説明

ロール状シート加工製品の品質監視システム

【課題】伸縮のあるロール状シート加工製品においてスリッタ工程での品質不良部位置を特定し、その作業実績を記録する。
【解決手段】ロール状シート加工製品のスリッタによる切断工程前の製造工程において、前記製造工程で発生した品質不良部の位置をラベルで貼付する品質監視システムであって、
ロール状シート加工製品の巻き出し長データを出力する巻き出し長取得手段と、
不良状態データを含む品質検査データを出力する検査手段と、
運転状態データ収集手段と、
修正不良位置データを算出する位置情報修正手段と、
前記巻き出し長データ、前記品質検査データ、前記運転状態データ、及び前記修正不良位置データを記録する記録手段と、
除去部分データ算出手段と、
前記不良状態データ及び前記除去部分データを前記ラベルに記載するデータ書き込み手段と、
除去部分に前記ラベルを貼付する手段と、
を備えることを特徴とするロール状シート加工製品の品質監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程を経るにつれて巻き取り長、横幅が伸縮するロール状シート加工製品において、最終製造工程における品質不良部の除去部分の位置情報及び不良情報をラベルに記載することで伝達し、明示するための品質監視システム、かつ不良部分を除去し適切な製品規定長に切断するスリッタ、かつスリッタ工程の作業実績記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状のプラスチックフィルム等のロール状原反を生産材としてシリコーンフィルム等のロール状シート加工製品を加工生産する場合において、各ロール状シート加工製品に対して蒸着膜等の加工形成を行う生産工程においては、各工程(例:蒸着工程→コータ工程→スリッタ工程等)にてラインで検査機等を用いて加工品質情報を取得し、その工程での生産品の品質の監視が行われている。
【0003】
一般的に、ロール状原反を生産材として巻き出しながら、その巻き出される連続シートに蒸着工程にて蒸着して、その連続シートをロール状シートとして一旦巻き取り、続いてコーティング機により、蒸着したロール状シートを巻き出しながらコーティング工程にて得られる連続シートをロール状シートとして、再び、一旦巻き取り、さらに、スリッタ機により、蒸着、コーティング加工したロール状シートを巻き出しながらスリッタ工程にて得られる連続シートをロール状シートとして巻き取る等、各工程の生産機を用いて巻き出し巻き取りを繰り返しながら、複数ラインにより蒸着工程、コーティング工程、及びスリッタ工程等の各工程を経てロール状シート加工製品を生産する場合がある。
【0004】
このように各工程の生産機を用いて巻き出し巻き取りを繰り返しながら、複数ラインによりロール状シート加工製品を生産する場合には、次工程への加工の良、不良等の加工情報は、紙ベースでの申し送りが中心であり、その品質情報を次工程で有効活用して、例えば、前工程(蒸着工程)の品質不良部に対しては、次工程(コーティング工程)では塗工等の加工を行わない等のアクションを起こし、使用する塗工液を削減して使用材料等のコスト削減に結び付ける等の対策を施すことは困難であった。
【0005】
そこで、インクジェット等の各種のマーキング手段によるマーキングを目印として、次工程で、そのマーキングを読み取ることにより品質不良部に対して不良部除去の有無を判定し、不良部の除去を行う等の品質情報取得の手法が提案されているが、フィルムの蛇行や伸縮によるマーキングの正確性に不安があり、また、工程ラインが高速な場合や、その工程がマーキングできる作業環境にない場合は、実用化できなかった(例えば、特許文献1を参照)。そのため、ロール状原反をスリット加工するスリッタ等の最終工程で、それまでの工程で発生した全ての品質不良部を自動的に除去することにより、品質不良製品の製造や出荷を自動的に防止するという対策を採ることが難しく、手作業に頼らざるを得ない状況にあった。
【0006】
このように、各工程で発生した品質不良情報がシステム的に分断されているために、ロール状シート加工製品の品質不良位置の正確な特定や、製品巻長の正確な特定等が難しく、また、工程間及び最終工程での品質監視が難しいという問題があった。
【0007】
このようなロール状シート加工製品に対しては、品質管理のために特許文献2のような方法を用いて不良部分の位置を検出し、スリッタ機等で削除する手法が確立されている。
【0008】
しかしながら、このロール状シート加工製品の生産中に、プラスチックフィルムに熱を
加える等の工程のためロール長が収縮したり、巻き出しから巻取りの間に働く張力等の理由によりロール長が伸長したりする場合がある。
【0009】
特許文献2の方法ではロール長の伸縮を考慮していないため、ある工程で得られた製品不良位置は、必ずしも次の工程では同じ位置にならない、という問題があった。したがって、適切な位置でスリッタの巻き取りを停止させてカッティングを行うことができない。
