説明

ワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法

【課題】 製造コストを抑制しつつ、省スペース化及び軽量化を実現できるワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るワイヤハーネスの固定構造10は、一又は複数本の導電路(導電路集合体110)の外装が管体120で覆われたワイヤハーネス100を、車体1に固定可能な車体固定部材200によって車体1の外周部に固定する構造である。この際、水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材300によって、管体120の外周に車体固定部材200を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数本の導電路の外装が管体で覆われたワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動者などの車体の外周部(例えば、車体床下などの外部露出部位)に配索されるワイヤハーネスにおいて、飛石などの衝撃から一又は複数本の導電路を保護する必要があるため、該導電路の外装が管体で覆われている。
【0003】
このようなワイヤハーネスを車体の外周部に固定するために、例えば、開閉可能に連結された一対の半割部材からなるクランプによって、ワイヤハーネスを車体の外周部に固定するワイヤハーネスの固定構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、クランプに取り付けられるサポート部材によって管体を任意の形状に保持することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−38899号公報(第2〜第4頁、第1及び第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のワイヤハーネスの固定構造では、クランプが開閉可能に連結された一対の半割部材によって形成されているため、該クランプの小型化や軽量化には限界があった。
【0006】
また、従来のワイヤハーネスの固定構造では、ワイヤハーネスの径や形状によって様々なサイズのクランプ及びサポート部材が必要になってしまうとともに、クランプとは別にサポート部材が必要であるため、部品点数の増大を招いてしまう。従って、従来のワイヤハーネスの固定構造では、設計費や材料費などの製造コストが増大する問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、製造コストを抑制しつつ、省スペース化及び軽量化を実現できるワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、一又は複数本の導電路(導電路111)の外装が管体120で覆われたワイヤハーネス(ワイヤハーネス100)を、車体(車体1)に固定可能な車体固定部材(車体固定部材200)によって前記車体の外周部に固定するワイヤハーネスの固定構造(ワイヤハーネスの固定構造10)であって、水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材(硬化性部材300)によって、前記管体の外周に前記車体固定部材を固定することを要旨とする。
【0009】
かかる特徴によれば、従来のようなクランプを用いることなく、管体の外周に車体固定部材を長尺状の硬化性部材のみで固定できるため、省スペース化及び軽量化を実現できる。また、管体の外周に硬化性部材によって車体固定部材が固定されると、硬化性部材の硬化作用によって管体を任意の形状に保持できる。つまり、硬化性部材のみで管体を任意の形状に保持できるため、ワイヤハーネスの径や形状に左右されることなく、従来のようにワイヤハーネスの径や形状によって様々なサイズのクランプ及びサポート部材が必要なくなり、部品点数を減少できる。また、車体固定部材を専用設計することなく、一般的な安価な車体固定部材を利用できる。従って、設計費や材料費などの製造コストを確実に抑制できる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記車体固定部材は、前記車体に係合するクリップ本体部分(クリップ本体部分210)と、前記クリップ本体部分に連結され、前記管体の外周に沿う取付固定部分(取付固定部分220)とを備え、前記取付固定部分は、前記硬化性部材によって前記管体の外周に固定されることを要旨とする。
【0011】
かかる特徴によれば、車体固定部材に管体の外周に沿う取付固定部分が設けられていることによって、管体の外周に沿っていない取付固定部分が設けられる場合と比較して、省スペース化を実現できる。さらに、管体の外周に沿った取付固定部分により管体を任意の形状に保持しやすくなるため、車体固定部材の取付作業が精度よく且つ容易となるとともに、管体の強度をも確保できる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記硬化性部材の表面は、粘着性を有し、前記取付固定部分は、前記管体の外周に予め取り付けられた前記硬化性部材の表面に粘着されることによって、前記管体の外周に仮固定されることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、取付固定部分が管体の外周に仮固定されることによって、取付固定部分と管体の外周との位置ずれが生じにくく、硬化性部材の取付作業がさらに精度よく且つ容易となる。
