説明

ワイパーカバー

【課題】美観を向上させ、風切音と走行抵抗を低減させるワイパーカバーを提供する。
【解決手段】車両のワイパー機構の前方に設けるワイパーカバー10において、ワイパーカバー本体部12と、ワイパーカバー本体部12に連続して設けられ、車両の前面部に取り付けられる取付部14とを備え、ワイパーカバー本体部12は、取付部14を前面部に取り付けた状態において、作動が停止し待機状態にあるワイパー機構30の車幅方向端部より車幅外方に位置する、車幅方向の側端縁18と、ワイパー機構30の上端部より上方に位置する上端縁20と、を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワイパーの前方に設けるワイパーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウィンドシールドガラスの下方には、フロントウィンドシールドガラスの表面を払拭するワイパー機構が設けられている。ワイパー機構は、ワイパーブレードを有するワイパーアームと、ワイパーアームを作動させる駆動機構を備え、降雨時に、駆動機構でワイパーアームを左右に揺動させ、ワイパーアームの先端に設けられたワイパーブレードで、フロントウィンドシールドガラスの表面に付着した雨滴を払拭する。
【0003】
そしてワイパー機構は、払拭動作が終了すると待機位置に戻り、待機した状態で保持される。待機した状態のワイパー機構は、通常ワイパーアームを横に倒し、ワイパーブレードをフロントウィンドシールドガラスの下端に沿って配置させている。
【0004】
又、ワイパー機構が車体表面に突出することによって空気抵抗が増加しないように、フロントフードの下部にワイパー機構を配置させたり、フロントウィンドシールドガラスとフロントフードとの間に開閉自在のカバー部材を設け、カバー部材を閉じてワイパー機構をフロントフードの内部に格納する発明が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−99788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トラック等の貨物用車両は、キャビンの前面が路面に対してほぼ垂直に屹立した構造が多い。したがって、フロントウィンドシールドガラスや、その下部につながるフロントパネル部材も路面に対してほぼ垂直な状態となっており、ワイパー機構もかかる垂直な面内に設けられている。
【0007】
そのため、ワイパー機構は、待機状態においても、ワイパーブレードやワイパーアームがフロントウィンドシールドガラスの下端に、直接露出した状態で保持されている。
【0008】
したがって、車両の前方からワイパーブレード等が目に付いてしまう。又、フロントウィンドシールドガラスの下端に沿ってほぼ一列にワイパーブレードやワイパーアームが配置されているので、走行風が直接当たることとなり、風切音が発生したり、乱流が発生して、車両の走行抵抗を増加させることがあった。
【0009】
又、上記カバー部材は電動モータとリンク機構でカバー部材を作動させているため、構造が複雑となり、コストがかかる問題があった。更に、かかるカバー部材は、車両の前面が屹立した構造の貨物用車両には、適用させにくいものであった。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、簡易な構造で、車両前面の外観を良好にし、走行中の風切音の発生と、空気抵抗の増加を抑制させることが可能なワイパーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し、目的を達成するため、本発明のワイパーカバーは次のように構成されている。
【0012】
車両のワイパー機構の前方に設けるワイパーカバーであり、車両の前面部に対応した形状を有し、前面部に取り付けられる取付部と、取付部を前面部に取り付けた状態において、作動が停止し待機状態にあるワイパー機構の車幅方向端部より車幅方向外側に位置する車幅方向の側端縁、及び待機状態にあるワイパー機構の上端部より上方に位置する上端縁とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるワイパーカバーによれば、簡易な構造で、車両前面の外観を良好にし、走行中の風切音の発生と、空気抵抗の増加を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるワイパーカバーを備えた車両を示す正面図である。
【図2】同ワイパーカバーを示す正面図である。
【図3】同ワイパーカバーを示す斜視図である。
【図4】同ワイパーカバーを備えた車両を示す斜視図である。
