説明

ワイヤーハーネス配索構造部

【課題】ドア内において水が溜まるのを抑制すること。
【解決手段】ワイヤーハーネス配索構造部30は、ワイヤーハーネス1を車両のボディ10とドア20との間で配索するものである。ワイヤーハーネス配索構造部30は、一部分がボディ10に支持され、ワイヤーハーネス1を含む配線部40と、配線部40が挿入される挿入口部68と、配線部40におけるワイヤーハーネス1を迂回可能な余裕空間を有して収容する余長吸収部62と、余長吸収部62の下部に形成された水抜孔部82とを有し、ドア20のドアトリム26とドアインナーパネル22との間で、水抜孔部82が、ドアインナーパネル22に形成された車内側から車外側に貫通する貫通孔部231に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されるプロテクタ60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイヤーハーネスを車体とドアとの間で配索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア側ハーネスを挿通したハーネスプロテクタを、車両ドア内に設けたスライドガイド内にスライド自在に係合させると共に、ボディ本体のフロントピラーにプロテクタホルダを介して固定して、ボディ側ハーネスとドア側ハーネスとを接続する車両用ドアハーネスの配索構造が開示されている。そして、車両ドアの開閉時には、開閉に追随してハーネスプロテクタがスライドガイド内を摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−263175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る配索構造では、車両ドアが開いた状態においては、ボディ本体と車両ドアとの間に架け渡されるハーネスプロテクタに対して、雨等の水がかかることもある。そして、水滴が付着した状態でハーネスプロテクタがスライドガイド内を摺動すると、スライドガイド内に水が浸入して溜まってしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、ドア内において水が溜まるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ワイヤーハーネスを車両のボディとドアとの間で配索するワイヤーハーネス配索構造部であって、一部分が前記ボディに支持され、前記ワイヤーハーネスを含む配線部と、前記配線部が挿入される挿入口部と、前記配線部における前記ワイヤーハーネスを迂回可能な余裕空間を有して収容する余長吸収部と、前記余長吸収部の下部に形成された水抜孔部とを有し、前記ドアのドアトリムと前記ドアトリムより車外側のドアインナーパネルとの間で、前記水抜孔部が、前記ドアインナーパネルに形成された車内側から車外側に貫通する貫通孔部に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されるプロテクタと、を備えている。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記プロテクタは、前記水抜孔部から下方に向けて延出すると共に前記ドアインナーパネルの前記貫通孔部に挿通される筒状又は溝状の導出部を有している。
【0008】
第3の態様は、第2の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記導出部は、先端部の少なくとも一部が外周側に拡がる形状に形成されている。
【0009】
第4の態様は、第2又は第3の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記導出部は、先端部のうち車外側の部位が車外側に拡がる形状に形成されている。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記余長吸収部は、前記挿入口部より下方に膨らむ下膨部を有し、前記水抜孔部は、前記下膨部の下端部に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、プロテクタが、余長吸収部の下部に形成された水抜孔部を有し、ドアトリムとドアインナーパネルとの間で、水抜孔部がドアインナーパネルに形成された車内側から車外側に貫通する貫通孔部に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されるため、プロテクタ内に侵入した水を、水抜孔部及び貫通孔部を通じてドアインナーパネルの車外側に抜くことができ、ドア内において水が溜まるのを抑制することができる。
【0012】
第2の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、プロテクタが、水抜孔部から下方に向けて延出すると共にドアインナーパネルの貫通孔部に挿通される筒状又は溝状の導出部を有しているため、プロテクタ内から水抜孔部を通じて外方に抜ける水が、ドアインナーパネルの車内側に入ることをより確実に抑制することができる。
【0013】
第3の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、導出部が、先端部の少なくとも一部が外周側に拡がる形状に形成されているため、導出部の内側に水が残ることを抑制することができる。
【0014】
第4の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、導出部が、先端部のうち車外側の部位が車外側に拡がる形状に形成されているため、プロテクタ内から抜かれる水が車外側に誘導され、ドアインナーパネルの車内側に入ることをより確実に抑制することができる。
【0015】
