説明

ロールミル

【課題】粘性塊を粉砕・均質化し、特に結合剤中に浮遊している固形微粒子を分散・均一分配するロールミルを提供する。
【解決手段】ロールミルはその軸を中心に回転する少なくとも2種類のロール1、2、3を有し、第1のロール2の回転軸は所定の場所に固定され、第2のロール1、3の回転軸は移動自在に配置されており、さらに、少なくとも1つのロール1、3を他のロール2に対して押付ける少なくとも1つの押付け装置4、5を有する。ロール押付けは、機械・空気圧押付け装置4、5により行われる。製品の取出しに使用される後部ロール又は移送ロール3はその軸方向加工長さL3は中間ロール2の加工長さL2よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性塊を粉砕・均質化し、特に結合剤中に浮遊している固形微粒子を分散・均一分配するロールミルに、詳細には3ロールミルに関するものである。かかるロールミルは、その縦軸を中心に旋回する少なくとも2つのロールを有し、第1のロールの回転軸は所定の位置に固定されており、第2のロールの回転軸は可動配置されている。さらに、少なくとも1つのロールが少なくとも1つの押付け装置により他のロールに対して押付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、製品品質の向上を可能にすると共に、製粉作業の改善により製品の不均質性を回避する冒頭に記載の基本構成によるロールミルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
例えば、非分散オーバサイズが原因となる製品の不均質性は、請求項1の特徴を備えたロールミルによって回避される。製品の取出しに使用される後部ロール又は移送ロールはその軸方向加工長さが中間ロールよりも短くなっており、中間ロールの加工長さの端が後部ロール又は移送ロールの加工長さの端を越えて両方に延びるように中間ロールに対して軸方向に配置されている。この効果は、非研磨又は研磨不足製品が、すなわち、過粗製品がロールミルの動作中に中間ロールから後部ロール又は移送ロールへと通過しない点にある。従って、この措置により、不明確なエッジ効果を回避しつつ、製品品質の改善を、すなわち、製品の均一性の向上を達成することが可能となる。
【0004】
ロール表面又は加工表面は好ましくは無金属セラミック材料製であり、ロールは、好ましくは、中空の金属シリンダに嵌着されたセラミックシリンダを有する。これにより、粉砕プロセスにおけるロールの摩耗によって金属汚染されるのが防止される。これを特に重要とするのは、電子機器用にペーストを加工する場合や、ファインセラミックスに基づく絶縁体を製造する場合である。
【0005】
本発明の特に有効な実施形態においては、本発明によるロールミルは、3つの平行なロールを備えたいわゆる「3ロールミル」である。中間ロールの回転軸はここでは所定の場所に固定されており、前部ロール又は給送ロールの回転軸と後部ロール又は転送ロールの回転軸とは可動である。この目的を達成するために、ロールミルは、前部ロールを中間ロールに対して押付ける前部機械・空気圧押付け装置と、後部ロールを中間ロールに対して押付ける後部機械・空気圧押付け装置とを有する。これは2つのロール間隙に備えたものである。このようにして、それぞれのロール間隙におけるロール距離と差速と圧力とを調節することにより、両ロール間隙についての動作条件を独立して調節することが可能となる。
【0006】
特に、冷却効果の改善という一つの目的に対する他の解決手段において、ロールミル又は3ロールミルは、前部ロールまたは給送ロールの回転軸と中間ロールの回転軸とにより画定される第1の平面と、中間ロールの回転軸と後部ロールまたは転送ロールの回転軸とにより画定される第2の平面とが相互に約10°〜90°の角度だけ傾斜しており、特に、第1の平面は水平に延びており、第2の平面は上向きに傾斜して延びている(側面から見てL字形のロール配置)。角度は好ましくは30°〜60°、特に好ましくは約45°である。その結果として、内部に固形微粒子(例えば、顔料)が分散した粘性塊の製品は、ロールミルを通過する間に、前部、中間及び後部ロールの回転軸が単一の平面にある場合より長時間冷却されることになる。
【0007】
かかる装置では、ロールの冷たい表面上の製品は滞留時間が長くなる。
【0008】
ロールは内側から冷却するのが最良である。例えば、これが重要となるのは、特にある種の黄色の顔料に関する有機顔料を加工する場合である。
【0009】
