ロールヘミング装置
【課題】搬送手段により搬送されたワークにおけるフランジを備える加工箇所に対して、簡便な手段によって金型を適正に当接させ、且つヘミングローラの移動を簡便に行う。
【解決手段】ロールヘミング装置10は、生産ライン14において台車20により搬送された車両12におけるフランジ17を備えるホイールアーチ部16を基準位置Pに移動させる直交ロボット22と、移動金型24を待機位置Wから基準位置Pに移動させてフランジ17と反対側の面に移動金型24を当接させる金型移動機構25と、加工用ロボット27によって転動しながら、移動金型24とともにフランジ17を挟持して折り曲げるヘミングローラ30とを有する。金型移動機構25は、直交ロボット22に設けられ、移動金型24を直線状に進退させて、待機位置と基準位置Pとの間を往復動作させる。
【解決手段】ロールヘミング装置10は、生産ライン14において台車20により搬送された車両12におけるフランジ17を備えるホイールアーチ部16を基準位置Pに移動させる直交ロボット22と、移動金型24を待機位置Wから基準位置Pに移動させてフランジ17と反対側の面に移動金型24を当接させる金型移動機構25と、加工用ロボット27によって転動しながら、移動金型24とともにフランジ17を挟持して折り曲げるヘミングローラ30とを有する。金型移動機構25は、直交ロボット22に設けられ、移動金型24を直線状に進退させて、待機位置と基準位置Pとの間を往復動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジを有するワークを搬送手段により所定位置に搬送し、フランジと反対側の面に当接して板材を支持する金型と、転動しながらフランジを折り曲げるヘミングローラとを有するロールヘミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボンネット、トランク、ドア及びホイールハウスの縁部に対しては、パネルの縁部が起立したフランジをパネルの内側方向へ折り曲げるヘミング加工が行われている。このヘミング加工としては、金型の上にパネルを位置決め保持しておき、該パネルにおける端部のフランジに対してローラを押しつけながら折り曲げるというロールヘミング加工を挙げることができる。ロールヘミング加工では、折り曲げ角度が大きいため折り曲げ精度を考慮して予備曲げ、仕上げ曲げといった複数段階の工程を経て加工が行われることがある。
【0003】
ロールヘミング加工の例としては、例えば、特許文献1及び特許文献2を挙げることができる。
【0004】
特許文献1では、安定保護構造を所定の固定手段によりワークに対して直接的に固定している。特許文献2では、ワークを金型上に載置し、固定している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−110628号公報
【特許文献2】特開平6−344037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の生産工程においてロールヘミング加工を適用する場合には、生産ラインにおいて多数の自動車が順次搬送されることから、生産ラインにおける所定のステーションにおいて、ロボット等を用いてヘミング加工を行うことが想定される。
【0007】
生産ラインにおいては、自動車を所定の台車に乗せて搬送することが行われているが、台車は様々な機種の自動車を載置可能にするとともに、生産ラインの各ステーションにおいて作業に支障を来すことがないように無駄な付加物を設けず、汎用性の高いものが好適である。その反面、台車を汎用性の高いものにすると、個別の機種毎に、個別のステーションにおいて自動車の位置決め精度を高めることが困難になる。
【0008】
特に、生産ラインにおいて、搬送されてきた自動車のホイールハウスに金型を当接させて縁部等に対してロールヘミング加工を行う場合には、上記のように、台車による搬送では自動車の位置決め精度が十分ではないことから、金型を当接させる移動手段に所定のセンシング手段を設けるなどして、ホイールハウスの位置を検出しながら金型を適正位置まで案内する制御が必要となる。
【0009】
また、センシング手段を設けて金型を適正位置まで案内することは、制御手段及び構成が複雑、大型化且つ高価となるとともに、十分な位置決め精度を確保するためには動作速度が遅くなり、相対的には、ロールヘミング加工に割り当てられる時間が短くなる。さらに、センシング手段には、撮像手段や画像処理手段などが必要となる。
【0010】
さらにまた、仮に金型が加工箇所に対して精度よく当接されている場合であっても、それが規定位置ではない任意位置にある場合(例えば、特許文献1のような場合)には、ヘミングローラのローラ移動手段についてセンシング手段を設け、その任意位置に合わせた経路制御が必要となり、煩雑である。
【0011】
また、特許文献2の方法では、ワークが自動車のように大型の場合には金型上に載置できない。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、搬送手段により搬送されたワークにおけるフランジを備える加工箇所に対して、簡便な手段によって金型を適正に当接させることができ、しかもヘミングローラの移動を簡便に行うことのできるロールヘミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るロールヘミング装置は、ワークを前ステーションからヘミング加工ステーションの搬入位置まで搬送する搬送手段と、前記ヘミング加工ステーションに設置され、前記搬送手段により搬送された前記ワークのフランジを前記搬入位置から所定の基準位置に移動するワーク移動手段と、金型を所定の待機位置から前記基準位置に移動させ、前記フランジと反対側の面に前記金型を当接させる金型移動手段と、前記金型とともに前記フランジを挟持して折り曲げるヘミングローラとを有することを特徴とする。
【0014】
このように、ワークの加工箇所及び金型がワーク移動手段及び金型移動手段によって基準位置にセットされることから、加工箇所に対して金型を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。金型及び加工箇所は基準位置にセットされることから、ヘミングローラは、基準位置に応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【0015】
ここで、搬入位置とは、搬送手段によって搬送された位置であり、ある程度のばらつきがあってもよく、固定された位置である必要はない。