【0010】
また、特許文献2に出てくる削除領域を示すラベルを識別するための識別番号などの識別情報はシステム側から出力されたものではないため、そのラベルが貼られた情報とその識別情報を関連付けするためには、カメラ撮影などの手段によりシステム側に取り込む必要がある。
【0011】
さらに、特許文献2の各検査機により不良部分を含む箇所を削除すると判断された領域の再検査を行い、不良部分ではないと判断されることもある。このようなときはスリッタ工程でカットを行うとき、製品の規定長内に収まるように適切な停止位置を再度計算し、停止位置を決定する必要がある。
【0012】
他にも前記ラベルの粘着部分が再検査を行う前に剥がれ落ち、ラベルで挟み込まれた区間が不明確になり確認することが出来ないという問題がある。
【0013】
以下に本発明に関連する公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開平10−45301号公報
【特許文献2】特開2006−306509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上の問題点を解決するもので、各工程の製造装置を用いて巻き出し巻き取りを繰り返しながら、複数ラインによる各工程を経るにつれて伸縮するロール状シート加工製品を生産する場合において、ライン工程にて取得した各工程の品質情報から、その品質不良部の位置を特定し、その品質不良部の位置とロール状シートが伸縮した時の品質不良部の位置とを一致させた後、次工程以降にその品質不良部の位置を正確に伝達することを目的とする。
【0015】
また、スリッタ工程において、品質不良部の位置をラベルで挟み込み、目視でも確認しやすいような品質不良部の位置の情報をラベルに記載することにより、品質不良部の位置を正確に伝達することを目的とする。
【0016】
また、スリッタ機を最終工程等において品質不良部を含まないロール状シート加工製品を生産するために現物の品質不良部の位置に対応させ、製品規定長にするために、適切なスリット位置で停止させスリットを行うことを提供することを目的とするものである。
【0017】
また、スリッタ工程において、品質不良部の位置を示すために添付されたラベルが確認されたかどうか判断するための判断コードを記載し、発行されたラベルがラベルを確認する装置や検査員などによって全て確認されたかどうかを確認することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に係る発明は、ロール状シート加工製品のスリッタによる切断工程前
の製造工程において、前記製造工程で発生した品質不良部の位置をラベルで貼付する品質監視システムであって、
前記製造工程は、巻き取り長及び横幅が伸縮する伸縮工程を少なくとも1回含み、
前記品質監視システムは、
前記製造工程において、前記ロール状シート加工製品の巻き出し長を計測し、巻き出し長データとして出力する巻き出し長取得手段と、
前記製造工程において発生した品質不良部を検出し、少なくとも前記品質不良部の位置データ及び不良状態データを含む品質検査データを出力する検査手段と、
前記製造工程の製造装置及び付帯装置から運転状態データを収集する運転状態データ収集手段と、
前記伸縮工程において、前記ロール状シート加工製品の伸縮により、前記品質不良部の位置情報を修正計算して修正不良位置データを算出する位置情報修正手段と、
少なくとも前記巻き出し長データ、前記品質検査データ、前記運転状態データ、及び前記修正不良位置データを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録されたデータを用いて、切断工程で除去する前記品質不良部の位置を算出して除去部分データとする除去部分データ算出手段と、
前記不良状態データ及び前記除去部分データを前記ラベルに記載するデータ書き込み手段と、
前記除去部分データ算出手段により算出した除去部分に前記ラベルを貼付する手段と、
を備えることを特徴とするロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【0019】
本発明の請求項2に係る発明は、前記除去部分データ算出手段は、前記除去部分の位置及び製品規定長から切断箇所を算出することを特徴とする請求項1記載のロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【0020】
本発明の請求項3に係る発明は、前記ラベルに、検査装置及び検査員によって前記除去部分を除去するかの判断をする判断コードを具備していることを特徴とする請求項1又は2記載のロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【0021】
