説明

ワイパ制御装置、および、それを用いたワイパ制御方法

【課題】 昼および夜に関わらずワイパの停止を適時に実行可能なワイパ制御装置を提供する。
【解決手段】ワイパ制御装置1は、雨滴検出装置20、圧力検出装置40、ワイパモータ30、および、制御部50を備える。雨滴検出装置20は、車両100に落下する雨滴を検出する。圧力検出装置40は、車両100の外壁に作用する空気の圧力を検出する。ワイパモータ30は、ワイパ10を駆動する。制御部50は、雨滴検出装置20により検出された雨滴に基づいてワイパモータ30によりワイパ10の作動制御を行い、圧力検出装置40により検出された圧力の変化量に基づいてワイパ10の停止制御を行う。これにより、圧力検出装置40により検出された圧力の変化量に基づいて、ワイパ10の停止制御を行うため、昼および夜に関わらず、ワイパ10の停止を適時に実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ制御装置、および、それを用いたワイパ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイパ制御装置は、雨滴を検出しなくなると、所定回数作動後にワイパを停止する。また、例えばトンネル等の中に入ると、所定回数作動しなくても直ちに停止するよう制御する。例えば、特許文献1の発明では、光センサにより検出された光量に基づいて、トンネルの中に入ったか否かを判断する。光センサにより検出された光量差が所定閾値より小さくなると、トンネルの中に入ったと判断し、作動中のワイパを直ちに停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、雨が降る夜の場合、トンネルに入ると、雨滴は検出されないが、光量差も検出されないおそれがある。このため、特許文献1の発明では、雨が降る夜の場合、トンネルの中に入ったか否かを判断できないおそれがある。よって、トンネルに入ってもワイパの作動が直ちに停止せず、ワイパが所定回数の作動を継続することで、運転者に不快感を与える。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、昼および夜に関わらずワイパの停止を適時に実行可能なワイパ制御装置、および、それを用いたワイパ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、ワイパ制御装置は、乗り物のワイパの作動および停止を制御する。ワイパ制御装置は、雨滴検出手段、圧力検出手段、駆動部、および、制御部を備える。雨滴検出手段は、乗り物に落下する雨滴を検出する。圧力検出手段は、乗り物の外壁に作用する空気の圧力を検出する。駆動部は、ワイパを駆動する。制御部は、雨滴検出手段により検出された雨滴に基づいて駆動部によりワイパの作動制御を行い、圧力検出手段により検出された圧力の変化量に基づいてワイパの停止制御を行う。
これにより、圧力検出手段により検出された圧力の変化量に基づいて、ワイパの停止制御を行うため、乗り物の周囲の圧力が変動する場合には、昼および夜に関わらず、ワイパの停止を適時に実行することができる。
【0006】
請求項2に係る発明によると、圧力検出手段により検出された圧力の変化量が所定閾値を超えると、制御部は、乗り物が雨避け施設内に入ったと判断し、ワイパの作動を停止する。ここで、雨避け施設は、例えばトンネル等が考えられる。トンネルは、壁に囲まれ、開放された空間を走行するときに対し、乗り物に作用する圧力が変化する。この圧力の変化量を検出すればトンネルに入ったと判断することができる。
ここで、圧力の変化量は昼および夜の影響を受けないため、昼および夜に関わらず、乗り物が雨避け施設内に入ったことを即時に判断することができる。よって、ワイパの停止制御を適時に行うことで、雨避け施設内でのワイパの作動により、運転者に不快感を与えることを抑制することができる。
【0007】
上述の閾値を設定する時に、最も変化量の少ない条件に合わせて、一率に設定すると、比較的変化の大きい条件では誤判断の可能性が高まる。そこで、所定閾値は、条件に応じて設定することが好ましい。
請求項3に係る発明によると、所定閾値は、乗り物の速度が速いほど大きく設定されている。これにより、乗り物の速度の変化による制御部の誤判断を抑制することができる。
【0008】
また、請求項4に係る発明によると、所定閾値は、雨避け施設の入口面積が小さいほど大きく設定されている。これにより、異なる雨避け施設の入口面積による制御部の誤判断を抑制することができる。
【0009】
請求項5に係る発明によると、圧力検出手段は、乗り物の進行方向に対して側方に設けられている。
これにより、雨避け施設内に入る乗り物が受ける圧力の変化量をより敏感に検出することができる。
【0010】
請求項6に係る発明によると、ナビゲーションシステムをさらに備え、雨避け施設の情報は予めナビゲーションシステムに記憶されている。
これにより、ナビゲーションシステムに登録されている雨避け施設については、ナビゲーションシステムに記憶されている情報に基づいて、乗り物が雨避け施設内に入ったことを判断することができる。また、新たに建設されナビゲーションシステムに登録されていない雨避け施設については、圧力の変化量に基づいて、乗り物が雨避け施設内に入ったことを判断することができる。よって、使用者の利便性を向上することができる。
【0011】
請求項8に係る発明によると、請求項1〜7のいずれか一項に記載のワイパ制御装置によるワイパ制御方法であって、圧力検出ステップ、変化量算出ステップ、および、ワイパ制御ステップを含む。圧力検出ステップでは、乗り物の外壁に作用する空気の圧力を検出する。変化量算出ステップでは、圧力検出手段により検出された圧力の変化量を算出する。停止制御ステップでは、圧力の変化量が所定閾値を超えると、乗り物が雨避け施設内に入ったと判断し、ワイパの作動を停止する。
