説明

ロール仕上機

【課題】洗濯設備に用いられるロール仕上機械を改良し、被処理物である脱水済み洗濯物の乾燥所要時間を短縮して作業能率を向上させる。
【解決手段】加熱ロール1に巻き掛けられて周回するベルト2に対向せしめて減圧室10を設け、ブロワ11で排気する。これにより、加熱ロールとベルトとの間に挟みつけられている洗濯物5の付近に通風を生じる。さらに乾燥を促進するため、前記のベルトは通気性の大きいものとし、かつベルト2のテンション及び走行速度を調節して乾燥所要時間の極小値を求めて操業する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水された状態の洗濯物をプレスし、かつ乾燥させるロール仕上機に係り、加熱ロールの形状寸法や設置個数を増加させることなく、乾燥所要時間を短縮し得るように改良したものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来例のロール仕上機を示し、模式的に描いた正面図である。
加熱ロール1はほぼ水平な軸(紙面に直角)の周りに、矢印a方向に回転していて、過熱蒸気によって140℃〜170℃に加熱されている。
上記加熱ロール1に無端環状のベルト2が巻き掛けられており、該ベルトは複数個のローラ3a〜3dに案内されて周回している。矢印b,c,d,e,fは周回方向を表している。
未仕上げ洗濯物4は矢印hのように搬入され、加熱ロール1とベルト2との間へ供給され(矢印e)、加熱ロールやベルトと一緒に矢印a方向に回ってゆく。符号5を付して示したのは、仕上げ途中の洗濯物である。
【0003】
ローラ3aはテンションローラを兼ねていて、エアシリンダ7によって図の右方に向けて付勢されている。上記エアシリンダ7に供給される圧力空気は減圧弁8によって圧力を調節され、ベルト2に対して自動的に一定のテンションが与えられる。このテンションによって、洗濯物5は加熱ロール1に圧しつけられ、加熱されてプレス仕上げされ、仕上済み洗濯物6となって矢印gのように送り出される。
従来例のロール仕上機においては、ベルトのテンションについては別段の考慮が為されておらず、0.15キログラム/センチメートル未満に設定されていて、前記のローラ3aは、それ以上の力に耐えることはできなかった。
【0004】
仕上げられた洗濯物に皺(しわ)を残さないようにするため、特許文献1として挙げた特開2006−138022号公報「洗濯済みの被処理物のロール仕上機及びロール仕上方法」が提案されており、
また、被処理物である洗濯物がロールに巻きつかないようにするため、特許文献2として挙げた特開2005−205065号公報「ロール仕上機における巻付き防止方法、及びエアー式巻付き防止装置」が提案されている。
しかし、ロール仕上げにおける洗濯物の乾燥所要時間を短縮して作業の処理能率を向上させることについては、別段の新規な技術が開発されていない。
【特許文献1】特開2006−138022号公報
【特許文献2】特開2005−205065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示した従来例のロール仕上機において、仕上済み洗濯物は自然乾燥状態(通常の生活環境内において、空気中の蒸気圧とバランスする程度の湿り度)になっていなければならない。
ロール仕上機の処理能率を上げようとする場合、仕上済み洗濯物が自然乾燥状態に達していることが条件とされる。
このためロール仕上機においては、被処理物である洗濯物を如何にして速く自然乾燥状態まで乾かすかということが能率向上の決め手になる。
【0006】
従来技術において、仕上げ所要時間を短縮するために加熱ロールの回転速度を速めようとすると、仕上済み洗濯物の含有水分を自然乾燥状態に到達させるためには、該加熱ロールの直径を大きくして洗濯物の被処理時間を維持しなければならない。さもなくば、複数個の加熱ロールを配置して、いわゆる多段式のロール仕上機を構成しなければならなかった。これらの方策は必然的にロール仕上機の形状,重量を増大させ、製造コストを増加させる。
【0007】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、ロール仕上機の形状,重量を増大させることなく、被処理物である洗濯物の乾燥所要時間を短縮し得る技術を提供するにある。
ロール仕上機の形状,重量や設置個数を増加させることなく乾燥所要時間を短縮することができれば、製造コスト増加を抑制して洗濯物の処理能率を向上せしめ得ることが期待される。
ただし本発明を実施する際、ロール仕上機の形状,重量や設置個数は任意に設定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ロール仕上機における被処理物の挙動を子細に観察して解析し、乾燥速度が、ベルトの通気度およびベルトのテンションと密接に関連していることを発見し、その態様を確認した。
