説明

ロール支持台

【課題】未使用分のフィルムが残った芯材でも安定して載置することができる芯材用載置台を有するとともに、基台四隅の支柱でロール体を支持して懸架している時にも、この芯材用載置台が上記ロール体を傷付けるおそれのないロール支持台を提供する。
【解決手段】芯材(芯管C)に巻回されたロール体Rを懸架して積載するロール支持台において、その基台1の中に、不使用時(ロール体Rの積載時)には基台1の上面から突出しないように収容でき、使用時(空芯管Cの積載時)にのみ、上記基台1の上面から上方に突出して上記芯管Cを載置することのできる、可到式の芯材用載置台4,4を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、とりわけ偏光フィルム等を形成するためのポリビニルアルコール系フィルムといったシート状長尺物を芯材に巻回してなるロール体を、その芯材の左右両端で支持・懸架した状態で保管または輸送するためのロール支持台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリビニルアルコール樹脂からなるポリビニルアルコール系フィルムや、かかるフィルムからなる偏光フィルム等、最終製品を製造するために用いる大型の原反フィルムは、保管または輸送中の傷付きや変形等を防止するため、このフィルムより幅広の芯材(芯管)に巻回してロール体(長尺ロール)とした後、そのロール体の左右から飛び出した芯材の両端部分を、左右両側に略U字状または略V字状等の芯材受け部(芯管支持部)を備える架台に支承させ、このロール本体(中央のフィルム部分)を空中に浮かせた(懸架した)状態で、保管や輸送等が行なわれる。
【0003】
このような、デリケートな取り扱いが要求される光学用ポリビニルアルコールフィルムからなるロール体を、保管または輸送する方法として、本出願人らは、既に、特許文献1において、ロール体(フイルムロール)を水蒸気バリヤー性樹脂包装フイルムで包装し、その上からアルミニウム製包装フイルムで包装して、このロール体の保管・輸送時の巻ズレ,フイルムの傷付き,ブロッキングによるフイルムの劣化を防止することにより、偏光フイルムロールの巻き出し(使用の際の口出し)時における生産性低下(ロール口出し部の歩留まり低下)を抑えることのできる光学用ポリビニルアルコール系フイルムの保管または輸送方法を提案している。
【0004】
また、本出願人らは、上記ポリビニルアルコール系フィルムからなるロール体の保管・運搬用として、特許文献2において、フレームを用いて構成された略長方形状の基台(連結フレーム)の四隅に、高さ方向の途中に設けられた回動部から起立・倒伏させることのできる支柱が立設され、これら支柱を起立させた状態(ロール体を載せた使用状態)でも、支柱を倒伏させて折り畳んだ状態(ロール体を降ろした非使用状態)でも、これら支持台どうしを上に積み重ねることができ、この支持台の保管場所や積載場所等の空間を有効に利用することができるロール支持台を提案している。
【0005】
図9は、上記提案にかかる従来のロール支持台の構成の一例を示す斜視図である。
この図におけるロール支持台は、ポリビニルアルコール系フィルム等を芯材(芯管:図示せず)に巻回してなるロール体(図示せず)を、その芯管の左右両端部で支持・懸架するものであり、長方形状に溶接された鉄製フレームからなる基台1(xy方向)と、この基台1の長方形状の四隅に配設された支柱2,2,2,2(z方向)とから構成されている。
【0006】
各支柱2は、その高さ方向の所定の位置に回動部(回動支点)2cが設けられており、この支柱2の上部2aを、上記長方形状の長辺(x方向)に沿って内向きに倒伏させて折り畳むことができるようになっている。また、上記長方形の短辺(y方向)を挟んで対峙(対向)する支柱2は、回動部2cよりも上方の位置で、上記短辺方向の支持フレーム3により連結されており、この支持フレーム3の短辺方向略中央には、上記ロール体の芯管の左右両端に係合するU字状またはV字状等の支持部3aが形成されている。そして、このロール支持台は、上記支持部3a,3aで、上記ロール体の芯管の左右両端部のみを支持することにより、上記ロール体の本体部分(フィルム部分)を浮かせて懸架することができるようになっている。
【0007】
また、上記基台1を構成するフレームの上面には、フィルムが巻き出し(使用)された後の空芯管を、支持台に戻す際に用いられる芯材用載置部10,10が設けられている。さらに、各支柱2の下部2b(上記回動部2cより下側)の端部には、内部が下側に向かって開口する凹状(お椀状)になった脚部(支受部)2dが形成されており、同じ形状の他のロール支持台の各支柱上部2aの上端または各回動部2cの頂部を嵌入して、これら支持台どうしを上に重ねて積み上げることができるようになっている。
