ワイヤグリッド偏光子および光センサー
【課題】光学特性を確保しつつ、光センサーの生産性を向上させることが可能な光センサー用のワイヤグリッド偏光子を提供する。
【解決手段】本発明のワイヤグリッド偏光子(1)は、ワイヤグリッド偏光子(1)の投光用偏光部(11)に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子(1)の受光用偏光部(12)を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子(1)であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部(11)と前記受光用偏光部(12)とが作り込まれていることを特徴とする。
【解決手段】本発明のワイヤグリッド偏光子(1)は、ワイヤグリッド偏光子(1)の投光用偏光部(11)に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子(1)の受光用偏光部(12)を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子(1)であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部(11)と前記受光用偏光部(12)とが作り込まれていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過軸方向が互いに異なる投光用偏光部と受光用偏光部を有する光センサー用のワイヤグリッド偏光子に関する。また、これを用いた光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
回帰反射型光電センサーや生体認証装置の中には、検出精度を向上させるため、投光器に投光用偏光子を、受光器に受光用偏光子を有しているものがある。偏光子を有した光センサーの多くは、装置の小型化や感知精度向上の観点から投光器と受光器を近接させており、例えば、図7に示す光センサー201のように、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光子202および受光用偏光子203を、装置設計の観点から、概略同一平面上(図7においては、光センサー201の筐体の一つの面上)となるように配設している。このような光センサーを製造する際には、透過軸方向が異なる投光用偏光子202および受光用偏光子203を一つずつ組み込むこととなるが、偏光子の偏光軸方向を通常光で判別することは難しく、誤組み込みを防止するためには、投光用偏光子202と受光用偏光子203の形状を変える等の工夫が必要となる。これにより、部品点数は増加し、コスト上昇の要因となる。
【0003】
このような課題の解決方法として、例えば特許文献1に開示される技術が提案されている。この技術の概略は次の通りである。まず、投光用偏光子301の一対角線301aおよび受光用偏光子302の一対角線301bが一直線上に位置し、それらの対向する角が連結部303で結合された2つの四角形となるように偏光子304を裁断加工する(図8A参照)。次に、連結部303で結合された2つの四角形のうち一方の四角形を、連結部303を中心として面方向に90度回転することにより、透過軸方向が互いに異なる投光用偏光子301および受光用偏光子302とする(図8B参照)。そして、このようにして作製された偏光子を光センサーに組み込む。しかし、この技術では、偏光子の形状設計に制限を与えることとなる。また、厚みのある偏光子を折り曲げて光センサーの筐体に組み込むこととなるため、作業効率が低下する。また、偏光子を、連結部303を中心として回転させる(折り曲げる)ため、連結部303周辺が湾曲・隆起し、投射光が投光用偏光子301を通過せずに出光する、または、受光用偏光子302を透過せずに測定光が受光器に入光してしまうといった、光センサーの感知精度の低下といった問題が生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−220590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術では光センサーの感知精度を低下させることなく、光センサーの生産性を向上させることは難しかった。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、光学特性を確保しつつ、光センサーの生産性を向上させることが可能な光センサー用のワイヤグリッド偏光子を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部と前記受光用偏光部とが作り込まれていることを特徴とする。
【0007】
このような構成により、投光用偏光部および受光用偏光部が同一基材表面に作り込まれているため、光センサーへの組み込み工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材表面に透過軸方向が異なる投光用および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の発生を防止できるため、光センサーの感知精度は低下しない。
【0008】
また、前記投光用偏光部は、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面(以下、「断面視」と記す)において、凹凸構造が所定の間隔をもって第1の方向に延在する第1の凹凸構造部と、前記第1の凹凸構造部の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第1の導電体と、を有し、前記受光用偏光部は、凹凸構造が所定の間隔をもって前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2の凹凸構造部と、前記第2の凹凸構造部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第2の導電体と、を有することができる。
【0009】
このような構成により、各凹凸構造部のいずれか一方側面に導電体が偏在することとなるため、各偏光部の偏光分離特性を向上させることができる。
【0010】
また、前記凹凸構造は、樹脂からなる基材によって構成することができる。
【0011】
このような構成により、ロールプロセスが可能になるため、ワイヤグリッド偏光子の生産性を高めることができる。また、光漏れなどの問題を生じさせることなくワイヤグリッド偏光子を湾曲させて用いることが可能となる他、軽量化も可能となる。
【0012】
また、前記凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、前記凹凸構造は概略正弦波状の形状であり、前記凹凸構造の凸部の頂部を通り前記凸部の立設方向に沿う凸部軸に対して、前記導電体の頂部を通り前記導電体の立設方向に沿う導電体軸を異ならせることができる。
【0013】
このような構成により、導電体と凹凸構造の接触面積を増やすことができるため、導電体の剥離を防止でき、また、高さが高い導電体を形成し易くなるため、ワイヤグリッド偏光子の偏光分離特性を向上できる。
【0014】
また、前記基材表面の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部を形成する前記凹凸構造と連なる凹凸構造がない領域とすることができる。
【0015】
このような構成により、投光用偏光部と受光用偏光部の境界部と連なる凹凸構造が存在しないこととなり、塗料などを境界部の基材表面に塗布する際に、塗料等が毛細管現象で凹凸構造に流れ込み、投光用偏光部または受光用偏光部を侵す可能性を低くすることができる。
【0016】
また、前記凹凸構造は、同一面上に前記凹凸構造に対応する凹凸構造が設けられた領域を有する鋳型から作製される金属スタンパを用いて、同一工程で形成することができる。
【0017】
このような構成により、ワイヤグリッド偏光子の凹凸構造を同一工程で形成することができるため、ワイヤグリッド偏光子の生産性を高めることができる。また、凹凸構造の延在方向を金属スタンパの作製時に定めることができるため、基材表面への凹凸構造作製時における各偏光部の凹凸構造の延在方向のばらつきを抑制でき、製造される製品の性能ばらつきを低減することができる。
【0018】
また、前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版を接合されることで、作製することができる。
【0019】
このような構成により、鋳型の同一面内に凹凸構造の延在方向が異なる複数の領域を作製することが容易となり、最終製品に即したワイヤグリッド偏光子のカスタマイズ、鋳型の製作期間の短縮が可能となる。
【0020】
また、前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版の凹凸構造面を低粘着性粘着シートに貼合した後、複数の版を接合することで、作製することができる。
【0021】
このような構成により、凹凸構造を有した複数の版の固定が容易となり、鋳型の作製時における作業性を向上できる。
【0022】
また、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部において、前記第1の導電体の延在方向のばらつき、または前記第2の導電体の延在方向のばらつきを、±3度以内とすることができる。
【0023】
このような構成により、偏光性能を高め、光センサーの感知精度を高めることができる。
【0024】
また、前記第1の導電体および前記第2の導電体は、接着性樹脂で包埋することができる。
【0025】
このような構成により、導電体が接着性物質で包埋されることになるため、ワイヤグリッド偏光子の損傷を防止することができる。
【0026】
また、前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を低透過率とすることができる。
【0027】
このような構成により、境界部を容易に視認できるようになるため、光センサーの投光器と投光用偏光部との位置合わせや、光センサーの受光器と受光用偏光部との位置合わせが容易となる。また、光センサー装置内部の投光光路と受光光路とを分離することが容易となり、装置内部で投射光が直接受光器に入射しないようにすることができる。
【0028】
また、前記基材に基板を備えることができる。基板を備えることで、ワイヤグリッド偏光子の強度を向上させることができる。
【0029】
また、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向と、前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向とは直交関係であり、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向または前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向が、前記基板のMD方向と45度で交わるようにすることができる。
【0030】
このような構成により、製造工程において、蒸着源を基板のMD方向に置くことが可能となるため、生産効率を高めることができる。
【0031】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、所定方向に延在する導電体を備えた偏光部の一部を所定の形状に切り出して、切り出された部材と前記切り出された部材に対応する開口部を有する切り出し元の部材とに分離し、前記切り出された部材が有する導電体の延在方向と前記切り出し元の部材が有する導電体の延在方向とが所定の角度をなすように前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材を回転させて前記切り出された部材を前記切り出し元の部材の開口部に固定することにより形成された前記投光用偏光部および前記受光用偏光部を備えたことを特徴とする。
【0032】
このような構成により、投光用偏光部および受光用偏光部を透過する透過光の偏光方向を正確に制御可能である。さらに、回転させた後に切り出された部材を開口部に固定するため、寸法合わせ等が容易である。
【0033】
また、前記切り出された部材はn回対称の形状を有し、前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材の回転角度は360°/nであっても良い。
【0034】
本発明の光センサーは、上記のワイヤグリッド偏光子を用いることを特徴とする。
【0035】
このような配設により、光センサーの製造時にひとつずつ組み込んでいた偏光子を、一度に同時に組み込むことが可能となり、工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材表面に透過軸方向が異なる投光用偏光部および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の発生を防止できる。
【0036】
また、基材表面に前記投光用偏光部及び前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体とが設けられたワイヤグリッド偏光子の、前記基材表面の逆の面側に、光センサーの投光器と受光器を配設することが好ましい。
【0037】
このような配設により、ワイヤグリッド偏光子の基材、および、基板を有する場合には基板の面内位相差が変化したとしても、光センサーは、優れた感知精度を維持できる。
【発明の効果】
【0038】
投光偏光子および受光用偏光子を備えた光センサーの製造時に前記ワイヤグリッド偏光子を用いることで、投光用偏光子および受光用偏光子が同時に組み込まれることになるため、これらを個別に組み込む場合と比較して、偏光子の組み込み工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材上に透過軸方向が異なる投光用および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の問題の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す模式図である。
【図4】実施の形態1に係る金属スタンパの作製工程を説明する断面模式図である。
【図5】実施の形態1に係る光センサーの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態1に係る光センサーが物体を検出する様子を示す模式図である。
【図7】光センサーの構成を示す模式図である。
【図8】光センサー用の偏光子の作製工程を示す模式図である。
【図9】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の一構成を示す模式図である。
【図10】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の別の構成を示す模式図である。
【図11】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の作製方法について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(実施の形態1)
発明の実施の形態について、以下具体的に説明する。
<ワイヤグリッド偏光子>
本実施の形態のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に投光器が発する投射光が入光するように、且つ前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部に入光し透過する測定光を受光するように受光器を配設した光センサーに用いられる。このワイヤグリッド偏光子は、同一基材表面に透過軸方向が互いに異なる投光用偏光部と受光用偏光部とが作り込まれてなることを特徴とする光センサー用ワイヤグリッド偏光子である。このワイヤグリッド偏光子は、独立した投光用偏光部と受光用偏光部をそれぞれ1つ以上有している。
【0041】
図1に、基材13表面に投光用偏光部11と受光用偏光部12とを有するワイヤグリッド偏光子1の例を示す。図1において、投光用偏光部11における横方向(X方向)に延びる線と、受光用偏光部12における縦方向(Y方向)に延びる線は、細線状の導電体を示しており、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11または受光用偏光部12において、複数の細線状の導電体が、互いに略平行に(ストライプ状に)設けられていることを示している。このような構造の導電体を有するワイヤグリッド偏光子1は、導電体が延在する方向に垂直な方向(透過軸方向)の偏光を透過させることができる。ワイヤグリッド偏光子1は、導電体の延在方向が、投光用偏光部11と受光用偏光部12で90°異なっており、偏光方向が90°異なる二種類の偏光を透過させることができるため、二種類の偏光を利用する光センサーに用いることが可能である。
【0042】
図2は、投光用偏光部11の部分断面模式図である。なお、図2に示す断面は、導電体が延在する方向に垂直な方向についての断面である。ワイヤグリッド偏光子1において、投光用偏光部11は、基材13に形成された凹凸構造22と、凹凸構造22上に形成された導電体21とを有している。投光用偏光部11では、凹凸構造22(第1の凹凸構造)が所定の間隔(ピッチ)をもって所定の方向(第1の方向、図2では紙面奥行き方向、X方向)に延在している。また、導電体21が、凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられている。つまり、投光用偏光部11において、導電体21は、凹凸構造22が延在する方向と平行な方向に延在している。
【0043】
受光用偏光部12についても、導電体21と凹凸構造22の延在方向を除き、投光用偏光部11と同様である。受光用偏光部12では、凹凸構造22(第2の凹凸構造)が所定の間隔(ピッチ)をもって所定の方向(第2の方向、Y方向)に延在している。また、導電体21は、凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられており、凹凸構造22が延在する方向と平行な方向に延在している。
【0044】
このように、二つの異なる方向(第1の方向と第2の方向)に導電体21を延在させることで、投光部を透過する偏光と、受光部を透過する偏光とを異ならせることができるため、光センサーの感知精度の向上が可能となる。また、光センサーの多くが投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係としていることから、第1の方向と第2の方向を概略直交関係とすることが好ましい。また、光センサーの光学設計に応じた投光用偏光部11および受光用偏光部12の配置の自由度は高いため、同一基材上に投光用偏光部11と受光用偏光部12をそれぞれ1つ以上有することができる。例えば、図3のように、投光用偏光部11を4箇所、受光用偏光部12を1箇所とすることができる。
