説明

ワイヤーロープの径測定装置

【課題】移動するワイヤーロープに対して径の測定ができ、ワイヤーロープへの取り付けが容易なワイヤーロープの径測定装置を提供する。
【解決手段】ワイヤーロープ11が隙間を有して挿通される貫通孔12が形成された枠体部材13と、貫通孔12の周囲に3個以上のセンサ部14〜17が間隔をあけて設けられ、センサ部14〜17部で貫通孔12を挿通するワイヤーロープ11までのそれぞれの距離を検知する距離検出手段18と、距離検出手段18からの信号を基に、ワイヤーロープ11の直径を演算する制御部19とを有し、枠体部材13は、貫通孔12を中心に少なくとも2つに分割可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に設置が完了したエレベータ等のワイヤーロープに取り付けられるワイヤーロープの径測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面が略円形の物体の径を測定するために、レーザや、渦流センサ等を備える径測定装置が用いられている。
例えば、特許文献1には、一定の間隔を有して配置された対となる渦流センサの間に導電性のある被測定物を配置して、被測定物の径を計測する径測定装置(支索外径測定装置)が開示されている。この径測定装置は、対となる渦流センサ間の距離から、その対となる渦流センサそれぞれが計測した被測定部までの距離を差し引くことによって、被測定物の径を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−170215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、渦流センサを被測定物の長手方向に沿って移動させた後に停止して、径の測定をし、また次の計測箇所まで渦流センサを移動することを繰り返すので、被測定物は一定間隔ごとに径の測定がなされることになり、計測箇所の間の領域について、径が規定以下の範囲になっている等を検知することはできない。
また、径測定装置は、被測定物の径を測定するときにのみ、被測定物に取り付けることを前提としているので、その取り付け箇所が、物理的な制限を受ける場合には、取り付け作業が手間取るという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、移動するワイヤーロープに対して径の測定ができ、ワイヤーロープへの取り付けが容易なワイヤーロープの径測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係るワイヤーロープの径測定装置は、ワイヤーロープが隙間を有して挿通される貫通孔が形成された枠体部材と、前記貫通孔の周囲に3個以上のセンサ部が間隔をあけて設けられ、前記各センサ部で前記貫通孔を挿通する前記ワイヤーロープまでの距離を検知する距離検出手段と、前記距離検出手段からの信号を基に、前記ワイヤーロープの直径を演算する制御部とを有し、前記枠体部材は、前記貫通孔を中心に少なくとも2つに分割可能である。
【0006】
本発明に係るワイヤーロープの径測定装置において、前記センサ部は、渦流センサからなり、前記距離検出手段は該渦流センサの電圧値から前記ワイヤーロープと該渦流センサの距離を検知するのが好ましい。
【0007】
本発明に係るワイヤーロープの径測定装置において、前記距離検出手段は、対向配置された前記渦流センサを2対以上備えるのが好ましい。
【0008】
本発明に係るワイヤーロープの径測定装置において、前記対向配置された渦流センサの各対は、前記貫通孔の軸心方向に異なった位置で配置されるのが好ましい。
【0009】
本発明に係るワイヤーロープの径測定装置において、前記枠体部材には、磁場発生手段と、前記貫通孔の周囲に配置された磁気センサとが設けられ、前記磁気センサは、前記磁場発生手段によって発生する磁場の大きさを計測するのが好ましい。
【0010】
本発明に係るワイヤーロープの径測定装置において、前記磁気センサは、ホール素子からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜6記載のワイヤーロープの径測定装置は、貫通孔の周囲に3個以上のセンサ部が間隔をあけて設けられ、各センサ部で貫通孔を挿通するワイヤーロープまでの距離を検知する距離検出手段を有するので、貫通孔の中心からのワイヤーロープの軸心のずれを検知して、ワイヤーロープの直径を測定することができ、ワイヤーロープが径方向に動きながらワイヤーロープの長手方向に移動している状態でもワイヤーロープの直径の測定が可能である。
