説明

ワイヤハーネス結束用テープ材

【課題】電線群の結束機能と、結束した電線群の保護機能と、他部材との干渉音の防止機能とを有するテープ材を提供する。
【解決手段】二層の樹脂層11A、11Bからなるテープ本体11と、該テープ本体11の一側面に粘着固定する両面粘着テープ材12とからなり、テープ本体11の両面粘着テープ12と一面が粘着される第一樹脂層11Aと、第一樹脂層11Aの他面側の第二樹脂層11Bとは、第一樹脂層11Aを第二樹脂層11Bよりも硬質とすると共に第一樹脂層11Aを第二樹脂層11Bよりも薄くしており、第二樹脂層11Bを外面側とすると共に両面粘着テープ12を内面側としてワイヤハーネスW/Hの外周面に巻き付ける構成としていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線群の外周に巻き付けて結束するワイヤハーネス結束用テープ材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線群の主な外装材として、多数の電線群の外周に巻き付けて結束するテープ材と、電線束の外周に被せて外部干渉材のエッジ等から電線を保護する丸チューブ材と、さらに、耐摩耗性が必要な配索領域の電線群に被せる樹脂製のコルゲートチューブがある。
【0003】
前記テープ材は、偏平な連続した帯状体で、ビニルテープ、イラックステープ、シリコンテープ、ソフトウレタンテープ、紙テープ等が用いられている。
前記チューブ材は、電線群の外周面に被せる筒形状で、ビニルチューブ、イラックスチューブ等がある。
【0004】
また、ワイヤハーネスの配索経路に沿ってバリやエッジの干渉がある場合には、合成樹脂製で剛性・強度を有するコルゲートチューブが用いられている。コルゲートチューブは、図5に示すように、環状の谷部2と山部3とを軸線方向に交互に連続させた断面視波形状よりなる(特開2006−230043号公報等)。該コルゲートチューブ1には軸線方向に沿ってスリット4が設けられ、該スリット4を開いて電線群5に被せている。
【0005】
前記テープ材は結束する電線群の外径に拘わり無く用いることができるが、コルゲートチューブと比較して電線の保護機能が低い。
しかしながら、樹脂成形品からなるコルゲートチューブはサイズが段階的に規格設定されているため、図5に示すように、電線群が小径である場合、コルゲートチューブ1と電線束5との間に隙間が発生する。その場合、車両走行時にコルゲートチューブ内で電線群のガタ付き、異音発生の要因となると共に、電線群が小径であるのにコルゲートチューブが大径となるため、配索スペースをとる問題がある。また、コルゲートチューブは、前記のように数種類のサイズを予め準備する必要があり、在庫や金型、生産等の管理面でも手間がかかる。
【0006】
さらに、チューブ材を外装材として用いる場合、該チューブ材に電線群を貫通させなければならず、作業性に劣る問題がある。
特に、他部材とワイヤハーネスとの干渉により異音発生の可能性がある場合は、前記チューブ材の外周に発泡ウレタンシート等からなる防音シートを巻き付けて、他部材との干渉音の低減を図る必要があり、一層作業工数が増える。
また、電線束の外周に、テープ材、チューブ材、防音材が巻きつけられて多層構造となるため、ワイヤハーネスが肥大化し、配索性が低下する点にも問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2006−230043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、電線に対する取り付け作業性のよいテープ材を改良して、電線保護性能を高めると共に防音性能も備え、かつワイヤハーネスの肥大化を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の電線群の外周に巻き付けて結束するワイヤハーネス結束用テープ材であって、
二層の樹脂層からなるテープ本体と、該テープ本体の一側面に粘着固定する両面粘着テープ材とからなり、
前記テープ本体の前記両面粘着テープと一面が粘着される第一樹脂層と、該第一樹脂層の他面側の第二樹脂層とは、第一樹脂層を第二樹脂層よりも硬質とすると共に第一樹脂層を第二樹脂層よりも薄くしており、
前記第二樹脂層を外面側とすると共に前記両面粘着テープを内面側としてワイヤハーネスの外周面に巻き付ける構成としていることを特徴とするワイヤハーネス結束用テープ材の提供を課題としている。
