説明

ワイパー装置

【課題】構造が簡単で窓ガラス面を広く払拭するとともに、気象条件や走行条件に応じてワイパーブレードの払拭方式を簡単に選択して切り替えることが可能なワイパー装置の提供を目的とする。
【解決手段】正逆回転制御された回転ドラムと、回転ドラムに巻装した帯状弾性体と、帯状弾性体の開放側端部に取り付けたワイパーブレードとを備え、ワイパーブレードは、窓ガラス面に対しておおむね水平に配設してあるとともに、帯状弾性体の巻き戻し及び巻き取りにより上下運動するものであることを特徴とするワイパー装置とした。
また、回転ドラムを軸支する回転ドラム支持体を有し、回転ドラムとともに所定の角度のみ正逆回転共回りするようになっていて、帯状弾性体の巻き戻し又は巻き取り動作によりワイパーブレードが上昇するときには窓ガラス面から離隔する方向に回動し、ワイパーブレードが下降するときには窓ガラス面を押圧する方向に回動するようにするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、電車、建設重機等の車両等の窓ガラス面を払拭するワイパー装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来のワイパー装置は、ほとんどが扇形を描いて窓ガラス面を払拭する方式であるため、拭き残し部分が生じて視界が制限されると言う問題があった。また、気象条件や走行条件が変わってもそれに応じて視界を改善する方式のものは少ない。
特開平11−310112号公報には、ワイパーブレードが上下方向に往復するワイパー装置に関する技術を開示するが、窓ガラス面に対してワイパーブレードを安定的に押圧するのが難しい構造である。
【0003】
【特許文献1】特開平11−310112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑み、構造が簡単で窓ガラス面を広く払拭するとともに、気象条件や走行条件に応じてワイパーブレードの払拭方式を簡単に選択して切り替えることが可能なワイパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するため、正逆回転制御された回転ドラムと、回転ドラムに巻装した帯状弾性体と、帯状弾性体の開放側端部に取り付けたワイパーブレードとを備え、
ワイパーブレードは、窓ガラス面に対しておおむね水平に配設してあるとともに、帯状弾性体の巻き戻し及び巻き取りにより上下運動するものであることを特徴とする。
例えば、車両にワイパー装置を取り付けるスペースを確保しやすい点から、回転ドラムを窓ガラス面(ウインドガラス)の下側に配置すると、回転ドラムで帯状弾性体を巻き取ることによりワイパーブレードは窓ガラス面下端に向かって下降し、帯状弾性体を巻き戻すことによりワイパーブレードは窓ガラス面上端に向かって上昇することになる。
これにより、ワイパーブレードは窓ガラス面に対し上下往復運動する。
また、ワイパー装置を窓ガラス面の上側に配置すると巻き取りと巻き戻しによるワイパーブレードの動きは逆になる。
本明細書にては帯状弾性体を巻き取る方向を正回転とし、逆に帯状弾性体を巻き戻す方向を逆回転として表現する。
【0006】
回転ドラムを軸支する回転ドラム支持体を有し、回転ドラム支持体は、回転ドラムから巻き戻し、巻き取りする帯状弾性体の開放側をガイドする帯状弾性体用ガイドローラーを有し、且つ、回転ドラムとともに所定の角度のみ正逆回転共回りするようになっていて、帯状弾性体の巻き戻し又は巻き取り動作によりワイパーブレードが上昇するときには窓ガラス面から離隔する方向に回動し、ワイパーブレードが下降するときには窓ガラス面を押圧する方向に回動することを特徴とする。
このようにすると、車両のフロントガラス等に雪が積もった場合には、ワイパーブレート上昇時には窓ガラス面から離隔し、下降時に雪を下方向に払拭できる。
【0007】
また、回転ドラム支持体が回動しないように規制したロック状態と、回転ドラムと所定の角度のみ正逆回転共回りするロック解除状態とを切り替える切り替え手段を有しているのが良い。
ロック状態では、ワイパーブレードの上昇時と下降時とともに窓ガラス面を押圧し、ロック解除状態では、ワイパーブレードの下降時だけ窓ガラス面を押圧する。