本発明の請求項4に係る発明は、前記ラベルに、前記判断コードが認識されたかの確認をする確認コードを具備していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【0022】
本発明の請求項5に係る発明は、前記ラベルに、前記不良状態データ、前記除去部分データ、前記判断コード、及び確認コードの情報を一括して内容を確認できるラベル識別コードを具備しており、
前記品質監視システムは、
前記ラベル識別コードの情報を読み込む手段と、
前記ラベル識別コードの情報を記録する手段と、
前記ラベル識別コードを読み込んで前記除去部分が除去されていない場合には、前記除去部分の計算及び切断を再度行う再計算切断手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明によれば、記録手段に記録されたデータから、品質不良部を算出するとともにデータベース化し、切断工程にて、製造工程で発生した品質不良部を正確且つ迅速に把握し、また、ロール状シート加工製品となるシートが伸縮しても品質不良部の位置が求められるシステムを提供することができる。
【0024】
さらに、ラベルに不良状態データ及び除去部分データを記載しているため、より正確な検査による良又は不良の判定確認が容易になり、また不良の程度を的確に把握することができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、ロール状シート加工製品の製品規定長及び除去部分の位置から、切断箇所を算出することで切断工程において、ロール状シートを無駄なく用いることができる効果が生じる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、判断コードを有していることから、実際に除去部分を除去したかを確認することができる効果が生じる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、除去部分の判断がされたかを確認することができる効果が生じる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、
前記除去部分が除去されているかを確認することができるので、品質不良部がないロール状シート加工製品の品質を保つことができる効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明のロール状シート加工製品の品質監視システムを、その実施の形態にそって以下に詳細に説明する。本発明は、ロール状シート原反を巻き出しながらそのシート上に加工を施して得られるシートをロール状シートとして巻き取る工程を1単位工程として、複数の単位工程を経て、ロール状シート加工製品を生産するときに品質不良の位置を検出するシステムであり、かつ品質不良部を除去し、適切な製品長のロール状シート加工製品を加工するものである。
【0030】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明を適用する、ロール状シート原反からなるシートを生産材とする製造装置による製造工程の具体例として図1(a)〜(c)の工程側面図を参照して説明する。
【0031】
本発明における製造工程としては、例えば、図1(a)に示すように第1単位工程Iとして、例えばプラスチック等のロール状シート原反P0として、矢印方向に巻き出しながら、そのロール状シート原反P0上に印刷を行い、ロール状シートPIとして巻き取る印刷工程を備える。
【0032】
印刷は、ロール状シート原反P0の片面または両面に行ってもよい。
【0033】
続いて次工程として、図1(b)に示すように、第2単位工程IIでは、例えばコータ機等により、前記ロール状シートPIとして、矢印方向に巻き出しながら、そのロール状シートPI上に塗布手段を用いて、シリコーン樹脂液等を塗布して保護層や接着剤層をコーティング形成し、ロール状シートPIIとして巻き取るコータ工程を備える。
【0034】
この第2単位工程IIであるコータ工程にて塗布が完了し、例えば、ドライヤDIIのように乾燥させるために熱を加える工程があった場合、ロール状シートPIIの巻き取り長は、第2単位工程IIであるコータ工程前のロール状シートPIの巻き取り長より収縮する。
【0035】
なお、図1(a)、(b)に示す本発明における各単位工程は、特に、上記加工の種類に限定されるものではなく、また単位工程数も限定されるものでもない。また、本発明の一例として、第2単位工程IIのコータ工程が、ロール状シート加工製品を製造するスリ
ッタ前の最終単位工程として説明されているが、必ずしもこの工程が最終単位工程である必要はない。
【0036】
また、図1(a)、(b)に示す本発明における収縮は、特に、上記のように素材の性質や加熱等によるところがある。
【0037】
