ワイヤハーネス
【課題】インストルメントパネルに配索されるワイヤハーネスであって、簡単な構造であって自身に形状保持性が備わってことにより、配索ルートの選定の自由度を向上させることができると共に、固定箇所を少なくして車両への取付作業性の向上を図ることのできるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスWHは、複数の電線Wの束の外側を覆うように発泡体1がモールド成形されており、発泡体1が、電線Wの束の配索形状に倣う形状に形成されている。この場合の発泡体1は、ビーズ法により発泡成形されたものである。
【解決手段】ワイヤハーネスWHは、複数の電線Wの束の外側を覆うように発泡体1がモールド成形されており、発泡体1が、電線Wの束の配索形状に倣う形状に形成されている。この場合の発泡体1は、ビーズ法により発泡成形されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の束の外側を発泡体でモールドしたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスは、一般的に、複数の電線を束ねてテープ巻きしただけの構造のものであった。あるいは、電線束の外側に樹脂シートやチューブ等の外装材を装着し、必要に応じて更にテープ巻きを加えただけの構造のものであった。
【0003】
従って、ワイヤハーネス自体に自身の形状を保つための強度がないことから、例えば、自動車のインストルメントパネルの裏側に配索する場合は、インストルメントパネル内にあるリンフォースに支持をとって、ワイヤハーネスを配索しているのが現状である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−166061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のようにリンフォースに支持をとってワイヤハーネスを配索する場合、ワイヤハーネスの配索ルートがリンフォースの周辺に限定されてしまうため、配索ルートを自由に選定することができないという問題があった。
【0006】
また、リンフォースの周辺は各種機器が多く設置される場所でもあるため、配索スペースの確保に苦労するという問題もあった。
【0007】
更に、従来のワイヤハーネスは、弛んだり曲がったりしやすく、形状が定まっていないから、車両への組付時には、多数点をクランプで固定する必要があり、車両への取付作業が大変であった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造であって自身に形状保持性が備わっていることにより、配索ルートの選定の自由度を向上させることができると共に、固定箇所を少なくして車両への取付作業性の向上を図ることのできるインストルメントパネル用のワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) インストルメントパネルに配索されるワイヤハーネスであって、
複数の電線の束の外側を覆うように発泡体がモールド成形されており、前記発泡体が、前記電線の束の配索形状に倣う形状に形成されることを特徴とするワイヤハーネス。
【0010】
(2) 前記発泡体が、ビーズ法により発泡成形されたものであることを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネス。
【0011】
(3) 前記発泡体の外面に一体に発泡成形された凸部が設けられ、前記凸部の突出方向に誘導されて、前記電線の束からの分岐線が外部に引き出されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネス。
【0012】
上記(1)の構成のワイヤハーネスによれば、電線束の外側を覆う発泡体が、従来のワイヤハーネスよりも大きな一定の剛性を持っているので、リンフォースに多数の支持をとりながら配索する必要がなくなり、配索経路の選定の自由度が向上する。
【0013】
また、配索スペースさえあれば、どこでも配索できるようになるので、リンフォースに沿って配索スペースを確保する苦労もなくなる。
また、ワイヤハーネスの固定箇所も削減できるので、車両への組付作業性も向上する。
【0014】
また、電線束の外側を緩衝性を持つ発泡体で覆うので、周辺部品との干渉や電線間の干渉による摩耗・異音の発生も無くせる。
【0015】
また、従来では電線を保護するためにコルゲートチューブやビニールシートあるいはテープ等の多種多様な外装材を手作業で電線束に取り付けていたが、本発明では、発泡体の一括モールド成形を施すだけで、電線を保護できるようになるため、外装材の取付作業性の向上が図れる。
【0016】
また、例えば、硬質の樹脂モールド材で電線束を覆うようにした場合は、樹脂材と電線との間の固着力が大きくなるため、成形後の養生時に電線と樹脂材との膨張率差に起因して、樹脂材や電線に余計な応力が加わり、最悪の場合、樹脂材が破損したり電線が断線したりするおそれがあるが、発泡体を電線束の外側にモールド成形した場合は、電線と発泡体との間に滑りを発生させて固着力を低く抑えることができるため、養生時に材料間に発生する膨張差を吸収することができ、熱膨張差による成形体の破損や電線の断線等の不具合の発生を防ぐことができる。
【0017】
