説明

ワイヤストリッパ

【課題】作業者の手に負担を掛けることなく電線の被覆除去作業を行うことができるワイ
ヤストリッパの提供。
【解決手段】第1,第2のアーム31,32の動作により、保持部13の可動片15が移
動して被覆線が保持され、切断部16の可動刃18が移動して該被覆線の被覆が切断され
、第1、第2の作用腕11,12が相対的に回動して切断された被覆が取り除かれるワイ
ヤストリッパ1において、第1,第2のアーム31,32を動作させるエアシリンダ40
を備え、該エアシリンダ40は、第2のアーム32に固定された筒部41と、該筒部40
から突出して第1のアーム31に連結されたロッド42とからなり、エアの供給によるロ
ッド42の進退移動に応じて一対のアーム31,32の開閉動作が行われるようにした。
従来のようなハンドルを手で握る操作が不要になるので、電線の被覆除去作業の負担が大
幅に軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆線の被覆を切断除去して芯線を露出させるワイヤストリッパに関し、特
に、作業者が手で持って使用するハンディ型のワイヤストリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1,2に示すように、被覆線(電線)の端部の外皮(被覆)を切
断して取り除くことで芯線を露出させるワイヤストリッパがある。特許文献1,2に記載
のワイヤストリッパは、作業者が手で持って使用するハンディ型のワイヤストリッパであ
る。この種のワイヤストリッパは、支軸を介して相対的に回動可能に連結された左右一対
の作動腕を備え、一方の作動腕の上端に固定片と可動片とからなる保持部を設け、他方の
作動腕の上端に固定刃と可動刃とからなる切断部を設け、これら保持部と切断部の動作及
び作動腕の回動動作を行わせるための一対のアームからなるハンドルを一対の作動腕の下
端から下方に突出させた構成である。このワイヤストリッパは、ハンドルを手で握ること
により、可動片が固定片の方へ移動し、固定片と可動片との間に電線が挟持される共に、
可動刃が固定刃の方へ移動し、固定刃と可動刃とにより電線の外皮が切断される。さらに
ハンドルを強く握ると、一対の作動腕が左右に開かれ、切断された外皮が電線の端部から
引き抜かれて除去され、該端部の芯線を露出させることができる。
【特許文献1】特開平9−331613号公報
【特許文献2】特開2000−115939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなハンディ型のワイヤストリッパでは、作業者がハンドルを手で握ることによ
り一連の被覆除去工程を行うようになっている。ところが、ハンドルの一対のアームは、
手を離すと自動的に初期位置へ復帰するようにバネなどの弾性部材で互いが離間する方向
へ付勢されている。したがって、このようなハンドルを握る作業を多数回繰り返して行う
と、手に大きな負担がかかり疲労が蓄積し易いという問題があった。したがって、電線の
被覆除去作業には多大な労力負担を伴うため、作業者が当該作業を連続して長時間行うこ
とは困難であった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、作業者の手に負担を掛ける
ことなく電線の被覆除去作業を行うことができるワイヤストリッパを提供することにある

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明にかかるワイヤストリッパは、支軸(10)を介して相
対的に回動可能に連結された第1の作用腕(11)及び第2の作用腕(12)と、第1の
作用腕(11)の一端に設けた固定片(14)と可動片(15)とで被覆線を挟んで保持
する保持部(13)と、第2の作用腕(12)の一端に設けた固定刃(17)と可動刃(
18)とで被覆線の被覆を切断する切断部(16)と、可動片(15)及び可動刃(18
)を移動させると共に第1、第2の作用腕(11,12)を回動させるための一対のアー
ム(31,32)と、を備え、一対のアーム(31,32)の動作により、保持部(13
)の可動片(15)が移動して被覆線が保持され、切断部(16)の可動刃(18)が移
動して該被覆線の被覆が切断され、第1、第2の作用腕(11,12)が相対的に回動し