図1(a)、(b)に示す本発明における収縮率は、ロール状シートPIの巻取り長とロール状シートPIIの巻取り長の全長から算出する。また、エンコーダの不具合等でロール状シートPI、ロール状シートPIIの巻取り長が取得できなかった等の理由で収縮率が計算できないときは、JIS等の規格で定められた生産材の代表収縮率や、過去の製造実績から製造条件が最も類似した条件における収縮率等を代用する。幅方向の収縮率も同様に行う。
【0038】
なお、図1(a)、(b)に示す本発明における伸長の理由は、特に、上記のように巻き出しから巻取りの間の張力によるところがある。
【0039】
図1(a)、(b)に示す本発明における伸長率の計算は、ロール状シートPIの巻取り長とPIIの巻取り長の全長から算出する。また、エンコーダの不具合等ロール状シートPI、ロール状シートPIIの巻取り長が取得できなかった等の理由で伸長率が計算できないときは、JIS等の規格で定められた生産材の代表伸長率や、過去の製造実績から製造条件が最も類似した条件における伸長率等を代用する。幅方向の伸長率も同様に行う。
【0040】
本発明は、ロール状シート原反をシートとして巻き出しながら加工を施してロール状シートとして巻き取る間に、例えば、印刷機又はコータ機によるそれぞれの工程を1単位工程として、その複数単位工程を経るにつれてロール状シートの巻き取り長が熱等による化学変化で収縮される素材に対し、最終的にロール状シート加工製品の製造工程における品質不良部の算出方法および、明示の方法及び、ロール状シート加工製品の品質監視システムである。
【0041】
製造工程で図1(a)に示す第1単位工程Iでは、ロール状シート原反P0からなるシートの巻き出し長をロータリエンコーダ等の計測器にて計測しながら、印刷機にてシート上に対して加工を施し、シートの品質を、品質検査機RIで検査した後、ロール状シートPIとして巻き取る。
【0042】
続いて、図1(b)示す第2単位工程IIでは、ロール状シートPIを巻き出しながら、そのシート巻き出し長をロータリエンコーダ等の計測器にて計測しながら、コータ機にてシートに対して加工を施し、そのシートの品質を、品質検査機RIIで検査した後、ロール状シートPIIとして巻き取る。
【0043】
ロータリエンコーダ等の前記巻き出し長計測器から得られた巻き出し長データと、品質検査機RI、RIIにより計測された品質不良部の位置情報を含む品質検査データは、検査機制御部のメモリ若しくは外部記憶装置上に順次記録されていき、第2単位工程IIにてロール状シートPIが加工後にロール状シートPIIとして巻き取られた時点で、品質検査データの取得および記録が終了となる。このようにして取得した品質検査データとシート巻き出し長に基づいて、巻き取り後のロール状シートPI、PIIの品質不良発生位置を、品質不良部として特定するものである。
【0044】
なお、本発明においては、第1単位工程Iにて巻き取られたロール状シートPIと第2単位工程IIにて巻き取られたロール状シートPIIとの間、及び第2単位工程IIにて
巻き取られたロール状シートPIIと第3単位工程IIIにて巻き取られたロール状シートPIIIとの間においては、そのロール状シート両端の、巻き始め端部と巻き終わり端部が逆になるため、取得した品質検査データ上の巻きのスタート位置、エンド位置、品質不良部を、前記検査機制御部のデータ演算制御処理により全て逆転させて伝達するものである。
【0045】
また、ある単位工程が終了したロール状シートに対して、加工処理は行わずに単に巻き出し巻き取りだけを行う「巻き返し」と呼ばれる作業が行われることがある。この巻き返し作業の前後でも、ロール状シート両端の、巻き始め端部と巻き終わり端部が逆になる。従って巻き返し作業が行われた場合は、巻き返し作業の回数分だけ、取得した品質検査データ上の巻きのスタート位置、エンド位置、品質不良位置を、前記検査機制御部のデータ演算制御処理により全て逆転させて、次の単位工程へ伝達するものである。
【0046】
その後、前記品質検査機RI、RIIで検査した単位工程の次の単位工程の最終単位工程、例えば、図1(c)に示す第3単位工程IIIにて、ロール状シートPIIを矢印方向に巻き出しながら、その巻き出し長をロータリエンコーダ等の計測機にて計測しながら、特定した前記品質不良部を品質検査機RI、RIIから収集した品質検査データと、その他製造装置や付帯装置のセンサ等から収集した運転状態データと、事前にユーザが設定したパラメータや過去の製造条件等から得られる収縮率データより検索し、その品質不良部を含まないように規定の製品長になるようにカッティングするようにして、シートPIIを一旦停止させる。
【0047】
また、本発明の品質監視システムは、ロール状シート加工製品の品質監視システムにおいて、図1(c)に示す前記第3単位工程III(又は最終単位工程)の手前に示す第2単位工程IIにおける加工機IIの検査機RIIの後に、ラベラーLを配置して、前記単位工程IIとそれ以前の単位工程Iにおけるそれぞれの品質不良部の位置情報に、修正不良位置データに基づく貼着指示信号に基づいて、図4のような品質不良部が容易に判断できるラベルを貼付する。
