説明

ローラおよび画像形成装置

【課題】分離作業性に優れたローラを提供する。
【解決手段】ローラ軸芯151と、ローラ軸芯151の一方の端部に装着され、その軸方向に沿って摺動可能なギヤ153と、少なくともギヤ153が装着されている端部を残してローラ軸芯151の周面を被覆するローラ外皮152とを備え、ギヤ153には、刃部153hが設けられており、ギヤ153のローラ外皮152が存する方向への摺動に伴って、刃部153hが、ローラ外皮152の端部と当接してローラ外皮152を切り裂いていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラおよび画像形成装置に関し、特に、ローラの軸芯の周面に設けられたゴムなどのローラ外皮を剥離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムなどの外皮が軸芯の周面に設けられたローラは、様々な装置に用いられており、例えば、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、定着ベルトを駆動する駆動ローラや、用紙を加熱しながら加圧してトナーを定着する定着ローラなどに用いられている。
これらのローラは、いずれもゴムなどの弾性部材がローラ外皮として軸芯の外周を被覆した構成となっており、当該ローラ外皮が経時的に劣化するため、画像形成装置の耐用年数内であっても、ローラを幾度か交換する必要がある。
【0003】
ローラの交換により不要となったローラは、リサイクルのために軸芯とローラ外皮とに分離されることになるが、コスト低減の観点からこの分離作業を効率的に行うのが望ましい。
この点、例えば、特許文献1には、図11に示すように、軸芯1121の表面の長手方向に刻設された溝部1122に長尺な帯状カッタ1123を埋設すると共に、当該帯状カッタ1123の両端を残して、軸芯1121の外周をローラ外皮1124で被覆した構成が開示されている。
【0004】
上記のローラにおいてローラ外皮1124の分離作業を行う場合には、帯状カッタ1123の一方の端部1123aを指で摘んで持ち上げて、ローラ外皮1124を端から徐々に切り裂くようになっている。
【特許文献1】特開平08−22164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に示される構成のローラでは、帯状カッタ1123の一方の端部1123aを持ち上げてローラ外皮1124を切り裂く際に、当該端部1123aが小さくて摘みにくい上、切断開始時においては、帯状カッタ1123とローラ外皮1124との接触面積が大きいため、これを持ち上げるために大きな力が必要であり、作業効率が良いとは言えない。
【0006】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、ローラ外皮の分離作業性に優れたローラおよび画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のローラは、ローラ軸芯と、ローラ軸芯の一方の端部に装着され、その軸方向に沿って摺動可能な摺動部材と、少なくとも前記摺動部材が装着されている端部を残してローラ軸芯の周面を被覆するローラ外皮とを備え、前記摺動部材には、刃部が設けられており、摺動部材のローラ外皮方向への摺動に伴って、前記刃部が、前記ローラ外皮の端部と当接して前記ローラ外皮を切り裂いていくことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
上記ローラをシート搬送経路上のローラとして用いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、ローラ軸芯の一方の端部に装着されている摺動部材をローラ軸芯に沿って摺動させるだけで、摺動部材に設けられた刃部によりローラ外皮を容易に切り裂くことができ、また、従来の帯状カッタをローラ軸芯に埋設する方式のように切り裂き開始時における帯状カッタとローラ外皮との接触面積が大きくなく、かつ、他方の端部に到達するまでほぼ一定であるため、切り裂くために必要な力が少なくて済み、分離作業性が向上する。
【0010】
また、上記画像形成装置は、上記構成のローラを備えるため、当該ローラをリサイクルする際に、上記と同様の効果を奏することができる。
ここで、前記摺動部材は、前記ローラ軸芯に外挿される円筒状のボス部を有し、前記ボス部のローラ外皮側端面の外周縁が面取りされると共に、前記刃部は、ボス部周面に立設され、かつ、前記ローラ外皮の摺動部材側端部の内周面には、摺動部材側に向かって開くテーパ-面が形成されており、前記摺動部材の摺動に伴って、前記ボス部の面取り部が、前記ローラ外皮のテーパ面に侵入してこれを広げるように作用し、これによりローラ外皮が前記ボス部周面に立設された刃部に当接して切り裂いていくように構成されるとしてもよい。