【0010】
本発明のワイヤハーネス結束用テープ材は、粘着テープを備えて電線結束材としての性能を有すると共に、テープ本体に硬質の第一樹脂層を形成していることによって、バリやエッジ等との干渉に対する耐摩耗性が高まり、電線保護性能も具備したものとなる。
また、硬質で薄い前記第一樹脂層の外側に、該第一樹脂層よりも硬度の低い第二樹脂層を厚く形成することにより、テープ材表面に緩衝性が付与され、ワイヤハーネスと他部材との接触に因る衝撃を緩和すると共に、干渉音を低減する防音機能をも備えることができる。
さらに、前記第一樹脂層を第二樹脂層よりも薄く形成しているため、このテープ材をワイヤハーネスに取り付けてもワイヤハーネス自体の屈曲性を保つことができる。これにより、可動部位に配索されるワイヤハーネスにも本発明のテープ材を好適に用いることができる。
【0011】
従って、このテープ材の上にコルゲートチューブ等のチューブ材や防音シートを被せる必要がないため、工数および部品数を削減でき、ワイヤハーネス製造の作業性を高めることができる。
また、チューブ材と異なり、テープ材は1種類のサイズで多様な径の電線束に対応できるため、複数サイズを使い分ける必要がなく、在庫や生産の管理面で作業効率が向上すると共に、金型数も減り、コスト削減も図ることができる。
さらに、テープ材は、電線束の外周に密着させながら巻き付けて外装するため、チューブ材と異なり、電線束の外周面とテープ材の内周面との間に隙間が発生することはなく、ワイヤハーネスの外径の肥大化を防止できる。
【0012】
前記テープ本体の第一樹脂層はポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリイミド、アミドイミド、エステルイミド、エポキシ、ウレタンより選択される樹脂からなる一方、
前記第二樹脂層は塩化ビニル、発泡ウレタン、EPDM、ポリエチレンから選択される樹脂からなる。
【0013】
前記第一樹脂層と第二樹脂層を一体化した前記テープ本体は、エンボス加工で凹凸部が設けられ、前記両面粘着テープは前記第一樹脂層の凹部の底面外面に粘着固定され、
前記第二樹脂層の凸部を外面側としてワイヤハーネスの外周面に巻き付ける構成としていることが好ましい。
【0014】
前記凸部を備えた形状とすることにより、バリやエッジがある箇所では、まず、凸部がバリやエッジと接触して電線への接触を予防するうえ、前記凸部内には空間が形成されるため、他部材との干渉に対する緩衝性および防音性を一層高めることができる。
【0015】
前記凸部は断面円形状の膨出部、断面半円形状の膨出部、四角等の断面多角形状の膨出部からなり、これら独立した凸部を縦横に所要間隔を空けて設けてもよい。あるいは前記凸部は、ストライプ状やメッシュ状の膨出部としてもよい。該ストライプ状の凸部は、テープ本体の長手方向に対して平行方向、直交方向、傾斜方向のいずれの方向に設けてもよい。
【0016】
前記凸部の突出高さは1.1〜2.5mmとしていることが好ましい。
前記突出高さを前記範囲内としているのは、1.1mm未満ではバリやエッジによる干渉から電線を保護するには不十分であり、2.5mmを超えると、ワイヤハーネスの外径が太くなり、配索性が低下することに因る。
【0017】
前記テープ本体の長さ方向に直交する幅方向の一端縁に沿った部分に、前記エンボス加工をしていない平坦部を設け、電線群に螺旋状に巻き付けたときに前記平坦部をテープの重ね代としていることが好ましい。
このように、平坦部を重ねて巻き付けることにより、巻き付けやすくなると共に、巻き付けるテープ材の間に隙間を発生させず、電線群の保護機能を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明のワイヤハーネス結束用テープ材によれば、テープ本体を、硬質で薄い第一樹脂層と、該第一樹脂層よりも硬度が低く肉厚の第二樹脂層との二層構成としているため、該テープ材は、前記第一樹脂層によって耐摩耗性が高まると共に、前記第二樹脂層によってテープ材表面に緩衝性が付与され、他部材との干渉音を低減することができる。従って、該テープ材を電線群に巻きつけて結束すると、電線保護と防音を同時に図ることができ、電線群の結束機能と保護機能と防音機能の全てを合わせ持つものとなる。よって、コルゲートチューブ等のチューブ材や防音シートによる外装が不要となり、ワイヤハーネス製造工数を削減でき、作業性を向上できると共に、部材費等も削減でき、コスト低減を図ることができる。