【0048】
図4に示したラベルには、ラベル識別コードL−1と、品質不良部の位置情報及び不良状態情報(L−2)と、品質不良部の判断コードL−3と、確認用コードL−4が記載されている。
【0049】
ラベル識別コードL−1によって、ラベルに記載されている情報等を確認することができる。
【0050】
また、図4のラベル識別コードL−1の記載方法は、あくまで一例であり、作業方法やラベルの見やすさなどにあわせて変更してよい。
【0051】
品質不良部の位置情報及び不良状態情報(L−2)は、そのラベルが貼付されている区間にスリッタの行番号、品質不良部の位置、不良の種類、検査機判定結果など前記スリッタ工程において作業をする上で必要な情報を表記する。
【0052】
また、品質不良部の位置情報及び不良状態情報(L−2)の記載方法は、あくまで一例であり、伸縮を考慮した品質不良部が記載されていれば、ロール状シート加工製品の種類や品質不良の特徴や作業者に対する分かりやすさなどにあわせて変更してよい。
【0053】
ラベラーLにより貼付されるラベルは、品質不良部の発生したシート幅方向一端部面に、該ラベルをシート外側に向けて張り出して貼付されるようにしてもよい。
【0054】
品質不良部の判断コードL−3は、ロール状シート加工製品の切断工程の前に品質不良部を目視検査などによる再検査の結果により、その品質不良位置を切断するかを区別するコードを備え、切断するかの結果を取得するコードである。
【0055】
図1(c)に示す第3単位工程において、品質不良部が製品規定長に収まるかを判断するためのラベルで挟み込まれた区間を品質検査位置RIIIにて目視で再検査した際、品質不良部か判断した結果の記録と、その品質不良部を品質良品部であった場合、切断位置を変更する必要がある。
【0056】
具体的には、品質不良部の判断コードL−3は、第3単位工程において貼付したラベルに、第2単位工程以前までに品質不良部と判断された部分に関して、切断するかの判断結果を反映する2種類の2次元コードを設ける。これをバーコードリーダなどの作業実績取得手段として情報を取得し、その結果を記録する機構を設ける。
【0057】
図4では2次元コードを記載しているが、あくまで一例であり、データベースなどの記録手段を用いて作業実績を記録することが出来るものであれば良い。
【0058】
図4では、品質不良部の判断コードL−3として、L−3−1が「カットする」、L−3−2が「カットしない」の2種類のコードを用意しているが、あくまで一例であり、基本的にラベルにより挟み込まれた区間が、「カットする」、「カットしない」の2種類の意図が含まれるコードが少なくとも1つずつ記載されていれば良い。
【0059】
確認用コードL−4は、ロール状シート加工製品の品質監視システムのために貼付するラベルが、カット位置前に確認されたか判断するためのコードである。
【0060】
第3単位工程において、品質検査位置RIIIにて確認されるまでに、ラベルの貼付部分が剥がれ落ちてラベルの確認ができないため、確認されたという記録をとる必要がある。
【0061】
このとき、帳票などにラベルを貼付して保存するという方法などが考えられるが、ラベルの貼付部分の粘着力が弱くなり、帳票から剥がれ落ち紛失する可能性がある。
【0062】
確認用コードL−4は、ラベル確認作業実績の結果を作業実績情報としてデータベースなどの記録手段を用いて記録するための2次元コードをラベルに設けることにより、バーコードリーダなどを用いて、作業実績情報を記録する機構を設ける。
【0063】
図4では2次元コードを記載しているが、あくまで一例であり、データベースなどの記録手段を用いて確認したという実績を記録することが出来るものであれば良い。
【0064】
もし、ラベラーLで発行されたラベルが品質検査位置RIIIで確認されなければ、スリッタを停止し、警告を出すことで検査員に注意を促すことができ、品質不良部の見落としがなくなる。
【0065】
ラベルに記載する情報等に関しては、実際に使用する機器や運用方法により、品質不良部区間の進行方向の前のラベルに記載、進行方向の後ろのラベルに記載、または前後両方のラベルに記載しても良い。
【0066】
品質不良部が多数検出され、品質不良部を記載する領域が足りない場合は、ラベルを複数枚使用する、または品質不良の種類や大きさなどにより順位付けを行い、優先順位の高いものから記載するなどの対応を行う。
【0067】
本発明のロール状のシート加工製品の製品化については、スリッタiii−1で巻き出し方向に沿い製品の規定幅にカッティングを行い、算出した品質不良部の発生位置を伸縮したときの長さを修正計算して、修正不良位置データを算出することにより、品質不良部を含む製品長以下の部分で一旦停止させ、その全長及び全幅方向に、カッターiii−2―1又はカッターiii−2―2を用いてカッティングして分離し、品質良品部のみのロール状シート加工製品PIII−1又はPIII−2となる。
【0068】