そこで、通気度とテンションとの相関の下に、ベルトの最適通気度および最適テンションを探求して、実施形態1(請求項1)の発明を創作し、
その後、研究を続けて乾燥の進行状況がベルトの走行速度(加熱ロールの周速)にも関連していることを発見し、この新たな知見に基づいて実施形態2(請求項2)の発明を創作するに至り、
さらに、前記実施形態1と実施形態2とを総合的に検討,解析して上位概念としての請求項3の発明を創作して本願発明を完成した。
【0009】
図2は、縦軸に乾燥所要時間をとるとともに、横軸にベルトの通気度をとって、ベルトのテンションが0.15キログラム/センチメートルである場合のカーブαと、ベルトのテンションが1.8キログラム/センチメートルである場合のカーブβとを描いた図表である。図示を省略するが、カーブαとカーブβとの間に、多数の相似形の中間カーブが存在する。
この図2の実験におけるベルトの走行速度(加熱ロールの周速)は、従来技術の範囲内(24メートル/分未満)であって、15メートル/分である。
(注)従来例におけるベルト走行速度は一般に10〜15メートル/分である。
この図2の縦軸に表された乾燥所要時間は、横軸の通気度20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分と30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分との間に極小値が認められる。
請求項1の発明は、上述のごとく確認した図2(実施形態1)の原理に基づき、工業的に利用し得る具体的な構成を創作したものである。
【0010】
上述の原理に基づいて創作した請求項1の発明は、水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、上記加熱ロールとベルトとの間に脱水処理された洗濯物を挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの通気度が、20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分〜30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分であり、
かつ、該ベルトのテンションが0.15キログラム/センチメートル〜1.8キログラム/センチメートルであることを特徴とする。
【0011】
前記図2(実施形態1)の実験においてはベルトの走行速度に関して格別の考慮を払っていなかった。すなわち、従来技術の範囲内で加熱ロールの回転速度を設定した。
しかし、その後の研究において、ベルトの走行速度(加熱ロールの周速)を従来例よりも著しく高く、25メートル/分に設定してみたところ、図3(実施形態2)を得た。
すなわち、ベルト走行速度を上げると、乾燥所要時間カーブの極小位置が「通気度の大きい方向」へ移動した。
【0012】
上述の新たな知見に基づいて創作した請求項2の発明は、水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、上記加熱ロールとベルトとの間に脱水処理された洗濯物を挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの走行速度が24メートル/分以上であり、
該ベルトの通気度が、30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分〜50,000立方センチメートル/平方センチメートル・分であり、
かつ、該ベルトのテンションが0.15キログラム/センチメートル〜1.8キログラム/センチメートルであることを特徴とする。
前記請求項1の構成と比較して異なる点は次のとおりである。
イ.ベルト走行速度の領域が高いこと。
ロ.通気量の大きいベルトを選定したこと。
【0013】
請求項3の発明は、前記実施形態1と実施形態2とを総合的に検討し、さらに各種のベルト走行速度やベルトテンションにおける洗濯物の乾燥態様を実験・研究した結果到達したものであって、水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、脱水処理された洗濯物を上記加熱ロールとベルトとの間に挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの通気度が、20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以上であることを特徴とする。
【0014】
ベルトの走行速度・テンション・通気度という3つの要素のそれぞれを変化させながら洗濯物の乾燥態様を観察すると、これら要素の相関は非常に複雑であり、簡明に最適条件を特定することは、実際問題として極めて困難である。
