説明

ロールコネクタ断線検知装置及び断線検知方法

【課題】ステアリングロールコネクタのフラットケーブルについて、複数本の導体線のうち、断線が検知される導体線の本数が少ない構成であっても、フラットケーブルの断線及び交換の時期を適切に判断することができるフラットケーブルの断線検知装置及び断線検知方法を提供する。
【解決手段】フラットケーブル3において、少なくとも、正側及び負側の2本の導体線からなる1回路分の断線検知導体線31を備え、その断線検知導体線31の正側導体線31aと負側導体線31bとの間に断線不検知導体線32を配設してあるので、この正側導体線31aもしくは負側導体線31bのいずれかに断線が発生した際には、断線の発生が報知されることとなる。このため、早急にフラットケーブル3の交換を行うことができ、全ての導体線の動作不良を未然に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングホイール(ハンドル)に電気的接続手段として連結されるステアリングロールコネクタにおいて、そのステアリングロールコネクタ内に配線されるフラットケーブルの断線を検知する装置、及び、断線検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングロールコネクタは、ステアリングホイールに装着されているエアバッグ等の電気的接続手段として広く用いられている。
このステアリングロールコネクタは、2枚の絶縁性のベースフィルムの間に複数本の導体線を被覆して形成される帯状のフラットケーブルと、相対的に回転自在に組み合わされた一対のハウジング(固定側の外ハウジング及び可動側の内ハウジング)とによって主に構成されており、これら一対のハウジングによって画成されるケーブル収納空間内にそのフラットケーブルが巻き締め及び巻き戻し可能に収納されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、自動車内におけるステアリングロールコネクタの配置構成について、図8を参照しながら説明する。
図に示す通り、ステアリングロールコネクタ50は、ステアリングホイール51およびエアバッグ52と、ステアリングコラム53との間において、互いに電気的に接続配置されている。
この場合、例えば、自動車の前方衝突があった際には、センサ(図中54)やコントロールユニット(図中55)からの指示により、ステアリングロールコネクタ50を介して、ステアリングホイール51に装着されたエアバッグ52が電気的に動作されることとなる。
【0004】
ここで、従来のフラットケーブルについて、図9を参照しながら説明する。
図に示す通り、従来のフラットケーブル103は、少なくとも、正側(図中131a)及び負側(図中131b)の2本の導体線からなる1回路分のエアバッグ回路用導体線131や、オーディオ回路などに対応する補機回路用の他回路用導体線132を保持している。
【0005】
なお、他回路用導体線132としては、ステアリングホイールの操作部と電気的に接続された補機回路用導体線であって、ホーン用、オーディオ用、クルーズコントロール用、パドルシフト用、エアコン用など、その種別を問わず、多くの回路が適用されている。
【0006】
また、図9に示す通り、フラットケーブル103は、その長手方向に沿って互いに平行に複数本の導体線を保持しており、1回路分のエアバッグ回路用導体線131として正側導体線131a及び負側導体線131bをフラットケーブル103の一方の側端近傍にまとめて保持している。
【0007】
ここにおいて、ケーブル収納空間内に収納されたフラットケーブル103は、ステアリングホイールの回転操作により、巻き締め又は巻き戻しに伴う外力を幾度も受けることとなり、その結果、フラットケーブル103のベースフィルムの破断を招き、かつ、フラットケーブル103内に保持される各種回路の導体線が断線してしまうという問題があった。
特に、エアバッグ回路用導体線131については、重要な保安部品であるため、断線が発生したときには、その事実を直ちにユーザに知らせる必要がある。
【0008】
このため、エアバッグ回路用導体線131には、断線検知システム(不図示)が付随しており、断線の有無を自動的に検知するとともに、警告灯を点灯させるなどして、乗員に対して断線の発生を報知し、その後、フラットケーブル103が交換されることとなる。
【0009】