【0016】
前記ワークは複数機種があり、前記基準位置は機種に応じて異なる位置に設定され、前記ワーク移動手段は、機種に応じて前記加工箇所を前記基準位置に移動させてもよい。これにより、複数機種を生産する生産ラインに適用可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るロールヘミング装置によれば、ワークの加工箇所及び金型がワーク移動手段及び金型移動手段によって基準位置にセットされることから、加工箇所に対して金型を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。金型及び加工箇所は基準位置にセットされることから、ヘミングローラは、基準位置に応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るロールヘミング装置について実施形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0019】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10は、いわゆるホワイトボディの状態の車両(ワーク)12について組み立て及び加工を行う生産ライン(搬送手段)14におけるヘミング加工ステーション15に設定されており、左後輪側のホイールアーチ部16のフランジ17についてロールヘミング加工を行うための装置である。生産ライン14においては多数の車両12が前ステーション(図示せず)からヘミング加工ステーション15の搬入位置まで順次搬送される。
【0020】
生産ライン14においては、車両12を台車(搬送手段)20に乗せて搬送することが行われており、台車20は様々な機種の車両12を載置可能にするとともに、生産ライン14の各ステーションにおいて作業に支障を来すことがないように無駄な付加物がない単純構成であり、汎用性が高い。台車20は、生産ライン14に対応した既存品でよい。
【0021】
図2に示すように、仮想線で示すように機種によっては全長やフロアパネル形状が異なることから、台車20は、車両12のフロアパネルに対して前方箇所で2つのピン21で位置決めしている。従って、車両12は、特に後方部において位置精度がやや低くなりうる。
【0022】
図1に戻り、ホイールアーチ部16は180°の略円弧形状となっている。ロールヘミング装置10による加工前の状態において、フランジ17はホイールアーチ部(加工箇所)16の端部16a(図5参照)から内側に向かって90°の屈曲形状となっている。
【0023】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10は、台車20により搬送された車両12におけるホイールアーチ部16を基準位置P(図9参照)に移動及び位置決めさせる直交ロボット(ワーク移動手段)22と、車両12のホイールアーチ部16に接触させる移動金型24と、移動金型24を所定の待機位置Wから基準位置Pに移動させ、フランジ17と反対側の面に該移動金型24を当接させる金型移動機構25と、先端にヘミングユニット26を備える加工用ロボット27と、生産ライン14におけるヘミング加工ステーション15に車両12が搬送・配置されたことを検出する光電センサ28と、統括的な制御を行うコントローラ29とを有する。金型移動機構25と直交ロボット22は隣接して設けられている。
【0024】
生産ライン14から見て右側部分の図示を省略するが、直交ロボット22、金型移動機構25、加工用ロボット27は、生産ライン14の左右両側に設けられている。
【0025】
加工用ロボット27は据置型の産業用多関節型(6軸型)であって、プログラム動作によってヘミングユニット26を任意の位置で且つ任意の姿勢に移動可能である。コントローラ29は、生産ライン14の運行制御を行う外部の生産管理コンピュータ(図示せず)に接続され、生産ライン14上を搬送される車両12の種類等を示す情報がコントローラ29に供給される。
【0026】
図3に示すように、ヘミングユニット26は、端面から突出するように設けられたヘミングローラ30及びガイドローラ32とを有する。
【0027】
ヘミングローラ30は、転動しながらフランジ17を折り曲げるローラである。ガイドローラ32は、移動金型24の裏面に当接して転動するとともに、フランジ17をヘミングローラ30とともに挟み込む受けローラとして作用する。
【0028】
ヘミングローラ30及びガイドローラ32は、支軸30a、32aに対して回転自在に軸支されている。また、ヘミングローラ30は図3の矢印α方向(支軸30a、32aが並ぶ方向)に移動可能であって、支軸30aと支軸32aとの間隔が調整され、ヘミングローラ30及びガイドローラ32により挟まれる部材に対して加圧が可能である。
【0029】
さらに、ヘミングローラ30及びガイドローラ32は、図3の矢印β方向(支軸30a、32aの軸方向)について一体的にフローティング機構により移動可能である。
【0030】
ヘミングローラ30は先端側に設けられたテーパローラ38と、該テーパローラ38と一体構造で基端側に設けられた円筒ローラ40とからなる。テーパローラ38は、側面視で45°に傾斜した先細り形状の円錐台である。ヘミング加工は2回に分けて行われ、テーパローラ38は1回目のプリヘミングに用いられ、円筒ローラ40は2回目の本ヘミングに用いられる。
【0031】
ガイドローラ32は周囲が狭幅に設定された円盤形状であり、移動金型24に設けられた溝42に係合可能である。
【0032】
図4及び図5に示すように、移動金型24は、金型板44をベースに構成されている。金型板44は板形状であり、ホイールアーチ部16に接触する側を表面44a(図5参照)、その反対側の面を裏面44bと呼んで区別する。また、ホイールアーチ部16の端部16aからみてワーク側を内側、その反対側を外側と呼んで区別する。
【0033】
移動金型24は、ホイールアーチ部16の端部16aよりやや外側に沿って形成された外側円弧部50と、裏面44bにおいて外側円弧部50に沿って平行に設けられた溝42とを有する。
【0034】
移動金型24は、少なくとも、フランジ17が折り曲げられる範囲で板材を支持する部分の表面に弾性材54が設けられている。弾性材54は、移動金型24の表面44aの全面に設けられていてもよい。弾性材54は、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等である。