【0014】
本発明の第4の特徴は、一又は複数本の導電路の外装が管体で覆われたワイヤハーネスを、車体に固定可能な車体固定部材によって前記車体の外周部に固定するワイヤハーネスの固定方法であって、前記管体の外周に前記車体固定部材が接触した状態で、前記車体固定部材と前記管体との接触箇所に対応する外周位置に、水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材を巻き付けるステップ(本巻き工程)と、前記外周位置に取り付けられた前記硬化性部材を硬化するステップ(本固定工程)とを少なくとも含むことを要旨とする。
【0015】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記外周位置に前記硬化性部材を巻き付けるステップの前に、前記管体の外周に前記車体固定部材が接触した状態で、前記管体の外周に前記車体固定部材を仮固定するステップ(仮固定工程)をさらに含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の特徴によれば、管体の外周に車体固定部材を長尺状の硬化性部材のみで固定できるため、製造コストを抑制しつつ、省スペース化及び軽量化を実現できるワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10が用いられる車体1を示す模式図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るワイヤハーネス100を示す斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定方法を説明するための模式図である。
【図5】図5は、その他の実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るワイヤハーネスの固定構造及びワイヤハーネスの固定方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)車体1の概略構成、(2)ワイヤハーネス100の構成、(3)ワイヤハーネスの固定構造10の説明、(4)ワイヤハーネスの固定方法の説明、(5)作用・効果、(6)その他の実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0020】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0021】
(1)車体1の概略構成
まず、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10が用いられる車体1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10が用いられる車体1を示す模式図である。なお、本実施形態では、ワイヤハーネスの固定構造10が用いられる車体1として、ハイブリッド自動車であるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、電気自動車などの他の自動車であってもよい。
【0022】
図1に示すように、車体1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動するものである。モータユニット3には、インバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。
【0023】
本実施形態では、エンジン2、モータユニット3及びインバータユニット4は、前輪等が位置するエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等が位置する自動車後部7に搭載されている。なお、バッテリー5は、エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載されもよい。
【0024】
モータユニット3及びインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、インバータユニット4及びバッテリー5は、本発明のワイヤハーネス100により接続されている。
【0025】
ワイヤハーネス100は、高圧用のものとして構成される。ワイヤハーネス100は、この中間部100Mが車体床下11の地面側に配索される。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(不図示)が貫通形成されている。なお、ワイヤハーネス100の詳細や、該ワイヤハーネス100を車体床下11に固定するワイヤハーネスの固定構造10の詳細については、後述する(図2及び図3)。
【0026】
ワイヤハーネス100及びバッテリー5は、該バッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス100の後端100Rがコネクタ接続されている。ワイヤハーネス100の後端100R側は、車体1の室内側となる床上に配索されている。該床上には、ワイヤハーネス100の前端100F側も配索されている。ワイヤハーネス100の前端100F側は、インバータユニット4にコネクタ接続されている。
【0027】