しかしながら、オーディオ回路用など、補機回路用の他回路用導体線132については、エアバッグ回路用に比べて安全性に対する要請が比較的小さいため、エアバッグ回路用の導体線に付随しているような断線検知システムは組み込まれていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−6835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の構成によれば、図中の矢印Aの方向から断線が発生した場合には、不図示の断線検知システムにより、正側導体線131aや負側導体線131bの断線が検知され、即座に断線の発生を報知することになるものの、矢印Bの方向から断線が発生した場合には、即座に断線の発生が検知されないため、他回路用導体線132の断線の把握が困難となる。
【0012】
つまり、他回路用導体線132の断線が発生しても、正側導体線131a及び負側導体線131bの断線が発生していなければ、断線検知システムによる断線の検知は行われず、その結果、乗員への報知も行われない。
そのため、他回路用導体線132の断線が発生しても、フラットケーブル103の交換の必要性を認識することなく運転が行われることとなってしまう。
【0013】
以上のように、フラットケーブルの損傷の仕方によっては、断線が生じているにも関わらず、運転者が運転を続けてしまうといった問題があった。
なお、フラットケーブルに設けられる全ての導体線について、断線検知システムにより断線を検知することが本来望ましいが、全ての導体線の断線を検知する構成を採用すると設計が煩雑となり、コスト面の問題が生じてしまう。このため、安全性に関わる回路に限ってのみ断線検知を行っているのが実情であった。
これらを踏まえ、補機回路用の導体線についてもエアバッグ回路用の導体線と同様、断線の状況を把握できる何らかの対策が望まれていた。
【0014】
そこで本発明は、ステアリングロールコネクタのフラットケーブルについて、複数本の導体線のうち、断線が検知される導体線の本数が少ない構成であっても、フラットケーブルの断線及び交換時期を適切に判断することができるフラットケーブルの断線検知装置及び断線検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、互いに相対回転が可能に組み合わされてケーブル収納空間を画成する内ハウジング及び外ハウジングと、前記ケーブル収納空間を介して前記内ハウジング及び前記外ハウジングの間に配線され、複数本の導体線を導体線群として長手方向に有するフラットケーブルと、前記導体線の断線が発生した際に、その断線の発生を検知する断線検知手段と、を備えたロールコネクタ断線検知装置において、前記導体線群は、前記断線検知手段により断線の発生を検知される断線検知導体線と、断線の発生を検知されない断線不検知導体線との組合せからなり、少なくとも一本の前記断線不検知導体線を二本の前記断線検知導体線により挟んだ構成を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロールコネクタ断線検知装置であって、前記複数本の導体線のうち最も外側に位置する導体線は、前記断線検知導体線として構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロールコネクタ断線検知装置であって、前記導体線群は、両側の前記導体線のうちいずれか一方又は双方が前記フラットケーブルの長手方向に沿って、前記フラットケーブルの側端近傍に配設されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のロールコネクタ断線検知装置であって、前記断線検知導体線は、エアバッグ回路用リード線であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロールコネクタ断線検知装置であって、前記断線不検知導体線は、前記内ハウジングに固定されたステアリングホイールの操作部と電気的に接続された補機回路用リード線であることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のロールコネクタ断線検知装置であって、前記補機回路用リード線は、ホーン回路用リード線であることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、複数本の導体線を導体線群として長手方向に有するロールコネクタ用フラットケーブルの断線を検知する断線検知方法であって、前記導体線群の両側の前記導体線の断線を検知するステップと、前記断線が検知されたときに断線信号を出力させるステップと、前記断線信号により断線が発生したことを報知するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、煩雑な構成を必要とせず、複数本の導体線のうち、断線が検知される導体線の本数が少ない構成であっても、フラットケーブルの断線及び交換時期を適切に判断することができる。
