説明

ロール駆動装置

【課題】ロール破損が生じ難い複数本のロールをチェーンで連結して駆動するロール駆動装置を提供する。
【解決手段】複数のロールを駆動チェーンで連結して一台の駆動モータで一括して駆動するロール駆動系において、ロールのロール軸と駆動チェーンをワンウエイクラッチを介して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のロールをチェーンで連結して駆動するロール駆動装置に関し、水平方向に鋼帯を移送させる連続焼鈍炉のロール駆動装置として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
水平に鋼帯を移送する連続焼鈍炉や、加熱、均熱、冷却処理を連続して行う横型熱処理炉では、駆動ハースロールを1〜2mピッチで配置する。
【0003】
ハースロールの駆動方式には、炉全長を複数のゾーンに区分して、各ゾーン毎にモータを配置し、チェーンなどを用いてゾーン内のハースロールを一括駆動する方法(一括駆動方式)や各ハースロール毎に駆動用モータを取り付ける方法が採用されている。
【0004】
図4は、一括駆動方式によるロール駆動装置を説明する図で、(a)は上面図、(b)は側面図を示す。ストリップ2は駆動チェーン4で回転する複数のハースロール3上を搬送される。
【0005】
ハースロール3は数本ごとに駆動チェーン4で連結して一つのグループ6とする。一つのグループ6内で各ハースロール3はその端部に取り付けられた駆動ギヤ5と駆動チェーン4が噛みあって同時に回転する。
【0006】
特許文献1は、チェーン等を用いてゾーン内のハースロールを一括駆動する方法において、ハースロール若しくはその駆動シャフトにクラッチを設け、隣り合うゾーンの駆動速度のいずれかを自由に選択できるようにしたことを特徴とする。
【0007】
特許文献2は、チェーン等によるゾーン内のハースロールの一括駆動方式の場合、一つの駆動グループ内で慣性によるハースロール間の周速差が生じやすいこと、及び炉内温度が800℃以上の高温部におけるハースロールの損耗を防止するため、各ハースロール毎に回転速度を制御する駆動モータを継手を介して取り付けることが記載されている。
【特許文献1】特開平3−211238号公報
【特許文献2】特開平11−286731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、連続焼鈍処理を行う焼鈍炉のロールには、炉内温度が高温となるため、カーボンスリーブ等の耐熱材が使用され、ゾーン内のハースロールをチェーンで一括駆動する方法の場合、一本の破損が連鎖して複数本が破損する。
【0009】
すなわち、チェーン駆動の場合、1本のロールの回転がロール破損、ベアリング破損等で急激に停止した場合、チェーンが急激停止して他のロールの回転も急激に止まることになり、衝撃に弱いカーボンスリーブはスリーブとロール軸の嵌合部分で破損しやすい。
【0010】
焼鈍炉の場合、バーナや配管等が設置・敷設されるため、各ハースロール毎に回転速度制御用の駆動モータを取り付ける方法は採用できない場合が多く、連鎖破損が生じない一括駆動方式の開発が要望されていた。
【0011】
そこで本発明は、ゾーン内の複数本のロールが一括してチェーン駆動されるロール駆動装置において一本のロールが破損してチェーンが急激に停止しても、他のロール破損の防止が可能なものを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は以下の手段で達成可能である。
1.被運搬物を複数のロール上に載置して移動させる装置に用いる、複数のロールを駆動チェーンで連結して一台の駆動モータで一括して駆動するロール駆動装置において、前記ロールのロール軸と前記駆動チェーンはワンウエイクラッチを介して連結されていることを特徴とするロール駆動装置。
2.前記ロールがカーボンスリーブロールであることを特徴とする1記載のロールの一括駆動方式。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操業中に、チェーン駆動される一群のロールのうち、1本のロールが破損してチェーンが急に停止しても他のロールが破損し難いロール駆動装置が得られ、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るロール駆動装置は、駆動チェーンに噛みあうロールの駆動用ギヤと、ロール軸がワンウエイクラッチを介して結合していることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。本発明においてロール軸は、ロールを回転させる駆動軸を指すものとする。