また、従来では、ワイヤハーネスの中でジョイント回路を構成する場合、ジョイントコネクタを使用して集中ジョイントをすることが多いが、本発明では、ボンダージョイント(キャップレス)をモールド内へ取り込むことができるようになるため、コストダウンが可能となる。
【0018】
上記(2)の構成のワイヤハーネスによれば、発泡体がビーズ法(一次発泡した米粒程度の大きさのビーズを金型内に敷き詰め、それを加熱し、二次発泡させる発泡方法)で発泡成形されているので、電線束の外表面の複雑で微細な凹凸に発泡体が入りにくくなり、固着量を更に低く抑えることができる。
【0019】
上記(3)の構成のワイヤハーネスによれば、発泡体の外面に一体に成形された凸部によって、電線束から外に出て行く分岐線の方向付けがなされるので、分岐線の誤組付の防止を図ることができると共に、ワイヤハーネスの組付性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線束の外側を発泡体で覆うという簡単な構造の採用により、電線束の配索形状に沿った形状保持性を発揮することができる。従って、配索ルートの選定の自由度を向上させることができると共に、固定箇所を少なくして車両への取付作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib矢視断面図である。
【図2】実施形態のワイヤハーネスの製造工程の説明図である。
【図3】図2の次の工程の説明図である。
【図4】図3の次の工程の説明図である。
【図5】図4の次の工程の説明図である。
【図6】図5の次の工程の説明図である。
【図7】図6の次の工程の説明図である。
【図8】図7の次の工程の説明図である。
【図9】図8の次の工程の説明図である。
【図10】図9の次の工程の説明図である。
【図11】図10の次の工程の説明図である。
【図12】本発明の別の実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib矢視断面図、図2〜図11は同ワイヤハーネスの製造工程の説明図である。
【0023】
このワイヤハーネスWHは、インストルメントパネルに配索されるものであって、複数の被覆電線Wの束の外側を覆うように発泡体1がモールド成形され、しかも発泡体1が、電線Wの束の配索形状に倣う形状に形成されたものである。この場合の発泡体1は、ビーズ法により発泡成形されたものであり、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォームよりなる。ビーズ法ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂と炭化水素系の発泡剤からなる原料ビーズを予備発泡させた後に、金型に充填し加熱することによって作られている。
【0024】
次に、このワイヤハーネスWHの製造方法について説明する。
まず、図2、図3に示すように、下金型11が一体化された配索治具板10を用意する。配索治具板10の上には、下金型11と共に配索治具12が適当に配置されている。この配索治具板10の上に、端末にコネクタCなどが取り付けられたサブワイヤハーネスW1を配索する。そして、サブワイヤハーネスW1のうち、発泡体で覆う予定の箇所を、下金型11の内部に収容する。
【0025】
同様にして、図3、図4に示すように、次々にサブワイヤハーネスW2、W3を配索する。ここで、サブワイヤハーネスW3には、後嵌め端子15が付いているので、必要に応じて先に配索したサブワイヤハーネスW1、W2のコネクタCのハウジングの中に挿入する。
【0026】
サブワイヤハーネスW1〜W3を配索したら、次に図5、図6に示すように、下金型11の適当箇所にクランプ14をセットする。そして図7に示すように、上金型13を下金型11の上に被せて型締めする。
【0027】
型締めしたら、図8に示すように、成形材料20を、下金型11と上金型13で形成されるキャビティに充填する。ここでは、一次発泡させた原料ビーズを充填する。充填したら、図9に示すように、スチーム21をキャビティに導入し加熱する。加熱して発泡させたら、図10に示すように養生して冷却する。冷却が完了したら、図11に示すように、上金型13を取り外し、下金型11から、成形された発泡体1を脱型させる。これにより、電線束の必要箇所が発泡体1で覆われたワイヤハーネスWHが得られる。
【0028】
このように構成したワイヤハーネスWHによれば、電線Wの束の外側を覆う発泡体1が、従来のワイヤハーネスよりも大きな一定の剛性を持っているので、リンフォースに多数の支持をとりながら配索する必要がなくなり、配索経路の選定の自由度が向上する。
【0029】
また、配索スペースさえあれば、どこでも配索できるようになるので、リンフォースに沿って配索スペースを確保する苦労もなくなる。
【0030】
また、ワイヤハーネスWHの固定箇所も削減できるので、車両への組付作業性も向上する。
【0031】
また、電線Wの束の外側を緩衝性を持つ発泡体1で覆うので、周辺部品との干渉や電線間の干渉による摩耗・異音の発生も無くせる。
【0032】
また、従来では電線を保護するためにコルゲートチューブやビニールシートあるいはテープ等の多種多様な外装材を手作業で電線束に取り付けていたが、本実施形態のワイヤハーネスWHでは、発泡体1の一括モールド成形を施すだけで、電線Wを保護できるようになるため、外装材の取付作業性の向上が図れる。