これにより、圧力検出手段により検出された圧力に基づいて、ワイパの停止を制御するため、昼および夜に関わらず、ワイパの停止制御を適時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるワイパ制御装置を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態によるワイパ制御方法を示すフローチャート。
【図3】車両がトンネルに入るときに受ける圧力の変化量と速度との関係を示す特性図。
【図4】車両がトンネルを通過するときに受ける圧力変化を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態によるワイパ制御装置について図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態は、車両のワイパを制御するワイパ制御装置に適用したものである。一実施形態によるワイパ制御装置を図1から図4に示す。
図1に示すように車両100に搭載されているワイパ制御装置1は、雨滴検出装置20、圧力検出装置40、ワイパ10を駆動するワイパモータ30、および制御部50等を備える。
【0014】
雨滴検出装置20は、車両100のウインドシールド70に付着した雨滴を検出するものである。雨滴検出装置20は、特許請求の範囲における「雨滴検出手段」に対応する。雨滴検出装置20は、運転者の視界を妨げないように、ウインドシールド70の左下方であって、車室内側に設けられる。雨滴検出装置20は、導光体、受光素子、および発光素子などを備え、ウインドシールド70に雨滴が付着したときの基準光の減衰を検出することで雨滴の有無を検出する。
【0015】
圧力検出装置40は、圧力センサを備え、車両100に作用する大気の圧力を検出する。圧力検出装置40は、特許請求の範囲における「圧力検出手段」に対応する。本実施形態の場合、圧力検出装置40は、車両100の進行方向に対して側方に設けられている。
ワイパモータ30は、ワイパ10の作動を駆動するモータであり、制御部50により制御される。ワイパモータ30は、特許請求の範囲における「駆動部」に対応する。
【0016】
本実施形態では、車両100の走行速度を検出する車速検出装置60をさらに備える。車速検出装置60は、車両100の速度を検出する速度センサを備えており、速度センサの検出信号に基づいて車両100の走行速度を算出して出力する。
【0017】
制御部50は、CPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスラインを有する周知の小型のコンピュータである。制御部50は、雨滴検出装置20、圧力検出装置40、および車速検出装置60から検出された信号を受信する。
例えば、雨滴検出装置20により雨滴が検出されると、制御部50は、ワイパモータ30へ駆動信号を出力し、ワイパモータ30を駆動制御することによりワイパ10を制御する。これにより、ワイパ10は、ワイパモータ30に駆動され、ウインドシールド70の雨滴を払拭する。
【0018】
ここで、制御部50により実行されるワイパ10の停止制御処理を図2のフローチャートに基づいて説明する。
S101では、初期圧力P0を設定する。初期圧力P0は、圧力検出装置40により検出された値に基づいて設定される。例えば、車両100の走行時において、圧力検出装置40により所定時間前から現在までの所定時間に検出された圧力の平均値に設定されている。また、nに1を代入する。
【0019】
S102では、現在圧力Pnを検出する。S102は、特許請求の範囲おける「圧力検出ステップ」に対応する。現在圧力Pnは、車両100の走行時において、圧力検出装置40により所定時間間隔をおいて検出された圧力である。
【0020】
S103では、圧力検出装置40により検出された圧力の変化量ΔPnを算出する。S103は、特許請求の範囲における「変化量算出ステップ」に対応する。ここで、現在圧力Pnから圧力P(n−1)を引くことで、圧力の変化量ΔPnを算出する。なお、最初のサイクルでは、圧力の変化量ΔP1は、下記の式1を満たす。
ΔP1=P1−P0 ・・・式1
【0021】
S104では、S103で算出された圧力の変化量ΔPnと閾値Xとを比較する。閾値Xは0より大きく設定されている。圧力の変化量ΔPn>閾値Xの場合(S104:YES)、処理はS106へ移行する。一方、圧力の変化量ΔPn<閾値Xの場合(S104:NO)、処理はS105へ移行する。
【0022】
ここで、図3に基づいて閾値Xの設定について詳しく説明する。図3は、入口面積が異なるトンネルT1およびT2に入るときの車両100に作用する圧力の変化量ΔPと車両100の速度との関係を示す。トンネルT1の入口面積はトンネルT2の入口面積より小さく形成されている。図3に示すように、圧力の変化量ΔPは、車速検出装置60より検出された車速が大きくなるほど大きくなり、車両100が通過するトンネルの入口面積が小さくなるほど大きくなる。よって、本実施形態の場合、トンネルT1に対応する閾値X1、および、トンネルT2に対応する閾値X2は、車速検出装置60より検出された速度が大きくなるほど大きく設定され、車両100が通過するトンネルの入口面積が小さくなるほど大きく設定されている。
【0023】
S105では、nにn+1を代入し、処理は、S102へ移行する。ここで、圧力の変化量ΔPnが閾値Xを超えるまで、処理S102〜S104を繰り返す。例えば、2回目のサイクルではn=2となり、ΔP2は下記式2を満たす。
ΔP2=P2−P1 ・・・式2
【0024】
S106では、制御部50は、車両100がトンネルに入ったと判断する。図4に示すように、車両100がトンネルに入る瞬間、車両100が受ける圧力が急増する。このため、S104で圧力の変化量ΔPn>閾値Xと判断された場合、圧力検出装置40により検出される圧力が急増すると判断することができる。これにより、S106では車両100がトンネルに入ったと判断する。
【0025】