しかし、従来技術において誰も試みなかった「20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以上」という通気度の領域において、従来技術では達成し得なかった高能率のロールプレスが可能であることが確認された。なお、望ましくは20,000〜30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分の間が推奨される。
【0015】
請求項4の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1ないし請求項3の発明の構成要件に加えて、前記ベルトの外周に接している空間の少なくとも一部の区域の空気を流動せしめる手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項4の発明の構成要件に加えて、前記の空気を流動せしめる手段が、ベルトの外周を緩やかに覆って設けられた減圧室、および該減圧室内の空気を排出するブロワを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項4の発明の構成要件に加えて、前記の空気を流動せしめる手段が、ベルトの外周を緩やかに覆って設けられた加圧室、および該加圧室内へ空気を圧送するブロワを備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1ないし請求項4の発明の構成要件に加えて、
前記ベルトの幅寸法が、前記加熱ロールの長さ寸法とほぼ等しい1枚のベルトであり、
又は、幅寸法の合計が前記加熱ロールの長さ寸法とほぼ等しい複数枚のベルトから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明を適用すると、従来技術に係るロール仕上機に比して、形状寸法や重量を増大させず、製造コストをほとんど増加させることなく、被処理物である洗濯物の乾燥所要時間を大幅に短縮し、処理能率を格段に向上させることができる。
【0020】
請求項2の発明は、上記請求項1の発明を発展させたものであり、請求項1の発明よりもベルト走行速度の高い領域において該請求項1の発明と同様の効果を得たものである。
ベルト走行速度が高いので洗濯物の処理能率が向上する。
【0021】
請求項3の発明は、前記請求項1及び請求項2の構成を更に研究して、最も大切で、欠くことのできない構成を精選したものであって、従来技術においては、洗濯物を押さえ付ける密度が小さくて伝熱性が悪い(後に、段落0028において詳述)として用いられなかった領域の通気度を採用することによって、脱水済み洗濯物のロールプレス処理能率を向上せしめた。
【0022】
請求項1ないし請求項3の発明に併せて請求項4の発明を適用すると、乾燥所要時間を更に短縮し、処理能率をいっそう向上させることができる。
【0023】
請求項4の発明に併せて請求項5又は請求項6の発明を適用すると、簡単な構造で有効な空気流動を発生させて洗濯物の乾燥を促進し、請求項4の発明の効果を充分に発揮させることができる。
【0024】
請求項1ないし請求項4の発明に請求項7の発明を適用すると、既製品の市販ベルトを使用して本発明のロール仕上機を合理的に構成することができ、しかも、設計的自由度が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1の実施形態>
図1は本発明の1実施形態を模式的に描いた正面図である。
この実施形態は、前掲の図6に示した従来例のロール仕上機に本発明を適用して改良した1例である。
前掲の図6(従来例)に比して異なるところは、エアシリンダ7に対して作動空気を供給する管路に可変減圧弁9を設けて、テンションローラとしての機能を兼ねているローラ3aに与える力を任意に制御し得るようになっている。
ベルト2が受けるテンションは、ローラ3aが与えられるシリンダ出力の約半分に相当する。
図示を省略するが、前記のエアシリンダ7に代えて油圧シリンダを設けるとともに、圧力調整可能な作動油を供給することによって、前記のベルトにテンションを与えるように構成することもできる。
【0026】
本実施形態においては、ベルト2に与えられるテンションを、0.15キログラム/センチメートル〜1.8キログラム/センチメートルに設定する。この第1の実施形態においては1.0キログラム/センチメートルに制御した。
各ローラ(3a〜3d)は、このような大きいテンションに耐え得るよう、従来例よりも丈夫にしてある。
本発明においては、通気度20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分〜30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分のベルトを使用する。