【0011】
上記構成により、摺動部材が摺動したときに、ボス部の面取り部によってローラ外皮のテーパ面が押し広げた状態となっているところに刃部が切れ目を入れるため、ローラ外皮を簡単に切り裂くことができる。
また、ここで、前記刃部は、その刃の稜線をローラ軸芯方向に投影したときに、当該ローラ軸芯の軸方向に対し所定の角度だけ傾くように配設されており、前記摺動部材をローラ軸芯に対し回転させながら軸方向に摺動させることによりローラ外皮が切り裂かれる構成であるとしてもよい。
【0012】
これにより、ローラ外皮を螺旋状に切り裂くことができ、切り裂かれたローラ外皮をローラ軸芯の径方向へと送り出すことが可能となるので、摺動部材の移動を妨げることがなくなり、よりスムーズにローラ外皮を切り裂くことができる。
さらに、ここで、前記摺動部材は、前記ローラ軸芯に外挿される円筒状のボス部と、当該ボスの周面に放射状に立設された複数本のアームと、当該アームを介して前記ボス部に対し同心円上に保持される環状体とを有し、前記刃部は、前記複数のアームのうち少なくとも一つのアームに形成されているとしてもよい。
【0013】
これにより摺動部材が、ギヤやプーリなど環状体を備えた部品である場合には、その環状体を保持するアームに刃部を設けるだけでよいので、構成を簡単にできる。
ここで、また、前記複数のアームの全てに刃部が形成され、摺動部材の摺動動作に伴って前記刃部により短冊状に切り裂かれたローラ外皮が、隣接するアーム間の隙間を通過するように構成されるとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、切り裂かれた短冊状のローラ外皮が、アーム間の隙間を通り抜けていくことができるので、摺動部材の移動が妨げられず、スムーズにローラ外皮を切り裂くことができる。
さらに、ここで、前記環状体の径より小さい円筒状の部材が、前記ボスと同心円上であって、かつ、前記刃部を覆う位置に設けられている構成であってもよい。
【0015】
これにより、作業者が誤って刃部に触れることを防止することができる。
また、ここで、前記摺動部材が、前記ローラ軸芯の軸方向に移動しないように規制する位置規制手段を備え、当該位置規制手段による位置規制を解除してから、摺動部材を摺動させてローラ外皮を切り裂くように構成されてもよい。
これにより、ローラ使用時に不用意に摺動部材が摺動して、ローラ外皮を傷つけることが防止される。
【0016】
さらに、ここで、前記ローラ軸芯の径方向から前記刃部を覆う遮蔽体を備えるとしてもよい。
これにより、作業者が誤って刃部に触れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るローラおよび画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係るローラを用いた画像形成装置の構成について、タンデム型カラーデジタルプリンタを例にして説明する。
【0018】
図1は、当該タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)の全体の構成を示す断面概略図である。
同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着部5および制御部6を備えており、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0019】
以下では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
画像プロセス部3は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部3Y,3M,3C,3K、光学部10、中間転写ベルト11などを備えている。
作像部3Yは、感光体ドラム31Y、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラ34Y、感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを備えており、感光体ドラム31Yの表面にY色のトナー像が作像される。
【0020】
他の作像部3M〜3Kについても、作像部3Yと同様の構成になっており、同図では、符号を省略している。
