ロールミル装置の材料漏れ抑制構造
【課題】 簡単な構成でロール端部から漏れ或いは飛散したペースト状材料による装置の汚れを抑制できるロールミル装置の材料漏れ抑制構造を提供する。
【解決手段】 エプロンロール24の端部に備えられたフランジ部122には、周溝130が備えられると共に、飛散防止板部192の内周縁200は、フランジ部122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204は、そのフランジ部122の外周面202よりも外周側に位置する。そのため、エプロンロール24上でその両端部に向かった処理材料206は、フランジ部122の外周面202と周溝130との段差部分で接液部が無くなるので飛散するが、飛散防止板部192に捕捉され、受け皿92に落とされる。
【解決手段】 エプロンロール24の端部に備えられたフランジ部122には、周溝130が備えられると共に、飛散防止板部192の内周縁200は、フランジ部122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204は、そのフランジ部122の外周面202よりも外周側に位置する。そのため、エプロンロール24上でその両端部に向かった処理材料206は、フランジ部122の外周面202と周溝130との段差部分で接液部が無くなるので飛散するが、飛散防止板部192に捕捉され、受け皿92に落とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のロールを備えたロールミル装置の改良に関し、特に、ロール端部からの材料漏れを抑制する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、絶縁ペースト、導電性ペースト、蛍光体ペースト、ガラスペースト等の電子ペースト、自動車電装用セラミックや電子基板用セラミック等のファインセラミックス、プリンタ用インク、磁器色付け用無機顔料、漆等の顔料・インク類、イカ墨液や軟膏等の医薬品などを製造するに際して、ペーストや粘性流体等の混練や分散等の目的で複数本のロールを供えた三本ロールミル等のロールミル装置が用いられている(例えば特許文献1、2を参照。)。
【0003】
上記の三本ロールミルは、互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された相互間隔が極めて小さな3本の略円筒形のロール(フィードロール、センターロール、エプロンロール)を備えたもので、フィードロール上に供給されたペースト状材料をエプロンロール上から掻き取って回収するようになっている。それら3本のロールは、隣接するもの相互に回転方向が相違し且つペースト状材料の供給側から回収側に向かって回転速度が高くなるように設定されている。
【0004】
そのため、ペースト状材料をフィードロール上に供給すると、フィードロールおよびセンターロールの間隙において圧縮作用および剪断作用が働くので、凝集粒子が分裂破壊されて分散させられる。また、同時に、相対的に回転速度の高いセンターロール表面にペースト状材料が移動する。次いで、ペースト状材料は、センターロールおよびエプロンロールの間隙においても、同様に圧縮作用および剪断作用を受けて更に分散性が高められると共に、相対的に回転速度の高いエプロンロール表面に移動する。エプロンロール表面に移動したペースト状材料は、センターロールとは反対側の位置においてその表面に押し付けられているドクターブレードで掻き取られ、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−085036号公報
【特許文献2】特開2005−334680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような三本ロールミルにおいては、ペースト状材料がロールの軸心方向における中央部に供給されるが、ロール間の極めて小さな間隙で圧縮作用を受けたペースト状材料はロールの中央部から両端部に向かわせられる。ロール端部に至ったペースト状材料は、例えば更にその表面に沿って流れ、フランジ表面を経て回転軸部に付着してロール駆動に支障を来すことがある。また、例えば、ロール回転によって生じた遠心力の作用をも受けて飛散してフレーム等を汚すこともある。三本ロールミルの構造上これらの部分を洗浄するのは困難であり、しかも、三本ロールミルで処理されるペースト状材料の粘度は比較的高いため、洗浄に多大な手間と時間とを必要とする問題があった。なお、例えば、センターロールとエプロンロールとの押圧力を高くすると、エプロンロールに処理材料が移動し難くなる一方、押圧力が低いと処理材料がエプロンロールに移動せず下に落下してしまうので、圧力バランスの調節が微妙で、適切な条件設定が難しく、処理材料の流出や飛散を防ぐことは困難である。
【0007】
なお、前記特許文献1,2においては、エプロンロール端部のペースト状材料をフィードロールに戻す機構が提案されている。例えば、前記特許文献1では、エプロンロールの両端部にそれよりも高速で反対方向に回転する一対の端部ロールを押し付け、それら端部ロール表面のペースト状材料をスクレーパで掻き取ってフィードロール中央部に戻すものが示されている。また、前記特許文献2では、エプロンロール両端部のセンターロール近傍位置に端縁スクレーパを押し付けてペースト状材料を掻き取り、センターロール上を経てフィードロール中央部に戻すものが提案されている。十分に分散されないペースト状材料がエプロンロール端部に集まる傾向があるので、これらはそのような分散不十分なペースト状材料を自動的に再処理することを目的とするものであるが、このようにしてロール端部のペースト状材料を掻き取れば、前述した回転軸部への付着や飛散の問題が緩和されると考えられる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロールミルでは、端部ロールをエプロンロールよりも高速で駆動し且つ適度な押圧力で押し付ける必要があるので、駆動機構等の構成が複雑になる問題がある。エプロンロール外周面の端部に押し付けるスクレーパを追加した上記特許文献2に記載のロールミルによれば、駆動機構等は特に複雑化しない。しかしながら、この構成で掻き取ったペースト状材料をフィードロールの中央部に落とすためには、スクレーパに略球面状の案内面を形成すると共にロール側端面と対向するサイドプレートを設けることが必須であると考えられる。ところが、異物混入を防ぐためには、このサイドプレートをロール端面に接触しないように配置する必要があって、それらの間には隙間が生ずるので、ロール端面よりも外側にペースト状材料が漏れ出ることを抑制し難い。また、スクレーパの側面等に当たったペースト状材料は、掻き取られないので回転軸部に付着し或いは飛散することになる。このため、ペースト状材料の回転軸部への付着や飛散を防止できるものではなかった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、簡単な構成でロール端部から漏れ或いは飛散したペースト状材料による装置の汚れを抑制できるロールミル装置の材料漏れ抑制構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、各々が互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された複数本の円筒形のロールを備え、供給側のロール上に供給された処理材料を取出側のロール上から掻き取って回収する形式のロールミル装置において、その処理材料が取出側のロールの端縁から漏れることを抑制するための材料漏れ抑制構造であって、(a)前記取出側のロールの軸心方向の両端部に中央側よりも両端側の方が小径となるようにそれぞれ形成された一対の段付き部と、(b)前記一対の段付き部の大径部の外周面より内周側に先端縁部が位置し且つその外周面よりも外周側に基端縁部が位置するように前記取出側のロールの周方向の所定範囲においてそれら一対の段付き部の小径部に向かって突設された一対の飛散防止板とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0011】
このようにすれば、取出側のロールの両端部には、中央側よりも両端側の方が小径の一対の段付き部が備えられると共に、その段付き部の小径部に向かって一対の飛散防止板がその先端縁部と基端縁部との間に段付き部の外周面が位置するように突設される。そのため、取出側のロール上でその中央部から両端部に向かった処理材料は、段付き部の大径部上から小径部上に向かう際にそれらの段差部分で接液部が無くなるので飛散する。このとき、その段付き部の小径部に向かって突設された飛散防止板はその先端縁部が段付き部の大径部よりも内周側に位置し且つ基端縁部がその大径部よりも外周側に位置するから、飛散した処理材料はその飛散防止板に捕捉される。したがって、飛散防止板を設けるだけで、ロール端部に至った処理材料がそこから飛散してフレームを汚すことや、その表面に沿って移動して回転軸部に付着することが抑制される。すなわち、簡単な構成でロール端部から漏れ或いは飛散した処理材料による装置の汚れが抑制されるロールミル装置が得られる。
【0012】
ここで、好適には、前記ロールミル装置の材料漏れ抑制構造は、前記一対の段付き部が前記取出側のロールの軸心方向の両端部に備えられた一対の周溝によって形成されたものであり、前記周溝内に溜まった前記処理材料を掻き取るための掻取板を含むものである。このようにすれば、処理材料が段付き部の大径部上から小径部上に向かう際に、それらの段差部分で飛散することなく表面に沿って流れたものがあっても、周溝で捕捉され且つ掻取板によって掻き落とされるので、それよりも端部側に流れることが抑制され、延いては回転軸部に付着することが一層抑制される。
【0013】
また、好適には、前記掻取板は前記取出側のロールの下側に位置するものである。このようにすれば、周溝内から掻き落とされた処理材料がロール上に戻ることが無いので、ドクターブレードで掻き取られて回収された処理材料にこれが混入してその品質が低下することが抑制される。また、取出側のロールには、一般にその前段のロールからその上面側に処理材料が移ることとなり、その上面側でドクターブレードで掻き取られるので、ロールの下側位置に掻取板を配置すれば、ドクターブレードによる回収と掻取板による回収とが上下に分かれて行われる利点がある。
【0014】
また、好適には、前記掻取板は前記周溝に接触しない状態で設けられているものである。このようにすれば、それらの接触に起因する異物混入が生じない利点がある。
【0015】
前記飛散防止板は前記取出側のロールの下側に位置するものである。このようにすれば、飛散して飛散防止板に付着した処理材料がロール上に戻ることが無いので、ドクターブレードで掻き取られて回収された処理材料にこれが混入してその品質が低下することが抑制される。また、取出側のロールには、一般にその前段のロールからその上面側に処理材料が移ることとなり、その上面側でドクターブレードで掻き取られるので、ロールの下側位置に飛散防止板を配置すれば、ドクターブレードによる回収と飛散防止板による回収とが上下に分かれて行われる利点がある。すなわち、掻取板および飛散防止板は何れも取出側のロールの下側に配置されることが好ましい。
【0016】
