説明

ワイピングクロスおよびその製造方法

【課題】十分な低発塵性、帯電防止性、耐水性を有し、かつ被清掃物に傷が入りにくいワイピングクロス、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)に、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)が付着した導電性繊維を含むワイピングクロス;ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)を含む繊維シート基材を、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬するワイピングクロスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイピングクロスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品(半導体素子、プリント基板等)、精密機械(カメラ等)、光学部材(レンズ、偏光板等)、記録媒体(ハードディスク、光ディスク等)等の製造工程において、被清掃物(部品、製造装置等)に付着した粉塵を拭き取るために、ワイピングクロスが用いられる。該ワイピングクロスには、拭き取った粉塵が脱落しないこと(低発塵性)、電子部品等に影響を及ぼす静電気を蓄えないこと(帯電防止性)、水を扱う製造工程においても用いることができること(耐水性)等が求められる。
【0003】
帯電防止性を有するワイピングクロスとしては、例えば、下記のものが知られている。
(1)繊維シート基材の表面をポリピロール等の導電性ポリマーで被覆したワイピングクロス。
(2)帯電防止剤を含む導電性繊維と、帯電防止剤を含まない通常繊維とからなるワイピングクロス。
【0004】
しかし、(1)のワイピングクロスにおいては、繊維シート基材への導電性ポリマーの付着性が弱いため、導電性ポリマーが脱落しやすく、導電性ポリマー自体が粉塵の原因となる場合がある。
(2)のワイピングクロスは導電性繊維が硬いため、(2)のワイピングクロスを用いた場合、被清掃物に傷が入りやすい。
【0005】
導電性ポリマーが脱落しにくいワイピングクロスとしては、例えば、下記のものが提案されている。
(3)繊維シート基材の表面をポリピロールで被覆し、さらにバインダー樹脂で被覆した低発塵性導電性繊維シート(特許文献1)。
【0006】
しかし、(3)のワイピングクロスは、バインダー樹脂で被覆されているため、表面が非常に硬い。そのため、(3)のワイピングクロスを用いた場合、被清掃物に傷が入りやすい。また、(3)のワイピングクロスは、耐水性が不十分である。
【特許文献1】特開2007−169824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、十分な低発塵性、帯電防止性、耐水性を有し、かつ被清掃物に傷が入りにくいワイピングクロス、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイピングクロスは、ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)に、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)が付着した導電性繊維を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のワイピングクロスの製造方法は、ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)を含む繊維シート基材を、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬することを特徴とする。
【0010】
本発明のワイピングクロスの製造方法は、ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)を、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬して導電性繊維を得た後、該導電性繊維を編織または集積することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワイピングクロスは、十分な低発塵性、帯電防止性、耐水性を有し、かつ被清掃物に傷が入りにくい。
本発明のワイピングクロスの製造方法によれば、十分な低発塵性、帯電防止性、耐水性を有し、かつ被清掃物に傷が入りにくいワイピングクロスを低コストで、かつ簡易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<ワイピングクロス>
本発明のワイピングクロスは、ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)に、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)が付着した導電性繊維(C)を含む導電性繊維シートである。
【0013】
本発明のワイピングクロスの形態としては、織布、編物、不織布等が挙げられる。
本発明のワイピングクロスは、本発明の効果を損なわない範囲で、導電性繊維(C)以外の導電性繊維、通常繊維等を含んでいてもよい。
【0014】
(ポリアミド繊維(A1))
ポリアミド繊維(A1)は、ポリアミドを含む材料からなる繊維である。ポリアミドを含む材料は、必要に応じてポリアミド以外の他の樹脂、添加剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0015】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ポリアラミド(全芳香族ポリアミド)、等が挙げられ、紡糸しやすく、柔軟な繊維が得られる点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11が好ましい。
【0016】
ポリアミド繊維(A1)の形態としては、単繊維、複数の単繊維からなる糸(撚糸等)等が挙げられる。
ポリアミド繊維(A1)の断面形状としては、円形、くさび形、三角形、Y字形、十字形、星形、放射形、中空形、扁平形、不定形等が挙げられる。
【0017】
(複合繊維(A2))
