説明

ワイヤロープ巻取り装置

【課題】 コスト面及び安全性に優れる付加価値の高いワイヤ巻取り装置を提供する。
【解決手段】ワイヤロープ巻取り装置であって、巻取りドラムと、巻取りドラムの側面に取り付け、巻取りドラムの直径よりも径の大きい円形のドラム側板と、前記ドラム側板の巻取りドラム側に突設し、ドラム側板からの厚さがワイヤロープの直径よりも小さく、ドラム側板中心からドラム側板端部への放射方向に位置する端部を曲面に形成した、方向制御片とにより構成し、前記方向制御片を、ワイヤロープが完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープの位置から、ドラム側板中心からドラム側板端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて突設したことを特徴とする、ワイヤロープ巻取り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤロープを巻き取るための、ワイヤロープ巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からワイヤロープを巻き取るための装置として、巻取りドラムaにワイヤロープbを巻付けて、巻取りドラムaを回転させてワイヤロープbを巻取る装置が用いられている。
公知の巻取り装置では、図5に示すように、ワイヤロープbを巻き取る際には、巻取りドラムaの一端から他端へ隙間無く、順にC方向へ巻取っていくことで第一巻取り段c1を形成する。そして、ワイヤロープbが他端に達した時点で、巻取り方向を反転し、第一巻取り段c1の上に第二巻取り段c2を形成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したワイヤロープ巻取り装置にあっては、次のような問題点がある。
ワイヤロープ巻取りの際に、巻取りドラムa端部にワイヤロープbが到達すると、そこで巻取り方向をD方向へ反転する。
この際、従来のワイヤロープ巻取り装置では、反転時のワイヤロープbの巻取り方向の制御がうまくいかない場合がある。
つまり、第二巻取り段の1巻目を巻付けた後に、ワイヤロープがドラムの側板方向に寄りすぎて、ワイヤロープbが第二巻取り段の2巻目部分ではなく、第二巻取り段の1巻目の上部である、第三巻取り段の最後の巻目部に位置してしまう場合がある。
第三巻取り段の最後の巻目部に位置したワイヤロープbは、第二巻取り段の2巻目の巻取りが進むにつれ、ワイヤロープbに引っ張られるように、本来の巻取り位置である第二巻取り段の2巻目の位置にずれ落ちることになる。
ずれ落ちる際には、第二巻取り段の1巻目と強く擦り合うものとなり、その擦り合せが頻発することでワイヤロープbの素線切れが生じる。
【0004】
ワイヤロープの切断により、安全性や工事の遅延などの問題が発生するものとなる。
また、ワイヤロープ切断の予防のためにもワイヤロープの交換頻度が増え、工事の遅延と共にコストが増大するものとなる。
特にサンドコンパクション工法では、短いスパンを何度も上下しながら少しずつ移動していくため、同じ箇所が擦れ、ワイヤロープの寿命を短くする。
また、ずれ落ちるワイヤロープbが第一巻取り段c1に叩き付けられることにより大音響が発生し、近隣環境への騒音という悪影響も生じる。
【0005】
本発明は、上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、コスト面及び安全性に優れる付加価値の高いワイヤ巻取り装置を提供するところにある。
さらに本発明では、巻取りドラム端部でワイヤロープの巻取りを折り返す場合でもスムーズに折り返すことが出来るワイヤロープ巻取り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本願の第1発明は、ワイヤロープ巻取り装置であって、巻取りドラムと、巻取りドラムの側面に取り付け、巻取りドラムの直径よりも径の大きい円形のドラム側板と、前記ドラム側板の巻取りドラム側に突設し、ドラム側板からの厚さがワイヤロープの直径よりも小さく、ドラム側板中心からドラム側板端部への放射方向に位置する端部を曲面に形成した、方向制御片とにより構成し、前記方向制御片を、ワイヤロープが完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープの位置から、ドラム側板中心からドラム側板端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて突設したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本願の第2発明は、前記した第1発明において、棒状部と係止部とからなる取付け部材を有し、前記方向制御