一層好適には、前記飛散防止板は、前記取出側のロールの下側において中心角が90〜150°に亘る範囲すなわち1/4周から5/12周に亘る範囲に設けられる。飛散防止板は、処理材料が飛散し得る範囲に設けられればよく、ロール寸法・処理材料の粘性や処理量等を考慮して、他の構成要素と干渉しないように配設範囲を適宜定め得る。1/4周以上の範囲に設ければ処理材料がロール上から飛散し得る略全域に飛散防止板が設けられるので、処理材料の飛散による汚れを十分に抑制できる。また、5/12周以下の範囲に留めれば他の構成要素との干渉も容易に避けることができる。因みに、ロールミル装置では一般に複数個のロールの直径が一様とされるので、取出側のロールの軸心と飛散防止板の端縁とを結ぶ直線が、取出側のロールとこれに隣接するロールのそれぞれの軸心を結ぶ直線に対して下方に30°を成すものとすれば、その端縁は隣接するロールに干渉し得ない。また、前記ドクターブレードの支持機構は、取出側のロールおよび隣接するロールのそれぞれの軸心を結ぶ直線上或いはその近傍に位置させられるから、飛散防止板の端縁をその直線よりも下方に位置させればドクターブレードの支持機構との干渉も容易に避け得る。したがって、飛散防止板は最大で取出側のロールの5/12周の大きさとすることが望ましい。また、ドクターブレードの支持機構との干渉を一層確実に避けるためには、ドクターブレードの支持機構側でも取出側のロールと飛散防止板の端縁とを結ぶ直線がロールの軸心を結ぶ直線に対して下方に30°を成すようにして、中心角が120°すなわち1/3周の大きさとすることが望ましい。
【0017】
また、好適には、前記飛散防止板は前記段付き部の小径部の外周面に接触しない状態で設けられているものである。このようにすれば、それらの接触に起因する異物混入が生じない利点がある。
【0018】
また、好適には、前記ロールミル装置の材料漏れ抑制構造は、前記飛散防止板と前記掻取板とが一体的に設けられているものである。このようにすれば、別々に設ける場合に比較して構成が一層簡単になる。
【0019】
また、好適には、前記段付き部は前記取出側のロールの両端部に備えられたフランジに設けられたものである。一般にロールの両端部にはこれを軸心回りの回転可能に軸支するためのフランジが備えられるが、ロール両端部に向かわせられた処理材料は更にその表面に沿って流れ、ロール端部を経てそのフランジ上に至る。そのため、フランジに前記の段付き部を設けておけば、その段付き部の大径部と小径部との段差部分で接液部が無くなるので飛散する。しかも、フランジはロールミル装置の構造上、ロール外周面よりも小径で設けられることから、他のロールやフランジ等に接触しないので、そのフランジの外周面に段付き部を形成しても、その大径部と小径部との間に形成される角部が他のロールやフランジ等に押圧されて変形し或いは摩耗させられて異物混入の原因となることもない。また、セラミックロールを備えたロールミル装置では、段付き部は、ロール外周面に形成するよりも金属製のフランジに形成する方が容易である。したがって、段付き部はロール表面に限られず、その端部に備えられたフランジ等に設けることもできるが、そのようにすることが特に好適である。
【0020】
また、好適には、前記飛散防止板は、先端縁部が前記段付き部の小径部の外周面に沿った円弧状を成すものである。このようにすれば、飛散防止板の全体が飛散防止に好適に機能する。なお、飛散防止板の基端縁部も先端縁部と同心の円弧状で形成することが、可及的に簡単な形状で飛散防止機能を確保するために好ましい。
【0021】
なお、前記飛散防止板の先端縁部から基端縁部までのロール径方向における長さ寸法は、飛散防止板を設けない場合における飛散の程度に応じて、ロール径、処理材料の粘性や処理量等に基づいて定めればよいが、例えば、10〜30(mm)程度の範囲内である。
【0022】
また、好適には、前記段付き部の大径部と小径部との段差の大きさは3(mm)以上である。飛散防止板の先端縁部を段付き部に接触させることなく大径部よりも内周側に容易に位置させるためには、5(mm)以上の段差が一層好ましい。このようにすれば、摩耗による異物混入を避けつつ処理材料の飛散を抑制することが容易になる利点がある。なお、飛散防止の観点では段差の大きさの上限は特に限定されないが、構成部品の機械的強度の確保と加工の容易性等のためには小さい方が好ましい。また、段付き部を周溝によって構成する場合には、同様な観点から、その溝幅寸法は飛散防止板の厚さ寸法よりも十分に大きいことが望ましい。但し、周溝内に溜まった処理材料を掻取板を用いて掻き落とす構成においては、溝幅寸法が掻取板の厚さ寸法に対して過度に大きくなると、周溝内に溜まった処理材料が掻き落とされ難くなり、延いては回転軸部への付着を抑制する効果が低下する。したがって、溝幅寸法はその内壁面に掻取板が接触することを確実に防止できる範囲で小さいことが好ましい。
【0023】
また、前記掻取板は適宜の形状のものを用いることができ、特に形状が限定されないが、例えば、薄く且つ細長い直方体形状とすることができる。掻取板の前記ロールの周方向における厚さ寸法は、前記小径部に付着している処理材料を掻き落とし得るだけの機械的強度を有するのであれば、適宜定めることができる。処理材料を掻き落とすときにロールの周方向に撓みが生じるような特性を有するものでも差し支えない。また、掻取板のロール軸心方向における幅寸法は、周溝の内壁面に接触しない範囲で大きくすることが好ましい。
【0024】
また、本発明を適用できるロールミル装置のロール材質は特に限定されず、チルド鋼等の金属製のものにも、アルミナ等のセラミック製のものにも同様に適用される。セラミック製ロールは、全体がセラミックスから成るものでも、金属ドラムの外周面にセラミックロールが嵌め付けられたものでもよい。なお、本願において、「円筒形のロール」には、全体の外径寸法が一様なクラウンレスロールの他、軸心方向の中央部が両端部に比べて大径とされたクラウン加工が施されたものも含む。
【0025】
なお、本発明は、例えばフィードロール、センターロール、およびエプロンロールを備えた3本ロールミル装置に好適に適用されるが、2本ロールミル装置や4本以上のロールを備えたロールミル装置にも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の三本ロールミルの全体を示す正面図である。
【図2】図1の三本ロールミルの全体を示す左側面図である。
【図3】図1の三本ロールミルの全体を示す右側面図である。
【図4】図1の三本ロールミルの全体を示す平面視図である。
【図5】図1の三本ロールミルの全体を示す背面図である。
【図6】図2のVI-VI視断面にて駆動機構を説明する図である。
【図7】図1のVII-VII視断面にて駆動機構を説明する図である。
【図8】(a)は本発明の一実施例の三本ロールミルにおける飛散防止板の配設状態を説明するための図6における右側のフランジ部近傍を拡大して示す図であり、(b)は(a)における右側面視図である。
【図9】(a)は図8の飛散防止板の正面図、(b)は(a)における右側面図である。
【図10】図8の飛散防止板の配設状態をフランジ部近傍を拡大して正面視にて示す図である。
【図11】本発明の三本ロールミルに用いられる他の態様の飛散防止板を示す正面図である。
【図12】図11の飛散防止板の配設状態をフランジ部近傍を拡大して正面視にて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0028】
図1は、本発明の材料漏れ抑制構造が適用された三本ロールミル装置10の全体を示す正面図、図2〜図5は、それぞれその左側面図、右側面図、平面図、背面図である。これらの図において、三本ロールミル装置10は、内部に駆動モータ12を備えた駆動機構部14と、これを図1における左右方向両端部で支持する一対の脚部16,16と、駆動機構部14によってそれぞれ両端部において支持された3本のロールすなわちフィードロール20,センターロール22,エプロンロール24とを備えている。本実施例においては、エプロンロール24が取出側のロールに、フィードロール20が供給側のロールにそれぞれ相当する。
【0029】
上記の脚部16は、何れも図2、図3における左右方向の両端部が下方に突き出した逆U字形状を成すもので、それら4つの突き出し部分の下端部にはそれぞれ車輪26および固定脚28が設けられている。図1等は、車輪26よりも固定脚28が僅かに下方に突き出した使用時の状態を示している。三本ロールミル装置10を移動させる際には、脚部16,16内に備えられた図示しないシリンダ等の作動に従って車輪26の方が僅かに下方に突き出した状態とされる。
【0030】
また、駆動機構部14の上端部には、上記脚部16,16の上方に軸受け部30,32が備えられている。前記三本のロール20,22,24は、それぞれ軸心回りに回転可能な状態で、これら軸受け部30,32により両端部を支持されている。また、軸受け部30,32には、図2、図3における左右方向両端に加圧装置操作ハンドル34がそれぞれ備えられていると共に、各々の近傍には圧力計36が備えられている。加圧装置操作ハンドル34は、後述する内部機構を作動させることで3本のロール20,22,24の軸心間隔を変化させて、それらロール20,22,24相互の間隔或いはそれら相互の押し付け圧を調節するためのものである。また、上記圧力計36は、この押し付け圧を表示するために設けられている。
【0031】
上記のロール20,22,24は、例えばアルミナセラミック製円筒から成るもので、例えば、φ120(mm)×450L(mm)程度の外形寸法を備えている。フィードロール20とセンターロール22との間には、略五角形を成し且つ下端面がそれらロール20,22の表面に略沿った形状を有する一対の堰板38,38が、それらロール20,22の両端部に備えられている。これら堰板38,38は、投入された処理材料がロール20,22の軸心方向に必要以上に広がることを抑制するためのものである。図1〜図3に示すように、駆動機構部14上には堰板支持装置40が備えられている。堰板支持装置40は、ロール20,22の上方にそれらの軸心方向すなわち図4における左右方向に沿って伸びる案内棒42を備えており、堰板38,38は、この堰板支持装置40によって、ロール20,22の軸心方向の任意の位置で吊り下げられるようになっている。
【0032】
また、エプロンロール24のセンターロール22とは反対側には、図4、図5に示すようにドクター44が備えられている。ドクター44は、例えばステンレス鋼などから成るもので、エプロンロール24側の先端部には例えばアルミナセラミック製の図示しないブレードが取り付けられている。ドクター44の両端部には一対の押さえネジ46,46が備えられており、これをねじ込むことにより、先端のブレードがエプロンロール24の表面に押し当てられる。ブレードは、エプロンロール24の軸心方向の全長に亘ってその外周面に押し付けられるように、その長さ寸法が、エプロンロール24の円筒状外周面の軸心方向長さよりも僅かに長くなっている。
【0033】
また、ドクター44の下方には、水平な受け面を有する受け台50が駆動機構部14の壁面にネジ止めなどによって固定されている。ドクター44は、エプロンロール24上の材料を掻き落として回収するためのもので、掻き落とされた材料を受けるための図示しない容器が上記の受け台50上に載置される。
【0034】
また、図1において右側に位置する軸受け部32の側面には、起動ボタン52および停止ボタン54を有するスイッチボックス56が取り付けられている。図2等に示されるように、背面側にも同様なスイッチボックス58が軸受け部30に備えられおり、正面側および背面側の何れからも起動および停止操作が可能である。
【0035】
また、図1において左側に位置する軸受け部30の上面には、非常停止ボタン60が備えられている。図3、図5に示されるように、背面側にも同様な非常停止ボタン62が軸受け部32に備えられている。そのため、通常の起動および停止操作と同様に、正面側および背面側の何れからも非常停止操作が可能である。
【0036】
また、ロール20,22,24の上方には、それらを覆う透明なカバー64が取り付けられている。そのカバー64のフィードロール20およびセンターロール22の間隙の真上に当たる部分は略矩形にくり抜かれており、その略矩形の孔66は後述するように資材投入口として設けられたもので、上方に持ち上げて開閉可能な蓋68で塞がれている。なお、前記堰板38,38は、例えば、上記資材投入口66よりも外側に配置されている。