好ましくは、前部ロールと後部ロールの両方は機械・空気圧押付け装置により中間ロールに対して押付けられる。これにより、前部ロールと後部ロールとの間隙を調節することが可能になる。機械・空気圧押付け装置は好ましくはロール間隙を設定するための制御手段を有する。上述のような力変換器によって、「力伝達」と「経路短縮」が可能になるので、空気圧装置の比較的弱い力をロール押付けの目的のために増強することができ、それと同時に、空気圧装置により定められたロール間隙調節の精度を大幅に高めることができる。
【0010】
移送ロールには、粉砕・均質化塊を剥離するストリッパが当接しているのが最良であり、このストリッパも好ましくは無金属材料製、特に、セラミック材料又はポリマー材料である。このことからも、結果として移送ロールから剥離される際のストリッパ摩耗から生じる製品の品質低下が完全に防止される。
【0011】
好ましくはターポリンがロールミルの少なくとも給送エリアを覆っている。これにより、好ましくない汚染物質が工場の建物から製品に混入することや、その逆の現象、すなわち、望ましくない揮発性製品成分が工場建物の空気中に混入するのを防止できる。これが一方では「製品の衛生状態」を、他方では「職場の衛生状態」を改善する。
【0012】
ターポリン下のスペースは好ましくはガス通気孔に接続されている。これにより、製品溶剤に含まれる揮発性物質が工場建物の空気中に混入するのを防止できる。
【0013】
本発明の追加的効果、特徴及び可能な適用は、以下の本発明の代表的実施形態の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2は、本発明に係るロールミルの第1の実施形態を示したものである。ここに示した3ロールミルは3つのロール1、2、3を含み、これらのロールは相互に平行に整列させられており、全てが単一の平面Eに配置されている。言い換えれば、前部ロール1の回転軸A1と中間ロール2の回転軸A2と後部ロール3の回転軸A3とは相互に平行であり(図2を参照)、全てのロールが同一の平面Eにある。動作モードにおいては、前部ロール1と後部ロール3はそれぞれが前部押付け装置4又は後部押し付け装置5により中間ロール2に対して押付けられ、中間ロール2の回転軸A2は所定の場所に固定されている。前部ロール1と後部ロール3は可動であり、すなわち、その回転軸A1とA3は旋回軸D3を中心として旋回することができる。ロール1、2、3のジャケット表面はそれぞれが、加工すべき製品が接触するロール加工表面S1、S2、S3を各々備えている。動作中には、相互に押付けられたロール1とロール2の間を通過する製品は、前部ロール1の加工表面S1と中間ロール2の加工表面S2との間にロール間隙を形成する。同様に、動作中には、相互に押付けられたロール2とロール3の間を通過する製品は、後部ロール3の加工表面S3と中間ロール2の加工表面S2との間にロール間隙を形成する。
【0015】
前部押付け装置4と後部押し付け装置5はそれぞれが力変換器6と空気圧ドライブ7とを有する。図1に示した第1の実施形態においては、力変換器は、第1のレバー6Aと第2のレバー6Bとから構成されたトグル機構6であり、一方、空気圧ドライブ7は空気圧シリンダ7Aと空気圧ピストンとから構成されている。押付け装置4及び5により及ぼされる力は、空気圧シリンダ7A内に収容され、ピストンロッド7Bにより第1のレバー6Aの関節軸D1と連結された空気圧ピストン7Bから流れる。第1のレバー6Aは第2のレバー6Bの第2の関節軸D2にヒンジ結合され、この第2の関節軸D2は旋回軸D3にヒンジ結合され、前部ロール1と後部ロール3に対する各々緩衝・取付け配置を形成する。
【0016】
レバー6Aとレバー6Bの寸法と向きに応じて、力変換器6及びロール緩衝ユニットとして使用されるトグル機構6A、6Bは空気圧ドライブ7の空気圧力を約20〜50倍に増強し、この増強された力がロール押付けの目的に使用される。これにより、たとえ空気圧ドライブ7を使用しても、十分な力によるロール押付けが可能になる。一方、この力変換器6は、空気圧ドライブ7が通る行程を約1/50〜1/20に短縮し、この短縮された行程がロール間隙の設定に使用される。
【0017】
ロール1、2、3はオーバドライブ又はギヤボックスを介してエンジンMにより駆動される。ロールブロック1、2、3とエンジンブロックMはケーシングGに包含されている。
【0018】
図2は、図1に示した本発明に係るロールミルの第1の実施形態のロール1、2、3の上面図である。図から明らかなように、前部ロール又は給送ロール1と中間ロール2は両方が同じ加工長さL1=L2を有し、一方、後部ロール又は給送ロール3は、不明確なエッジ効果を回避するために、明らかにより短い加工長さL3<L2を有する。後部ロール3は、中間ロール2の加工長さL2の端が両側において後部ロール3の加工長さL3の端を越えて延びるように中間ロール2に対して軸方向に配置されている。これにより、非研磨又は研磨不足製品がロールミルの動作中に中間ロール2から後部ロール3へと通過することが確実になくなり、それにより、製品品質の明らかな向上を達成することが可能になる。