また、導体線の配設構成を変更するだけであるため、新たな断線検知システムを設ける必要がなく、コストアップの問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のステアリングロールコネクタの分解図、斜視図及び縦断面図である。
【図2】第1実施形態のステアリングロールコネクタの横断面図である。
【図3】第1実施形態のフラットケーブルの説明図である。
【図4】第2実施形態のフラットケーブルの説明図である。
【図5】第3実施形態のステアリングロールコネクタの斜視図及び横断面図である。
【図6】第3実施形態におけるフラットケーブルとフラットケーブルの移動をガイドするガイド部とを示す図である。
【図7】第3実施形態のフラットケーブルの説明図である。
【図8】自動車内におけるステアリングロールコネクタの配置構成を示す図である。
【図9】従来のフラットケーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態におけるステアリングロールコネクタの構成について、図1(a)を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明に係るステアリングロールコネクタの主要な構成についての分解斜視図であり、フラットケーブル3、ローラ12、内筒部8、外筒体6、ベース部4およびガイド壁11を示している。
【0025】
図に示す通り、ガイド壁11については、ベース部4と一体化されるとともに、フラットケーブル3の反転部10と接触するため、円弧状に形成されている。
また、組み立て時において、ローラ12は、ベース部4と一体化されたピン部材12aに対して、回転自在に組み付けられることとなり、フラットケーブル3の反転部10は、ガイド壁11とピン部材12aに組み付けられたローラ12との間に配線されることとなる。
【0026】
次に、ステアリングロールコネクタおよびフラットケーブルの基本構成について、ステアリングロールコネクタの斜視図である図1(b)と、縦断面図である図1(c)とを参照しながら説明する。
【0027】
図1(b)、および、図1(b)中のC−C矢視断面図である図1(c)は、外筒体6及び内筒部8によって画成されるケーブル収納空間9内に、これら外筒体6と内筒部8との間に配線されるフラットケーブル3が、巻回されながら収納される構成を示している。
【0028】
そして、外筒体6は、ステアリングコラム(不図示)側に連結されて動きが固定されており、内筒部8は、ステアリングホイール(不図示)側に連結されるとともに、図中の軸Sを中心軸として回転が可能に組み合わされている。
【0029】
この場合、実際の構成として、図1(c)に示す通り、外筒体6は底板5を含めた外ハウジング1として構成され、外筒体6は底板5の外周縁に一体化されており、内筒部8は底板5に対向する円環状の天板部7を含めた内ハウジング2として構成されることとなる。
【0030】
さらに、ケーブル収納空間9内には、外ハウジング1及び内ハウジング2に対して回転自在に円盤状のベース部4が収納されており、そのベース部4には、フラットケーブル3の動きをサポートするローラ2が回転自在に設けられている。
【0031】
次に、ケーブル収納空間9内の構成について、ステアリングロールコネクタの横断面図である図2(a)〜(d)を参照しながら、より詳細に説明する。
図2(a)に示す通り、フラットケーブル3は、所定の長さを内筒部8に巻回されるととともに、その巻き方向を途中でU字状に反転(図中の反転部10)させて、外筒体6の内側に巻回されて、ケーブル収納空間9内に収納されている。
【0032】
そして、フラットケーブル3の反転部10は、円盤状のベース部4に設けられたローラ12と、フラットケーブル3の動きをガイドするガイド壁11との間に配線されている。
このため、乗員によるステアリングホイールの右方向への操舵が行われたとき、つまり、内筒部8(内ハウジング2)が時計方向へ回転されたときには、図2(b)に示すように、フラットケーブル3の反転部10がローラ12に接触するとともに、そのローラ12を時計方向(図中Mの方向)へ押し回すこととなる。