光学部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、感光体ドラム31Y〜31Kを露光するためのレーザ光Lを出射する。
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
【0021】
給紙部4は、記録シートとしての用紙Sを収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙Sを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された用紙Sを二次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対44と、二次転写ローラ45などを備えている。
定着部5は、磁束発生部170と、当該磁束発生部170の近傍に回転自在に配されて誘導加熱される筒状の定着ローラ150と、バネなどを用いた不図示の加圧機構によって定着ローラ150に圧接される加圧ローラ160とを備える。
【0022】
加圧ローラ160は、不図示のモータにより回転駆動され、定着ローラ150と加圧ローラ160間に形成されたニップ部を用紙Sが通過することにより、用紙S上に形成されたトナー像Tが加熱溶融されると共に加圧されて定着される。
なお、定着ローラ150の周面には、当該ローラの表面に付着した用紙Sを分離してジャムを防止する分離爪180が設けられている。
【0023】
制御部6は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、光学部10の発光素子を駆動させるための駆動信号を生成する。
光学部10は、制御部6からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、感光体ドラム31Y〜31Kを露光走査する。
この露光走査により、帯電器32Y〜32Kにより帯電された感光体ドラム31Y〜31K上に静電潜像が形成される。
【0024】
各静電潜像は、現像器33Y〜33Kにより現像されて感光体ドラム31Y〜31K上にY〜K色のトナー像が形成される。
各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行され、一次転写ローラ34Y〜34Kによる静電力を受けて中間転写ベルト11上に多重転写されフルカラーのトナー像が形成される。
【0025】
一方、中間転写ベルト11上への作像のタイミングに合わせ、給紙部4からタイミングローラ対44を介して用紙Sが二次転写位置46に搬送されて来ており、二次転写ローラ45による静電力を受けて中間転写ベルト11上のトナー像が一括して用紙S上に二次転写される。
その後、定着部5において用紙S上のトナー像が定着され、排出ローラ対71を介して排出トレイ72上に排出される。
【0026】
なお、プリンタ1における駆動路ローラ12や従動ローラ13、タイミングローラ44などの各種ローラは、リサイクルに際し、その軸芯とローラ外皮が容易に分離できるように構成されており、以下では、駆動ローラ12について、その構成を説明する。
(2)駆動ローラ12の構成
図2は、駆動ローラ12の斜視図である。
【0027】
同図に示すように駆動ローラ12は、ローラ軸芯151と、その周面を被覆するローラ外皮152と、ローラ軸芯151の一端部に装着されたギヤ153と、ギヤ153をローラ軸芯151に対して位置決めするEリング154及び平行ピン155などを備え、ギヤ153のボス部153aの周面には、一対の刃付きリブ(次の図3(a)参照。この刃付きリブを以下、「ソードリブ」という。)153eが立設されている。
【0028】
ローラ軸芯151は、例えば、アルミニウムなどの金属製である。
また、ローラ外皮152は円筒状の弾性体であり、ローラ軸芯151に外嵌されている。
上記弾性体の材料としては、ゴム材料や樹脂材などが使用され、耐久性を考慮するとシリコンゴムまたはフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーなどが望ましい。
【0029】
ギヤ153は、例えば、ポリオキシメチレン(POM)からなる一体成形品であり、環状の歯部153bが、放射状に伸びるアーム153dを介して円筒状のボス部153aにより同心円上に保持される構成となっている。
図3(a)は、図2における駆動ローラ12をY方向から見た部分拡大図であり、説明の便宜上、Eリング154を取り外している。また、図3(b)は、図3(a)におけるA−A’断面図を示す。
【0030】
図3(a)に示すように、1対のソードリブ153eは、ボス部153aの周面の軸対称な位置に立設されており、それぞれボス部153a端面の外周縁部からX’方向へ向かって背が高くなるように傾斜した鋭利な刃部153hが形成されている。