【0008】
上記構成により、このロール支持台は、上記各支柱2を起立させた際は、上記長方形の基台1の長辺方向左右に設けられた支持部3a,3aでロール体を懸架(すなわちロール体を積載)した状態で、このロール体に干渉することなく、上に複数段積み重ねることができる。また、これら各支柱2を内向きに倒伏させた際は、上記基台1(連結フレーム)上に設けられた固定式の芯材用載置部10,10に、フィルムが空になった芯材(芯管)を載置した状態で、コンパクトに複数段積み重ねることができる。
【0009】
なお、空芯管をロール支持台に戻す際に用いられる芯材用載置部は、図10のように、基台1を構成するフレーム内に、そのフレームの一部を凹状(図10中の符号11を参照)に形成して設けられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−306483号公報
【特許文献2】特開2006−137493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のロール支持台を用いてユーザーの工場等に輸送され、最終製品の製造に供された後のロール体は、通常、その芯材に巻回された原反フィルムがほとんど使い尽くされるため、ロール支持台は、上記支柱2を倒伏させ、この空となった芯材のみを上記固定式の芯材用載置部10,11上に積載した状態で、ユーザーの元から輸送・返却される。
【0012】
ところが、本発明者らの調査の結果、上記原反フィルムを巻回したロール体が、何らかの要因により、原反フィルムを残した状態でその使用を中止(中断)され、その未使用の原反フィルムが巻回されたままの芯材が、上記固定式の芯材用載置部10,11に積載されて輸送・返却される場合があることが分かってきた。
【0013】
しかしながら、上記従来の固定式の芯材用載置部10,11を備えるロール支持台は、設計時に、このような未使用分のフィルムが残った芯材を積載するという使い方を想定しておらず、比較的多くの原反フィルムが芯材上に残っている場合は、これら固定式の芯材用載置部10,11を利用できなかったり、また、利用できたとしても、このフィルム部分が基台1を構成するフレーム等に長時間接触することに起因する傷付きやブロッキング現象等により、そのフィルムの再利用や再資源化等に支障をきたすおそれがある。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、未使用分のフィルムが残った芯材でも安定して載置することができる芯材用載置台を有するとともに、基台四隅の支柱でロール体を支持して懸架している時にも、この芯材用載置台が上記ロール体を傷付けるおそれのないロール支持台の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明は、フレームを連結して形成された略長方形状の基台と、この基台の四隅に立設された支柱と、上記長方形状の基台の短辺を挟んで対峙する支柱どうしの間に配設された支持フレームと、これら各支持フレームの中央部に設けられた支持部とを備え、ロール体から左右に突出する芯材の両端部を、上記各支持部に係合させることにより、上記ロール体を基台上面から浮かせた状態で懸架するロール支持台であって、上記基台の中に、上記芯材を載置するための芯材用載置台が起立・倒伏自在に配設されており、上記芯材用載置台が、上記長方形状の基台の長辺方向に平行に配置された2つの柱状部材と、これら2つの柱状部材の先端部間に掛け渡された載置部とからなり、上記各柱状部材の基端部近傍、または、上記基台を構成するフレームの間に設けられた載置台受け部のいずれか一方には、上記基台の短辺方向に突出するピンが突設されているとともに、上記ピンに対向する側の上記載置台受け部または上記柱状部材の基端部には、上記ピンを挿通することのできる案内溝が設けられ、上記芯材用載置台が、これら各ピンを各案内溝にそれぞれ嵌入することにより、上記各ピンを支点とする基台上下方向の起立・倒伏自在に取り付けられているという構成をとる。
【0016】