【0045】
また、同一の偏光部(例えば、投光用偏光部11または受光用偏光部12)内の任意の3点における導電体の延在方向は±3度以内であることが、偏光性能と光センサーに用いた場合の感知精度の観点から、好ましい。
【0046】
投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14は、難透過性の導電体や難透光性樹脂で被覆することにより、所定の波長の光について低透過率とすることができる。これにより、その境界を容易に視認できるようになるため、投光器と投光用偏光部11との位置合わせや、受光器と受光用偏光部12との位置合わせが容易となる。また、光センサー装置内部の投光光路と受光光路とを分離することが容易となり、装置内部で投射光が直接受光器に入射しないようにすることができる。なお、低透過率とは、所定の波長の光の透過率が、投光用偏光部11および受光用偏光部12の所定の波長における光の透過率よりも低いことを意味する。好ましい自然光入光時の透過率は25%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14を前記難透過性の導電体や難透光性樹脂で被覆する際は、境界部14の基材13表面には、投光用偏光部11または受光用偏光部12を形成する凹凸構造と連なる凹凸構造が存在しないことが好ましい。これにより、難透光性樹脂を含む塗料を境界部の基材表面に塗布する際に、前記塗料が毛細管現象で凹凸構造に流れ込み、投光用偏光部11または受光用偏光部12を侵す可能性を低くすることができる。
【0047】
なお、導電体21は、基材13に設けられた凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に選択的に設けることが、光学特性上、好ましい。また、凹凸構造22の凸部の頂部より導電体21の少なくとも一部が上方に存在する構成であることが好ましい。導電体21を、凸部の頂部より上方に伸びるよう設けることで、偏光分離特性は向上し、光の損失を減らすことができる。また、凹凸構造22が延在する方向に垂直な面(図2に示される断面、以下、「断面視」と記す)において、凸部の頂部より上方の導電体21の側面は、鉛直方向に対して傾斜していて、その形状は先細りし、三角形に似た尖鋭形状であることが好ましい。断面視における凸部の頂部より上方の導電体21の形状を尖鋭形状とすることで、接着性樹脂をワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設け、前記導電体を接着性樹脂で包埋した場合の平行透過率の低下を抑制することができる。また、凹凸構造22は、断面視において、概略正弦波状であることが好ましい(図2参照)。これにより、斜め蒸着法と等方性エッチングで、断面視における凸部の頂部より上方の導電体21の形状を尖鋭形状としながら、基材13に設けられた凹凸構造22の凸部の最高部から高さ方向に1/3下った位置の凸部の厚みに対する導電体の厚み(基材13の主面と平行方向の厚み)を、同じかそれ以上することができる。また、これにより、ワイヤグリッド偏光子1の導電体21を接着性樹脂で包埋した場合の平行透過率および偏光度の低下を抑制することができる。また、凸部の頂部を通り凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体21の頂部を通り立設方向に沿う導電体軸は異なる(重畳しない)構成であることが好ましい。これにより、導電体21と凹凸構造22の接触面積を増やすことができるため、導電体21の剥離を防止できる。また、導電体21の厚み(高さ)を十分に大きくすることができるため、ワイヤグリッド偏光子1の偏光分離特性を向上できる。
【0048】
<基材>
凹凸構造22を構成する基材13としては、例えば、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を用いることができる。中でも樹脂材料を用いることにより、ロールプロセスが可能になる、ワイヤグリッド偏光子1にフレキシブル性(屈曲性)を持たせることができる、等のメリットがあるため好ましい。基材13に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が挙げられる。また、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂と、ガラスなどの無機材料や、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂などを組み合わせて用いることができ、または、これらの材料を単独で用いることができる。また、凹凸構造22を構成する基材13と導電体21の密着性を向上させるための薄膜を、凹凸構造22の表面に備えても構わない。
【0049】
また、基材13として、導電体21が形成される表面にあらかじめ凹凸構造22が設けられた基材13を用いることができる。また、上述したように、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面視において、基材13でなる凹凸構造22は概略正弦波状であることが好ましい。また、基材13は、目的とする波長領域において実質的に透明であればよい。なお、所定の方向に延在するとは、凹凸構造22が所定の方向に実質的に延在していればよく、凹凸構造22の凹凸の各々が厳密に平行に延在している必要はない。
【0050】
表面に凹凸構造22を有する基材13の製造方法は特に限定されない。例えば、本出願人の出願による特許第4147247号に係る製造方法を用いることができる。当該製造方法では、干渉露光法を用いて作製した凹凸構造を有する金属スタンパを用いて、凹凸構造を熱可塑性樹脂に熱転写し、凹凸構造を付与した熱可塑性樹脂の凹凸構造の延在方向と平行な方向に自由端一軸延伸加工を施す。その結果、前記熱可塑性樹脂に転写された凹凸構造のピッチが縮小され、微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)が得られる。続いて、得られた微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)から、電解メッキ法などを用いて、微細な凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。この金属スタンパにより、基材の表面に微細な凹凸構造を転写、形成することで、凹凸構造を有する基材を得ることが可能となる。
【0051】
この場合には、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)を、所定の凹凸構造の延在方向で所定の大きさに切り出し、接合することで、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有した樹脂版を作製できる。このため、電解メッキ法などを用いて、同一スタンパ上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有する金属スタンパを作製できる。
【0052】
具体的には、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)を配置できる平坦な型枠板31に、被着体との親和性に優れ、剥離で被着体を汚染しない低粘着・易剥離性の粘着層を両面に有する低粘着性粘着シート32を貼合する(図4A参照)。そして、所定の凹凸構造の延在方向で所定の大きさに切り出した複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33a、33bを所定の配置に配して、型枠板上に気泡等が混入しないように、低粘着性粘着シート32に凹凸構造面を貼合する(図4B参照)。ここでは、図1に示すワイヤグリッド偏光子1用の金属スタンパを作製するために、樹脂版33aと樹脂版33bの凹凸構造が概略直交するように樹脂版33a、33bを配置する。つまり、樹脂版33aの凹凸構造が、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の凹凸構造に相当し、樹脂版33bの凹凸構造が、ワイヤグリッド偏光子1の受光用偏光部12の凹凸構造に相当する。その後、必要に応じて、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33aおよび33bの間隙に接合用樹脂34を充填し、所定の方法で硬化処理を行い、接合する。さらに、粘着層を有する板35を樹脂版(延伸済み)33aおよび33bの凹凸構造を有する面の逆側に貼合する(図4C参照)。低粘着性粘着シート32に微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33a、33bの凹凸構造面を貼合することで、接合用樹脂34が毛細管現象で樹脂版33a、33bの凹凸構造を侵す可能性を低くすることができる。接合用樹脂34としては特に制限は無いが、硬化型を用いる場合には、樹脂版33a、33bの端部の変形や配置位置の変化を防止するため、硬化前後での体積収縮率を10%以下とすることが好ましく、より好ましい体積収縮率は5%以下である。また粘度は、1000cps(温度25度)以上であれば、接合時に接合用樹脂34が凹凸構造を侵す可能性を低くすることができる。硬化型の接合用樹脂34としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の光硬化型樹脂などがあり、必要に応じて、窒素雰囲気下で硬化処理(光照射)を実施することが好ましい。接合用樹脂34を硬化させた後、前記型枠板31上の粘着シート32から剥離することで、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有した樹脂版が作製でき(図4D参照)、電解メッキ法などを用いて、同一スタンパ上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有する金属スタンパを作製できる。
【0053】
その他、半導体製造のフォトリソグラフィを応用して、シリコン系基板等に微細な凹凸構造を形成し、用いる方法がある。この方法では、例えば、微細な凹凸構造が形成されたシリコン系基板を、先述した方法と同様の手法を用いて接合し、接合したシリコン系基板を鋳型として微細な凹凸構造を表面に有する樹脂版を作製する。そして、樹脂版から、電解メッキ法などを用いて、微細な凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。
【0054】
<導電体>
導電体21は、凹凸構造22を有する基材13の表面に設けられている。上述したように、表面に凹凸構造22が形成された基材13上に導電体21を設ける場合には、凸部の一方側面に接し、上部が凸部の頂部より上方に伸びるように設けることが好ましい。
【0055】
導電体21は、所定の方向に延在する凹凸構造22の凸部と概略平行に所定の間隔(周期)をとって直線状に形成されるが、この直線状の導電体21の周期が可視光の波長よりも小さい場合、導電体21に対して平行に振動する偏光成分を反射し、垂直な偏光成分は透過する偏光素子となる。導電体21としては、アルミニウム、銀、銅、白金、金またはこれらのいずれかを成分とする合金を使用することができ、斜めスパッタリング法や斜め蒸着法により形成することができる。特に、アルミニウムまたは銀を用いて導電体21を形成することにより、可視域光の吸収損失を小さくすることができるため、好ましい。
【0056】
一般にワイヤグリッド構造を有する偏光子は、導電体21の間隔(ピッチ)が小さくなるほど、広い波長帯域で良好な偏光特性を示す。導電体21が空気(屈折率1.0)と接し、接着性物質で包埋されない場合には、導電体21のピッチを対象とする光の波長の1/4〜1/3とすることで、実用上の十分な偏光特性を示すことになるが、導電体を接着性樹脂で包埋する場合、接着性樹脂の屈折率の影響を考慮して、対象とする光の波長の1/5〜1/4のピッチとすることがさらに好ましい。
【0057】
光センサーで用いられる光の波長は、多くの場合、600nm以上である。したがって、ピッチが150nm以下であるワイヤグリッド偏光子であれば、導電体の損傷を防止するために接着性樹脂で包埋したとしても、光学特性面で実用上の問題は生じない。しかし、高偏光特性を有し、且つ高耐損傷性のワイヤグリッド偏光子を必要とする場合には、ピッチを小さくするだけではなく、断面視における導電体の形状を最適化することが有効となる。
【0058】
接着性樹脂で包埋する場合の好ましい導電体の形状としては、前述したように、断面視において、基材表面の凹凸構造の凸部の最高部から高さ方向に1/3下った位置の凸部の厚みに対し、導電体の厚みを、同じかそれ以上とすることである。また、前記基材表面の凹凸構造の凸部の頂部より上方の導電体の側面が、基材表面の垂直方向に対して傾斜していて、その形状は先細りし、三角形に似た尖鋭形状とすることが好ましい。このような形状の導電体は、断面視において、基材表面の凹凸構造を正弦波形状とし、後述する斜め蒸着法と等方性エッチングを用いることで、達成が容易となる。このような導電体の形状を有したワイヤグリッド偏光子を作製することにより、導電体を接着性樹脂で包埋したとしても、600nm以上の波長の光に関する偏光度の低下を抑制すると共に600nm未満の短波長の光に関する偏光度の低下を抑制でき、汎用性に富んだ光センサー用ワイヤグリッド偏光子とすることができる。
【0059】
<導電体形成方法>
導電体21の形成方法としては、生産性や光学特性等を考慮し、基材13(凹凸構造22)の垂直方向に対して傾斜した方向から蒸着を行う方法(斜め蒸着法)を用いる。斜め蒸着法とは、基材13表面に垂直な方向に対して所定の角度から金属粒子が入射するように金属を蒸着、積層させていく方法である。入射角度は、凹凸構造22の凸部と作製する導電体21の断面形状から好ましい範囲が決まり、一般には、5°〜45°が好ましく、より好ましくは5°〜35°である。さらに、蒸着中に積層した金属の射影効果を考慮しながら、入射角度を徐々に減少または増加させることは、導電体21の高さなど断面形状を制御する上で好適である。なお、基材13表面が湾曲している場合には、基材13表面の法線方向に対して傾斜した方向から蒸着を行うこととしてもよい。
【0060】
具体的には、特定方向に所定のピッチをもって略平行に延在する凹凸構造を表面に有した基材13表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5°以上45°未満となる方向に蒸着源の中心を設け、前記凹凸構造上に導電体21を形成する。さらに好ましくは、前記基材13表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5°以上35°未満、且つ基材13表面上の凹凸構造22の延在方向に対して40°以上90°以下の角度方向に蒸着源の中心を設けることである。これにより、導電体21を、基材13上に有する凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に、選択的に設けることが可能となる。なお、基材13を搬送しながら蒸着する場合には、ある瞬間における被蒸着領域の中心と蒸着源の中心が先述した条件となるように蒸着を行うようにしてもよい。
【0061】
また、投光用偏光部11と受光用偏光部12の凹凸構造22の延在方向から蒸着することを避けるようにすれば導電体21は形成可能である。光センサーの多くは、投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係とするため、先述した蒸着源の位置条件を考慮すると、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の凹凸構造22の延在方向と受光用偏光部12の凹凸構造22の延在方向が、基材13のMD方向と概略45度で交わるようにすることが好ましい。これにより、蒸着源を基材13のMD方向に置くことが可能となるため、生産効率の向上が可能となる。
【0062】
先述した斜め蒸着法を用いた場合、基材表面の凹凸構造22の凸部と導電体21の延在方向は等しくなる。導電体21の形状を達成するための金属蒸着量は、凹凸構造22の凸部の形状によって決まるが、一般には、平均蒸着厚みは50nm〜200nm程度である。ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、金属蒸着量の目安として使用する。
【0063】
また、光学特性の観点から、不要な導電体21はエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、凹凸構造22を構成する基材13、誘電体層等に悪影響を及ぼさず、導電体21部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定は無いが、生産性の観点および導電体21の形状制御の観点から、アルカリ性の水溶液に浸漬させる方法が好ましい。
【0064】
<誘電体>
本実施の形態で示すワイヤグリッド偏光子1において、基材13を構成する材料と導電体21との密着性向上のため、両者の間に両者と密着性が高い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、二酸化珪素などの珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体またはその複合物(誘電体単体に他の元素、単体または化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体またはそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であればよい。誘電体材料の積層方法には特に限定は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。
【0065】
<基板>
本発明のワイヤグリッド偏光子1は、凹凸構造22を有する基材13を保持する基板を用いることも可能である。基板としては、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を用いることができるが、ロールプロセスによりワイヤグリッド偏光子1の製造が可能となる平板状の樹脂材料を用いることが好ましい。なお、基板はワイヤグリッド偏光子1において必須の構成ではない。例えば、基材13のみを用いてワイヤグリッド偏光子1を構成することも可能である。