複合繊維(A2)は、ポリアミドを含む材料の1種類以上と、ポリアミド以外の他の樹脂を含む材料の1種類以上とを複合紡糸用ノズルを用いて紡糸した繊維であり、少なくともポリアミドを含む部分が表面に露出している必要がある。ポリアミド以外の他の樹脂としては、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等が挙げられ、紡糸しやすく、柔軟な繊維が得られる点から、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ポリエチレンが好ましい。
【0018】
複合繊維(A2)としては、鞘の部分がポリアミドを含む芯鞘繊維;海の部分がポリアミドを含む海島繊維;図1に示すような、断面円形の繊維の断面を円周等分した、複数の断面くさび形の繊維12からなる分割糸10において、少なくとも1つの断面くさび形の繊維12がポリアミドを含む分割糸10;図2に示すような、断面円形の繊維の断面を円周等分した、複数の断面くさび形の繊維22と、該断面くさび形の繊維22の間を分断する断面放射形の繊維24とからなる分割糸20等が挙げられ、集塵性に優れる点から、分割糸20が好ましい。
【0019】
(導電性ポリマー(B))
導電性ポリマー(B)は、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマーである。
【0020】
導電性ポリマー(B)としては、下記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する導電性ポリマーが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R、Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0023】
【化2】

【0024】
式(2)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0025】
【化3】

【0026】
式(3)中、R〜R10は、各々独立に、H、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルコキシ基、またはスルホン酸基であり、R〜R10の少なくとも一つは、スルホン酸基である。
【0027】
式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の割合は、導電性ポリマー(B)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20〜100モル%が好ましい。
導電性ポリマー(B)は、1分子中に式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を10以上有することが好ましい。
【0028】
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量は、5000〜1000000が好ましく、5000〜20000がより好ましい。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が5000以上であれば、導電性、成膜性および膜強度に優れる。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が1000000以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量は、GPCによって測定される質量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)である。
【0029】
(導電性繊維(C))
導電性繊維(C)は、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)に導電性ポリマー(B)が付着した繊維である。
導電性ポリマー(B)は、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)の表面の少なくとも一部に付着していればよい。
【0030】
以上説明した本発明のワイピングクロスにあっては、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)に導電性ポリマー(B)が付着しているため、酸性基とアミド基との親和力によってポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)と導電性ポリマー(B)との付着力が高くなり、導電性ポリマー(B)が脱落しにくい。よって、十分な低発塵性を有する。
また、以上説明した本発明のワイピングクロスにあっては、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)に導電性ポリマー(B)が付着しているため、十分な帯電防止性を有する。
また、以上説明した本発明のワイピングクロスにあっては、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)と導電性ポリマー(B)との付着力が高いため、導電性ポリマー(B)の他に、バインダー樹脂を用いる必要がない。よって、十分な耐水性、柔軟性を有する。その結果、本発明のワイピングクロスを用いた場合、被清掃物に傷が入りにくい。
【0031】
<ワイピングクロスの製造方法>
本発明のワイピングクロスの製造方法としては、下記の2種類の方法が挙げられる。
(I)ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)を含む繊維シート基材を、導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬する方法。
(II)ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)を、導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬して導電性繊維(C)を得た後、該導電性繊維(C)を編織または集積する方法。
【0032】
(方法(I))
繊維シート基材の形態としては、織布、編物、不織布等が挙げられる。
繊維シート基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)以外の繊維を含んでいてもよい。
【0033】
導電性ポリマー(B)を含む液は、導電性ポリマー(B)を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
