録ヘッド48はキャリッジ46の底部に設けられ、当該キャリッジ46は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸47にガイドされながら、図示しない駆動モータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。また、キャリッジ46は、複数の色毎に独立したインクカートリッジ(図示せず)を搭載し、このインクカートリッジから記録ヘッド48へとインクが供給される。
【0031】
記録ヘッド48と対向する位置には用紙Pを下方から支持する紙案内前45が設けられ、当該紙案内前45によって、用紙Pと記録ヘッド48との間の間隔が規定される。
記録手段4の下流側には、紙案内前45からの用紙Pの浮き上がりを防止する補助ローラ57と、記録の行われた用紙Pを排出する排出手段6とが設けられている。排出手段6は図示しないモータによって回転駆動される排出駆動ローラ55と、当該排出駆動ローラ55に接して従動回転する排出従動ローラ56とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出駆動ローラ55と排出従動ローラ56とによってニップされた状態で排出駆動ローラ55が回転駆動されることにより、装置前方側に設けられた図示しないスタッカへと排出される。
【0032】
以上がプリンタ1の概要であり、以下図3乃至図8を参照しながら搬送従動ローラ35とその製造方法及び金型構造について詳説する。
搬送従動ローラ35は、図3(A)、(B)及び図4に示す様に回転軸34を挿通させる軸穴35bが形成される内層36と、当該内層36の外側に形成されて用紙に接する外層37とを備えて構成されている。
【0033】
搬送従動ローラ35の外周面35a(外層37の外周面)は、回転軸線に平行なストレート部Xと、当該ストレート部Xを挟んで、ローラ端部に向かって縮径する様形成される傾斜部X、Xとによって構成される。ここで、搬送従動ローラ35の金型からの抜き方向が図4の上方向であるので(詳細は後述)、傾斜部Xは、傾斜度合いが傾斜部Xよりも緩やかなアンダーカット形状となっている。
【0034】
内層36は、回転軸線方向端面の少なくとも一方側(符号36aで示す端面)が外層37の内側(内部)に位置し、換言すれば端面36aが外層37の端面37aより内側に退避することによって凹部35cが形成された状態となっている。これにより、紙案内上43(図2)によって回転軸線方向の移動が規制される面は、図4の上側において外層37の端面37aとなり、図4の下側において内層36の端面36bとなる。
【0035】
また、内層36において外層37の内側に位置する端面36aに対し反対側の端面36bの側には、軸穴35bよりも径の大きい大径部35dが形成されている。従って搬送従動ローラ35が紙案内上43に支持されるとともに搬送駆動ローラ39に向けて付勢された状態において、軸穴35bを挿通する回転軸34は、搬送従動ローラ35の回転軸線方向両側において逃げ部が形成された状態となっている。これにより、回転軸34が軸穴35bの内周面と接触する領域の回転軸線方向における位置が、ローラ外周面35aとの関係において、ローラ外周面35aの両端部領域を除く中央領域に位置することとなる。従ってローラ外周面35aの軸方向端部が用紙記録面に圧接する(片当たりする)ことを防止でき、ローラ外周面35aの軸方向端部により用紙記録面にダメージを与える不具合がより一層確実に防止される。
【0036】
加えて、搬送従動ローラ35は複数の層(本実施形態では、2層)によって形成されるので、各々の層の肉厚を抑えつつ、ローラ全体として外径を大きくすることができる。即ち、各々の層の肉厚を抑えることで、成形品としての搬送従動ローラ35の幾何特性(真円度、円筒度、円周振れ、等)の悪化を抑えることができるので、従動回転時における回転抵抗(軸損)のばらつきを抑えることができ、即ち用紙搬送精度の低下を防止することができる。
【0037】
更に加えて、成形品の幾何特性を良好に維持しつつローラ外径を大きくすることができるので、従動回転時の回転抵抗自体を小さくすることができ、用紙間とのスリップを防止することができるとともに、用紙後端が搬送駆動ローラ39と搬送従動ローラ35とのニップ点から抜ける際の蹴飛ばし現象を軽減させることが可能となる。
【0038】
次に、この様な搬送従動ローラ35は、例えば2色成形の第1色目によって内層36を形成し、第2色目によって外層37を形成することができる(詳細は後述)。ここで、内層36と外層37に用いる樹脂としては、例えばPOM(ポリアセタール樹脂)を用いることができるが、特に内層36に、外層37よりも成形後の摩擦係数が低い材料を用いることにより、回転軸34と内層36との間の摩擦による抵抗(軸損)が軽減されて、より一層円滑に用紙を搬送することができる。その様な内層36の材料として、例えば旭化成ケミカルズ(株)製のLZ750(グレード名)を用いたところ、良好な結果が得られた。
【0039】
次に、外層37の外周面の硬度が高すぎると、用紙記録面との間の接触面積が小さくなり過ぎ、その結果帯状のローラ痕(圧接痕)を形成し易くなる。従って、外層37の外周面の硬度は、極力小さいほうが望ましい。その様な外層37の材料として、例えばポリプラスチックス(株)製のSX−35(グレード名)を用いたところ、良好な結果が得られた。
【0040】
