説明

ローラ駆動装置

ローラ駆動装置は、例えば圧延されたストリップを規定の方法で巻き取るために、圧延機の巻き取り機の上流側で用いられる。第1のローラ(6)に対向して設けられる第2のローラ(5)は、ストリップの所望の張力を得るため、及び所望の横方向の変位を調節若しくは制御するために用いられる。本発明によるローラ駆動装置(1)は、とりわけ簡単な構造で非常に精度良く制御することができる。この目的のため、ローラ(6)に対向して設けられるローラ(5)を備えたロッカー(2,3)は、フレーム(12)に別個に取り付けられており、これにより、独立して旋回可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのローラを備え、第1のローラが実質的に静止しており、第2のローラは第1のローラに向かって前進するように配置されていると共に、回動可能な2つのロッカー(rocker)を備え、2つのロッカー内に第2のローラが配され、且つ取り付けられており、ロッカーを回動させるために、圧力媒体シリンダ(pressure medium cylinder)がロッカー上にそれぞれ配された、ローラ駆動装置(directional drive)に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラ駆動装置は一般に圧延装置(rolling mil)に使用されており、圧延装置においては、ローラ駆動装置は、圧延されたストリップの巻き取り機(coiler)の上流側に配され、2つのローラによって、巻き取り機の上流でストリップの張力を設定している。ローラ駆動装置の別な役割は、巻き取りの上流で圧延されたストリップが横方向にずれるのを防止することである。このために、回動可能なローラが駆動されて静止ローラに向かって前進され、これにより、静止ローラに対する回動可能なローラの位置に応じて、圧延されたストリップには所望の張力及び所望の横方向の変位が与えられる。
【0003】
このようなローラ駆動装置は、例えば特許文献1または特許文献2に記載されており、これら文献は、回動可能なローラが連続的なロッカー内に取り付けられたローラ駆動装置を開示している。このローラの取付けは、制御シリンダによって可動とされており、これにより、ローラは、その取付けを介して適宜移動され得る。しかしながら、かかる可動取付けとするために、そのようなローラ駆動装置は非常に複雑な構造となっている。
【0004】
特許文献3も回動可能なローラが2つのロッカー内に取り付けられたローラ駆動装置を開示しており、2つのロッカー上には圧力媒体シリンダがそれぞれ係合しており、従ってロッカーは別個に駆動され得る。2つのロッカーは、これらロッカーの回転軸を形成しているねじりバネに固接されている。これらロッカーが圧力媒体シリンダによって駆動されると、ロッカーは互いに影響を及ぼし合い、力を調節する際に、ねじりバネのバネ定数を常に考慮しなければならない。しかしながら、バネ定数ははっきりとはわからず、更に外的条件(例えば周囲温度、バネの材料特性等)に伴って変化してしまうので、力の調節はその性質上、不正確となる。
【特許文献1】欧州特許第192982号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2615254号明細書
【特許文献3】欧州特許第747147号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、従来のローラ駆動装置を改良して、簡単な構造で、容易且つ正確に制御することのできるローラ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的は、2つのロッカーを互いに独立してフレーム上に配し、回動可能に取り付けることによって達成される。
【0007】
ロッカーを別個に設けることによって、ローラ駆動装置は非常に簡単な構造となり、ロッカーを相互接続することによる相互の影響を全く考慮に入れる必要が無くなり、これにより、ローラ駆動装置を非常に簡単、且つとりわけ正確に制御することができる。
【0008】
特に有利なことには、ロッカーは一端でフレーム上に取り付けられ、ロッカーの他端にはそれぞれ作動部材が配されており、第2のローラの取付け部が、ロッカーの2つの端部間に設けられている。これにより、特に良好なテコ装置(leverages)が構成される。
【0009】
特に好適な実施形態は、アクスルがフレーム上に配され、回転可能に取り付けられており、2つのロッカーのうちの少なくとも1つは、アクスルに固着されることによって得られ、第2のロッカーが、アクスル(9)に回動可能に接続されることによって更に一層の改良が達成される。従って、2つのロッカーを互いに独立に回転可能とするように取り付けるために単一のアクスルを必要とするだけなので、装置構成が簡素化される。