次に、各単位工程にて発生した品質不良部を、記録し、算出する点について、図2に基づいて説明する。なお、図2(a)、(b)は、それぞれ図1(a)、(b)の各工程で発生した不良部を記録し特定した様子を示しており、さらに図1(c)において製品とする部分と破棄する部分とを模式的に示した図である。
【0069】
図2に示すように、まず第1単位工程(図1(a)参照)では、シート(ロール状のシート原反P0又はロール状のシートPI)の巻き出し開始点Ps(シート巻き出し前端部)から、巻き取り終了点Pf(シート巻き取り後端部)までの長さNのシートにおいて、巻き出し開始点Psからの長さaの位置Aが、検査機RIによって品質不良部Dと判断されて、PIがロール状のシート加工製品として巻き取られたことを示す。
【0070】
この後の第2単位工程では品質不良部が発生せず、ロール状シート加工製品として巻き取られた連続シートPIIには収縮のみが起きたものとする。このとき、検査機R1によって品質不良部として検出された品質不良部Dは、シートPIIが収縮しているために、巻き出し開始点Psからの長さaの位置Aにはない。
【0071】
そこで、このロール状シート加工製品において予想される最大収縮率や、PIおよびPIIの巻き出し長データから計算した収縮率から、品質不良部Dの現在の位置を算出すると、PIIの巻き出し開始点Psからの長さa’の位置A’にあることになる。したがって、品質不良部は位置A−A’間になり、そのうち、接近又はオーバーラップする品質不良部がある場合、それらは、1つの品質不良部として統合する。
【0072】
統合した品質不良部を統合品質不良部と呼ぶ。
【0073】
また、シートの幅方向に収縮または伸長がある場合には、各単位工程の開始前と終了後に、シートの幅を計っておくなどして、幅方向の収縮率または伸長率を求めればよい。
【0074】
図2(b)においては、スリッタによる切断は矢印Cと矢印C’を結ぶ線上で行われるものとする。品質不良部Dが、切断後にどちら側に含まれるかは、もともとの品質不良部の位置情報および幅方向の収縮率(または伸長率)から、算出することが可能である。
【0075】
記録手段に記録されたデータから、後述するロール状シート加工製品の品質監視システムにて検討して、製品規定長bの長さを、なるべくたくさん切り出すことのできるカッティングの位置を決めるようにすればよい。図2(b)の例では、ロール状のシートPIIと製品規定長bの長さの関係上、このようなカッティングの位置とし、斜線部分を廃棄するよりほかないが、ロール状のシートPIIの長さに対して製品規定長bの長さがもっと短い場合には、スリッタによるカッティング位置をC−C’線の左右で変えて、より多くの製品を切り出すような設定とすることも可能である。
【0076】
また、第3単位工程にてラベルを貼付した後に、目視検査を実施すれば、検査機による判定ミスの有無をその場で判定でき、品質不良部とされた部分を良品部にすることも、簡単なデータ変更で可能になり、製品の歩留りの向上に寄与する。

次に、本発明のロール状シート加工製品の品質監視システムは、図3のシステムブロック図に示すように、複数の手段から品質不良部を算出しており、複数の手段とは、シートの巻き出し長を取得する巻き出し長取得手段M−1と、シートの品質を検査して品質検査情報を得て、品質検査データを出力する検査手段M−2と、製造装置等の運転状態データ収集手段M−3、スリッタ作業実績取得手段M−4、品質不良部の位置情報を修正計算して修正不良位置を算出する位置情報修正手段M−5、データベースDBを備えている。
【0077】
位置情報修正手段M−5は、M−1〜4の各手段により得られた、シート巻き出し長や品質検査データなどに基づいて、全ての単位工程の各々品質不良部の発生位置を記録特定し、必要に応じて品質不良部のうち接近又はオーバーラップする品質不良部同士を、各々統合品質不良部として統合記録するものである。
【0078】
そして、切断工程にて、シートを巻き出しながら、位置情報修正手段M−5にて特定したデータ(巻き出し長データ、品質検査データ、運転状態データ、修正不良位置データ)に基づいて、各々品質不良部及び統合品質不良部の位置を計算し、適切な製品長になるようにシートを一旦停止させて、そのシートの品質不良部の前後を、全幅方向にカッターiii−2にて切断してシートから分離させる。
【0079】
また、スリッタ作業実績取得手段M−4にて、品質不良部を良品とみなしたデータを取得した際、M−1〜3とあわせて、位置情報修正手段M−5の情報を更新し、適切な製品長になるように、シートを一旦停止させて、品質不良部の前後を全幅方向にカッターiii−2―1又はカッターiii−2―2にて切断してシートから分離させる。
【0080】
その後、ロール状のシート加工製品として巻き取るものである。
【0081】