このようにすると、気象条件に合わせてワイパーの作動方法を容易に切り替えることができる。また、切替手段は機械式でも電気式でもよい。
【0008】
帯状弾性体は回転ドラムに巻き取られても、巻き戻されて回転ドラムから開放された時には直線状に戻ることが必要である上に、ワイパーブレードの払拭時は窓ガラス面に対して適当な押圧力を有していることも必要である。
従って、帯状弾性体は所定の弾性を有する限りにおいて、材質を限定する必要はない。
【0009】
ワイパー装置はできるだけ小型のものが望ましいが、回転ドラムの直径を小さくすると、帯状弾性体の弾性限界を超えて曲げることになったり、ワイパーブレードの払拭距離が充分にとれない場合が生じる。
そのような恐れがある場合には、一本の帯状弾性体に限定することなく、より厚みの薄い帯状弾性体を数本重ねて使用するのがよい。
また、回転ドラムを窓ガラス面の上方に配置した場合等には、回転ドラムの正逆回転に対する帯状弾性体の巻き取り、巻き戻しを逆にしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワイパー装置は、構造が簡単で、窓ガラス面に対して水平に配設したワイパーブレードが窓ガラス面を押圧しながら下降するので、窓ガラス面を広く払拭することができる。
また、切り替え手段によりワイパーブレードの払拭方式(下降時のみ払拭、往復とも払拭のいずれか)を簡単に選択して切り替えることができるので、窓ガラス面に雪等が降り積もった場合でも気象条件や走行条件に応じて安全な視界を得ることができる。そして車両等のフロントガラス、リヤガラスのどちらにも応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明に係るワイパー装置10を車両等の窓ガラス面50に配置した模式斜視図を示す。
正逆回転制御された回転ドラム11に巻装した帯状弾性体12の開放側端部にワイパーブレード13を窓ガラス面50に対しておおむね水平になるように取り付けてある。
帯状弾性体12の長さは、ワイパーブレード13が払拭する払拭距離Aと、窓ガラス面50下端から回転ドラム11までの区間距離Bとに、回転ドラム11に巻き取る余裕の長さを加えた長さに設定してある。
【0012】
回転ドラム11の逆回転で帯状弾性体12を巻き戻すことにより、ワイパーブレード13は窓ガラス面50の上端に向かって上昇する。
また、正回転で帯状弾性体12を巻き取ることにより、ワイパーブレード13は窓ガラス面50の下端に向かって下降する。
【0013】
回転ドラム11を軸支した回転ドラム支持体14は、帯状弾性体12の開放側をガイドする帯状弾性体用ガイドローラー15を有しており、回転ドラム11とともに正逆回転共回りする。
従って、帯状弾性体用ガイドローラー15は、帯状弾性体12の巻き戻し方向を安定させる作用のみならず、回転ドラム支持体14が回転ドラム11と所定の角度のみ共回りすることで、ワイパーブレード13を窓ガラス面50から離したり押圧する支点となる。
また、回転ドラム11の巻き取り、巻き戻しの繰り返し動作に対して、ワイパーブレード13の払拭距離Aが安定するように巻装状態の帯状弾性体12をガイドする回転ドラム用ガイドローラ16を取り付けてある。
そして、回転ドラム支持体14が正逆回転共回りするように軸受け支柱17で保持している。
【0014】
回転ドラム支持体14の正逆回転共回りを所定の角度のみにする回動角調整手段20の一例を説明する。
回転ドラム支持体14に回動案内規制シャフト孔31を有する共回り規制部30を配設してある。
回動案内規制シャフト21をこの回動案内規制シャフト孔31に配設して、上下に設けた正回動調整具22aと逆回動調整具22bとに共回り規制部30が当接するようになっていて、回転ドラム支持体14が所定の角度のみ上下に回動するようになっている。
なお、ワイパーブレード13を往復時両方とも窓ガラス面50に押圧したワイパー装置10にあっては、この共回り機構は不要であり、また回転ドラム支持体14を回転ドラム11とは別の駆動により所定の角度のみ上下に回動させてもよい。
【0015】
図1に示した例では、供回り規制部30にマグネット41等を配設し、電磁石40等を用いて回転ドラム支持体14が回動しないように規制したロック状態と、回動するロック解除状態とを切り替える切り替え手段を有している。
