説明

ワイヤハーネス

【課題】簡易な工程及び低コストで、グロメットの内側における防水処理を施すことが可能なワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、導電体の芯線40及び芯線40の周囲を覆う絶縁被覆70からなる複数の絶縁電線50と、複数の絶縁電線50が挿通された挿通孔65が形成されたグロメット60と、を備える。複数の絶縁電線50各々における絶縁被覆70は、内側に形成された内側絶縁被覆30と、内側絶縁被覆30の外側に形成された外側絶縁被覆20と、を備える。外側絶縁被覆20の一部は、グロメット60の内側において複数の絶縁電線50相互間及び絶縁電線50とグロメット60とを溶着しつつ複数の絶縁電線50相互の隙間及び複数の絶縁電線50とグロメット60の内側面との隙間を塞ぐ閉塞部25を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線及び当該複数の電線が挿通されたグロメットを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワイヤハーネスは、自動車に代表される車両のパネルに設けられた貫通孔を通って配設される場合がある。この場合、水がワイヤハーネスと貫通孔との隙間を通って、車両の内側における防水が必要なエリアに浸入することを防ぐため、従来から種々のグロメットが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、車両の内側への水の浸入をより確実に防止するためには、グロメット内における電線間の隙間及び電線とグロメット内側面との隙間を埋めることも必要となる。これに対処するため、特許文献1にはワイヤハーネスが挿通された状態のグロメットの内側に止水材を塗布する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、止水材をグロメット内側に注入する工程及びワイヤハーネスを配設経路に応じてくせ付けさせた状態に固定する工程などが必要である。この場合、ワイヤハーネス製造の工数及びコストは増大する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡易な工程及び低コストで、グロメットの内側における防水処理を施すことが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、導電体の芯線及び該芯線の周囲を覆う絶縁被覆からなる複数の絶縁電線と、前記複数の絶縁電線が挿通された挿通孔が形成されたグロメットと、を備えるワイヤハーネスであって、前記複数の絶縁電線各々における前記絶縁被覆は、内側に形成された内側絶縁被覆と、前記内側絶縁被覆の外側に形成された外側絶縁被覆と、を備え、前記複数の絶縁電線の前記外側絶縁被覆の一部は、前記グロメットの内側において前記複数の絶縁電線相互間及び前記絶縁電線と前記グロメットとを融着しつつ前記複数の絶縁電線相互の隙間及び前記複数の絶縁電線と前記グロメットの内側面との隙間を塞ぐ閉塞部を形成していることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係るワイヤハーネスであって、前記複数の絶縁電線の前記外側絶縁被覆の一部は、前記絶縁電線における前記閉塞部以外の部分において前記複数の絶縁電線相互間を融着する接合部を形成している。
【0009】
第3の発明は、第2の発明に係るワイヤハーネスであって、前記接合部は、複数の前記絶縁電線を曲がった状態で保持している。
【0010】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれか一つに係るワイヤハーネスであって、前記外側絶縁被覆は前記内側絶縁被覆よりも融点が低い材料で形成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明において、複数の絶縁電線各々の絶縁被覆は二重構造を有し、複数の絶縁電線の外側絶縁被覆の一部は、グロメットの内側において複数の絶縁電線相互間及び絶縁電線とグロメットとを融着しつつ複数の絶縁電線相互の隙間及び複数の絶縁電線とグロメットの内側面との隙間を塞ぐ閉塞部を形成している。このため、閉塞部が、グロメットの内側における絶縁電線間及び絶縁電線とグロメット内側面との間からの水の浸入を遮る。
【0012】