該溶媒としては、水;水と、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
水に可溶な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類等が挙げられる。
溶媒としては、水、または水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0034】
液中の導電性ポリマー(B)の量は、浸漬させる繊維シート基材の100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。導電性ポリマー(B)の量が0.01質量部以上であれば、十分な導電性を発現できる。液中の導電性ポリマー(B)の量は、浸漬させる繊維シート基材の100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
導電性ポリマー(B)の含有量は、導電性ポリマー(B)を含む液(100質量%)のうち、0.01〜20質量%が好ましい。導電性ポリマー(B)の含有量が該範囲内であれば、効率的に繊維シート基材の導電性を向上できる。
【0035】
導電性ポリマー(B)を含む液のpHは、繊維シート基材を浸漬する前で、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。導電性ポリマー(B)を含む液のpHが5.0以下であれば、導電性が良好なワイピングクロスが得られる。pHの調整方法としては、例えば、水溶液中で酸性を呈する化合物を添加する方法が挙げられる。該化合物としては、鉱酸(硫酸、塩酸、硝酸等)、有機カルボン酸(酢酸、蟻酸等)、有機スルホン酸(トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等)等が挙げられる。
【0036】
導電性ポリマー(B)を含む液には、必要に応じて、酸性染料による染色に用いられる、均染剤、無機塩等の添加剤を添加してもよい。
【0037】
導電性ポリマー(B)を含む液の温度は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。導電性ポリマー(B)を含む液の温度は、130℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。導電性ポリマー(B)を含む液の温度が30℃以上であれば、ワイピングクロスの耐水性が向上する。導電性ポリマー(B)を含む液の温度が130℃以下であれば、繊維シート基材の変形または変質を防止できる。
導電性ポリマー(B)を含む液を加熱する方法は、特に限定されない。
導電性ポリマー(B)を含む液に繊維シート基材を浸漬する時間は、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。該浸漬時間は、300分以下が好ましく、120分以下がより好ましい。
【0038】
(方法(II))
導電性ポリマー(B)を含む液としては、方法(I)と同様の液を用いる。
ポリアミド繊維(A1)または複合繊維(A2)を、導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬する際のpH、温度、浸漬時間は、方法(I)と同様である。
【0039】
導電性繊維(C)を編織するとは、導電性繊維(C)を編成または製織することを意味する。導電性繊維(C)を製織することにより、織布が得られ、導電性繊維(C)を編成することにより、編物が得られ、導電性繊維(C)を集積することにより、不織布が得られる。
編織方法および集積方法としては、公知の方法を用いればよい。
【0040】
以上説明した本発明のワイピングクロスの製造方法にあっては、ポリアミド繊維(A1)もしくは複合繊維(A2)またはこれらを含む繊維シート基材を、導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬しているため、十分な低発塵性、帯電防止性、耐水性を有し、かつ被清掃物に傷が入りにくいワイピングクロスを得ることができる。また、ポリアミド繊維(A1)もしくは複合繊維(A2)またはこれらを含む繊維シート基材を、導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬するだけであるため、ワイピングクロスを低コストで、かつ簡便に得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0042】
(体積抵抗値)
導電性ポリマーの体積抵抗値は、ロレスターEP MCP−T360(ダイアインスツルメンツ社製)を用い、4端子4探針法で測定した。
【0043】
(表面抵抗値)
ワイピングクロスを70℃で10分間乾燥させた後、ダイヤインスツルメンツ社製ハイレスタIP−MCPHT4560を用い、2探針法にて、ワイピングクロスの表面抵抗値を測定した。
【0044】
(摩擦帯電圧)
ワイピングクロスを70℃で10分間乾燥させた後、JIS L 1094に記載の摩擦帯電圧測定法によってワイピングクロスの摩擦帯電圧を測定した。摩擦帯電圧の測定は、ロータリースタティックテスター(興亜商会社製)を用い、ドラム回転数400rpm、摩擦時間60秒、摩擦回数10回の条件で行った。
【0045】
(集塵性、低発塵性)
アクリル板の表面に付着した粉塵をワイピングクロスで拭き取り、下記基準にて評価した。
○:粉塵をほとんど拭き取ることができ、かつ一度拭き取った粉塵がワイピングクロスから発塵することもなかった。
×:拭き残しがあった、または一度拭き取った粉塵がワイピングクロスから発塵してアクリル板の表面に再付着した。
【0046】
(傷)
アクリル板の表面に付着した粉塵をワイピングクロスで拭き取った後、アクリル板の表面を目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○:アクリル板の表面に傷がまったく認められなかった。
△:アクリル板の表面に傷がわずかに認められた。
×:アクリル板の表面に多くの傷が認められた。
【0047】
(耐水性)
ワイピングクロスを40℃の温水に24時間浸漬した後、温水を目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○:温水が着色していない。
×:温水が明らかに着色した。
【0048】
(繊維シート基材1)