【0033】
一方、乗員によるステアリングホイールの左方向への操舵が行われたとき、つまり、内筒部8(内ハウジング2)を反時計方向へ回転したときには、図2(c)に示すように、フラットケーブル3の反転部10がガイド壁11に接触するとともに、そのガイド壁11を反時計方向(図中Nの方向)へ押し回すこととなっている。
【0034】
次に、フラットケーブル3と、ローラ12と、ガイド壁11との動作関係について、図2(b)及び(c)を参照しながら具体的に説明する。
先述した通り、乗員による右方向への操舵が行われたときには、図2(b)に示すように、反転部10がローラ12を時計方向へ押し回すこととなり、その結果、外筒体6(外ハウジング1)及び内筒部8(内ハウジング2)に対して回転自在なベース部4が、時計方向に押されて、回転することとなる。
【0035】
このとき、フラットケーブル3の内筒部8への巻き込み動作が同時に発生するため、反転部10においては、フラットケーブル3のスライド動作が生じ、フラットケーブル3と接触しているローラ12が回転されることとなる。
このため、右方向への操舵が行われたときには、フラットケーブル3とローラ12との間に摩擦が生じることがほとんどなく、操舵がスムーズに行われることとなる。
【0036】
一方、左方向への操舵が行われたときには、図2(c)に示す通り、反転部10がガイド壁11を反時計方向へ押し回すこととなる。
この場合、内筒部8に所定の長さ分巻回されているフラットケーブル3が、内筒部8から送り出されるため、反転部10においては、フラットケーブル3のスライド動作が生じ、フラットケーブル3とガイド壁11との間に摩擦力が発生するものの、ベース部4が反時計方向に押され、回転することとなる。
【0037】
なお、図2(a)〜(c)に示した本実施形態は、反転部10の膨らみ方向が反時計方向に向いた構成であるものの、この構成は一例であり、反転部10の膨らみ方向を時計方向に向けた構成としてもよいものである。
【0038】
つまり、図2(a)〜(c)に示した構成は、乗員による左方向への操舵が行われたときにフラットケーブル3とガイド壁11との間に摩擦が発生するものであるが、反転部10の膨らみ方向を時計方向に向けた構成を採用し、乗員による右方向への操舵が行われたときに、フラットケーブル3とガイド壁11との間に摩擦が発生する構成(図2(d)参照)としてもよく、いずれの構成であっても、本発明の適用は可能である。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態であるフラットケーブル3の構造及び断線検知方法について、図3を参照しながら説明する。
フラットケーブル3には、少なくとも、断線検知システム(不図示)により断線の発生を検知される断線検知導体線と、断線の発生を検知されない断線不検知導体線とが配設されており、図3に示す通り、正側(図中31a)及び負側(図中31b)の2本の導体線からなる1回路分の断線検知導体線31や断線不検知導体線32が配設してある。
【0040】
そして、断線検知導体線31の正側導体線31a及び負側導体線31bをフラットケーブル3の長手方向に沿って、フラットケーブル3の側端近傍にそれぞれ配設し、この正側導体線31aと負側導体線31bとの間に、複数本の断線不検知導体線32を配設させている。
【0041】
この第1実施形態においては、エアバック回路用の導体線を断線検知導体線31として配設するとともに、ホーン用、オーディオ用、クルーズコントロール用、パドルシフト用、エアコン用の導体線を断線不検知導体線32として配設している。ただし、本発明においては、この断線検知導体線31や断線不検知導体線32をいずれの回路用の導体線として適用するか、適宜設計の変更を可能としている。したがって、例えば、断線検知導体線31をホーン用の導体線とし、その正側導体線31aと負側導体線31bとの間に、断線不検知導体線32として、エアバッグ回路用、オーディオ用、クルーズコントロール用、パドルシフト用、エアコン用など、その他多くの回路用の導体線を配設させてもよい。
【0042】
つまり、本発明においては、断線の発生を検知される導体線(断線検知導体線31)をいずれの回路用の導体線としてもよく、また、断線の発生を検知されない導体線(断線不検知導体線32)についても、いずれの回路用の導体線として適用させてもよい。
【0043】
よって、この図3に示す構成により、図中の矢印Bの方向から断線が発生した場合には、不図示の断線検知システムにより、負側導体線31bの断線が検知され、断線の発生を乗員が知ることができる。