本発明は、芯材に巻回されたロール体を懸架して積載するロール支持台において、その基台の中に、不使用時(すなわちロール体の積載時)には基台の上面から突出しないように収容でき、使用時(すなわちロール体の非積載時)にのみ基台の上面から上方に突出して上記芯材を載置することのできる、可到式の芯材用載置台を配設することにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明のロール支持台は、上記基台の中に、ピンを支点に回動することにより基台上下方向に起立・倒伏する芯材用載置台が配設されていることから、ロール体を積載していない時に、上記芯材用載置台を起立させ、基台の上面から上方に突出するように配置した場合は、上記ロール体の芯材(空芯材)を、基台に対して隙間を開けた(持ち上げた)状態で支持できるようになる。また、未使用分のフィルムが残っている芯材でも、この芯材を上記基台の上面に接触させることなく、余裕を持って安定して支持することが可能になる。
【0018】
さらに、本発明のロール支持台は、上記芯材用載置台を倒伏させて基台の中に収納した場合は、上記基台の上面が、突出する部材のないフラットな面となり、ロール体を低い位置で支持・懸架することができる。したがって、本発明のロール支持台は、ロール体を積載した状態の支持台の重心を低くすることができ、その結果、このロール支持台の揺れを低減することができる。また、上記ロール体を積載している時に、外部から振動等を受けた場合でも、上記基台側からロール体に接触や干渉するものがなく、このロール体の傷付き等が防止される。なお、このロール支持台は、上記のようにロール体を低い位置で支持することにより、支持台全体の高さを低く設計することが可能なため、そのロール支持台を保管または輸送等する際に、保管場所等の空間をより有効に利用できるという利点を有する。
【0019】
また、本発明のロール支持台は、上記芯材用載置台が、上記長方形状の基台の長辺方向に平行に配置された2つの柱状部材と、これら2つの柱状部材の先端部間に掛け渡された載置部とからなり、上記各柱状部材の基端部近傍、または、上記基台を構成するフレームの間に設けられた載置台受け部のいずれか一方には、上記基台の短辺方向に突出するピンが突設されているとともに、上記ピンに対向する側の上記載置台受け部または上記柱状部材の基端部には、上記ピンを挿通することのできる案内溝が設けられ、上記芯材用載置台が、これら各ピンを各案内溝にそれぞれ嵌入することにより、上記各ピンを支点とする基台上下方向の起立・倒伏自在に取り付けられている。このため、上記ロール支持台は、先に述べた不使用時(芯材用載置部が基台の上面より下に位置する倒伏状態)と、使用時(芯材用載置部が基台の上面より上に位置する起立状態)とを、簡単な操作で素早く切り替えることが可能になる。
【0020】
また、本発明において、それらのなかでも、特に、上記案内溝が、上記基台の略水平方向に伸びる横溝部と、この横溝部における上記柱状部材の先端部側端部から上記基台の略垂直方向に延設された長縦溝部と、上記横溝部における上記柱状部材の基端部側端部から上記基台の下方向に延設された短縦溝部とから形成されているとともに、上記芯材用載置台の不使用時には、この芯材用載置台の各ピンが上記各案内溝の短縦溝部に嵌まり込むことにより、上記芯材用載置台の基端部が上記載置台受け部あるいはフレームの一部に当接または近接しているものは、上記芯材用載置台が起立不能となって、このロール支持台の振動等に起因する上記芯材用載置台の揺動(上下動)や不用意な起立が防止される。したがって、このロール支持台は、作業者等が意図的に操作しない限り、上記芯材用載置台の起立が起こらず、この芯材用載置台の接触や干渉等によるロール体の傷付きを、確実に防止することができるという利点を有する。
【0021】
そして、本発明において、それらのなかでも、上記芯材用載置台の近傍に、上記不使用時における芯材用載置台の揺動を防止し、その位置を固定する載置台係止手段を備えているものは、ロール支持台の振動等に起因する上記芯材用載置台の揺動(上下動)や不用意な起立によるロール体の傷付き等を、さらに確実に防止することができ、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態におけるロール支持台の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【図2】(a)はこの実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台の構造を説明するための要部拡大図であり、(b)は(a)のP−P線矢視断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、この実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台を倒伏させる手順を説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は、この実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台を起立させる手順を説明する図である。