て切断された被覆が取り除かれるワイヤストリッパ(1)において、一対のアーム(31
,32)を動作させるシリンダ装置(40)を備え、該シリンダ装置(40)は、いずれ
か一方のアーム(32)に固定された本体部(41)と、該本体部(41)から突出して
他方のアーム(31)に連結されたロッド(42)とからなり、本体部(41)への作動
媒体の供給によるロッド(42)の進退移動に応じて一対のアーム(31,32)の開閉
動作が行われることを特徴とする。なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の
対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【0006】
本発明にかかるワイヤストリッパによれば、一対のアームを動作させるシリンダ装置を
備え、該シリンダ装置への作動媒体の供給によるロッドの進退移動で一対のアームの開閉
動作が行われるようにしたので、従来のワイヤストリッパのようにハンドルを手で握って
操作する必要が無くなる。したがって、作業者の手に負担を掛けずに電線の被覆除去作業
を行うことができ、当該作業の労力負担が大幅に軽減される。
【0007】
さらに、本発明のワイヤストリッパでは、シリンダ装置の本体部をいずれか一方のアー
ムに固定し、該本体部から突出するロッドを他方のアームに連結している。このような構
成を採用したことにより、単一のシリンダ装置で一対のアームを開閉動作させる機構を実
現可能としている。したがって、一対のアームの開閉動作を自動化しながらも、ワイヤス
トリッパの構成の簡素化を図ることができる。また、ワイヤストリッパの部品点数を少な
く抑えて低コスト化を図ることができる。また、ワイヤストリッパを軽量化できるので、
作業者の手などにかかる負担を軽減できる。
【0008】
また、上記構成のワイヤストリッパでは、シリンダ装置(40)の本体部(41)を一
方のアーム(32)における他方のアーム(31)と反対側の面(32a)に固定し、本
体部(41)から突出するロッド(42)は、一方のアーム(32)に設けた貫通部(3
3)を貫通して他方のアーム(31)に連結するとよい。この構成によれば、一方のアー
ムにおける他方のアームと反対側の面、すなわち一方のアームの外側の面に固定した本体
部から突出するロッドを簡単な構成で他方のアームに連結できる。また、シリンダ装置の
本体部を一対のアームの外側に固定できるので、一対のアームの間隔よりも大きな寸法を
有するシリンダ装置でも取り付けが可能となる。
【0009】
さらに、上記構成のワイヤストリッパでは、ロッド(42)の先端部(42b)を回動
可能として該ロッド(42)の中心軸のなす角度の変化を許容するリンク機構(44)を
設けると共に、前記他方のアーム(31)に連結されたロッド(42)の連結位置を移動
可能として当該連結位置あるいは連結角度の変化を許容する移動機構(46)を設けると
よい。これによれば、ロッドが進退移動する際、リンク機構によりロッドの中心軸が適宜
に屈曲するようになる。また、移動機構により他方のアームに対するロッドの連結位置あ
るいは連結角度が適宜に変化するようになる。これらにより、ロッドの進退移動に追従し
て一対のアームの開閉動作が行われるようになる。したがって、シリンダ装置による一対
のアームの開閉動作がスムーズになるので、ワイヤストリッパの各部の動作が滑らかにな
り、被覆線の被覆除去作業が効率良く行えるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるワイヤストリッパによれば、作業者の手に負担を掛けずに被覆線の被覆
除去作業を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1及び図2は、本発
明の一実施形態にかかるワイヤストリッパを示す図で、図1は、ワイヤストリッパ1の全
体構成を示す正面図、図2(a)は、図1のA−A部分の断面図、(b)は、図1のB−
B部分の断面図、(c)は、図1のC部分の拡大図である。なお、以下の説明で、上下あ
るいは左右というときは、図1に示す状態のワイヤストリッパ1を正面から見たときの上
下あるいは左右を示すものとする。また、内側、外側というときは、ワイヤストリッパ1
の中心に対して上記の正面から見た左右方向の外側、内側を示すものとする。