ここで、本実施形態での補足説明をすると、モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含む。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含む。モータユニット3及びインバータユニット4は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなる。なお、バッテリー5は、例えば、キャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車である車体1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されるものではない。
【0028】
(2)ワイヤハーネス100の構成
次に、本実施形態に係るワイヤハーネス100の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るワイヤハーネス100を示す斜視図である。
【0029】
ここで、上述したように、ワイヤハーネス100の中間部100Mは、車体床下11に沿って略平行に配索される(図1参照)。すなわち、ワイヤハーネス100の中間部100Mは、地面からの距離を稼ぐことができるように配索される。このワイヤハーネス100は、地面からの距離を稼ぐためとして低背化となる構造にて製造されている。
【0030】
図2に示すように、ワイヤハーネス100は、一又は複数本の導電路111の外装が管体120で覆われている。具体的には、ワイヤハーネス100は、導電路集合体110と、導電路集合体110(導電路111)の外装を被覆する管体120とを備えている。
【0031】
(2−1)導電路集合体110の構成
導電路集合体110は、一又は複数本の導電路111と、該導電路111を一括してシールドする電磁シールド部材112とを備える。本実施形態では、導電路111は、一本の高圧電線111Aと、二本の低圧電線111Bとによって構成される。
【0032】
高圧電線111Aは、導体及び絶縁体(被覆)を含む導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有している。導体は、銅や銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などにより製造される。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよい。高圧電線111Aは、非シールド電線となる構成を有している。なお、高圧電線111Aの両端末には、コネクタ(不図示)が設けられている。
【0033】
ここで、本実施形態においては、ワイヤハーネス100に高圧電線111Aが用いられているものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ワイヤハーネス100に公知のバスバーに絶縁体が設けられたもの等が用いられてもよい。
【0034】
低圧電線111Bは、公知のものであればよい。本実施形態では、低圧電線111Bは、導電路集合体110の構成に含まれるものとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、導電路集合体110に導電路集合体110が含まれるか否かについては任意である。
【0035】
電磁シールド部材112は、高圧電線111A及び低圧電線111Bを一括して覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成される。電磁シールド部材112は、高圧電線111Aの全長とほぼ同じ長さに形成される。電磁シールド部材112は、高圧電線111Aの端末に設けられるコネクタ(不図示)を介して、又は直接インバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0036】
本実施形態では、電磁シールド部材112は、金属箔を含んでいるものとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、電磁シールド部材112は、電磁波対策をすることが可能であればよく、例えば、極細の素線を多数有し且つ導電性を有して筒状に形成される編組を用いてもよい。
【0037】
(2−2)管体120の構成
管体120は、導電路集合体110(導電路111)の外装を被覆する。管体120は、柔軟性を有し、断面横長形状に形成されている。管体120の外周面は、凹凸を有することが好ましい。本実施形態では、管体120には、外周面に凹凸を有する樹脂製のコルゲートチューブ(蛇腹管)、いわゆる、平型のコルゲートチューブが用いられる。
【0038】
管体120に用いられるコルゲートチューブは、軽量化に有効な構造になるのは勿論のこと、上述した低背化となる構造、すなわち、地面からの距離を稼げる有効な構造でもある。特に、コルゲートチューブは、スリットなしのものであって、外周面が水密に形成されるものが好ましい。
【0039】
なお、管体120には、外周面に凹凸を有するコルゲートチューブが用いられるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、管体120には、外周面に凹凸を有する金属性のチューブ(蛇腹管)や、外周面に凹凸なしの樹脂製やゴム製等のチューブなどであってもよい。また、管体120は、断面横長形状に限らず、断面円形状や断面四角形状などであってもよい。
【0040】
(3)ワイヤハーネスの固定構造10の説明