第5の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、余長吸収部が挿入口部より下方に膨らむ下膨部を有し、水抜孔部が下膨部の下端部に形成されているため、プロテクタ内に侵入した水は、下膨部に向けて流れて該下膨部の下端部の水抜孔部から抜けるため、より確実にドア内において水が溜まることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ワイヤーハーネス配索構造部の概略全体図である。
【図2】ドアの開状態におけるワイヤーハーネス配索構造部を示す平面図である。
【図3】ドアの閉状態におけるワイヤーハーネス配索構造部を示す平面図である。
【図4】ボディ固定部材の分解斜視図である。
【図5】プロテクタの側面図である。
【図6】プロテクタの下面図である。
【図7】プロテクタと配線部との関係を示す図である。
【図8】ドア後方から見た水抜構造部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部30について説明する(図1参照)。ワイヤーハーネス配索構造部30は、ワイヤーハーネス1を車両のボディ10とドア20との間で配索するための構成である。
【0018】
<ワイヤーハーネス>
配索対象であるワイヤーハーネス1は、ドア20に搭載される電気機器に対して電源供給又は信号伝達するための複数の電線が結束されて配索形態に形成されたものである。ドア20に搭載される電気機器としては、スピーカー、サイドミラーモータ、ドアロックモータ、パワーウインドウモータ及び各種スイッチ等がある。ここで、ワイヤーハーネス1のうちボディ10からドア20に架け渡される部分は、複数の電線が1本に結束されて構成されている。そして、ワイヤーハーネス1は、ドア20内で分岐されて各種電気機器に接続される。
【0019】
また、ここでは、ワイヤーハーネス1に、主経路電線2と該主経路電線2とは異なる経路に配索される異経路電線3とが組み込まれている例で説明する。そして、異経路電線3がドア20内下方のスピーカーに接続され、主経路電線2がドア20内上方のその他の各種電気機器に接続されるものとする(図1参照)。
【0020】
<ボディ及びドア>
ボディ10は、金属材料等により形成されるフレーム及びパネル等が溶接等されて構成された部分である。ボディ10の側部には、車両に乗り降りするための乗降口が形成されている。
【0021】
ドア20は、ボディ10に対して、乗降口を開閉可能にヒンジ部19等により連結されている。より具体的には、ドア20は、閉状態における車両前方側の端部が、フロントピラー(ボディ10の乗降口における内周部の車両前方側に位置する部位)に対して、略鉛直方向に沿った連結軸周りに開閉動作可能に連結されている。また、ドア20は、ドアインナーパネル22、ドアアウターパネル24及びドアトリム26を有している。ドアインナーパネル22は、ドアアウターパネル24とドアトリム26との間に設けられる部分である。ドアアウターパネル24は、ドア20の外装部材であり、ドアインナーパネル22の車外側に取り付けられている。ドアトリム26は、ドア20の内装部材であり、ドアインナーパネル22の車内側に取り付けられている。ドアインナーパネル22及びドアアウターパネル24は、金属板を打抜き、プレス成形等して形成されている。また、ドアトリム26は、合成樹脂材料等で形成されている。
【0022】
以下、ドア20について、ボディ10に対して連結される端部側を前方、その反対側を後方として説明することがある。また、ドア20及びワイヤーハーネス配索構造部30のうちドア20に配索される部分について、ドア20の前方から後方を見たのが正面、ドアの車内側から車外側を見たのが側面であるものとする。
【0023】
ワイヤーハーネス配索構造部30は、ワイヤーハーネス1を、ボディ10のフロントピラーに貫通して配索すると共に、ドア20のドアインナーパネル22とドアトリム26との間に配索する。このため、ボディ10のフロントピラーには、ワイヤーハーネス1を貫通配索するためのボディ配索孔部11が形成されている。また、ドア20における前方側端部には、ドアインナーパネル22とドアトリム26との間にワイヤーハーネス1を配索するための導入開口部21が形成されている。この導入開口部21は、ドアインナーパネル22に形成された車内側に開口する収容凹部23の前方側の端縁部と、ドアトリム26の前方側の端縁部との組合せにより形成されている。そして、上記ボディ10のボディ配索孔部11とドア20の導入開口部21とは、ドア20の閉状態において、対向する部分に設けられている。また、収容凹部23は、ドア20内において後述するプロテクタ60が主として収容される部分であり、プロテクタ60を全体的又は部分的に収容可能な内部空間を有している。
【0024】
また、ドア20には、周縁部に沿って防水用のウェザーストリップ28が設けられている。このウェザーストリップ28は、ドア20を閉めた状態で、ボディ10の乗降口の内周部に密着して車内外において水密状態を維持可能なゴム等の弾性部材で形成されている(図3参照)。そして、本ワイヤーハーネス配索構造部30は、ワイヤーハーネス1を、ウェザーストリップ28より車内側に配索するように構成されている。
【0025】
<ワイヤーハーネス配索構造部の全体構成>
ワイヤーハーネス配索構造部30は、上記ワイヤーハーネス1を含む配線部40と、ボディ固定部材50と、プロテクタ60と、貫通孔部231とを備えている(図1参照)。
【0026】
配線部40は、ボディ10とドア20との間で配索され、ワイヤーハーネス1と外装部材42とを有している。
【0027】
外装部材42は、ワイヤーハーネス1におけるボディ10とドア20との間に架け渡される部分を含む部分の周囲を覆う形態で設けられている。この外装部材42は、ワイヤーハーネス1を、外部から保護すると共にボディ10とドア20との間で支持する部材である。
【0028】