【0037】
また、図1において左方に位置する軸受け部30の側面には、上記ロール20,22,24を冷却するための給排水機構70が備えられている。ロール20,22,24は何れも中空円筒状を成すもので、給排水機構70の給水ホース72,74,76(図2参照)を通してそれぞれの内部に冷却水を供給することでそれらが冷却されるようになっている。供給された冷却水は排水ホース78を通して排出される。なお、排水ホースは、給水ホースと同様にロール20,22,24の各々に対して設けられているが、図1には手前の一本のみを図示した。給水ホース72,74,76からの給水量は、液量調節バルブ80,82,84によって個別に調節可能で、各ロール20,22,24への供給水量を調節することにより、ロール温度上昇を抑制し、延いては処理材料温度の上昇を抑制できる。
【0038】
なお、図1、図4、図5において、86は、制御回路、スイッチ、計器等が収容された制御盤である。また、図2、図3に示す手動操作用手回しハンドル88は、必要に応じて図3に示す差込口90から差し込んで取り付けられるもので、異物除去や清掃等の際には、ハンドル88でロール20,22,24を必要量だけ手動で回転させることができる。
【0039】
また、図1、図5に示されるように、ロール20,22,24の下方には、受け皿92が備えられている。ロール20,22間或いはロール22,24間から落下した処理資材は、この受け皿92で受けられる。
【0040】
また、図1、図2に示されるように、駆動モータ12の駆動プーリ94には、タイミングベルト96が巻き掛けられており、その回転がその駆動プーリ94よりも大径の減速装置の従動プーリ98に伝達される。前記ロール20,22,24は、後述するように、駆動モータ12の回転が減速装置を介して伝達されることで回転させられるようになっている。
【0041】
また、図1、図2において、前記の給水ホース72,74,76、排水ホース78等は、ロータリージョイント104,106,108によって各ロール20,22,24の回転軸(すなわち後述する第5シャフト158,第3シャフト148,第2シャフト126)に接続されている。
【0042】
図6は、図2のVI-VI視断面の要部を示したもので、給排水機構70、制御盤86、脚部16,16、カバー64等は省略されている。図6において、前記の従動プーリ98は、軸受け部30内においてシャフト110の一端に嵌め付けられている。シャフト110は、その両端部においてベアリング・ユニット112,112で軸心回りの回転可能に支持されており、その他端には、従動プーリ98よりも小径の第1ギア114が嵌め付けられている。上記の第1ギア114は、エプロンロール24の第1シャフト116に嵌め付けられた第2ギア118に噛み合わされている。
【0043】
上記第1シャフト116は一端にフランジ部120が備えられたフランジ付きシャフトで、上記のエプロンロール24は、一端にそのフランジ部120が、他端に第2シャフト126のフランジ部122が複数本例えば4本のボルト124によってそれぞれ嵌め付けられたものである。上記第2シャフト126および後述する第3シャフト148乃至第6シャフト160(図7参照)は何れも第1シャフト116と同様フランジ付きシャフトである。上記フランジ部120,122は、例えば114(mm)程度の外径寸法および20(mm)程度の厚さ寸法を備えたもので、その外周面には、それぞれ周溝128,130が全周に亘って一様な例えば10(mm)程度の開口幅寸法および5(mm)程度の深さ寸法で設けられている。上記フランジ外径は、ロール外径よりも僅かに小さい寸法である。本実施例においては、この周溝128,130が「一対の段付き部」に相当する。
【0044】
また、上記の第1シャフト116および第2シャフト126は、それぞれベアリング・ユニット132,132によって軸心回りの回転可能に支持されており、その第2シャフト126には、第2ギア118よりも小径の第3ギア134が嵌め付けられている。
【0045】
また、前記第2シャフト126にはその軸心方向に貫通する貫通孔136が、前記第1シャフト116には前記フランジ部120のその貫通孔136に対応する位置に有底孔138が、それぞれ設けられており、エプロンロール24内には、第2シャフト126の貫通孔136を貫通し且つ先端部が有底孔138内に位置させられた給水管140が備えられている。給水管140は、前記のロータリージョイント108を介して前記の給水ホース76に接続されており、その給水ホース76から供給された冷却水は、給水管140に多数設けられた吐出孔からエプロンロール24内に吐出させられる。吐出された冷却水は、貫通孔136と給水管140との隙間を通って前記の排水ホース78に戻される。
【0046】
図7は、図1のVII-VII視断面を表したもので、軸受け部30,32およびロール20,22,24よりも下方に備えられた構成要素は省略されている。前記の図6は、この図7におけるVI視図に対応する。図7において、前記のセンターロール22は、前記エプロンロール24と同様に、一端に第3シャフト148のフランジ部142が、他端に第4シャフト150のフランジ部144が例えば4本のボルト146でそれぞれ嵌め付けられたものである。また、前記のフィードロール20も、上記センターロール22およびエプロンロール24と同様に、一端に第5シャフト158のフランジ部152が、他端に第6シャフト160のフランジ部154が例えば4本のボルト156でそれぞれ嵌め付けられたものである。なお、フィードロール20およびセンターロール22に嵌め付けられたフランジ部142,144,152,154には、前記フランジ部120,122に備えられているような周溝128,130は何ら設けられていない。
【0047】
また、上記の第3シャフト148,第4シャフト150,第5シャフト158,第6シャフト160は、それぞれベアリング・ユニット162,162,164,164によって軸心回りの回転可能に支持されている。第3シャフト148には、前記第3ギア134と噛み合わされた第4ギア166が嵌め付けられると共に、その第4ギア166よりもシャフト端部側に第5ギア168が嵌め付けられている。第5ギア168は第3ギア134と同じ外径寸法で、第4ギア166はそれらよりも大径である。
【0048】
また、フィードロール20の第5シャフト158には、上記の第5ギア168と噛み合わされた第6ギア170が嵌め付けられている。第6ギア170は、第4ギア166と同じ外径寸法を有している。また、第6シャフト160には、ラテラルカップリング172を介してロータリエンコーダ174が取り付けられ、フィードロール20の回転数を検出できるようになっている。
【0049】
このように、エプロンロール24の回転が小径の第3ギア134および大径の第4ギア166を介してセンターロール22に伝達され、次いで、そのセンターロール22の回転が小径の第5ギア168および大径の第6ギア170を介してフィードロール20に伝達される。そのため、各ロール20,22,24の回転速度は、それらのギア比に従って減速され、フィードロール20,センターロール22,エプロンロール24の順に回転速度が高くなる。回転速度比は、例えば1:3:9程度に設定されている。
【0050】
なお、フィードロール20およびセンターロール22にも、給水管176,178が備えられており、エプロンロール24と同様に第3シャフト148および第5シャフト158を通してロール内部に給排水させられるようになっている。
【0051】
また、前記ハンドル34がそれぞれ取り付けられたシャフト180の先端部には、それぞれピニオン182が嵌め付けられている。ピニオン182は、スライダ装置184のねじ軸186に螺合されたピニオン188と噛み合わされており、そのピニオン188の回転に伴ってねじ軸186が図7の上下方向に前後すると、そのスライダ装置184に固定されたベアリング・ユニット132,164が同方向に移動する。これにより、センターロール22の軸心とフィードロール20およびエプロンロール24の軸心との間隔が変化させられ、ロール間の隙間の大きさやロール相互の押し付け圧が変化させられる。なお、押し付け圧は、油圧により検出され、前記圧力計36に表示される。
【0052】
ところで、前記エプロンロール24のフランジ部120,122の周溝128,130は、図8(a)に図6におけるフランジ部122近傍を拡大して示すように、その図6では省略した汚染防止板190を用いるために設けられている。図8(a)およびその右側面を示す図8(b)において、195は、第2シャフト126の軸受け近傍を覆うために前記の軸受け部30(図8では省略した)に取り付けられた軸受けカバーで、その軸受けカバー195の下端部には飛散防止板固定プレート196がボルト197によって固定されている。汚染防止板190は、内径寸法が108(mm)程度、外径寸法が168(mm)程度で、径方向に例えば30(mm)程度の幅寸法を有する円弧状の飛散防止板部192と、その周方向の一部に設けられた掻取板部194とを備えたもので、その飛散防止板部192が前記飛散防止板固定プレート196に溶接などによって固着されることで、その飛散防止板固定プレート196を介して軸受けカバー195に取り付けられている。
【0053】
図9は、上記の汚染防止板190の構成を説明するための図で、(a)は正面図、(b)はその側面図である。飛散防止板部192は、厚さ寸法が2(mm)程度の薄板で、前述した内径寸法は周溝128,130底面の外形寸法よりも僅かに大きい値になっている。また、掻取板部194は、幅寸法が6(mm)程度、長さ寸法が50(mm)程度で、厚さ寸法が2(mm)程度の角棒形状を成すものである。したがって、汚染防止板190の全体の厚さ寸法は例えば8(mm)程度で、前記周溝128,130の開口幅寸法よりも僅かに小さい値になっている。また、掻取板部194の先端面は飛散防止板部192の内周縁上に位置する。汚染防止板190は、飛散防止板部192の一面に掻取板部194が例えば溶接されることによって一体化させられたもので、例えば何れもステンレス鋼で構成されている。前記図8(b)に示すように、飛散防止板部192のセンターロール22側の端縁は、エプロンロール24の軸心を結ぶ直線がエプロンロール24およびセンターロール22の軸心を結ぶ直線に対して角度αを成しており、その反対側の端縁はその直線に対して反対周りに角度βを成している。上記角度α、βは、センターロール22およびドクター44と干渉しない範囲で可及的に小さくなるように定められており、本実施例においては何れも30°である。したがって、飛散防止板部192の中心角は120°になっている。また、掻取板部194は、エプロンロール24の軸心から下ろした垂線に対して図8(b)における時計回り(すなわちエプロンロール24の回転方向とは反対方向)に例えば20°程度の角度γだけ傾いた位置に取り付けられている。前記飛散防止板固定プレート196は、飛散防止板部192のドクター44側の端縁と掻取板部194との間に位置する。
【0054】
図10は、上記汚染防止板190の配設状態を図8(a)の要部を拡大して模式的に示した図である。この図10では飛散防止板固定プレート196を省略した。汚染防止板190は、掻取板部194の先端面が周溝130の底面198から僅かに離れるように配置されている。また、前述したように汚染防止板190の厚さ寸法は周溝130の開口幅寸法よりも僅かに小さくなっているが、図示の配設状態において、汚染防止板190の側面は周溝130の内壁面に接触していない。この結果、飛散防止板部192の内周縁200すなわち先端縁部は、フランジ部122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204すなわち基端縁部は、そのフランジ部122の外周面202よりも外周側に位置している。図示しないフランジ部120側においても、汚染防止板190は同様な状態で配設されている。
