説明

ワイヤハーネス及び該ワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置

【課題】長期に亘って弾性力を維持することができ、折り返しによる座屈や予期しない方向に曲げられて破損することを防止できるワイヤハーネス及び該ワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置を提供する。
【解決手段】スライド体用の給電装置に用いられるワイヤハーネス10は、自動車のルーフ部分と該ルーフ部分にスライド自在に設けられたサンルーフ3とに亘って配索されたFFC20と、該FFC20に取り付けられた弾性部材23とを備えている。FFC20は、導体21と該導体21を被覆する絶縁体22とを有して帯状に形成されている。弾性部材23は、棒状の金属で構成されており、FFC20の絶縁体22の幅方向に蛇行するように屈曲して形成され且つFFC20の絶縁体22の一方の面22a上に取り付けられている。そして、弾性部材23は、FFC20が曲げられた際に、該FFC20を直線状に保つ弾性復元力を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車体と該車体に対してスライド自在に設けられたスライド体とに亘って配索されるワイヤハーネス、及び、該ワイヤハーネスを備え且つ前記スライド体に実装される電子機器と常に電気的に接続するためのスライド体用の給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドシートなどのスライド体に実装されたシートヒータなどの電子機器と常に電気的に接続するために、従来から種々のスライド体用の給電装置(以下、単に給電装置と呼び、特許文献1を参照。)が用いられてきた。
【0003】
前述した特許文献1に示された給電装置は、車体と該車体にスライド自在に設けられたスライドシートとに亘って配索されたワイヤハーネスと、車体に取り付けられ且つ前記ワイヤハーネスの一部を収容するプロテクタと、前記プロテクタにスライド自在に設けられ且つ前記ワイヤハーネスの一端に取り付けられたスライドコネクタと、前記プロテクタに固定され且つ前記ワイヤハーネスの他端に取り付けられた固定コネクタと、を備えている。
【0004】
前記ワイヤハーネスは、プロテクタ内にU字状に折り返された状態で収容される。そして、ワイヤハーネスは、折り返しの頂点部の位置がスライドコネクタのスライド移動に伴って変位することで、該スライドコネクタのスライド移動に追従する。
【0005】
前述した特許文献1に示された給電装置は、前記固定コネクタが車体に取り付けられたバッテリなどと接続し且つ前記スライドコネクタがスライドシートに実装されたシートヒータと接続して、当該スライドコネクタがスライドシートとともに車体に対してスライド移動すると、ワイヤハーネスがスライドコネクタ即ちスライドシートのスライド移動に追従することで、前述した電子機器としてのシートヒータと前述したバッテリとを常に電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−112922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に示された従来の給電装置は、ワイヤハーネスが、プロテクタ内にU字状に折り返された状態で収容されて、折り返しの頂点部の位置をスライドコネクタのスライド移動に伴って変位させることで、該スライドコネクタ即ちスライドシートのスライド移動に追従する。
【0008】
このため、ワイヤハーネスは、スライドシートをスライド移動する度に、折り返しの頂点部の変位が繰り返されることにより弾性力が低下してしまい、前記折り返しの頂点部で座屈したり、プロテクタ内で予期しない方向に曲げられたりして、当該ワイヤハーネスが破損しやすくなる傾向であった。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題点に鑑み、長期に亘って弾性力を維持することができ、折り返しによる座屈や予期しない方向に曲げられて破損することを防止できるワイヤハーネス及び該ワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、導体と該導体を被覆する絶縁体とを有した帯状のフラットケーブルと、前記フラットケーブルに取り付けられ且つ前記フラットケーブルが曲げられると該フラットケーブルを直線状に保つ弾性復元力を生じる弾性部材と、を備えていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記弾性部材が、棒状の金属で構成され且つ前記フラットケーブルの幅方向に蛇行するように屈曲して形成されているとともに、前記フラットケーブルの少なくとも一方の面上に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記弾性部材が、棒状の金属で構成され且つ螺旋状に形成されているとともに、内側に前記フラットケーブルを通していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、車体と、前記車体にスライド自在に設けられ且つ該車体に形成された開口部を開閉するスライド体と、に亘って配索されたワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置において、前記ワイヤハーネスが、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載されたワイヤハーネスで構成されていることを特徴とするスライド体用の給電装置である。