図2に示した実験においては、カンバス通気度25,000立方センチメートル/平方センチメートル・分の市販のベルトを用いた。
【0027】
上記の通気度は、JIS L10968.27.1に規定されているA法(フラジール形法)によるものとする。
(注)カンバス通気度:ドライヤーカンバスの開口度を表示する。
表示単位は立方センチ/平方センチ・分(1/2インチ水柱圧)であり、
カンバスの表裏面に圧力差(1/2インチ水柱圧)を与え、この時、単位時間に単位面積を通過する空気量を測定する。
【0028】
(図2参照)ベルトの通気度が洗濯物の乾燥に関係するであろうことは容易に推察できるが、未だ実験的にも理論的にも追及されていなかった。
通気度が20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以下であると、洗濯物から発生した蒸気の発散が妨げられて乾燥所要時間が長くなる。
ところが、通気度が40,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以上であると、洗濯物を加熱ロールに向けて押さえつける密度が減少し、洗濯物と加熱ロールとの密着が不充分になって、加熱ロールから洗濯物への熱伝導が悪くなるので、却って乾燥所要時間が長くなる(従来技術においては、洗濯物の押し付け密度を重視して、ベルトの通気度を20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分未満にしていた)。 上述のように諸条件が相関して、本例の条件(ベルト走行速度24メートル/分)において、ベルトの最適通気度は20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分と30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分との間に存在する。
【0029】
次に、ベルトテンションについて考察すると、0.15キログラム/センチメートルに近づくほど、最短乾燥時間が得られる通気度は20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分に近づき、
ベルトテンションが1.8キログラム/センチメートルに近づくほど、最短乾燥時間が得られる通気度が30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分に近づく。
【0030】
こうした関係を総合すると、最適条件を得るため通気度を20,000〜30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分ならしめるためには、ベルトテンションを0.15〜1.8キログラム/センチメートルの間に設定しなければならなくなる。
本発明者の実験によると、ベルトテンションを0.3〜1.8キログラム/センチメートルの間に設定することが一層望ましい。ただし(図6参照)従来例のロール仕上機におけるローラ3aは0.3キログラム/センチメートルのテンションに耐え得ないから、本発明を実施する場合は減圧弁8を変えるだけでは足りず、ローラ3a(または、これと同様に機能しているテンションローラ)を丈夫なものに作り替えねばならない。
【0031】
ベルトのテンションとベルトの通気度とを個々に考察すれば設計的配慮の範囲内の事項であると誤解され易いが、上述のごとくベルトテンションと通気度とが乾燥所要時間に及ぼす作用のメカニズムを解明して、ベルトテンションと通気度との関連において最適条件を設定することは、決して設計的考慮とはいえない創作力を要する発明である。
特に、前述のごとく、従来例のロール仕上機テンションローラの仕様を変更して強化しなければ壊れてしまうような大きいベルトテンションを与えることは、適宜に為し得る設計的配慮とは言えない。
従来においては、ベルトテンションの大小が乾燥速度に影響を及ぼすとは思いもよらなかったので、漫然と0.15キログラム/センチメートル未満に設定されていた。
【0032】
本発明の実施形態を描いた図1(正面図)において、加熱ロール1は紙面と直角方向に長さを有しており、ベルト2も紙面と直角方向に幅を有している。
本発明を実施する際、ロール仕上機メーカーの立場から見れば所望の通気度を有するベルトは市販品を購入することができる。
しかし、市販のベルトの幅寸法はベルトメーカーの規格に基づいて製造供給されているので、ロール仕上機メーカーが設計製作しようとする加熱ロールの長さ寸法と市販ベルトの幅寸法とを整合させるために工夫を要する。
本例においては、求められるロール仕上げ性能に基づいて所要の加熱ローラ長さ寸法とベルトの幅寸法とを算出し、算出された幅寸法と一致するように、複数枚の既製ベルトを並べて所望の幅寸法を得た。