この刃部153hは、その稜線をローラ軸芯151に投影したときに当該ローラ軸芯151の軸と平行になるように形成されている。
【0031】
刃部153hは、ローラ外皮152を切り裂くためのものであり、ローラ外皮152よりも硬度が高い材料が使用されている。
本実施の形態では、ソードリブ153eはギヤ153と一体成型されているので、当該ギヤ153の材料自体を硬度の高い材料で成型するか、もしくは低硬度の材料にフィラーなどを添加することにより硬度を高めるようにすればよい。
【0032】
また、ボス部153aのローラ外皮152側の端面の外周縁部には面取り部153gが形成されると共に、ローラ外皮152のボス部153a側の端部内周縁部には、図3(b)の断面図に示すように外側に向かって開くテーパ面152aが形成されている。
今、ローラ軸芯151の径をD0、軸芯ボス部の面取り部153gの最小径をD1とし、テーパ面152aの最大径をD2とした場合に、D0<D1<D2となるように設定されており、ローラ外皮152を分離するために、ボス部153aをX方向に摺動させたとき、面取り部153gがテーパ面152aとローラ軸芯151との隙間に侵入し、ローラ外皮152が、ボス部153aの周面に乗り上げて、ソードリブ153eで切り裂きやすいように構成されている。詳しくは後述する。
【0033】
ギヤ153はローラ使用時においては、ローラ軸芯151の端部に位置決めされる。
そのため、ローラ軸芯151には、平行ピン155をその端部155aを残して収容するピン穴151bが設けられると共に、ボス部153aの内周面には、長溝251aが刻設されている。
これにより平行ピン155の端部155aが、長溝251aのX側の内側面に当接して、ボス部153aがそれ以上X’方向に移動しなにように規制すると共に、ボス部153aが、ローラ軸芯151に対して空回りしないように規制し、ギヤ153へ伝えられた駆動力がローラ軸芯151に確実に伝達されるようになっている。
【0034】
また、長溝251aのX’側の端部には開口部251bが設けられ、当該開口部251bを介して平行ピン155が抜け出るように構成される。
一方、ローラ軸芯151に形成された環状溝122にEリング154を嵌め込むことにより、ギヤ153がX方向に移動しないように規制される。
(3)ローラ外皮152の分離作業の手順
以上のように構成された駆動ローラ12において、リサイクルのためにローラ外皮152をローラ軸芯151から分離する作業について説明する。
【0035】
まず、図3(b)に示すように、(I)Eリング154を無端溝122から取り外して、ギヤ153のX方向の位置規制を解除する。
そして、(II)ギヤ153をX方向に移動させ、図3(c)に示すように、平行ピン155の端部155aの真下に開口部251bを移動させて、(III)この開口部251bから平行ピン155を落下させる。
【0036】
これにより、ギヤ153のX軸方向への移動が自由になると共に、ギヤ153のボス部153a及びローラ軸芯151間での周方向における動きも自由になる。
(IV)ギヤ153をさらにX方向に移動させ、ボス部153aの面取り部153gとローラ外皮152のX’方向側端部とを当接させる。
このとき、図3(b)に示すように、ローラ外皮152のX’方向側の先端の内径D2が、ボス部153aの先端の外径D1よりも大きくなっているため、ボス部153aの面取り部153gが、ローラ外皮152のテーパ面152aに侵入してこれを押し広げる。
【0037】
これにより、ローラ外皮152の端部がボス部153aの端部に乗り上げたような状態になって、その周方向における張力が増大し、ボス部153aの周面に立設された2つの刃部153hがローラ外皮152の端部に当接して2箇所に切れ目を入れると、上記張力がこれら切れ目を拡大する方向に力が作用するので、ローラ外皮152を簡単に切り裂くことができる。
【0038】
図4に示すように、さらにX方向にギヤ153を進行させると、ローラ外皮152の2つに切り裂かれた部分は、アーム153dの手前の面に沿って外方へと導かれる。
このように本実施の形態においては、駆動ローラ12に取着されているギヤ153のボス部153aに刃部153hを形成し、リサイクル時にギヤ153の位置規制を解除して、ローラ軸芯151に沿って摺動させることにより、ローラ外皮152を容易に切り裂いて分離することができる。
【0039】
しかも、ローラ外皮152と刃部153hの接触面積は、たかだか、ローラ外皮152と刃部153hの稜線とが重なる部分に限られるので、切り裂くために必要な力はそれほど大きくなく、切り始めからその最後に至るまで、ほぼ一定の力でスムーズに切り裂くことができる。