続いて、搬送従動ローラ35を成形する際の金型構造について説明する。図5乃至図8に示す金型は2色成形の可能な射出成形装置(図示せず)に用いる金型を示しており、図5の符号100は第1色目成形(1次成形)を行う際の金型Assyを示し、図7の符号200は第2色目成形(2次成形)を行う際の金型Assyを示している。
【0041】
金型Assy100は、固定側の上型(キャビティ)101と、可動側の下型(コア)102とを備えて成り、下型102が上型101に対し進退可能に構成されているとともに、回転することで図7に示す様に第2色目成形を行う為の固定側の上型201と対向可能になっていて、第2色目成形を行う際には、上型201と下型102とにより金型Assy200が構成される。
【0042】
金型Assy100、200は平面視略円形の形状を成し、金型Assy100においては内層36を形成する為のキャビティ107が複数個(例えば、12個)円周方向に沿って形成され、金型Assy200においては外層37を形成する為のキャビティ207が同様に複数個(例えば、12個)円周方向に沿って形成される。
【0043】
下型102には型ベース110に摺動可能なスリーブ112が設けられている。またスリーブ112の内部にはセンターピン113が摺動可能に貫通している。センターピン113の先端に形成された嵌合凸部113aは、型104に形成された嵌合凹部104aに嵌合し、これによりキャビティ107が精度良く区画される。センターピン113bにはアンダーカット部113bが形成されており、これにより、型開きした際に内層36が上型101に付随して持って行かれることが防止される。尚、入れ子111の上部は入れ子114による分割構造となっており、これにより成形時に発生するガスが下方向に抜ける様になっている。
【0044】
上型101には型ベース103に型104が嵌合しており、型104には、溶融樹脂の充填路105と、ゲート106とが形成されている。ゲート106は、内層36の端面36aが形成される位置に設けられており、充填路105は、ゲート106に向かってほぼ垂直方向に沿って真っ直ぐに延びている。
【0045】
一方、第2色目成形に用いる上型200には、型ベース203に型204が嵌合しており、型204には、溶融樹脂の充填路205と、ゲート206とが形成されている。充填路205はゲート206に向かって垂直方向に対しやや傾斜角を形成する様に延び、ゲート206は、内層36の端面36aと対向する位置に設けられ、これによって溶融樹脂は一端半径方向に流れ、その後、回転軸線方向に流れることとなる。
【0046】
以上の様な金型構造により、金型Assy100によって第1色目成形を行い、内層36を形成した後、型開きを行って下型102を回転させ、金型Assy200を構成する。そして第2色目成形を行い、外層37を形成した後、型開きを行い、スリーブ112を上方に押し上げることにより、成型品がセンターピン113から外れ、下型102から上方に取り出される。
【0047】
以上の様な搬送従動ローラ35の構造、および金型構造により、以下の様な作用効果が奏される。即ち、内層36の端面36aが外層37の端面37aより内側に退避するので、内層36を形成する際のゲート106を、図6に示した様に外層37の端面37aより内側に配置することができる。従って仮にゲートボスが生じた場合でも、当該ゲートボスは搬送従動ローラ35のローラ端面には発生しない。尚、本実施形態では内層36を形成する際に生じたゲートボスは、外層37の溶融樹脂により覆われることとなる。
【0048】
また、外層37を形成する際のゲート206も同様に、外層37の内部に配置することができるので、外層37に残るゲートボスも、図4の符号37cで示す様に外層37の内部に配置することができる。従ってゲートボスが搬送従動ローラ35の外周面にもローラ端面にも発生しない。
【0049】
従ってローラ外周面35aが用紙記録面にダメージを与えることが無く且つ回転に際してゲートボスにより紙案内上43との間で摺動負荷が増大することも無い。また、ゲート106、206を搬送従動ローラ35の軸線方向端部ではなく、中央寄りの位置に配置することができるので、搬送従動ローラ35の軸線方向端部に大きな樹脂圧が生じることを防止でき、ローラ外周面35aの軸線方向端部が樹脂圧によって外側に跳ね上がることが防止され、記録面にダメージを与えることが無い。
【0050】
以上説明した搬送従動ローラ35の構造や金型構造は一例であり、内層36のゲートボスがローラ端面に発生せず、且つ外層37のゲートボスがローラ外周面及びローラ端面のいずれにも発生しない様なローラ構造、或いは金型構造であれば、どのようなものであっても構わない。
【0051】
また、以上説明した実施形態では、本発明に係るローラを記録装置の一例としてのインクジェットプリンタに適用した例で説明したが、記録装置に限らず液体噴射装置全般に適用することが可能である。ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0052】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るプリンタの側断面概略図。
【図2】紙案内上ユニットの斜視図。
【図3】(A)、(B)ともに搬送従動ローラの外観斜視図。
【図4】搬送従動ローラを回転軸線方向に平行な面で切断した断面図。
【図5】第1色目成形用の金型Assyの断面図。
【図6】図5の部分拡大図。
【図7】第2色目成形用の金型Assyの断面図。
【図8】図7の部分拡大図。
【符号の説明】
【0054】