また、止水剤を別途用意して塗布することを要することなく、絶縁電線の一部を構成する外側絶縁被覆を用いて防水処理を実現することができる。したがって、工程の簡易化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
第2の発明において、複数の絶縁電線の外側絶縁被覆の一部は、絶縁電線における閉塞部以外の部分において複数の絶縁電線相互間を融着する接合部を形成している。このため、絶縁電線50に加わった引っ張り力は、主として外側絶縁被覆20の接合部28に作用し、閉塞部25に伝わる力は大幅に緩和される。その結果、絶縁電線50に加わった引っ張り力によって閉塞部25が解ける不都合が回避される。
【0014】
第3の発明において、接合部は複数の絶縁電線を曲がった状態で保持している。一般に、ワイヤハーネスは、グロメットが装着される部分で曲がる形に成形されることが多い。第3の発明によれば、外側絶縁被覆の一部を溶かして接合部を形成する工程と、外側絶縁被覆の一部を一時的に軟化させて絶縁電線を曲がった形に成形する工程とが、一つの工程として、或いは一連の工程として実現される。このような工程は、一般的な絶縁電線を曲がった形にクセ付けした後、グロメット内の止水処理を行う従来の工程と比べ、格段に作業が簡素化され、かつ時間が短縮される。
【0015】
第4の発明において、外側絶縁被覆は内側絶縁被覆よりも融点の低い材料で形成されている。このため、加熱という簡易な工程で閉塞部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の断面図である。
【図2】ワイヤハーネス1が備える絶縁電線50の断面図である。
【図3】ワイヤハーネス1の製造工程の一部である電線加熱工程を示す斜視図である。
【図4】ワイヤハーネス1の製造工程の一部であるグロメット加熱工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の断面図が示されている。また、図2には、ワイヤハーネス1を構成する絶縁電線50の断面図が示されている。
【0019】
ワイヤハーネス1は、複数の絶縁電線50がグロメット60の挿通孔65に挿通された構造を有する。
【0020】
絶縁電線50は、導電体の芯線40と芯線40の周囲を覆う絶縁被覆70とで構成される。図2に示される芯線40は、撚り合わされた複数の素線からなる撚り線であるが、芯線40が単線であってもよい。芯線40には、例えば銅または銅合金などが採用される。
【0021】
このような絶縁電線50の端末では、図示しない圧着端子が、絶縁電線50の端末で部分的に露出した芯線40に対して取り付けられている。ワイヤハーネス1は、このような図示しない圧着端子の部分で、接続相手となる電装機器などと電気的に接続される。
【0022】
グロメット60は、車両のパネルに設けられたパネル孔に嵌め込まれて、パネル孔とパネル孔に通される複数の絶縁電線50との隙間を埋めて、車両の内側に水が浸入することを防止する部材である。さらに、グロメット60は、絶縁電線50とパネル孔の縁部との間に介在し、絶縁電線50がパネル孔の縁部と擦れて損傷することを防止する保護部材でもある。
【0023】
グロメット60は、弾性変形可能なエラストマーなどの樹脂材料で形成されている。このグロメット60は、小径筒部61と、小径筒部61よりも径が大きい大径筒部63と、小径筒部61の一端と大径筒部63の一端とを繋ぐ拡径筒部62とを備えている。これらの小径筒部61、拡径筒部62、及び大径筒部63はいずれも筒状の部材であって、それぞれの中空部が連通する状態で一体に連なっている。これら部材の内側には、同軸方向に沿って挿通孔65が形成されている。グロメット60に取り付けられた複数の絶縁電線50はこの挿通孔65に挿通された状態である。
【0024】
挿通孔65は、連通する小径挿通孔651と大径挿通孔652とからなる。小径挿通孔651は、小径筒部61から小径筒部61に連なる拡径筒部62の一部分までの範囲の内側に形成されている。グロメット60に取り付けられる複数の絶縁電線50は、この小径挿通孔651の内側面に接している。大径挿通孔652は、小径挿通孔651を除く拡径筒部62の内側に形成された挿通孔65の部分と、大径筒部63の内側に形成された挿通孔65とからなる。大径挿通孔652の径は、複数の絶縁電線50の束の径よりも大きい。
【0025】
大径筒部63の外周面には、凹部68が全周にわたって設けられている。このグロメット60の凹部68とパネル孔の縁部とが嵌り合うことによって、グロメット60がパネルに対して固定される。
【0026】