【0066】
樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などのUV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が挙げられる。また、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂と、ガラスなどの無機基板、熱可塑性樹脂等を組み合わせたり、これらの材料を単独で用いたりしてもよい。
【0067】
偏光度低下を避けるため、所定の波長における基板の面内位相差値は低くすることが好ましく、例えば可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmにおける面内位相差値を30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、15nm以下である。また、ワイヤグリッド偏光子1が与える偏光の偏光度の面内ムラ発生を防止するため、基板面内の任意の2点における位相差値管理が必要であり、例えば可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmの面内位相差値の差が10nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは位相差値の差が5nm以下である。このような特性を有する基板としては、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などがあり、これらの樹脂材料を用いることが好ましい。
【0068】
<接着性樹脂>
本発明のワイヤグリッド偏光子1は、その導電体21の形状から、接着性樹脂を前記ワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設け、前記導電体21を接着性樹脂で包埋した場合であっても、平行透過率および偏光度の低下幅を小さくできる。このため、接着性樹脂をワイヤグリッド偏光子1の導電体構造面に設けることも可能である。また、その逆の面に接着性樹脂を設けることも可能である。接着性樹脂を設けることにより、他光学部材との貼合が可能となる。また、ワイヤグリッド偏光子1の基板に樹脂材料(光学用途のフィルム等に用いられる材料)を用いる場合に、高温高湿度環境下での製品信頼性を向上させることができる。また、接着性樹脂を前記ワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設けることによって、導電体21は接着性物質で包埋されるため、接着性樹脂を損傷防止のための保護層とすることが可能となる。
【0069】
面内位相差値が制御された光学用途のフィルムの遅相軸方向は、一般的に、基板として用いるフィルムのMD方向あるいはTD方向と概略一致している。例えば、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係とした場合、投光用偏光部11の凹凸構造の延在方向と受光用偏光部12の凹凸構造の延在方向は基板のMD方向と概略45度で交わるようにすることが好ましいが、このような構成にすると、光学用途のフィルムを基板として用い、ロールプロセスで作製されたワイヤグリッド偏光子の各偏光部の透過軸方向は、基板の遅相軸方向に対して斜めとなり、一致しない。光学用途のフィルムは、高温高湿度環境下で長期保管すると、フィルムの配向状態が変化し、その結果、面内位相差値が変化することがあり、例えば、TAC樹脂からなるフィルムの中には、面内位相差値が増大するものがある。本発明のワイヤグリッド偏光子1は、基板の遅相軸方向と投光用偏光部11および受光用偏光部12の凹凸構造の延在方向、つまり、透過軸方向とが概略一致していないため、前記面内位相差値の増大の影響を受け易く、偏光度が低下することがある。フィルムの配向状態の変化を小さくし、ワイヤグリッド偏光子1の各偏光部の偏光度低下を防止するためには、TAC樹脂からなるフィルムを基板として用いたワイヤグリッド偏光子1を、さらに固定材、例えば、ガラス板に接着性樹脂で接着することが有効である。これにより、製品信頼性を向上させることが可能となる。
【0070】
接着性樹脂としては、例えば、UV照射により硬化するUV硬化型樹脂や粘着剤をシート状にした粘着シートを用いることができる。特に導電体構造面に接着性樹脂を備え、導電体21を包埋する場合には、前記接着性樹脂に酸を極力含まない材料を用いることが好ましい。酸を極力含まない材料でワイヤグリッド偏光子1の導電体21を被覆することにより、接着性樹脂に含まれる酸に起因した導電体21の劣化を生じることなく、導電体21の傷付き防止と先述した各偏光部の偏光度低下の抑制が可能となる。また、前記接着性樹脂を基材表面あるいは基板表面に備えた場合には、接着性樹脂に含まれる酸に起因した基材13あるいは基板の劣化を生じることなく、先述した各偏光部の偏光度低下の抑制が可能となる。
【0071】
また、粘着シートを用いることで、高温高湿度環境下で長期保管した場合、ワイヤグリッド偏光子1の基板等の膨張および収縮を緩和することができ、基板等の面内位相差値の変化を抑制できるため、好ましい。粘着シートとしては、ガラスに対する粘着力が1.5N/25mm以上、好ましくは5.0N/25mm以上のものを用いるのが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂からなる粘着シートは、光学特性や接着力、コストなどの観点から好ましい。
【0072】
なお、ワイヤグリッド偏光子1は、可視光、近赤外光、そして赤外光の領域において、光学特性を損なうことなく用いることができるため、該領域を用いる回帰反射型光電センサーや生体認証装置といった光センサーの用途において好ましく用いられる。ただし、上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。また、上記実施の形態における材質、数量などについては一例であり、適宜変更することができる。その他、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。
【0073】
<光センサー>
光センサーにおいて、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11に投光器が発する投射光が入光するように投光器を配設し、且つ前記ワイヤグリッド偏光子1の受光用偏光部12に入光し透過する測定光を受光するように受光器を配設する。投光器としては、例えば、LEDが用いられ、受光器としては、例えば、フォトレジスタが用いられる。
【0074】
光センサーとしては、例えば、回帰反射型光電センサー101がある(図5参照)。回帰反射型光電センサー101は、投光部102および受光部103が隣接していて、それぞれの偏光子は概略同一平面上(図5においては、回帰反射型光電センサー101の筐体の一つの面上)にあり、その透過軸は概略直交の関係となっている。回帰反射型光電センサー101にワイヤグリッド偏光子1を用いる場合、投光部102に投光用偏光部11が配置され、受光部103に受光用偏光部12が配置される。
【0075】
回帰反射型光電センサー101は、その使用方法の一例として、製造ラインでの製品搬送状況等の検出に用いられる。この場合には、反射によって偏光状態を変化させることができる回帰反射板104を用いる。また、回帰反射板104は、回帰反射型光電センサー101の投光部102からの光を、反射させて受光部103に入射させることができるように配置する。投光部102から発せられる偏光が回帰反射板104で反射された場合、入射光に対する反射光の偏光状態が変化するため、反射光は受光用偏光子を透過でき、受光器が受ける光の強度は大きくなる(図6A参照)。一方で、投光部102から発せられる偏光が、センサーおよび回帰反射板の間を通過する物体105に当たると、受光器が受ける光の強度は小さくなる(図6B参照)。このため、反射光の強度によって、回帰反射型光電センサー101および回帰反射板104の間を通過する物体の有無を検出することが可能となる。
【0076】
このように、図1などに示すような本実施の形態のワイヤグリッド偏光子1を光センサーに用いることで、偏光子光センサーの製造時にひとつずつ組み込んでいた偏光子を、一度に同時に組み込むことが可能となり、工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、ワイヤグリッド偏光子1は、投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14を低透過率とすることができるため、投射光と入射光の分離性が良好となり、センサーの検知精度の向上および誤感知の防止が可能となる。
【0077】
また、同一基材13表面に透過軸方向が異なる投光用偏光部11および受光用偏光部12を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の問題の発生を防止できる。
【0078】
なお、ワイヤグリッド偏光子1の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体が設けられた基材表面とは逆の面(裏面)側に、投光器と受光器を配設することが好ましい。このような配設とすることで、ワイヤグリッド偏光子の基板の面内位相差が変化したとしても、光センサーは、優れた感知精度を維持できる。
【0079】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる態様のワイヤグリッド偏光子について説明する。なお、本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる部分についてのみ説明し、共通する部分については省略する。図9および図10は、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3の構成を示す模式図である。図11は、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2の作製方法について示す図である。
【0080】
図9に示すように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2は、横方向(X方向)に延びる細線状の導電体を含む投光用偏光部11と、縦方向(Y方向)に延びる細線状の導電体を含む受光用偏光部12とを含んで構成されている。投光用偏光部11の外形は略正方形状になっており、投光用偏光部11の中央付近には、略正方形状の外形を有する受光用偏光部12が配置されている。また、図10に示すように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子3は、横方向(X方向)に延びる細線状の導電体を含む投光用偏光部11と、縦方向(Y方向)に延びる細線状の導電体を含む受光用偏光部12とを含んで構成されている。投光用偏光部11の外形は略正方形状になっており、投光用偏光部11の中央付近には、ひし形状の外形を有する受光用偏光部12が配置されている。なお、設計に応じ、ワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3は基板などに固定しても良い。投光用偏光部11及び受光用偏光部12の構成は、ワイヤグリッド偏光子1と同様である。
【0081】
次に、ワイヤグリッド偏光子2の作製方法について説明する。図11Aに示すように、まず、偏光部41を備えたワイヤグリッド偏光子を作製する。偏光部41を備えたワイヤグリッド偏光子は、凹凸構造を構成する基材の表面に凹凸構造の延在方向に延在する細線状の導電体を形成することで作製できる。次に、図11Bに示すように、後に受光用偏光部12となる偏光部41の一部Pを正方形状に切り出す。これにより、正方形状の開口部Qを有する投光用偏光部11が形成される。ここでは、偏光部41の中央付近の一部Pを切り出しているが、切り出す部分は投光用偏光部11の一部であれば特に限られない。その後、図11Cに示すように、切り出した部材(偏光部41の一部P)を90°回転させて、投光用偏光部11の開口部Qに固定する。これにより、所定方向に導電体が延在する投光用偏光部11と、切り出した部材により構成され所定方向に対して90°の角度で導電体が延在する受光用偏光部12と、を備えたワイヤグリッド偏光子2が得られる。なお、投光用偏光部11と受光用偏光部12との関係は入れ替えても良い。つまり、切り出した部材を投光用偏光部11として機能させても良い。また、切り出した部材(偏光部41の一部P)ではなく切り出し元の部材を回転させても良い。なお、ワイヤグリッド偏光子3の作製方法は、ワイヤグリッド偏光子2の作製方法と同様である。
【0082】
このように、投光用偏光部11から切り出された部材を用いて受光用偏光部12を構成する場合、切り出し(図11B参照)を高精度に行うことで回転(図11C参照)に係る角度を高精度に制御できるため、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に制御可能である。つまり、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に直交させることが可能であり、光センサーに使用する際のコントラスト性能を高めることができる。さらに、回転させた後に切り出された部材を開口領域に固定するため、寸法合わせ等が容易である。
【0083】
なお、ここでは、投光用偏光部11の一部Pを正方形状に切り出しているが、切り出される形状はこれに限られない。投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に直交させるためには、少なくとも、切り出される形状は4回対称であれば良い。一般に、n回対称(n回回転対称)とは、ある形状を中心の周りに360°/nの角度で回転させると自らと重なることをいう。つまり、4回対称とは、ある形状を中心の周りに360°/4=90°の角度で回転させると自らと重なることをいう。
【0084】
また、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とは、直交(90°)以外で制御しても良い。投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とのなす角度は、切り出した部材の回転角度で制御できる。ここで、回転角度を360°/n(nは正整数)とする場合、切り出される形状はn回対称とすれば良い。n回対称の形状としては、例えば、正n角形を挙げることができる。切り出される形状をこのように制御することで、回転させる角度を正確に制御できるため、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とのなす角度を正確に制御することができる。
【0085】
また、切り出される領域は複数個所であっても良い。さらに、切り出された複数の部材の回転角度は、用途に応じて異ならせても良い。例えば、ある領域においては3回対称の形状で切り出して120°回転させ、別の領域においては5回対称の形状で切り出して72°回転させるといったことも可能である。
【0086】
また、本実施の形態において示す製造方法は、上述したように透過型のワイヤグリッド偏光子の製造に用いられる他、一般的な反射型偏光板である樹脂積層型の偏光板、ガラス基材を用いたワイヤグリッド偏光子などにおいて偏光方向を制御する場合にも用いることが可能である。これらの場合にも、偏光方向の正確な制御が実現できる。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3は単一のワイヤグリッド偏光子を用いて作製できるため、偏光方向を実現するために特殊な鋳型を用いる必要がない。これにより、製造コストを抑制することができる。なお、本実施の形態の構成は、他の実施の形態の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0088】
(実施例1)
本実施例では、図1などに示されるワイヤグリッド偏光子において、凹凸構造を正弦波状とした場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0089】
<UV硬化型樹脂を用いた転写フィルムの作製>
まず、ワイヤグリッド偏光子に用いられる、凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムを作製する。凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムの作製には、Ni製金型を用いた。断面視において、概略正弦波状の凹凸構造を有する複数の樹脂版を接合して、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに直交となる領域を有した樹脂版(鋳型)を作製し、樹脂版(鋳型)から電解メッキ法でNi製金型を作製した。当該Ni製金型を金型Aとする(図4等)。
【0090】
基板としては、厚み80μmのトリアセチルセルロース系樹脂からなるTACフィルム(TD80UL−H:富士写真フィルム社製)を用いた。TACフィルムの波長550nmにおける面内位相差値は3.3nmで、遅相軸はMD方向と概略一致していた。なお、面内位相差値の測定機器として、平行ニコル法を利用した偏光解析装置である王子計測機器製KOBRA−WRを用いた。測定光の波長を550nmとし、入光角度が0度の場合の位相差値を面内位相差値とした。
【0091】
上述のTACフィルムにアクリル系UV硬化型樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、金型Aの凹凸構造の延在方向とTACフィルムのMD方向のなす角度が45度となるように、TACフィルム上に金型Aを重畳させた。中心波長が365nmであるUVランプを操作して、TACフィルム側から1000mJ/cm2のUV照射を行い、金型Aの凹凸構造をUV硬化型樹脂上に転写した。その後、TACフィルムを金型から剥離し、縦300mm、横200mmの凹凸構造がUV硬化型樹脂からなる基材表面に転写された転写フィルムAを得た。転写フィルムAは、凹凸構造の延在方向とTACフィルムのMD方向のなす角度が45度であった。転写フィルムAの断面視を確認したところ、凹凸構造のピッチ幅は145nmで、概略正弦波状であった。
【0092】
<スパッタリング法を用いた誘電体層の形成>
次に、転写フィルムAの凹凸構造を有する基材表面に、スパッタリング法により、誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置の条件は、Arガス圧力が0.2Pa、スパッタリングパワーが770W/cm2、被覆速度が0.1nm/sであった。この条件によって、転写フィルムA上の誘電体層の厚みが平膜換算で3nmとなるように、誘電体層を成膜した。