【0012】
ワイヤストリッパ1は、支軸部10を介して相対的に回動可能に連結された第1の作用
腕11と第2の作用腕12とを備えている。第1の作用腕11の上端には、被覆線(電線
)を保持するための保持部13が設けられており、第2の作用腕12の上端には、保持部
13に保持された被覆線の外皮(被覆)を切断するための切断部16が設けられている。
第1の作用腕11と第2の作用腕12はいずれも、複数の部材もしくは部品からなる組立
体である。第1の作用腕11と第2の作用腕12は、左右に隣接して配置されており、支
軸部10は、それらの対向する面11a,12aの下端に設けられている。そして、第1
の作用腕11の下端から下方に延びる第1のアーム31と、第2の作用腕12の下端から
下方に延びる第2のアーム32とが設けられている。第1のアーム31と第2のアーム3
2とは、所定間隔を有した状態で配置されており、互いが離間及び接近する方向(図1に
示す左右方向)へ移動可能となっている。第1のアーム31と第2のアーム32は、支軸
部10を介して相対的に回動可能に連結されているが、第1の作用腕11や第2の作用腕
12とは独立で回動するようになっている。なお、図1では、第1のアーム31と第2の
アーム32が左右一杯に離間しており、この状態で、第1の作用腕11と第2の作用腕1
2が当接した状態となっている。
【0013】
保持部13は、第1の作用腕11の上部に固定された固定片14と、該固定片14の上
方に設置された可動片15とを有している。可動片15は、上下方向に移動可能に設置さ
れており、下方に向かって移動することで、下端面15aが固定片14の上端面14aに
圧接されるようになっている。これにより、固定片14の上端面14aと可動片15の下
端面15aとの間に被覆線を挟んで保持することができる。
【0014】
一方、切断部16は、図2(c)に示すように、第2の作用腕12の上部に固定された
固定刃17と、固定刃17の上方に設置された可動刃18とを有している。可動刃18は
、上下方向に移動可能に設置されており、下方に向かって移動することで、下端に形成さ
れた上刃18aが固定刃17の上端に形成された下刃17aに当接するようになっている
。下刃17a及び上刃18aの刃先には、複数個の半円形の窪み19が設けられている。
窪み19は、被覆線の外周に宛がうためのものである。窪み19は、切断する被覆線の芯
線の太さに対応して、径の異なる複数種類が並べて形成されている。したがって、被覆線
をその芯線の太さに適合する窪み19に宛がうことで被覆線の外皮のみを切断することが
できる。
【0015】
固定刃17の外側には、プレート21が固定されている。プレート21は、固定刃17
と可動刃18とを結ぶ平面に沿って延在する平板状の部材である。図2(c)に示すよう
に、プレート21は、固定刃17の刃先を避けた略コ字状に形成されている。また、図1
に示すように、プレート21の外面には、位置決め部材23を取り付けた支持片22が固
定されている。支持片22は、プレート21の面に対して直交する外側方向に突出した細
片状の薄板部材である。支持片22に取り付けられた位置決め部材23は、固定刃17に
宛がわれた被覆線の先端に対向する当接面23aを有する断面略L字状の平板部材である
。この位置決め部材23により被覆線の切断箇所の位置決めを行うことができる。
【0016】
位置決め部材23は、支持片22の長手方向に沿って形成した直線状の溝部(図示せず
)にボルト24で固定されている。したがって、ボルト24を緩めれば、支持片22の長
手方向に沿って位置決め部材23の固定位置を調節できる。なお、図示は省略するが、支
持片22に位置合わせ用の目盛を付しておけば、位置決め部材23の位置合わせを簡単か
つ正確に行えて便利である。
【0017】
上記構成において、第1のアーム31と第2のアーム32とを互いに近接する方向へ移
動させると、保持部13の可動片15が固定片14に向かって移動し、可動片15と固定
片14とで被覆線が挟持される。また、切断部16の可動刃18が固定刃17に向かって
移動し、可動刃18と固定刃17とで被覆線の外皮が切断される。その状態で第1のアー
ム31と第2のアーム32とを更に接近させれば、第1の作用腕11と第2の作用腕12
は、支軸部10を中心に互いが離間して遠ざかる方向に回動する。なお、上記の第1、第