図2に示されるように、絶縁電線50を構成する絶縁被覆70は、内側に形成された内側絶縁被覆30と内側絶縁被覆30の外側に形成された外側絶縁被覆20とを備える。つまり、絶縁被覆70は2種類の材料によって構成された二重構造を有している。
【0027】
内側絶縁被覆30には、従来の一般的な絶縁電線の絶縁被覆として採用されてきた材料が使用される。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどがこれに当てはまる。
【0028】
一方、本実施形態における外側絶縁被覆20には、内側絶縁被覆30の材料よりも融点が低い材料が使用される。例えば、ポリエステルとアクリル酸エチレートとの共重合体であるEMA(Ethyl MethAcrylate)が採用される。EMAは融点がおよそ90℃であって、絶縁被覆として一般的に用いられる材料、すなわち内側絶縁被覆30に使用される材料よりも融点が低い。従って、絶縁被覆70が外側絶縁被覆20として使用される材料の融点と同等の温度で加熱されると、内側絶縁被覆30が芯線40を覆った状態は維持されるが、外側絶縁被覆20は内側絶縁被覆30の外周面で溶融する。
【0029】
なお、外側絶縁被覆20は、内側絶縁被覆30よりも融点が低い材料のみならず、アルコールなどの溶剤が塗布されることによって、溶融する材料であっても構わない。この場合、アルコールなどの溶剤が絶縁電線50の絶縁被覆70に塗布されることによって、内側絶縁被覆30の外周面で、外側絶縁被覆20は溶融する。
【0030】
このような外側絶縁被覆20の一部が、グロメット60の内側において、閉塞部25を形成している。本実施形態では、外側絶縁被覆20の一部が、複数の絶縁電線50相互間及び絶縁電線50とグロメット60とを溶着している。それとともに、閉塞部25は、複数の絶縁電線50相互間及び複数の絶縁電線50とグロメット60の挿通孔65の内側面、具体的に小径挿通孔651の内側面との隙間を塞いでいる。
【0031】
このような閉塞部25は、小径挿通孔651の部分に位置する複数の絶縁電線50が備える外側絶縁被覆20の一部が溶融し、固化することによって形成される。
【0032】
また、絶縁電線50における閉塞部25が形成された部分以外の部分において、複数の絶縁電線50における外側絶縁被覆20の一部は接合部28を形成している。接合部28は、外側絶縁被覆20の一部が複数の絶縁電線50各々の隣接する絶縁電線50との間で相互に溶着している部分をいう。接合部28は、閉塞部25と同様に、加熱により溶融した外側絶縁被覆20が固化することによって形成される。
【0033】
絶縁電線50における閉塞部25が形成された部分以外の部分は、例えば、グロメット60の外側の部分、すなわちグロメット60の外部に露出している絶縁電線50の部分、グロメット60の大径挿通孔652の内側の部分又はそれらの両方に亘る部分などである。本実施形態では、接合部28は、閉塞部25の前後各々に形成されている。
【0034】
また、接合部28は、複数の絶縁電線50が所定の角度で曲げられた状態を保持する。この複数の絶縁電線50の曲がり角度は、ワイヤハーネス1の配設経路に応じた角度である。
【0035】
以下において、ワイヤハーネス1の製造工程について、図3及び図4を用いて説明する。図3には、ワイヤハーネス1の製造工程の一部である複数の絶縁電線50の電線加熱工程が示されている。図4には、ワイヤハーネス1の製造工程の一部であるグロメット加熱工程が示されている。
【0036】
最初に、図示しない圧着端子が取り付けられた絶縁電線50各々を複数束ねる。そして、複数の絶縁電線50の外側絶縁被覆20に対して電線加熱処理が施される。
【0037】
電線加熱処理は、例えばドライヤー90が使用されて、複数の絶縁電線50に対して熱風を吹き付けることによって行われる。このとき、ドライヤー90による熱風の吹きつけは、主に、絶縁電線50各々の外側絶縁被覆20が互いに接している部分に対して行われる。
【0038】
電線加熱処理が行われている間、複数の絶縁電線50は、テープなどによって仮結束された状態、又はテープなど使わず、作業者が複数の絶縁電線50を束状にして持つことによって結束された状態で保持される。このとき、複数の絶縁電線50は、ワイヤハーネス1が配設される経路に応じた形状に合わせて、所定の角度で曲げられた状態で保持される。本実施形態では、この絶縁電線50が曲げられている部分である曲げ部55は、グロメット60が取り付けられたときにグロメット60の大径筒部63の内側に位置する部分である。
【0039】