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、導体と該導体を被覆する絶縁体とを有した帯状のフラットケーブルと、このフラットケーブルに取り付けられ且つフラットケーブルが曲げられると該フラットケーブルを直線状に保つ弾性復元力を生じる弾性部材と、を備えているので、弾性部材によりフラットケーブルの屈曲が繰り返されることによる弾性力の低下を防止することができる。このため、長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを得ることができる。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、弾性部材が、棒状の金属で構成され且つフラットケーブルの幅方向に蛇行するように屈曲して形成されているとともに、フラットケーブルの少なくとも一方の面上に取り付けられているので、弾性部材の加工及びフラットケーブルへの取り付けが容易であるとともに、弾性部材を一般的に用いられるフラットケーブルに取り付けるだけで良く、低コスト化を図ることができる。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、弾性部材が、棒状の金属で構成され且つ螺旋状に形成されているとともに、内側にフラットケーブルを通しているので、弾性部材の加工及びフラットケーブルへの取り付けが容易であるとともに、弾性部材の内側に一般的に用いられるフラットケーブルを通すだけで良く、低コスト化を図ることができる。
【0017】
請求項4に記載された発明によれば、車体と該車体にスライド自在に設けられスライド体とに亘って配索されたワイヤハーネスが、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のワイヤハーネスで構成されているので、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1に記載の発明は、弾性部材によりフラットケーブルの屈曲が繰り返されることによる弾性力の低下を防止することができるので、長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを得ることができる。このため、ワイヤハーネスが予期しない方向に曲げられたり座屈したりすることを防止でき、当該ワイヤハーネスが破損することを防止することができる。よって、ワイヤハーネスの導通信頼性の向上を図ることができる。また、一般的に用いられるフラットケーブルに弾性部材を取り付けるだけで良く、加工が容易で且つ低コスト化を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の本発明は、弾性部材の加工及びフラットケーブルへの取り付けが容易であるとともに、弾性部材を一般的に用いられるフラットケーブルに取り付けるだけで良く、低コスト化を図ることができる。このため、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを得ることができる。
【0020】
請求項3に記載の本発明は、弾性部材の加工及びフラットケーブルへの取り付けが容易であるとともに、弾性部材の内側に一般的に用いられるフラットケーブルを通すだけで良く、低コスト化を図ることができる。このため、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを得ることができる。
【0021】
請求項4に記載の本発明は、車体と該車体にスライド自在に設けられスライド体とに亘って配索されたワイヤハーネスが、前述したワイヤハーネスで構成されているので、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置を得ることができる。このため、低コストで、ワイヤハーネスが予期しない方向に曲げられたり座屈したりすることを防止でき、当該ワイヤハーネスが破損することを防止することができるので、低コストでスライド体用の給電装置の接続信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るスライド体用の給電装置が用いられる自動車の要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたスライド体用の給電装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示されたスライド体用の給電装置のサンルーフが開口部を塞ぐ位置に位置付けられた状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示されたスライド体用の給電装置のサンルーフが開口部を開放する位置に位置付けられた状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示されたスライド体用の給電装置のサンルーフが開口部を塞いだ状態で後方側の端部が上方に突出した状態に位置付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】図3に示されたスライド体用の給電装置とルーフ部分の側断面図である。