【0055】
以上のように構成された三本ロールミル装置10を用いて、セラミック製品用のペースト材料やインキ等のペースト状の処理材料206(図8、図10参照)に分散・混練処理を施すに際しては、前記ハンドル34を操作して、フィードロール20とセンターロール22とがごく僅かに離れ、且つセンターロール22とエプロンロール24とが僅かに離れた状態とする。次いで、給排水機構70の流量調節バルブ80,82,84を操作してロール20,22,24内に冷却水を導入し、起動ボタン52を操作してロール20,22,24を回転させる。回転開始後、前記資材投入口66から処理材料206を投入し、速やかにハンドル34を操作してフィードロール20がセンターロール22に押し付けられるようにする。このとき、フィードロール20側の両ハンドル34近傍の前記圧力計36を監視して、表示圧力が同一になるようにハンドル操作量を調節する。
【0056】
このようにしてフィードロール20をセンターロール22に押し付けると、前記の図8に一点鎖線で示すようにフィードロール20とセンターロール22との間に供給された処理材料206は、それらの間で回転速度差に応じた剪断力を受けつつ押し広げられ或いは押しつぶされる。そして、その回転速度の相対的に高いセンターロール22に引き取られ、その外周面に貼り付いてセンターロール22とエプロンロール24との間に向かう。処理材料206がそれらの間隙に到達した後、エプロンロール24側のハンドル34を操作してエプロンロール24をセンターロール22に押し付けると、これらセンターロール22とエプロンロール24との間でも、同様にして処理材料206が剪断力を受けつつ押し広げられ或いは押しつぶされてエプロンロール24側に引き取られる。エプロンロール24上の処理材料206は、ドクター44に掻き取られて回収される。前記の汚染防止板190は、エプロンロール24の処理材料206が掻き取られた後の略1/3周に亘る範囲に設けられている。
【0057】
このとき、エプロンロール24上の処理材料206は、ロール22,24間で押圧されることによってその軸心方向の両端部に向かわせられる。前記の図10は、処理材料206がエプロンロール24の端部に到達し、フランジ部122上に広がりつつある状態を示している。ロール端部まで到達した処理材料206は、その一部が飛沫208となって飛散する。飛散方向は、ロール22,24間の押圧力に従ってそれらの軸心方向に作用する力と、遠心力とが合成された方向、すなわちエプロンロール24の軸心方向に対して傾斜してその端部側に向かう図の矢印A方向となる。この飛沫208の飛散方向には、飛散防止板部192が配設されているので、飛沫208はその飛散防止板部192に当たって受け皿92に落下する。上記説明から明らかなように、本実施例においては、エプロンロール24とフランジ部120,122との間の段差も段付き部に相当する。そして、前記図10に示されるように、飛散防止板部192の外周縁204は、その段付き部の最外周縁すなわちエプロンロール24の外周面よりも外側に位置している。
【0058】
また、飛散することなくエプロンロール24表面からフランジ部122表面に流れた処理材料206は、フランジ部外周面202と周溝130内壁面との境界角部において、一部は接液部が無くなるためにその流れ方向に沿って矢印B方向に飛散する。残部は矢印Cに示すようにその表面に沿って周溝130の内壁面を流れて周溝130内に溜まる。飛散した処理材料206は、矢印Aで示した飛沫208と同様に飛散防止板部192によって落とされるが、周溝130に溜まった処理材料206は掻取板部194によって掻き落とされ、何れも受け皿92に落下する。したがって、エプロンロール24表面をその軸心方向の端部に向かった処理材料206は、エプロンロール24上よりも外側に出たときに汚染防止板190によって受け皿92に落とされるので、エプロンロール24の回転軸部まで到達することが抑制される。フランジ部120,122の端面と軸受け部との間隔は例えば15〜20(mm)程度と小さいので、汚染防止板190が備えられていない従来構造では、飛散した処理材料206で回転軸部が汚染されてロール駆動に支障が生ずると共に、処理材料206の粘度が比較的高いことと相俟って洗浄処理が困難なため多大な洗浄時間を必要としていた。本実施例によれば、これらの不都合が何れも解消され或いは緩和される。
【0059】
要するに、本実施例によれば、エプロンロール24の両端部に備えられたフランジ部120,122には、一対の周溝128,130が備えられると共に、飛散防止板部192の内周縁200は、フランジ部120,122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204は、そのフランジ部120,122の外周面202よりも外周側に位置する。そのため、エプロンロール24上でその両端部に向かった処理材料206は、フランジ部120,122の外周面202と周溝128,130との段差部分で接液部が無くなるので飛散するが、上記のように配置された飛散防止板部192に捕捉され、受け皿92に落とされる。したがって、飛散防止板部192を備えた汚染防止板190を設けるだけで、エプロンロール24の端部に至った処理材料206が、そこから飛散して軸受け部30,32等を汚すことや、その表面に沿って移動して第1シャフト116,第2シャフト126等に付着することが抑制される。すなわち、簡単な構成でエプロンロール24の端部から漏れ或いは飛散した処理材料206による装置の汚れが抑制されるロールミル装置10が得られる。
【0060】
また、本実施例によれば、ロールミル装置10は、処理材料206の流れ方向において接液部をなくすための段付き部がフランジ部120,122の周溝128,130によって形成されていると共に、それら周溝128,130内に溜まった処理材料206を掻き取るための掻取板部194を備えている。そのため、フランジ部120,122の表面に沿って流れた処理材料206は、周溝128,130で捕捉され且つ掻取板部194で掻き落とされるので、それよりも端部側に流れることが抑制され、延いては回転軸部に付着することが一層抑制される。処理材料206の量が多い場合やその粘度が高い場合には、上記のような周溝128,130内への流れ込みが生じ易いので、掻取板部194を設けた効果はそのような場合に顕著に得られる。
【0061】
なお、上記のように掻取板部194で周溝128,130内の処理材料206を掻き落とすに際して、前述したように掻取板部194は周溝128,130の底面198に接触しないことから、フランジ部120,122や掻取板部194が摩耗してその摩耗粉が処理材料206に混入するおそれはない。
【0062】
図11は、他の実施例の三本ロールミル装置10に用いられる汚染防止板210を示す正面図である。汚染防止板210は、前記汚染防止板190の飛散防止板部192と同様な形状を成しており、前記掻取板部194に相当するものは備えられていない。
【0063】
図12は、上記図11の汚染防止板210の配設状態をフランジ部122に代わって備えられているフランジ部216近傍を拡大して要部を模式的に示す図である。このような汚染防止板210も前記汚染防止板190と同様に軸受けカバー195に取り付けられ、フランジ部216に設けられた周溝218内に内周縁220が位置するように配設して用いられる。内周縁220は、周溝218の底面222よりも外周側且つフランジ部216の外周面202よりも内周側に位置させられている。また、外周縁224は、フランジ部216の外周面202よりも外周側且つエプロンロール24の外周面よりも外周側に位置させられている。なお、本実施例においても、周溝218は、汚染防止板210の厚さ寸法に合わせてその開口幅寸法が定められている。すなわち、上述したように汚染防止板210の内周縁部が周溝218内にその内壁面に非接触状態で位置させられ得るように、周溝218の開口幅寸法が汚染防止板210の厚さ寸法よりも僅かに大きくされている。
【0064】
このように構成された汚染防止板210をロールミル装置10に用いた場合には、前記汚染防止板190に備えられている飛散防止板部192と同様な形状を備えていることから、図12の矢印A,Bに示すように飛散する処理材料206の飛沫208等は、汚染防止板190が用いられた場合と同様に汚染防止板210に当たって受け皿92に落とされる。したがって、前記実施例と同様な汚染抑制効果が得られる。
【0065】
しかしながら、フランジ部216の表面に沿って矢印Cに示すように周溝218内に流れ込んだ処理材料206を掻き落とす掻取板部194に相当するものは、この汚染防止板210には備えられていない。しかしながら、ロール端部に向かう処理材料206が十分に少なく、且つその粘度が十分に低い場合には、周溝218内に処理材料206が流れ込み難いので、このような汚染防止板210で十分な汚染防止効果がある。なお、この態様においても、周溝218内に流れ込んだ処理材料206の一部は汚染防止板210によって掻き落とされ得る。
【0066】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0067】
10:三本ロールミル装置、20:フィードロール、22:センターロール、24:エプロンロール、92:受け皿、120,122:フランジ部、128,130:周溝、190:汚染防止板、192:飛散防止板部、194:掻取板部、198:底面、200:内周縁、202:外周面、204:外周縁、206:処理材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のロールを備えたロールミル装置の改良に関し、特に、ロール端部からの材料漏れを抑制する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、絶縁ペースト、導電性ペースト、蛍光体ペースト、ガラスペースト等の電子ペースト、自動車電装用セラミックや電子基板用セラミック等のファインセラミックス、プリンタ用インク、磁器色付け用無機顔料、漆等の顔料・インク類、イカ墨液や軟膏等の医薬品などを製造するに際して、ペーストや粘性流体等の混練や分散等の目的で複数本のロールを供えた三本ロールミル等のロールミル装置が用いられている(例えば特許文献1、2を参照。)。
【0003】
上記の三本ロールミルは、互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された相互間隔が極めて小さな3本の略円筒形のロール(フィードロール、センターロール、エプロンロール)を備えたもので、フィードロール上に供給されたペースト状材料をエプロンロール上から掻き取って回収するようになっている。それら3本のロールは、隣接するもの相互に回転方向が相違し且つペースト状材料の供給側から回収側に向かって回転速度が高くなるように設定されている。
【0004】
そのため、ペースト状材料をフィードロール上に供給すると、フィードロールおよびセンターロールの間隙において圧縮作用および剪断作用が働くので、凝集粒子が分裂破壊されて分散させられる。また、同時に、相対的に回転速度の高いセンターロール表面にペースト状材料が移動する。次いで、ペースト状材料は、センターロールおよびエプロンロールの間隙においても、同様に圧縮作用および剪断作用を受けて更に分散性が高められると共に、相対的に回転速度の高いエプロンロール表面に移動する。エプロンロール表面に移動したペースト状材料は、センターロールとは反対側の位置においてその表面に押し付けられているドクターブレードで掻き取られ、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−085036号公報