【0044】
具体的には、フラットケーブル3は、図中の矢印Bの方向から応力の影響を段階的に受けることとなり、先ず、負側導体線31bの断線が生じることとなる。そして、応力が更に大きい場合には、続けて断線不検知導体線32についても断線が及ぶこととなる。
【0045】
即ち、断線不検知導体線32の断線が生じる前に、必ず断線検知導体線31である負側導体線31bが断線することとなり、乗員に対して断線の事実が即座に報知される。
さらに、図中の矢印Aの方向から断線が発生した場合であっても、先ず、正側導体線31aの断線が検知され、断線の発生を乗員が知ることができる。
【0046】
このように第1実施形態では、1回路分の断線検知導体線31の正側導体線31aと負側導体線31bとの間に、断線不検知導体線32を配設してあるので、断線検知導体線31(正側導体線31aもしくは負側導体線31b)に断線が発生した際には、乗員への報知が行われることとなる。
そして、早急にフラットケーブル3の交換を行うことができ、断線不検知導体線32の動作不良を未然に防ぐことができる。
【0047】
なお、図3においては、図面向かって下側に負側導体線31bを配設し、正側導体線31aを図面向かって上側に配設しているものの、正側導体線31aと負側導体線31bとの配設位置が逆であってもよい。
【0048】
次に、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。
図示の通り、この第2実施形態は、正側導体線31aもしくは負側導体線31bのいずれか一方をフラットケーブル3の側端近傍に配設させるとともに、特定の断線不検知導体線32aをこれら二本の断線検知用の導体線の間に配設させた構成を採用するものである。
【0049】
つまり、第2実施形態は第1実施形態とは異なり、特定の断線不検知導体線32aのみを挟んだ構成としている。
このため、正側導体線31aもしくは負側導体線31bのいずれか一方の断線の報知によってフラットケーブル3の交換を行うようにすることで、所望の導体線(図中の断線不検知導体線32a)についてのみ未然に動作不良を防ぐことが可能となるものである。
【0050】
より具体的には、フラットケーブル3は、図中の矢印Bの方向から断線を発生させる応力が生じた場合に、その応力の影響を段階的に受けることとなり、先ず、負側導体線31bの断線が生じることとなる。
そして、応力が更に大きい場合には、続けて断線不検知導体線32aについても断線が及ぶこととなる。
【0051】
即ち、断線不検知導体線32aの断線が生じる前に、必ず断線検知導体線31である負側導体線31bが断線することとなり、乗員に対して断線の事実が即座に報知される。
さらに、図中の矢印Aの方向から断線が発生した場合であっても、正側導体線31aの断線が検知された段階で、断線の発生を乗員が知ることができる。
【0052】
なお、図4においては、図面向かって下側に負側導体線31bを配設し、正側導体線31aを図面向かって上側に配設しているものの、第1実施形態のときと同じく、正側導体線31aと負側導体線31bとの配設位置が逆であってもよいものである。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について、図5〜図7を参照しつつ説明する。
先述した通り、フラットケーブル3は、ベース部4に設けられたガイド壁11に反転部10を接触させることで、ケーブル収納空間9内における動きがガイドされることとなっており、ガイド壁11と接触する部分にはその接触に伴う応力が働くこととなる。
【0054】
このため、第3実施形態におけるガイド壁11の形状は、当該ガイド壁11とフラットケーブル3との接触状態を示す図6の通り、フラットケーブル3と接触するガイド面41と、そのガイド面から傾斜して形成される傾斜壁面42とを備える構成として、フラットケーブル3との接触面積を小さくしている。
【0055】
ここで、ステアリングロールコネクタの斜視図である図5(a)に示す通り、この第3実施形態におけるガイド壁11は、フラットケーブル3と接触するガイド面と、そのガイド面から傾斜して形成される傾斜壁面(図中42)とを備えているため、当該傾斜壁面42において、フラットケーブル3とガイド壁11との非接触状態が維持されることとなっている。
【0056】
ここで、フラットケーブル3と、ガイド壁11との動作関係について、図5(b)を参照しながら具体的に説明する。