2作用腕11,12、保持部13、切断部16、一対のアーム31,32の構成、及び一
対のアーム31,32の操作に伴う上記各部の諸動作は、公知のハンディ型のワイヤスト
リッパが備える各部の構成及びその動作と同一である。したがってここでは、第1、第2
の作用腕11,12の内部構成の詳細な図示及び説明は割愛する。
【0018】
そして、本実施形態のワイヤストリッパ1は、エアシリンダ40を備えており、該エア
シリンダ40の駆動で、第1のアーム31と第2のアーム32を互いに接近及び離間する
方向へ移動させるように構成されている。すなわち、第2のアーム32の下端近傍の外面
(第1のアーム31と反対側の面)32aには、エアシリンダ40の筒部(本体部)41
の一方の端部41aが固定されており、筒部41の端部41aから突出したロッド42は
、図2(a)に示すように、第2のアーム32に設けた貫通穴(貫通部)33を貫通して
、第2のアーム32の内側に突出している。なお、筒部41の端部41aには、外周にネ
ジ山(図示せず)が形成された円筒状の突部41bが設けられており、該突部41bが、
内面にネジ溝(図示せず)を設けた貫通穴33にネジ係合で固定されている。
【0019】
ロッド42の途中には、該ロッド42の先端部42b(第1のアーム31側)を本体部
42a(第2のアーム32側)に対して回動可能として、該ロッド42の中心軸のなす角
度の変化を許容するリンク機構44が設けられている。すなわち、ロッド42は、リンク
機構44の位置で本体部42aと先端部42bとに分割されており、リンク機構44は、
先端部42bを本体部42aに対して回動自在に軸支した構成である。ロッド42の先端
部42bは、その先端が第1のアーム31の内外面に貫通する貫通溝34に対向しており
、該先端には、貫通溝34に外面から挿通された取付用のボルト45がナット46で固定
されている。貫通溝34は、図2(b)に示すように、第1のアーム31の長手方向に沿
って形成された長尺状の溝で、挿通されたボルト45の軸部45aは、貫通溝34をその
長手方向に沿って移動可能になっている。また、ボルト45は、貫通溝34の長手方向に
沿ってその軸方向の角度を自由に変えることが可能となっている。第1のアーム31の貫
通溝34とロッド42の先端部42bに取り付けたボルト45とで、第1のアーム31に
対するロッド42の連結位置を移動可能として当該連結位置あるいは連結角度の変化を許
容する移動機構46が構成されている。
【0020】
一方、図1に示すように、エアシリンダ40の筒部41には、第1ポート51と第2ポ
ート52が設けられており、第1ポート51と第2ポート52にはコンプレッサ53から
のエアが供給されるようになっている。コンプレッサ53には、第1ポート51と第2ポ
ート52へエアを供給するための配管54が接続されており、該配管54は、途中で二手
に分岐して、それぞれ第1ポート51と第2ポート52に連通している。配管54の分岐
位置には、コンプレッサ53からのエアの流通/停止および流通経路の切り換えが可能な
切換式の開閉弁(三方弁)55が設置されている。開閉弁55の流通経路及び開閉状態は
、コントローラ56の指令に基づいて制御されるようになっている。コントローラ56に
は、開閉弁55の開閉操作を行うためのスイッチ57が接続されている。
【0021】
エアシリンダ40では、コンプレッサ53からのエアが第2ポート52に供給された場
合、筒部41内に設けた図示しないピストンの移動により、ロッド42が筒部41内に退
避する方向へ移動するようになっている。これにより、筒部41に固定された第2のアー
ム32とロッド42に連結された第1のアーム31とを互いに接近する方向へ移動させる
ことができる。一方、コンプレッサ53からのエアが第1ポート51に供給された場合、
ロッド42が筒部41から突出する方向へ移動するようになっている。これにより、第1
のアーム31と第2のアーム32とを互いに離間する方向へ移動させることができる。そ
してここでは、スイッチ57及びコントローラ56の設定により、スイッチ57の操作が
行われた際、まず第2ポート52にエアが供給され、その後、所定時間経過後に第1ポー
ト51にエアが供給されるようにしておく。これにより、一回のスイッチ操作のみで後述