【0093】
<斜め蒸着法を用いた導電体の形成>
次に、誘電体層を成膜した転写フィルムAの凹凸構造を有する基材表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)膜を成膜した。アルミニウム膜の成膜条件は、温度は常温、真空度が2.0×10−3Pa、蒸着速度が40nm/sであった。アルミニウム膜の厚みを測定するため、表面が平滑なガラス基板を転写フィルムAと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のアルミニウム膜の厚みをアルミニウム膜の平均厚みとした。基板のフィルム幅方向(TD方向)と垂直に交わる平面内において、基板の垂直方向に対し、蒸着源が30度の角度方向に存在するように転写フィルムAを調整し、また、基板に垂直な平面であって、転写フィルムAの凹凸構造の延在方向と45度の角度をなす平面内に蒸着源が存在するように転写フィルムAを調整して、アルミニウム膜の平均厚みが120nmとなるよう、Alを蒸着した。なお、ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みを指し、蒸着量の目安として使用している。
【0094】
<不要なアルミニウム膜の除去>
次に、不要なアルミニウム膜の除去を目的として、アルミニウム膜を蒸着した転写フィルムAを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で70秒間浸漬させた。その後すぐに水洗し、フィルムを乾燥させた。
【0095】
<光学特性の評価>
転写フィルムAを元に作製したワイヤグリッド偏光子Aの任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。平行透過率および直交透過率は、日本分光株式会社製VAP−7070を用いて測定した。測定装置は光源近傍に測定用偏光子を備えるものとし、ワイヤグリッド偏光子Aの平行透過率および直交透過率を測定する際は、ワイヤグリッド偏光子Aの基材上の導電体構造面と逆の面(基板面)から入光するように配置した。
【0096】
波長λにおける偏光度P’(λ)は、導電体に対して平行に振動する波長λの光の透過率をImin、直交方向に振動する波長λの光の透過率をImaxとし、以下の式から求めた。
P’(λ)=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %
【0097】
表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0098】
なお、ワイヤグリッド偏光子Aの導電体の延在方向は、基板のMD方向に対して45度の角度を有しており、同一の偏光部における導電体の延在方向のばらつきは、±0.6度以内であった。ワイヤグリッド偏光子Aは、任意の偏光部の断面視において、導電体が基材上の凹凸構造の凸部の一方側面に偏在していた。また、凹凸構造の凸部の頂部より導電体の一部が上方に存在しており、導電体の凸部の頂部より上方の側面は、鉛直方向に対して傾斜し、その形状は三角形に似た尖鋭形状であった。凸部側面にある導電体の、基材に対して平行方向の厚みは30nm以上であった。また、基材上の凹凸構造の凸部の頂部を通り、凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体の頂部を通り、立設方向に沿う導電体軸は異なっていた。
【0099】
(実施例2)
本実施例では、図1などに示されるワイヤグリッド偏光子において、凹凸構造を矩形状とした場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0100】
<UV硬化型樹脂を用いた転写フィルムの作製>
まず、ワイヤグリッド偏光子に用いられる、凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムを作製する。凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムの作製には、Ni製金型を用いた。断面視において、概略矩形状の凹凸構造を有する複数の樹脂版を接合して、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに直交となる領域を有した樹脂版(鋳型)を作製し、前記樹脂版(鋳型)から電解メッキ法でNi製金型を作製した。当該Ni製金型を金型Bとする。実施例1における金型Aとの相違は、凹凸構造が概略矩形状である点のみである。
【0101】
実施例1と同様の工程によって、凹凸構造がUV硬化型樹脂からなる基材表面に転写された転写フィルムBを得た。なお、転写フィルムBは、金型Aに代えて金型Bを用いた点を除き、実施例1と同様の工程で作製された。転写フィルムBの断面視を確認したところ、凹凸構造のピッチ幅は145nmで、概略矩形状であった。
【0102】
<スパッタリング法を用いた誘電体層の形成>
その後、実施例1と同様の工程によって、転写フィルムBの凹凸構造を有する基材表面に、スパッタリング法により、誘電体層として二酸化珪素を成膜した。
【0103】
<斜め蒸着法を用いた導電体の形成>
次に、誘電体層を成膜した転写フィルムBの凹凸構造を有する基材表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)膜を成膜した。工程の詳細は、実施例1と同様である。
【0104】
<不要なアルミニウム膜の除去>
次に、不要なアルミニウム膜の除去を目的として、アルミニウム膜を蒸着した転写フィルムBを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で70秒間浸漬させた。その後すぐに水洗し、フィルムを乾燥させた。
【0105】
<光学特性の評価>
転写フィルムBを元に作製したワイヤグリッド偏光子Bの任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。測定の詳細は、実施例1と同様である。
【0106】
表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0107】
なお、ワイヤグリッド偏光子Bの導電体の延在方向は、基板のMD方向に対して45度の角度を有しており、同一の偏光部における導電体の延在方向のばらつきは、±0.7度以内であった。ワイヤグリッド偏光子Bは、任意の偏光部の断面視において、導電体が基材上の凹凸構造の凸部の一方側面に偏在していた。また、凹凸構造の凸部の頂部より導電体の一部が上方に存在していたが、凸部の頂部より上方の側面は、鉛直方向に対して概略平行であり、その形状は概略矩形あるいは概略台形形状であった。また、基材上の凹凸構造の凸部の頂部を通り、凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体の頂部を通り、立設方向に沿う導電体軸は異なっていた。
【0108】
(実施例3)
本実施例では、ワイヤグリッド偏光子の導電体を、接着性樹脂で包埋した場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0109】
まず、両面に剥離フィルムを有するアクリル系粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、ワイヤグリッド偏光子Aの基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合した。その後、導電体が包埋されたワイヤグリッド偏光子Aの粘着シートの剥離フィルムを剥離し、平板状のガラス板(テンパックス、厚み1.1mm)に貼合した後、室温で24時間保管した。これを貼合体1とする。また、同様にして、ワイヤグリッド偏光子Bを用いた貼合体2を作製した。
【0110】
<接着強度の測定>
貼合体1において、アクリル系粘着シートのガラスとの接着強度を測定した。粘着シートの接着強度は、試験板をSUS鋼板からガラス板へと変更した以外は、JIS−Z−0237に則って測定した。両面に剥離フィルムを有する粘着シートを幅25mmに切り出し、その一方の面をPETフィルムに貼合して作製した試験片を、試験板であるガラス板に貼合した。試験板に貼合し、20分間室温放置後、引張試験機(剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件)を用いてガラスと粘着剤の接着力を測定した。このようにして測定されたアクリル系粘着シートのガラスとの接着強度は8.6N/25mmであった。
【0111】
<光学特性の評価>
貼合体1、貼合体2の任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0112】
貼合体1および貼合体2は、ワイヤグリッド偏光子Aおよびワイヤグリッド偏光子Bの基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋したものである。粘着シート貼合前後での視感度補正された単体透過率および波長550nmにおける偏光度の変化は、ワイヤグリッド偏光子Bに比較してワイヤグリッド偏光子Aの方が小さく、透過率および偏光度の低下は小さいものであった。これは、断面視において、ワイヤグリッド偏光子Aの基材の凹凸構造が概略正弦波状であり、凹凸構造の凸部の頂部より上方の導電体形状は尖鋭形状で、また、凸部側面にある導電体の基材に対して平行方向の厚みが30nm以上と十分に厚いものであったためである。
【0113】
(実施例4)
本実施例では、ワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合した場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0114】
まず、両面に剥離フィルムを有するアクリル系粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、ワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面と逆の面(基板面)にアクリル系粘着シートを貼合した。その後、基板面に前記粘着シートを備えた前記ワイヤグリッド偏光子Aの粘着シートの剥離フィルムを剥離し、平板状のガラス板(テンパックス、厚み1.1mm)に貼合した後、室温で24時間保管した。これを貼合体3とする。なお、アクリル系粘着シートは、実施例3と同様とした。
【0115】
ワイヤグリッド偏光子Aおよび貼合体3を温度85度、相対湿度85%とした恒温恒湿槽(型式:μ―2002 いすゞ製作所社製)に入れ、恒温恒湿試験を600時間行った。表2に、ワイヤグリッド偏光子A、貼合体3の任意の偏光部の偏光度の変化を示す。
【0116】
先述条件にて、恒温恒湿試験を600時間行ったところ、上記のように、ワイヤグリッド偏光子Aは偏光度の低下が生じたが、ガラス板に基板面を貼合した貼合体3は変化が見られなかった。また、ワイヤグリッド偏光子Aの外観を観察すると、恒温恒湿試験以前には見られなかった外観異常(ワイヤグリッド偏光子Aのカールやシワの発生)を確認したが、貼合体3には顕著な外観変化は見られなかった。これは、ワイヤグリッド偏光子Aの基板に用いたTAC樹脂からなるフィルムが、高温高湿度環境下での長期保管により、フィルムの配向状態が変化して、面内位相差が変化したためである。貼合体3は、粘着シートによって、TAC樹脂からなるフィルムを基板としたワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合したものであり、高温高湿度環境下での長期保管による前記フィルムの配向状態の変化を小さくすることができたため、貼合体3の任意の偏光部の偏光度低下を防止することができた。
【表1】
【表2】
【0117】
以上の実施例から、凹凸構造が正弦波状のワイヤグリッド偏光子では、凹凸構造が矩形状のワイヤグリッド偏光子と比較して、高い偏光度が得られることが分かる。また、凹凸構造が正弦波状のワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋した貼合体は、凹凸構造が矩形状のワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋した貼合体と比較して、透過率および偏光度の低下を小さくできることが分かる。また、ワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合することで、高温高湿度環境下での長期保管によるフィルムの配向状態の変化を小さくすることができ、偏光度低下を防止できることが分かる。また、これらを用いて作製された光センサーは、長期間に渡って製品の性能変化が少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、例えば、二つの異なる偏光を利用する光センサーに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、2、3 ワイヤグリッド偏光子
11 投光用偏光部
12 受光用偏光部
13 基材
21 導電体
22 凹凸構造
101 回帰反射型光電センサー
102 投光部
103 受光部
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過軸方向が互いに異なる投光用偏光部と受光用偏光部を有する光センサー用のワイヤグリッド偏光子に関する。また、これを用いた光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
回帰反射型光電センサーや生体認証装置の中には、検出精度を向上させるため、投光器に投光用偏光子を、受光器に受光用偏光子を有しているものがある。偏光子を有した光センサーの多くは、装置の小型化や感知精度向上の観点から投光器と受光器を近接させており、例えば、図7に示す光センサー201のように、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光子202および受光用偏光子203を、装置設計の観点から、概略同一平面上(図7においては、光センサー201の筐体の一つの面上)となるように配設している。このような光センサーを製造する際には、透過軸方向が異なる投光用偏光子202および受光用偏光子203を一つずつ組み込むこととなるが、偏光子の偏光軸方向を通常光で判別することは難しく、誤組み込みを防止するためには、投光用偏光子202と受光用偏光子203の形状を変える等の工夫が必要となる。これにより、部品点数は増加し、コスト上昇の要因となる。
【0003】
このような課題の解決方法として、例えば特許文献1に開示される技術が提案されている。この技術の概略は次の通りである。まず、投光用偏光子301の一対角線301aおよび受光用偏光子302の一対角線301bが一直線上に位置し、それらの対向する角が連結部303で結合された2つの四角形となるように偏光子304を裁断加工する(図8A参照)。次に、連結部303で結合された2つの四角形のうち一方の四角形を、連結部303を中心として面方向に90度回転することにより、透過軸方向が互いに異なる投光用偏光子301および受光用偏光子302とする(図8B参照)。そして、このようにして作製された偏光子を光センサーに組み込む。しかし、この技術では、偏光子の形状設計に制限を与えることとなる。また、厚みのある偏光子を折り曲げて光センサーの筐体に組み込むこととなるため、作業効率が低下する。また、偏光子を、連結部303を中心として回転させる(折り曲げる)ため、連結部303周辺が湾曲・隆起し、投射光が投光用偏光子301を通過せずに出光する、または、受光用偏光子302を透過せずに測定光が受光器に入光してしまうといった、光センサーの感知精度の低下といった問題が生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−220590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術では光センサーの感知精度を低下させることなく、光センサーの生産性を向上させることは難しかった。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、光学特性を確保しつつ、光センサーの生産性を向上させることが可能な光センサー用のワイヤグリッド偏光子を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部と前記受光用偏光部とが作り込まれていることを特徴とする。
【0007】
このような構成により、投光用偏光部および受光用偏光部が同一基材表面に作り込まれているため、光センサーへの組み込み工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材表面に透過軸方向が異なる投光用および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の発生を防止できるため、光センサーの感知精度は低下しない。
【0008】
また、前記投光用偏光部は、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面(以下、「断面視」と記す)において、凹凸構造が所定の間隔をもって第1の方向に延在する第1の凹凸構造部と、前記第1の凹凸構造部の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第1の導電体と、を有し、前記受光用偏光部は、凹凸構造が所定の間隔をもって前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2の凹凸構造部と、前記第2の凹凸構造部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第2の導電体と、を有することができる。
【0009】
このような構成により、各凹凸構造部のいずれか一方側面に導電体が偏在することとなるため、各偏光部の偏光分離特性を向上させることができる。
【0010】
また、前記凹凸構造は、樹脂からなる基材によって構成することができる。
【0011】
このような構成により、ロールプロセスが可能になるため、ワイヤグリッド偏光子の生産性を高めることができる。また、光漏れなどの問題を生じさせることなくワイヤグリッド偏光子を湾曲させて用いることが可能となる他、軽量化も可能となる。
【0012】