本発明に係るステアリングロールコネクタにおいて、乗員による左方向への操舵が行われたときには、図に示す通り、反転部10がガイド壁11を反時計方向(図中Nの方向)へ押し回すこととなる。
【0057】
この場合、内筒部8に所定の長さ分巻回されているフラットケーブル3が、内筒部8から送り出されるため、反転部10においては、フラットケーブル3のスライド動作が生じ、ベース部4が反時計方向に押されて回転するものの、フラットケーブル3とガイド壁11との間に摩擦力が発生することとなる。
【0058】
ここで、本発明に係るガイド壁11は、先述した通り、フラットケーブル3との非接触状態を維持する傾斜壁面42を備えているため、フラットケーブル3上にはガイド壁11と接触して摩擦力が発生する領域と、ガイド壁11と接触しないため摩擦力が発生しない領域とが併存することとなる。
【0059】
次に、第3実施形態におけるフラットケーブル3及びガイド壁11について、図5(b)中のD−D矢視要部断面図である図6と、フラットケーブル3の構成を示す図7とを参照しながら、具体的に説明する。
ガイド壁11は、図6に示す通り、フラットケーブル3と接触するガイド面41と、そのガイド面41から傾斜して形成される傾斜壁面42とを備える。
そして、図から明らかなように、ガイド面41の長さ(図中L1)は、フラットケーブル3の幅方向の長さ(図中L2)よりも短い寸法設計とされている。
このため、図7に示す通り、フラットケーブル3にはガイド壁11と接触する接触領域33と、ガイド壁11と接触しない非接触領域34とが設けられ、非接触領域34についてのみ、導体線を配設することとしている。
【0060】
即ち、ガイド面41をフラットケーブル3の幅方向全体に接触させることなく、部分的に接触させる構成とし、非接触となった部分に導体線を配設させたため、フラットケーブル3上に、ガイド壁11との接触により応力が発生する部分と、応力が発生しない部分とが併存することとなっている。
【0061】
そして、図7に示す通り、この第3実施形態においては、ステアリングホイールの回転操作に基づいてフラットケーブル3がガイド壁11へ接触し、その接触に伴って応力を受ける接触領域33に導体線を配設することを避ける構成となっている。
その一方、非接触領域34には断線検知導体線31である正側導体線31a及び負側導体線31bを配設させ、その正側導体線31aと負側導体線31bとの間に、断線不検知導体線32を配設させることとしている。
【0062】
特に、図に示すように、正側導体線31aもしくは負側導体線31bのいずれか一方(図7においては負側導体線31b)を、非接触領域34の側端近傍に配設させているため、接触領域33に応力が発生したことに伴い断線検知導体線31(図7においては負側導体線31b)の断線が発生した際には、断線の発生事実が報知され、それにより、フラットケーブル3の交換を行うことができるものである。
【0063】
具体的には、接触領域33に近い導体線から、接触領域33に発生した応力の影響を段階的に受けることとなり、先ず、負側導体線31bの断線が生じることとなる。
そして、応力が更に大きい場合には、続けて断線不検知導体線32についても断線が及ぶこととなる。
【0064】
即ち、断線不検知導体線32の断線が生じる前に、必ず断線検知導体線31である負側導体線31bが断線することとなり、乗員に対して断線の事実が即座に報知される。
よって、早急にフラットケーブル3の交換を行うことができ、断線不検知導体線32の動作不良を未然に防ぐことができる。
また、図中の矢印Aの方向から断線が発生した場合であっても、先ず、正側導体線31aの断線が検知され、断線の発生を乗員が知ることができる。
【0065】
なお、図7においては、接触領域33に近い方から順に負側導体線31bと正側導体線31aとが配設されているものの、この第3実施形態においても、負側導体線31bと正側導体線31aとの配設順が逆であってもよいものである。
【0066】
また、図7は、図3に示した構成と同様に、複数本からなる断線不検知導体線32のすべてを正側導体線31a及び負側導体線31bにより挟んだ構成を示しているものの、図4に示した構成と同じように、特定の断線不検知導体線32のみを正側導体線31a及び負側導体線31bの間に配設させた構成としてもよい。
【0067】
さらに、ガイド壁11のガイド面41について、フラットケーブル3の幅方向の長さ(図中L2)よりも短い寸法であればよく、傾斜壁面42を設けない実施形態であって、ガイド面41がフラットケーブル3の幅方向において少なくとも部分的に接触する構成であるかぎり、その接触する部分の位置も問わないものである。