【0019】
また、第一樹脂層を第二樹脂層よりも薄く形成することにより、ワイヤハーネス自体の屈曲性を維持することができ、稼動部位への配索されるワイヤハーネスにも本発明のテープ材を取り付けることができる。
さらに、チューブ材と異なり、テープ材は1種類のサイズで多様な径の電線束に使用できるため、在庫、生産、金型の管理が容易となる。
さらにまた、本発明のテープ材は、電線束の外周面に密着して巻きつけられるため、外装材を備えたワイヤハーネスの肥大化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に本発明の第1実施形態に係る自動車用ワイヤハーネスの結束用テープ材10を示す。
【0021】
前記テープ材10は、第一樹脂層11Aと第二樹脂層11Bの二層からなるテープ本体11と、該テープ本体11の前記第一樹脂層11A側の一面に粘着固定される両面粘着テープ12とを層状に一体化した構成としている。
【0022】
前記第一樹脂層11Aは第二樹脂層11Bよりも硬質とし、かつ、図2(A)に示すように、肉厚を薄く形成している。本実施形態では、第一樹脂層11Aはポリプロピレンで形成し、肉厚T1を0.1mmとし、第二樹脂層11Bは塩化ビニルで形成し、肉厚T2を0.3mmとしている。
【0023】
前記テープ本体11は、図1に示すように、長さ方向と直交する幅方向の一側部に長さ方向に連続して凹凸部13を設け、該他側部は凹凸部を設けていない平坦部16としている。本実施形態では、テープ幅は19mmとし、凹凸部13の幅は11mm、平坦部16の幅は8mmとしている。
【0024】
前記凹凸部13は、まず、ポリエチレン製のテープ基材の表面に塩化ビニルをラミネート加工し、このポリエチレン製の第一樹脂層11Aと塩化ビニル性の第二樹脂層11Bを重ね合わせてなるテープ基材にエンボス加工を施し、第二樹脂層11B側に膨出させた凸部14を形成している。該凸部14に対して相対的に凹んだ部分を凹部15と称している。
【0025】
前記凸部14は突出端面を円形面とした円筒形状の膨出部からなり、該凸部14を幅方向に千鳥配置として均等な間隔をあけて密に形成している。本実施形態では、凸部14の直径D1を3mm、突出高さH1を1.5mmとしている。
また、凸部14間の距離は、図1に示すように、テープ長さ方向の距離L1を0.4mmとし、千鳥方向の距離L2を0.4mmとしている。
【0026】
前記のように、凹凸部13を形成した部分の幅方向の一側に、エンボス加工を施していない平坦部16を設け、この平坦部16を重ね代としている。
【0027】
前記両面粘着テープ12は、図2(A)(B)に示すように、凸部14の突出側と反対側のテープ本体11の外面に平面状に粘着している。即ち、第一樹脂層11Aの凹部15の底面の外面および平坦面16の外面に層状に重ねて粘着固定して粘着面17を形成しており、凸部14の内面には粘着せず、凸部14の内部に衝撃吸収用となる空間18を形成している。
【0028】
前記ワイヤハーネス結束用テープ材10は、図3に示すように、電線群Wを結束する際、凸部14の突出側を外面側とし、粘着面17を内面側にして、平坦部16を重ね代として螺旋状に電線群Wの束の外周に巻きつけ、ハーフラップ巻きして結束している。
【0029】
前記構成よりなるワイヤハーネス結束用テープ材10を用いると、粘着面17により複数の電線群Wを結束できると共に、ポリプロピレン製の第一樹脂層11Aによって所要の剛性・強度を付与されたテープ本体11と、緩衝部として機能する前記凸部14とにより、車両のバリやエッジの干渉から電線を保護して磨耗を防ぐことができる。また、テープ本体11の表面側に形成された塩化ビニル製の第二樹脂層11Bと、前記凸部14の内部に形成された空間18の緩衝機能によって、他部材との接触による干渉音を低減することができる。
【0030】
このように、本発明の結束用テープ材10は電線群Wの結束機能と保護機能と防音機能の全てを兼ね備えるため、テープ材を電線群に巻き付けて結束した後、さらに、コルゲートチューブ等のチューブ材を被せる必要がない。よって、ワイヤハーネスW/Hの製造工数を削減できると共に、部材コストも削減できる。
【0031】