また、前記凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、前記凹凸構造は概略正弦波状の形状であり、前記凹凸構造の凸部の頂部を通り前記凸部の立設方向に沿う凸部軸に対して、前記導電体の頂部を通り前記導電体の立設方向に沿う導電体軸を異ならせることができる。
【0013】
このような構成により、導電体と凹凸構造の接触面積を増やすことができるため、導電体の剥離を防止でき、また、高さが高い導電体を形成し易くなるため、ワイヤグリッド偏光子の偏光分離特性を向上できる。
【0014】
また、前記基材表面の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部を形成する前記凹凸構造と連なる凹凸構造がない領域とすることができる。
【0015】
このような構成により、投光用偏光部と受光用偏光部の境界部と連なる凹凸構造が存在しないこととなり、塗料などを境界部の基材表面に塗布する際に、塗料等が毛細管現象で凹凸構造に流れ込み、投光用偏光部または受光用偏光部を侵す可能性を低くすることができる。
【0016】
また、前記凹凸構造は、同一面上に前記凹凸構造に対応する凹凸構造が設けられた領域を有する鋳型から作製される金属スタンパを用いて、同一工程で形成することができる。
【0017】
このような構成により、ワイヤグリッド偏光子の凹凸構造を同一工程で形成することができるため、ワイヤグリッド偏光子の生産性を高めることができる。また、凹凸構造の延在方向を金属スタンパの作製時に定めることができるため、基材表面への凹凸構造作製時における各偏光部の凹凸構造の延在方向のばらつきを抑制でき、製造される製品の性能ばらつきを低減することができる。
【0018】
また、前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版を接合されることで、作製することができる。
【0019】
このような構成により、鋳型の同一面内に凹凸構造の延在方向が異なる複数の領域を作製することが容易となり、最終製品に即したワイヤグリッド偏光子のカスタマイズ、鋳型の製作期間の短縮が可能となる。
【0020】
また、前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版の凹凸構造面を低粘着性粘着シートに貼合した後、複数の版を接合することで、作製することができる。
【0021】
このような構成により、凹凸構造を有した複数の版の固定が容易となり、鋳型の作製時における作業性を向上できる。
【0022】
また、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部において、前記第1の導電体の延在方向のばらつき、または前記第2の導電体の延在方向のばらつきを、±3度以内とすることができる。
【0023】
このような構成により、偏光性能を高め、光センサーの感知精度を高めることができる。
【0024】
また、前記第1の導電体および前記第2の導電体は、接着性樹脂で包埋することができる。
【0025】
このような構成により、導電体が接着性物質で包埋されることになるため、ワイヤグリッド偏光子の損傷を防止することができる。
【0026】
また、前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を低透過率とすることができる。
【0027】
このような構成により、境界部を容易に視認できるようになるため、光センサーの投光器と投光用偏光部との位置合わせや、光センサーの受光器と受光用偏光部との位置合わせが容易となる。また、光センサー装置内部の投光光路と受光光路とを分離することが容易となり、装置内部で投射光が直接受光器に入射しないようにすることができる。
【0028】
また、前記基材に基板を備えることができる。基板を備えることで、ワイヤグリッド偏光子の強度を向上させることができる。
【0029】
また、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向と、前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向とは直交関係であり、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向または前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向が、前記基板のMD方向と45度で交わるようにすることができる。
【0030】
このような構成により、製造工程において、蒸着源を基板のMD方向に置くことが可能となるため、生産効率を高めることができる。
【0031】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、所定方向に延在する導電体を備えた偏光部の一部を所定の形状に切り出して、切り出された部材と前記切り出された部材に対応する開口部を有する切り出し元の部材とに分離し、前記切り出された部材が有する導電体の延在方向と前記切り出し元の部材が有する導電体の延在方向とが所定の角度をなすように前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材を回転させて前記切り出された部材を前記切り出し元の部材の開口部に固定することにより形成された前記投光用偏光部および前記受光用偏光部を備えたことを特徴とする。
【0032】
このような構成により、投光用偏光部および受光用偏光部を透過する透過光の偏光方向を正確に制御可能である。さらに、回転させた後に切り出された部材を開口部に固定するため、寸法合わせ等が容易である。
【0033】
また、前記切り出された部材はn回対称の形状を有し、前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材の回転角度は360°/nであっても良い。
【0034】
本発明の光センサーは、上記のワイヤグリッド偏光子を用いることを特徴とする。
【0035】
このような配設により、光センサーの製造時にひとつずつ組み込んでいた偏光子を、一度に同時に組み込むことが可能となり、工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材表面に透過軸方向が異なる投光用偏光部および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の発生を防止できる。
【0036】
また、基材表面に前記投光用偏光部及び前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体とが設けられたワイヤグリッド偏光子の、前記基材表面の逆の面側に、光センサーの投光器と受光器を配設することが好ましい。
【0037】
このような配設により、ワイヤグリッド偏光子の基材、および、基板を有する場合には基板の面内位相差が変化したとしても、光センサーは、優れた感知精度を維持できる。
【発明の効果】
【0038】
投光偏光子および受光用偏光子を備えた光センサーの製造時に前記ワイヤグリッド偏光子を用いることで、投光用偏光子および受光用偏光子が同時に組み込まれることになるため、これらを個別に組み込む場合と比較して、偏光子の組み込み工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、同一基材上に透過軸方向が異なる投光用および受光用偏光部を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の問題の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係るワイヤグリッド偏光子の構成を示す模式図である。
【図4】実施の形態1に係る金属スタンパの作製工程を説明する断面模式図である。
【図5】実施の形態1に係る光センサーの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態1に係る光センサーが物体を検出する様子を示す模式図である。
【図7】光センサーの構成を示す模式図である。
【図8】光センサー用の偏光子の作製工程を示す模式図である。
【図9】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の一構成を示す模式図である。
【図10】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の別の構成を示す模式図である。
【図11】実施の形態2に係るワイヤグリッド偏光子の作製方法について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(実施の形態1)
発明の実施の形態について、以下具体的に説明する。
<ワイヤグリッド偏光子>
本実施の形態のワイヤグリッド偏光子は、ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に投光器が発する投射光が入光するように、且つ前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部に入光し透過する測定光を受光するように受光器を配設した光センサーに用いられる。このワイヤグリッド偏光子は、同一基材表面に透過軸方向が互いに異なる投光用偏光部と受光用偏光部とが作り込まれてなることを特徴とする光センサー用ワイヤグリッド偏光子である。このワイヤグリッド偏光子は、独立した投光用偏光部と受光用偏光部をそれぞれ1つ以上有している。
【0041】
図1に、基材13表面に投光用偏光部11と受光用偏光部12とを有するワイヤグリッド偏光子1の例を示す。図1において、投光用偏光部11における横方向(X方向)に延びる線と、受光用偏光部12における縦方向(Y方向)に延びる線は、細線状の導電体を示しており、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11または受光用偏光部12において、複数の細線状の導電体が、互いに略平行に(ストライプ状に)設けられていることを示している。このような構造の導電体を有するワイヤグリッド偏光子1は、導電体が延在する方向に垂直な方向(透過軸方向)の偏光を透過させることができる。ワイヤグリッド偏光子1は、導電体の延在方向が、投光用偏光部11と受光用偏光部12で90°異なっており、偏光方向が90°異なる二種類の偏光を透過させることができるため、二種類の偏光を利用する光センサーに用いることが可能である。
【0042】
図2は、投光用偏光部11の部分断面模式図である。なお、図2に示す断面は、導電体が延在する方向に垂直な方向についての断面である。ワイヤグリッド偏光子1において、投光用偏光部11は、基材13に形成された凹凸構造22と、凹凸構造22上に形成された導電体21とを有している。投光用偏光部11では、凹凸構造22(第1の凹凸構造)が所定の間隔(ピッチ)をもって所定の方向(第1の方向、図2では紙面奥行き方向、X方向)に延在している。また、導電体21が、凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられている。つまり、投光用偏光部11において、導電体21は、凹凸構造22が延在する方向と平行な方向に延在している。
【0043】
受光用偏光部12についても、導電体21と凹凸構造22の延在方向を除き、投光用偏光部11と同様である。受光用偏光部12では、凹凸構造22(第2の凹凸構造)が所定の間隔(ピッチ)をもって所定の方向(第2の方向、Y方向)に延在している。また、導電体21は、凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられており、凹凸構造22が延在する方向と平行な方向に延在している。
【0044】
このように、二つの異なる方向(第1の方向と第2の方向)に導電体21を延在させることで、投光部を透過する偏光と、受光部を透過する偏光とを異ならせることができるため、光センサーの感知精度の向上が可能となる。また、光センサーの多くが投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係としていることから、第1の方向と第2の方向を概略直交関係とすることが好ましい。また、光センサーの光学設計に応じた投光用偏光部11および受光用偏光部12の配置の自由度は高いため、同一基材上に投光用偏光部11と受光用偏光部12をそれぞれ1つ以上有することができる。例えば、図3のように、投光用偏光部11を4箇所、受光用偏光部12を1箇所とすることができる。
【0045】
また、同一の偏光部(例えば、投光用偏光部11または受光用偏光部12)内の任意の3点における導電体の延在方向は±3度以内であることが、偏光性能と光センサーに用いた場合の感知精度の観点から、好ましい。
【0046】
投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14は、難透過性の導電体や難透光性樹脂で被覆することにより、所定の波長の光について低透過率とすることができる。これにより、その境界を容易に視認できるようになるため、投光器と投光用偏光部11との位置合わせや、受光器と受光用偏光部12との位置合わせが容易となる。また、光センサー装置内部の投光光路と受光光路とを分離することが容易となり、装置内部で投射光が直接受光器に入射しないようにすることができる。なお、低透過率とは、所定の波長の光の透過率が、投光用偏光部11および受光用偏光部12の所定の波長における光の透過率よりも低いことを意味する。好ましい自然光入光時の透過率は25%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14を前記難透過性の導電体や難透光性樹脂で被覆する際は、境界部14の基材13表面には、投光用偏光部11または受光用偏光部12を形成する凹凸構造と連なる凹凸構造が存在しないことが好ましい。これにより、難透光性樹脂を含む塗料を境界部の基材表面に塗布する際に、前記塗料が毛細管現象で凹凸構造に流れ込み、投光用偏光部11または受光用偏光部12を侵す可能性を低くすることができる。
【0047】
なお、導電体21は、基材13に設けられた凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に選択的に設けることが、光学特性上、好ましい。また、凹凸構造22の凸部の頂部より導電体21の少なくとも一部が上方に存在する構成であることが好ましい。導電体21を、凸部の頂部より上方に伸びるよう設けることで、偏光分離特性は向上し、光の損失を減らすことができる。また、凹凸構造22が延在する方向に垂直な面(図2に示される断面、以下、「断面視」と記す)において、凸部の頂部より上方の導電体21の側面は、鉛直方向に対して傾斜していて、その形状は先細りし、三角形に似た尖鋭形状であることが好ましい。断面視における凸部の頂部より上方の導電体21の形状を尖鋭形状とすることで、接着性樹脂をワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設け、前記導電体を接着性樹脂で包埋した場合の平行透過率の低下を抑制することができる。また、凹凸構造22は、断面視において、概略正弦波状であることが好ましい(図2参照)。これにより、斜め蒸着法と等方性エッチングで、断面視における凸部の頂部より上方の導電体21の形状を尖鋭形状としながら、基材13に設けられた凹凸構造22の凸部の最高部から高さ方向に1/3下った位置の凸部の厚みに対する導電体の厚み(基材13の主面と平行方向の厚み)を、同じかそれ以上することができる。また、これにより、ワイヤグリッド偏光子1の導電体21を接着性樹脂で包埋した場合の平行透過率および偏光度の低下を抑制することができる。また、凸部の頂部を通り凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体21の頂部を通り立設方向に沿う導電体軸は異なる(重畳しない)構成であることが好ましい。これにより、導電体21と凹凸構造22の接触面積を増やすことができるため、導電体21の剥離を防止できる。また、導電体21の厚み(高さ)を十分に大きくすることができるため、ワイヤグリッド偏光子1の偏光分離特性を向上できる。
【0048】
<基材>
凹凸構造22を構成する基材13としては、例えば、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を用いることができる。中でも樹脂材料を用いることにより、ロールプロセスが可能になる、ワイヤグリッド偏光子1にフレキシブル性(屈曲性)を持たせることができる、等のメリットがあるため好ましい。基材13に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が挙げられる。また、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂と、ガラスなどの無機材料や、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂などを組み合わせて用いることができ、または、これらの材料を単独で用いることができる。また、凹凸構造22を構成する基材13と導電体21の密着性を向上させるための薄膜を、凹凸構造22の表面に備えても構わない。
【0049】
また、基材13として、導電体21が形成される表面にあらかじめ凹凸構造22が設けられた基材13を用いることができる。また、上述したように、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面視において、基材13でなる凹凸構造22は概略正弦波状であることが好ましい。また、基材13は、目的とする波長領域において実質的に透明であればよい。なお、所定の方向に延在するとは、凹凸構造22が所定の方向に実質的に延在していればよく、凹凸構造22の凹凸の各々が厳密に平行に延在している必要はない。
【0050】
表面に凹凸構造22を有する基材13の製造方法は特に限定されない。例えば、本出願人の出願による特許第4147247号に係る製造方法を用いることができる。当該製造方法では、干渉露光法を用いて作製した凹凸構造を有する金属スタンパを用いて、凹凸構造を熱可塑性樹脂に熱転写し、凹凸構造を付与した熱可塑性樹脂の凹凸構造の延在方向と平行な方向に自由端一軸延伸加工を施す。その結果、前記熱可塑性樹脂に転写された凹凸構造のピッチが縮小され、微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)が得られる。続いて、得られた微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)から、電解メッキ法などを用いて、微細な凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。この金属スタンパにより、基材の表面に微細な凹凸構造を転写、形成することで、凹凸構造を有する基材を得ることが可能となる。