【図5】(a)〜(m)は、本発明の実施形態におけるロール支持台の載置台受け部に形成されたピン案内溝の形状例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台の異なる構成例を示す要部拡大図である。
【図7】本発明の実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台の別の構成例を示す要部拡大図である。
【図8】本発明の実施形態におけるロール支持台の芯材用載置台のさらに別の構成例を示す要部拡大図である。
【図9】従来のロール支持台の構成例を示す斜視図である。
【図10】別の従来のロール支持台の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態におけるロール支持台の構成を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)上面図であり、図2(a)は、このロール支持台の芯材用載置台の構造を説明するための要部拡大図、図2(b)は図2(a)のP−P線矢視断面図である。なお、図2(b)は、図1(b),(c)のP矢視要部拡大図でもある。また、従来例と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
【0025】
このロール支持台は、プラスチックフィルム、とりわけポリビニルアルコール系フィルムを芯材(芯管C)に巻回してなるロール体Rを、その芯管Cの左右両端部で支持・懸架するものであり、従来例と同様、長方形状の基台1(xy方向)と、この長方形状の基台1の四隅に立設された支柱2,2,2,2と、これらの支柱2どうしの間に掛け渡された支持フレーム3,3と、各支持フレーム3の中央部に設けられた略U字状の支持部3aとを主体として構成されている。
【0026】
基台1は、中空の角柱フレームを連結して構成されており、その外周は、図1(c)のように、長辺を構成する2本の長いフレーム1a,1a(x方向)と、短辺を構成する2本の短いフレーム1b,1b(y方向)とからなる略長方形状に形成されている。また、これらフレーム1a,1aの間には、上記長方形状の基台1を補強するとともに、後述する芯材用載置台4,4の取付け部となるフレーム1c(y方向)およびフレーム1d(x方向)が配設されている。
【0027】
上記長方形状の基台1の四隅には、その上下方向所定の位置に設けられた回動部2cを支点に上部2aを起立・倒伏させることのできる支柱2,2,2,2(z方向)が立設されており、各支柱2は、図1(a)のように、上記長方形状の長辺(フレーム1a)に沿って内向きに倒伏させて折り畳むことができるようになっている。なお、図中の符号6は、倒伏させた後の各支柱上部2aを支受する支受棒である。
【0028】
また、各支柱2の下部2b(上記回動部2cより下側)の端部には、図1(a),(b)のように、内部が下側に向かって開口する凹状(お椀状あるいはドーム状)になった脚部(支受部)2dが形成されており、同じ形状の他のロール支持台の各支柱上部2aの上端または各回動部2cの頂部を嵌入して、これら支持台どうしを上に重ねて積み上げることができるようになっている。
【0029】
さらに、上記長方形の短辺(フレーム1b)を挟んでy方向に対峙(対向)する支柱2,2の間は、図1(b)のように、回動部2cよりも上方の位置で、上記短辺方向の支持フレーム3,3(y方向)により連結されており、この支持フレーム3の上記短辺方向略中央には、上記ロール体Rの芯管Cの左右両端に係合する支持部3aが形成されている。そして、このロール支持台は、上記U字状の支持部3a,3aでロール体Rの芯管Cの左右両端部のみを支承することにより、上記ロール体Rの本体部分(フィルム部分)を浮かせて懸架することができるようになっている。
【0030】
本実施形態におけるロール支持台の特徴は、その基台1の各フレーム1a,1b,1c,1dの間に、ロール体Rの積載時には基台1の上面から突出しないように収容でき、かつ、ロール体Rの非積載時にのみ、上記基台1の上面から上方に突出させて上記芯管Cを載置できる可到式の芯材用載置台4,4が配設されている点である。
【0031】