外装部材42は、内側に挿通されるワイヤーハーネス1のドア20の開閉動作に連動した曲げ動作に従って曲げ変形可能であると共に、該ワイヤーハーネス1をボディ10とドア20との間で屈曲、弛み及び垂れ下がりを抑制して支持可能に形成されている。より具体的には、外装部材42には、ワイヤーハーネス1より剛性が高い部材が採用されている。ここでは、外装部材42は、合成樹脂(例えば、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)等)を筒状に押出成型すると共にブロー成型或いはバキューム成型して製造されたコルゲートチューブである(図4参照)。コルゲートチューブは、周方向に沿った凸条の山部と凹条の谷部とが延在方向に交互に連続して設けられた筒状の部材である。また、外装部材42は、扁平な形状(ここでは、延在方向に直交する断面視において対向する一対の半円弧を一対の直線が結ぶ形状)に形成されている。すなわち、外装部材42は、延在方向に直交する断面視における長手方向に曲がり難く(剛性が高く)、短手方向に曲がりやすい(可撓性が高い)形状である。
【0029】
もっとも、外装部材42は、ワイヤーハーネス1より高い剛性を有していればよく、上述したコルゲートチューブに限定されるものではない。例えば、外装部材は、比較的硬質なゴム(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、エラストマー等)により扁平な筒状に形成されていてもよい。また、外装部材42は、扁平な形状に限られず、断面視円形等の形状に形成されていてもよい。
【0030】
上記外装部材42は、ボディ10側の端部がボディ10内でテープ90等によりワイヤーハーネス1に対して固定されると共に、該ボディ10側の端部寄りの一部分が後述するボディ固定部材50によりボディ10に固定されている(図2、図3参照)。これにより、配線部40は、一部分がボディ10に支持される。そして、外装部材42は、ドア20の開閉動作に伴って、ワイヤーハーネス1と共にドア20内に進退移動可能とされている。
【0031】
ボディ固定部材50は、配線部40をボディ10に支持する部分である(図4参照)。このボディ固定部材50は、外装部材42のボディ10側の端部寄りの一部分に装着され、ボディ配索孔部11の開口縁部に固定される。また、ボディ固定部材50は、ボディ配索孔部11の開口縁部(エッジ)から配線部40を保護する部分でもある(このことからエッジプロテクタとも呼ばれる)。
【0032】
このボディ固定部材50は、挿入部52と、複数の係止部53と、鍔部54と、付勢部55と、位置決リブ56とを有している。
【0033】
挿入部52は、ボディ配索孔部11と配線部40との間に介在して、配線部40を保護する部分である。この挿入部52は、ボディ配索孔部11内に挿入可能、且つ、内側に外装部材42を配設可能な筒状に形成されている。そして、挿入部52は、ボディ配索孔部11に対して、車両の略前方側に向けて挿入される。以下、説明の便宜上、ボディ配索孔部11について挿入部52を挿入する向きを挿入方向Sと称し、この方向をボディ固定部材50自体の向きを説明するのにも用いる。
【0034】
より具体的には、挿入部52の外周部は、全体としてボディ配索孔部11の開口縁部に対応した形状で、且つ、ボディ配索孔部11より僅かに小さいサイズに設定されている。また、挿入部52の内周部は、外装部材42としてのコルゲートチューブの山部の外形状に対応した形状で、且つ、山部の外形状より僅かに大きいサイズに設定されている。ここで、対応した形状とは、略相似形状であって、全体的に相手方の形状に沿って存在する形状をいう。
【0035】
係止部53は、ボディ配索孔部11の開口縁部に対して、挿入方向S前方側から係止する部分である。この係止部53は、挿入部52の外周部から外周側に向けて張り出す形状に形成されている。より具体的には、係止部53は、挿入部52の挿入方向S前方側の端部における外周部から外周側且つ挿入方向S後方に向けて延出し、その先端側部分が自由端とされた形状である。すなわち、係止部53は、挿入方向S前方側から後方側に向けて徐々に外周側への突出寸法が大きくなっている。この係止部53の先端部には、ボディ配索孔部11の開口縁部に当接可能な係止面が設けられている。また、係止部53は、挿入部52の外周部から外周側に張り出した形態から、それよりも内周側へ弾性変形可能に設けられている。
【0036】
そして、係止部53は、挿入部52がボディ配索孔部11に挿入される際に、そのボディ配索孔部11の開口縁部に接触しつつ、ボディ配索孔部11内に収まる形態まで内周側に弾性変形する。さらに、係止部53は、ボディ配索孔部11を通過後、弾性復帰する力により元の形態に戻って、ボディ配索孔部11の開口縁部に対して挿入方向S前方側から対向する。
【0037】
係止部53は、挿入部52の周方向複数位置に設けられている。ここでは、4つの係止部53が、挿入部52の周方向において等間隔に設けられている。
【0038】
鍔部54は、ボディ配索孔部11の開口縁部に対して、挿入方向S後方側から対向する部分である。この鍔部54は、挿入部52の外周部から外周側に張り出す鍔状に形成されている。鍔部54の外周部は、ボディ配索孔部11より大きいサイズに形成されている。また、鍔部54は、挿入方向Sにおいて、係止部53の係止面に対して、ボディ配索孔部11の開口縁部の厚さ寸法と同じかそれより大きい(ここでは僅かに大きい)間隔をあけて設けられている。
【0039】
そして、鍔部54は、挿入部52がボディ配索孔部11に挿入された状態で、係止部53との間にボディ配索孔部11の開口縁部を介在させて、該ボディ配索孔部11の開口縁部の挿入方向S後方に対向配置される。これにより、ボディ固定部材50は、挿入方向Sにおいて抜止めされる。
【0040】