【0051】
この場合には、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)を、所定の凹凸構造の延在方向で所定の大きさに切り出し、接合することで、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有した樹脂版を作製できる。このため、電解メッキ法などを用いて、同一スタンパ上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有する金属スタンパを作製できる。
【0052】
具体的には、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)を配置できる平坦な型枠板31に、被着体との親和性に優れ、剥離で被着体を汚染しない低粘着・易剥離性の粘着層を両面に有する低粘着性粘着シート32を貼合する(図4A参照)。そして、所定の凹凸構造の延在方向で所定の大きさに切り出した複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33a、33bを所定の配置に配して、型枠板上に気泡等が混入しないように、低粘着性粘着シート32に凹凸構造面を貼合する(図4B参照)。ここでは、図1に示すワイヤグリッド偏光子1用の金属スタンパを作製するために、樹脂版33aと樹脂版33bの凹凸構造が概略直交するように樹脂版33a、33bを配置する。つまり、樹脂版33aの凹凸構造が、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の凹凸構造に相当し、樹脂版33bの凹凸構造が、ワイヤグリッド偏光子1の受光用偏光部12の凹凸構造に相当する。その後、必要に応じて、複数の微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33aおよび33bの間隙に接合用樹脂34を充填し、所定の方法で硬化処理を行い、接合する。さらに、粘着層を有する板35を樹脂版(延伸済み)33aおよび33bの凹凸構造を有する面の逆側に貼合する(図4C参照)。低粘着性粘着シート32に微細な凹凸構造を有する樹脂版(延伸済み)33a、33bの凹凸構造面を貼合することで、接合用樹脂34が毛細管現象で樹脂版33a、33bの凹凸構造を侵す可能性を低くすることができる。接合用樹脂34としては特に制限は無いが、硬化型を用いる場合には、樹脂版33a、33bの端部の変形や配置位置の変化を防止するため、硬化前後での体積収縮率を10%以下とすることが好ましく、より好ましい体積収縮率は5%以下である。また粘度は、1000cps(温度25度)以上であれば、接合時に接合用樹脂34が凹凸構造を侵す可能性を低くすることができる。硬化型の接合用樹脂34としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の光硬化型樹脂などがあり、必要に応じて、窒素雰囲気下で硬化処理(光照射)を実施することが好ましい。接合用樹脂34を硬化させた後、前記型枠板31上の粘着シート32から剥離することで、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有した樹脂版が作製でき(図4D参照)、電解メッキ法などを用いて、同一スタンパ上に凹凸構造の延在方向が互いに異なる領域を有する金属スタンパを作製できる。
【0053】
その他、半導体製造のフォトリソグラフィを応用して、シリコン系基板等に微細な凹凸構造を形成し、用いる方法がある。この方法では、例えば、微細な凹凸構造が形成されたシリコン系基板を、先述した方法と同様の手法を用いて接合し、接合したシリコン系基板を鋳型として微細な凹凸構造を表面に有する樹脂版を作製する。そして、樹脂版から、電解メッキ法などを用いて、微細な凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。
【0054】
<導電体>
導電体21は、凹凸構造22を有する基材13の表面に設けられている。上述したように、表面に凹凸構造22が形成された基材13上に導電体21を設ける場合には、凸部の一方側面に接し、上部が凸部の頂部より上方に伸びるように設けることが好ましい。
【0055】
導電体21は、所定の方向に延在する凹凸構造22の凸部と概略平行に所定の間隔(周期)をとって直線状に形成されるが、この直線状の導電体21の周期が可視光の波長よりも小さい場合、導電体21に対して平行に振動する偏光成分を反射し、垂直な偏光成分は透過する偏光素子となる。導電体21としては、アルミニウム、銀、銅、白金、金またはこれらのいずれかを成分とする合金を使用することができ、斜めスパッタリング法や斜め蒸着法により形成することができる。特に、アルミニウムまたは銀を用いて導電体21を形成することにより、可視域光の吸収損失を小さくすることができるため、好ましい。
【0056】
一般にワイヤグリッド構造を有する偏光子は、導電体21の間隔(ピッチ)が小さくなるほど、広い波長帯域で良好な偏光特性を示す。導電体21が空気(屈折率1.0)と接し、接着性物質で包埋されない場合には、導電体21のピッチを対象とする光の波長の1/4〜1/3とすることで、実用上の十分な偏光特性を示すことになるが、導電体を接着性樹脂で包埋する場合、接着性樹脂の屈折率の影響を考慮して、対象とする光の波長の1/5〜1/4のピッチとすることがさらに好ましい。
【0057】
光センサーで用いられる光の波長は、多くの場合、600nm以上である。したがって、ピッチが150nm以下であるワイヤグリッド偏光子であれば、導電体の損傷を防止するために接着性樹脂で包埋したとしても、光学特性面で実用上の問題は生じない。しかし、高偏光特性を有し、且つ高耐損傷性のワイヤグリッド偏光子を必要とする場合には、ピッチを小さくするだけではなく、断面視における導電体の形状を最適化することが有効となる。
【0058】
接着性樹脂で包埋する場合の好ましい導電体の形状としては、前述したように、断面視において、基材表面の凹凸構造の凸部の最高部から高さ方向に1/3下った位置の凸部の厚みに対し、導電体の厚みを、同じかそれ以上とすることである。また、前記基材表面の凹凸構造の凸部の頂部より上方の導電体の側面が、基材表面の垂直方向に対して傾斜していて、その形状は先細りし、三角形に似た尖鋭形状とすることが好ましい。このような形状の導電体は、断面視において、基材表面の凹凸構造を正弦波形状とし、後述する斜め蒸着法と等方性エッチングを用いることで、達成が容易となる。このような導電体の形状を有したワイヤグリッド偏光子を作製することにより、導電体を接着性樹脂で包埋したとしても、600nm以上の波長の光に関する偏光度の低下を抑制すると共に600nm未満の短波長の光に関する偏光度の低下を抑制でき、汎用性に富んだ光センサー用ワイヤグリッド偏光子とすることができる。
【0059】
<導電体形成方法>
導電体21の形成方法としては、生産性や光学特性等を考慮し、基材13(凹凸構造22)の垂直方向に対して傾斜した方向から蒸着を行う方法(斜め蒸着法)を用いる。斜め蒸着法とは、基材13表面に垂直な方向に対して所定の角度から金属粒子が入射するように金属を蒸着、積層させていく方法である。入射角度は、凹凸構造22の凸部と作製する導電体21の断面形状から好ましい範囲が決まり、一般には、5°〜45°が好ましく、より好ましくは5°〜35°である。さらに、蒸着中に積層した金属の射影効果を考慮しながら、入射角度を徐々に減少または増加させることは、導電体21の高さなど断面形状を制御する上で好適である。なお、基材13表面が湾曲している場合には、基材13表面の法線方向に対して傾斜した方向から蒸着を行うこととしてもよい。
【0060】
具体的には、特定方向に所定のピッチをもって略平行に延在する凹凸構造を表面に有した基材13表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5°以上45°未満となる方向に蒸着源の中心を設け、前記凹凸構造上に導電体21を形成する。さらに好ましくは、前記基材13表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5°以上35°未満、且つ基材13表面上の凹凸構造22の延在方向に対して40°以上90°以下の角度方向に蒸着源の中心を設けることである。これにより、導電体21を、基材13上に有する凹凸構造22の凸部のいずれか一方側面に、選択的に設けることが可能となる。なお、基材13を搬送しながら蒸着する場合には、ある瞬間における被蒸着領域の中心と蒸着源の中心が先述した条件となるように蒸着を行うようにしてもよい。
【0061】
また、投光用偏光部11と受光用偏光部12の凹凸構造22の延在方向から蒸着することを避けるようにすれば導電体21は形成可能である。光センサーの多くは、投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係とするため、先述した蒸着源の位置条件を考慮すると、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の凹凸構造22の延在方向と受光用偏光部12の凹凸構造22の延在方向が、基材13のMD方向と概略45度で交わるようにすることが好ましい。これにより、蒸着源を基材13のMD方向に置くことが可能となるため、生産効率の向上が可能となる。
【0062】
先述した斜め蒸着法を用いた場合、基材表面の凹凸構造22の凸部と導電体21の延在方向は等しくなる。導電体21の形状を達成するための金属蒸着量は、凹凸構造22の凸部の形状によって決まるが、一般には、平均蒸着厚みは50nm〜200nm程度である。ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、金属蒸着量の目安として使用する。
【0063】
また、光学特性の観点から、不要な導電体21はエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、凹凸構造22を構成する基材13、誘電体層等に悪影響を及ぼさず、導電体21部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定は無いが、生産性の観点および導電体21の形状制御の観点から、アルカリ性の水溶液に浸漬させる方法が好ましい。
【0064】
<誘電体>
本実施の形態で示すワイヤグリッド偏光子1において、基材13を構成する材料と導電体21との密着性向上のため、両者の間に両者と密着性が高い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、二酸化珪素などの珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体またはその複合物(誘電体単体に他の元素、単体または化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体またはそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であればよい。誘電体材料の積層方法には特に限定は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。
【0065】
<基板>
本発明のワイヤグリッド偏光子1は、凹凸構造22を有する基材13を保持する基板を用いることも可能である。基板としては、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を用いることができるが、ロールプロセスによりワイヤグリッド偏光子1の製造が可能となる平板状の樹脂材料を用いることが好ましい。なお、基板はワイヤグリッド偏光子1において必須の構成ではない。例えば、基材13のみを用いてワイヤグリッド偏光子1を構成することも可能である。
【0066】
樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などのUV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が挙げられる。また、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂と、ガラスなどの無機基板、熱可塑性樹脂等を組み合わせたり、これらの材料を単独で用いたりしてもよい。
【0067】
偏光度低下を避けるため、所定の波長における基板の面内位相差値は低くすることが好ましく、例えば可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmにおける面内位相差値を30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、15nm以下である。また、ワイヤグリッド偏光子1が与える偏光の偏光度の面内ムラ発生を防止するため、基板面内の任意の2点における位相差値管理が必要であり、例えば可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmの面内位相差値の差が10nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは位相差値の差が5nm以下である。このような特性を有する基板としては、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などがあり、これらの樹脂材料を用いることが好ましい。
【0068】
<接着性樹脂>
本発明のワイヤグリッド偏光子1は、その導電体21の形状から、接着性樹脂を前記ワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設け、前記導電体21を接着性樹脂で包埋した場合であっても、平行透過率および偏光度の低下幅を小さくできる。このため、接着性樹脂をワイヤグリッド偏光子1の導電体構造面に設けることも可能である。また、その逆の面に接着性樹脂を設けることも可能である。接着性樹脂を設けることにより、他光学部材との貼合が可能となる。また、ワイヤグリッド偏光子1の基板に樹脂材料(光学用途のフィルム等に用いられる材料)を用いる場合に、高温高湿度環境下での製品信頼性を向上させることができる。また、接着性樹脂を前記ワイヤグリッド偏光子1の導電体21構造面に設けることによって、導電体21は接着性物質で包埋されるため、接着性樹脂を損傷防止のための保護層とすることが可能となる。
【0069】
面内位相差値が制御された光学用途のフィルムの遅相軸方向は、一般的に、基板として用いるフィルムのMD方向あるいはTD方向と概略一致している。例えば、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11の透過軸方向と受光用偏光部12の透過軸方向を概略直交の関係とした場合、投光用偏光部11の凹凸構造の延在方向と受光用偏光部12の凹凸構造の延在方向は基板のMD方向と概略45度で交わるようにすることが好ましいが、このような構成にすると、光学用途のフィルムを基板として用い、ロールプロセスで作製されたワイヤグリッド偏光子の各偏光部の透過軸方向は、基板の遅相軸方向に対して斜めとなり、一致しない。光学用途のフィルムは、高温高湿度環境下で長期保管すると、フィルムの配向状態が変化し、その結果、面内位相差値が変化することがあり、例えば、TAC樹脂からなるフィルムの中には、面内位相差値が増大するものがある。本発明のワイヤグリッド偏光子1は、基板の遅相軸方向と投光用偏光部11および受光用偏光部12の凹凸構造の延在方向、つまり、透過軸方向とが概略一致していないため、前記面内位相差値の増大の影響を受け易く、偏光度が低下することがある。フィルムの配向状態の変化を小さくし、ワイヤグリッド偏光子1の各偏光部の偏光度低下を防止するためには、TAC樹脂からなるフィルムを基板として用いたワイヤグリッド偏光子1を、さらに固定材、例えば、ガラス板に接着性樹脂で接着することが有効である。これにより、製品信頼性を向上させることが可能となる。
【0070】
接着性樹脂としては、例えば、UV照射により硬化するUV硬化型樹脂や粘着剤をシート状にした粘着シートを用いることができる。特に導電体構造面に接着性樹脂を備え、導電体21を包埋する場合には、前記接着性樹脂に酸を極力含まない材料を用いることが好ましい。酸を極力含まない材料でワイヤグリッド偏光子1の導電体21を被覆することにより、接着性樹脂に含まれる酸に起因した導電体21の劣化を生じることなく、導電体21の傷付き防止と先述した各偏光部の偏光度低下の抑制が可能となる。また、前記接着性樹脂を基材表面あるいは基板表面に備えた場合には、接着性樹脂に含まれる酸に起因した基材13あるいは基板の劣化を生じることなく、先述した各偏光部の偏光度低下の抑制が可能となる。
【0071】
また、粘着シートを用いることで、高温高湿度環境下で長期保管した場合、ワイヤグリッド偏光子1の基板等の膨張および収縮を緩和することができ、基板等の面内位相差値の変化を抑制できるため、好ましい。粘着シートとしては、ガラスに対する粘着力が1.5N/25mm以上、好ましくは5.0N/25mm以上のものを用いるのが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂からなる粘着シートは、光学特性や接着力、コストなどの観点から好ましい。
【0072】
なお、ワイヤグリッド偏光子1は、可視光、近赤外光、そして赤外光の領域において、光学特性を損なうことなく用いることができるため、該領域を用いる回帰反射型光電センサーや生体認証装置といった光センサーの用途において好ましく用いられる。ただし、上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。また、上記実施の形態における材質、数量などについては一例であり、適宜変更することができる。その他、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。
【0073】
<光センサー>
光センサーにおいて、ワイヤグリッド偏光子1の投光用偏光部11に投光器が発する投射光が入光するように投光器を配設し、且つ前記ワイヤグリッド偏光子1の受光用偏光部12に入光し透過する測定光を受光するように受光器を配設する。投光器としては、例えば、LEDが用いられ、受光器としては、例えば、フォトレジスタが用いられる。
【0074】
光センサーとしては、例えば、回帰反射型光電センサー101がある(図5参照)。回帰反射型光電センサー101は、投光部102および受光部103が隣接していて、それぞれの偏光子は概略同一平面上(図5においては、回帰反射型光電センサー101の筐体の一つの面上)にあり、その透過軸は概略直交の関係となっている。回帰反射型光電センサー101にワイヤグリッド偏光子1を用いる場合、投光部102に投光用偏光部11が配置され、受光部103に受光用偏光部12が配置される。