【0016】
なお、想像線で示すように、回転ドラム11を回転させる駆動軸11aの動力源11bにはギヤードモーター等が好ましく、図示しないが、正回転と逆回転との制御はセンサー等を用いて行う。
回転ドラム11は、駆動軸11aにて制御されていれば良いので、以下回転ドラム11の回転方向にて説明する。
【0017】
図2〜図7にワイパー装置10を車両等に配設した模式側面図を示し、ワイパーブレード13上昇時は窓ガラス面50から離隔し、下降時だけ窓ガラス面50を押圧しながら払拭する回動角調整手段20とワイパー装置10の動作とを説明する。
なお、ここでは回転ドラム11の逆回転により、帯状弾性体12を巻き戻してワイパーブレード13を上昇させ、正回転により帯状弾性体12を巻き取りワイパーブレード13を下降させる例を挙げる。
図2〜図4は、ワイパーブレード13の上昇動作を示し、図2での位置は下端であり、図3での位置は中央部であり、図4での位置は上端を示す。
図5〜図7は、ワイパーブレード13の下降動作を示し、図5での位置は上端であり、図6での位置は中央部であり、図7での位置は下端を示す。
図2と図5とに示すように回転ドラム支持体14を所定の角度である回動角度D内でのみ回動可能にする手段として、回動角調整手段20の回動案内規制シャフト21に備えた正回動調整具22aと、逆回動調整具22bとの間にある程度の調整間隔Cを設けてある。
従って回転ドラム支持体14の正逆回転共回りは、回動角度D内のみで回動可能となる。
この回動角度Dは、ワイパーブレード13が窓ガラス面50から離隔する距離と、ワイパーブレード13が窓ガラス面50に対してどれだけの押圧力を加えるかによって設定してある。
すなわち、逆回動調整具22bで離隔距離を調整し、正回動調整具22aで押圧力を調整している。
【0018】
図2に点線で示すようにワイパーブレードが窓ガラス面に押圧した状態から回転ドラム11が逆回転すると、回転ドラム支持体14は共回り規制部30が逆回動調整具22bに当接するまで共回りするので、ワイパーブレード13は図2で実線で示したように窓ガラス面50から離隔状態になり、その後に巻き戻されて図3に示す状態を経て図4に示すように窓ガラス面50上端まで上昇する。
ここでセンサー等が上端を感知して回転ドラム11は正回転になる。
【0019】
図5に示すように回転ドラム11が正回転すると、回転ドラム支持体14は回転ドラム11と正回転共回りし、共回り規制部30が逆回動調整具22bを離れて正回動調整具22aに当接するまで回動する。
この回動中にワイパーブレード13は、図4に示す離隔状態から図5に示す窓ガラス面50を押圧する状態になる。
正回転共回りが抑止されると同時に、回転ドラム11が帯状弾性体12を巻き取り始め、ワイパーブレード13は窓ガラス面50を押圧払拭しながら図6に示す状態を経て図7に示すように窓ガラス面50下端まで下降する。
ここでセンサー等が下端を感知して再び回転ドラム11は逆回転する。
【0020】
再び図2に示すように回転ドラム11が逆回転すると、回転ドラム支持体14は回転ドラム11と逆回転共回りし、共回り規制部30が正回動調整具22aを離れて逆回動調整具22bに当接するまで回動する。
この回動中にワイパーブレード13は、図7に示す押圧状態から、図2に示す窓ガラス面50から離隔した状態になる。
逆回転共回りが抑止されると同時に、回動ドラム11が帯状薄板弾弾性体12を巻き戻し始め、ワイパーブレード13は窓ガラス面50から離隔しながら図3に示す状態を経て図4に示す状態まで窓ガラス面50上端に向かって上昇する。
あとは同じ動作を繰り返すことになる。
【0021】
図8〜図9は、回転ドラム支持体14の回動がロック状態のワイパー装置10を示す。
図8は、ワイパーブレード13の位置は下端であり、図9は上端状態を示す。
図8は、電磁石40で共回り規制部30に備えたマグネット41等を吸引しロック状態にした例を示す。
回転ドラム支持体14の回動をロックするのは、回転ドラム11との共回りを防止する点にあるのでロック手段は限定されず、電磁石40を用いた電気式でもピンを前進後退等させる機械式でもよい。
【0022】