次に、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10の詳細について、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図3は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定構造10を示す分解斜視図である。
【0041】
図2及び図3に示すように、ワイヤハーネスの固定構造10は、上述したワイヤハーネス100を、車体1に固定可能な車体固定部材200によって車体1の外周部(車体床下11)に固定する構造である。この際、ワイヤハーネスの固定構造10では、水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材300が用いられる。
【0042】
(3−1)車体固定部材200の構成
車体固定部材200は、ワイヤハーネス100(例えば、中間部100M)が車体床下11に配索される際に用いられる。車体固定部材200は、管体120の複数の所定部分に設けられる。
【0043】
ここで、車体固定部材200は、ワイヤハーネス100の中間部100Mの他に、図1に示す矢印Aや矢印Bで示す所定部分、すなわち、柔軟性を有する管体120であることからワイヤハーネス100の屈曲部分や組み付け固定部分などの形状保持が必要な部分等に設けられる。以下においては、車体固定部材200がワイヤハーネス100の中間部100Mに設けられている例について説明する。
【0044】
車体固定部材200は、クリップ本体部分210と、取付固定部分220とを備える。クリップ本体部分210は、車体床下11に形成される貫通孔(不図示)に係合する。取付固定部分220は、クリップ本体部分210に連結され、硬化性部材300によって管体120に沿うとともに管体120の外周に固定される。取付固定部分220は、板状をなしており、上面視において略T字状に形成されている。
【0045】
なお、取付固定部分220は、ワイヤハーネス100の屈曲部分に設けられている場合には、必ずしも平坦状である必要はなく、例えば、屈曲部分に沿った円弧状や略L字状等に形成されていてもよい。
【0046】
ここで、取付固定部分220は、管体120の外周に予め取り付けられた硬化性部材300に粘着されることによって、管体120の外周に仮固定される場合がある。この詳細については、後述する(図4参照)。
【0047】
(3−2)硬化性部材300の構成
硬化性部材300は、車体固定部材200にワイヤハーネス100を固定する際に用いられる。硬化性部材300は、水(例えば、水分の噴射・滴下等や水中への浸漬)、又は、光(例えば、可視光や専用の照明)で硬化する。硬化性部材300は、長尺状、すなわち、テープ状を有している。
【0048】
硬化性部材300は、水又は光により硬化する表硬化部分301と、該表硬化部分301と一体化し粘着性を有する裏基材部分302とを含む。表硬化部分301は、裏基材部分302に対して含浸することで互いに保持される。
【0049】
硬化性部材300が水により硬化する場合には、表硬化部分301は、水硬化性樹脂組成物によって形成される。一方、硬化性部材300が光により硬化する場合には、表硬化部分301は、光硬化性樹脂組成物によって形成される。
【0050】
例えば、表硬化部分301としては、水硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。一方、裏基材部分302としては、ガラスウール、ガラスクロス、ポリエステルクロス、不織布などが挙げられる。なお、ガラスクロス、ポリエステルクロスはニット織りが含浸に適しており、ムラなく均一に含浸させることが可能になる。
【0051】
このような硬化性部材300は、この硬化時間が即時硬化、ゆっくり硬化などの調整可能な部材であることが好ましい。また、硬化性部材300は、水分を嫌う作業環境下の場合等に特に有効である(使用環境下での水分は問題ないものとする)。
【0052】
ここで、表硬化部分301(硬化性部材300の表面)は、水又は光により硬化するのみではなく、当該硬化作用に加えて、粘着性を有していてもよい。この場合、硬化性部材300が管体120の外周に予め取り付けられることによって、硬化性部材300の表面(すなわち、表硬化部分301)に管体120の外周を仮固定できる。
【0053】
(4)ワイヤハーネスの固定方法の説明
次に、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定方法の詳細について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係るワイヤハーネスの固定方法を説明するための模式図である。
【0054】
ワイヤハーネスの固定方法は、上述したワイヤハーネス100を車体固定部材200によって車体1の外周部に固定する方法である。ワイヤハーネスの固定方法は、下地巻き工程と、管体接着工程と、仮固定工程と、本巻き工程と、本固定工程とを含む。
【0055】
まず、下地巻き工程では、車体固定部材200と管体120との接触予定箇所に対応する管体120の外周位置に、裏基材部分302が内周側で表硬化部分301が外周側(表面側)となるように硬化性部材300を巻き付ける。この硬化性部材300の表面(すなわち、表硬化部分301)は、粘着性を有している。
【0056】