【特許文献2】特開2005−334680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような三本ロールミルにおいては、ペースト状材料がロールの軸心方向における中央部に供給されるが、ロール間の極めて小さな間隙で圧縮作用を受けたペースト状材料はロールの中央部から両端部に向かわせられる。ロール端部に至ったペースト状材料は、例えば更にその表面に沿って流れ、フランジ表面を経て回転軸部に付着してロール駆動に支障を来すことがある。また、例えば、ロール回転によって生じた遠心力の作用をも受けて飛散してフレーム等を汚すこともある。三本ロールミルの構造上これらの部分を洗浄するのは困難であり、しかも、三本ロールミルで処理されるペースト状材料の粘度は比較的高いため、洗浄に多大な手間と時間とを必要とする問題があった。なお、例えば、センターロールとエプロンロールとの押圧力を高くすると、エプロンロールに処理材料が移動し難くなる一方、押圧力が低いと処理材料がエプロンロールに移動せず下に落下してしまうので、圧力バランスの調節が微妙で、適切な条件設定が難しく、処理材料の流出や飛散を防ぐことは困難である。
【0007】
なお、前記特許文献1,2においては、エプロンロール端部のペースト状材料をフィードロールに戻す機構が提案されている。例えば、前記特許文献1では、エプロンロールの両端部にそれよりも高速で反対方向に回転する一対の端部ロールを押し付け、それら端部ロール表面のペースト状材料をスクレーパで掻き取ってフィードロール中央部に戻すものが示されている。また、前記特許文献2では、エプロンロール両端部のセンターロール近傍位置に端縁スクレーパを押し付けてペースト状材料を掻き取り、センターロール上を経てフィードロール中央部に戻すものが提案されている。十分に分散されないペースト状材料がエプロンロール端部に集まる傾向があるので、これらはそのような分散不十分なペースト状材料を自動的に再処理することを目的とするものであるが、このようにしてロール端部のペースト状材料を掻き取れば、前述した回転軸部への付着や飛散の問題が緩和されると考えられる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロールミルでは、端部ロールをエプロンロールよりも高速で駆動し且つ適度な押圧力で押し付ける必要があるので、駆動機構等の構成が複雑になる問題がある。エプロンロール外周面の端部に押し付けるスクレーパを追加した上記特許文献2に記載のロールミルによれば、駆動機構等は特に複雑化しない。しかしながら、この構成で掻き取ったペースト状材料をフィードロールの中央部に落とすためには、スクレーパに略球面状の案内面を形成すると共にロール側端面と対向するサイドプレートを設けることが必須であると考えられる。ところが、異物混入を防ぐためには、このサイドプレートをロール端面に接触しないように配置する必要があって、それらの間には隙間が生ずるので、ロール端面よりも外側にペースト状材料が漏れ出ることを抑制し難い。また、スクレーパの側面等に当たったペースト状材料は、掻き取られないので回転軸部に付着し或いは飛散することになる。このため、ペースト状材料の回転軸部への付着や飛散を防止できるものではなかった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、簡単な構成でロール端部から漏れ或いは飛散したペースト状材料による装置の汚れを抑制できるロールミル装置の材料漏れ抑制構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、各々が互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された複数本の円筒形のロールを備え、供給側のロール上に供給された処理材料を取出側のロール上から掻き取って回収する形式のロールミル装置において、その処理材料が取出側のロールの端縁から漏れることを抑制するための材料漏れ抑制構造であって、(a)前記取出側のロールの軸心方向の両端部に中央側よりも両端側の方が小径となるようにそれぞれ形成された一対の段付き部と、(b)前記一対の段付き部の大径部の外周面より内周側に先端縁部が位置し且つその外周面よりも外周側に基端縁部が位置するように前記取出側のロールの周方向の所定範囲においてそれら一対の段付き部の小径部に向かって突設された一対の飛散防止板とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0011】
このようにすれば、取出側のロールの両端部には、中央側よりも両端側の方が小径の一対の段付き部が備えられると共に、その段付き部の小径部に向かって一対の飛散防止板がその先端縁部と基端縁部との間に段付き部の外周面が位置するように突設される。そのため、取出側のロール上でその中央部から両端部に向かった処理材料は、段付き部の大径部上から小径部上に向かう際にそれらの段差部分で接液部が無くなるので飛散する。このとき、その段付き部の小径部に向かって突設された飛散防止板はその先端縁部が段付き部の大径部よりも内周側に位置し且つ基端縁部がその大径部よりも外周側に位置するから、飛散した処理材料はその飛散防止板に捕捉される。したがって、飛散防止板を設けるだけで、ロール端部に至った処理材料がそこから飛散してフレームを汚すことや、その表面に沿って移動して回転軸部に付着することが抑制される。すなわち、簡単な構成でロール端部から漏れ或いは飛散した処理材料による装置の汚れが抑制されるロールミル装置が得られる。
【0012】
ここで、好適には、前記ロールミル装置の材料漏れ抑制構造は、前記一対の段付き部が前記取出側のロールの軸心方向の両端部に備えられた一対の周溝によって形成されたものであり、前記周溝内に溜まった前記処理材料を掻き取るための掻取板を含むものである。このようにすれば、処理材料が段付き部の大径部上から小径部上に向かう際に、それらの段差部分で飛散することなく表面に沿って流れたものがあっても、周溝で捕捉され且つ掻取板によって掻き落とされるので、それよりも端部側に流れることが抑制され、延いては回転軸部に付着することが一層抑制される。
【0013】
また、好適には、前記掻取板は前記取出側のロールの下側に位置するものである。このようにすれば、周溝内から掻き落とされた処理材料がロール上に戻ることが無いので、ドクターブレードで掻き取られて回収された処理材料にこれが混入してその品質が低下することが抑制される。また、取出側のロールには、一般にその前段のロールからその上面側に処理材料が移ることとなり、その上面側でドクターブレードで掻き取られるので、ロールの下側位置に掻取板を配置すれば、ドクターブレードによる回収と掻取板による回収とが上下に分かれて行われる利点がある。
【0014】
また、好適には、前記掻取板は前記周溝に接触しない状態で設けられているものである。このようにすれば、それらの接触に起因する異物混入が生じない利点がある。
【0015】
前記飛散防止板は前記取出側のロールの下側に位置するものである。このようにすれば、飛散して飛散防止板に付着した処理材料がロール上に戻ることが無いので、ドクターブレードで掻き取られて回収された処理材料にこれが混入してその品質が低下することが抑制される。また、取出側のロールには、一般にその前段のロールからその上面側に処理材料が移ることとなり、その上面側でドクターブレードで掻き取られるので、ロールの下側位置に飛散防止板を配置すれば、ドクターブレードによる回収と飛散防止板による回収とが上下に分かれて行われる利点がある。すなわち、掻取板および飛散防止板は何れも取出側のロールの下側に配置されることが好ましい。
【0016】
一層好適には、前記飛散防止板は、前記取出側のロールの下側において中心角が90〜150°に亘る範囲すなわち1/4周から5/12周に亘る範囲に設けられる。飛散防止板は、処理材料が飛散し得る範囲に設けられればよく、ロール寸法・処理材料の粘性や処理量等を考慮して、他の構成要素と干渉しないように配設範囲を適宜定め得る。1/4周以上の範囲に設ければ処理材料がロール上から飛散し得る略全域に飛散防止板が設けられるので、処理材料の飛散による汚れを十分に抑制できる。また、5/12周以下の範囲に留めれば他の構成要素との干渉も容易に避けることができる。因みに、ロールミル装置では一般に複数個のロールの直径が一様とされるので、取出側のロールの軸心と飛散防止板の端縁とを結ぶ直線が、取出側のロールとこれに隣接するロールのそれぞれの軸心を結ぶ直線に対して下方に30°を成すものとすれば、その端縁は隣接するロールに干渉し得ない。また、前記ドクターブレードの支持機構は、取出側のロールおよび隣接するロールのそれぞれの軸心を結ぶ直線上或いはその近傍に位置させられるから、飛散防止板の端縁をその直線よりも下方に位置させればドクターブレードの支持機構との干渉も容易に避け得る。したがって、飛散防止板は最大で取出側のロールの5/12周の大きさとすることが望ましい。また、ドクターブレードの支持機構との干渉を一層確実に避けるためには、ドクターブレードの支持機構側でも取出側のロールと飛散防止板の端縁とを結ぶ直線がロールの軸心を結ぶ直線に対して下方に30°を成すようにして、中心角が120°すなわち1/3周の大きさとすることが望ましい。
【0017】
また、好適には、前記飛散防止板は前記段付き部の小径部の外周面に接触しない状態で設けられているものである。このようにすれば、それらの接触に起因する異物混入が生じない利点がある。
【0018】
また、好適には、前記ロールミル装置の材料漏れ抑制構造は、前記飛散防止板と前記掻取板とが一体的に設けられているものである。このようにすれば、別々に設ける場合に比較して構成が一層簡単になる。
【0019】
また、好適には、前記段付き部は前記取出側のロールの両端部に備えられたフランジに設けられたものである。一般にロールの両端部にはこれを軸心回りの回転可能に軸支するためのフランジが備えられるが、ロール両端部に向かわせられた処理材料は更にその表面に沿って流れ、ロール端部を経てそのフランジ上に至る。そのため、フランジに前記の段付き部を設けておけば、その段付き部の大径部と小径部との段差部分で接液部が無くなるので飛散する。しかも、フランジはロールミル装置の構造上、ロール外周面よりも小径で設けられることから、他のロールやフランジ等に接触しないので、そのフランジの外周面に段付き部を形成しても、その大径部と小径部との間に形成される角部が他のロールやフランジ等に押圧されて変形し或いは摩耗させられて異物混入の原因となることもない。また、セラミックロールを備えたロールミル装置では、段付き部は、ロール外周面に形成するよりも金属製のフランジに形成する方が容易である。したがって、段付き部はロール表面に限られず、その端部に備えられたフランジ等に設けることもできるが、そのようにすることが特に好適である。
【0020】
また、好適には、前記飛散防止板は、先端縁部が前記段付き部の小径部の外周面に沿った円弧状を成すものである。このようにすれば、飛散防止板の全体が飛散防止に好適に機能する。なお、飛散防止板の基端縁部も先端縁部と同心の円弧状で形成することが、可及的に簡単な形状で飛散防止機能を確保するために好ましい。
【0021】
なお、前記飛散防止板の先端縁部から基端縁部までのロール径方向における長さ寸法は、飛散防止板を設けない場合における飛散の程度に応じて、ロール径、処理材料の粘性や処理量等に基づいて定めればよいが、例えば、10〜30(mm)程度の範囲内である。
【0022】