なお、電線加熱処理はドライヤー90による熱風の吹き付けのみならず、恒温槽を用いて高温に保持された空間内に絶縁電線50を挿入することによって行われる形態であってもよい。又、電線加熱処理は、通電による絶縁電線50の抵抗発熱を利用して行われてもよい。
【0040】
このように、電線加熱処理が施されて、絶縁電線50の外側絶縁被覆20が互いに接している部分の温度が、外側絶縁被覆20の融点に達すると、外側絶縁被覆20は溶融し始める。これによって、溶融した外側絶縁被覆20が、各絶縁電線50が備える内側絶縁被覆30各々の間に行き渡り、絶縁電線50各々の間に形成された隙間を埋める。
【0041】
所定時間経過後、加熱処理が停止されて外側絶縁被覆20の温度が降下することによって、溶融していた外側絶縁被覆20が固化するとともに複数の絶縁電線50を一束に接合する。このように、複数の絶縁電線50各々を構成する内側絶縁被覆30の外側で、外側絶縁被覆20が相互に溶着して接合部28が形成される。
【0042】
また、本実施形態では、電線加熱処理の最中及びその後の冷却期間において、複数の絶縁電線50は、加熱領域の一部に曲げ部55が形成された状態で保持される。そのため、溶融していた外側絶縁被覆20は、複数の絶縁電線50が曲げ部55を形成する状態のまま固化する。従って、接合部28は、複数の絶縁電線50が所定の角度で曲げられた状態を保持する役割も備える。
【0043】
続いて、グロメット60が、接合部28が形成された複数の絶縁電線50に対して取り付けられるグロメット取付工程が行われる。グロメット取付工程では、図示しない拡張機がグロメット60の挿通孔65の径を拡大させた状態で、グロメット60の挿通孔65に複数の絶縁電線50を挿通させる。そして、曲げ部55がグロメット60の内側に位置するまで、グロメット60を移動させる。
【0044】
グロメット60の内側に曲げ部55が位置する状態で、グロメット加熱処理が施される。グロメット加熱処理は、ドライヤー90が、複数の絶縁電線50に取り付けられたグロメット60を周回しつつ、グロメット60の外周部分に熱風を吹き付けることによって行われる。本実施形態においては、グロメット加熱処理により加熱される部分は、グロメット60の内側に位置する接合部28の一部である。なお、恒温槽を用いた加熱方法、または通電による加熱方法であれば、上述のようにドライヤー90を周回させる必要がない。このため、より簡易な工程で加熱処理を行うことができる。
【0045】
グロメット加熱処理によって、小径挿通孔651に接触している外側絶縁被覆20の部分は、グロメット60からの伝熱により、複数の絶縁電線50の束における外周部分から順に昇温し、融点を超えた段階で溶融する。溶融した外側絶縁被覆20は、小径挿通孔651の内側面と複数の絶縁電線50の束における外周面との間に形成された空間に行き渡り、この空間を塞ぐ。
【0046】
グロメット60の小径挿通孔651の部分では、グロメット60は絶縁電線50を締め付けているため、外側絶縁被覆20が溶融することによって、小径挿通孔651の径は幾分縮む。これによって、グロメット60における小径挿通孔651の縁部が、絶縁電線50における外側絶縁被覆20内へ埋まり、押し出された小径挿通孔651内の外側絶縁被覆20の一部は、大径挿通孔652における小径挿通孔651との境界部分へ流出する。このため、拡径筒部62の内側面における大径挿通孔652と小径挿通孔651との境界部分に対しても、外側絶縁被覆20が溶着する。
【0047】
所定時間経過後、加熱が停止されて、溶融していた外側絶縁被覆20の温度は降下し、外側絶縁被覆20は固化する。このようにして、グロメット60の内側において閉塞部25が形成される。閉塞部25は、複数の絶縁電線50相互間及び絶縁電線50とグロメット60とを溶着しつつ複数の絶縁電線50相互の隙間及び複数の絶縁電線50とグロメット60が備える挿通孔65の内側面との隙間を塞ぐ。本実施形態では、電線加熱処理により形成された接合部28の一部が、閉塞部25に変わる。
【0048】
なお、本実施形態では、外側絶縁被覆20の一部を溶かして接合部28を形成する工程と、外側絶縁被覆20の一部を一時的に軟化させて絶縁電線50を曲がった形に成形する工程とが、一つの工程として実現されるが、これらの工程が一連の工程として実現されてもよい。
【0049】
また、上述の工程と、外側絶縁被覆20の一部を溶かして閉塞部25を形成する工程とが一つの工程として行われてもよい。つまり、グロメット60に複数の絶縁電線50を挿入させ、絶縁電線50を所定の角度に曲げた状態で、グロメット60が取り付けられた複数の絶縁電線50全体に対して加熱処理が行われる形態であってもよい。これによって工程はより簡素化される。