ここで、下地巻き工程では、必ずしも硬化性部材300を用いる必要はなく、例えば、表面が粘着性を有する公知のテープ等であってもよい。
【0057】
次に、管体接着工程では、図4(a)に示すように、硬化性部材300が巻き付けられた管体120の外周面に、車体1(車体床下11)に固定可能な車体固定部材200を接着する。
【0058】
次に、仮固定工程では、図4(b)に示すように、本巻き工程の前に、管体120の外周に車体固定部材200が接着(接触)した状態で、車体固定部材200と管体120との接触箇所に対応する外周位置に、仮止めテープ400(例えば、ビニールテープ)を巻き付けることによって管体120の外周に車体固定部材200を仮固定する。
【0059】
次に、本巻き工程では、図4(c)に示すように、管体120の外周に車体固定部材200が接触(接着)した状態で、車体固定部材200と管体120との接触箇所に対応する外周位置に、裏基材部分302が内周側で表硬化部分301が外周側(表面側)となるように硬化性部材300を巻き付ける。すなわち、本巻き工程では、仮止めテープ400によって管体120の外周に車体固定部材200が仮固定された状態で、該仮止めテープ400の外周近傍に硬化性部材300を巻き付ける。
【0060】
この際、硬化性部材300を予め所望の厚みに形成しておくことや、硬化性部材300が管体120の外周上で所望の厚みになるまで巻き付けることによって、管体120の強度を確保できるとともに、管体120を所望の形状で保持できる。
【0061】
次に、本固定工程では、外周位置に取り付けられた硬化性部材300を水又は光で硬化する。なお、硬化性部材300に水又は光を供給する手段としては、持ち運びが可能なものであってもよく、製造現場に予め設置されるものであってもよい。
【0062】
この後、硬化性部材300によって管体120の外周に車体固定部材200が固定されたワイヤハーネス100(ワイヤハーネスの固定構造10)は、例えば、自動車メーカー等に搬送され、車体固定部材200を介して車体床下11に固定されることとなる。
【0063】
ここで、ワイヤハーネスの固定方法は、下地巻き工程と、管体接着工程と、仮固定工程と、本巻き工程と、本固定工程とを含むものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも本巻き工程及び本固定工程を含んでいればよい。
【0064】
(5)作用・効果
以上説明した本実施形態では、従来のようなクランプを用いることなく、管体120の外周に車体固定部材200を長尺状の硬化性部材300のみで固定できるため、省スペース化及び軽量化を実現できる。また、管体120の外周に硬化性部材300によって車体固定部材200が固定されると、硬化性部材300の硬化作用によって管体120を任意の形状(例えば、直線状や円弧状や略L字状)に保持できる。つまり、硬化性部材300のみで管体120を任意の形状に保持できるため、ワイヤハーネス100の径や形状に左右されることなく、従来のようにワイヤハーネスの径や形状によって様々なサイズのクランプ及びサポート部材が必要なくなり、部品点数を減少できる。また、車体固定部材200を専用設計することなく、一般的な安価な車体固定部材200を利用できる。従って、設計費や材料費などの製造コストを確実に抑制できる。
【0065】
本実施形態では、車体固定部材200に管体120の外周に沿う取付固定部分220が設けられていることによって、管体120の外周に沿っていない取付固定部分220が設けられる場合と比較して、省スペース化を実現できる。さらに、管体120の外周に沿った取付固定部分220により管体120を任意の形状に保持しやすくなる(実施形態では、直線状に保持しやすくなる)ため、硬化性部材300の取付作業が精度よく且つ容易となるとともに、管体120の強度をも確保できる。
【0066】
本実施形態では、取付固定部分220が管体120の外周に仮固定されることによって、取付固定部分220と管体120の外周との位置ずれが生じにくく、硬化性部材300の取付作業がさらに精度よく且つ容易となる。
【0067】
本実施形態では、管体120の外周面は、凹凸を有することが好ましい。これによれば、硬化性部材300は、硬化されると管体120の外周における凹部に入り込み、また、凸部にも引っ掛かる。このため、取付固定部分220と管体120の外周との位置ずれがさらに生じにくく、また、管体120を任意の形状に保持しやすくなる。特に、硬化性部材300が取り付けられる管体120の外周の接着力が弱い場合(例えば、オレフィン系樹脂)には有効である。
【0068】
本実施形態では、ワイヤハーネスの固定方法が本巻き工程と本固定工程とを含むことによって、従来のようなクランプを用いることなく、管体120の外周に車体固定部材200を長尺状の硬化性部材300のみで固定できるため、省スペース化及び軽量化を実現できる。また、本固定工程において、車体固定部材200に管体120の外周が硬化性部材300で固定されると、硬化性部材300の硬化作用によって管体120を任意の形状に保持できる。これにより、ワイヤハーネス100の径や形状に左右されることなく、部品点数を減少できる。また、車体固定部材200を専用設計することなく、一般的な安価な車体固定部材200を利用できる。従って、設計費や材料費などの製造コストを確実に抑制できる。
【0069】
