説明

ワイパアーム、特に車両の窓清拭用ワイパの製造方法

本発明は、車両の窓清拭用のワイパアームを製造するための方法に関する。本発明によれば、ワイパアームの関節部分(14)は、片面が塗装された鋼板材から打抜き加工され、その後、モールド内で、U字形の断面を持つように曲げ加工される。この方法で、塗装されている面は、ワイパアームの内面を形成することになる。ついで、前述のワイパアームの関節部分(14)は、ベアリングピン(18)によって、ワイパアーム固定部分(10)に結合される。その後、ワイパアームは、スプレイ塗装法、或いは粉体塗装法によって塗装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアーム、特に車両の窓清拭用ワイパの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイパアームは、ワイパアーム固定部分、ワイパアーム固定部分に対して、関節のように連結されるワイパアーム関節部分、及びワイパアーム関節部分に保持されるワイパブレードによって構成されている。ワイパアーム固定部分とワイパアーム関節部分に張られているテンションスプリングは、窓の表面に対してワイパブレードを支える保持圧力を与えている。
【0003】
ワイパアーム関節部分から離れた端部には、ワイパアーム固定部分が、ワイパシャフト上に配置され、そこに固定されている。
【0004】
ワイパアーム固定部分は、通常、ダイキャスト製の金属部品、特に、亜鉛或いはアルミニウムのダイキャスト製部品である。それに対して、ワイパアーム関節部分は、鋼板製である。
【0005】
ワイパアームの製造中、個々の要素部品は、ワイパアーム全体が塗装される前に組立てられている。ワイパアームを塗装するためには、さまざまな塗装方法を利用することが可能である。しかし、塗装に先立ってワイパアームの組立てが要求される、前述の製造工程を考えると、完全な被覆ができない塗装方法は、除外しなくてはならない。
【0006】
しかし、ワイパアームの関節区域においては、ワイパアーム関節部分の内面が、ワイパアーム固定部分の外面に対して近接しており、その部分で狭い隙間を形成している。連続した被膜、特に、鋼板製ワイパアーム関節部分の連続した被膜が、この隙間において確保できない場合、故障につながる腐蝕の発生する可能性がある。これは、腐蝕によって関節部分の摩擦が増加し、その結果、ワイパブレードを窓の表面に押し付けている力を減少させるためである。このような押し付け力の減少は、ワイパアームの機能を危険状態に置くこととなる。
【0007】
このような理由から、当業者の間では、仕上げされ、組立てられたワイパアームを塗装するためには、浸漬塗装を用いなくてはならないと考えられている。湿式スプレイ塗装、或いは粉体塗装などの、他の塗装方法に比較すると、浸漬塗装は、隠れた表面にも塗料の粒子が確実に届き、従って、連続した被膜が確保される、という利点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、浸漬塗装は、高額な投資を必要とし、その結果、全体の製造コスト上昇を招いてしまうことになる。浸漬塗装の代替案として、ワイパアーム関節部分を、予め別に塗装しておくことが考えられる。しかし、この方法は、多かれ少なかれ、塗装コストが2倍となるので、これもまた、コスト高となる。さらに、塗装に要求される動力が高くなると共に、塗料の損失レベルも高くなるので、環境に対する配慮が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による方法によると、コストの高い浸漬塗装を用いることなく、ワイパアームの関節部分における腐蝕から開放されることが確実となる。
【0010】
本発明によれば、ワイパアーム関節部分は、最初の工程で、片面を予め塗装された鋼板材から打ち抜かれる。次の工程で、打ち抜かれた部品は、塗装された面が内側になるように折り曲げられる。その後、ヒンジピンを用いて、ワイパアーム関節部分に、ワイパアーム固定部分が接続される。それから、ワイパアームは、スプレイ塗装、或いは粉体塗装によって塗装される。
【0011】
この場合、隠された表面部分には、塗膜が到達しなくてもよいこと、或いは充分に塗膜が到達しなくてもよいことを考えに入れることができる。従って、ワイパアーム固定部分に対して保持されているか、或いは狭い隙間に設置されているワイパアーム関節部分の内面は、予め塗装されている鋼板で提供され、腐食に対して防護されることになる。
【発明の効果】
【0012】
浸漬塗装において必要とされる投資コストを低減させることができるので、競合する技術に打克つことができる。
【0013】
予め片面に塗装が施されている鋼板材は、“コイルコーティング材”として知られている。片面が塗装され、ロールで供給されるこの長尺材は、現在、例えば洗濯機の製造に利用されているが、0.5mm以下の板厚では、ワイパアーム用としては強度が足りない。そのため、本発明による方法では、1.2〜2mmの板厚を有するコイルコーティング材が使用される。
【0014】
本方法の好ましい実施例では、ワイパアーム関節部分は、U字形のチャンネル状に折り曲げられる。これは、平形のワイパブレードを持つ、最近のワイパアーム製造用として、特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の、上記した以外の優位点及び特徴は、次の説明並びに添付図面に基いて行う以下の説明から明らかになると思う。
【0016】
図1に例示する自動車の窓清拭用ワイパアームは、平形のワイパブレードを持つ最近の例である。これは、ワイパシャフト12の軸方向の端部に固定されているワイパアーム固定部分10、ワイパアーム固定部分の他の端部に、関節のような状態で連結されているワイパアーム関節部分10、及びワイパアーム固定部分10から離れた、ワイパアーム関節部分14の端部に、関節のような状態で取り付けられているワイパブレード16から構成されている。
【0017】
ワイパアーム関節部分14は、U字形のチャンネルを形成しており、平行脚14a、14b、及びそれを接いでいるウエッブ14cを有している。ワイパアーム固定部分10とワイパアーム関節部分の間の関節接合は、図2に拡大して示されている。
【0018】
図2からわかるように、平行脚14a、14bは、一直線上にある孔を有しており、その孔を通してリベット18が挿入されるようになっている。リベット18は、脚14a側にリベットヘッド18aを有し、反対側の端部にカシメ部分18bを有している。
【0019】