【図5】同ワイパーカバーを備えた車両を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかるワイパーカバー10を備えた車両100を示す正面図であり、図2は、ワイパーカバー10を示す正面図であり、図3は、ワイパーカバー10を示す斜視図である。
【0016】
車両100は、図1に示すように貨物用車両であり、以下、車両100の前進方向を前方とし、それを基準に左右と後方を定め、重力の方向を下方、その逆を上方とする。更に、左右方向、すなわち車両100の車幅方向において、車両100の中心に向かう方向を内方、その逆を外方とする。
【0017】
車両100は、図4に示すように前方にキャビン104を備え、キャビン104の後方に荷室106を備えている。キャビン104には、運転席108が設けてあり、キャビン104の左右方向の両側には、前方にAピラー110、後方にBピラー112が取り付けてある。左右のAピラー110には、それぞれ後方ミラー114が取り付けてある。
【0018】
キャビン104は、前面にフロントウィンドシールドガラス116と、前面部としてのフロントパネル部材118を備え、車幅方向にそれぞれドア120、122を備え、上面に、ルーフ部材124を備えている。ルーフ部材124には、導風板126が取り付けてある。
【0019】
フロントウィンドシールドガラス116は、左右のAピラー110と、ルーフ部材124と、車体フレームとしてのウィンドガラスロアパネル128で囲まれた内側に取り付けてある。フロントパネル部材118は、図5に示すようにヒンジによりウィンドガラスロアパネル128に開閉自在に取り付けてある。ウィンドガラスロアパネル128には、ワイパー機構130が取り付けてある。
【0020】
ワイパー機構130は、図1に示すようにワイパーブレード132と、ワイパーアーム134と、駆動部136を備えている。図1は、ワイパースイッチがオフされ、待機状態のワイパー機構130を示す。
【0021】
駆動部136は、駆動モータ140と、駆動モータ140で作動するリンク機構142を備えている。駆動モータ140は、車両100のフレームとしてのウィンドガラスロアパネル128に固定されている。
【0022】
ワイパーアーム134は、基部に回動軸を備え、回動軸によりウィンドガラスロアパネル128に回動自在に取り付けてある。ワイパーアーム134の回動軸には、リンク機構142が連結してあり、リンク機構142の作動により所定の角度内で揺動される。ワイパーブレード132は、ゴム製の払拭部材を備え、ワイパーアーム134の回動端に取り付けてある。
【0023】
待機状態のワイパー機構130は、図1に示すように各ワイパーアーム134が最も横に倒れた状態で停止し、各ワイパーブレード132は、ほぼ水平な状態で、フロントウィンドシールドガラス116の下端に沿って配置されている。図1に示すA及びBが、それぞれ待機状態におけるワイパー機構130の車幅方向端部であり、C、すなわちワイパーブレード132の最上端がワイパー機構130の上端部に相当する。
【0024】
そして、待機状態からワイパースイッチがオンされると、ワイパー機構130は、駆動モータ140が駆動し、リンク機構142を介して揺動する各ワイパーアーム134により、ワイパーブレード132がフロントウィンドシールドガラス116の表面を払拭する。
【0025】
ウィンドガラスロアパネル128には、フロントパネル部材118がヒンジにより回動自在に取り付けてある。フロントウィンドシールドガラス116と、フロントパネル部材118は、図3に示すように、路面に対してほぼ垂直に設けてある。
【0026】
フロントパネル部材118は、フロントウィンドシールドガラス116より前方に突出しており、フロントウィンドシールドガラス116との間に段差部150が形成してある。フロントパネル部材118の上部前面に、ワイパーカバー10が取り付けてある。
【0027】
ワイパーカバー10は、図2に示すように、ワイパーカバー本体部12と取付部14を備え、横幅がW、高さ幅がHの横長に形成された板状の部材であり、適度な光透過性を有する合成樹脂材で形成してある。取付部14は、ワイパーカバー本体部12の下部に連続して形成してあり、フロントパネル部材118に対応した形状、すなわちフロントパネル部材118の外形に沿った形状を有する取付面15と、取付孔16を備えている。取付孔16は、ねじ17(図4参照。)が通る径を備えている。図4に、ワイパーカバー10を車両100に取り付ける状態を示す。尚、図示の都合上、取付部14の上縁の境界を点線で示すが、ワイパーカバー本体部12との間に境界線はなくともよい。
