説明

ワイヤハーネスの2次元図面作成方法

【課題】3Dデータのワイヤハーネスを2D図面に簡単に作成できる方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスの2次元図面の過去図の中から参照過去図を抽出し、該参照過去図の図枠および前記3次元データのワイヤハーネスと同一端末のレイアウトを残すと共に、前記端末および共通分岐位置の座標を取得し、これら座標を結ぶ経路を自動作図して基本2次元図面を作成し、該基本2次元図面に対して寸法およびレイアウト補正を入力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネスの2次元図面作成方法に関し、詳しくは、ワイヤハーネスの3次元データから2次元図面を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索されるワイヤハーネスの設計は、該ワイヤハーネスが接続されるエンジン等の主要機器の車載位置が設計された後、コンピュータ上で3次元設計ソフト(3次元CAD)を利用して、図7(A)に示すような、車両搭載状態の3次元データ(以下、3Dデータと略す)として作成される。
このワイヤハーネスの3Dデータに基づいてワイヤハーネスの製造がなされるが、ワイヤハーネスは図板と称されるワイヤハーネス組立作業台上で製造されるため、ワイヤハーネス製造指示書は図7(B)に示す2次元図面で提示する必要がある。
【0003】
従来、本出願人は特開2003−22721号公報(特許文献1)で3Dデータを2Dデータに変換するワイヤハーネス設計支援方法を提供している。該支援方法は前記3次元データ(以下、3Dデータと略す)をコンピュータに入力し、該入力されたワイヤハーネスデータから2次元的に展開する展開平面図を設定し、ワイヤハーネスデータを複数のセグメントに分割し、すべてのセグメントが前記展開平面図に含まれるように展開する2次元変換工程を含むものである。
また、この種の3Dデータから2D図面を作成するために提供されている他の方法も、3Dデータを2D図面データに変換した後に、2D図面データに種々の修正を加えている場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−22721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の支援方法を用いると、ワイヤハーネスの2D図面の特性から、手作業で指示しなければならない箇所が多い。例えば、ワイヤハーネスにおける幹線と枝線の特定、ワイヤハーネスに取り付けられる部品に関する情報の転記、2D図面の図枠に収まるようにワイヤハーネスを作図すること、ワイヤハーネスの寸法を記載することなどは手作業で行う必要がある。
このように、ワイヤハーネスの3Dデータから2D図面の変換作業時に、作業員の手作業で行う箇所が多くなると、情報転記ミスが発生しやすくなる。かつ、2D図面は図枠が大きくなると共に車載状態との対応付けが困難であり、ワイヤハーネスの2D図面への図面化には熟練したスキルが必要となり、しかも作業員によって作成図面のレイアウトが相違する等、標準化できない問題がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの3Dデータを変換ソフトを用いて2Dデータに変換した後に、作業員が2Dデータに修正を加えていくのではなく、3Dデータを参照しながら2D図面を簡単に作成できるように標準化し、作業員の手作業を少なくして情報転記ミスの発生を低減し、かつ、図面化に対して熟練したスキルをもたない作業者でも行えると共に、作成した2D図面の標準化が図れるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ワイヤハーネスの3次元データからワイヤハーネスの2次元図面を作成する方法であって、
ワイヤハーネスの2次元図面の過去図の中から参照過去図を抽出し、該参照過去図の図枠および前記3次元データのワイヤハーネスと同一端末のレイアウトを残すと共に、前記端末および共通分岐位置の座標を取得し、これら座標を結ぶ経路を自動作図して基本2次元図面を作成し、該基本2次元図面に対して寸法およびレイアウト補正を入力することを特徴とするワイヤハーネスの2次元図面作成方法を提供している。