(4)変形例
以上、本発明に係るローラおよび画像形成装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施の形態に限られないことは勿論である。
【0040】
(a)上記実施の形態では、ギヤ153は、1対のソードリブ153eを有するように構成したが、ソードリブの数はこれに限らず、1つであってもよく、反対に3つ以上であってもよい。
複数の刃部を有する場合には、それらがボス部153aの周方向に等間隔に配設されることが望ましい。
【0041】
これにより切り裂き時に各刃部がローラ外皮から受ける反力が均等になって、ボス部を摺動させやすいと考えられるからである。
(b)また、アーム153dとは別個にソードリブ153eを形成せずに、図5に示すようにアーム153dのボス部153a側の根元部分に刃部253hを形成するようにしても構わない。
【0042】
このようにすれば、もともとギヤの構成要素であるアームの一部を刃部に兼用することができるので、使用する材料を少なくでき、部品コストが低減する。
なお、この場合でも刃部の個数は限定されないが、図6に示すようにアーム453dの全てに刃部453eを設ければ、図7に示すようにこれらの刃部453eにより切り裂かれた短冊状のローラ外皮152cが、隣接するアーム間の隙間453fを通り抜けるため、ギヤの摺動動作をスムーズに行うことができ、より効率的な分離作業が可能となる。
【0043】
(c)上記実施の形態においては、ソードリブ153eの刃部153hの稜線をローラ軸芯151に投影したときに軸芯と平行になるように形成したが、図8に示すように、刃部153hの稜線をローラ軸芯151へ投影した場合に、当該ローラ軸芯151の軸方向に対して所定の角度だけ傾くように刃部353hを配したソードリブ353eを形成しても構わない。
【0044】
その場合、このソードリブ353eが設けられたギヤ353は、本実施の形態の駆動ローラ12と同様の位置規制解除操作を行なった後、刃部353hの先端部353fが向いている方向に回転させると共に、ローラ外皮152側へと移動させることで、ローラ外皮152を螺旋状に切り裂いていく。
このようにローラ外皮152を螺旋状に切り裂けば、切り裂かれたローラ外皮152は、ローラ軸芯151の径方向へと自然に送り出されるため、スムーズに切り裂くことができる。
【0045】
上記所定角度の大きさは、0°を超え90°未満であれば、一応螺旋状に切り裂く効果があり、この範囲内で適当な値を採用してよいが、当該角度が大きすぎると切り裂く距離が長くなって、却って作業効率が低下すると考えられるので、この観点から30°程度であるのが望ましい。
なお、本変形例では、切り裂かれたローラ外皮がギヤ153の外方へと、よりスムーズに案内されるように、ギヤ353のローラ外皮152側の面が平坦部353cとなっている方が望ましい。
【0046】
(d)また、ソードリブ153eの刃部153hに誤って手などが触れないように、図9に示すように、歯部553bよりも径の小さな円筒部材553fを、ボス部153aと同心円上であって、ソードリブ153eをギヤ553の径方向から覆うようにしてアーム553dで保持するようにしてもよい。
このようにすることで、ギヤ553を用いたローラをメンテナンス等で装置内から取り外す際においても、安全に作業を実施することができる。
【0047】
なお、従動ローラの場合には、ギヤの機能は不要なので、歯部553bを含めアームの円筒部材553fより外側の部分は必要ない。
また、上記円筒部材553fのようにローラ側に保護壁を設ける代わりに、プリンタ1本体側に保護壁を設けるようにしてもよい。
例えば、図10に示すように、駆動ローラ12を不図示のベアリングにより装置本体のフレームに軸支させた状態で、ボス部153aもしくはローラ軸芯151の径方向から刃部153hを覆う保護壁としての筒状部材601を、装置のフレームに600に設けることも可能である。
【0048】
なお、本例の場合この保護壁は必ずしも筒状である必要はなく、少なくとも作業者のいる側から指などが刃部153h側に入らない形状の遮蔽体でありさえすればよい。
(e)上記実施の形態では、駆動ローラ12について、ローラ軸芯に摺動可能に装着される部材がギヤである場合について説明したが、駆動力伝達用の部材としてプーリが取着されている場合には、当該プーリが摺動部材として兼用され、上記と同様な刃部が設けられる。
【0049】
また、駆動力伝達用の部材とは別に、リサイクル専用の摺動部材を設け、刃部を設置しても、分離作業性の向上の目的は達成できる。