また、好適には、前記段付き部の大径部と小径部との段差の大きさは3(mm)以上である。飛散防止板の先端縁部を段付き部に接触させることなく大径部よりも内周側に容易に位置させるためには、5(mm)以上の段差が一層好ましい。このようにすれば、摩耗による異物混入を避けつつ処理材料の飛散を抑制することが容易になる利点がある。なお、飛散防止の観点では段差の大きさの上限は特に限定されないが、構成部品の機械的強度の確保と加工の容易性等のためには小さい方が好ましい。また、段付き部を周溝によって構成する場合には、同様な観点から、その溝幅寸法は飛散防止板の厚さ寸法よりも十分に大きいことが望ましい。但し、周溝内に溜まった処理材料を掻取板を用いて掻き落とす構成においては、溝幅寸法が掻取板の厚さ寸法に対して過度に大きくなると、周溝内に溜まった処理材料が掻き落とされ難くなり、延いては回転軸部への付着を抑制する効果が低下する。したがって、溝幅寸法はその内壁面に掻取板が接触することを確実に防止できる範囲で小さいことが好ましい。
【0023】
また、前記掻取板は適宜の形状のものを用いることができ、特に形状が限定されないが、例えば、薄く且つ細長い直方体形状とすることができる。掻取板の前記ロールの周方向における厚さ寸法は、前記小径部に付着している処理材料を掻き落とし得るだけの機械的強度を有するのであれば、適宜定めることができる。処理材料を掻き落とすときにロールの周方向に撓みが生じるような特性を有するものでも差し支えない。また、掻取板のロール軸心方向における幅寸法は、周溝の内壁面に接触しない範囲で大きくすることが好ましい。
【0024】
また、本発明を適用できるロールミル装置のロール材質は特に限定されず、チルド鋼等の金属製のものにも、アルミナ等のセラミック製のものにも同様に適用される。セラミック製ロールは、全体がセラミックスから成るものでも、金属ドラムの外周面にセラミックロールが嵌め付けられたものでもよい。なお、本願において、「円筒形のロール」には、全体の外径寸法が一様なクラウンレスロールの他、軸心方向の中央部が両端部に比べて大径とされたクラウン加工が施されたものも含む。
【0025】
なお、本発明は、例えばフィードロール、センターロール、およびエプロンロールを備えた3本ロールミル装置に好適に適用されるが、2本ロールミル装置や4本以上のロールを備えたロールミル装置にも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の三本ロールミルの全体を示す正面図である。
【図2】図1の三本ロールミルの全体を示す左側面図である。
【図3】図1の三本ロールミルの全体を示す右側面図である。
【図4】図1の三本ロールミルの全体を示す平面視図である。
【図5】図1の三本ロールミルの全体を示す背面図である。
【図6】図2のVI-VI視断面にて駆動機構を説明する図である。
【図7】図1のVII-VII視断面にて駆動機構を説明する図である。
【図8】(a)は本発明の一実施例の三本ロールミルにおける飛散防止板の配設状態を説明するための図6における右側のフランジ部近傍を拡大して示す図であり、(b)は(a)における右側面視図である。
【図9】(a)は図8の飛散防止板の正面図、(b)は(a)における右側面図である。
【図10】図8の飛散防止板の配設状態をフランジ部近傍を拡大して正面視にて示す図である。
【図11】本発明の三本ロールミルに用いられる他の態様の飛散防止板を示す正面図である。
【図12】図11の飛散防止板の配設状態をフランジ部近傍を拡大して正面視にて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0028】
図1は、本発明の材料漏れ抑制構造が適用された三本ロールミル装置10の全体を示す正面図、図2〜図5は、それぞれその左側面図、右側面図、平面図、背面図である。これらの図において、三本ロールミル装置10は、内部に駆動モータ12を備えた駆動機構部14と、これを図1における左右方向両端部で支持する一対の脚部16,16と、駆動機構部14によってそれぞれ両端部において支持された3本のロールすなわちフィードロール20,センターロール22,エプロンロール24とを備えている。本実施例においては、エプロンロール24が取出側のロールに、フィードロール20が供給側のロールにそれぞれ相当する。
【0029】
上記の脚部16は、何れも図2、図3における左右方向の両端部が下方に突き出した逆U字形状を成すもので、それら4つの突き出し部分の下端部にはそれぞれ車輪26および固定脚28が設けられている。図1等は、車輪26よりも固定脚28が僅かに下方に突き出した使用時の状態を示している。三本ロールミル装置10を移動させる際には、脚部16,16内に備えられた図示しないシリンダ等の作動に従って車輪26の方が僅かに下方に突き出した状態とされる。
【0030】
また、駆動機構部14の上端部には、上記脚部16,16の上方に軸受け部30,32が備えられている。前記三本のロール20,22,24は、それぞれ軸心回りに回転可能な状態で、これら軸受け部30,32により両端部を支持されている。また、軸受け部30,32には、図2、図3における左右方向両端に加圧装置操作ハンドル34がそれぞれ備えられていると共に、各々の近傍には圧力計36が備えられている。加圧装置操作ハンドル34は、後述する内部機構を作動させることで3本のロール20,22,24の軸心間隔を変化させて、それらロール20,22,24相互の間隔或いはそれら相互の押し付け圧を調節するためのものである。また、上記圧力計36は、この押し付け圧を表示するために設けられている。
【0031】
上記のロール20,22,24は、例えばアルミナセラミック製円筒から成るもので、例えば、φ120(mm)×450L(mm)程度の外形寸法を備えている。フィードロール20とセンターロール22との間には、略五角形を成し且つ下端面がそれらロール20,22の表面に略沿った形状を有する一対の堰板38,38が、それらロール20,22の両端部に備えられている。これら堰板38,38は、投入された処理材料がロール20,22の軸心方向に必要以上に広がることを抑制するためのものである。図1〜図3に示すように、駆動機構部14上には堰板支持装置40が備えられている。堰板支持装置40は、ロール20,22の上方にそれらの軸心方向すなわち図4における左右方向に沿って伸びる案内棒42を備えており、堰板38,38は、この堰板支持装置40によって、ロール20,22の軸心方向の任意の位置で吊り下げられるようになっている。
【0032】
また、エプロンロール24のセンターロール22とは反対側には、図4、図5に示すようにドクター44が備えられている。ドクター44は、例えばステンレス鋼などから成るもので、エプロンロール24側の先端部には例えばアルミナセラミック製の図示しないブレードが取り付けられている。ドクター44の両端部には一対の押さえネジ46,46が備えられており、これをねじ込むことにより、先端のブレードがエプロンロール24の表面に押し当てられる。ブレードは、エプロンロール24の軸心方向の全長に亘ってその外周面に押し付けられるように、その長さ寸法が、エプロンロール24の円筒状外周面の軸心方向長さよりも僅かに長くなっている。
【0033】
また、ドクター44の下方には、水平な受け面を有する受け台50が駆動機構部14の壁面にネジ止めなどによって固定されている。ドクター44は、エプロンロール24上の材料を掻き落として回収するためのもので、掻き落とされた材料を受けるための図示しない容器が上記の受け台50上に載置される。
【0034】
また、図1において右側に位置する軸受け部32の側面には、起動ボタン52および停止ボタン54を有するスイッチボックス56が取り付けられている。図2等に示されるように、背面側にも同様なスイッチボックス58が軸受け部30に備えられおり、正面側および背面側の何れからも起動および停止操作が可能である。
【0035】
また、図1において左側に位置する軸受け部30の上面には、非常停止ボタン60が備えられている。図3、図5に示されるように、背面側にも同様な非常停止ボタン62が軸受け部32に備えられている。そのため、通常の起動および停止操作と同様に、正面側および背面側の何れからも非常停止操作が可能である。
【0036】
また、ロール20,22,24の上方には、それらを覆う透明なカバー64が取り付けられている。そのカバー64のフィードロール20およびセンターロール22の間隙の真上に当たる部分は略矩形にくり抜かれており、その略矩形の孔66は後述するように資材投入口として設けられたもので、上方に持ち上げて開閉可能な蓋68で塞がれている。なお、前記堰板38,38は、例えば、上記資材投入口66よりも外側に配置されている。
【0037】
また、図1において左方に位置する軸受け部30の側面には、上記ロール20,22,24を冷却するための給排水機構70が備えられている。ロール20,22,24は何れも中空円筒状を成すもので、給排水機構70の給水ホース72,74,76(図2参照)を通してそれぞれの内部に冷却水を供給することでそれらが冷却されるようになっている。供給された冷却水は排水ホース78を通して排出される。なお、排水ホースは、給水ホースと同様にロール20,22,24の各々に対して設けられているが、図1には手前の一本のみを図示した。給水ホース72,74,76からの給水量は、液量調節バルブ80,82,84によって個別に調節可能で、各ロール20,22,24への供給水量を調節することにより、ロール温度上昇を抑制し、延いては処理材料温度の上昇を抑制できる。
【0038】
なお、図1、図4、図5において、86は、制御回路、スイッチ、計器等が収容された制御盤である。また、図2、図3に示す手動操作用手回しハンドル88は、必要に応じて図3に示す差込口90から差し込んで取り付けられるもので、異物除去や清掃等の際には、ハンドル88でロール20,22,24を必要量だけ手動で回転させることができる。
【0039】
また、図1、図5に示されるように、ロール20,22,24の下方には、受け皿92が備えられている。ロール20,22間或いはロール22,24間から落下した処理資材は、この受け皿92で受けられる。
【0040】
また、図1、図2に示されるように、駆動モータ12の駆動プーリ94には、タイミングベルト96が巻き掛けられており、その回転がその駆動プーリ94よりも大径の減速装置の従動プーリ98に伝達される。前記ロール20,22,24は、後述するように、駆動モータ12の回転が減速装置を介して伝達されることで回転させられるようになっている。
【0041】
また、図1、図2において、前記の給水ホース72,74,76、排水ホース78等は、ロータリージョイント104,106,108によって各ロール20,22,24の回転軸(すなわち後述する第5シャフト158,第3シャフト148,第2シャフト126)に接続されている。
【0042】
図6は、図2のVI-VI視断面の要部を示したもので、給排水機構70、制御盤86、脚部16,16、カバー64等は省略されている。図6において、前記の従動プーリ98は、軸受け部30内においてシャフト110の一端に嵌め付けられている。シャフト110は、その両端部においてベアリング・ユニット112,112で軸心回りの回転可能に支持されており、その他端には、従動プーリ98よりも小径の第1ギア114が嵌め付けられている。上記の第1ギア114は、エプロンロール24の第1シャフト116に嵌め付けられた第2ギア118に噛み合わされている。
【0043】
上記第1シャフト116は一端にフランジ部120が備えられたフランジ付きシャフトで、上記のエプロンロール24は、一端にそのフランジ部120が、他端に第2シャフト126のフランジ部122が複数本例えば4本のボルト124によってそれぞれ嵌め付けられたものである。上記第2シャフト126および後述する第3シャフト148乃至第6シャフト160(図7参照)は何れも第1シャフト116と同様フランジ付きシャフトである。上記フランジ部120,122は、例えば114(mm)程度の外径寸法および20(mm)程度の厚さ寸法を備えたもので、その外周面には、それぞれ周溝128,130が全周に亘って一様な例えば10(mm)程度の開口幅寸法および5(mm)程度の深さ寸法で設けられている。上記フランジ外径は、ロール外径よりも僅かに小さい寸法である。本実施例においては、この周溝128,130が「一対の段付き部」に相当する。