また、テープ材10は電線群Wに巻きつけて外装するため、電線群の径の大小に拘わらず、1種類のサイズで多様な径の電線束に対応でき、在庫、生産、金型の管理が容易となる。さらに、テープ材10は粘着面17で電線群Wの外周面に密着して巻きつけられるうえ、凸部14の突出高さH1は2.5mm以下としているため、外装材を取り付けた状態でのワイヤハーネスW/Hの肥大化を抑制できる。
さらに、硬質の第一樹脂層11Aを第二樹脂層Bよりも薄く形成しているため、外装材をとりつけた状態でのワイヤハーネスW/Hの屈曲性を維持することができる。
【0032】
図4に本発明の第二実施形態を示す。
第二実施形態におけるテープ本体11は、平坦な第一樹脂層11Aと凹凸部13を形成した第二樹脂層11Bとの二層構造よりなる。
【0033】
即ち、まず、塩化ビニル製のテープ基材にエンボス加工を施して、該基材に複数の凸部14を膨出させた凹凸部13を形成し、次に、前記凸部14に対して相対的に凹んだ凹部15の底面外面と平坦部16の外面側に、ポリプロピレン製のテープ基材を平面状にラミネート接着させている。両面粘着テープ12は、このラミネート接着により形成されたポリプロピレン製の第一樹脂層11Aの他面側全面に層状に粘着固定する。
【0034】
本実施形態では、テープ本体11は、第二樹脂層11Bのみに凹凸部13が形成され、硬質の第一樹脂層11Aは平坦であるため、テープ材10を取り付けた状態でのワイヤハーネスの屈曲性を維持することができる。また、凸部14が第二樹脂層11Bのみで形成されることにより、該凸部14の剛性が低減し、バリやエッジと接触したときの緩衝機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態に係るワイヤハーネス結束用テープ材の平面図である。
【図2】(A)は図1のA−A線断面図であり、(B)は図1のB−B線断面図である。
【図3】図1に示すテープ材の電線束への巻き付け作業を示す斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態を示す断面図である。
【図5】従来例の図である。
【符号の説明】
【0036】
10 テープ材
11 テープ本体
11A 第一樹脂層
11B 第二樹脂層
12 両面粘着テープ
13 凹凸部
14 凸部
15 凹部
17 粘着面
W 電線群
W/H ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線群の外周に巻き付けて結束するワイヤハーネス結束用テープ材であって、
二層の樹脂層からなるテープ本体と、該テープ本体の一側面に粘着固定する両面粘着テープ材とからなり、
前記テープ本体の前記両面粘着テープと一面が粘着される第一樹脂層と、該第一樹脂層の他面側の第二樹脂層とは、第一樹脂層を第二樹脂層よりも硬質とすると共に第一樹脂層を第二樹脂層よりも薄くしており、
前記第二樹脂層を外面側とすると共に前記両面粘着テープを内面側としてワイヤハーネスの外周面に巻き付ける構成としていることを特徴とするワイヤハーネス結束用テープ材。
【請求項2】
前記テープ本体の第一樹脂層はポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリイミド、アミドイミド、エステルイミド、エポキシ、ウレタンより選択される樹脂からなる一方、
前記第二樹脂層は塩化ビニル、発泡ウレタン、EPDM、ポリエチレンから選択される樹脂からなる請求項1に記載のワイヤハーネス結束用テープ材。
【請求項3】
前記第一樹脂層と第二樹脂層を一体化した前記テープ本体は、エンボス加工で凹凸部が設けられ、前記両面粘着テープは前記第一樹脂層の凹部の底面外面に粘着固定され、
前記第二樹脂層の凸部を外面側としてワイヤハーネスの外周面に巻き付ける構成としている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス結束用テープ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−127022(P2008−127022A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310729(P2006−310729)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】