巻き出し長取得手段M−1としては、ロータリエンコーダ等のシート長さを計測する計測機がある。また、検査機RI、RII等の品質検査データを出力する検査手段M−2としては、シートの製品毎の検査項目を検査できる検査機を、好適に用いることができる。製造装置等の運転状態データ収集手段M−3としては機械の各箇所にセンサ等を設置することで監視することができる。
【0082】
位置情報修正手段M−5は、品質不良部を算出するための品質検査データを出力する検査手段M−2による品質の良不良検査に必要な検査対象シートの加工仕様や加工品目、検査項目、品質基準データ等を記憶収容するデータベースDBを備えたデータ制御演算処理装置(コンピュータ、CPU)を使用することができる。これは製造装置等の運転状態データ収集手段M−3も同様である。
【実施例】
【0083】
実際に製造されたロール状シート加工製品の多くは、繋いで連続した状態で投入されたり、最終製品の製造に使用されるときには小さくカットされたりするため、製造機器などが効率的に生産できる範囲の製品長であれば良い。この範囲内で、この製品の規定となる長さを製品規定長、製品規定長よりも長いが製造機器などが効率的に生産できる最大の長さを最大規定長、製品規定長よりも短いが製造機器などが効率的に生産できる最短の長さを最短規定長と呼ぶ。また、ロール状シート加工製品の伸縮を考慮し、製品規定長より短くなることを防ぐため、製品ごとに定められた余分にとる長さを定める。この長さを余分長と呼ぶ。ロール状加工製品は、最大規定長から、最短規定長にこの余分長を加えた長さまでの範囲で品質不良部を含まないように製造するものとする。
【0084】
図5のような手順で製品ごとに定められた最大規定長から最短規定長に収まる製品長を
決定し、表1のように品質不良部をラベルで挟み込み、表2のような基準で品質検査RIIIにて、品質不良部の判定を行い、製造を行った。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

表3に示すような原反、製造条件において、ロール状のシート加工製品を製造した。このとき、ロール状シートPIIに上の1117mの位置で品質不良部(コータ絵柄不良)を検出した。この後には収縮を伴う工程はなかったので、品質不良部の位置を特に計算しなおす必要はなく、この位置にラベルを挟み込むことができた。品質検査RIIIにて目視検査を行い、この品質不良部を良品であると判断した。これにより、品質不良部の削除を考慮したカット位置が変化し、表4のようなロール状シート加工製品を製造することができた。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

表5に示すような原反、製造条件において、ロール状の加工製品を製造した。このとき、ロール状シートPIの位置286.5mで品質不良部(印刷絵柄不良)を検出した。次に、ロール状シートPIIにおいて全長を測定しておき、ロール状のシート原反P0からの収縮率を計算したところ、0.86%であった。
【0089】
【表5】

この収縮率から、ロール状シートPIにおいて286.5mの位置で検出された品質不良部は、ロール状シートPII上では284mの位置にあると算出でき、この位置にラベルを挟み込むことができ、スリッタ機も切断するべきところで停止することができた。また、ロール状シートPIIにおいて検出した品質不良部(コータ絵柄不良)の位置でもラベルを挟み込むことができた。品質検査RIIIにて目視検査を行い、ロール状シートPIIの284mの品質不良部を良品であると判断した。これにより、品質不良部の削除を考慮したカット位置が変化し、表6のようなロール状シート加工製品を製造することができた。
【0090】
【表6】

表7に示すような原反、製造条件において、ロール状の加工製品を製造した。このとき、ロール状シートPIの位置2425mで品質不良部(印刷絵柄不良)を検出した。次に、ロール状シートPIIにおいて全長を測定しておき、ロール状のシート原反P0からの収縮率を計算したところ、0.76%であった。
【0091】
【表7】

この収縮率から、ロール状シートPIにおいて2425mの位置で検出された品質不良部は、連続シートPII上では2406mの位置にあると算出でき、この位置にラベルを挟み込むことができ、スリッタ機も切断するべきところで停止することができた。また、ロール状シートPIIにおいて検出した品質不良部(コータ絵柄不良)の位置でもラベルを挟み込むことができた。品質検査RIIIにて目視検査を行い、ロール状シートPIIの1841mの品質不良部を良品であると判断した。これにより、品質不良部の削除を考
慮したカット位置が変化し、表8のようなロール状のシート加工製品を製造することができた。