【0028】
図1に、ワイパーカバー10を車両100に取り付けた状態を示す。ワイパーカバー10は、取付部14をフロントパネル部材118の前面に密着させ、取付部14に設けられた取付孔16により取付部材としてのねじ17(図4参照。)で着脱可能に取り付けてある。尚、ワイパーカバー10は、取付孔16を用いて、かしめにより取り付けてもよい。
【0029】
ワイパーカバー本体部12は、左右端部に側端縁18を有し、側端縁18の間隔、つまり横幅Wが、車両100の横幅とほぼ等しい値となっている。ワイパーカバー本体部12は、左右の端部に、側端縁18に向かい適度に湾曲する側端取付面19が形成してあり、取付部14をフロントパネル部材118に取り付けると、側端取付面19が、車両100の外装としてのフロントパネル部材118とAピラー110になだらかに連続する。
【0030】
又、ワイパーカバー10は、上部に上端縁20、下部に下端縁22を有している。上端縁20は、取付部14をフロントパネル部材118に取り付けると、待機状態にあるワイパー機構130の上端部Cより上方に形成してあり、ワイパーアーム134、及びワイパーブレード132のいずれも上端縁20の上方に露出することのない。
【0031】
更に、ワイパーカバー本体部12は、上部に、図5に示すように上端縁20に向かい後方に湾曲する後方湾曲面21を備えている。尚、ワイパーカバー10の上端縁20は、水平でなく、高さ方向に湾曲していてもよい。
【0032】
ワイパーカバー10は、取付部14をフロントパネル部材118に取り付けると、図5に示すように段差部150のためにフロントウィンドシールドガラス116との間に間隔Eが形成される。ワイパーカバー10とフロントウィンドシールドガラス116の間の上部は、開放してあり、ワイパー機構130を作動させたときに、間隔Eの開放部分を通してワイパーアーム134等が上方に移動する。
【0033】
次に、本実施形態のワイパーカバー10の作用、効果について説明する。
【0034】
車両100が走行し、キャビン104の前面に前方から当たった走行風は、キャビン104の車幅方向に流れるとともに、フロントパネル部材118に沿って上昇する。フロントパネル部材118の上端に達した走行風は、フロントパネル部材118に取り付けられているワイパーカバー10に沿って、更に上方に流れる。
【0035】
そして走行風は、ワイパーカバー10の上部に形成された後方湾曲面21に沿って後方に流れ、フロントウィンドシールドガラス116に当たる。フロントウィンドシールドガラス116に当たった走行風は、フロントウィンドシールドガラス116の表面に沿って上方に流れ、ルーフ部材124、導風板126を越えて車両100の後方に流れ去る。又、ワイパーカバー10に沿って車幅方向に流れた走行風は、側端取付面19に従い、車両100の側方に沿って後方に流れる
ワイパー機構130が待機した状態にあると、ワイパーアーム134、ワイパーブレード132は、双方ともにワイパーカバー10の裏側に位置しているため、ワイパーカバー10により前面からの走行風が遮られ直接当たることはない。これにより、ワイパー機構130に走行風が当たることによる乱流が発生せず、走行抵抗が低減され、燃費の向上が図られる。又、ワイパー機構130による風切音の発生も防止できる。
【0036】
ワイパーカバー10が、ワイパーブレード132等を風雨や直射日光から保護するので、ワイパーブレード132の劣化を防止し、耐久性が向上できる。
【0037】
ワイパーアーム134やワイパーブレード132がワイパーカバー10の内側に収納されることから、車両100の前面の外観が整えられる。
【0038】
ワイパーカバー10は、光透過性を有する合成樹脂材で形成されていることから、フロントウィンドシールドガラス116の下部に設けられていても、運転者の視界を妨げることがない。尚、光透過性は、少なくともワイパーカバー本体部12に備えられていればよい。更に、ワイパーカバー10を光透過率の低い素材で形成すると、例えば路面で反射した太陽光の光量をワイパーカバー10により低減でき、まぶしさを軽減させて、視界を良好にできる。
【0039】
ワイパーカバー10は、フロントパネル部材118からの脱着が簡易であるので、ワイパー機構130の整備や清掃等が従来と比較して支障なく行える。又、ワイパーカバー10をフロントパネル部材118に取り付けた状態で、フロントパネル部材118を開閉可能にしてもよい。その場合、ワイパーカバー10の側端縁18を車両100の外装に固定せず、フロントパネル部材118の開放時に側端縁18が車両100の外装から離れるように形成したり、フロントパネル部材118の両端をAピラー110まで延ばし、フロントパネル部材118の両端に側端縁18を取り付けたりする。