本実施形態では、ワイヤハーネスの固定方法が下地巻き工程と管体接着工程と仮固定工程とを含むことによって、取付固定部分220と管体120の外周との位置ずれが生じにくく、さらに、管体120の外周に車体固定部材200を押さえ付ける手間がなくなり、硬化性部材300の取付作業がさらに精度よく且つ容易となるため、生産性の向上を図ることができる。
【0070】
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施形態及び運用技術が明らかとなる。
【0071】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、硬化性部材300は、管体120の外周(ワイヤハーネス100)に車体固定部材200を固定する際に用いられるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、硬化性部材300は、ワイヤハーネス100の屈曲部分(図1(a)の矢印Aや矢印B)において管体120に巻き付けられることによって管体120の屈曲部分を予め硬化してもよい。その後、硬化性部材300は、管体120の外周に車体固定部材200が接触した状態で、上記屈曲部分の外周に巻き付けられる。これにより、屈曲部分の強度をさらに向上させることができる。
【0072】
また、硬化性部材300が設けられるワイヤハーネス100の屈曲部分(図1(a)の矢印Aや矢印B)の形状としては、単に曲げた形状であってもよく、捻りを加えた形状や平面視略S字状、クランク形状などであってもよく、硬化性部材300がワイヤハーネス100の屈曲部分において管体120を硬化できればよいことは勿論である。
【0073】
また、車体固定部材200は、クリップ本体部分210と取付固定部分220とを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、公知ものであればよい。例えば、車体固定部材200Aは、図5に示すようなハンド締め付けによるクリップ状であってもよい。この場合には、ワイヤハーネスの固定方法としては、下地巻き工程と、管体接着工程と、仮固定工程とを含まなくてもよい。
【0074】
また、本固定工程については、製造現場で行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、自動車メーカーで行われてもよい。これにより、自動車の形状や大きさなど様々なサイズの自動車に合わせて、管体120を所望の形状に成形できる。
【0075】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0076】
1…車体
10…ワイヤハーネスの固定構造
11…車体床下
100…ワイヤハーネス
110…導電路集合体
111…導電路
112…電磁シールド部材
120…管体
200,200A…車体固定部材
210…クリップ本体部分
220…取付固定部分
300…硬化性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路の外装が管体で覆われたワイヤハーネスを、車体に固定可能な車体固定部材によって前記車体の外周部に固定するワイヤハーネスの固定構造であって、
水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材によって、前記管体の外周に前記車体固定部材を固定することを特徴とするワイヤハーネスの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスの固定構造であって、
前記車体固定部材は、
前記車体に係合するクリップ本体部分と、
前記クリップ本体部分に連結され、前記管体の外周に沿う取付固定部分と
を備え、
前記取付固定部分は、前記硬化性部材によって前記管体の外周に固定されることを特徴とするワイヤハーネスの固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスの固定構造であって、
前記硬化性部材の表面は、粘着性を有し、
前記取付固定部分は、前記管体の外周に予め取り付けられた前記硬化性部材の表面に粘着されることによって、前記管体の外周に仮固定されることを特徴とするワイヤハーネスの固定構造。
【請求項4】
一又は複数本の導電路の外装が管体で覆われたワイヤハーネスを、車体に固定可能な車体固定部材によって前記車体の外周部に固定するワイヤハーネスの固定方法であって、
前記管体の外周に前記車体固定部材が接触した状態で、前記車体固定部材と前記管体との接触箇所に対応する外周位置に、水又は光で硬化する長尺状の硬化性部材を巻き付けるステップと、
前記外周位置に取り付けられた前記硬化性部材を硬化するステップと
を少なくとも含むことを特徴とするワイヤハーネスの固定方法。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤハーネスの固定方法であって、
前記外周位置に前記硬化性部材を巻き付けるステップの前に、前記管体の外周に前記車体固定部材が接触した状態で、前記管体の外周に前記車体固定部材を仮固定するステップをさらに含むことを特徴とするワイヤハーネスの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171476(P2012−171476A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34909(P2011−34909)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】