1 インクジェットプリンタ、2 リア給送装置、3 フロント給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、7 メインフレーム、8 サブフレーム、9 紙案内上ユニット、11 給送ローラ、12 ホッパ、13 リタードローラ、14 戻しレバ−、25 給紙カセット、26 ピックアップローラ、28 給送ローラ、30 アシストローラ、31 軸、32、33 コイルばね、34 回転軸、35 搬送従動ローラ、35a ローラ外周面、35b 軸穴、35c 凹部、35d 大径部、36 内層、36a、36b 端面、37 外層、37a、37b 端面、39 搬送駆動ローラ、40 ガイドローラ、43 紙案内上、44 紙案内後、45 紙案内前、46 キャリッジ、47 キャリッジガイド軸、48 記録ヘッド、55 排出駆動ローラ、56 排出従動ローラ、57 補助ローラ、100 (第1色目成形用)金型Assy、101 上型(固定側金型)、102 下型(可動側金型)、103 型ベース、104 型、104a 嵌合凹部、105 充填路、106 ゲート、107 キャビティ、110 ベース、111 入れ子、112 スリーブ、113 センターピン、113a 嵌合凸部、114 入れ子、200 (第2色目成形用)金型Assy、201 上型、203 型ベース、204 型、204a 嵌合凹部、205 充填路、206 ゲート、207 キャビティ、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、
前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであって、
前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避していることを特徴とするローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のローラにおいて、前記回転軸が前記軸穴の内周面と接触する領域の回転軸線方向における位置が、前記ローラ外周面との関係において当該ローラ外周面の両端部領域を除く中央領域に位置することを特徴とするローラ。
【請求項3】
回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際に用いるローラ成形装置であって、
前記内層を形成する為の金型ゲートが、前記外層の内側に位置することとなる前記内層の回転軸線方向端面部分に配置されるとともに、
前記外層を形成する為の金型ゲートが、前記外層の内側に配置されている、
ことを特徴とするローラ成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の前記ローラ成形装置において、前記外層を形成する為の金型ゲートは、前記外層の内側に位置する前記内層の回転軸線方向端面と対向する位置に配置され、
前記外層を形成する為の金型ゲートから流れ込む樹脂が、前記ローラの半径方向に流れ、その後、前記ローラの回転軸線方向に流れる様に構成されている、
ことを特徴とするローラ成形装置。
【請求項5】
回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際の前記第1色目成形に用いるローラ成形用金型であって、
金型ゲートが、前記外層の内部に位置することとなる前記内層の回転軸線方向端面部分に配置されている、
ことを特徴とするローラ成形用金型。
【請求項6】
回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラであり、前記内層の回転軸線方向端面の少なくとも一方側が、前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避している、その様なローラの前記内層を2色成形の第1色目成形によって形成し、前記外層を第2色目成形によって形成する際の前記第2色目成形に用いるローラ成形用金型であって、
金型ゲートが、前記外層の内側に配置されている、
ことを特徴とするローラ成形用金型。
【請求項7】
回転軸を挿通させる軸穴が形成される内層と、前記内層の外側に形成されて被記録媒体に接する外層と、を備えて構成され、被記録媒体に記録を行う記録装置における被記録媒体の搬送経路に設けられるローラを2色成形によって製造するローラ製造方法であって、
第1色目成形において、金型ゲートがローラ回転軸線方向端面部分に位置する様形成された金型を用いて前記内層を形成し、
第2色目成形において、金型ゲートが前記内層の回転軸線方向端面と対向する様配置されるとともに前記内層の回転軸線方向端面が前記外層の回転軸線方向端面より内側に退避する様形成された金型を用いて前記外層を形成する、
ことを特徴とするローラ製造方法。
【請求項8】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録手段の上流側に設けられ、回転駆動される駆動ローラと、
前記搬送駆動ローラに弾接して従動回転する、請求項1または2に記載の前記ローラと、
を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−44753(P2008−44753A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223359(P2006−223359)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】