【0008】
詳細には、前記3次元データのワイヤハーネスの幹線および枝線の端末に接続される部品または行き先からなる端末情報と一致する端末情報を有する参照過去図をコンピュータに入力し、
前記参照過去図の図枠および前記3次元データの端末と一致する端末情報を残した2次元図面をコンピュータ上で作成し、ついで、
前記2次元図面の端末情報の座標を基準として、前記3次元データと参照過去図とに共通する分岐位置および部品取付位置の座標を、前記参照過去図の座標と同一位置で取得すると共に、前記参照過去図に存在しないが前記3次元データに存在する分岐位置および部品取付位置の座標を取得し、ついで、
前記取得した座標を結ぶ経路を自動作成して基本2次元図面を作成し、ついで、
前記自動作成した基本2次元図面に対して、寸法を入力すると共に配置不可の位置に配置されている端末機器の配置を変更するレイアウト補正の入力を行うことを特徴とする。
【0009】
前記3次元データに存在する機器のうちで前記参照過去図に存在しない機器は、前記画面上に作成した図枠外に表示しておき、前記補正の入力工程で前記図枠内に移動して選択した経路と結び、かつ前記3次元データに存在するが前記参照過去図に存在しない分岐位置は隣接する前記取得した座標から自動作図することが好ましい。
【0010】
また、前記参照過去図は、提示される3Dデータのワイヤハーネスの幹線および枝線の端末情報と、蓄積されているワイヤハーネスの2次元図面の幹線及び枝線の端末情報とを照合し、端末情報の一致点が多い2次元図面を抽出して参照過去図として設定している。
前記3Dデータと蓄積されている2D図面の端末の照合作業は、2D図面データをコンピュータの記録部に登録しておき、端末情報の部品番号と行き先表示との一致率が多い2D図面データを抽出して前記参照過去図として設定することが好ましい。
なお、膨大な過去図をコンピュータに登録して検索するよりも、紙媒体で保存している過去図の中から作業者が参照過去図を抽出する方が早い場合もあり、この照合作業はコンピュータを用いなくともよい。
【0011】
前記のように、本発明では、3Dデータで提示されるワイヤハーネスを2次元図面として作成する際、3Dデータを2Dデータに変換ソフトを用いて変換した後に補正を加えるのではなく、過去に蓄積されているワイヤハーネスの2次元図面のうちから近似した図面を参照過去図として抽出して利用している。言わば、2次元図面の参照過去図を流用して、3Dデータに対応する新たな2D図面を作成している。
【0012】
このように、蓄積されている過去図を利用して基本的な2次元図面を作成し、作業員による補正をできるだけ少なくしているため、情報転記ミスを減少できる。また、過去図の図枠を残しているため、図枠が適切なサイズとなり、かつ、該図枠内で経路のレイアウトが適切になされているため、3Dデータから2D図面を作成するスキルを有しない者でも、前記手順にしたがって容易に2D図面を作成することができる。かつ、作成された2D図面のレイアウトは作成者により異なることはなく、2D図面の標準化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
前記のように、本発明の3Dデータで提示されるワイヤハーネスを2D図面として作成する方法は、過去に作成されたワイヤハーネスの2D図面を利用して作成する点に特徴を有し、従来の3Dデータを変換ソフトを用いて2D図面に変換した後に種々の補正を加える作成方法とは大きく相違する。よって、作業者の補正作業が増加すると情報の転記ミスが発生しやすいが、補正作業をできるだけ少なくしているため、転記ミス(補正時の入力ミス)を減少できる。
かつ、利用する過去図からなる参照過去図は、そのレイアウトおよび同一情報の座標を流用するとともに、該参照過去図をベースとした2D図面の作成手順を定め、作業者のスキルに依存せず、スキルを有しない作業者でも容易に作成でき、作業時間を大幅に短縮できる。さらに、作成された2D図面は標準化されているため、見やすい図面となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示し、(A)はコンピュータ画面に表示されたワイヤハーネスの3次元データを示す概略図、(B)はコンピュータ画面に表示されたワイヤハーネスの2次元図面の概略図、(C)は新たに作成したワイヤハーネスの2次元図面の概略図である。