【0033】
また、例えば、硬質の樹脂モールド材で電線束を覆うようにした場合は、樹脂材と電線との間の固着力が大きくなるため、成形後の養生時に電線と樹脂材との膨張率差に起因して、樹脂材や電線に余計な応力が加わり、最悪の場合、樹脂材が破損したり電線が断線したりするおそれがあるが、発泡体1を電線Wの束の外側にモールド成形しているので、電線Wと発泡体1との間に滑りを発生させて固着力を低く抑えることができる。
【0034】
そのため、養生時に材料間に発生する膨張差を吸収することができ、熱膨張差による成形体(発泡体1)の破損や電線Wの断線等の不具合の発生を防ぐことができる。
【0035】
また、従来では、ワイヤハーネスの中でジョイント回路を構成する場合、ジョイントコネクタを使用して集中ジョイントをすることが多いが、本実施形態では、ボンダージョイント(キャップレス)をモールド内に取り込むことができるようになるため、コストダウンが可能となる。
【0036】
また、発泡体1をビーズ法で発泡成形しているので、電線Wの束の外表面の複雑で微細な凹凸に発泡体1が入りにくくなり、固着量を更に低く抑えることができる。従って、養生時の発泡体1と電線Wの熱膨張差をより確実に吸収することができ、品質を保証することができる。
【0037】
また、図12は本発明の他の実施形態のワイヤハーネスの斜視図である。
図12に示すワイヤハーネスのように、発泡体1の外面に一体に発泡成形された数センチ程度の突出量の凸部1aを設け、その凸部1aの突出方向に分岐線WB誘導することで、幹線WA(電線Wの束)から分岐した分岐線WBを外部に引き出すようにした場合は、発泡体1から出て行く分岐線WBの方向付けを行うことができるので、分岐線WBの誤組付の防止を図ることができると共に、ワイヤハーネスWHの組付性の向上が図れる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0039】
WH ワイヤハーネス
W 電線
WA 幹線(電線の束)
WB 分岐線
1 発泡体
1a 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の束の外側を発泡体でモールドしたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスは、一般的に、複数の電線を束ねてテープ巻きしただけの構造のものであった。あるいは、電線束の外側に樹脂シートやチューブ等の外装材を装着し、必要に応じて更にテープ巻きを加えただけの構造のものであった。
【0003】
従って、ワイヤハーネス自体に自身の形状を保つための強度がないことから、例えば、自動車のインストルメントパネルの裏側に配索する場合は、インストルメントパネル内にあるリンフォースに支持をとって、ワイヤハーネスを配索しているのが現状である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−166061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のようにリンフォースに支持をとってワイヤハーネスを配索する場合、ワイヤハーネスの配索ルートがリンフォースの周辺に限定されてしまうため、配索ルートを自由に選定することができないという問題があった。
【0006】
また、リンフォースの周辺は各種機器が多く設置される場所でもあるため、配索スペースの確保に苦労するという問題もあった。
【0007】
更に、従来のワイヤハーネスは、弛んだり曲がったりしやすく、形状が定まっていないから、車両への組付時には、多数点をクランプで固定する必要があり、車両への取付作業が大変であった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造であって自身に形状保持性が備わっていることにより、配索ルートの選定の自由度を向上させることができると共に、固定箇所を少なくして車両への取付作業性の向上を図ることのできるインストルメントパネル用のワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) インストルメントパネルに配索されるワイヤハーネスであって、
複数の電線の束の外側を覆うように発泡体がモールド成形されており、前記発泡体が、前記電線の束の配索形状に倣う形状に形成されることを特徴とするワイヤハーネス。
【0010】
(2) 前記発泡体が、ビーズ法により発泡成形されたものであることを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネス。
【0011】
(3) 前記発泡体の外面に一体に発泡成形された凸部が設けられ、前記凸部の突出方向に誘導されて、前記電線の束からの分岐線が外部に引き出されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネス。
【0012】
上記(1)の構成のワイヤハーネスによれば、電線束の外側を覆う発泡体が、従来のワイヤハーネスよりも大きな一定の剛性を持っているので、リンフォースに多数の支持をとりながら配索する必要がなくなり、配索経路の選定の自由度が向上する。
【0013】
また、配索スペースさえあれば、どこでも配索できるようになるので、リンフォースに沿って配索スペースを確保する苦労もなくなる。