付勢部55は、ボディ固定部材50のボディ10に対するがたつきを抑制するための部分である。この付勢部55は、ボディ10を、挿入方向S前方側に付勢しつつ係止部53との間に挟むことにより、ボディ固定部材50のがたつきを抑制する。より具体的には、付勢部55は、鍔部54の外周部から外周側に張り出すと共に、先端側(外周側)に向かうにつれて徐々に挿入方向S前方に傾斜する鍔形状に形成されている。そして、付勢部55は、上記形態から、外周側の部位が挿入方向S後方側へ弾性変形可能に構成されている。また、付勢部55は、挿入方向Sにおいて、先端部が係止部53の係止面に対してボディ配索孔部11の開口縁部の厚さ寸法より小さい間隔をあけて位置する形状に形成されている。
【0041】
そして、付勢部55は、係止部53がボディ配索孔部11の開口縁部に対して挿入方向S前方側から対向した状態で、外周側の部位がボディ10におけるボディ配索孔部11の開口縁部周りの挿入方向S後方側の面に押し付けられて挿入方向S後方側に弾性変形する。これにより、付勢部55は、弾性復帰しようとする力により、ボディ10を挿入方向S前方側に向けて付勢した状態に維持される。
【0042】
位置決リブ56は、挿入部52内に配設される配線部40を、該配線部40の延在方向において位置決する部分である。ここでは、位置決リブ56は、外装部材42としてのコルゲートチューブの凹凸状の外周部に対して嵌合可能に形成されている。より具体的には、位置決リブ56は、挿入部52の内周面から内周側に突出する周方向に沿った凸条に形成され、挿入部52の貫通方向において外装部材42の延在方向における谷部に対応した間隔(すなわち、同じ間隔又は1つ置きの間隔等)で複数設けられている。
【0043】
上記ボディ固定部材50は、一対の分割部材(ここでは略J字形状の部材)を合体させることにより構成される。すなわち、外装部材42を間に挟んだ状態で一対の組み合わせ部材を合体させることにより、位置決リブ56が外装部材42の外周部に対して嵌合し、ボディ固定部材50は、外装部材42に対して該外装部材42の延在方向に相対移動不能に装着される。ここでは、ボディ固定部材50は、一対の分割部材の突き合わせ部分の各一方の端部から突出する係止部58と、各他方の端部に形成され、前記係止部58が係止可能な受け部59とを有している。
【0044】
そして、ボディ固定部材50は、外装部材42がヒンジ部19の連結軸に沿って扁平となる姿勢でボディ配索孔部11の開口縁部に対して固定される。これにより、外装部材42内に配設されているワイヤーハーネス1は、ヒンジ部19の連結軸に平行な方向に曲げ規制されると共に該連結軸に直交する平面上で曲げ変形し易く、該連結軸周りに開閉動作するドア20に対してよりスムーズに連動する。
【0045】
もっとも、上記ボディ固定部材50は、一例であり、配線部40の一部分をボディ10に対して支持可能(好ましくはボディ配索孔部11の開口縁部から配線部40を保護可能)であれば上記形状に限られるものではない。
【0046】
プロテクタ60は、ドア20の開閉動作に伴ってドア20内に導出入されるワイヤーハーネス1を余長吸収可能に収容すると共に外部から保護する部分である。このプロテクタ60は、図2、図3に示すように、ドア20のドアトリム26とドアトリム26より車外側のドアインナーパネル22との間に配設されている。プロテクタ60は、余長吸収部62と、案内部66と、異経路案内部72と、水抜孔部82と、水抜孔部82とを有している(図5、図6参照)。以下、プロテクタ60について、ドア20に配置された状態における前後方向を用いて説明することがある。
【0047】
概略的には、プロテクタ60は、案内部66により外装部材42のドア20側の端部を含む一部分を進退経路に案内すると共に、余長吸収部62により外装部材42のドア20側の端部から延出するワイヤーハーネス1を迂回可能な余裕空間を有して収容する(図7参照)。より具体的には、ワイヤーハーネス1は、プロテクタ60の案内部66における挿入口部68を通じて挿入され、余長吸収部62における引出口部64を通じて引き出される。ここでは、プロテクタ60挿入口部68と引出口部64とが略直交する方向に貫通している。また、プロテクタ60は、異経路案内部72により、異経路電線3を、主経路電線2が引出口部64から引き出される経路とは異なる経路に案内する。
【0048】
また、プロテクタ60は、ドアインナーパネル22とドアトリム26との間において、ドアインナーパネル22に形成されている収容凹部23内に部分的又は全体的(ここではほぼ全体的に)に収容されている。ここでは、収容凹部23は、ドア20内に配設されるスピーカーの上方の位置に形成されているものとする(図1参照)。より具体的には、プロテクタ60は、引出口部64を上方に向け且つ挿入口部68を前方に向ける姿勢で、挿入口部68が導入開口部21の内周側の位置にくるように配設されている。なお、上方を向くとは、上方を望んでいればよく、鉛直方向に対して傾斜している場合も含むものとする。
【0049】
以下、プロテクタ60の各部の構成についてより詳細に説明する。
【0050】
案内部66は、ドア20側の端部が余長吸収部62と連続する筒状に形成され、そのボディ側端部に挿入口部68を有している。より具体的には、案内部66は、貫通方向に直交する断面視において略長方形をなす筒状に形成されている。ここでは、案内部66は、略直線状に形成され、ドア20の前後方向に沿った姿勢で設けられている。そして、案内部66は、挿入口部68を通じて挿入される外装部材42を、その外周部に接触することにより、外装部材42の中心軸に対する放射方向(主として断面視における短手方向すなわち車内外方向)において経路規制する。もっとも、案内部66は、外装部材42を主として断面視における短手方向に経路規制することができればよく、断面視楕円形、円形或いは多角形等の筒状に形成されていてもよい。
【0051】
また、案内部66と外装部材42との関係では、外装部材42は、ドア20の開状態において、少なくともドア20側の端部を含む一部分が案内部66内に挿入される程度に長い延在寸法に設定されている。一方、案内部66は、ドア20が開閉動作される際に、ドア20内で進退される外装部材42を、余長吸収部62に向けて案内できればよい。ここでは、ドア20の閉状態において、外装部材42のドア20側の端部を余長吸収部62内に突出させる延在寸法に設定されている。