繊維シート基材1としては、KBセーレン社製のサヴィーナ(登録商標)ミニマックス(登録商標)を用いた。該繊維シート基材は、図2に示す断面形状を有する分割糸からなる市販のワイピングクロスであり、分割糸における断面くさび形の繊維は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)繊維であり、断面放射形の繊維はナイロン繊維であり、PETとナイロンとの質量比(PET/ナイロン)は、7/3である。
【0049】
(繊維シート基材2)
繊維シート基材としては、KBセーレン社製のフイテクロス(登録商標)を用いた。該繊維シート基材は、図2に示す断面形状を有する分割糸からなる市販のワイピングクロスであり、分割糸における断面くさび形の繊維は、PET繊維であり、断面放射形の繊維はナイロン繊維であり、PETとナイロンとの質量比(PET/ナイロン)は、7/3である。
【0050】
(導電性ポリマー(B))
導電性ポリマー(B−1):後述の製造例1にて製造したポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)。
導電性ポリマー(B−2):TAケミカル社製、エスペーサー100、スルホン酸基含有可溶性ポリチオフェン誘導体。
導電性ポリマー(B−3):TAケミカル社製、エスペーサー300、スルホン酸基含有可溶性ポリイソチアナフテン誘導体。
【0051】
〔製造例1〕
導電性ポリマー(B−1)の製造:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸の100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に溶解し、該溶液を撹拌しながら、該溶液にペルオキソ二硫酸アンモニウムの100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに撹拌した。反応生成物を濾別、洗浄した後、乾燥し、導電性ポリマー(B−1)[ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン]の粉末の15gを得た。導電性ポリマー(B−1)の体積抵抗値は、9.0Ω・cmであった。
【0052】
〔実施例1〜6〕
100質量部の純水に導電性ポリマー(B−1)の2質量部を添加し、さらに硫酸を添加し、液のpHを2に調整した。得られた導電性ポリマー(B−1)の水溶液に繊維シート基材1を20質量部浸漬し、130℃にて30分間撹拌して、ワイピングクロスを得た。該ワイピングクロスについて評価を行った(実施例1)。
また、表1に示すように、繊維シート基材1、2および導電性ポリマー(B−1〜B−3)の組み合わせを変えて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例1、2〕
導電性繊維(KBセーレン社製、ベルトロン(登録商標)、導電粒子としてカーボンを用いたもの)を、実施例1と同じ繊維シート基材1、2に織り込み、ワイピングクロスを得た。該ワイピングクロスについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例3、4〕
100質量部の純水に、カーボンブラックの10質量部およびバインダー樹脂(東洋紡績社製、MD−1200、スルホン酸基含有水溶性ポリエステル)の90質量部を添加し、導電性組成物を調製した。該導電性組成物を、実施例1と同じ繊維シート基材1、2にディップコートし、100℃にて5分間で乾燥してワイピングクロスを得た。該ワイピングクロスについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
〔比較例5、6〕
100質量部の純水に、ポリピロールの10質量部およびバインダー樹脂(東洋紡績社製、MD−1200、スルホン酸基含有水溶性ポリエステル)の90質量部を添加し、導電性組成物を調製した。該導電性組成物を、実施例1と同じ繊維シート基材1、2にディップコートし、80℃にて10分間で乾燥してワイピングクロスを得た。該ワイピングクロスについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔比較例7,8〕
未処理の繊維シート基材1、2について評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のワイピングクロスは、電子部品(半導体素子、プリント基板等)、精密機械(カメラ等)、光学部材(レンズ、偏光板等)、記録媒体(ハードディスク、光ディスク等)等の製造工程において、被清掃物(部品、製造装置等)に付着した粉塵を拭き取るワイピングクロスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】分割糸の一例を示す断面図である。
【図2】分割糸の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 分割糸
12 断面くさび形の繊維
20 分割糸
22 断面くさび形の繊維
24 断面放射形の繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)に、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)が付着した導電性繊維を含む、ワイピングクロス。
【請求項2】
ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)を含む繊維シート基材を、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬する、ワイピングクロスの製造方法。
【請求項3】
ポリアミド繊維(A1)またはポリアミドを含む複合繊維(A2)を、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマー(B)を含む液に浸漬して導電性繊維を得た後、該導電性繊維を編織または集積する、ワイピングクロスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−197348(P2009−197348A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37594(P2008−37594)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】