【0040】
ワイパーカバー10の上端縁20が後方に湾曲していることから、走行風がフロントウィンドシールドガラス116の表面に強く吹き当てられ、フロントウィンドシールドガラス116の表面の雨滴を上方に吹き飛ばすことができる。これにより、雨天時の視界を良好にできる。
【0041】
雨天時にワイパー機構130を作動させると、フロントウィンドシールドガラス116とワイパーカバー10の間を通してワイパーアーム134が移動し、フロントウィンドシールドガラス116の表面を従来と変わりなく払拭できる。
【0042】
又、フロントウィンドシールドガラス116の下部に設けられているグリップをワイパーカバー10で覆う構造とした場合、グリップがワイパーカバー10の前面に露出するようにワイパーカバー10に切欠きを設けたり、その切欠き部分に開閉可能な蓋部材を設けるようにしてもよい。
【0043】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、ワイパーカバー10は合成樹脂製に限るものではなく、金属製でもよく、又、取り付けられる車両も貨物用車両に限るものではない。又、側端縁18は、車両100の両端に達していなくともよく、少なくともワイパー機構130を前方から覆うものであればよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変形して実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両のウィンドシールドガラスを払拭するワイパー機構に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
10…ワイパーカバー、12…ワイパーカバー本体部、14…取付部、15…取付面、16…取付孔、17…ねじ、18…側端縁、19…側端取付面、20…上端縁、21…後方湾曲面、22…下端縁、100…車両、104…キャビン、106…荷室、108…運転席、110…Aピラー、112…Bピラー、116…フロントウィンドシールドガラス、118…フロントパネル部材、128…ウィンドガラスロアパネル、130…ワイパー機構、132…ワイパーブレード、134…ワイパーアーム、136…駆動部、140…駆動モータ、142…リンク機構、150…段差部、A、B…車幅方向端部、C…上端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のワイパー機構の前方に設けるワイパーカバーにおいて、
ワイパーカバー本体部と、
前記ワイパーカバー本体部に連続して設けられ、前記車両の前面部に取り付けられる取付部と、を備え、
前記ワイパーカバー本体部は、前記取付部を前記前面部に取り付けた状態において、作動が停止し待機状態にある前記ワイパー機構の車幅方向端部より車幅方向外方に位置する、車幅方向の側端縁と、
前記取付部を前記前面部に取り付けた状態において、前記待機状態にある前記ワイパー機構の上端部より上方に位置する上端縁と、を備えたことを特徴とするワイパーカバー。
【請求項2】
前記取付部は、前記車両のフロントウィンドシールドガラスの下部に設けられたフロントパネル部材に対応した取付面を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイパーカバー。
【請求項3】
前記ワイパーカバー本体部は、上部に、前記車両の後方に湾曲した後方湾曲面を備え、
かつ、前記車幅方向の両側に、前記車両の外装に連続する側端取付面を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイパーカバー。
【請求項4】
前記取付部は、前記前面部に前記取付部を着脱自在に取り付ける取付部材を用いて取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパーカバー。
【請求項5】
前記ワイパーカバー本体部は、運転者が前記ワイパーカバー本体部を通して車外を目視できる光透過性を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパーカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49337(P2013−49337A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187915(P2011−187915)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】