【0052】
また、案内部66の挿入口部68は、周方向において少なくとも一部分(ここでは全体)が、開口端部に向けて徐々に外周側に拡がる形状に形成されている。また、挿入口部68は、その開口端部の周方向の少なくとも一部分における内周縁部及び外周縁部が丸められた形状に形成されているとよい。このような挿入口部68の形状によると、案内部66内への配線部40の進退動作がよりスムーズになる。
【0053】
余長吸収部62は、案内部66の挿入口部68とは反対側(後方側)に連なる部分であり、内部に外装部材42のドア20側の端部から延出したワイヤーハーネス1を迂回可能な余裕空間を有して収容可能な収容空間を有している。また、余長吸収部62の引出口部64は、案内部66に対して収容空間を介した部位に設けられている。
【0054】
この余長吸収部62は、外装部材42のドア20側の端部から延出したワイヤーハーネス1を、第1経路R1と、該第1経路R1に対して中間部が離間するように膨らんだ第2経路R2との間で曲げることにより迂回させて余長吸収可能に収容可能に形成されている(図7参照)。より具体的には、余長吸収部62は、側面視において収容空間を挟んで対向する第1壁部621と第2壁部622とを有している。収容空間内に収容されるワイヤーハーネス1は、第1経路R1を通る際に第1壁部621に近接し、第2経路R2を通る際に第2壁部622に近接して配設される。すなわち、ワイヤーハーネス1が第1経路R1を通る状態で、該ワイヤーハーネス1の第2壁部622側に迂回可能な余裕空間が存在する。
【0055】
この第1壁部621及び第2壁部622は、各一方の端部が案内部66に連続し、各他方の端部が引出口部64に連続している。より具体的には、第1壁部621は、側面視において、挿入口部68の貫通方向及び引出口部64の貫通方向に沿ったL字状の仮想経路の内周側で、案内部66と引出口部64とを略直線状に結ぶ形状に延在している。また、第2壁部622は、第1壁部621に収容空間分の間隔をあけて、前記L字状の仮想経路の外周側で、案内部66と引出口部64とを外周側に膨らむ曲線状に結ぶ形状に延在している。ここでは、第2壁部622は、ドア20の後方側及び下方に向けて膨らむ形状に形成されている。ここで、余長吸収部62のうち、案内部66(挿入口部68)より下方に膨らむ部分を下膨部63と称する。換言すると、下膨部63は、引出口部64の開口方向とは反対側に向けて膨らむ部分である。図5では、下膨部63は、余長吸収部62のうち一点鎖線の下方部分である。
【0056】
そして、余長吸収部62は、ドア20の開状態では、外装部材42のドア20側の端部から延出したワイヤーハーネス1を、第2壁部622側に迂回可能な余裕空間をあけた第1経路R1を通る形態で収容する(図7の実線)。また、余長吸収部62は、ドア20の閉状態では、ワイヤーハーネス1を、第2経路R2を通る形態で収容する(図7の二点鎖線)。すなわち、余長吸収部62は、ドア20が開姿勢から閉姿勢に閉動作されることによりワイヤーハーネス1のうち収容空間内に押し込まれる部分を、その内部で曲げて第1経路R1から該第1経路R1より距離の長い第2経路R2に迂回させることにより、ドア20の閉動作に伴うワイヤーハーネス1の余長を吸収する。
【0057】
また、余長吸収部62は、引出口部64でワイヤーハーネス1を固定可能な引出位置決部65を有している。引出位置決部65は、引出口部64の開口端部が部分的に(ここでは断面視L字状に)延出した形状に形成されている。そして、引出口部64を通じて引き出されるワイヤーハーネス1を、引出位置決部65の内側に接触させた状態で、結束バンド92で締付ける又はテープを巻き付ける(ここでは結束バンド92で締付ける)ことにより、引出口部64においてプロテクタ60に対して位置決することができる。なお、ワイヤーハーネス1のうち、結束バンド92により締め付けられる部位には、外周部にテープが巻き付けられていてもよい。これにより、ドア20の開閉動作時に余長吸収部62内にワイヤーハーネス1が進退しても、ボディ10内に配索されるワイヤーハーネス1に対して引張り又は弛みが発生することを抑制することができる。
【0058】
異経路案内部72は、引出口部64から引き出されるワイヤーハーネス1のうちの異経路電線3を、主経路電線2とは異なる余長吸収部62の外面に沿った経路に案内する部分である(図7参照)。より具体的には、異経路案内部72は、引出口部64から引き出されるワイヤーハーネス1における主経路電線2から分岐させてUターンさせた異経路電線3を、その異経路電線3が接続される電気機器(スピーカー)との接続箇所に向けて案内する。ここでは、異経路案内部72ドア20内でプロテクタ60の下方に配設されるスピーカーに向けて、異経路電線3を引出口部64より下方に案内する。
【0059】
この異経路案内部72は、一方が引出口部64の内部に開口し、他方がスピーカーとの接続箇所に近接した位置で開口している。ここでは、異経路案内部72は、余長吸収部62の後方を通る経路を形成している。より具体的には、異経路案内部72は、余長吸収部62のうち第2壁部622の外面に沿って後方から下方に亘って形成されている。また、異経路案内部72は、余長吸収部62の第2壁部622の一部分を1方の壁部とする筒状に形成されている。もっとも、異経路案内部72は、上記形状に限られず、例えば溝形状に形成されていてもよい。
【0060】
そして、引出口部64から引き出されたワイヤーハーネス1と、引出位置決部65の先でUターンされた異経路電線3とが引出位置決部65に結束バンド92で固定され、Uターンされて引出口部64内に戻された異経路電線3が異経路案内部72に配設される。この異経路電線3は、異経路案内部72を通ってプロテクタ60の下方に案内され、異経路案内部72から延出してその先のスピーカーに接続される。なお、異経路案内部72から延出した異経路電線3は、結束バンド92等により異経路案内部72の端部に固定されているとよい。