【0035】
金型板44は、ホイールアーチ部16の周囲に表面44aが当接するアーチ形の板形状であって、表面44aは車両12の標準的な表面形状に合わせた3次元的な曲面に設定されている。従って、移動金型24がホイールアーチ部16に取り付けられるとき、溝42はフランジ17と略平行に配設されるとともに、表面44aは車両12に対して広い面積で面接触する。
【0036】
特に、表面44aは、弾性材54が設けられていることから、車両12の機種によって表面形状が多少異なる場合であっても、その形状に合わせて接触可能である。
【0037】
図1、図6及び図7に示すように、直交ロボット22は、プログラミング動作可能な汎用の直交3軸型ロボットであり、プレート60を3軸方向に移動可能である。直交ロボット22は、生産ライン14の近傍に設けられており、該生産ライン14の搬送方向(以下、X方向とも呼ぶ。)に移動をするベース移動機構62と、該ベース移動機構62に対して生産ライン14の幅方向(以下、Y方向とも呼ぶ。)に移動をする幅移動機構64と、プレート60を備えて高さ方向(以下、Z方向とも呼ぶ。)に移動をする高さ移動機構66とを有する。
【0038】
プレート60は幅方向に長く、生産ライン14に側の端部近傍に設けられた基準ピン76とが設けられている。
【0039】
金型移動機構25は、ホイールアーチ部16の正面の規定位置に正確に設けられており、移動金型24を適正姿勢で支持するブラケット72と、該ブラケット72をX方向に往復動させるシリンダ(アクチュエータ)74と、全体を支持する支柱75とを有する。移動金型24及びブラケット72は、シリンダ74の作用下に、待機時には外側の待機位置W(図6参照)にあり、車両12が搬送されてヘミング加工をする際には内側の基準位置Pまで移動をする。
【0040】
基準ピン76は、先端がテーパ形状であり、その下部には環状突起76aが設けられている。フロアパネルには、基準ピン76が挿入される基準孔84が設けられている。
【0041】
次に、このように構成されるロールヘミング装置10を用いたロールヘミング加工について説明する。ロールヘミング装置10では、車両12のホイールアーチ部16についてロールヘミング加工を行うものとする。図5、図10では、フランジ17を折り曲げているが、このフランジ17により図示しないインナーパネルの端部を挟み込むようにしてもよい。
【0042】
ロールヘミング装置10のコントローラ29では、まず、光電センサ28又はその他の手段によって、対応するステーションに車両12が台車20によって搬入されてきたことを確認する。コントローラ29では、所定の生産管理コンピュータからの情報により車両12の機種が把握できている。
【0043】
このとき、図9に示すように、車両12は、台車20に対して前方部分はピン21で位置決めしているが、後方部には位置決め手段が設けられていないことから、仮想線で示すように該後方部分は基準位置Pに対してY方向にずれが生じている。
【0044】
次に、図8Aに示すように、車両12のずれはあまり大きくはないことから、基準ピン76は、少なくとも先端部が基準孔84に挿入される。
【0045】
図8Bに示すように、基準ピン76をさらに上昇させることにより、該基準ピン76の先端テーパ部に沿って基準孔84が動く。
【0046】
図8Cに示すように、基準孔84は、基準ピン76のストレート部分にほとんど隙間なく挿入され、ホイールアーチ部16のX方向及びY方向のずれが修正される。また、環状突起76aによってフロアパネルを支持して、規定高さに設定され、Z方向についても基準位置Pに対応して位置決めがなされる。
【0047】
結果として、ホイールアーチ部16は、生産ライン14によって搬送された搬入位置P0(図9の太仮想線部参照)から、機種毎に予め規定された基準位置Pに正確に移動・位置決めされることになる(図9の太線部参照)。なお、当初の搬入位置P0は、生産ライン14によって搬送された状態においてある程度のばらつきのあり、固定位置ではない。搬入位置P0は、X方向及びY方向については基準位置Pに対してずれがない場合もあり、平面的には移動がないこともあり得るが、Z方向については移動が生じる。
【0048】
次に、図9の矢印Bで示すように、金型移動機構25によって、ホイールアーチ部16がセットされている基準位置Pまで移動金型24を移動させる。この動作は、シリンダ74による単純な直動で足りる。このとき、移動金型24をホイールアーチ部16に対して適度に押圧させておいてもよい。
【0049】
ここまでの処理において、直交ロボット22及び金型移動機構25では、ホイールアーチ部16や基準孔84の位置や向きを特にセンシングする必要はなく、ホイールアーチ部16を簡便に位置決め可能である。
【0050】
この後、加工用ロボット27を車両12の機種に応じて設定されたデータに基づいて動作させ、図5に示すように、1回目のプリヘミング動作を行う。1回目のプリヘミング動作では、円筒ローラ40を移動金型24の表面に当接させ、テーパローラ38をフランジ17に当接させた状態でヘミングローラ30を転動させる。これにより、フランジ17は略45°折り曲げられる。
【0051】
この段階においても、加工箇所としてのホイールアーチ部16及び移動金型24は、機種毎に予め設定された基準位置Pに正確に位置決めされていることから、加工用ロボット27では、移動金型24、溝42及びホイールアーチ部16等の位置や向きを特にセンシングする必要はなく、機種毎に予め設定されたティーチングデータに基づいた規定経路に沿ってヘミングユニット26を移動させればよい。
【0052】
これにより、ガイドローラ32は溝42にガイドされて転動する。加工用ロボット27によるヘミングユニット26の位置決めに多少の誤差がある場合であっても、ガイドローラ32は、溝42に係合して適切な経路を移動することになる。
【0053】
一方、図5に示すように、フランジ17が溝42の延在方向に対して湾曲している場合には、これに応じてヘミングローラ30も軸方向に変位させるとよい。この変位処理は、車両12の機種毎に、ヘミングローラ30の進退量を規定したサブティーチングデータに基づいて行えばよい。
【0054】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10によれば、ワークとしてのホイールアーチ部16と移動金型24の双方が基準位置Pに配置されることから、車両12の搬送時のばらつきが解消されている。なお、ホイールアーチ部16と移動金型24との微妙な形状差、又は機種毎のホイールアーチ部16の微妙な形状差がある場合には弾性材54を移動金型24に設けることにより吸収してもよい。