また、枠体部材は、貫通孔を中心に少なくとも2つに分割可能であるので、分割された枠体部材によって、ワイヤーロープを挟み込んで、ワイヤーロープを貫通孔に配置することができ、ワイヤーロープに対する枠体部材の取り付けを容易に行うことが可能である。
【0012】
特に、請求項2記載のワイヤーロープの径測定装置は、センサ部が渦流センサからなるので、レーザでの測定と比較して、ワイヤーロープの表面に油等が付着している場合にもその油等から受ける影響を抑制した状態での距離測定が可能である。また、渦流センサは、レーザに比べて、部材、部品の点数を少なくして製作可能である。
【0013】
請求項3記載のワイヤーロープの径測定装置は、距離検出手段が対向配置された渦流センサを2対以上備えるので、2以上の方向でワイヤーロープの直径の計測が可能であり、正確なワイヤーロープの直径の測定ができる。
【0014】
請求項4記載のワイヤーロープの径測定装置は、渦流センサの各対は、貫通孔の軸心方向に異なった位置で配置されるので、各対となる渦流センサは、他の対となる渦流センサから一定の距離を保つことができ、他の対となる渦流センサより発生する磁場から受ける影響を低減可能である。
【0015】
請求項5記載のワイヤーロープの径測定装置は、磁場発生手段と貫通孔の周囲に配置された磁気センサとが設けられ、磁気センサは磁場発生手段によって発生する磁場の大きさを計測するので、磁気センサで計測される磁場の大きさからワイヤーロープの形状に異状が有るか否かを検知可能である。
【0016】
請求項6記載のワイヤーロープの径測定装置は、磁気センサがホール素子からなるので、磁気センサを構成する部材、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)、(B)は、それぞれ本発明の一実施の形態に係るワイヤーロープの径測定装置の側面図及び正面図である。
【図2】同ワイヤーロープの径測定装置の平面図である。
【図3】(A)〜(C)は、それぞれ同ワイヤーロープの径測定装置の枠体部材の断面図である。
【図4】同ワイヤーロープの径測定装置のブロック図である。
【図5】同ワイヤーロープの径測定装置によるワイヤーロープの径の計測方法を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)は、それぞれ同ワイヤーロープの径測定装置による径の計測結果を示す図表である。
【図7】(A)〜(D)は、それぞれ同ワイヤーロープの径測定装置による磁場の大きさの計測結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係るワイヤーロープの径測定装置10は、ワイヤーロープ11が隙間を有して挿通される貫通孔12が形成された枠体部材13と、貫通孔12の周囲に渦流センサ(センサ部の一例)14〜17が間隔をあけて設けられ、渦流センサ14〜17で貫通孔12を挿通するワイヤーロープ11までの距離を検知する距離検出手段18と、距離検出手段18からの信号を基に、ワイヤーロープ11の直径を演算する制御部19とを有している。そして、ワイヤーロープ11は、例えばエレベータを上下に稼動するために用いられるものであり、掛け渡された滑車(図示せず)の回転によってエレベータを上下動する。
【0019】
図1(A)、(B)、図2に示すように、ワイヤーロープの径測定装置10は、箱状のケーシング20を有している。ケーシング20は、本体箱部22と、蝶番23によって本体箱部22に固定された上蓋24を備え、上蓋24は、蝶番23を軸に本体箱部22に対して回動して、ケーシング20を開閉可能である。
ケーシング20の内側には、制御部19を内側に備えた制御ボックス25が設けられ、制御ボックス25は、ケーシング20が開いた状態でケーシング20から取り出すことができる。また、ケーシング20には、本体箱部22と上蓋24を閉じた状態で固定する、固定金具26が取り付けられている。
【0020】
更に、ケーシング20には、筒状に形成された枠体部材13が軸心を水平にした状態で固定されている。枠体部材13は、両端部をケーシング20から露出し、その他の部分をケーシング20の内側に配置された状態でケーシング20に固定されている。
枠体部材13は非導電体によって形成され、枠体部材13の軸心と軸心を一致させて形成された貫通孔12を有している。そして、枠体部材13は貫通孔12の軸心を含む面で蒲鉾状の第1、第2の長尺片27、28に2分割(半割)でき、貫通孔12を中心に分割可能な構造を有している。第1、第2の長尺片27、28は、第1、第2の長尺片27、28を密着(一体化)することによって貫通孔12を形成する溝を備えている。
【0021】