【0092】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、ロール状原反を生産材として、塗工等の加工を行い、最終的にロール状シート加工製品を製造する生産工程に適用でき、ロール状シート加工物の巻き取り長や幅方向の長さに伸縮に対応可能である。より好ましくは、従来公知のマーキングやラベル貼着の適用が難しい高速ラインの生産工程に好適である。また、製造工程を経ることにロール状シート形成物の巻き取り長が伸縮しないものに対する生産工程においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)〜(c)は、ロール状シート原反からなるシートを生産材とする製造装置による製造工程の具体例を説明する工程図。
【図2】(a)、(b)は、それぞれ図1(a)、(b)の各工程で発生した不良部を記録し特定した様子を示し、さらに図1(c)において製品とする部分と破棄する部分とを説明する模式図。
【図3】本発明のロール状シート加工製品の品質監視システムを説明するブロック図。
【図4】不良位置に添付するラベルを説明する模式図。
【図5】本発明の実施例におけるカット位置指定方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0095】
I … 第1単位工程
II … 第2単位工程
III … 第3単位工程
iii−1… スリッタ(巻き出し方向に沿うカッティング用)
iii−2… カッター(シート幅方向に沿うカッティング用)
P0 … 原反
PI … ロール状シート加工製品
PII … ロール状シート加工製品
PIII … ロール状シート加工製品
R I … 品質検査機
RII … 品質検査機
RIII … 品質検査位置
L … ラベル貼機
D … 品質不良箇所
R … ラベル
b … 製品規定長
DII … ドライヤ
L−1 … ラベル識別コード
L−2 … 不良内容記載部
L−3 … 判断コード
L−3−1 … 品質不良部カット必要コード
L−3−2 … 品質不良部カット不要コード
L−4 … 確認用コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状シート加工製品のスリッタによる切断工程前の製造工程において、前記製造工程で発生した品質不良部の位置をラベルで貼付する品質監視システムであって、
前記製造工程は、巻き取り長及び横幅が伸縮する伸縮工程を少なくとも1回含み、
前記品質監視システムは、
前記製造工程において、前記ロール状シート加工製品の巻き出し長を計測し、巻き出し長データとして出力する巻き出し長取得手段と、
前記製造工程において発生した品質不良部を検出し、少なくとも前記品質不良部の位置データ及び不良状態データを含む品質検査データを出力する検査手段と、
前記製造工程の製造装置及び付帯装置から運転状態データを収集する運転状態データ収集手段と、
前記伸縮工程において、前記ロール状シート加工製品の伸縮により、前記品質不良部の位置情報を修正計算して修正不良位置データを算出する位置情報修正手段と、
少なくとも前記巻き出し長データ、前記品質検査データ、前記運転状態データ、及び前記修正不良位置データを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録されたデータを用いて、切断工程で除去する前記品質不良部の位置を算出して除去部分データとする除去部分データ算出手段と、
前記不良状態データ及び前記除去部分データを前記ラベルに記載するデータ書き込み手段と、
前記除去部分データ算出手段により算出した除去部分に前記ラベルを貼付する手段と、
を備えることを特徴とするロール状シート加工製品の品質監視システム。
【請求項2】
前記除去部分データ算出手段は、前記除去部分の位置及び製品規定長から切断箇所を算出することを特徴とする請求項1記載のロール状シート加工製品の品質監視システム。
【請求項3】
前記ラベルに、検査装置及び検査員によって前記除去部分を除去するかの判断をする判断コードを具備していることを特徴とする請求項1又は2記載のロール状シート加工製品の品質監視システム。
【請求項4】
前記ラベルに、前記判断コードが認識されたかの確認をする確認コードを具備していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のロール状シート加工製品の品質監視システム。
【請求項5】
前記ラベルに、前記不良状態データ、前記除去部分データ、前記判断コード、及び確認コードの情報を一括して内容を確認できるラベル識別コードを具備しており、
前記品質監視システムは、
前記ラベル識別コードの情報を読み込む手段と、
前記ラベル識別コードの情報を記録する手段と、
前記ラベル識別コードを読み込んで前記除去部分が除去されていない場合には、前記除去部分の計算及び切断を再度行う再計算切断手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のロール状シート加工製品の品質監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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