この芯材用載置台4は、図2(a)のように、上記長方形状の基台1の長辺方向(x方向)に平行に配置された2つの柱状部材4a,4aと、これら2つの柱状部材4aの一方の先端部間に掛け渡された載置部4bと、上記各柱状部材4aの他方の基端部近傍から上記基台1の短辺方向(y方向)に突出するピン(六角頭付ボルト)4cと、上記柱状部材4aの起立状態を安定させるための凸部4dとから構成されている。
【0032】
なお、上記載置部4bの両端部には、耳状のフックあるいはリング等が取り付けられており、空芯管Cや、先に述べた未使用分のフィルムが残った状態の芯管C等を、ゴムバンドやロープ等によって拘束できるようになっている。また、図示していないが、これら芯材用載置台4の近傍には、上記芯管Cを積載せずに倒伏させた場合に、上記芯管Cの拘束に用いるゴムバンドやロープ等を利用して、この芯材用載置台4を基台1のフレームに結束・固定するための載置台係止手段(別途設けたフックやリング等)が配設されている。
【0033】
また、上記基台1を構成するフレーム1d,1d(x方向)には、上面視略L字状の載置台受け部5,5が取り付けられており、この載置台受け部5の側面に形成された案内溝5a,5a(長孔:図2(b)参照)に、上記柱状部材4aの基端部側の各ピン4c,4cをそれぞれ挿通することにより、上記芯材用載置台4は、これらピン4cを支点とする基台上下方向(z方向)の起立・倒伏自在に配設されている。
【0034】
なお、上記載置台受け部5の案内溝5aは、この実施形態では、図2(b)のように、上記基台1の略水平方向(x方向)に伸びる横溝部51と、この横溝部51における上記柱状部材4aの先端部側端部(図示左方)から基台1の上下方向(z方向)に延設された長縦溝部52と、上記横溝部51における上記柱状部材4aの基端部側端部(図示右方)から基台1の下方向に向かって延設された短縦溝部53とから構成されている。
【0035】
つぎに、この芯材用載置台4を基台1内に収容(倒伏)する手順、および、上方に立ち上げる(起立させる)手順について説明する。
【0036】
上記芯材用載置台4は、その柱状部材4aに設けられた凸部4dを、上記載置台受け部5に形成された切り欠き5bに嵌入させることにより、安定した起立状態を保てるように構成されている。また、起立状態(図2(b)の二点鎖線を参照)においては、上記柱状部材4aの基端部近傍(図示右方)から基台1の短辺方向(y方向)に突出するピン4c(六角頭付ボルト)は、上記載置台受け部5の案内溝5aにおける長縦溝部52の下端近傍に位置している。
【0037】
この起立状態の芯材用載置台4を倒伏させて収納する場合は、まず、図3(a)のように、芯材用載置台4を作業員の手等で持ち上げ、上記柱状部材4aの凸部4dと上記載置台受け部5の切り欠き5bの係合を解除する。この時、上記柱状部材4aのピン4cが、基台1の上方に行くにしたがって柱状部材4aの先端側(図示左方)に傾く案内溝5aの長縦溝部52に挿通されていることから、芯材用載置台4は、上記案内溝5aの長縦溝部52に沿って斜め左上方に向かってスライドし、これら芯材用載置台4の柱状部材4aと載置台受け部5との間に、柱状部材4aを倒伏方向に回動させることを可能にする隙間が形成される。
【0038】
つぎに、上記凸部4dと切り欠き5bとの係合が解除され、回動可能となった芯材用載置台4を、上記倒伏方向へ回転させる(図3(b))。この時、上記柱状部材4aのピン4cは、図3(c)のように、芯材用載置台4の倒伏動作に伴って、上記案内溝5aの横溝部51に沿って右方向にスライドし、この柱状部材4aの基端部(図示右側)が徐々に上記載置台受け部5に接近して、これら芯材用載置台4の柱状部材4aと載置台受け部5との間の上記隙間が次第に小さくなる。また、回動の最後には、上記柱状部材4aのピン4cが、上記横溝部51の右端に行き着き、柱状部材4aの基端部が置台受け部5に近接あるいは当接して、上記芯材用載置台4が回動不能となるように構成されている。
【0039】
そして、芯材用載置台4の倒伏(回動)完了後には、図3(d)のように、上記柱状部材4aのピン4cが、その自重により、上記横溝部51の端部(図示右方)から下方向に向かって形成された短縦溝部53に嵌まり込み、上記芯材用載置台4が回動不能となった状態でロックされる。
【0040】
一方、この芯材用載置台4を、再び上方に立ち上げる(起立させる)場合は、上記芯材用載置台4を倒伏させる手順を、逆順に行なうことで起立させることができる。その手順は、まず、図4(a)のように、上記柱状部材4a基端部側端部(図示右方)を作業員の手等で持ち上げ、上記柱状部材4aのピン4cと上記案内溝5aの短縦溝部53の係合(ロック)を解除する。
【0041】