【0055】
すなわち、図5において、フランジ17は、高さ方向に僅かに湾曲しているが、該フランジ17を支持する移動金型24の表面44aには弾性材54が設けられていることから、高さ方向の湾曲は該弾性材54の伸縮によって吸収されることから、特段の制御上の手段を講じることなく、フランジ17のヘミング加工が可能となる。すなわち、図5の符号Aで示すように、ヘミングローラ30とガイドローラ32で挟持される箇所では弾性材54が適度に圧縮されて、押圧力が確実に伝わり、板材と弾性材54との間には隙間が生じることなく、フランジ17が適切に折り曲げられる。
【0056】
また、移動金型24及びフランジ17は、ヘミングローラ30とガイドローラ32によって挟持されていることから、押圧力は相殺され、加工用ロボット27には負荷がかからない。
【0057】
図10に示すように、2回目の本ヘミング加工を行う場合には、ヘミングユニット26及びガイドローラ32は、1回目のプリヘミング加工の場合と同じ経路を移動する。
【0058】
ヘミングローラ30については、1回目のプリヘミング加工の場合(図5参照)と比較してやや先端側に変位した位置を転動し、円筒ローラ40によってフランジ17を折り曲げ、当初の角度から90°折り曲げられる。
【0059】
このようにして、ホイールアーチ部16のフランジ17にロールヘミング加工を行った後、加工用ロボット27を退避させ、移動金型24を金型移動機構25によって元の待機位置Wまで待機させ、基準ピン76を基準孔84から抜き、車両12の搬出に支障がないように直交ロボット22によってプレート60を元の位置まで戻す。
【0060】
上述したように、本実施の形態に係るロールヘミング装置10によれば、車両12のホイールアーチ部16及び移動金型24が直交ロボット22及び金型移動機構25によって基準位置Pにセットされることから、ホイールアーチ部16に対して移動金型24を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。移動金型24及びホイールアーチ部16は基準位置Pにセットされることから、加工用ロボット27は、基準位置Pに応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【0061】
移動金型24はある程度の重量があるが、この重量を支持するのは、基本的には3軸構成の直交ロボット22であり、多関節ロボットのようにアーム部がないことから重量物を支えやすく、各軸モータは過度な高出力タイプでなくてもよい。
【0062】
また、直交ロボット22、金型移動機構25及び加工用ロボット27には、作用対象物の位置、向き等を検出するセンシング手段は不要であり、制御手段及び構成が簡便、小型且つ廉価となるとともに、十分な位置決め精度を確保するためには動作速度が遅くなることがない。これにより、相対的には、ロールヘミング加工に割り当てられる時間を長く確保できる。
【0063】
また、基準位置Pは車両12の機種に応じて異なる位置に設定され、直交ロボット22は、機種に応じてホイールアーチ部16を基準位置Pに移動させている。これにより、複数機種を生産する生産ライン14に好適に適用可能である。
【0064】
直交ロボット22は、汎用の直交型ロボットを適用可能であって、しかも位置決め手順が容易である。直交ロボット22は、車両12におけるホイールアーチ部16の近傍を保持することから、位置決め精度が高い。
【0065】
金型移動機構25は、単一のシリンダ74により移動金型24を待機位置Wと基準位置Pとの間を往復動作させており、簡便構成である。
【0066】
上記の例では、金型移動機構25は移動金型24を直線状に移動するものとしたが、設計条件によっては、図11に示すように、金型移動機構25は回転移動させてもよい。
【0067】
本発明に係るロールヘミング装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施の形態に係るロールヘミング装置の模式斜視図である。
【図2】生産ライン、台車及び車両を示す模式平面図である。
【図3】ヘミングユニットの斜視図である。
【図4】ホイールアーチ部に固定された移動金型の斜視図である。
【図5】プリへミング加工をする様子を示す模式斜視図である。
【図6】車両におけるホイールアーチ部の周辺と、直交ロボットと、金型移動機構の平面図である。
【図7】車両におけるホイールアーチ部の周辺と、直交ロボットと、金型移動機構の側面図である。
【図8】図8Aは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の最初の段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図であり、図8Bは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の中間段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図であり、図8Cは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の最終段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図である。
【図9】本実施の形態に係るロールヘミング装置における車両及び移動金型の移動動作を示す模式平面図である。
【図10】本へミング加工をする様子を示す模式斜視図である。
【図11】変形例に係るロールヘミング装置の模式平面図である。
【符号の説明】
【0069】
10…ロールヘミング装置 12…車両(ワーク)
14…生産ライン 16…ホイールアーチ部(加工箇所)
17…フランジ 20…台車(搬送手段)
22…直交ロボット(ワーク移動手段) 24…移動金型(金型)
25…金型移動機構 26…ヘミングユニット
27…加工用ロボット 30…ヘミングローラ
32…ガイドローラ 60…プレート