片には、前記方向制御片のドラム側板側から巻取りドラム側へ貫通する制御片側取付け孔を設け、前記ドラム側板の巻取りドラム側に、前記方向制御片が、ワイヤロープが完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープの位置から、ドラム側板中心からドラム側板端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて位置するように、側板側取付け孔を形成し、前記取付け部材を、前記制御片側取付け孔及び前記側板側取付け孔に挿入して、前記方向制御片を着脱自在に前記ドラム側板に固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワイヤロープ巻取り装置は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果のうちの少なくとも一つを得ることができる。
(1)ワイヤロープがスムーズに巻取られるため、ワイヤロープ同士の擦れが少なくなり、ワイヤロープの素線切れが減少する。また、ワイヤロープが叩き付けられることによる大音響の発生を抑止し得る。
(2)ワイヤロープの交換頻度が減少するため、経済的である。
(3)ワイヤロープ切断による安全面等でのトラブルが回避できる。
(4)ワイヤロープ交換、切断による工程遅延が減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
<1>ワイヤロープ巻取り装置
図1に示すように、本発明のワイヤロープ巻取り装置10は、巻取りドラム20と、巻取りドラム20側面に取り付けた、巻取りドラム20の直径より径の大きい円形のドラム側板30と、ドラム側板30に突設した方向制御片31とにより構成したものである。
なお、巻取りドラム20とドラム側板30は公知のものを使用可能である。
【0011】
<2>方向制御片
方向制御片31は、ドラム側板30からの厚さL1がワイヤロープ50の直径L2よりも小さく、ドラム側板30中心からドラム側板30端部への放射方向に位置する端部である方向制御片端部311を滑らかな曲面に形成したものである。
なお曲面は、方向制御片端部311の端部方向に最も長くなる部分がドラム側板30に接するように形成するのが望ましい。
なお、曲面に形成するのは、ドラム側板30中心からドラム側板30端部方向に位置する端部のみに限るものではなく、端部全体を曲面に形成してもよいものである。
滑らかな曲面とは、ワイヤロープ50が方向制御片31の表面を滑りやすいように丸みを持たせたものである。
また、曲面であってもワイヤロープ50が引っかかるような凹凸を設けないものであることはもちろんである。
図1に示すように、方向制御片31は板状のものとして形成可能であるが、ドラム側板30中心からドラム側板30端部への放射方向に位置する端部が曲面状であれば、半円筒形状等に形成することも可能である。
方向制御片31は、ワイヤロープ50との接触による衝撃、磨耗に耐えられる部材を材料とするものである。
材料の一例として鋼材を材料とするものが挙げられる。
【0012】
<3>方向制御片の取付け
方向制御片31は、ドラム側板30のドラム側表面に突設するものである。
取り付けは、方向制御片31がワイヤロープ50との接触により取り外れるものでなければ、ドラム側板30及び方向制御片31の材質に合せて、各種公知の取り付け方法を採用可能である。
例えば、方向制御片31及びドラム側板30が鋼材を材質とするものであれば、互いを溶接することで、ワイヤロープ50との接触により取り外れない程度の強固に方向制御片31をドラム側板30に取り付け可能である。
その際に、ドラム側板30中心から端部への放射方向を方向制御片31の曲面が位置するように突設する。
【0013】
また、方向制御片31の取付け位置が、巻取りドラム20に近過ぎる場合には、巻取ったワイヤロープが方向制御片31に接するものとなり、方向制御片31が機能しないものとなる。
このため、方向制御片31の取り付け位置は、ドラム側板30の巻取りドラム20側に、ワイヤ側板30中心からワイヤ側板30端部方向へ、ワイヤロープ50が完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープ50の位置からワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて設置する。
ここで外側とはドラム側板の端部方向のことである。
図3(a)に示すように、ワイヤロープ50が完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープ50の位置である最大巻取り位置までの間隔をBとすると、ドラム側板30中心から方向制御片31までの間隔AはBにワイヤロープ一巻き分以上の間隔を加えたものとする。