そして、第1、第2の長尺片27、28は、それぞれ上蓋24及び本体箱部22に固定されているので、本体箱部22に対して上蓋24を回動することによって、第1、第2の長尺片27、28の密着及び引離し(分割)が可能である。
従って、ケーシング20を開いた状態で、第2の長尺片28の溝の内側にワイヤーロープ11を配置した後、上蓋24を本体箱部22に密着することによって、貫通孔12にワイヤーロープ11を配置することができる。また、貫通孔12に配置されたワイヤーロープ11は、ケーシング20を開いた状態にして、第1、第2の長尺片27、28を引き離すことにより、取り外し可能である。
【0022】
本体箱部22は、底部に矩形の固定プレート29が固定されている。固定プレート29の4隅近傍には、取付孔30が設けられているので、取付孔30に挿通した固定部材(例えばボルト)を、図示しない固定フレーム等に固定することによって、本体箱部22をその固定フレームに取り付けることができる。
ここで、上述したように、枠体部材13は貫通孔12を中心に分割できるので、エレベータを吊るしている状態のワイヤーロープ11に対して、ワイヤーロープ11とエレベータの連結を外す等することなく、簡単かつ短時間の作業によって貫通孔12にワイヤーロープ11を配置可能である。
【0023】
図1(A)、図2に示すように、枠体部材13には、渦流センサ14〜17が設けられた径測定領域部32(図3(A)参照)、複数(本実施の形態では12個)のホール素子33(磁気センサの一例)が設けられた磁気測定領域部34(図3(B)参照)、及び磁気を発生する磁場発生手段の一例である棒状の永久磁石39が設けられた磁場発生領域部35が設けられている(図3(C)参照)。
【0024】
図3(A)に示すように、渦流センサ14、15及び渦流センサ16、17は、第1、第2の長尺片27、28にそれぞれ設けられ、渦流センサ14、16及び渦流センサ15、17は、第1、第2の長尺片27、28が密着状態でそれぞれ対となって対向配置される。以下、特に記載しない限り第1、第2の長尺片27、28は密着状態であることを前提に説明する。
対となる渦流センサ14、16及び対となる渦流センサ15、17は、それぞれを結ぶ直線が貫通孔12の軸心方向に見て交差する関係に配置され、その交差角度は、75度〜105度であり、本実施の形態では90度である。
【0025】
渦流センサ14〜17はそれぞれ、コイル36とコイル36の内側に配置された鉄心37を有し、コイル36に交流電流を流して発生させた大きさの変化する磁場によって、貫通孔12に配置されたワイヤーロープ11に渦電流を生じさせる。そして、ワイヤーロープ11に生じた渦電流は、コイル36の電圧に影響を及ぼすので、コイル36の電圧値を計測することによって、渦流センサ14〜17それぞれとワイヤーロープ11の外周面との距離Y1、X1、Y2及びX2を検知することが可能である(図5参照)。
【0026】
渦流センサ14、16は、渦流センサ15、17に対して貫通孔12の軸心方向に異なった位置で枠体部材13に固定されている。
従って、渦流センサが貫通孔12の軸心方向で同位置に配置されている場合と比較して、渦流センサ14〜17は、それぞれ隣り合って配置された渦流センサ14〜17までの距離が長くなり、隣り合う渦流センサ14〜17から発生する磁場によってY1、X1、Y2及びX2の検出に影響(干渉)を及ぼすノイズの程度を低減している。
なお、渦流センサ14、16は、渦流センサ15、17に対して貫通孔12の軸心方向に10mm〜20mmの間隔(本実施の形態では14mm)を有している。
【0027】
また、ワイヤーロープ11がエレベータに用いられる場合等には、ワイヤーロープ11の表面に潤滑油が付着しているが、渦流センサ14〜17による距離の計測は、レーザによってワイヤーロープ11までの距離を計測するのに対して、潤滑油の影響を受けにくいという利点がある。更に、レーザと比較して、渦流センサ14〜17は、必要とされる部品、部材等の点数を少なくすることができる。
【0028】
図4に示すように、距離検出手段18は、渦流センサ14〜17と、渦流センサ14〜17に信号接続された演算回路部38を備え、演算回路部38は、渦流センサ14〜17から出力されるコイル36の電圧値を基にして、渦流センサ14〜17それぞれとワイヤーロープ11間の距離を算出する。
そして、演算回路部38には、制御部19が信号接続され、制御部19は、演算回路部38から送信される距離情報の信号を基に、ワイヤーロープ11の直径を演算する。
演算回路部38は、渦流センサ14〜17からワイヤーロープ11までの距離と、コイル36の電圧値の関係を示す対応表を用いて、電圧値から距離の値を算出している。なお、その対応表は、電圧値と距離の実測によって予め作成されたものである。
【0029】