【0061】
水抜孔部82及び水抜孔部82については、後で改めて詳述する。
【0062】
上記プロテクタ60は、一対の部材を組み合わせて構成されている(図5、図6参照)。より具体的には、プロテクタ60は、例えば、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)等の合成樹脂材料を射出成型等することによりそれぞれ形成した凹状部材601と蓋状部材602とを合体させて構成することができる。そして、凹状部材601及び蓋状部材602は、挿入口部68の貫通方向及び引出口部64の貫通方向に略直交する方向(車内外方向)において近接して合体される。すなわち、凹状部材601の開口を塞ぐように蓋状部材602を合体させることにより、プロテクタ60が組み立てられる。なお、プロテクタ60は、凹状部材601及び蓋状部材602の合体状態を維持するための係止構造部を有しているとよい。例えば、係止構造部として、凹状部材601の側縁部の複数箇所に設けられた枠状の受け部と、蓋状部材602の側縁部の複数箇所に設けられ、各受け部に対して挿入されることにより係止する係止部とを有する構成を採用することができる。
【0063】
また、プロテクタ60は、ドアインナーパネル22の収容凹部23内に配置された状態でドア20に固定される。このための構成として、プロテクタ60は、収容凹部23に形成される孔部に対して嵌合可能なドア固定部78を有している。ドア固定部78は、プロテクタ60をドアインナーパネル22に対して車外側に向けて押し付けることにより、前記孔部に嵌合する形状に形成されている。例えば、ドア固定部78としては、プロテクタ60の外面から突出する基軸部と、その先端部からその外周側に張り出す形状に形成されて孔部の開口縁部に係止可能な形態とそこから内周側に撓んだ形態との間で弾性変形可能な係止部とを有する構成を採用できる。また、固定部は、係止部が孔部の開口縁部に係止した状態で、その反対側から該開口縁部を付勢する付勢片を有していてもよい。ここでは、ドア固定部78は、プロテクタ60の車外側の側面において、余長吸収部62及び案内部66からそれぞれ突出するように2つ設けられている。そして、このドア固定部78をドアインナーパネル22に形成された孔部に挿入することにより、係止部が、孔部の開口縁部に当接して内周側に弾性変形し、孔部を越えた位置で外周側に弾性復帰して孔部の開口縁部に対して車外側から係止する。
【0064】
もっとも、プロテクタ60をドア20に対して固定するための構成として、その他の固定構造が採用されてもよい。例えば、プロテクタ60は、ねじ止め、ボルト止め、スタッドボルト止め又はブラケット固定等によりドアインナーパネル22に対して固定可能な形状であってもよい。また、プロテクタ60は、内装部材としてのドアトリム26に固定されてもよい。
【0065】
また、プロテクタ60について、凹状部材601と蓋状部材602とで構成される例について説明してきたが、プロテクタは、凹状部材同士の組合せ等により構成されていてもよい。また、プロテクタ60は、凹状部材であって、その開口部をドアトリム26の一部分により塞ぐように構成されていてもよい。プロテクタ60が上記のような形状に形成される場合にも、各部材によって後述する水抜孔部82及び導出部84が形成されていればよい。
【0066】
また、上述したプロテクタ60の形状は、その一例であり、他の種々の形状を採用することができる。すなわち、プロテクタ60は、挿入口部68から挿入されるワイヤーハーネス1を余長吸収部62により迂回可能な空間を有して収容できる構成であればよく、車種によるドア20の形状等を考慮して形成されるとよい。例えば、プロテクタは、挿入口部68の後方側に直接余長吸収部62が連続する形状、下膨部63が省略された形状等に形成されていてもよい。他にも、ワイヤーハーネス1を輪状に巻いて収容し、輪部の径を変化させて迂回可能な収容部を有する形状等を採用してもよい。この場合にも、異経路案内部72が余長吸収部62の外面に沿って形成されているとよい。
【0067】
上記ワイヤーハーネス配索構造部30は、ボディ10からドア20内に配索される配線部40、ボディ固定部材50及びプロテクタ60をモジュール化して、車両組付け前に組み立てておくとよい。すなわち、ワイヤーハーネス1に外装部材42を被せるとともに、該外装部材42の一方の端部及び他方の端部を各部から延び出たワイヤーハーネス1にテープ90を巻き付けて固定し、外装部材42の一方の端部寄りの一部分にボディ固定部材50を装着する。そして、外装部材42の他方の端部を含む一部分をプロテクタ60の案内部66内に配設すると共に、外装部材42の他方の端部から延び出たワイヤーハーネス1を余長吸収部62内に収容して引出口部64から引き出す。この引出口部64から引き出されたワイヤーハーネス1のうちの異経路電線3をUターンさせて引出口部64内に戻し、前記ワイヤーハーネス1とUターンされた異経路電線3とを引出位置決部65に対して結束バンド92で固定する。さらに、Uターンされた異経路電線3を、引出口部64側の開口から異経路案内部72に配設する。
【0068】
<水抜構造部>
また、ワイヤーハーネス配索構造部30は、プロテクタ60内から水抜き可能な構造を備えている(図8参照)。この水抜構造部は、プロテクタ60の水抜孔部82及び導出部84を有する。
【0069】
ドア20においては、降雨時等にウインドウに付着した水がウインドウを伝って内部に浸入することがある。ドア20に対して上下移動されるウインドウは、ドア20内ではドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間で動作する。このため、ウインドウを伝ってドア20内に浸入する水は、ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間に浸入する。そして、ドア20内に浸入した水は、ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との下端部における隙間から、ドア20の外方に抜ける。