【0044】
また、上記の第1シャフト116および第2シャフト126は、それぞれベアリング・ユニット132,132によって軸心回りの回転可能に支持されており、その第2シャフト126には、第2ギア118よりも小径の第3ギア134が嵌め付けられている。
【0045】
また、前記第2シャフト126にはその軸心方向に貫通する貫通孔136が、前記第1シャフト116には前記フランジ部120のその貫通孔136に対応する位置に有底孔138が、それぞれ設けられており、エプロンロール24内には、第2シャフト126の貫通孔136を貫通し且つ先端部が有底孔138内に位置させられた給水管140が備えられている。給水管140は、前記のロータリージョイント108を介して前記の給水ホース76に接続されており、その給水ホース76から供給された冷却水は、給水管140に多数設けられた吐出孔からエプロンロール24内に吐出させられる。吐出された冷却水は、貫通孔136と給水管140との隙間を通って前記の排水ホース78に戻される。
【0046】
図7は、図1のVII-VII視断面を表したもので、軸受け部30,32およびロール20,22,24よりも下方に備えられた構成要素は省略されている。前記の図6は、この図7におけるVI視図に対応する。図7において、前記のセンターロール22は、前記エプロンロール24と同様に、一端に第3シャフト148のフランジ部142が、他端に第4シャフト150のフランジ部144が例えば4本のボルト146でそれぞれ嵌め付けられたものである。また、前記のフィードロール20も、上記センターロール22およびエプロンロール24と同様に、一端に第5シャフト158のフランジ部152が、他端に第6シャフト160のフランジ部154が例えば4本のボルト156でそれぞれ嵌め付けられたものである。なお、フィードロール20およびセンターロール22に嵌め付けられたフランジ部142,144,152,154には、前記フランジ部120,122に備えられているような周溝128,130は何ら設けられていない。
【0047】
また、上記の第3シャフト148,第4シャフト150,第5シャフト158,第6シャフト160は、それぞれベアリング・ユニット162,162,164,164によって軸心回りの回転可能に支持されている。第3シャフト148には、前記第3ギア134と噛み合わされた第4ギア166が嵌め付けられると共に、その第4ギア166よりもシャフト端部側に第5ギア168が嵌め付けられている。第5ギア168は第3ギア134と同じ外径寸法で、第4ギア166はそれらよりも大径である。
【0048】
また、フィードロール20の第5シャフト158には、上記の第5ギア168と噛み合わされた第6ギア170が嵌め付けられている。第6ギア170は、第4ギア166と同じ外径寸法を有している。また、第6シャフト160には、ラテラルカップリング172を介してロータリエンコーダ174が取り付けられ、フィードロール20の回転数を検出できるようになっている。
【0049】
このように、エプロンロール24の回転が小径の第3ギア134および大径の第4ギア166を介してセンターロール22に伝達され、次いで、そのセンターロール22の回転が小径の第5ギア168および大径の第6ギア170を介してフィードロール20に伝達される。そのため、各ロール20,22,24の回転速度は、それらのギア比に従って減速され、フィードロール20,センターロール22,エプロンロール24の順に回転速度が高くなる。回転速度比は、例えば1:3:9程度に設定されている。
【0050】
なお、フィードロール20およびセンターロール22にも、給水管176,178が備えられており、エプロンロール24と同様に第3シャフト148および第5シャフト158を通してロール内部に給排水させられるようになっている。
【0051】
また、前記ハンドル34がそれぞれ取り付けられたシャフト180の先端部には、それぞれピニオン182が嵌め付けられている。ピニオン182は、スライダ装置184のねじ軸186に螺合されたピニオン188と噛み合わされており、そのピニオン188の回転に伴ってねじ軸186が図7の上下方向に前後すると、そのスライダ装置184に固定されたベアリング・ユニット132,164が同方向に移動する。これにより、センターロール22の軸心とフィードロール20およびエプロンロール24の軸心との間隔が変化させられ、ロール間の隙間の大きさやロール相互の押し付け圧が変化させられる。なお、押し付け圧は、油圧により検出され、前記圧力計36に表示される。
【0052】
ところで、前記エプロンロール24のフランジ部120,122の周溝128,130は、図8(a)に図6におけるフランジ部122近傍を拡大して示すように、その図6では省略した汚染防止板190を用いるために設けられている。図8(a)およびその右側面を示す図8(b)において、195は、第2シャフト126の軸受け近傍を覆うために前記の軸受け部30(図8では省略した)に取り付けられた軸受けカバーで、その軸受けカバー195の下端部には飛散防止板固定プレート196がボルト197によって固定されている。汚染防止板190は、内径寸法が108(mm)程度、外径寸法が168(mm)程度で、径方向に例えば30(mm)程度の幅寸法を有する円弧状の飛散防止板部192と、その周方向の一部に設けられた掻取板部194とを備えたもので、その飛散防止板部192が前記飛散防止板固定プレート196に溶接などによって固着されることで、その飛散防止板固定プレート196を介して軸受けカバー195に取り付けられている。
【0053】
図9は、上記の汚染防止板190の構成を説明するための図で、(a)は正面図、(b)はその側面図である。飛散防止板部192は、厚さ寸法が2(mm)程度の薄板で、前述した内径寸法は周溝128,130底面の外形寸法よりも僅かに大きい値になっている。また、掻取板部194は、幅寸法が6(mm)程度、長さ寸法が50(mm)程度で、厚さ寸法が2(mm)程度の角棒形状を成すものである。したがって、汚染防止板190の全体の厚さ寸法は例えば8(mm)程度で、前記周溝128,130の開口幅寸法よりも僅かに小さい値になっている。また、掻取板部194の先端面は飛散防止板部192の内周縁上に位置する。汚染防止板190は、飛散防止板部192の一面に掻取板部194が例えば溶接されることによって一体化させられたもので、例えば何れもステンレス鋼で構成されている。前記図8(b)に示すように、飛散防止板部192のセンターロール22側の端縁は、エプロンロール24の軸心を結ぶ直線がエプロンロール24およびセンターロール22の軸心を結ぶ直線に対して角度αを成しており、その反対側の端縁はその直線に対して反対周りに角度βを成している。上記角度α、βは、センターロール22およびドクター44と干渉しない範囲で可及的に小さくなるように定められており、本実施例においては何れも30°である。したがって、飛散防止板部192の中心角は120°になっている。また、掻取板部194は、エプロンロール24の軸心から下ろした垂線に対して図8(b)における時計回り(すなわちエプロンロール24の回転方向とは反対方向)に例えば20°程度の角度γだけ傾いた位置に取り付けられている。前記飛散防止板固定プレート196は、飛散防止板部192のドクター44側の端縁と掻取板部194との間に位置する。
【0054】
図10は、上記汚染防止板190の配設状態を図8(a)の要部を拡大して模式的に示した図である。この図10では飛散防止板固定プレート196を省略した。汚染防止板190は、掻取板部194の先端面が周溝130の底面198から僅かに離れるように配置されている。また、前述したように汚染防止板190の厚さ寸法は周溝130の開口幅寸法よりも僅かに小さくなっているが、図示の配設状態において、汚染防止板190の側面は周溝130の内壁面に接触していない。この結果、飛散防止板部192の内周縁200すなわち先端縁部は、フランジ部122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204すなわち基端縁部は、そのフランジ部122の外周面202よりも外周側に位置している。図示しないフランジ部120側においても、汚染防止板190は同様な状態で配設されている。
【0055】
以上のように構成された三本ロールミル装置10を用いて、セラミック製品用のペースト材料やインキ等のペースト状の処理材料206(図8、図10参照)に分散・混練処理を施すに際しては、前記ハンドル34を操作して、フィードロール20とセンターロール22とがごく僅かに離れ、且つセンターロール22とエプロンロール24とが僅かに離れた状態とする。次いで、給排水機構70の流量調節バルブ80,82,84を操作してロール20,22,24内に冷却水を導入し、起動ボタン52を操作してロール20,22,24を回転させる。回転開始後、前記資材投入口66から処理材料206を投入し、速やかにハンドル34を操作してフィードロール20がセンターロール22に押し付けられるようにする。このとき、フィードロール20側の両ハンドル34近傍の前記圧力計36を監視して、表示圧力が同一になるようにハンドル操作量を調節する。
【0056】
このようにしてフィードロール20をセンターロール22に押し付けると、前記の図8に一点鎖線で示すようにフィードロール20とセンターロール22との間に供給された処理材料206は、それらの間で回転速度差に応じた剪断力を受けつつ押し広げられ或いは押しつぶされる。そして、その回転速度の相対的に高いセンターロール22に引き取られ、その外周面に貼り付いてセンターロール22とエプロンロール24との間に向かう。処理材料206がそれらの間隙に到達した後、エプロンロール24側のハンドル34を操作してエプロンロール24をセンターロール22に押し付けると、これらセンターロール22とエプロンロール24との間でも、同様にして処理材料206が剪断力を受けつつ押し広げられ或いは押しつぶされてエプロンロール24側に引き取られる。エプロンロール24上の処理材料206は、ドクター44に掻き取られて回収される。前記の汚染防止板190は、エプロンロール24の処理材料206が掻き取られた後の略1/3周に亘る範囲に設けられている。
【0057】
このとき、エプロンロール24上の処理材料206は、ロール22,24間で押圧されることによってその軸心方向の両端部に向かわせられる。前記の図10は、処理材料206がエプロンロール24の端部に到達し、フランジ部122上に広がりつつある状態を示している。ロール端部まで到達した処理材料206は、その一部が飛沫208となって飛散する。飛散方向は、ロール22,24間の押圧力に従ってそれらの軸心方向に作用する力と、遠心力とが合成された方向、すなわちエプロンロール24の軸心方向に対して傾斜してその端部側に向かう図の矢印A方向となる。この飛沫208の飛散方向には、飛散防止板部192が配設されているので、飛沫208はその飛散防止板部192に当たって受け皿92に落下する。上記説明から明らかなように、本実施例においては、エプロンロール24とフランジ部120,122との間の段差も段付き部に相当する。そして、前記図10に示されるように、飛散防止板部192の外周縁204は、その段付き部の最外周縁すなわちエプロンロール24の外周面よりも外側に位置している。
【0058】