76…基準ピン 84…基準孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジを有するワークを搬送手段により所定位置に搬送し、フランジと反対側の面に当接して板材を支持する金型と、転動しながらフランジを折り曲げるヘミングローラとを有するロールヘミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボンネット、トランク、ドア及びホイールハウスの縁部に対しては、パネルの縁部が起立したフランジをパネルの内側方向へ折り曲げるヘミング加工が行われている。このヘミング加工としては、金型の上にパネルを位置決め保持しておき、該パネルにおける端部のフランジに対してローラを押しつけながら折り曲げるというロールヘミング加工を挙げることができる。ロールヘミング加工では、折り曲げ角度が大きいため折り曲げ精度を考慮して予備曲げ、仕上げ曲げといった複数段階の工程を経て加工が行われることがある。
【0003】
ロールヘミング加工の例としては、例えば、特許文献1及び特許文献2を挙げることができる。
【0004】
特許文献1では、安定保護構造を所定の固定手段によりワークに対して直接的に固定している。特許文献2では、ワークを金型上に載置し、固定している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−110628号公報
【特許文献2】特開平6−344037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の生産工程においてロールヘミング加工を適用する場合には、生産ラインにおいて多数の自動車が順次搬送されることから、生産ラインにおける所定のステーションにおいて、ロボット等を用いてヘミング加工を行うことが想定される。
【0007】
生産ラインにおいては、自動車を所定の台車に乗せて搬送することが行われているが、台車は様々な機種の自動車を載置可能にするとともに、生産ラインの各ステーションにおいて作業に支障を来すことがないように無駄な付加物を設けず、汎用性の高いものが好適である。その反面、台車を汎用性の高いものにすると、個別の機種毎に、個別のステーションにおいて自動車の位置決め精度を高めることが困難になる。
【0008】
特に、生産ラインにおいて、搬送されてきた自動車のホイールハウスに金型を当接させて縁部等に対してロールヘミング加工を行う場合には、上記のように、台車による搬送では自動車の位置決め精度が十分ではないことから、金型を当接させる移動手段に所定のセンシング手段を設けるなどして、ホイールハウスの位置を検出しながら金型を適正位置まで案内する制御が必要となる。
【0009】
また、センシング手段を設けて金型を適正位置まで案内することは、制御手段及び構成が複雑、大型化且つ高価となるとともに、十分な位置決め精度を確保するためには動作速度が遅くなり、相対的には、ロールヘミング加工に割り当てられる時間が短くなる。さらに、センシング手段には、撮像手段や画像処理手段などが必要となる。
【0010】
さらにまた、仮に金型が加工箇所に対して精度よく当接されている場合であっても、それが規定位置ではない任意位置にある場合(例えば、特許文献1のような場合)には、ヘミングローラのローラ移動手段についてセンシング手段を設け、その任意位置に合わせた経路制御が必要となり、煩雑である。
【0011】
また、特許文献2の方法では、ワークが自動車のように大型の場合には金型上に載置できない。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、搬送手段により搬送されたワークにおけるフランジを備える加工箇所に対して、簡便な手段によって金型を適正に当接させることができ、しかもヘミングローラの移動を簡便に行うことのできるロールヘミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るロールヘミング装置は、ワークを前ステーションからヘミング加工ステーションの搬入位置まで搬送する搬送手段と、前記ヘミング加工ステーションに設置され、前記搬送手段により搬送された前記ワークのフランジを前記搬入位置から所定の基準位置に移動するワーク移動手段と、金型を所定の待機位置から前記基準位置に移動させ、前記フランジと反対側の面に前記金型を当接させる金型移動手段と、前記金型とともに前記フランジを挟持して折り曲げるヘミングローラとを有することを特徴とする。
【0014】
このように、ワークの加工箇所及び金型がワーク移動手段及び金型移動手段によって基準位置にセットされることから、加工箇所に対して金型を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。金型及び加工箇所は基準位置にセットされることから、ヘミングローラは、基準位置に応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【0015】
ここで、搬入位置とは、搬送手段によって搬送された位置であり、ある程度のばらつきがあってもよく、固定された位置である必要はない。
【0016】
前記ワークは複数機種があり、前記基準位置は機種に応じて異なる位置に設定され、前記ワーク移動手段は、機種に応じて前記加工箇所を前記基準位置に移動させてもよい。これにより、複数機種を生産する生産ラインに適用可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るロールヘミング装置によれば、ワークの加工箇所及び金型がワーク移動手段及び金型移動手段によって基準位置にセットされることから、加工箇所に対して金型を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。金型及び加工箇所は基準位置にセットされることから、ヘミングローラは、基準位置に応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るロールヘミング装置について実施形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0019】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10は、いわゆるホワイトボディの状態の車両(ワーク)12について組み立て及び加工を行う生産ライン(搬送手段)14におけるヘミング加工ステーション15に設定されており、左後輪側のホイールアーチ部16のフランジ17についてロールヘミング加工を行うための装置である。生産ライン14においては多数の車両12が前ステーション(図示せず)からヘミング加工ステーション15の搬入位置まで順次搬送される。
【0020】