【0033】
<第2の実施形態>
図2を参照して説明した前記第1の実施形態においては、ベルトの走行速度に関して別段の考慮を払わず、従来例(24メートル/分未満)の範囲内で15メートル/分に設定されていたが、第2の実施形態においては新たな実験結果(図3)に基づいてベルトの走行速度を24メートル/分以上の30メートル/分に設定した。
この速度領域(24メートル/分以上)でベルトを走行させることは、未だ曾て試みられたことが無い。
【0034】
ベルト走行速度を24メートル/分以上の高速領域にすると、乾燥所要時間の極小値が図の右方(ベルト通気度の大きい方)に移動する。
高速走行(24メートル/分以上)の実験結果では、乾燥所要時間の極小値が30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分〜50,000立方センチメートル/平方センチメートル・分の間に現れている。
図3に示した第2の実施形態(請求項2)によっても、前記第1の実施形態(請求項1)におけると同様に乾燥所要時間を短縮することができ、ベルト走行速度の上昇によってロール仕上げ作業の能率がいっそう向上する。
【0035】
以上に説明したように洗濯物の乾燥態様は、ベルトの通気度と、ベルトのテンションと、ベルトの走行速度とが、相互に複雑に相関している。これら3つの物理量を変数として洗濯物の乾燥速度グラフを描くと4次元グラフになる。
前掲の図2及び図3は、上記4次元グラフについてベルト走行速度をパラメータとして3次元グラフ(立体グラフ)を想定し、更にベルトのテンションについて、0.15キログラム/センチメートルと1.8キログラム/センチメートルとの2つの面で切断して2本の曲線を得たものである。
【0036】
従って、上記2枚のグラフ(2つの実施形態)のみでは、本発明者が創作した技術的思想の全貌を表すに足りない。
そこで、これら2枚のグラフ(2つの実施形態)を参照しつつ、従来技術の領域と本願発明の領域との境界を探求した結果、「本願発明に欠くことができず、かつ、従来技術においては考えられていなかった構成」は、「ベルトの通気度が、20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以上」であることを確認した(請求項3)。
【0037】
図4は前掲の図1に示した実施形態の改良例を描いた模式的な正面図である。
洗濯物5は、図示の点イで挿入され、円弧矢印aのように回動して、図示の点ロで放出される。すなわち、点イから左回り(反時計方向)に点ロまでの間が洗濯物の回動区域である。
上気の回動区域の一部分を緩やかに覆う形の減圧室10を設け、その中の空気をブロワ11で排気して減圧室内の空気を流動させる。
【0038】
ロール仕上機の被処理物である洗濯物の寸法形状は不定であるから、減圧室10は加熱ロール1の直径寸法に比して大きめに作っておくことが望ましい。前記の「緩やかに覆う」とは、所要の間隔寸法Wを設ける意である。
洗濯物に触れているベルトの外側に空気が流れていると、洗濯物から発生した蒸気が速やかに取り除かれ、洗濯物の乾燥がいっそう速くなる。
【0039】
図5は、前掲の図4と異なる改良例を示す。本例においては、前記の減圧室に代えて加圧室12を設け、ブロワ11によって加圧室へ空気を送給する。送給された空気は洗濯物を押さえているベルト2の外周に沿って流動し、前記改良例(図4)におけると同様に洗濯物の乾燥を促進する。
本発明を実施する場合、減圧室兼加圧室を構成しておき、ブロワ11による吸気と排気とを切り替えることにより、図4に示した改良例として用いたり、図5に示した改良例として用いたり、任意に選択することもできる。
【0040】
上述の作用効果から明らかなように、減圧室10や加圧室12の役目は、ベルトの外周に沿った空気流を発生させることであって、負圧または正圧を発生させることが最終の目的ではない。
本発明を実施する際、必ずしも減圧室もしくは加圧室を設けなくても、洗濯物が回動する区域においてベルトの外周付近に空気流を発生させれば、図4や図5に示した改良例と同様の効果が得られる。
ベルトの外周付近に空気流を発生させるには、例えば吸気ダクトを設けるとか、空気ノズルを設けるとか、扇風機で風を送るとか、種々の手段が考えられる。
ただし、減圧室とブロワとによる構成は、作業環境の保全という意味から好ましい。本発明者の試験研究によると、加圧室を設けた場合も、減圧室を設けた場合と同様の乾燥促進効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るロール仕上機の1実施形態を示し、模式的に描いた正面図にエア配管を付記した図である。
【図2】本発明における第1の実施形態の作用効果の原理を説明するために示したもので、ベルト走行速度24メートル/分未満における通気度−乾燥所要時間グラフである。