【0010】
ローラ駆動装置の機能的な信頼性は、回動安全装置(pivoting safeguard)を設けることによって一層向上する。この安全装置は、ロッカーが回動し過ぎることを防止し、ローラ駆動装置の部品若しくはロッカーの部品(例えば取付け部やシール)が損傷したり、最終的に破壊されることを防止するためのものである。
【0011】
特に有利には、ローラの取付け部とロッカーの取付け部とが一直線に配され、これにより、作動部材の作動力に起因する傾動モーメントは全く生じないこととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によるローラ駆動装置が、例として示された図1を参照しつつ以下に記載されている。この図1の例は、限定的に解釈されるべきではなく、ローラ駆動装置の斜視図を示すものである。
【0013】
図1におけるローラ駆動装置1は、本質的にフレーム12を備えており、このフレーム12内には、第1のローラ6が、ここでは実質的に静止的に取付け部8に取り付けられている。静止的に取り付けられた手段、すなわち第1のローラ6は、回転することはできるけれども、フレーム12に対しては更なる自由度は有していない。第2のローラ5は、別の取付け部7に取り付けられており、第1のローラ6に対して前進可能、すなわち第1のローラ6に相対的に移動可能とされている。このために、2つのロッカー2,3が設けられており、これらロッカー2,3は、フレーム上で回転軸13周りに回動可能に配されている。第2のローラ5は、ロッカー2,3上で取付け部7に回転可能に配されており、例えばここでは、圧力媒体シリンダ、好適には油圧シリンダのような作動装置4が、それぞれロッカー2,3の自由端に配されている。
【0014】
ロッカー2,3は、互いに単独で独立に可動するようにフレーム12に取り付けられている。このために、例えば図1によると、管状のアクスル9が、2つの軸受け(例えばここでは転がり軸受けまたは自動調心転がり軸受)10でフレーム12に回転可能に取り付けられている。第1のロッカー3は、図1に示されているように、例えば溶接によってアクスル9に固着されている。第2のロッカー2は、軸受け(ここでもやはり転がり軸受が用いられている。)11によって、アクスル9に回転可能に配されている。従って、2つのロッカー2,3は、互いに全く独立して動くことができる。
【0015】
しかし当然のことながら、2つのロッカー2,3を特定のアクスル上若しくは特定のジャーナル上でフレームに取り付けるいずれの場合も容易に理解できるであろう。つまり、ロッカー2,3をアクスル若しくはジャーナルに固着することもできるし、軸及びジャーナルに取り付けることもできる。あるいは、2つのロッカーをフレーム12に直接取り付けることもできる。ロッカー2,3を回動可能に取り付けることのできるアクスルは、同様にフレーム12に固着することもできる。
【0016】
圧力媒体シリンダ4は、ここでは一端がロッカー2,3に締結され、他端はそれぞれフレーム12に締結されており、従って、圧力媒体シリンダ4が作動すると、第2のローラ5を回転軸13周りに回動させ、第1のローラ6に対して相対的に移動させることができる。ロッカー2,3における、圧力媒体シリンダ4の係合点(point of engagement)、ローラ5の取付け部7とアクスル9上のロッカー2の取付け部11若しくはロッカー2とアクスル9との固接部、はそれぞれ一直線に配されていることが好ましい。これにより、ロッカー2,3においては、圧力媒体シリンダ4が与える力による傾動モーメントは全く生じないのである。しかしながら、圧力媒体シリンダ4もロッカー2,3の横方向に突出している突出部に締結することができる。
【0017】
バネアセンブリ14は、軸受の遊びを除去若しくは少なくとも低減するために、本質的にローラ5の軸受け7を上方に引張る働きをしており、このバネアセンブリ14は、ロッカー2,3とバネアセンブリ14の取付け部16との間にそれぞれ設けられている。この結果、ストリップがローラ5,6の間を通過する際の、第2のローラ5の軸受け7への衝撃が回避される。
【0018】
更に、図1に示されるように、アクスル9上に回動可能に配されたロッカー2の回動量を規制するために、回動安全装置15を設けることもできる。この安全装置15によって、不具合が生じた際に、例えば軸受けやシールの許容可能な回動角度を超過してしまう事態が防止される。回動安全装置15はこの場合、アクスル9上に2つの係止部を設け、これら係止部が回動量の限界を予め定め、2つの係止部の間で、更なる係止部がロッカー2に接続され、且つロッカー2と共に移動するように設計されることができる。