【0070】
本ワイヤーハーネス配索構造部30における水抜構造部は、ドア20の開状態の際にボディ10とドア20との間で延在する配線部40に付着して、プロテクタ60内に浸入する水(水によって流される埃、砂等も含む)を、ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間に誘導し、ドア20の外方に抜くように構成されている。
【0071】
ドアインナーパネル22には、車内側から車外側に貫通する貫通孔部が形成されている。より具体的には、貫通孔部231は、収容凹部23のうち、プロテクタ60の余長吸収部62が配設される部位の下方に形成されている。すなわち、貫通孔部231は、収容凹部23のうち鉛直方向に交差する下側の部位に形成されている。
【0072】
水抜孔部82は、プロテクタ60の余長吸収部62の下部に形成され、プロテクタ60の外方に貫通する孔部である(図5、図6参照)。ここでは、水抜孔部82は、余長吸収部62のうち、案内部66より下方に膨らんだ下膨部63の下端部に形成されている。そして、水抜孔部82は、余長吸収部62のうち、引出口部64とは反対側の外方に向けて貫通している。なお、下膨部63の下端部とは、プロテクタ60がドア20内に配設された状態における下端部を言い、水抜孔部82の位置は、プロテクタ60の配設姿勢に対応して決定されるとよい。また、水抜孔部82は、下膨部63の下端部のうち、車内外方向において車外側(異経路案内部72の車外側の側方)の部位に形成されている。この水抜孔部82は、略矩形状に開口している。
【0073】
そして、プロテクタ60は、収容凹部23において、水抜孔部82がドアインナーパネル22の貫通孔部231に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されている。また、水抜孔部82の下方に重複する貫通孔部231は、水抜孔部82より大きい形状に形成され、鉛直方向における水抜孔部82の投影範囲を含むように設けられている。すなわち、水抜孔部82と貫通孔部231とは、水抜孔部82を通じて下方に落下する水が貫通孔部231を通るような形状及び位置関係に設定されている。
【0074】
この水抜孔部82は、凹状部材601のうち第2壁部622の端縁部で開口する凹状の切欠部分の開口部分が、蓋状部材602によって塞がれることにより形成されている。すなわち、水抜孔部82は、凹状部材601の前記切欠部分の内周縁部と蓋状部材602の内面との組合せで形成されている。
【0075】
導出部84は、水抜孔部82から下方に向けて延出する筒状又は溝状に形成された部分である。この導出部84は、水抜孔部82の開口縁部に沿った壁部を有する形状に形成されている。ここでは、導出部84は、車内側に開口する溝状に形成されている。また、導出部84は、水抜孔部82から異経路案内部72より下方に突出する寸法に設定されている。
【0076】
そして、導出部84は、ドアインナーパネル22の貫通孔部231に挿通される。すなわち、導出部84の先端部は、貫通孔部231を通じて、ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間に突出している。
【0077】
また、導出部84は、先端部の少なくとも一部が外周側に徐々に拡がる形状に形成されている。ここでは、導出部84は、先端部の全体(車外側、前方側及び後方側)が拡がる形状に形成されている。そして、導出部84の先端部のうち車外側の部位が車外側に拡がる形状により、導出部84を通じて抜ける水は車外側に流れ易く、すなわち車内側に流れ難くなる(図8参照)。
【0078】
この導出部84は、凹状部材601の一部として、該凹状部材601の開口方向に開口する溝状に形成されている。なお、凹状部材601は、射出成型における金型の進退構造上、導出部84が形成される位置で、異経路案内部72の中途部が切り欠かれた形状となっている。すなわち、導出部84は、異経路案内部72を切欠部分を通じて凹状部材601の開口側に開口している。もっとも、射出成型において、金型のスライド機構を用いることにより、凹状部材601を、導出部84を筒状に形成すると共に異経路案内部72の切欠を省略した形状に形成することも可能である。
【0079】
そして、案内部66の挿入口部68からプロテクタ60内に浸入した水(水により流される埃及び砂も含む)は、案内部66より下方の下膨部63に流れ、該下膨部63の下端部に形成された水抜孔部82を通じて余長吸収部62内から抜ける(図5参照)。水抜孔部82を通った水は、導出部84を通じて貫通孔部231を通過し、ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間に抜ける(図8参照)。ここで、導出部84を通る水は、該導出部84の壁部を伝って車外側へと誘導される。ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との間に抜けた水は、さらに。ドアインナーパネル22とドアアウターパネル24との下端部における隙間からドア20の外方へ抜ける。
【0080】
これにより、プロテクタ60内に浸入した水は、ドア20の外方に抜ける。また、プロテクタ60内に侵入した埃、砂等も、水と一緒にドア20の外方に抜ける。
【0081】
上記構成に係るワイヤーハーネス配索構造部30によると、プロテクタ60が、余長吸収部62の下部に形成された水抜孔部82を有し、ドアトリム26とドアインナーパネル22との間で、水抜孔部82がドアインナーパネル22に形成された車内側から車外側に貫通する貫通孔部231に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されるため、プロテクタ60内に浸入した水を、水抜孔部82及び貫通孔部231を通じてドアインナーパネル22の車外側に抜くことができ、ドア20内において水が溜まるのを抑制することができる。