【図7】図4に示されたスライド体用の給電装置とルーフ部分の側断面図である。
【図8】図5に示されたスライド体用の給電装置とルーフ部分の側断面図である。
【図9】図2に示されたスライド体用の給電装置のワイヤハーネスを示す斜視図である。
【図10】図9に示されたワイヤハーネスの弾性部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態にかかるワイヤハーネス及び該ワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置(以下、単に給電装置と呼ぶ)を、図1乃至図9を参照して説明する。なお、本発明の一実施形態にかかる給電装置1は、自動車4の車体側の電子機器と、ルーフ部分2などの車体に対してスライド自在に設けられたサンルーフ3などのスライド体に設けられた電子機器とを、常に電気的に接続するものを示しているが、本発明では、車体に対してスライド自在に設けられたスライド体に設けられた電子機器に常に電力を供給するものであっても良い。
【0024】
給電装置1は、図1に示す車体としてのルーフ部分2と、該ルーフ部分2にスライド自在に設けられた図2に示すスライド体としてのサンルーフ3と、を備えた自動車4(図1などに示す)に取り付けられる。
【0025】
ルーフ部分2は、図6乃至図8に示すように、互いに重ねられたルーフパネル5とルーフトリム6とを備えている。ルーフパネル5とルーフトリム6とには、互いに連通した開口部5a,6aが設けられている。ルーフトリム6は、ルーフパネル5の乗員室側に取り付けられている。ルーフパネル5には、サンルーフ3を自動車4の前後方向に移動させて、開口部5aをサンルーフ3により開閉するとともに、該開口部5aを塞いだ状態のサンルーフ3を、自動車4の後方側の端部が上方に向かうように自動車4の前方側の端部を中心として回転させるスライド機構7(図1および図2に示す)が取り付けられている。
【0026】
サンルーフ3は、平板状に形成されており、図2などに示す電子機器としての太陽電池パネル8が取り付けられている。そして、サンルーフ3は、前述したスライド機構7により、図6に示すルーフパネル5の開口部5aを塞いだ状態と、図7に示すルーフパネル5の開口部5aを開放した状態とに亘って、自動車4の前後方向に移動される。また、サンルーフ3は、前述したスライド機構7により、図8に示す自動車4の後方側の端部が上方に向かうように自動車4の前方側の端部を中心として回転される。
【0027】
なお、本実施形態では、前述したサンルーフ3に、電子機器としての太陽電池パネル8が取り付けられているが、本発明では、太陽電池パネル8に限らず、タッチセンサや調光パネルなどの種々の電子機器をサンルーフ3に取り付けてもよい。
【0028】
給電装置1は、図3乃至図5に示すように、ワイヤハーネス10と、第1のプロテクタ11と、第2のプロテクタ12と、を備えている。ワイヤハーネス10は、前述したルーフ部分2とサンルーフ3とに亘って配索されたて、車体側の電子機器とサンルーフ3に取り付けられた太陽電池パネル8とを電気的に接続する。このワイヤハーネス10の詳細な構成については後述する。
【0029】
第1のプロテクタ11は、絶縁性の合成樹脂で構成され且つ直線状に延在している。第1のプロテクタ11は、図3乃至図5に示すように、ルーフトリム6の開口部6aの縁部に取り付けられた平板状の底壁部13と、この底壁部13の幅方向の両縁から立設した一対の立設壁14とを備えて、樋状に形成されている。第1のプロテクタ11は、底壁部13がルーフトリム6に取り付けられることで、その断面における開口がサンルーフ3に相対する状態に配置されている。
【0030】
また、第1のプロテクタ11の長手方向は、自動車4の前後方向即ちサンルーフ3のスライド方向と平行である。さらに、第1のプロテクタ11には、自動車4の前方側の端に前記底壁部13と一対の立設壁14との間を塞ぐ閉塞壁15が設けられている。
【0031】
第2のプロテクタ12は、サンルーフ3が開口部5aを塞いだ状態に位置付けられると、サンルーフ3の第1のプロテクタ11と相対する位置に設けられている。第2のプロテクタ12は、絶縁性の合成樹脂で構成され且つ直線状に延在している。第2のプロテクタ12は、図3乃至図5に示すように、サンルーフ3に取り付けられた平板状の底壁部16と、この底壁部16の幅方向の両縁から立設した一対の立設壁17とを備えて、樋状に形成されている。
【0032】
第2のプロテクタ12は、底壁部16がサンルーフ3に取り付けられることで、その断面における開口が第1のプロテクタ11の断面における開口と相対して配置されている。また、第2のプロテクタ12の長手方向は、自動車の前後方向即ちサンルーフ3のスライド方向と平行である。さらに、第2のプロテクタ12は、自動車の後方側の端に前記底壁部16と一対の立設壁17との間を塞ぐ閉塞壁18が設けられている。
【0033】
また、第1のプロテクタ11と第2のプロテクタ12とは、サンルーフ3が開口部5aを塞いだ状態に位置付けられると、第1のプロテクタ11がその略全長に亘って第2のプロテクタ12内に収容される位置に配置されている。
【0034】
前述したワイヤハーネス10は、図2などに示すように、フラットケーブルとしてのフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable:以下FFCと呼ぶ)20と、このFFC20に取り付けられる弾性部材23と、を備えている。