【0075】
回帰反射型光電センサー101は、その使用方法の一例として、製造ラインでの製品搬送状況等の検出に用いられる。この場合には、反射によって偏光状態を変化させることができる回帰反射板104を用いる。また、回帰反射板104は、回帰反射型光電センサー101の投光部102からの光を、反射させて受光部103に入射させることができるように配置する。投光部102から発せられる偏光が回帰反射板104で反射された場合、入射光に対する反射光の偏光状態が変化するため、反射光は受光用偏光子を透過でき、受光器が受ける光の強度は大きくなる(図6A参照)。一方で、投光部102から発せられる偏光が、センサーおよび回帰反射板の間を通過する物体105に当たると、受光器が受ける光の強度は小さくなる(図6B参照)。このため、反射光の強度によって、回帰反射型光電センサー101および回帰反射板104の間を通過する物体の有無を検出することが可能となる。
【0076】
このように、図1などに示すような本実施の形態のワイヤグリッド偏光子1を光センサーに用いることで、偏光子光センサーの製造時にひとつずつ組み込んでいた偏光子を、一度に同時に組み込むことが可能となり、工程の簡略化と誤組み込みの防止が可能となる。また、ワイヤグリッド偏光子1は、投光用偏光部11と受光用偏光部12の境界部14を低透過率とすることができるため、投射光と入射光の分離性が良好となり、センサーの検知精度の向上および誤感知の防止が可能となる。
【0077】
また、同一基材13表面に透過軸方向が異なる投光用偏光部11および受光用偏光部12を備えるため、偏光子を折り曲げる等の加工が不要となり、偏光子の光学特性を確保することが容易になる。これにより、偏光子の光漏れによる誤感知の問題の発生を防止できる。
【0078】
なお、ワイヤグリッド偏光子1の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体が設けられた基材表面とは逆の面(裏面)側に、投光器と受光器を配設することが好ましい。このような配設とすることで、ワイヤグリッド偏光子の基板の面内位相差が変化したとしても、光センサーは、優れた感知精度を維持できる。
【0079】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる態様のワイヤグリッド偏光子について説明する。なお、本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる部分についてのみ説明し、共通する部分については省略する。図9および図10は、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3の構成を示す模式図である。図11は、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2の作製方法について示す図である。
【0080】
図9に示すように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2は、横方向(X方向)に延びる細線状の導電体を含む投光用偏光部11と、縦方向(Y方向)に延びる細線状の導電体を含む受光用偏光部12とを含んで構成されている。投光用偏光部11の外形は略正方形状になっており、投光用偏光部11の中央付近には、略正方形状の外形を有する受光用偏光部12が配置されている。また、図10に示すように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子3は、横方向(X方向)に延びる細線状の導電体を含む投光用偏光部11と、縦方向(Y方向)に延びる細線状の導電体を含む受光用偏光部12とを含んで構成されている。投光用偏光部11の外形は略正方形状になっており、投光用偏光部11の中央付近には、ひし形状の外形を有する受光用偏光部12が配置されている。なお、設計に応じ、ワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3は基板などに固定しても良い。投光用偏光部11及び受光用偏光部12の構成は、ワイヤグリッド偏光子1と同様である。
【0081】
次に、ワイヤグリッド偏光子2の作製方法について説明する。図11Aに示すように、まず、偏光部41を備えたワイヤグリッド偏光子を作製する。偏光部41を備えたワイヤグリッド偏光子は、凹凸構造を構成する基材の表面に凹凸構造の延在方向に延在する細線状の導電体を形成することで作製できる。次に、図11Bに示すように、後に受光用偏光部12となる偏光部41の一部Pを正方形状に切り出す。これにより、正方形状の開口部Qを有する投光用偏光部11が形成される。ここでは、偏光部41の中央付近の一部Pを切り出しているが、切り出す部分は投光用偏光部11の一部であれば特に限られない。その後、図11Cに示すように、切り出した部材(偏光部41の一部P)を90°回転させて、投光用偏光部11の開口部Qに固定する。これにより、所定方向に導電体が延在する投光用偏光部11と、切り出した部材により構成され所定方向に対して90°の角度で導電体が延在する受光用偏光部12と、を備えたワイヤグリッド偏光子2が得られる。なお、投光用偏光部11と受光用偏光部12との関係は入れ替えても良い。つまり、切り出した部材を投光用偏光部11として機能させても良い。また、切り出した部材(偏光部41の一部P)ではなく切り出し元の部材を回転させても良い。なお、ワイヤグリッド偏光子3の作製方法は、ワイヤグリッド偏光子2の作製方法と同様である。
【0082】
このように、投光用偏光部11から切り出された部材を用いて受光用偏光部12を構成する場合、切り出し(図11B参照)を高精度に行うことで回転(図11C参照)に係る角度を高精度に制御できるため、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に制御可能である。つまり、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に直交させることが可能であり、光センサーに使用する際のコントラスト性能を高めることができる。さらに、回転させた後に切り出された部材を開口領域に固定するため、寸法合わせ等が容易である。
【0083】
なお、ここでは、投光用偏光部11の一部Pを正方形状に切り出しているが、切り出される形状はこれに限られない。投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とを正確に直交させるためには、少なくとも、切り出される形状は4回対称であれば良い。一般に、n回対称(n回回転対称)とは、ある形状を中心の周りに360°/nの角度で回転させると自らと重なることをいう。つまり、4回対称とは、ある形状を中心の周りに360°/4=90°の角度で回転させると自らと重なることをいう。
【0084】
また、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とは、直交(90°)以外で制御しても良い。投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とのなす角度は、切り出した部材の回転角度で制御できる。ここで、回転角度を360°/n(nは正整数)とする場合、切り出される形状はn回対称とすれば良い。n回対称の形状としては、例えば、正n角形を挙げることができる。切り出される形状をこのように制御することで、回転させる角度を正確に制御できるため、投光用偏光部11において透過する偏光方向と受光用偏光部12において透過する偏光方向とのなす角度を正確に制御することができる。
【0085】
また、切り出される領域は複数個所であっても良い。さらに、切り出された複数の部材の回転角度は、用途に応じて異ならせても良い。例えば、ある領域においては3回対称の形状で切り出して120°回転させ、別の領域においては5回対称の形状で切り出して72°回転させるといったことも可能である。
【0086】
また、本実施の形態において示す製造方法は、上述したように透過型のワイヤグリッド偏光子の製造に用いられる他、一般的な反射型偏光板である樹脂積層型の偏光板、ガラス基材を用いたワイヤグリッド偏光子などにおいて偏光方向を制御する場合にも用いることが可能である。これらの場合にも、偏光方向の正確な制御が実現できる。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子2およびワイヤグリッド偏光子3は単一のワイヤグリッド偏光子を用いて作製できるため、偏光方向を実現するために特殊な鋳型を用いる必要がない。これにより、製造コストを抑制することができる。なお、本実施の形態の構成は、他の実施の形態の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0088】
(実施例1)
本実施例では、図1などに示されるワイヤグリッド偏光子において、凹凸構造を正弦波状とした場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0089】
<UV硬化型樹脂を用いた転写フィルムの作製>
まず、ワイヤグリッド偏光子に用いられる、凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムを作製する。凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムの作製には、Ni製金型を用いた。断面視において、概略正弦波状の凹凸構造を有する複数の樹脂版を接合して、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに直交となる領域を有した樹脂版(鋳型)を作製し、樹脂版(鋳型)から電解メッキ法でNi製金型を作製した。当該Ni製金型を金型Aとする(図4等)。
【0090】
基板としては、厚み80μmのトリアセチルセルロース系樹脂からなるTACフィルム(TD80UL−H:富士写真フィルム社製)を用いた。TACフィルムの波長550nmにおける面内位相差値は3.3nmで、遅相軸はMD方向と概略一致していた。なお、面内位相差値の測定機器として、平行ニコル法を利用した偏光解析装置である王子計測機器製KOBRA−WRを用いた。測定光の波長を550nmとし、入光角度が0度の場合の位相差値を面内位相差値とした。
【0091】
上述のTACフィルムにアクリル系UV硬化型樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、金型Aの凹凸構造の延在方向とTACフィルムのMD方向のなす角度が45度となるように、TACフィルム上に金型Aを重畳させた。中心波長が365nmであるUVランプを操作して、TACフィルム側から1000mJ/cm2のUV照射を行い、金型Aの凹凸構造をUV硬化型樹脂上に転写した。その後、TACフィルムを金型から剥離し、縦300mm、横200mmの凹凸構造がUV硬化型樹脂からなる基材表面に転写された転写フィルムAを得た。転写フィルムAは、凹凸構造の延在方向とTACフィルムのMD方向のなす角度が45度であった。転写フィルムAの断面視を確認したところ、凹凸構造のピッチ幅は145nmで、概略正弦波状であった。
【0092】
<スパッタリング法を用いた誘電体層の形成>
次に、転写フィルムAの凹凸構造を有する基材表面に、スパッタリング法により、誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置の条件は、Arガス圧力が0.2Pa、スパッタリングパワーが770W/cm2、被覆速度が0.1nm/sであった。この条件によって、転写フィルムA上の誘電体層の厚みが平膜換算で3nmとなるように、誘電体層を成膜した。
【0093】
<斜め蒸着法を用いた導電体の形成>
次に、誘電体層を成膜した転写フィルムAの凹凸構造を有する基材表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)膜を成膜した。アルミニウム膜の成膜条件は、温度は常温、真空度が2.0×10−3Pa、蒸着速度が40nm/sであった。アルミニウム膜の厚みを測定するため、表面が平滑なガラス基板を転写フィルムAと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のアルミニウム膜の厚みをアルミニウム膜の平均厚みとした。基板のフィルム幅方向(TD方向)と垂直に交わる平面内において、基板の垂直方向に対し、蒸着源が30度の角度方向に存在するように転写フィルムAを調整し、また、基板に垂直な平面であって、転写フィルムAの凹凸構造の延在方向と45度の角度をなす平面内に蒸着源が存在するように転写フィルムAを調整して、アルミニウム膜の平均厚みが120nmとなるよう、Alを蒸着した。なお、ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みを指し、蒸着量の目安として使用している。
【0094】
<不要なアルミニウム膜の除去>
次に、不要なアルミニウム膜の除去を目的として、アルミニウム膜を蒸着した転写フィルムAを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で70秒間浸漬させた。その後すぐに水洗し、フィルムを乾燥させた。
【0095】
<光学特性の評価>
転写フィルムAを元に作製したワイヤグリッド偏光子Aの任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。平行透過率および直交透過率は、日本分光株式会社製VAP−7070を用いて測定した。測定装置は光源近傍に測定用偏光子を備えるものとし、ワイヤグリッド偏光子Aの平行透過率および直交透過率を測定する際は、ワイヤグリッド偏光子Aの基材上の導電体構造面と逆の面(基板面)から入光するように配置した。
【0096】
波長λにおける偏光度P’(λ)は、導電体に対して平行に振動する波長λの光の透過率をImin、直交方向に振動する波長λの光の透過率をImaxとし、以下の式から求めた。
P’(λ)=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %
【0097】
表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0098】
なお、ワイヤグリッド偏光子Aの導電体の延在方向は、基板のMD方向に対して45度の角度を有しており、同一の偏光部における導電体の延在方向のばらつきは、±0.6度以内であった。ワイヤグリッド偏光子Aは、任意の偏光部の断面視において、導電体が基材上の凹凸構造の凸部の一方側面に偏在していた。また、凹凸構造の凸部の頂部より導電体の一部が上方に存在しており、導電体の凸部の頂部より上方の側面は、鉛直方向に対して傾斜し、その形状は三角形に似た尖鋭形状であった。凸部側面にある導電体の、基材に対して平行方向の厚みは30nm以上であった。また、基材上の凹凸構造の凸部の頂部を通り、凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体の頂部を通り、立設方向に沿う導電体軸は異なっていた。
【0099】
(実施例2)
本実施例では、図1などに示されるワイヤグリッド偏光子において、凹凸構造を矩形状とした場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0100】
<UV硬化型樹脂を用いた転写フィルムの作製>
まず、ワイヤグリッド偏光子に用いられる、凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムを作製する。凹凸構造の延在方向が異なる領域を有する転写フィルムの作製には、Ni製金型を用いた。断面視において、概略矩形状の凹凸構造を有する複数の樹脂版を接合して、同一版上に凹凸構造の延在方向が互いに直交となる領域を有した樹脂版(鋳型)を作製し、前記樹脂版(鋳型)から電解メッキ法でNi製金型を作製した。当該Ni製金型を金型Bとする。実施例1における金型Aとの相違は、凹凸構造が概略矩形状である点のみである。
【0101】
実施例1と同様の工程によって、凹凸構造がUV硬化型樹脂からなる基材表面に転写された転写フィルムBを得た。なお、転写フィルムBは、金型Aに代えて金型Bを用いた点を除き、実施例1と同様の工程で作製された。転写フィルムBの断面視を確認したところ、凹凸構造のピッチ幅は145nmで、概略矩形状であった。
【0102】
<スパッタリング法を用いた誘電体層の形成>
その後、実施例1と同様の工程によって、転写フィルムBの凹凸構造を有する基材表面に、スパッタリング法により、誘電体層として二酸化珪素を成膜した。
【0103】
<斜め蒸着法を用いた導電体の形成>
次に、誘電体層を成膜した転写フィルムBの凹凸構造を有する基材表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)膜を成膜した。工程の詳細は、実施例1と同様である。
【0104】
<不要なアルミニウム膜の除去>
次に、不要なアルミニウム膜の除去を目的として、アルミニウム膜を蒸着した転写フィルムBを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で70秒間浸漬させた。その後すぐに水洗し、フィルムを乾燥させた。
【0105】
<光学特性の評価>
転写フィルムBを元に作製したワイヤグリッド偏光子Bの任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。測定の詳細は、実施例1と同様である。
【0106】
表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0107】
なお、ワイヤグリッド偏光子Bの導電体の延在方向は、基板のMD方向に対して45度の角度を有しており、同一の偏光部における導電体の延在方向のばらつきは、±0.7度以内であった。ワイヤグリッド偏光子Bは、任意の偏光部の断面視において、導電体が基材上の凹凸構造の凸部の一方側面に偏在していた。また、凹凸構造の凸部の頂部より導電体の一部が上方に存在していたが、凸部の頂部より上方の側面は、鉛直方向に対して概略平行であり、その形状は概略矩形あるいは概略台形形状であった。また、基材上の凹凸構造の凸部の頂部を通り、凸部の立設方向に沿う凸部軸と、導電体の頂部を通り、立設方向に沿う導電体軸は異なっていた。
【0108】
(実施例3)
本実施例では、ワイヤグリッド偏光子の導電体を、接着性樹脂で包埋した場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0109】