【0050】
以上のように、本実施形態におけるワイヤハーネス1では、複数の絶縁電線50各々の絶縁被覆70は二重構造を有し、複数の絶縁電線50の外側絶縁被覆20の一部は、グロメット60の内側において複数の絶縁電線50相互間及び絶縁電線50とグロメット60とを溶着しつつ複数の絶縁電線50相互の隙間及び複数の絶縁電線50とグロメット60の内側面との隙間を塞ぐ閉塞部25を形成している。このため、閉塞部25が、グロメット60の内側における絶縁電線50間及び絶縁電線50とグロメット60内側面、すなわち挿通孔65との間からの水の浸入を遮る。
【0051】
また、止水剤を別途用意して塗布することを要することなく、本実施形態では、絶縁電線50の一部を構成する外側絶縁被覆20を用いて防水処理を実現することができる。したがって、工程の簡易化及び低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、複数の絶縁電線50の外側絶縁被覆20の一部は、絶縁電線50における閉塞部25以外の部分において複数の絶縁電線50相互間を溶着する接合部28を形成している。このため、絶縁電線50に加わった引っ張り力は、主として外側絶縁被覆20の接合部28に作用し、閉塞部25に伝わる力は大幅に緩和される。その結果、絶縁電線50に加わった引っ張り力によって閉塞部25が解ける不都合が回避される。また、複数の絶縁電線50を結束する部材も不要であるため、結束部材の取り付け作業も不要となる。
【0053】
また、接合部28は複数の絶縁電線50を曲がった状態で保持している。一般に、ワイヤハーネスは、グロメットが装着される部分で曲がる形に成形されることが多い。本実施形態では、外側絶縁被覆20の一部を溶かして接合部28を形成する工程と、外側絶縁被覆20の一部を一時的に軟化させて絶縁電線50を曲がった形に成形する工程とを、一つの工程として、或いは一連の工程として実現される。このような工程は、一般的な絶縁電線を曲がった形にクセ付けした後、グロメット内の止水処理を行う従来の工程と比べ、格段に作業が簡素化され、かつ時間が短縮される。
【0054】
また、外側絶縁被覆20は内側絶縁被覆30よりも融点の低い材料で形成されている。このため、加熱という簡易な工程で閉塞部25を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ワイヤハーネス
20 外側絶縁被覆
25 閉塞部
30 内側絶縁被覆
40 芯線
50 絶縁電線
60 グロメット
65 挿通孔
70 絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体の芯線及び該芯線の周囲を覆う絶縁被覆からなる複数の絶縁電線と、前記複数の絶縁電線が挿通された挿通孔が形成されたグロメットと、を備えるワイヤハーネスであって、
前記複数の絶縁電線各々における前記絶縁被覆は、
内側に形成された内側絶縁被覆と、
前記内側絶縁被覆の外側に形成された外側絶縁被覆と、を備え、
前記複数の絶縁電線の前記外側絶縁被覆の一部は、前記グロメットの内側において前記複数の絶縁電線相互間及び前記絶縁電線と前記グロメットとを融着しつつ前記複数の絶縁電線相互の隙間及び前記複数の絶縁電線と前記グロメットの内側面との隙間を塞ぐ閉塞部を形成していることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
前記複数の絶縁電線の前記外側絶縁被覆の一部は、前記絶縁電線における前記閉塞部以外の部分において前記複数の絶縁電線相互間を融着する接合部を形成している、ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスであって、
前記接合部は、複数の前記絶縁電線を曲がった状態で保持している、ワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載のワイヤハーネスであって、
前記外側絶縁被覆は前記内側絶縁被覆よりも融点が低い材料で形成されているワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27069(P2013−27069A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156468(P2011−156468)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】