また、従動ローラの場合には、ギヤやプーリなどの駆動伝達用の部材が取着されていないので、刃部を有する摺動部材のみが取着されることになる。
これらの場合には、当該摺動部材は、上記ボス部のような形状に限らず、ローラ軸芯をその軸方向に沿って摺動可能な形状であれば、特に限定されるものではない。
【0050】
(f) また、上記実施の形態では、ギヤ153及びローラ軸芯151間の周方向における位置規制を行うために、平行ピン155やボス部153aの内周に配された長溝251aおよびEリング154などを用いて、ローラ使用中はギヤ153がローラ軸芯151間の周方向および軸方向に移動しないようにしたが、位置規制のための手段はこれに限らず、他の公知の手段が採用されてもよいのは言うまでもない。
【0051】
例えば、位置合わせした状態でボス部153aとローラ軸芯151を貫通するピン孔を設け、これに割りピンを差し込んで、位置規制するようにしても構わない。
ギヤやプーリ以外の刃付きの摺動部材を別途設ける場合には、特に周方向の移動を規制しなくてもよいので、軸方向のみの位置規制部材であっても構わないし、装置本体に取付けたときに摺動部材の端面の一部又は全部に当接してこれが軸方向に移動しないように規制する部材を装置本体側に設けておけば、特にローラ側に位置規制部材を設ける必要がない場合もあり得る。
【0052】
(g)上記実施の形態では、ローラ外皮は、ローラ軸芯151に外嵌されているとしたが、さらに接着等で固定するようにしても構わない。
その場合、切り裂かれたローラ外皮を手で容易に剥離することができる程度に、接着強度を調整することが望ましい。
(h)上記実施の形態では、中間転写ベルトの駆動ローラについて、リサイクル時の分離作業が容易な構成を説明したが、これに限らず給紙ローラや帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラなど、およそシート搬送上に配設されたローラについて適用可能であり、また、このようなローラを使用した画像形成装置であれば、タンデム式のフルカラープリンタに限らず、モノクロのプリンタであってもよいし、複写機、ファクシミリ装置、およびこれの複数の機能を有する複合機であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ローラ軸芯の周囲に弾性体を被覆したローラおよびこれを使用する画像形成装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態の画像形成装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】本実施の形態の駆動ローラの構成例を示す斜視図である。
【図3】(a)は、図2において、Y’矢視で駆動ローラを見たときのX’方向側端部の部分拡大図であり、(b)は、図2において、XY平面により駆動ローラを軸芯の中心軸でカットしたときのX’方向側端部の断面図であり、(c)は、ギヤを軸芯の軸方向に移動させて、平行ピンを脱抜可能な状態となったX’方向側端部の断面図である。
【図4】本実施の形態の駆動ローラのローラ外皮の分離作業の状況を示す図である。
【図5】本実施の形態の駆動ローラの第1変形例を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態の駆動ローラの第2の変形例を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態の駆動ローラの第3の変形例を示す斜視図である。
【図8】本実施の形態の駆動ローラの第4の変形例におけるローラ外皮の分離作業状況を示す図である。
【図9】本実施の形態の駆動ローラの第5の変形例を示す斜視図である。
【図10】本実施の形態の画像形成装置の変形例を示す斜視図である。
【図11】従来のローラの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 プリンタ
3 画像プロセス部
3Y,3M,3C,3K 作像部
4 給紙部
5 定着部
6 制御部
10 光学部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
31 感光体ドラム
32 帯電器
33 現像器
34 一次転写ローラ
35 クリーナ
41 給紙カセット
42 ローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 二次転写ローラ
46 二次転写位置
71 排出ローラ対
72 排出トレイ
150 定着ローラ
151 ローラ軸芯
151b 不貫通孔