する被覆線の外皮切断除去に必要な一連の動作を行えるようになる。
【0022】
図3は、ワイヤストリッパ1に取り付けるケース(ホルダー)60の構成例を示す図で
、(a)は、正面図、(b)は、(a)のE矢視図、(c)は、ケース60をワイヤスト
リッパ1に取り付けた状態を示す正面図である。ケース60は、ワイヤストリッパ1の前
後面を覆うように形成された一対の平板61,61を所定間隔で配置し、それらの底辺同
士を連結したもので、一対の平板61,61の内側にワイヤストリッパ1の第1の作用腕
11及び第2の作用腕12、及び第1のアーム31及び第2のアーム32を収納可能な収
納部62が形成されている。収納部62の下面には、下方に延びる棒状の握部63が取り
付けられている。図3(c)に示すように、収納部62にワイヤストリッパ1を収納した
状態で、保持部13及び切断部16が収納部62の上方に突出した状態となる。また、エ
アシリンダ40は、その一部が収納部62の側方に突出した状態になる。ケース60は、
平板61,61に設けた略半円弧状の受部65で突起状の軸支部10を受け止め、その状
態で平板61,61を第1の作用腕11にボルト64で固定して取り付ける。なお、収納
部62は、アーム31,32及びエアシリンダ40の回動を許容するように、上部及び左
右の側面が開放されている。また、手前側の平板61における握部63の上端近傍には、
スイッチ57が取り付けられている。スイッチ57は、操作者が握部63を手で握った際
、親指で触れて操作することが可能な位置に設けられている。スイッチ57は、押釦式で
もよいし光学式でもよい。なお、図3では、スイッチ57から延びる配線は図示を省略し
ている。このようなケース60を設けたことで、操作者はケース60の握部63を手で持
ってワイヤストリッパ1を取り扱うことができる。
【0023】
上記構成のワイヤストリッパ1の動作について説明する。図4は、ワイヤストリッパ1
の動作を説明するための図である。なお、同図では、配管54やコンプレッサ53などの
図示は省略している。また、ケース60も図示を省略している。図4(a)に示すように
、第1のアーム31と第2のアーム32とが最も離間した状態のとき、第1の作用腕11
と第2の作用腕12とが当接した状態になっている。またこのとき、保持部13の可動片
15は固定片14に対して上方に離間した待機位置にあり、切断部16の可動刃18も固
定刃17に対して上方に離間した待機位置にある。
【0024】
この状態において、同図に示すように、固定片14及び固定刃17の上に被覆線Wを載
置する。固定刃17においては、被覆線Wの芯線の直径に対応する深さの窪み19(図2
(c)参照)に被覆線Wを宛がう。また、被覆線Wの先端を位置決め部材23に当接させ
る。
【0025】
次いで、スイッチ57を操作して、コンプレッサ53からのエアを第2ポート52側へ
供給する。これにより、エアシリンダ40のロッド42が筒部41内へ退避する方向へ移
動し、リンク機構44によりロッド42の本体部42aと先端部42bとのなす角度が適
宜に変化するとともに、移動機構46により第1のアーム31に対するロッド42の連結
位置及び連結角度が適宜に変化しながら、第1のアーム31と第2のアーム32とが接近
してゆく。そして、図4(b)の状態に移行する際、保持部13の可動片15が固定片1
4に向かって移動し、可動片15と固定片14とで被覆線Wが挟持される。その後、さら
にロッド42が筒部41内に退避することで、ロッド42のなす角度及び第1のアーム3
1に対する連結位置及び連結角度が変化しながら、第1のアーム31と第2のアーム32
とが接近し、図4(c)の状態に移行する。その際、切断部16の可動刃18が固定刃1
7に当接する。これにより、可動刃18と固定刃17とで挟まれた被覆線Wの外皮が切断
される。その後、さらに第1のアーム31と第2のアーム32とが接近すると、図4(d
)の状態に移行する。この過程では、保持部13が被覆線Wを挟持した状態、および切断
部16の可動刃18と固定刃17が被覆線Wを挟んで当接した状態のまま、第1の作用腕
11と第2の作用腕12とが互いに離間する方向に回動する。これにより、切断された外
皮Waが被覆線Wから引き抜かれ、切断個所より先端側の芯線Wbが露出する。
【0026】
その後、開閉弁55の開方向が切り換えられて、エアシリンダ40からのエアが第1ポ