また、ワイヤハーネスの固定箇所も削減できるので、車両への組付作業性も向上する。
【0014】
また、電線束の外側を緩衝性を持つ発泡体で覆うので、周辺部品との干渉や電線間の干渉による摩耗・異音の発生も無くせる。
【0015】
また、従来では電線を保護するためにコルゲートチューブやビニールシートあるいはテープ等の多種多様な外装材を手作業で電線束に取り付けていたが、本発明では、発泡体の一括モールド成形を施すだけで、電線を保護できるようになるため、外装材の取付作業性の向上が図れる。
【0016】
また、例えば、硬質の樹脂モールド材で電線束を覆うようにした場合は、樹脂材と電線との間の固着力が大きくなるため、成形後の養生時に電線と樹脂材との膨張率差に起因して、樹脂材や電線に余計な応力が加わり、最悪の場合、樹脂材が破損したり電線が断線したりするおそれがあるが、発泡体を電線束の外側にモールド成形した場合は、電線と発泡体との間に滑りを発生させて固着力を低く抑えることができるため、養生時に材料間に発生する膨張差を吸収することができ、熱膨張差による成形体の破損や電線の断線等の不具合の発生を防ぐことができる。
【0017】
また、従来では、ワイヤハーネスの中でジョイント回路を構成する場合、ジョイントコネクタを使用して集中ジョイントをすることが多いが、本発明では、ボンダージョイント(キャップレス)をモールド内へ取り込むことができるようになるため、コストダウンが可能となる。
【0018】
上記(2)の構成のワイヤハーネスによれば、発泡体がビーズ法(一次発泡した米粒程度の大きさのビーズを金型内に敷き詰め、それを加熱し、二次発泡させる発泡方法)で発泡成形されているので、電線束の外表面の複雑で微細な凹凸に発泡体が入りにくくなり、固着量を更に低く抑えることができる。
【0019】
上記(3)の構成のワイヤハーネスによれば、発泡体の外面に一体に成形された凸部によって、電線束から外に出て行く分岐線の方向付けがなされるので、分岐線の誤組付の防止を図ることができると共に、ワイヤハーネスの組付性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線束の外側を発泡体で覆うという簡単な構造の採用により、電線束の配索形状に沿った形状保持性を発揮することができる。従って、配索ルートの選定の自由度を向上させることができると共に、固定箇所を少なくして車両への取付作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib矢視断面図である。
【図2】実施形態のワイヤハーネスの製造工程の説明図である。
【図3】図2の次の工程の説明図である。
【図4】図3の次の工程の説明図である。
【図5】図4の次の工程の説明図である。
【図6】図5の次の工程の説明図である。
【図7】図6の次の工程の説明図である。
【図8】図7の次の工程の説明図である。
【図9】図8の次の工程の説明図である。
【図10】図9の次の工程の説明図である。
【図11】図10の次の工程の説明図である。
【図12】本発明の別の実施形態の要部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib矢視断面図、図2〜図11は同ワイヤハーネスの製造工程の説明図である。
【0023】
このワイヤハーネスWHは、インストルメントパネルに配索されるものであって、複数の被覆電線Wの束の外側を覆うように発泡体1がモールド成形され、しかも発泡体1が、電線Wの束の配索形状に倣う形状に形成されたものである。この場合の発泡体1は、ビーズ法により発泡成形されたものであり、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォームよりなる。ビーズ法ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂と炭化水素系の発泡剤からなる原料ビーズを予備発泡させた後に、金型に充填し加熱することによって作られている。
【0024】
次に、このワイヤハーネスWHの製造方法について説明する。
まず、図2、図3に示すように、下金型11が一体化された配索治具板10を用意する。配索治具板10の上には、下金型11と共に配索治具12が適当に配置されている。この配索治具板10の上に、端末にコネクタCなどが取り付けられたサブワイヤハーネスW1を配索する。そして、サブワイヤハーネスW1のうち、発泡体で覆う予定の箇所を、下金型11の内部に収容する。
【0025】
同様にして、図3、図4に示すように、次々にサブワイヤハーネスW2、W3を配索する。ここで、サブワイヤハーネスW3には、後嵌め端子15が付いているので、必要に応じて先に配索したサブワイヤハーネスW1、W2のコネクタCのハウジングの中に挿入する。
【0026】
サブワイヤハーネスW1〜W3を配索したら、次に図5、図6に示すように、下金型11の適当箇所にクランプ14をセットする。そして図7に示すように、上金型13を下金型11の上に被せて型締めする。
【0027】
型締めしたら、図8に示すように、成形材料20を、下金型11と上金型13で形成されるキャビティに充填する。ここでは、一次発泡させた原料ビーズを充填する。充填したら、図9に示すように、スチーム21をキャビティに導入し加熱する。加熱して発泡させたら、図10に示すように養生して冷却する。冷却が完了したら、図11に示すように、上金型13を取り外し、下金型11から、成形された発泡体1を脱型させる。これにより、電線束の必要箇所が発泡体1で覆われたワイヤハーネスWHが得られる。