そして、上記柱状部材4aのピン4cを、案内溝5aの横溝部51に沿ってその左端までスライドさせ(図4(b))、その柱状部材4aと載置台受け部5との間に、上記芯材用載置台4を回動可能とする隙間(スペース)を設けた状態で、上記柱状部材4aの先端部を作業員の手等で引き上げながら、芯材用載置台4を起立方向へ回転させる(図4(c)参照)。
【0042】
その後、この芯材用載置台4を下に押し下げつつ、上記柱状部材4aのピン4cを、上記案内溝5aの長縦溝部52に沿って斜め右下方にスライドさせることにより、柱状部材4aの凸部4dが、上記載置台受け部5の切り欠き5bに嵌まり込み、この芯材用載置台4の起立状態が安定する(図4(d)参照)。
【0043】
上記構成により本実施形態におけるロール支持台は、上記基台1を構成するフレーム1d,1dの中に、ロール体Rの芯管Cを載置するための芯材用載置台4,4が起立・倒伏自在に配設されていることから、この芯材用載置台4を倒伏させて基台1の中に収納した場合は、上記基台1の上面が、突出する部材のないフラットな面となり、ロール体Rを低い位置で支持・懸架することができる。したがって、本発明のロール支持台は、ロール体Rを積載した状態の支持台の重心を低くすることができ、その結果、このロール支持台の揺れを低減することができる。
【0044】
また、各芯材用載置台4が、上記基台1の中に収容された状態で、起立(回動)不能にロックされていることから、上記ロール体Rを積載している時に外部から振動等を受けた場合でも、芯材用載置台4の先端(載置部4b)が上下に揺動することがない。したがって、このロール支持台は、作業者等が意図的に操作しない限り、上記芯材用載置台4の起立が起こらず、この芯材用載置台4の接触や干渉等によるロール体Rの傷付きを、確実に防止することができる。
【0045】
さらに、上記芯材用載置台4を起立させ、載置部4bを基台1の上面より突出させた場合は、比較的多くの未使用フィルムが残ったままの状態のロール体Rの芯管Cでも、空芯管Cでも、これらを基台1の上面に接触させることなく、余裕を持って安定して支持することが可能になる。
【0046】
しかも、本実施形態におけるロール支持台は、作業者等の操作であれば、上記芯材用載置台4の載置部4bが基台1の上面より下に位置する倒伏状態と、この載置部4bが基台1の上面より上に位置する起立状態とを、簡単な操作で素早く切り替えることができるという利点を有する。
【0047】
なお、本実施形態においては、起立・倒伏自在な芯材用載置台4の構成の一例を示したが、この芯材用載置台4の構造としては、他にも種々の構成が考えられる。
【0048】
例えば、上記実施形態では、芯材用載置台4側にピン4cを設け、これらの各ピン4cを、基台1側の載置台受け部5に設けられた案内溝5aに挿通させて回動させる例を示したが、これら芯材用載置台4の回動を支持するピンは、芯材用載置台4側あるいは載置台受け部5側のどちらに設けてもよく、これを支持する案内溝も、上記ピンに対向する部材側に形成すればよい。
【0049】
また、上記ピン4cの動きをガイドする案内溝5aの形状も、芯材用載置台4の倒伏時に、上記ピン4cが設けられた柱状部材4aの基端部(図2,3,4では図示右側)を、基台1側の受け部材(本例では載置台受け部5)に向かって近接または当接させる形状(すなわち、上記芯材用載置台4の基端部が回動・揺動できるスペースを消す形状)であればよく、種々の変形例が考えられる。
【0050】
図5は、上記案内溝5aの形状のバリエーションの例である。
例えば、本実施形態で採用した「逆7」形状(a)の他、倒伏前に柱状部材4aを持ち上げる動作に関与する上下方向(z方向)の長縦溝部52は、斜め状としても垂直状としてもよい(図5(a)〜(d)参照)。
【0051】
また、倒伏時に柱状部材4aをロックする機能を担う短縦溝部53は、下方向(z方向)垂直に形成する以外にも、左右斜め傾斜状(図5(e)〜(h))としてもよい。さらに、水平方向(x方向)に伸びる横溝部51が、載置台受け部5(図示右方)に接近するにしたがって下方に下がる傾斜形状に形成されている場合は、この横溝部51自身が柱状部材4aをロックする機能を備えるため、上記短縦溝部53を設けなくてもよい(図5(j)〜(m)参照)。
【0052】
そして、倒伏時に柱状部材4aを載置台受け部5(図示右方)側にスライドさせ、柱状部材4aの基端部(図示右側)を載置台受け部5に近接または当接させる機能を有する横溝部51は、基本的には、水平方向(x方向)あるいは水平方向右斜め下方向に傾斜した形状とするのが好ましい(図5(i)〜(m)参照)。ただし、上記横溝部51は、柱状部材4a側のピン4cの取り付け位置により適宜変更される。