ート51側へ供給される。これにより、第1のアーム31と第2のアーム32が互いに離
間する方向へ移動する。すると、第1の作用腕11と第2の作用腕12が上記とは逆方向
に回動して互いに当接し、図4(c)に示す状態に戻る。その後、切断部16の可動刃1
8が待機位置に戻り、保持部13の可動片15が待機位置に戻る。こうして図4(a)に
示す状態に戻り、先端部の芯線Wbが露出した被覆線Wを取り出すことができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のワイヤストリッパ1によれば、一対のアーム31,
32を動作させるエアシリンダ40を備えたので、従来のハンディ型のワイヤストリッパ
のようにハンドルを手で握って操作する必要が無くなる。したがって、作業者の手に負担
を掛けずに被覆線の外皮除去作業を行うことができ、作業の労力負担が大幅に軽減される

【0028】
さらに、本実施形態のワイヤストリッパ1では、エアシリンダ40の筒部41を第2の
アーム32に固定し、筒部41から突出するロッド42を第1のアーム31に連結してい
る。このような構成により、単一のエアシリンダ40で一対のアーム部31,32を開閉
動作させる機構を実現している。したがって、アーム31,32の開閉操作を自動化しな
がらも、ワイヤストリッパ1の構成を簡単にできる。また、ワイヤストリッパ1の部品点
数を少なく抑えて低コスト化を図ることができる。また、ワイヤストリッパ1を軽量化で
きるので、作業者の手にかかる負担を軽減できる。
【0029】
また、本実施形態のワイヤストリッパ1では、エアシリンダ40の筒部41を第2のア
ーム32の外面(第1のアーム31と反対側の面)32aに固定し、筒部41から突出す
るロッド42を第2のアーム32の貫通穴33に貫通させて第1のアーム31に連結して
いる。これにより、簡単な構成で、第2のアーム32の外面32aに固定した筒部41か
ら突出するロッド42を第1アーム31に連結可能としている。また、このような構成と
したことにより、エアシリンダ40を第2のアーム32の外面32aに固定できるので、
エアシリンダ40が一対のアーム31,32の間隔よりも大きな寸法であっても取り付け
が可能となる。
【0030】
また、本実施形態のワイヤストリッパ1では、ロッド42の先端部42bを回動可能と
してロッド42の中心軸のなす角度の変化を許容するリンク機構44と、第1のアーム3
1に対するロッド42の連結位置あるいは連結角度の変化を許容する移動機構46とを設
けている。これにより、ロッド42が進退移動する際、リンク機構44によりロッド42
の中心軸が適宜に屈曲し、かつ、移動機構46により第1のアーム31に対するロッド4
2の連結位置あるいは連結角度が適宜に変化するので、ロッド42の進退移動に追従して
一対のアーム31,32の開閉動作が行われるようになる。この点を詳述すると、一対の
アーム31,32の開閉動作が行われる間、リンク機構44によってロッド42の本体部
42aと先端部42bとのなす角度が変化することで、図4(a)乃至(d)に示したよ
うに、第2のアーム32の移動方向(矢印Dで示す方向)とロッド42の本体部42aの
中心軸方向とが常に平行な状態に維持される。これにより、第2のアーム32に固定され
た筒部41に対してロッド42がスムーズに出し入れされるようになる。また、本体部4
2aと先端部42bのなす角度が変化するので、ロッド42の進退移動に対して第1のア
ーム31の回動をスムーズに追従させることが可能となる。また、移動機構46で第1の
アーム31に対するロッド42の連結位置及び連結角度の変化が許容されることよっても
、ロッド42の進退移動に対して第1のアーム31の回動をスムーズに追従させることが
可能となる。
【0031】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく
、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変
形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状、構造、材質であっ
ても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例え