【0035】
なお、本実施形態では、フラットケーブルとしてFFC(Flexible Flat Cable)20を用いているが、本発明では、フラットケーブルとして、フレキシブルプリントサーキット(Flexible Printed Circuit:FPC)などを用いても良い。
【0036】
FFC20は、図9に示すように、複数の導体21と、これら複数の導体21を被覆する絶縁体22と、を備えている。複数の導体21は、それぞれ、断面形状が矩形状に形成されているとともに、直線状に延在している。複数の導体21は、互いに平行(即ち並行)に配置されている。複数の導体21は、それぞれ、可撓性を有している。
【0037】
絶縁体22は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、帯状に形成されている。絶縁体22は、複数の導体21の周囲に押し出し成形により形成されて、該複数の導体21を被覆している。絶縁体22は、可撓性を有している。
【0038】
なお、本実施形態では、押し出し成形により絶縁体22を複数の導体21の周囲に成形して、当該絶縁体22が複数の導体21を被覆しているが、本発明では、絶縁体22として一対の絶縁シートを用いて、これら一対の絶縁シートの間に複数の導体21を挟んで該複数の導体21を被覆するようにしても良い。
【0039】
そして、前述した構成のFFC20は、複数の導体21と絶縁体22とを備えて、可撓性を有した扁平な帯状に形成されている。
【0040】
弾性部材23は、細長い棒状の金属で構成されており、図9に示すように、FFC20の絶縁体22の幅方向に蛇行するように屈曲されて、平面形状が矩形波状に形成されている。弾性部材23は、FFC20の絶縁体22の一方の面22a上に取り付けられて、該FFC20の長手方向に沿って延在している。前記一方の面22aは、図1又は図4に示すように、FFC20即ちワイヤハーネス10が第1及び第2のプロテクタ11,12内にU字状に配置された際に内側に位置する面である。
【0041】
そして、弾性部材23は、FFC20の絶縁体22の一方の面22a上に取り付けられて、このFFC20が曲げられた際に、該FFC20を直線状に保つように弾性復元力を生じる。
【0042】
なお、本実施形態では、前述した弾性部材23が、FFC20の絶縁体22の一方の面22a(図2、図4、図9に示す)上に取り付けられているが、本発明では、弾性部材23をFFC20の絶縁体22の他方の面22b(図2又は図5に示す)上に取り付けていても良く、弾性部材23が絶縁体22の両面22a,22b上に各々取り付けられていても良い。また、本実施形態では、前述した弾性部材23を平面形状が矩形波状に形成しているが、本発明では、弾性部材23を平面形状が正弦波状や三角波状などに形成していても良い。
【0043】
前述した構成のFFC20は、一端部20aと他端部20bとの双方が自動車の前方側に位置し、中央部が自動車の後方側に位置するように配置されて、前記一端部20aが第1のプロテクタ11の底壁部13の自動車4の前方側の端部の内面に重ねられて当該底壁部13に取り付けられるとともに、前記他端部20bが第2のプロテクタ12の底壁部16の自動車4の前方側の端部の内面に重ねられて当該底壁部16に取り付けられている。
【0044】
前述した構成のワイヤハーネス10は、サンルーフ3が開口部5aを塞いだ状態に位置付けられると、FFC20の一端部20aと他端部20bとが互いに間隔をあけて相対して平行となるように、第1及び第2のプロテクタ11,12の底壁部13,16の内面に取り付けられて、当該ワイヤハーネス10が前記底壁部13,16の内面と平行で且つ弾性部材23が内側に位置するようにU字状に配置される。
【0045】
そして、ワイヤハーネス10は、FFC20の一端部20aが第1のプロテクタ11の幅方向に沿って該第1のプロテクタ11から突出して、自動車4の車体側の電子機器に接続しているとともに、FFC20の他端部20bが第2のプロテクタ12の幅方向に沿って該第2のプロテクタ12から突出して、自動車4のサンルーフ3側の電子機器としての太陽電池パネル8に接続している。
【0046】
前述した構成の給電装置1は、FFC20即ちワイヤハーネス10により車体側の電子機器とサンルーフ3側の太陽電池パネル8とを常に電気的に接続している。そして、給電装置1は、図6に示すサンルーフ3が開口部5aを塞いだ状態と、図7に示すサンルーフ3が開口部5aを開放した状態とに亘って移動する際に、ワイヤハーネス10がFFC20の可撓性及び弾性部材23の弾性復元力により第1及び第2のプロテクタ11,12の内面に接触した状態に保たれる。
【0047】
さらに、給電装置1は、図6に示すサンルーフ3が開口部5aを塞いだ状態から図8に示すサンルーフ3がその後方側の端部が上方に移動した状態に移動する際にも、ワイヤハーネス10がFFC20の可撓性及び弾性部材23の弾性復元力により第1及び第2のプロテクタ11,12の内面に接触した状態に保たれる。
【0048】
本実施形態によれば、導体21と該導体21を被覆する絶縁体22とを有した帯状のFFC20と、このFFC20に取り付けられ且つFFC20が曲げられると該FFC20を直線状に保つ弾性復元力を生じる弾性部材23と、を備えているので、弾性部材23によりFFC20の屈曲が繰り返されることによる弾性力の低下を防止することができ、よって、長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネス10を得ることができる。