【0015】
図1は、本発明に係るロール駆動装置におけるワンウエイクラッチの機能を説明する模式図で、ワンウエイクラッチはロール軸端部に固定したギヤ7と駆動用ギヤ5と逆転防止用つめ8で構成される。
【0016】
駆動用ギヤ5はロール軸14に対して回転自由となるようにベアリング(図示しない)を介して取り付けられる。逆転防止用つめ8は駆動用ギヤ5に取り付けられて、駆動用ギヤ5の回転をギヤ7に伝達する。
【0017】
駆動チェーン4により駆動用ギヤ5が矢印aの方向に回転すると、逆転防止用つめ8がギヤ7に掛かって、ギヤ7を矢印bの方向に回転させる。
【0018】
駆動用ギヤ5とギヤ7が回転している状態から、駆動用ギヤ5が急激に停止するとギヤ7は、その歯で逆転防止用つめ8を押し上げて、矢印bの方向に回りつづけ、駆動用ギヤ5と共に停止しない。
【0019】
図2にワンウエイクラッチを取り付けたハースロールのロール軸端部の具体的的な構成の一例を説明する模式図を、図3に図2のA−A´断面図を示す。
【0020】
これらの図において、3はハースロール、5は駆動用ギヤ、7はギヤ、8は逆転防止用つめ、9はロール架台、10はベアリングケース、11はベアリング外輪、12はベアリング内輪、13はベアリング、14はロール軸、15はベアリングケース、16はベアリング外輪、17はベアリング、18はベアリング内輪、81は逆転防止用つめを駆動用ギヤ5に取り付ける回転ピンを示す。
【0021】
駆動用ギヤ5はベアリングを介してロール軸14に取り付け、ロール軸14に対して回転自由とする。駆動用ギヤ5に固定されたベアリングケース15の内部にはベアリング外輪16が固定され、ベアリング内輪18はロール軸14に固定する。
【0022】
ベアリング17によってベアリング内輪18とベアリング外輪16は互いに自由に回転するので、駆動用ギヤ5とロール軸14は互いに自由に回転する。
【0023】
ハースロール3のロール軸14はベアリングを介してロール架台9に取り付けて、ロール架台9に対して回転自由とする。ロール架台9に固定されたベアリングケース10の内部にはベアリング外輪11が固定され、ベアリング内輪12はロール軸14に固定する。
ロール軸14にはギヤ7を固定する。
【0024】
ベアリング13によってベアリング内輪12とベアリング外輪11は互いに自由に回転するので、ロール架台9に対してロール軸14は自由に回転する。
【0025】
駆動用ギヤ5が駆動チェーン4(図示しない)で矢印aの方向に回転すると、その駆動力は逆転防止用つめ8によりギヤ7に伝達され、ギヤ7が固定されたロール軸14を回転させる。駆動用ギヤ5が停止すると、ギヤ7はその歯で逆転防止用つめ8を押し上げて回転を続ける。
【0026】
本発明に係るロール駆動装置は駆動チェーン4で一括駆動される複数のロールに上述した構成の駆動伝達系を設けるので、一つのロールが破損して駆動チェーン4が急激に停止しても他のロールは惰性で回転し、衝撃に弱いカーボンスリーブの場合、スリーブとロール軸の嵌合部分での破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るロール駆動装置におけるワンウエイクラッチの機能を説明する模式図。
【図2】本発明例。
【図3】図2に示す本発明例のA−A´断面図。
【図4】一括駆動方式のロール駆動装置を説明する図で、(a)は上面図、(b)は側面図。
【符号の説明】
【0028】
2 ストリップ
4 駆動チェーン
3 ハースロール
6 グループ
5 駆動ギヤ
7 ギヤ
8 逆転防止用つめ
9 ロール架台
10、15 ベアリングケース
11、16 ベアリング外輪
12、18 ベアリング内輪
13、17 ベアリング
14 ロール軸
81 回転ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物を複数のロール上に載置して移動させる装置に用いる、複数のロールを駆動チェーンで連結して一台の駆動モータで一括して駆動するロール駆動装置において、前記ロールのロール軸と前記駆動チェーンはワンウエイクラッチを介して連結されていることを特徴とするロール駆動装置。
【請求項2】
前記ロールがカーボンスリーブロールであることを特徴とする請求項1記載のロール駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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