【0082】
また、プロテクタ60が、水抜孔部82から下方に向けて延出すると共にドアインナーパネル22の貫通孔部231に挿通される溝状の導出部84を有する構成によると、プロテクタ60内から水抜孔部82を通じて外方に抜ける水が、ドアインナーパネル22の車内側に入ることをより確実に抑制することができる。
【0083】
また、導出部84が、先端部の少なくとも一部が外周側に拡がる形状に形成されている構成によると、導出部84の内側に水が残ることを抑制することができる。
【0084】
また、導出部84が、先端部のうち車外側の部位が車外側に拡がる形状に形成されている構成によると、プロテクタ60内から抜かれる水が車外側に誘導され、ドアインナーパネル22の車内側に入ることをより確実に抑制することができる。
【0085】
また、余長吸収部62が挿入口部68(案内部66)より下方に膨らむ下膨部63を有し、水抜孔部82が下膨部63の下端部に形成されている構成によると、プロテクタ60内に浸入した水は、下膨部63に向けて流れて該下膨部63の下端部の水抜孔部82から抜けるため、より確実にドア20内において水が溜まることを抑制することができる。
【0086】
これまで、ワイヤーハーネス1に外装部材42が被されている例で説明したが、ワイヤーハーネス1自身が屈曲、弛み及び垂れ下がりを抑制可能な程度に高い剛性を有していれば、外装部材42は省略されてもよい。もっとも、ワイヤーハーネス1の保護及び曲げ方向規制の観点から言うと、外装部材42が被されていることが好ましい。
【0087】
また、これまで、プロテクタ60が案内部66をドア20の前後方向に沿わせる姿勢でドア20内に配設する例で説明したが、案内部66がドア20の前後方向に対して傾斜する姿勢で配設されてもよい。例えば、案内部66の余長吸収部62側が下がる姿勢でドア20内に配設されると、プロテクタ60内に浸入した水が、より水抜孔部82から抜け易いと考えられる。この場合、水抜孔部82の位置は、ドア20に配設された状態におけるプロテクタ60の姿勢によって決定され、余長吸収部62(下膨部63)の下端部となる位置に形成されているとよい。
【0088】
また、導出部84は、省略されてもよい。もっとも、より確実に水抜孔部82から抜ける水をドアインナーパネル22の車外側に移動させる観点から言うと、導出部84が設けられていることが好ましい。また、導出部は、ドアインナーパネル22の貫通孔部231に挿通されていなくてもよい。すなわち、導出部は、より確実にドアインナーパネル22の車外側に水を誘導するための構成であり、貫通孔部231に挿通されていなくても、貫通孔部231に対して上方からより近接した位置まで水を誘導することにより、貫通孔部231を抜ける確実性を向上させる効果を得ることができる。
【0089】
また、ワイヤーハーネス配索構造部30を、フロントサイドドアとしてのドア20に適用する例で説明したが、ボディ10とヒンジ部19で連結されるリアサイドドア等に適用してもよい。この場合、センターピラー(フロントサイドドアとリアサイドドアとの間のピラー)とリアサイドドアとの間にワイヤーハーネス1が架け渡される。すなわち、センターピラーに貫通孔部が形成され、ここにボディ固定部材50が取り付けられる。そして、リアサイドドアのドアインナーパネルには貫通孔部が形成され、この貫通孔部に対してドアインナーパネル22の車外側に向けて導出部84が挿通される態様でプロテクタ60が凹部に配設されるとよい。
【符号の説明】
【0090】
1 ワイヤーハーネス
10 ボディ
20 ドア
22 ドアインナーパネル
231 貫通孔部
26 ドアトリム
30 ワイヤーハーネス配索構造部
40 配線部
60 プロテクタ
62 余長吸収部
63 下膨部
68 挿入口部
82 水抜孔部
84 導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを車両のボディとドアとの間で配索するワイヤーハーネス配索構造部であって、
一部分が前記ボディに支持され、前記ワイヤーハーネスを含む配線部と、
前記配線部が挿入される挿入口部と、前記配線部における前記ワイヤーハーネスを迂回可能な余裕空間を有して収容する余長吸収部と、前記余長吸収部の下部に形成された水抜孔部とを有し、前記ドアのドアトリムと前記ドアトリムより車外側のドアインナーパネルとの間で、前記水抜孔部が、前記ドアインナーパネルに形成された車内側から車外側に貫通する貫通孔部に対して鉛直方向上方に重複する位置に配設されるプロテクタと、
を備えている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記プロテクタは、前記水抜孔部から下方に向けて延出すると共に前記ドアインナーパネルの前記貫通孔部に挿通される筒状又は溝状の導出部を有している、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記導出部は、先端部の少なくとも一部が外周側に拡がる形状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記導出部は、先端部のうち車外側の部位が車外側に拡がる形状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記余長吸収部は、前記挿入口部より下方に膨らむ下膨部を有し、
前記水抜孔部は、前記下膨部の下端部に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91461(P2013−91461A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235758(P2011−235758)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】