【0028】
このように構成したワイヤハーネスWHによれば、電線Wの束の外側を覆う発泡体1が、従来のワイヤハーネスよりも大きな一定の剛性を持っているので、リンフォースに多数の支持をとりながら配索する必要がなくなり、配索経路の選定の自由度が向上する。
【0029】
また、配索スペースさえあれば、どこでも配索できるようになるので、リンフォースに沿って配索スペースを確保する苦労もなくなる。
【0030】
また、ワイヤハーネスWHの固定箇所も削減できるので、車両への組付作業性も向上する。
【0031】
また、電線Wの束の外側を緩衝性を持つ発泡体1で覆うので、周辺部品との干渉や電線間の干渉による摩耗・異音の発生も無くせる。
【0032】
また、従来では電線を保護するためにコルゲートチューブやビニールシートあるいはテープ等の多種多様な外装材を手作業で電線束に取り付けていたが、本実施形態のワイヤハーネスWHでは、発泡体1の一括モールド成形を施すだけで、電線Wを保護できるようになるため、外装材の取付作業性の向上が図れる。
【0033】
また、例えば、硬質の樹脂モールド材で電線束を覆うようにした場合は、樹脂材と電線との間の固着力が大きくなるため、成形後の養生時に電線と樹脂材との膨張率差に起因して、樹脂材や電線に余計な応力が加わり、最悪の場合、樹脂材が破損したり電線が断線したりするおそれがあるが、発泡体1を電線Wの束の外側にモールド成形しているので、電線Wと発泡体1との間に滑りを発生させて固着力を低く抑えることができる。
【0034】
そのため、養生時に材料間に発生する膨張差を吸収することができ、熱膨張差による成形体(発泡体1)の破損や電線Wの断線等の不具合の発生を防ぐことができる。
【0035】
また、従来では、ワイヤハーネスの中でジョイント回路を構成する場合、ジョイントコネクタを使用して集中ジョイントをすることが多いが、本実施形態では、ボンダージョイント(キャップレス)をモールド内に取り込むことができるようになるため、コストダウンが可能となる。
【0036】
また、発泡体1をビーズ法で発泡成形しているので、電線Wの束の外表面の複雑で微細な凹凸に発泡体1が入りにくくなり、固着量を更に低く抑えることができる。従って、養生時の発泡体1と電線Wの熱膨張差をより確実に吸収することができ、品質を保証することができる。
【0037】
また、図12は本発明の他の実施形態のワイヤハーネスの斜視図である。
図12に示すワイヤハーネスのように、発泡体1の外面に一体に発泡成形された数センチ程度の突出量の凸部1aを設け、その凸部1aの突出方向に分岐線WB誘導することで、幹線WA(電線Wの束)から分岐した分岐線WBを外部に引き出すようにした場合は、発泡体1から出て行く分岐線WBの方向付けを行うことができるので、分岐線WBの誤組付の防止を図ることができると共に、ワイヤハーネスWHの組付性の向上が図れる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0039】
WH ワイヤハーネス
W 電線
WA 幹線(電線の束)
WB 分岐線
1 発泡体
1a 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに配索されるワイヤハーネスであって、
複数の電線の束の外側を覆うように発泡体がモールド成形されており、前記発泡体が、前記電線の束の配索形状に倣う形状に形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記発泡体が、ビーズ法により発泡成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記発泡体の外面に一体に発泡成形された凸部が設けられ、前記凸部の突出方向に誘導されて、前記電線の束からの分岐線が外部に引き出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項1】
インストルメントパネルに配索されるワイヤハーネスであって、
複数の電線の束の外側を覆うように発泡体がモールド成形されており、前記発泡体が、前記電線の束の配索形状に倣う形状に形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記発泡体が、ビーズ法により発泡成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記発泡体の外面に一体に発泡成形された凸部が設けられ、前記凸部の突出方向に誘導されて、前記電線の束からの分岐線が外部に引き出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−126356(P2012−126356A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282074(P2010−282074)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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