【0019】
図3及び図4は、本発明に係るロールミルの第2の実施形態を示したものである。
【0020】
図1及び図2に示した第1の実施形態の要素と同一の又はそれに対応する図3及び図4に示した第2の実施形態の要素は、図1又は図2に対応する要素の参照番号に引用符を付けた参照番号を有する。第2の実施形態のこれら要素の働きについてはここで再度説明しない。さらに、それぞれ力変換器6’と空気圧ドライブ7’とを備えた前部押付け装置4’と後部押し付け装置5’は概略的に示しているにすぎない。
【0021】
第1の実施形態とは異なる第2の実施形態の要素を示す図3及び図4の参照番号には引用符が付けられていない。その機能と重要性については以下で説明する。
【0022】
第1の実施形態(図1及び図2)及び第2の実施形態(図3及び図4)との間の基本的な相違点は、そこに示された3ロールミルが、相互に平行に整列させられてはいるが、全てが同じ平面に配置されてはいない3つのロール1’、2’、3’を有することである。正確に言えば、前部ロール1’の回転軸A1’と中間ロール2’の回転軸A2’は第1の平面E1に配置され、一方、後部ロール3’の回転軸A3’と中間ロール2’の回転軸A2’は、第1の平面E1に対して約45°の角度γを形成する第2の平面E2に配置されている。3つのロール1’、2’、3’をこのように配置した結果として、内部に固形微粒子(例えば、顔料)が分散した粘性塊である製品は、前部、中間及び後部ロールの回転軸が単一の平面にある配置の場合よりも長期間、従って、強力に冷却することができる。
【0023】
図4は、図3に示した本発明に係るロールミルの第2の実施形態のロール1’、2’、3’の上面図である。この場合も同様に、前部ロール又は給送ロール1’と中間ロール2’は両方が同じ加工長さL1’=L2’を有し、一方、後部ロール又は移送ロール3’は明らかにより短い加工長さL3’<L2’を有する。後部ロール3’は、中間ロール2’の加工長さL2’の端が両側において後部ロール3’の加工長さL3’の端を越えて延びるように中間ロール2’に対して軸方向に配置されている。すでに説明したように、これにより、非研磨又は研磨不足製品が3ロールミルの動作中に中間ロール2’から後部ロール3’へと移動することが確実になくなり、それにより、製品品質が改善される。
【0024】
第2の実施形態に係るロールミルを通過する際に製品が通る経路は、角度γの結果として平面E1と平面E2との間に生じる半径Rを備えるロール2’及び3’の表面S2’及びS3’において2つの更なる円弧の長さ分だけ延長される。すなわち、第1の実施形態(図1)に対する2×γ×Rの追加経路が生じる。
【0025】
一方の側の導入領域から延びるスタッキングウェッジを備えた移送ファンネル又は製品トラフ8が、前部ロール1’と中間ロール2’との間の導入ロール間隙のエリア上方に配置されている。従来のウェッジガスケットに加えてスタッキングウェッジを備えている結果として、この製品トラフの密封性が高まり、それにより、横方向からの製品損失を確実に低減させる。
【0026】
剥離用ナイフを備えたストリッパ9が、製品を後部ロール3’から除去するために使用される。ストリッパ9は、SPSコントローラから作動させられる自動ナイフ調節装置を備えている。
【0027】
第1及び第2の実施形態において、ロール表面又はロール加工表面S1、S2、S3又はS1’、S2’、S3’はセラミック材料製とすることができる。図3に示したストリッパ9もまたセラミック材料又はポリマー材料製とすることができる。ロール加工表面及びストリッパナイフ用のこれら又はその他の無金属材料は、電子機器業界におけるペースト加工にとって特に興味深いものである。
【0028】
セラミックロールはロール加工長さの端部が丸められている。
【0029】
空気圧ドライブ7は最大4バールまでの圧力下で動作し、例えば、これらの圧力は、力変換器6を介して、ロール間隙において必要なライン圧力にされる。力変換器6は、ロール押付け装置4、5によりロールに対して及ぼされる押付け力を約10〜約80倍に増強することを可能にする。従って、力変換器を介して空気圧ドライブにより定められた行程の短縮はロール間隙の設定精度を同じ倍率だけ高めることになる。
【0030】