ここで、渦流センサ14〜17は、渦流センサ14、16間及び渦流センサ15、17間がそれぞれ、一定の距離を有するように枠体部材13に固定されている。
従って、制御部19は、渦流センサ14、16間の距離から距離Y1、Y2を差し引くことによって、渦流センサ14、16を結んだ直線方向でのワイヤーロープ11の直径Yを検出でき、また、渦流センサ15、17間の距離から距離X1、X2を差し引いて、渦流センサ15、17を結んだ直線方向でのワイヤーロープ11の直径Xを検出できる。
そして、制御部19は、X及びYの値の平均値をワイヤーロープ11の直径として算出する。
【0030】
以下に、ワイヤーロープの径測定装置10によるワイヤーロープ11の直径の計測精度を調査するために、行った実測結果について記載する。
図6(A)には、静止状態の直径10.2mmの鉄製の丸棒を、直径14mmの貫通孔12に配置し、貫通孔12の軸心を中心に枠体部材13を45度ずつ回転して、各角度位置で計測したX及びYと、そのX、Yの平均(以下、「XY平均」という)が示されている。
図6(A)の縦軸は、丸棒の直径であり、横軸は、丸棒に対する枠体部材13の角度位置を示している。横軸の数値は、”1”が丸棒の軸心と貫通孔12の軸心が一致している状態を示し、”2”〜”9”は、貫通孔12の軸心から丸棒の軸心を1.5mmずらした状態で、貫通孔12の軸心を中心にして枠体部材13を45度ずつ回転させたときの丸棒に対する枠体部材13の各位置を示している。
【0031】
実測結果において、X及びYの値に着目すると、10.2mmのラインに対して、Xがマイナス方向(厚みが10.2mmより小となる方向)に離れるのに伴い、Yは10.2mmのラインに対して、プラス方向に離れ、Xが10.2mmのラインに近づくとYも10.2mmのラインに近接することが確認できる。
そして、そのX及びYの関係によって、XY平均は、10.2mmのラインからプラス方向又はマイナス方向に大きく離れることなく、その離れ幅は、0.1mm以下であるので、ワイヤーロープの径測定装置10は、貫通孔12の中心から軸心がずれた状態の丸棒に対して1%以下の誤差の範囲で直径を計測可能であることが分かる。
【0032】
次に、固定した枠体部材13の貫通孔12にワイヤーロープ11を配置して、貫通孔12の軸心方向にワイヤーロープ11を移動させながらワイヤーロープ11の直径を計測した結果について記す。
図6(B)は、縦軸がワイヤーロープ11の直径であり、横軸が、枠体部材13に対するワイヤーロープ11の移動距離を示している。
【0033】
図6(B)に示すように、XY平均は、12.6mmのラインからのずれ幅が、0.2mm以下の範囲にあり、ワイヤーロープ11の直径12.6mmに対して1.6%以下の精度で直径を計測可能であることが確認できた。また、同様の実測実験を繰り返し行ったところ、他の実測においても1.6%以下の精度でワイヤーロープ11の直径が計測されるのを確認した。
【0034】
固定した枠体部材13に対して上下方向でワイヤーロープ11を移動させる場合、ワイヤーロープ11は水平方向に多少の移動を行うので、貫通孔12の軸心とワイヤーロープ11の軸心にはずれが生じる。
しかしながら、ワイヤーロープ11の一端には水平方向を固定した状態で上下動するエレベータが連結されているので、ワイヤーロープ11が水平方向に大きく移動することはなく、更に、ワイヤーロープ11を吊るす滑車に近接して貫通孔12を配置するようにワイヤーロープの径測定装置10を設置することにより、ワイヤーロープ11の軸心と貫通孔12の中心間の距離を、例えば1.0mm以下の範囲に保つことができる。従って、ワイヤーロープ11の軸心と貫通孔12の軸心間の距離は、ワイヤーロープ11の直径を測定するのに不十分な誤差(例えば5%以上の誤差)を生じるまでには至らない。
【0035】
そして、理論的には、ワイヤーロープの軸心方向に直交する方向で位置の異なる3点以上の箇所(3点の場合、各点は、例えば100から140度の間隔で配置された箇所)からワイヤープまでの距離を計測すれば、枠体部材の貫通孔の中心に対するワイヤーロープのずれを検知できるので、3つ以上の渦流センサを使用することで、ワイヤーロープ及び貫通孔の軸心が必ずしも一致しない状況下でのワイヤーロープの直径の計測が可能であると考えられる。
なお、例えば渦流センサの数を4を除いた3以上の数にする場合には、前述のように、丸棒やワイヤーロープの実測実験を行うことによって、各渦流センサとワイヤーロープ間の距離を基にしてワイヤーロープの直径を演算するための数式を導出し、その数式を実行するためのプログラムを制御部に搭載すればよい。
【0036】