生産ライン14においては、車両12を台車(搬送手段)20に乗せて搬送することが行われており、台車20は様々な機種の車両12を載置可能にするとともに、生産ライン14の各ステーションにおいて作業に支障を来すことがないように無駄な付加物がない単純構成であり、汎用性が高い。台車20は、生産ライン14に対応した既存品でよい。
【0021】
図2に示すように、仮想線で示すように機種によっては全長やフロアパネル形状が異なることから、台車20は、車両12のフロアパネルに対して前方箇所で2つのピン21で位置決めしている。従って、車両12は、特に後方部において位置精度がやや低くなりうる。
【0022】
図1に戻り、ホイールアーチ部16は180°の略円弧形状となっている。ロールヘミング装置10による加工前の状態において、フランジ17はホイールアーチ部(加工箇所)16の端部16a(図5参照)から内側に向かって90°の屈曲形状となっている。
【0023】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10は、台車20により搬送された車両12におけるホイールアーチ部16を基準位置P(図9参照)に移動及び位置決めさせる直交ロボット(ワーク移動手段)22と、車両12のホイールアーチ部16に接触させる移動金型24と、移動金型24を所定の待機位置Wから基準位置Pに移動させ、フランジ17と反対側の面に該移動金型24を当接させる金型移動機構25と、先端にヘミングユニット26を備える加工用ロボット27と、生産ライン14におけるヘミング加工ステーション15に車両12が搬送・配置されたことを検出する光電センサ28と、統括的な制御を行うコントローラ29とを有する。金型移動機構25と直交ロボット22は隣接して設けられている。
【0024】
生産ライン14から見て右側部分の図示を省略するが、直交ロボット22、金型移動機構25、加工用ロボット27は、生産ライン14の左右両側に設けられている。
【0025】
加工用ロボット27は据置型の産業用多関節型(6軸型)であって、プログラム動作によってヘミングユニット26を任意の位置で且つ任意の姿勢に移動可能である。コントローラ29は、生産ライン14の運行制御を行う外部の生産管理コンピュータ(図示せず)に接続され、生産ライン14上を搬送される車両12の種類等を示す情報がコントローラ29に供給される。
【0026】
図3に示すように、ヘミングユニット26は、端面から突出するように設けられたヘミングローラ30及びガイドローラ32とを有する。
【0027】
ヘミングローラ30は、転動しながらフランジ17を折り曲げるローラである。ガイドローラ32は、移動金型24の裏面に当接して転動するとともに、フランジ17をヘミングローラ30とともに挟み込む受けローラとして作用する。
【0028】
ヘミングローラ30及びガイドローラ32は、支軸30a、32aに対して回転自在に軸支されている。また、ヘミングローラ30は図3の矢印α方向(支軸30a、32aが並ぶ方向)に移動可能であって、支軸30aと支軸32aとの間隔が調整され、ヘミングローラ30及びガイドローラ32により挟まれる部材に対して加圧が可能である。
【0029】
さらに、ヘミングローラ30及びガイドローラ32は、図3の矢印β方向(支軸30a、32aの軸方向)について一体的にフローティング機構により移動可能である。
【0030】
ヘミングローラ30は先端側に設けられたテーパローラ38と、該テーパローラ38と一体構造で基端側に設けられた円筒ローラ40とからなる。テーパローラ38は、側面視で45°に傾斜した先細り形状の円錐台である。ヘミング加工は2回に分けて行われ、テーパローラ38は1回目のプリヘミングに用いられ、円筒ローラ40は2回目の本ヘミングに用いられる。
【0031】
ガイドローラ32は周囲が狭幅に設定された円盤形状であり、移動金型24に設けられた溝42に係合可能である。
【0032】
図4及び図5に示すように、移動金型24は、金型板44をベースに構成されている。金型板44は板形状であり、ホイールアーチ部16に接触する側を表面44a(図5参照)、その反対側の面を裏面44bと呼んで区別する。また、ホイールアーチ部16の端部16aからみてワーク側を内側、その反対側を外側と呼んで区別する。
【0033】
移動金型24は、ホイールアーチ部16の端部16aよりやや外側に沿って形成された外側円弧部50と、裏面44bにおいて外側円弧部50に沿って平行に設けられた溝42とを有する。
【0034】
移動金型24は、少なくとも、フランジ17が折り曲げられる範囲で板材を支持する部分の表面に弾性材54が設けられている。弾性材54は、移動金型24の表面44aの全面に設けられていてもよい。弾性材54は、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等である。
【0035】
金型板44は、ホイールアーチ部16の周囲に表面44aが当接するアーチ形の板形状であって、表面44aは車両12の標準的な表面形状に合わせた3次元的な曲面に設定されている。従って、移動金型24がホイールアーチ部16に取り付けられるとき、溝42はフランジ17と略平行に配設されるとともに、表面44aは車両12に対して広い面積で面接触する。
【0036】
特に、表面44aは、弾性材54が設けられていることから、車両12の機種によって表面形状が多少異なる場合であっても、その形状に合わせて接触可能である。
【0037】
図1、図6及び図7に示すように、直交ロボット22は、プログラミング動作可能な汎用の直交3軸型ロボットであり、プレート60を3軸方向に移動可能である。直交ロボット22は、生産ライン14の近傍に設けられており、該生産ライン14の搬送方向(以下、X方向とも呼ぶ。)に移動をするベース移動機構62と、該ベース移動機構62に対して生産ライン14の幅方向(以下、Y方向とも呼ぶ。)に移動をする幅移動機構64と、プレート60を備えて高さ方向(以下、Z方向とも呼ぶ。)に移動をする高さ移動機構66とを有する。
【0038】
プレート60は幅方向に長く、生産ライン14に側の端部近傍に設けられた基準ピン76とが設けられている。
【0039】
金型移動機構25は、ホイールアーチ部16の正面の規定位置に正確に設けられており、移動金型24を適正姿勢で支持するブラケット72と、該ブラケット72をX方向に往復動させるシリンダ(アクチュエータ)74と、全体を支持する支柱75とを有する。移動金型24及びブラケット72は、シリンダ74の作用下に、待機時には外側の待機位置W(図6参照)にあり、車両12が搬送されてヘミング加工をする際には内側の基準位置Pまで移動をする。
【0040】