まず、両面に剥離フィルムを有するアクリル系粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、ワイヤグリッド偏光子Aの基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合した。その後、導電体が包埋されたワイヤグリッド偏光子Aの粘着シートの剥離フィルムを剥離し、平板状のガラス板(テンパックス、厚み1.1mm)に貼合した後、室温で24時間保管した。これを貼合体1とする。また、同様にして、ワイヤグリッド偏光子Bを用いた貼合体2を作製した。
【0110】
<接着強度の測定>
貼合体1において、アクリル系粘着シートのガラスとの接着強度を測定した。粘着シートの接着強度は、試験板をSUS鋼板からガラス板へと変更した以外は、JIS−Z−0237に則って測定した。両面に剥離フィルムを有する粘着シートを幅25mmに切り出し、その一方の面をPETフィルムに貼合して作製した試験片を、試験板であるガラス板に貼合した。試験板に貼合し、20分間室温放置後、引張試験機(剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件)を用いてガラスと粘着剤の接着力を測定した。このようにして測定されたアクリル系粘着シートのガラスとの接着強度は8.6N/25mmであった。
【0111】
<光学特性の評価>
貼合体1、貼合体2の任意の偏光部の平行透過率および直交透過率を測定し、偏光度の算出を行った。表1に、前記透過率測定方法から算出した単体透過率(視感度補正値)と、波長550nmにおける偏光度を記載する。
【0112】
貼合体1および貼合体2は、ワイヤグリッド偏光子Aおよびワイヤグリッド偏光子Bの基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋したものである。粘着シート貼合前後での視感度補正された単体透過率および波長550nmにおける偏光度の変化は、ワイヤグリッド偏光子Bに比較してワイヤグリッド偏光子Aの方が小さく、透過率および偏光度の低下は小さいものであった。これは、断面視において、ワイヤグリッド偏光子Aの基材の凹凸構造が概略正弦波状であり、凹凸構造の凸部の頂部より上方の導電体形状は尖鋭形状で、また、凸部側面にある導電体の基材に対して平行方向の厚みが30nm以上と十分に厚いものであったためである。
【0113】
(実施例4)
本実施例では、ワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合した場合の光学特性等を確認した。以下、詳しく説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0114】
まず、両面に剥離フィルムを有するアクリル系粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、ワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面と逆の面(基板面)にアクリル系粘着シートを貼合した。その後、基板面に前記粘着シートを備えた前記ワイヤグリッド偏光子Aの粘着シートの剥離フィルムを剥離し、平板状のガラス板(テンパックス、厚み1.1mm)に貼合した後、室温で24時間保管した。これを貼合体3とする。なお、アクリル系粘着シートは、実施例3と同様とした。
【0115】
ワイヤグリッド偏光子Aおよび貼合体3を温度85度、相対湿度85%とした恒温恒湿槽(型式:μ―2002 いすゞ製作所社製)に入れ、恒温恒湿試験を600時間行った。表2に、ワイヤグリッド偏光子A、貼合体3の任意の偏光部の偏光度の変化を示す。
【0116】
先述条件にて、恒温恒湿試験を600時間行ったところ、上記のように、ワイヤグリッド偏光子Aは偏光度の低下が生じたが、ガラス板に基板面を貼合した貼合体3は変化が見られなかった。また、ワイヤグリッド偏光子Aの外観を観察すると、恒温恒湿試験以前には見られなかった外観異常(ワイヤグリッド偏光子Aのカールやシワの発生)を確認したが、貼合体3には顕著な外観変化は見られなかった。これは、ワイヤグリッド偏光子Aの基板に用いたTAC樹脂からなるフィルムが、高温高湿度環境下での長期保管により、フィルムの配向状態が変化して、面内位相差が変化したためである。貼合体3は、粘着シートによって、TAC樹脂からなるフィルムを基板としたワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合したものであり、高温高湿度環境下での長期保管による前記フィルムの配向状態の変化を小さくすることができたため、貼合体3の任意の偏光部の偏光度低下を防止することができた。
【表1】
【表2】
【0117】
以上の実施例から、凹凸構造が正弦波状のワイヤグリッド偏光子では、凹凸構造が矩形状のワイヤグリッド偏光子と比較して、高い偏光度が得られることが分かる。また、凹凸構造が正弦波状のワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋した貼合体は、凹凸構造が矩形状のワイヤグリッド偏光子の基材上の導電体構造面にアクリル系粘着シートを貼合し、導電体を包埋した貼合体と比較して、透過率および偏光度の低下を小さくできることが分かる。また、ワイヤグリッド偏光子を固定材に貼合することで、高温高湿度環境下での長期保管によるフィルムの配向状態の変化を小さくすることができ、偏光度低下を防止できることが分かる。また、これらを用いて作製された光センサーは、長期間に渡って製品の性能変化が少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のワイヤグリッド偏光子は、例えば、二つの異なる偏光を利用する光センサーに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、2、3 ワイヤグリッド偏光子
11 投光用偏光部
12 受光用偏光部
13 基材
21 導電体
22 凹凸構造
101 回帰反射型光電センサー
102 投光部
103 受光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部と前記受光用偏光部とが作り込まれていることを特徴とするワイヤグリッド偏光子。
【請求項2】
前記投光用偏光部は、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、凹凸構造が所定の間隔をもって第1の方向に延在する第1の凹凸構造部と、前記第1の凹凸構造部の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第1の導電体とを有し、前記受光用偏光部は、凹凸構造が所定の間隔をもって前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2の凹凸構造部と、前記第2の凹凸構造部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第2の導電体とを有することを特徴とする請求項1に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項3】
前記凹凸構造は、樹脂からなる基材によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項4】
前記凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、前記凹凸構造は概略正弦波状の形状であり、前記凹凸構造の凸部の頂部を通り前記凸部の立設方向に沿う凸部軸に対して、前記導電体の頂部を通り前記導電体の立設方向に沿う導電体軸を異ならせたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項5】
前記基材表面の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部を形成する前記凹凸構造と連なる凹凸構造がない領域とすることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項6】
前記凹凸構造は、同一面上に凹凸構造が設けられた領域を有する鋳型から作製される金属スタンパを用いて、同一工程で形成されたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項7】
前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版が接合されることで作製されることを特徴とする請求項6に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項8】
前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版の凹凸構造面を低粘着性粘着シートに貼合した後、複数の版を接合することで作製することを特徴とする請求項6に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項9】
前記投光用偏光部または前記受光用偏光部において、前記第1の導電体の延在方向のばらつき、または前記第2の導電体の延在方向のばらつきが、±3度以内であることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項10】
前記第1の導電体および前記第2の導電体が接着性樹脂で包埋されていることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項11】
前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部が低透過率であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項12】
前記基材に基板を備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項13】
前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向と、前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向とは直交関係にあり、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向または前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向が、前記基板のMD方向と45度で交わることを特徴とする請求項12に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項14】
ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、
所定方向に延在する導電体を備えた偏光部の一部を所定の形状に切り出して、切り出された部材と前記切り出された部材に対応する開口部を有する切り出し元の部材とに分離し、前記切り出された部材が有する導電体の延在方向と前記切り出し元の部材が有する導電体の延在方向とが所定の角度をなすように前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材を回転させて前記切り出された部材を前記切り出し元の部材の開口部に固定することにより形成された前記投光用偏光部および前記受光用偏光部を備えたことを特徴とするワイヤグリッド偏光子。
【請求項15】
前記切り出された部材はn回対称の形状を有し、前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材の回転角度は360°/nであることを特徴とする請求項14に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子を用いることを特徴とする光センサー。
【請求項17】
前記基材表面に前記投光用偏光部及び前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体とが設けられたワイヤグリッド偏光子の、前記基材表面の逆の面側に、投光器と受光器が配設されることを特徴とする請求項16に記載の光センサー。
【請求項1】
ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、同一基材表面に、透過軸方向が互いに異なる前記投光用偏光部と前記受光用偏光部とが作り込まれていることを特徴とするワイヤグリッド偏光子。
【請求項2】
前記投光用偏光部は、凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、凹凸構造が所定の間隔をもって第1の方向に延在する第1の凹凸構造部と、前記第1の凹凸構造部の凸部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第1の導電体とを有し、前記受光用偏光部は、凹凸構造が所定の間隔をもって前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2の凹凸構造部と、前記第2の凹凸構造部のいずれか一方側面に偏在するように設けられた第2の導電体とを有することを特徴とする請求項1に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項3】
前記凹凸構造は、樹脂からなる基材によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項4】
前記凹凸構造が延在する方向に垂直な断面において、前記凹凸構造は概略正弦波状の形状であり、前記凹凸構造の凸部の頂部を通り前記凸部の立設方向に沿う凸部軸に対して、前記導電体の頂部を通り前記導電体の立設方向に沿う導電体軸を異ならせたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項5】
前記基材表面の前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部を、前記投光用偏光部または前記受光用偏光部を形成する前記凹凸構造と連なる凹凸構造がない領域とすることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項6】
前記凹凸構造は、同一面上に凹凸構造が設けられた領域を有する鋳型から作製される金属スタンパを用いて、同一工程で形成されたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項7】
前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版が接合されることで作製されることを特徴とする請求項6に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項8】
前記鋳型は、凹凸構造を表面に有する複数の版の凹凸構造面を低粘着性粘着シートに貼合した後、複数の版を接合することで作製することを特徴とする請求項6に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項9】
前記投光用偏光部または前記受光用偏光部において、前記第1の導電体の延在方向のばらつき、または前記第2の導電体の延在方向のばらつきが、±3度以内であることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項10】
前記第1の導電体および前記第2の導電体が接着性樹脂で包埋されていることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項11】
前記投光用偏光部と前記受光用偏光部との境界部が低透過率であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項12】
前記基材に基板を備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項13】
前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向と、前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向とは直交関係にあり、前記投光用偏光部の偏光軸の延在方向または前記受光用偏光部の偏光軸の延在方向が、前記基板のMD方向と45度で交わることを特徴とする請求項12に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項14】
ワイヤグリッド偏光子の投光用偏光部に入光する投射光を発するように配設された投光器と、前記ワイヤグリッド偏光子の受光用偏光部を透過する測定光を受光するように配設された受光器と、を備えた光センサーに用いられるワイヤグリッド偏光子であって、
所定方向に延在する導電体を備えた偏光部の一部を所定の形状に切り出して、切り出された部材と前記切り出された部材に対応する開口部を有する切り出し元の部材とに分離し、前記切り出された部材が有する導電体の延在方向と前記切り出し元の部材が有する導電体の延在方向とが所定の角度をなすように前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材を回転させて前記切り出された部材を前記切り出し元の部材の開口部に固定することにより形成された前記投光用偏光部および前記受光用偏光部を備えたことを特徴とするワイヤグリッド偏光子。
【請求項15】
前記切り出された部材はn回対称の形状を有し、前記切り出された部材又は前記切り出し元の部材の回転角度は360°/nであることを特徴とする請求項14に記載のワイヤグリッド偏光子。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光子を用いることを特徴とする光センサー。
【請求項17】
前記基材表面に前記投光用偏光部及び前記受光用偏光部の凹凸構造と導電体とが設けられたワイヤグリッド偏光子の、前記基材表面の逆の面側に、投光器と受光器が配設されることを特徴とする請求項16に記載の光センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−113280(P2012−113280A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163449(P2011−163449)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
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