【0014】
<4>ワイヤロープ巻取り
本発明のワイヤロープ巻取り装置10を使用したワイヤロープの巻取り手順を図4に示す。
ワイヤロープの巻取りは、ワイヤロープ50を巻き取りドラム20により巻取り、巻取りドラム表面に第一巻取り段51を形成し、その上に第二巻取り段52、さらにその上に第三巻取り段とドラム外側へと巻取り段を重ねていくことにより行う。
まず、ワイヤロープ50は巻取りドラム20表面に右側から左側へとC方向へ巻き取っていくことで、第一巻取り段51を形成していく。
なお、第一巻取り段51の巻取り方向は左側から右側に巻き取るものでも当然可能である。
ワイヤロープ50が巻取りドラム20の左端に達した際には、第一巻き取り段51の形成が終わり、第一巻取り段51の左端上段に第二巻取り段52の1巻目を形成する。
さらに、第二巻取り段の左からD方向へ巻き取っていく。ここで、2巻目のワイヤロープ50aを巻付ける際に、ワイヤロープ50aが巻取りドラム20端部に寄り過ぎた場合には、ワイヤロープ50aが方向制御片31に接触するものとなる。
ここで、方向制御片31に接したワイヤロープ50aは、方向制御片31の端部曲面及び表面に沿ってドラム側板30から一定の間隔をおいた状態で、巻取りドラム20に巻き取られていく。
このため、方向制御片31の表面を滑るように移動したワイヤロープ50aは、方向制御片31の厚みにより、第二巻取り段の1巻目の上部である第三巻取り段の最終巻目に位置せず、第二巻取り段の1巻目の右側側部に巻き取られて、本来の位置である第二巻取り段の2巻目を形成するものとなる。
【実施例2】
【0015】
以降に実施例2について説明するが、実施例1と同一の部位については同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
<1> 方向制御片
方向制御片31はドラム側板30に着脱可能に形成することも可能である。
図2に示すように、方向制御片31には、方向制御片31のドラム側板30側から巻取りドラム20側へ貫通する制御片側取付け孔312を設ける。
制御片側取付け孔312は、取付け部材60を取付けた際に、取付け部材60の係止部62が制御片側取付け孔312からドラム側へ突出しないように形成する。これにより、ワイヤロープ50が方向制御片31表面を滑る際に、取付け部材60に引っかからないようにする。
制御片側取付け孔312は、取付けをより強固にするために、複数個設けることも可能である。その際には、側板側取付け孔301も対応する数を形成する必要がある。
【0017】
<2> ドラム側板
ドラム側板30には、方向制御片31を取り外し可能なように、方向制御片31を取り付けるための、側板側取付け孔301を形成する。
側板側取付け孔301は、ドラム側板30の巻取りドラム20側に形成するものであり、ドラム側板30中心からドラム側板30端部方向へ、方向制御片31が、ワイヤロープ50が完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープ50の位置からワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて位置するように、側板側取付け孔301を形成する。
ここで、側板側取付け孔301はドラム側板30を貫通するように形成することも可能である。
側板側取付け孔301は、一箇所のみに取り付ける場合も可能であるが、図3(b)に示すように、ドラム側板30の複数個所に設けることも可能である。
これにより、ワイヤロープ50が完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープ50の位置である、最大巻取り位置の変化に応じて、方向制御片31の取り付け位置を変更することが出来る。
【0018】
<3> 取付け部材
取付け部材60は棒状の棒状部61と係止部62からなり棒状部61の長軸方向端部に係止部62を設ける。
係止部62は、棒状部61の一定以上のドラム側板方向への移動を防ぐためのものであり、棒状部61の直径よりも大きな径の板状部材により形成される。
なお、別の取り外し自在の係止部材を、ドラム側板30を挟み込むように、棒状部61に取り付けることで、取付け部材60のドラム側板30からの取外れをより防ぎ得るものとなる。
また、取付け部材60は、例えばボルト状に形成することも可能である。その場合には、制御片側取付け孔312及び側板側取付け孔301共に、取付け部材60に対応したボルト孔形状に形成する必要がある。
なお、取付け部材60をボルト状に形成した場合、別の取り外し自在の係止部材は、ナット状に形成し得るものである。
制御片側取付け孔312及び側板側取り付け孔301を複数個設けた場合には、それに対応する数の取付け部材60を使用する。