リベット18は、ワイパアーム固定部分10の通し孔に圧入されているベアリングブッシュ20を貫通している。ワイパアーム固定部分10の本体によって、脚14a、14bの内面が隠されていることが、図から明らかである。脚14bは、ワイパアームの折れ曲がり位置を制限するためのストッパとしてはたらく、曲がった端部を有していることによって、その状態は、さらに難しいものになっている。
【0020】
ワイパアーム関節部分14は、鋼板製であるので、腐蝕から防護するために塗装しなければならない。脚14a、14bの内面は、ダイキャスト金属製、例えば、亜鉛或いはアルミニウムダイキャスト製のワイパアーム固定部分10の側面を受け入れているので、危機な状態となっている。
【0021】
脚14a、14bの内面の腐蝕は、関節部分と固定部分の間の摩擦を増加させ、その結果、関節連結部の滑らかな動きが阻害されてしまうことになる。
【0022】
そのため、窓に押し付けられるワイパブレードの力を減少させてしまうが、この圧力は、関節部分と固定部分の間に張られたテンションスプリングによって発生しているものである。そのため、機能を阻害するか、又は故障となる可能性がある。
【0023】
ワイパアームの塗装は、ワイパアーム固定部分10とワイパアーム関節部分14が、組立てられた状態で行われるので、隠された表面にも確実に塗料が行き渡り、かつ関節部分の内面の腐蝕が確実に防止できる従来の唯一の方法は、浸漬塗装である。
【0024】
本発明による方法では、ワイパアーム関節部分14は、片面がすでに塗装された鋼板を用いて造られる。従って、図3の第1段階30は、片面塗装の鋼板、“コイルコーティング材”とも呼ばれているものを用意することである。この材料では、鋼板の片面に下塗装を施してから、ワイパアーム塗装用と同じであっても差し支えない塗装システムで塗装される。
【0025】
通常のコイルコーティング材と異なって、本発明による方法で用いられる素材は、通常材の板厚、例えば、0.4mmに比較して、1.2〜約2mmの板厚を有している。
【0026】
第2段階32では、関節部分のブランク品が、コイルコーティング材から打ち抜き加工され、第3段階34では、打ち抜き部品が折り曲げられ、図1に見られる形に加工される。これらの工程で、コイルコーティング材の塗装面は、ワイパアーム関節部分14の内面を形成することになる。その後、ワイパアームは、段階36で組立てられる。
【0027】
最終段階38では、ワイパアーム全体が塗装されるが、ここでは、通常のスプレイ塗装、或いは粉体塗装の使用が可能となっている。この場合、ワイパアーム関節部分の隠れた内面まで、塗料が届くとは限らないが、これらの面は、すでにコイルコーティング材の塗装が施されているので、もはや重大な問題ではないこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】遠近法によるワイパーアームの模式図である。
【図2】図1の線II−IIにおける断面図である。
【図3】ワイパアームの製造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
10 ワイパアーム固定部分
12 ワイパシャフト
14 ワイパアーム関節部分
14a、14b 平行脚
14c ウエッブ
16 ワイパブレード
18 ベアリングピン、リベット
18a リベットヘッド
18b カシメ部分
20 ベアリングブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパアーム固定部分(10)及びワイパアーム関節部分(14)から構成されているワイパアーム、特に車両の窓清拭用ワイパアームの製造方法であって、
―ワイパアーム関節部分(14)を、片面が塗装された鋼板から打抜き加工し、その後、塗装面が内側になるように曲げ加工し、
―ワイパアーム固定部分(10)を、ヒンジピンによって、ワイパアーム関節部分に取付け、
―その後、ワイパアームを、スプレー塗装、或いは粉体塗装方法によって塗装することを特徴とする方法。
【請求項2】
ワイパアーム関節部分(14)を、板厚1.2〜2mmの塗装済みの鋼板材を用いて製造することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ワイパアーム関節部分(14)を、断面がU字形のチャンネルを形成するように曲げ加工することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
片面が塗装された鋼板材として、コイルコーティング材を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ワイパアーム固定部分(10)を、ダイキャスト金属部品とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ワイパアーム固定部分(10)を、ベアリングピン(18)の通路用として、ベアリングブッシュ(20)を持つように設計してあることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ベアリングピン(18)を、ワイパアーム関節部分の平行脚(14a)(14b)を通して突き抜け、一端にリベットヘッド(18a)、軸方向の他端にカシメ部分(18b)を有するリベットとして設計してあることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
ワイパアーム固定部分及びワイパアームから構成され、前者が、ヒンジピンによって後者に連結されている、平形のワイパブレードを持つワイパアームであり、ワイパアーム関節部分が、U字形のチャンネルを形成する断面を持つものであって、ワイパアーム関節部分は、片面が塗装され、約1.2から2mmの板厚を持った鋼板材から造られ、塗装された面が内側になるように配置されていることを特徴とするワイパアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501152(P2007−501152A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522309(P2006−522309)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008675
【国際公開番号】WO2005/016713
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504290561)ヴァレオ ヴィシャーズュステーメ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】