図8に示すロック状態で、回転ドラム11が逆回転すると、回転ドラム支持体14は逆回転共回りせずに帯状弾性体12が巻き戻されて、ワイパーブレード13は窓ガラス面50を押圧払拭しながら水平に上昇する。
図9に示すようにワイパーブレード13が窓ガラス面50上端まで上昇すると、センサー等が上端を感知して回転ドラム11は正回転して帯状弾性体12を巻き取るにともない、ワイパーブレード13は窓ガラス面50を押圧払拭しながら水平に下降を始める。
そして図8に示すようにワイパーブレード13が窓ガラス面50下端まで下降すると、センサー等が下端を感知して再び回転ドラム11は逆回転する。
この動作を繰り返すことにより、ワイパーブレード13は水平に上下往復運動を続けて窓ガラス面50を押圧しながら払拭することができる。
【0023】
また、電磁石40により、ワイパーブレード13の払拭方式(下降時のみ払拭、往復とも払拭のいずれか)を簡単に選択して切り替えることができる。
【0024】
本発明のワイパー装置10を乗用車のフロントガラスやリヤガラスに使用するには窓ガラス面50の幅がワイパーブレード13の長さよりも長い場合は、図10(イ)に示すようにワイパー装置10を複数配置しても良く、図10(ロ)に示すように、長い駆動軸11aの左右各々に設けたワイパー装置10が同時に作動し、ワイパーブレード13を長い1本にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るワイパー装置の模式斜視図を示す。
【図2】上昇ワイパーブレードが下端位置にある状態の側面図を示す。
【図3】上昇ワイパーブレードが中央部位置離隔状態の側面図を示す。
【図4】上昇ワイパーブレードが上端位置離隔状態の側面図を示す。
【図5】下降ワイパーブレードが上端位置状態の側面図を示す。
【図6】下降ワイパーブレードが中央部位置押圧状態の側面図を示す。
【図7】下降ワイパーブレードが下端位置押圧状態の側面図を示す。
【図8】回転ドラム支持体の回動がロック状態に於けるワイパーブレード下端位置の側面図を示す。
【図9】回転ドラム支持体の回動がロック状態に於けるワイパーブレード上端位置の側面図を示す。
【図10】本発明に係るワイパー装置の車両等窓ガラス面への配置例を示す。
【符号の説明】
【0026】
10 ワイパー装置
11 回転ドラム
11a 駆動軸
11b 動力源
12 帯状弾性体
13 ワイパーブレード
14 回転ドラム支持体
15 帯状弾性体用ガイドローラー
16 回転ドラム用ガイドローラー
17 軸受け支柱
20 回動角調整手段
21 回動案内規制シャフト
22a 正回動調整具
22b 逆回動調整具
30 共回り規制部
31 回動案内規制シャフト孔
40 電磁石
41 マグネット
50 窓ガラス面
A 払拭距離
B 区間距離
C 調整間隔
D 回動角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆回転制御された回転ドラムと、回転ドラムに巻装した帯状弾性体と、帯状弾性体の開放側端部に取り付けたワイパーブレードとを備え、
ワイパーブレードは、窓ガラス面に対しておおむね水平に配設してあるとともに、帯状弾性体の巻き戻し及び巻き取りにより上下運動するものであることを特徴とするワイパー装置。
【請求項2】
回転ドラムを軸支する回転ドラム支持体を有し、回転ドラム支持体は、回転ドラムから巻き戻し、巻き取りする帯状弾性体の開放側をガイドする帯状弾性体用ガイドローラーを有し、且つ、回転ドラムとともに所定の角度のみ正逆回転共回りするようになっていて、帯状弾性体の巻き戻し又は巻き取り動作によりワイパーブレードが上昇するときには窓ガラス面から離隔する方向に回動し、ワイパーブレードが下降するときには窓ガラス面を押圧する方向に回動することを特徴とする請求項1記載のワイパー装置。
【請求項3】
回転ドラム支持体が回動しないように規制したロック状態と、回転ドラムと所定の角度のみ正逆回転共回りするロック解除状態とを切り替える切り替え手段を有していることを特徴とする請求項2記載のワイパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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