【0053】
例えば、上記実施形態と同様、上記ピン4cが柱状部材4aの幅方向中央寄りに配設されている場合、図6のように、案内溝5aに図5(k)に近似の形状を採用してもよい。
【0054】
また、上記ピン4cが柱状部材4aの幅方向左寄りに配設されている場合は、図7のように、案内溝5aに図5(i)または図5(j)等に近似の形状を採用することができる。
【0055】
さらに、上記ピン4cが柱状部材4aの幅方向右寄りに配設されている場合は、図8のように、案内溝5aに図5(l)または図5(m)等に近似の形状を採用することも可能である。
【0056】
いずれの場合においても、ピン4cの柱状部材4aの基端部側縁部までの距離、すなわち、上記ピン4cが柱状部材4aの基端部側縁部からどれだけの距離に形成されているかと、上記ピン4cが柱状部材4aの幅方向どちら寄りに配設されているかによって、案内溝5aの形状が決定される。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態において例示したポリビニルアルコール系フィルムを巻回したロール体を懸架する支持台以外にも、シート状長尺物を芯材に巻回したロール体を、その芯材の左右両端で支持・懸架した状態で保管または輸送する用途に用いる支持台やパレット等に、広く適用できることはいうまでもない。
【0058】
また、倒伏状態で柱状部材4aをロックするという機能を有する上記案内溝5aの形状およびその機構は、折り畳み式のテーブルや椅子,開閉動作する鞄や扉等、一方の状態をその状態で保持する必要のある装置に応用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、偏光フィルム等のシート状長尺物を芯材に巻回してなるロール体を、その芯材の左右両端で支持・懸架した状態で保管または輸送するための支持台またはパレット等に、広く適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 基台
2 支柱
3 支持フレーム
4 芯材用載置台
5 載置台受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを連結して形成された略長方形状の基台と、この基台の四隅に立設された支柱と、上記長方形状の基台の短辺を挟んで対峙する支柱どうしの間に配設された支持フレームと、これら各支持フレームの中央部に設けられた支持部とを備え、ロール体から左右に突出する芯材の両端部を、上記各支持部に係合させることにより、上記ロール体を基台上面から浮かせた状態で懸架するロール支持台であって、上記基台の中に、上記芯材を載置するための芯材用載置台が起立・倒伏自在に配設されており、上記芯材用載置台が、上記長方形状の基台の長辺方向に平行に配置された2つの柱状部材と、これら2つの柱状部材の先端部間に掛け渡された載置部とからなり、上記各柱状部材の基端部近傍、または、上記基台を構成するフレームの間に設けられた載置台受け部のいずれか一方には、上記基台の短辺方向に突出するピンが突設されているとともに、上記ピンに対向する側の上記載置台受け部または上記柱状部材の基端部には、上記ピンを挿通することのできる案内溝が設けられ、上記芯材用載置台が、これら各ピンを各案内溝にそれぞれ嵌入することにより、上記各ピンを支点とする基台上下方向の起立・倒伏自在に取り付けられているロール支持台。
【請求項2】
上記案内溝が、上記基台の略水平方向に伸びる横溝部と、この横溝部における上記柱状部材の先端部側端部から上記基台の略垂直方向に延設された長縦溝部と、上記横溝部における上記柱状部材の基端部側端部から上記基台の下方向に延設された短縦溝部とから形成されているとともに、上記芯材用載置台の不使用時には、この芯材用載置台の各ピンが上記各案内溝の短縦溝部に嵌まり込むことにより、上記芯材用載置台の基端部が上記載置台受け部あるいはフレームの一部に当接または近接している請求項1記載のロール支持台。
【請求項3】
上記芯材用載置台の近傍に、上記不使用時における芯材用載置台の揺動を防止し、その位置を固定する載置台係止手段を備えている請求項1または2記載のロール支持台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−265024(P2010−265024A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120068(P2009−120068)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】