基準ピン76は、先端がテーパ形状であり、その下部には環状突起76aが設けられている。フロアパネルには、基準ピン76が挿入される基準孔84が設けられている。
【0041】
次に、このように構成されるロールヘミング装置10を用いたロールヘミング加工について説明する。ロールヘミング装置10では、車両12のホイールアーチ部16についてロールヘミング加工を行うものとする。図5、図10では、フランジ17を折り曲げているが、このフランジ17により図示しないインナーパネルの端部を挟み込むようにしてもよい。
【0042】
ロールヘミング装置10のコントローラ29では、まず、光電センサ28又はその他の手段によって、対応するステーションに車両12が台車20によって搬入されてきたことを確認する。コントローラ29では、所定の生産管理コンピュータからの情報により車両12の機種が把握できている。
【0043】
このとき、図9に示すように、車両12は、台車20に対して前方部分はピン21で位置決めしているが、後方部には位置決め手段が設けられていないことから、仮想線で示すように該後方部分は基準位置Pに対してY方向にずれが生じている。
【0044】
次に、図8Aに示すように、車両12のずれはあまり大きくはないことから、基準ピン76は、少なくとも先端部が基準孔84に挿入される。
【0045】
図8Bに示すように、基準ピン76をさらに上昇させることにより、該基準ピン76の先端テーパ部に沿って基準孔84が動く。
【0046】
図8Cに示すように、基準孔84は、基準ピン76のストレート部分にほとんど隙間なく挿入され、ホイールアーチ部16のX方向及びY方向のずれが修正される。また、環状突起76aによってフロアパネルを支持して、規定高さに設定され、Z方向についても基準位置Pに対応して位置決めがなされる。
【0047】
結果として、ホイールアーチ部16は、生産ライン14によって搬送された搬入位置P0(図9の太仮想線部参照)から、機種毎に予め規定された基準位置Pに正確に移動・位置決めされることになる(図9の太線部参照)。なお、当初の搬入位置P0は、生産ライン14によって搬送された状態においてある程度のばらつきのあり、固定位置ではない。搬入位置P0は、X方向及びY方向については基準位置Pに対してずれがない場合もあり、平面的には移動がないこともあり得るが、Z方向については移動が生じる。
【0048】
次に、図9の矢印Bで示すように、金型移動機構25によって、ホイールアーチ部16がセットされている基準位置Pまで移動金型24を移動させる。この動作は、シリンダ74による単純な直動で足りる。このとき、移動金型24をホイールアーチ部16に対して適度に押圧させておいてもよい。
【0049】
ここまでの処理において、直交ロボット22及び金型移動機構25では、ホイールアーチ部16や基準孔84の位置や向きを特にセンシングする必要はなく、ホイールアーチ部16を簡便に位置決め可能である。
【0050】
この後、加工用ロボット27を車両12の機種に応じて設定されたデータに基づいて動作させ、図5に示すように、1回目のプリヘミング動作を行う。1回目のプリヘミング動作では、円筒ローラ40を移動金型24の表面に当接させ、テーパローラ38をフランジ17に当接させた状態でヘミングローラ30を転動させる。これにより、フランジ17は略45°折り曲げられる。
【0051】
この段階においても、加工箇所としてのホイールアーチ部16及び移動金型24は、機種毎に予め設定された基準位置Pに正確に位置決めされていることから、加工用ロボット27では、移動金型24、溝42及びホイールアーチ部16等の位置や向きを特にセンシングする必要はなく、機種毎に予め設定されたティーチングデータに基づいた規定経路に沿ってヘミングユニット26を移動させればよい。
【0052】
これにより、ガイドローラ32は溝42にガイドされて転動する。加工用ロボット27によるヘミングユニット26の位置決めに多少の誤差がある場合であっても、ガイドローラ32は、溝42に係合して適切な経路を移動することになる。
【0053】
一方、図5に示すように、フランジ17が溝42の延在方向に対して湾曲している場合には、これに応じてヘミングローラ30も軸方向に変位させるとよい。この変位処理は、車両12の機種毎に、ヘミングローラ30の進退量を規定したサブティーチングデータに基づいて行えばよい。
【0054】
本実施の形態に係るロールヘミング装置10によれば、ワークとしてのホイールアーチ部16と移動金型24の双方が基準位置Pに配置されることから、車両12の搬送時のばらつきが解消されている。なお、ホイールアーチ部16と移動金型24との微妙な形状差、又は機種毎のホイールアーチ部16の微妙な形状差がある場合には弾性材54を移動金型24に設けることにより吸収してもよい。
【0055】
すなわち、図5において、フランジ17は、高さ方向に僅かに湾曲しているが、該フランジ17を支持する移動金型24の表面44aには弾性材54が設けられていることから、高さ方向の湾曲は該弾性材54の伸縮によって吸収されることから、特段の制御上の手段を講じることなく、フランジ17のヘミング加工が可能となる。すなわち、図5の符号Aで示すように、ヘミングローラ30とガイドローラ32で挟持される箇所では弾性材54が適度に圧縮されて、押圧力が確実に伝わり、板材と弾性材54との間には隙間が生じることなく、フランジ17が適切に折り曲げられる。
【0056】
また、移動金型24及びフランジ17は、ヘミングローラ30とガイドローラ32によって挟持されていることから、押圧力は相殺され、加工用ロボット27には負荷がかからない。
【0057】
図10に示すように、2回目の本ヘミング加工を行う場合には、ヘミングユニット26及びガイドローラ32は、1回目のプリヘミング加工の場合と同じ経路を移動する。
【0058】
ヘミングローラ30については、1回目のプリヘミング加工の場合(図5参照)と比較してやや先端側に変位した位置を転動し、円筒ローラ40によってフランジ17を折り曲げ、当初の角度から90°折り曲げられる。
【0059】
このようにして、ホイールアーチ部16のフランジ17にロールヘミング加工を行った後、加工用ロボット27を退避させ、移動金型24を金型移動機構25によって元の待機位置Wまで待機させ、基準ピン76を基準孔84から抜き、車両12の搬出に支障がないように直交ロボット22によってプレート60を元の位置まで戻す。
【0060】