【図2】3D図面および2D図面におけるワイヤハーネスの端部に取り付けられる部品を対応づける対応表を示す図面である。
【図3】フローチャートを示す図面である。
【図4】第1工程を説明する図面である。
【図5】第2工程を説明する図面である。
【図6】第3工程を説明する図面である。
【図7】(A)はワイヤハーネスの3次元データを示す図面、(B)はワイヤハーネスの2次元図面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のワイヤハーネスの2次元図面作成方法の実施形態を図面を参照して説明する。
基本的に、図1(A)に示すCADデータからなるワイヤハーネスの3Dデータ1に対応した図1(C)に示す2次元図面3を図1(B)に示す参照過去図2を利用して作成している。
【0016】
前記参照過去図2は、既に蓄積されているワイヤハーネスの2次元図面の多数の過去図の中から選択して参照過去図として設定したものである。
新たに作成する前記2D図面3は、参照過去図2をベースに流用し、参照過去図2の図枠を残すとともに、3Dデータ1のワイヤハーネスと同一端末のレイアウトおよび共通の座標を残し、これら座標を結ぶ経路を自動作図して基本2次元図面を作成し、該基本2次元図面に対して寸法入力およびレイアウト補正を手動入力して作成している。
【0017】
前記ワイヤハーネスの2D図面の作成に用いるコンピュータは周知の構成を有するもので、入力部、演算部、出力部、記録部等を有し、入力部から3Dデータを入力して記録部に登録している。また、記録部には過去に作成したワイヤハーネスの2D図面データを記録しており、かつ、図2に示す対応表および既存の作図ソフト等も記録している。前記対応表では、2D図面に記載の情報は参照過去図に記載の情報である。また、前記出力部は表示装置(図示せず)に接続されている。
【0018】
次に、前記3Dデータ1と参照過去図2とから、前記3Dデータ1に対応する新たな2D図面の作成工程について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0019】
第1工程は図4に示す3Dデータと2D図面の端末合わせ工程である。
この端末合わせ工程の前に、過去に蓄積された多数のワイヤハーネスの2D図面のうちから参照過去図とする2D図面の抽出を行っている。
この参照過去図の抽出は、3Dデータ1で提示されたワイヤハーネスと同一配索箇所のワイヤハーネスのうちから、ワイヤハーネスの端末情報、即ち、端末に接続される部品番号や行き先の一致率が最も多い過去図を参照過去図として抽出する。
例えば、3Dデータ1のワイヤハーネス端末が機器A、B、C、Dと接続されている場合、ワイヤハーネス端末が機器A、B、Eと接続されている2D図面2を参照過去図として抽出する。
【0020】
前記3Dデータ1の端末情報と過去の2D図面の端末情報との照合は、本実施形態では記録部に記録している過去2D図面データと3Dデータ1の端末情報とを照合して一致率の最も多い過去2D図面データを抽出して、参照過去図2として設定している。なお、膨大な過去2D図面から参照過去図の抽出はコンピュータ検索に限定されない。
【0021】
前記3Dデータ1の端末に接続される機器Dは参照過去図2の端末Eとは相違するが、同一視できる端末であるため、同一とみなす。この同一視できるかは、前記記録部に記録している図2に示す対応表に基づいて演算部で判定している。
【0022】
蓄積した2D図面の中から参照過去図2を抽出して設定した後、第1工程で参照過去図2の図枠4と端末機器A、B、Eの配置位置(レイアウト)を残して利用し、3Dデータ1のワイヤハーネス端末に接続した機器A、B、Dを前記端末機器A、B、Eと同じ位置に配置して、図4に示す新たな2D図面3Aを作成する。
其の際、3Dデータ1に存在するが、参照過去図2に存在しない端末に接続される機器Cは画面上の図枠4の外に配置しておく。
【0023】
第2工程は図5に示す経路合わせ工程である。