【図3】本発明における第2の実施形態の作用効果の原理を説明するために示したもので、ベルト走行速度24メートル/分以上における通気度−乾燥所要時間グラフである。
【図4】前掲の図1の実施形態に係るロール仕上機の1改良例を示し、模式的に描いた正面図にエア配管を付記した図である。
【図5】前掲の図1の実施形態に係るロール仕上機の、上記と異なる改良例を示し、模式的に描いた正面図にエア配管を付記した図である。
【図6】従来例のロール仕上機を示し、模式的に描いた正面図にエア配管を付記した図である。
【符号の説明】
【0042】
1…加熱ロール
2…ベルト
3a〜3d…ローラ
4…未仕上げ洗濯物
5…洗濯物
6…仕上済み洗濯物
7…エアシリンダ
8…減圧弁
9…可変減圧弁
10…減圧室
11…ブロワ
12…加圧室
a…加熱ロールの回転方向を表す矢印
b,c,d,e…ベルトの周回方向を表す矢印
h…洗濯物の送り込み方向を表す矢印
g…洗濯物の送り出し方向を表す矢印
W…間隔寸法
イ…洗濯物の送り込み箇所
ロ…洗濯物の送り出し箇所
α…ベルトテンション0.15kg/cmのカーブ
β…ベルトテンション1.8kg/cmのカーブ
γ…ベルトテンション0.15kg/cmのカーブ
δ…ベルトテンション1.8kg/cmのカーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、脱水処理された洗濯物を上記加熱ロールとベルトとの間に挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの走行速度が24メートル/分未満であり、
該ベルトの通気度が、20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分ないし30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分であり、
かつ、該ベルトのテンションが0.15キログラム/センチメートルないし1.8キログラム/センチメートルであることを特徴とするロール仕上機。
【請求項2】
水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、脱水処理された洗濯物を上記加熱ロールとベルトとの間に挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの走行速度が24メートル/分以上であり、
該ベルトの通気度が、30,000立方センチメートル/平方センチメートル・分ないし50,000立方センチメートル/平方センチメートル・分であり、
かつ、該ベルトのテンションが0.15キログラム/センチメートルないし1.8キログラム/センチメートルであることを特徴とするロール仕上機。
【請求項3】
水平軸の周りに回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられて周回する無端環状のベルトとを備え、脱水処理された洗濯物を上記加熱ロールとベルトとの間に挟み込んでプレスするとともに乾燥させるロール仕上機において、
前記ベルトの通気度が、20,000立方センチメートル/平方センチメートル・分以上であることを特徴とするロール仕上機。
【請求項4】
前記ベルトの外周に接している空間の少なくとも一部の区域の空気を流動せしめる手段が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3に記載したロール仕上機。
【請求項5】
前記の空気を流動せしめる手段が、ベルトの外周を緩やかに覆って設けられた減圧室、および該減圧室内の空気を排出するブロワを備えていることを特徴とする、請求項4に記載したロール仕上機。
【請求項6】
前記の空気を流動せしめる手段が、ベルトの外周を緩やかに覆って設けられた加圧室、および該加圧室内へ空気を圧送するブロワを備えていることを特徴とする、請求項4に記載したロール仕上機。
【請求項7】
前記ベルトの幅寸法が、前記加熱ロールの長さ寸法とほぼ等しい1枚のベルトであり、
又は、幅寸法の合計が前記加熱ロールの長さ寸法とほぼ等しい複数枚のベルトから成ることを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れかに記載したロール仕上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−119455(P2008−119455A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268118(P2007−268118)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】