【0019】
<4> 方向制御片の取り付け
制御片側取付け孔312を方向制御片31に形成後、ワイヤロープ50の最大巻き取り量を考慮に入れ、巻き取るワイヤロープ50の最大巻取り位置を定める。
ドラム側板30の巻取りドラム20側に、最大巻き取り位置よりドラム側板30中心からドラム側板30端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて位置するように、側板側取付け孔301を形成する。
巻付けるワイヤロープ50の量が変化する場合等で、ワイヤロープ50のドラム側板中心から最大巻き取り位置までの間隔Bが変化する場合には、側板側取付け孔301を複数設けることにより対応可能である。
図3(b)に示すように、A1、A2、A3はドラム側板中心から方向制御片までの間隔であり、A1からA3へと順に間隔が大きなものとなっている。
ここで、例えA1の間隔が、最大巻取り位置からワイヤロープ一巻き分以上の間隔が無い場合でも、最大巻取り位置Bからワイヤロープ一巻き分以上の間隔があるA2またはA3の間隔を有する側板側取付け孔301に方向制御片31を取り付けることでワイヤロープ50の巻取り方向を制御可能とし得る。
つまり、ワイヤロープ50の最大巻取り位置の変化に合せて、方向制御片31を取り付ける側板側取付け孔301を選択する。
また、ワイヤロープ50の巻取りの際に、方向制御片31が必要無い場合には、方向制御片31をドラム側板30に取り付けないでワイヤロープ50の巻取りを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るワイヤロープ巻取り装置の概略図
【図2】本発明に係るワイヤロープ巻取り装置の第2実施例の方向制御片の側部断面図
【図3】本発明に係るワイヤロープ巻取り装置の(a)第1実施例と(b)第2実施例のそれぞれの方向制御片の取り付け位置を示した図
【図4】本発明に係るワイヤロープ巻取り装置の作用図
【図5】従来のワイヤロープ巻取り装置の作用図
【符号の説明】
【0021】
10・・・・ワイヤロープ巻取り装置
20・・・・巻取りドラム
30・・・・ドラム側板
301・・・側板側取付け孔
31・・・・方向制御片
311・・・方向制御片端部
312・・・制御片側取付け孔
50・・・・ワイヤロープ
51・・・・第一巻取り段
52・・・・第二巻取り段
60・・・・取付け部材
61・・・・棒状部
62・・・・係止部
A・・・・・ドラム側板中心から方向制御片までの間隔
B・・・・・ドラム側板中心からワイヤロープの最大巻取り位置までの間隔
a・・・・・巻取りドラム
b・・・・・ワイヤロープ
c1・・・・第一巻取り段
c2・・・・第二巻取り段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープ巻取り装置であって、
巻取りドラムと、
巻取りドラムの側面に取り付け、巻取りドラムの直径よりも径の大きい円形のドラム側板と、
前記ドラム側板の巻取りドラム側に突設し、ドラム側板からの厚さがワイヤロープの直径よりも小さく、ドラム側板中心からドラム側板端部への放射方向に位置する端部を曲面に形成した、方向制御片とにより構成し、
前記方向制御片を、ワイヤロープが完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープの位置から、ドラム側板中心からドラム側板端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて突設したことを特徴とする、
ワイヤロープ巻取り装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤロープ巻取り装置において、
棒状部と係止部とからなる取付け部材を有し、
前記方向制御片には、前記方向制御片のドラム側板側から巻取りドラム側へ貫通する制御片側取付け孔を設け、
前記ドラム側板の巻取りドラム側に、前記方向制御片が、ワイヤロープが完全に巻き取られた状態での最も外側のワイヤロープの位置から、ドラム側板中心からドラム側板端部方向へ、ワイヤロープ一巻き分以上の間隔を隔てて位置するように、側板側取付け孔を形成し、
前記取付け部材を、前記制御片側取付け孔及び前記側板側取付け孔に挿入して、前記方向制御片を着脱自在に前記ドラム側板に固定したことを特徴とする、
ワイヤロープ巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312535(P2006−312535A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136063(P2005−136063)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】