ば、上記実施形態では、一対のアームを動作させるシリンダ装置としてエアシリンダ40
を用いた場合を説明したが、本発明のシリンダ装置としては、エアシリンダ40以外にも
、例えば、油など他の作動媒体で動作するシリンダ装置を用いることも可能である。また
、上記実施形態で示した一対のアーム及びシリンダ装置以外のワイヤストリッパの具体的
な構成はあくまで一例であり、上記実施形態の構成と同一の作用を奏するものであれば、
他の構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかるワイヤストリッパを示す正面図である。
【図2】(a)は、図1のA−A部分の断面図、(b)は、図1のB−B部分の断面図、(c)は、図1のC部分の拡大図である。
【図3】ワイヤストリッパに取り付けるケースを示す図で、(a)は、正面図、(b)は、(a)のE矢視図、(c)は、ケースをワイヤストリッパに取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】ワイヤストリッパの動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ワイヤストリッパ
10 支軸部
11 第1の作用腕
12 第2の作用腕
13 保持部
14 固定片
15 可動片
16 切断部
17 固定刃
18 可動刃
31 第1のアーム(他方のアーム)
32 第2のアーム(一方のアーム)
32a 外面
33 貫通穴(貫通部)
34 貫通溝
40 エアシリンダ(シリンダ装置)
41 筒部(本体部)
42 ロッド
42a 本体部
42b 先端部
44 リンク機構
46 移動機構
51 第1ポート
52 第2ポート
53 コンプレッサ
54 配管
55 開閉弁
56 コントローラ
57 スイッチ
60 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸を介して相対的に回動可能に連結された第1の作用腕及び第2の作用腕と、
前記第1の作用腕の一端に設けた固定片と可動片とで被覆線を挟んで保持する保持部と

前記第2の作用腕の一端に設けた固定刃と可動刃とで前記被覆線の被覆を切断する切断
部と、
前記可動片及び前記可動刃を移動させると共に前記第1、第2の作用腕を回動させるた
めの一対のアームと、
を備え、
前記一対のアームの動作により、前記保持部の可動片が移動して被覆線が保持され、前
記切断部の可動刃が移動して該被覆線の被覆が切断され、前記第1、第2の作用腕が相対
的に回動して前記切断された被覆が取り除かれるワイヤストリッパにおいて、
前記一対のアームを動作させるシリンダ装置を備え、
該シリンダ装置は、いずれか一方のアームに固定された本体部と、該本体部から突出し
て他方のアームに連結されたロッドとからなり、前記本体部への作動媒体の供給による前
記ロッドの進退移動に応じて前記一対のアームの開閉動作が行われる
ことを特徴とするワイヤストリッパ。
【請求項2】
前記シリンダ装置の前記本体部は、前記一方のアームにおける前記他方のアームと反対
側の面に固定されており、
前記本体部から突出する前記ロッドは、前記一方のアームに設けた貫通部を貫通して前
記他方のアームに連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤストリッパ。
【請求項3】
前記ロッドには、該ロッドの先端部を回動可能として該ロッドの中心軸のなす角度の変
化を許容するリンク機構が設けられており、
前記他方のアームには、前記ロッドの連結位置を移動可能として、該他方のアームに対
する前記ロッドの連結位置あるいは連結角度の変化を許容する移動機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤストリッパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−68607(P2010−68607A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231740(P2008−231740)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)テガ三洋工業株式会社 (244)
【Fターム(参考)】