上述したように、本実施の形態に係るロールヘミング装置10によれば、車両12のホイールアーチ部16及び移動金型24が直交ロボット22及び金型移動機構25によって基準位置Pにセットされることから、ホイールアーチ部16に対して移動金型24を適正に当接させることができる。この際、センシング手段による位置決めは不要であり、簡便である。移動金型24及びホイールアーチ部16は基準位置Pにセットされることから、加工用ロボット27は、基準位置Pに応じて予め設定された動作をすれば足りることから、センシング手段を用いた経路制御が不要である。
【0061】
移動金型24はある程度の重量があるが、この重量を支持するのは、基本的には3軸構成の直交ロボット22であり、多関節ロボットのようにアーム部がないことから重量物を支えやすく、各軸モータは過度な高出力タイプでなくてもよい。
【0062】
また、直交ロボット22、金型移動機構25及び加工用ロボット27には、作用対象物の位置、向き等を検出するセンシング手段は不要であり、制御手段及び構成が簡便、小型且つ廉価となるとともに、十分な位置決め精度を確保するためには動作速度が遅くなることがない。これにより、相対的には、ロールヘミング加工に割り当てられる時間を長く確保できる。
【0063】
また、基準位置Pは車両12の機種に応じて異なる位置に設定され、直交ロボット22は、機種に応じてホイールアーチ部16を基準位置Pに移動させている。これにより、複数機種を生産する生産ライン14に好適に適用可能である。
【0064】
直交ロボット22は、汎用の直交型ロボットを適用可能であって、しかも位置決め手順が容易である。直交ロボット22は、車両12におけるホイールアーチ部16の近傍を保持することから、位置決め精度が高い。
【0065】
金型移動機構25は、単一のシリンダ74により移動金型24を待機位置Wと基準位置Pとの間を往復動作させており、簡便構成である。
【0066】
上記の例では、金型移動機構25は移動金型24を直線状に移動するものとしたが、設計条件によっては、図11に示すように、金型移動機構25は回転移動させてもよい。
【0067】
本発明に係るロールヘミング装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施の形態に係るロールヘミング装置の模式斜視図である。
【図2】生産ライン、台車及び車両を示す模式平面図である。
【図3】ヘミングユニットの斜視図である。
【図4】ホイールアーチ部に固定された移動金型の斜視図である。
【図5】プリへミング加工をする様子を示す模式斜視図である。
【図6】車両におけるホイールアーチ部の周辺と、直交ロボットと、金型移動機構の平面図である。
【図7】車両におけるホイールアーチ部の周辺と、直交ロボットと、金型移動機構の側面図である。
【図8】図8Aは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の最初の段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図であり、図8Bは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の中間段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図であり、図8Cは、基準ピンを上昇させて基準孔に挿入させる際の最終段階の、基準ピン先端部及び基準孔の拡大模式断面図である。
【図9】本実施の形態に係るロールヘミング装置における車両及び移動金型の移動動作を示す模式平面図である。
【図10】本へミング加工をする様子を示す模式斜視図である。
【図11】変形例に係るロールヘミング装置の模式平面図である。
【符号の説明】
【0069】
10…ロールヘミング装置 12…車両(ワーク)
14…生産ライン 16…ホイールアーチ部(加工箇所)
17…フランジ 20…台車(搬送手段)
22…直交ロボット(ワーク移動手段) 24…移動金型(金型)
25…金型移動機構 26…ヘミングユニット
27…加工用ロボット 30…ヘミングローラ
32…ガイドローラ 60…プレート
76…基準ピン 84…基準孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを前ステーションからヘミング加工ステーションの搬入位置まで搬送する搬送手段と、
前記ヘミング加工ステーションに設置され、前記搬送手段により搬送された前記ワークのフランジを前記搬入位置から所定の基準位置に移動させるワーク移動手段と、
金型を所定の待機位置から前記基準位置に移動させ、前記フランジと反対側の面に前記金型を当接させる金型移動手段と、
前記金型とともに前記フランジを挟持して折り曲げるヘミングローラと、
を有することを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項2】
請求項1記載のロールヘミング装置において、
前記ワークは複数機種があり、
前記基準位置は機種に応じて異なる位置に設定され、
前記ワーク移動手段は、機種に応じて前記加工箇所を前記基準位置に移動させることを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項1】
ワークを前ステーションからヘミング加工ステーションの搬入位置まで搬送する搬送手段と、
前記ヘミング加工ステーションに設置され、前記搬送手段により搬送された前記ワークのフランジを前記搬入位置から所定の基準位置に移動させるワーク移動手段と、
金型を所定の待機位置から前記基準位置に移動させ、前記フランジと反対側の面に前記金型を当接させる金型移動手段と、
前記金型とともに前記フランジを挟持して折り曲げるヘミングローラと、
を有することを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項2】
請求項1記載のロールヘミング装置において、
前記ワークは複数機種があり、
前記基準位置は機種に応じて異なる位置に設定され、
前記ワーク移動手段は、機種に応じて前記加工箇所を前記基準位置に移動させることを特徴とするロールヘミング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−110801(P2010−110801A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286935(P2008−286935)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]