また、飛散することなくエプロンロール24表面からフランジ部122表面に流れた処理材料206は、フランジ部外周面202と周溝130内壁面との境界角部において、一部は接液部が無くなるためにその流れ方向に沿って矢印B方向に飛散する。残部は矢印Cに示すようにその表面に沿って周溝130の内壁面を流れて周溝130内に溜まる。飛散した処理材料206は、矢印Aで示した飛沫208と同様に飛散防止板部192によって落とされるが、周溝130に溜まった処理材料206は掻取板部194によって掻き落とされ、何れも受け皿92に落下する。したがって、エプロンロール24表面をその軸心方向の端部に向かった処理材料206は、エプロンロール24上よりも外側に出たときに汚染防止板190によって受け皿92に落とされるので、エプロンロール24の回転軸部まで到達することが抑制される。フランジ部120,122の端面と軸受け部との間隔は例えば15〜20(mm)程度と小さいので、汚染防止板190が備えられていない従来構造では、飛散した処理材料206で回転軸部が汚染されてロール駆動に支障が生ずると共に、処理材料206の粘度が比較的高いことと相俟って洗浄処理が困難なため多大な洗浄時間を必要としていた。本実施例によれば、これらの不都合が何れも解消され或いは緩和される。
【0059】
要するに、本実施例によれば、エプロンロール24の両端部に備えられたフランジ部120,122には、一対の周溝128,130が備えられると共に、飛散防止板部192の内周縁200は、フランジ部120,122の外周面202よりも内周側に位置し、且つ飛散防止板部192の外周縁204は、そのフランジ部120,122の外周面202よりも外周側に位置する。そのため、エプロンロール24上でその両端部に向かった処理材料206は、フランジ部120,122の外周面202と周溝128,130との段差部分で接液部が無くなるので飛散するが、上記のように配置された飛散防止板部192に捕捉され、受け皿92に落とされる。したがって、飛散防止板部192を備えた汚染防止板190を設けるだけで、エプロンロール24の端部に至った処理材料206が、そこから飛散して軸受け部30,32等を汚すことや、その表面に沿って移動して第1シャフト116,第2シャフト126等に付着することが抑制される。すなわち、簡単な構成でエプロンロール24の端部から漏れ或いは飛散した処理材料206による装置の汚れが抑制されるロールミル装置10が得られる。
【0060】
また、本実施例によれば、ロールミル装置10は、処理材料206の流れ方向において接液部をなくすための段付き部がフランジ部120,122の周溝128,130によって形成されていると共に、それら周溝128,130内に溜まった処理材料206を掻き取るための掻取板部194を備えている。そのため、フランジ部120,122の表面に沿って流れた処理材料206は、周溝128,130で捕捉され且つ掻取板部194で掻き落とされるので、それよりも端部側に流れることが抑制され、延いては回転軸部に付着することが一層抑制される。処理材料206の量が多い場合やその粘度が高い場合には、上記のような周溝128,130内への流れ込みが生じ易いので、掻取板部194を設けた効果はそのような場合に顕著に得られる。
【0061】
なお、上記のように掻取板部194で周溝128,130内の処理材料206を掻き落とすに際して、前述したように掻取板部194は周溝128,130の底面198に接触しないことから、フランジ部120,122や掻取板部194が摩耗してその摩耗粉が処理材料206に混入するおそれはない。
【0062】
図11は、他の実施例の三本ロールミル装置10に用いられる汚染防止板210を示す正面図である。汚染防止板210は、前記汚染防止板190の飛散防止板部192と同様な形状を成しており、前記掻取板部194に相当するものは備えられていない。
【0063】
図12は、上記図11の汚染防止板210の配設状態をフランジ部122に代わって備えられているフランジ部216近傍を拡大して要部を模式的に示す図である。このような汚染防止板210も前記汚染防止板190と同様に軸受けカバー195に取り付けられ、フランジ部216に設けられた周溝218内に内周縁220が位置するように配設して用いられる。内周縁220は、周溝218の底面222よりも外周側且つフランジ部216の外周面202よりも内周側に位置させられている。また、外周縁224は、フランジ部216の外周面202よりも外周側且つエプロンロール24の外周面よりも外周側に位置させられている。なお、本実施例においても、周溝218は、汚染防止板210の厚さ寸法に合わせてその開口幅寸法が定められている。すなわち、上述したように汚染防止板210の内周縁部が周溝218内にその内壁面に非接触状態で位置させられ得るように、周溝218の開口幅寸法が汚染防止板210の厚さ寸法よりも僅かに大きくされている。
【0064】
このように構成された汚染防止板210をロールミル装置10に用いた場合には、前記汚染防止板190に備えられている飛散防止板部192と同様な形状を備えていることから、図12の矢印A,Bに示すように飛散する処理材料206の飛沫208等は、汚染防止板190が用いられた場合と同様に汚染防止板210に当たって受け皿92に落とされる。したがって、前記実施例と同様な汚染抑制効果が得られる。
【0065】
しかしながら、フランジ部216の表面に沿って矢印Cに示すように周溝218内に流れ込んだ処理材料206を掻き落とす掻取板部194に相当するものは、この汚染防止板210には備えられていない。しかしながら、ロール端部に向かう処理材料206が十分に少なく、且つその粘度が十分に低い場合には、周溝218内に処理材料206が流れ込み難いので、このような汚染防止板210で十分な汚染防止効果がある。なお、この態様においても、周溝218内に流れ込んだ処理材料206の一部は汚染防止板210によって掻き落とされ得る。
【0066】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0067】
10:三本ロールミル装置、20:フィードロール、22:センターロール、24:エプロンロール、92:受け皿、120,122:フランジ部、128,130:周溝、190:汚染防止板、192:飛散防止板部、194:掻取板部、198:底面、200:内周縁、202:外周面、204:外周縁、206:処理材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された複数本の円筒形のロールを備え、供給側のロール上に供給された処理材料を取出側のロール上から掻き取って回収する形式のロールミル装置において、その処理材料が取出側のロールの端縁から漏れることを抑制するための材料漏れ抑制構造であって、
前記取出側のロールの軸心方向の両端部に中央側よりも両端側の方が小径となるようにそれぞれ形成された一対の段付き部と、
前記一対の段付き部の大径部の外周面より内周側に先端縁部が位置し且つその外周面よりも外周側に基端縁部が位置するように前記取出側のロールの周方向の所定範囲においてそれら一対の段付き部の小径部に向かって突設された一対の飛散防止板と
を、含むことを特徴とするロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項2】
前記一対の段付き部は前記取出側のロールの軸心方向の両端部に備えられた一対の周溝によって形成されたものであり、
前記周溝内に溜まった前記処理材料を掻き取るための掻取板を含むものである請求項1のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項3】
前記掻取板は前記取出側のロールの下側に位置するものである請求項2のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項4】
前記掻取板は前記周溝に接触しない状態で設けられているものである請求項2または請求項3のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項5】
前記飛散防止板は前記取出側のロールの下側に位置するものである請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項6】
前記飛散防止板は前記段付き部の小径部の外周面に接触しない状態で設けられているものである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項7】
前記飛散防止板と前記掻取板とが一体的に設けられているものである請求項2乃至請求項6の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項8】
前記段付き部は前記取出側のロールの両端部に備えられたフランジに設けられたものである請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項1】
各々が互いに平行な軸心回りの回転可能に並設された複数本の円筒形のロールを備え、供給側のロール上に供給された処理材料を取出側のロール上から掻き取って回収する形式のロールミル装置において、その処理材料が取出側のロールの端縁から漏れることを抑制するための材料漏れ抑制構造であって、
前記取出側のロールの軸心方向の両端部に中央側よりも両端側の方が小径となるようにそれぞれ形成された一対の段付き部と、
前記一対の段付き部の大径部の外周面より内周側に先端縁部が位置し且つその外周面よりも外周側に基端縁部が位置するように前記取出側のロールの周方向の所定範囲においてそれら一対の段付き部の小径部に向かって突設された一対の飛散防止板と
を、含むことを特徴とするロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項2】
前記一対の段付き部は前記取出側のロールの軸心方向の両端部に備えられた一対の周溝によって形成されたものであり、
前記周溝内に溜まった前記処理材料を掻き取るための掻取板を含むものである請求項1のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項3】
前記掻取板は前記取出側のロールの下側に位置するものである請求項2のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項4】
前記掻取板は前記周溝に接触しない状態で設けられているものである請求項2または請求項3のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項5】
前記飛散防止板は前記取出側のロールの下側に位置するものである請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項6】
前記飛散防止板は前記段付き部の小径部の外周面に接触しない状態で設けられているものである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項7】
前記飛散防止板と前記掻取板とが一体的に設けられているものである請求項2乃至請求項6の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【請求項8】
前記段付き部は前記取出側のロールの両端部に備えられたフランジに設けられたものである請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のロールミル装置の材料漏れ抑制構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−143353(P2011−143353A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6313(P2010−6313)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】
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