【0049】
このため、ワイヤハーネス10が予期しない方向に曲げられたり座屈したりすることを防止でき、当該ワイヤハーネス10が破損することを防止することができる。よって、ワイヤハーネス10の導通信頼性の向上を図ることができる。また、一般的に用いられるFFC20に弾性部材23を取り付けるだけで良く、加工が容易で且つ低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、弾性部材23が、棒状の金属で構成され且つFFC20の幅方向に蛇行するように屈曲して形成されているとともに、FFC20の少なくとも一方の面22a上に取り付けられているので、弾性部材23の加工及びFFC20への取り付けが容易であるとともに、弾性部材23を一般的に用いられるFFC20に取り付けるだけで良く、低コスト化を図ることができる。このため、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネス10を得ることができる。
【0051】
さらに、車体としてのルーフ部分2と該ルーフ部分2にスライド自在に設けられたスライド体としてのサンルーフ3とに亘って配索されたワイヤハーネスが、前述したワイヤハーネス10で構成されているので、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネス10を備えたスライド体用の給電装置1を得ることができる。このため、低コストでワイヤハーネス10が予期しない方向に曲げられたり座屈したりすることを防止でき、当該ワイヤハーネス10が破損することを防止することができるので、低コストでスライド体用の給電装置1の接続信頼性の向上を図ることができる。
【0052】
前述した実施形態では、ワイヤハーネス10は、弾性部材23がFFC20の絶縁体22の幅方向に蛇行するように屈曲して形成され且つ該絶縁体22の一方の面22a上に取り付けられて構成されている。しかしながら、本発明では、図10に示すように、ワイヤハーネス10が、弾性部材23’を螺旋状に形成し且つ内側にFFC20を通して構成されていても良い。なお、図10において、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
図10に示す場合では、弾性部材23’が、細長い棒状の金属で構成されて、螺旋状に形成されているとともに、内側にFFC20を通している。このため、弾性部材23’の加工及びFFC20への取り付けが容易であるとともに、弾性部材23’の内側に一般的に用いられるFFC20を通すだけで良く、低コスト化を図ることができる。したがって、低コストで長期に亘って弾性力を維持できるワイヤハーネス10を得ることができる。
【0054】
なお、図10に示す場合では、弾性部材23’を螺旋状に形成し且つ内側にFFC20を通して構成されているが、本発明では、細長い棒状の金属からなる弾性部材を、FFC20の周りに巻き付けて構成されていても良い。
【0055】
なお、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 スライド体用の給電装置
2 ルーフ部分(車体)
3 サンルーフ(スライド体)
5a 開口部
6a 開口部
10 ワイヤハーネス
20 FFC(フラットケーブル)
21 導体
22 絶縁体
22a 一方の面
23 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と該導体を被覆する絶縁体とを有した帯状のフラットケーブルと、
前記フラットケーブルに取り付けられ且つ前記フラットケーブルが曲げられると該フラットケーブルを直線状に保つ弾性復元力を生じる弾性部材と、
を備えていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記弾性部材が、棒状の金属で構成され且つ前記フラットケーブルの幅方向に蛇行するように屈曲して形成されているとともに、前記フラットケーブルの少なくとも一方の面上に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記弾性部材が、棒状の金属で構成され且つ螺旋状に形成されているとともに、内側に前記フラットケーブルを通していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
車体と、前記車体にスライド自在に設けられ且つ該車体に形成された開口部を開閉するスライド体と、に亘って配索されたワイヤハーネスを備えたスライド体用の給電装置において、
前記ワイヤハーネスが、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載されたワイヤハーネスで構成されていることを特徴とするスライド体用の給電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−151906(P2011−151906A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9799(P2010−9799)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】