ロールの直径は300mmであり、後部ロール3、3’は中間ロール2、2’よりも約4mm〜5mm短い。その結果として、ストリッパ9は研磨された製品だけを後部ロール3’から剥離させることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るロールミルの第1の実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1に示した第1の実施形態のロールの上面図である。
【図3】図1に対応する第2の実施形態のロールミルの概略側面図である。
【図4】図3に示した第2の実施形態のロールの上面図である。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 前部ロール/給送りロール
2、2’ 固定回転軸を有するロール/中間ロール
3、3’ 後部ロール/移送ロール
4、4’ 前部押付け装置
5、5’ 後部押付け装置
6、6’ 力変換器
6A、6B 第1のレバー、第2のレバー
7A 空気圧シリンダ
7B ピストンロッド
7、7’ 空気圧ドライブ
8 給送ファンネル
9 ストリッパ
A1、A1’ 回転軸
A2、A2’ 回転軸
γ 角度
R 半径
A3、A3’ 回転軸
D1、D1’ 関節軸
D2、D2’ 関節軸
D3、D3’ 旋回軸
E、E1 第1の平面
E2 第2の平面
F、F’ それぞれ図2及び図4における矢印/見る方向
G、G’ ケーシング
L1、L1’ ロール加工長さ
L2、L2’ ロール加工長さ
L3、L3’ ロール加工長さ
M、M’ エンジン
S1、S1’ ロール加工表面
S2、S2’ ロール加工表面
S3、S3’ ロール加工表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸を中心に旋回する少なくとも2つのロール(1、2、3)を備え、第1のロール(2)の回転軸が所定の位置に固定されており、第2のロール(1、3)の回転軸が可動であり、さらに、少なくとも1つのロール(1、3)を他のロールに(2)対して押付ける少なくとも1つの押付け装置(4、5)を備えた、粘性塊を粉砕・均質化し、特に結合剤中に浮遊している固形微粒子を分散・均一分配するロールミルであって、製品の取出しに使用される後部ロール又は上記移送ロール(3)はその軸方向加工長さ(L3)が中間ロール(2)の加工長さ(L2)よりも短く、中間ロール(2)の加工長さ(L2)の端が両側において後部ロール又は移送ロール(3)の加工長さ(L3)の端を越えて延びるように中間ロール(2)に対して軸方向に配置されてなることを特徴とするロールミル。
【請求項2】
ロール表面又は加工表面(S1、S2、S3)が無金属セラミック材料製からなることを特徴とする請求項1に記載のロールミル。
【請求項3】
3ロールミルとして構成されており、ロールが側面から見てL字形に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールミル。
【請求項4】
ロール(1、2、3)が、中空の金属シリンダに嵌着されたセラミックシリンダを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロールミル。
【請求項5】
ロール(1、2、3)が内側から冷却されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロールミル。
【請求項6】
押付け装置(4、5)が機械・空気圧押付け装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロールミル。
【請求項7】
押付け装置(4、5)が、ロール間隙を設定するためのコントローラを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のロールミル。
【請求項8】
後部ロール(3)の方が2mm〜10mm、好ましくは、3mm〜6mm短いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のロールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−301563(P2007−301563A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180836(P2007−180836)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願2007−538235(P2007−538235)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(502273074)ビユーラア アクチエンゲゼルシヤフト (5)
【Fターム(参考)】