また、図3(C)に示すように、枠体部材13の磁場発生領域部35には、永久磁石39が4個固定されている。各永久磁石39は、それぞれ貫通孔12の周囲に90度位置、180度位置、270度位置、及び360度位置に配置され、そのうち2個は、第1の長尺片27に、他の2個は第2の長尺片28に埋め込まれてN極が貫通孔12より僅少の距離(0.1から3mm)を有して貫通孔12の半径方向外側に配置されている。
【0037】
枠体部材13の磁気測定領域部34には、図3(B)に示すように、永久磁石39によって生じた磁気の磁場の大きさを計測する複数(4個以上で、本実施の形態では12個)のホール素子33が設けられている。各ホール素子33は、貫通孔12の周囲にそれぞれ等間隔で配置され、貫通孔12の軸心方向に同一の位置で配置されている。また、12個のホール素子33のうち6個は、第1の長尺片27に固定され、他の6個は、第2の長尺片28に固定されている。
【0038】
各ホール素子33は、図4に示すように、制御部19に信号接続され、制御部19は各ホール素子33から送信された磁場の大きさの値を受信することができる。また、制御部19は、切り替え機能によって、一定の時間Tの間隔で、各ホール素子33から順次磁場の値を受信するので、制御部19は、一のホール素子33から磁場の値を受信した後、そのホール素子33の隣にあるホール素子33から磁場の大きさの値を受信する。なお、Tは、例えば2〜10msである。
【0039】
貫通孔12に配置されたワイヤーロープ11に異状がなく形状が一定の場合には、ワイヤーロープ11の周囲の磁場は安定するが、ワイヤーロープ11に断線や摩耗等の異状が生じている場合には、磁場が不安定になる。
制御部19は、この磁場の性質を利用して、各ホール素子33が計測する磁場の値を取得して、ワイヤーロープ11が異状であるか否かを検知する。
【0040】
図7(A)〜(D)には、ワイヤーロープ11と同形状のワイヤーロープについて磁場の大きさを計測したときの計測値が表示され、それぞれ正常なワイヤーロープ、内部断線したワイヤーロープ、外部断線したワイヤーロープ、及び摩耗したワイヤーロープを計測対象にしている。
図7(A)〜(D)は、縦軸が磁場の大きさ、横軸が時間を示し、実測結果として記されている上段の波形及び下段の波形は、それぞれホール素子33により計測された磁場の大きさ及び制御部19によるホール素子33の切り換え状況を示している。なお、下段の波形は、一対の凹凸ごとに、制御部19によるホール素子33の切り換えが行われていることを意味する。
【0041】
実測結果において、磁場の値を示す上段の波形に着目すると、図7(A)の波形に対して、図7(B)〜(D)の波形の振幅は2〜3倍の大きさであり、ワイヤーロープに異状が生じている場合と、正常な場合とでは、明らかに異なる値が得られることが確認できる。
よって、制御部19は、この振幅の大きさによって、ワイヤーロープの異状の有無を検知可能である。
【0042】
また、制御部19は、図4に示すように、A/D変換器40に信号接続され、A/D変換器40は、制御部19から送信される磁場の値及びワイヤーロープ11の直径の値のアナログデータをデジタルデータに変換して、外部機器41に送信することができる。
なお、A/D変換器40は、制御部19と共に制御ボックス25内に配置することができ、外部機器41は、A/D変換器40の出力側に接続され、例えば周知のパーソナルコンピュータにA/D変換器40から送られる信号のモニタリング及び分析等が可能なソフトウェアを搭載して形成される。
【0043】
ここで、A/D変換器は、制御部を介することなく渦流センサ14〜17及びホール素子33に直接信号接続して、渦流センサ14〜17及びホール素子33から電圧値及び磁場の値をそれぞれ取得可能にしてもよい。そして、この場合、A/D変換器から出力されるデジタルデータの電圧値及び磁場の値は、A/D変換器に有線又は無線接続されているコンピュータに搭載された演算回路部及び制御部によって演算される。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、枠体部材は、2分割する代わりに、3以上に分割する構造でもよい。
また、ワイヤーロープの径測定手段によって直径の測定や形状の異状検知がなされるワイヤーロープは、エレベータを吊るすために用いられるものに限らず、ゴンドラやロープウエイを吊下げる等、他の用途に用いられるものであってもよい。
更に、ワイヤーロープを配置する貫通孔の直径は14mmに限定されず、ワイヤーロープの直径等に合わせて、直径の異なる貫通孔を形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:ワイヤーロープの径測定装置、11:ワイヤーロープ、12:貫通孔、13:枠体部材、14〜17:