3Dデータ1と参照過去図2とに共通の分岐位置P1および経路部品取付位置Sを抽出し、図4で作成した2D図面3Aの端末機器A、B、Dの位置座標を基準とし、前記分岐位置P1の座標(X1,Y1)、部品取付位置Sの座標(X2、Y2)を前記2D図面に取る。前記経路部品とはワイヤハーネスに外装するプロテクタやグロメット等を指す。
【0024】
また、参照過去図2に存在しないが、3Dデータ1に存在する分岐点P2の座標を、前記各端末に接続した機器A,B,D、前記分岐位置P1、部品取付位置Sとの関係から自動作図で取得し、図5に示す2D図面3Bに上書きする。
【0025】
第3工程は図6に示す自動作図工程である。
前記第2工程で図5に示すように、ワイヤハーネスの端末に接続する機器A、B、Dの座標、分岐位置P1、P2の座標、部品取付位置Sの座標点を取得した後、第3工程では、図6に示すように、前記座標を結ぶワイヤハーネス経路5を自動作成して2D図面3Cを作成する。
【0026】
第4工程は最終の作業員が入力する手作業工程である。
前記第3工程で自動作図した機器の配置箇所が現実に配置できない箇所であれば、手動で機器の位置を移動させるレイアウト補正入力を行う。また、各部の寸法は記載されていないため、各部の寸法を入力する。これにより、前記図1(C)に示す新たな2D図面3をコンピュータ上で作成している。
【0027】
前記した本発明の工程で、3Dデータ1から新たな2D図面3を作成すると、3Dデータに近似した参照過去図2をベースとして利用し、図枠4やワイヤハーネス端末位置、ワイヤハーネスの分岐位置等の基本レイアウトを流用できる。よって、作業者による入力事項を低減でき情報転記ミスを減少できる。かつ、規定した手順にしたがって作成していくため、3Dデータから2D図面を作成するスキルを有しない作業者でも簡単に作成でき、作成時間の短縮がはかれると共に、作成した2D図面が標準化される利点も有する。
【符号の説明】
【0028】
1 ワイヤハーネスの3次元データ
2 参照過去図
3 新たに作成した2次元図面
4 図枠
5 経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの3次元データからワイヤハーネスの2次元図面を作成する方法であって、
ワイヤハーネスの2次元図面の過去図の中から参照過去図を抽出し、該参照過去図の図枠および前記3次元データのワイヤハーネスと同一端末のレイアウトを残すと共に、前記端末および共通分岐位置の座標を取得し、これら座標を結ぶ経路を自動作図して基本2次元図面を作成し、該基本2次元図面に対して寸法およびレイアウト補正を入力することを特徴とするワイヤハーネスの2次元図面作成方法。
【請求項2】
前記3次元データのワイヤハーネスの幹線および枝線の端末に接続される部品または行き先からなる端末情報と一致する端末情報を有する参照過去図をコンピュータに入力し、 前記参照過去図の図枠および前記3次元データの端末と一致する端末情報を残した2次元図面をコンピュータ上で作成し、ついで、
前記2次元図面の端末情報の座標を基準として、前記3次元データと参照過去図とに共通する分岐位置および部品取付位置の座標を、前記参照過去図の座標と同一位置で取得すると共に、前記参照過去図に存在しないが前記3次元データに存在する分岐位置および部品取付位置の座標を取得し、ついで、
前記取得した座標を結ぶ経路を自動作成して基本2次元図面を作成し、ついで、
前記自動作成した基本2次元図面に対して、寸法を入力すると共に配置不可の位置に配置されている端末機器の配置を変更するレイアウト補正の入力を行う請求項1に記載のワイヤハーネスの2次元図面作成方法。
【請求項3】
前記3次元データに存在する機器のうちで前記参照過去図に存在しない機器は、前記画面上に作成した図枠外に表示しておき、前記補正の入力工程で前記図枠内に移動して選択した経路と結び、かつ、
前記3次元データに存在するが前記参照過去図に存在しない分岐位置は隣接する前記取得した座標から自動作図する請求項2に記載のワイヤハーネスの2次元図面作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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