【0019】
ローラ駆動装置1の機能は従来技術から良く知られているので、ここではこれ以上詳しく説明することはしない。2つのローラ5,6の間に圧延ストリップが案内されて通過し、圧延ストリップの張力と横方向の動きがローラ駆動装置1によって設定される。ローラ駆動装置1内でロッカー2,3が圧力媒体シリンダ4によって回動され、従って第2のローラ5は第1のローラ6に向かって所望の方向に前進される。この場合、圧力媒体シリンダ4は相応して駆動され、適切な場合には、同様に規制が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるローラ駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ローラ駆動装置
2,3 ロッカー
4 圧力媒体シリンダ(作動装置)
5 第2のローラ
6 第1のローラ
7,8,11,16 取付け部
9 アクスル
10,11 軸受け
12 フレーム
13 回転軸
14 バネアセンブリ
15 回動安全装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローラ(6)と、
該第1のローラ(6)に向かって前進可能なように配された第2のローラ(5)と、
2つのロッカー(2,3)であって、該2つのロッカー内に前記第2のローラ(5)が配され、回動可能に取り付けられていると共に、前記ロッカー(2,3)を回動させるために、作動部材(4)が前記ロッカー上にそれぞれ配された、2つのロッカー(2,3)と、
を備えたローラ駆動装置において、
前記ロッカー(2,3)は、互いに独立にフレーム(12)上に配され、回動可能に取り付けられている、ことを特徴とするローラ駆動装置。
【請求項2】
前記ロッカー(2,3)のそれぞれは、一端で回動可能に取り付けられており、
前記ロッカーの他端には作動部材(4)が配されており、
前記第2のローラ(5)の取付け部(7)が、前記ロッカーの2つの端部間に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のローラ駆動装置。
【請求項3】
アクスル(9)が前記フレーム(12)上に配され、回転可能に取り付けられており、前記2つのロッカーのうちの少なくとも1つ(3)は、前記アクスル(9)に固着されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のローラ駆動装置。
【請求項4】
第2のロッカー(2)が、前記アクスル(9)に回動可能に接続されている、ことを特徴とする請求項3に記載のローラ駆動装置。
【請求項5】
前記ロッカー(2,3)が、特定のアクスル若しくはジャーナル上に配され、回動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のローラ駆動装置。
【請求項6】
アクスルが前記フレーム(12)上に固着され、前記ロッカー(2,3)が、前記アクスル上に配され、回動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のローラ駆動装置。
【請求項7】
少なくとも1つのロッカー(2,3)の回動量を、予め決定可能な限界値の間に制限することによる回動安全装置(15)を備えている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のローラ駆動装置。
【請求項8】
前記ロッカー(2,3)上の前記作動部材(4)の係合点、前記第2のローラ(5)の取付け部(7)と前記アクスル(9)上の前記前記ロッカー(2,3)の取付け部若しくは前記ロッカー(2,3)と前記アクスル(9)との固接部、が実質的に一直線に配されている、ことを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のローラ駆動装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−504961(P2008−504961A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518517(P2007−518517)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006837
【国際公開番号】WO2006/002835
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】