152 ローラ外皮
152a テーパ面
153j 面取り部
153、353、453、553 ギヤ
153a ボス部
153b 歯部
153c、353c 壁部
153d、453d、553d アーム
153e、353e ソードリブ
153g 面取り部
153h、253h、353h、453e 刃部
154 Eリング
155 平行ピン
155a 端部
160 加圧ローラ
170 磁束発生部
180 分離爪
251a 長溝
251b 開口部
353c 平坦部
353f 先端部
453f 隙間
553b 歯部
553f 円筒部材
601 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ軸芯と、
ローラ軸芯の一方の端部に装着され、その軸方向に沿って摺動可能な摺動部材と、
少なくとも前記摺動部材が装着されている端部を残してローラ軸芯の周面を被覆するローラ外皮と
を備え、
前記摺動部材には、刃部が設けられており、
摺動部材のローラ外皮方向への摺動に伴って、前記刃部が、前記ローラ外皮の端部と当接して前記ローラ外皮を切り裂いていくことを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記摺動部材は、前記ローラ軸芯に外挿される円筒状のボス部を有し、
前記ボス部のローラ外皮側端面の外周縁が面取りされると共に、前記刃部は、ボス部周面に立設され、
かつ、前記ローラ外皮の摺動部材側端部の内周面には、摺動部材側に向かって開くテーパ-面が形成されており、
前記摺動部材の摺動に伴って、前記ボス部の面取り部が、前記ローラ外皮のテーパ面に侵入してこれを広げるように作用し、これによりローラ外皮が前記ボス部周面に立設された刃部に当接して切り裂いていくように構成されることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
前記刃部は、その刃の稜線をローラ軸芯方向に投影したときに、当該ローラ軸芯の軸方向に対し所定の角度だけ傾くように配設されており、
前記摺動部材をローラ軸芯に対し回転させながら軸方向に摺動させることによりローラ外皮が切り裂かれる構成であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のローラ。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記ローラ軸芯に外挿される円筒状のボス部と、当該ボスの周面に放射状に立設された複数本のアームと、当該アームを介して前記ボス部に対し同心円上に保持される環状体とを有し、
前記刃部は、前記複数のアームのうち少なくとも一つのアームに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項5】
前記複数のアームの全てに刃部が形成され、摺動部材の摺動動作に伴って前記刃部により短冊状に切り裂かれたローラ外皮が、隣接するアーム間の隙間を通過するように構成されてなることを特徴とする請求項4に記載のローラ。
【請求項6】
前記環状体の径より小さい円筒状の部材が、前記ボスと同心円上であって、かつ、前記刃部を覆う位置に設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のローラ。
【請求項7】
前記摺動部材が、前記ローラ軸芯の軸方向に移動しないように規制する位置規制手段を備え、
当該位置規制手段による位置規制を解除してから、摺動部材を摺動させてローラ外皮を切り裂くように構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のローラ。
【請求項8】
前記摺動部材は、ギヤ又はプーリであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のローラ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のローラを、シート搬送経路上のローラとして用いていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記ローラ軸芯の径方向から前記刃部を覆う遮蔽体を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−115979(P2009−115979A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287775(P2007−287775)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】