S107では、ワイパ10の作動を停止する。ここで、制御部50は、ワイパモータ30の作動を停止することで、ワイパ10の作動を停止する。ここで、S104、S106、S107は、特許請求の範囲における「停止制御ステップ」に対応する。
【0026】
本実施形態では、制御部50は、圧力検出装置40により検出された圧力の変化により、ワイパ10の停止制御を行うため、昼および夜に関わらず、ワイパの停止制御を適時に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態では、圧力検出装置40により検出された圧力の変化量ΔPnが閾値Xより大きくなると、制御部50は、車両100がトンネル内に入ったと判断し、ワイパ10の作動を停止する。このため、昼および夜に関わらず、車両100に作用する圧力の変化により、車両100がトンネル内に入ったことを適時に判断することができる。よって、トンネル内でのワイパ10の作動が直ちに停止しないことにより、運転者に不快感を与えることを抑制することができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、閾値Xは、車両100の速度が大きくなるほど大きく設定され、トンネルの入口面積が小さくなるほど大きく設定されている。これにより、車両100の速度の変化、または、トンネルの入口の大きさの変化による制御部の誤判断を抑制することができる。
【0029】
本実施形態では、圧力検出装置40は、車両100の進行方向に対して側方に設けられている。これにより、トンネルに入る車両100が受ける圧力の変化をより正確に検出することができる。
【0030】
(他の実施形態)
上記実施形態では、車両のワイパを制御するワイパ制御装置に適用する一例を示した。これに対し、他の実施形態では、電車等の他の乗り物のワイパを制御するワイパ制御装置に適用することとしても良い。
上記実施形態では、トンネルを雨避け施設とする一例について説明した。これに対し、他の実施形態では、室内駐車施設、または、車庫等を雨避け施設とすることとしても良い。
【0031】
上記実施形態では、圧力検出装置は、車両の進行方向に対して側方に設けられている。これに対し、他の実施形態では、車両の進行方向の前方、車両の進行方向の後方、車両の鉛直方向の下方、または、車両の鉛直方向の上方に圧力検出装置を設けることとしても良い。
【0032】
他の実施形態では、ナビゲーションシステムをさらに備える。ナビゲーションシステムには、様々な情報が記憶され、例えば、各地のトンネルの入口面積等に関する情報が記憶されている。これにより、本実施形態では、ナビゲーションシステムに記録されているトンネル情報に基づいて閾値を設定することができ、異なるトンネルに合わせた閾値をより速く設定することができる。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 ・・・ワイパ
20 ・・・雨滴検出装置
30 ・・・ワイパモータ
40 ・・・圧力検出装置
50 ・・・制御部
60 ・・・車速検出装置
70 ・・・ウインドシールド
100・・・車両
P0 ・・・初期圧力
X ・・・閾値
Pn ・・・現在圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物のワイパの作動および停止を制御するワイパ制御装置であって、
前記乗り物に落下する雨滴を検出する雨滴検出手段と、
前記乗り物の外壁に作用する空気の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記ワイパを駆動する駆動部と、
前記雨滴検出手段により検出された雨滴に基づいて前記駆動部により前記ワイパの作動制御を行い、前記圧力検出手段により検出された圧力の変化量に基づいて前記ワイパの停止制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項2】
前記圧力検出手段により検出された圧力の変化量が所定閾値を超えると、
前記制御部は、前記乗り物が雨避け施設内に入ったと判断し、前記ワイパの作動を停止することを特徴とする請求項1に記載のワイパ制御装置。
【請求項3】
前記所定閾値は、前記乗り物の速度が速いほど大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のワイパ制御装置。
【請求項4】
前記所定閾値は、前記雨避け施設の入口面積が小さいほど大きく設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載のワイパ制御装置。
【請求項5】
前記圧力検出手段は、前記乗り物の進行方向に対して側方に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のワイパ制御装置。
【請求項6】
ナビゲーションシステムをさらに備え、
前記雨避け施設の情報は、予め前記ナビゲーションシステムに記憶されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のワイパ制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のワイパ制御装置によるワイパ制御方法であって、
前記乗り物の外壁に作用する空気の圧力を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出手段により検出された圧力の変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記圧力の変化量が所定閾値を超えると、前記乗り物が雨避け施設内に入ったと判断し、前記ワイパの作動を停止する停止制御ステップと、
を含むワイパ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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