【0068】
また、先述した通り、本発明において断線検知導体線31や断線不検知導体線32は、適用される回路の種別(エアバッグ回路、オーディオ回路など)を問わないものであるため、フラットケーブル3の幅方向における導体線の配設順を問わず、どのような配設順であっても適用が可能である。
【0069】
つまり、フラットケーブル3の設計時に、所望の回路用の導体線を断線検知導体線31として配設させておくことで、実際の断線時には、当該所望の回路の導体線の断線が発生した段階で、フラットケーブル3の交換を行うことができるものである。
そして、当該所望の回路の導体線以外の回路の導体線の動作不良を未然に防ぐことができるものである。
【0070】
そして、上記してきた実施形態においては、断線検知導体線31の正側導体線31a及び負側導体線31bの間に断線不検知導体線32を挟んだ構成を述べてきたが、断線検知導体線31を複数種類の回路、例えば、エアバッグ回路用とホーン回路用とに同時に適用させた構成であってもよい。
例えば、断線の検知が可能なエアバッグ回路用の正側導体線およびホーン回路用の負側導体線の間に、断線不検知導体線32を配設させた構成であってもよいものである。
【符号の説明】
【0071】
1 外ハウジング
2 内ハウジング
3 フラットケーブル
4 ベース部
5 底板
6 外筒体
7 天板部
8 内筒部
9 ケーブル収納空間
10 反転部
11 ガイド壁
12 ローラ
31 断線検知導体線
31a 正側導体線
31b 負側導体線
32 断線不検知導体線
33 接触領域
34 非接触領域
41 ガイド面
42 傾斜壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転が可能に組み合わされてケーブル収納空間を画成する内ハウジング及び外ハウジングと、
前記ケーブル収納空間を介して前記内ハウジング及び前記外ハウジングの間に配線され、複数本の導体線を導体線群として長手方向に有するフラットケーブルと、
前記導体線の断線が発生した際に、その断線の発生を検知する断線検知手段と、を備えたロールコネクタ断線検知装置において、
前記導体線群は、前記断線検知手段により断線の発生を検知される断線検知導体線と、断線の発生を検知されない断線不検知導体線との組合せからなり、少なくとも一本の前記断線不検知導体線を二本の前記断線検知導体線により挟んだ構成を含むことを特徴とするロールコネクタ断線検知装置。
【請求項2】
前記複数本の導体線のうち最も外側に位置する導体線は、前記断線検知導体線として構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロールコネクタ断線検知装置。
【請求項3】
前記導体線群は、両側の前記導体線のうちいずれか一方又は双方が前記フラットケーブルの長手方向に沿って、前記フラットケーブルの側端近傍に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のロールコネクタ断線検知装置。
【請求項4】
前記断線検知導体線は、エアバッグ回路用リード線であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のロールコネクタ断線検知装置。
【請求項5】
前記断線不検知導体線は、前記内ハウジングに固定されたステアリングホイールの操作部と電気的に接続された補機回路用リード線であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロールコネクタ断線検知装置。
【請求項6】
前記補機回路用リード線は、ホーン回路用リード線であることを特徴とする請求項5に記載のロールコネクタ断線検知装置。
【請求項7】
複数本の導体線を導体線群として長手方向に有するロールコネクタ用フラットケーブルの断線を検知する断線検知方法であって、
前記導体線群の両側の前記導体線の断線を検知するステップと、
前記断線が検知されたときに断線信号を出力させるステップと、
前記断線信号により断線が発生したことを報知するステップと、を含む断線検知方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79411(P2012−79411A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220439(P2010−220439)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】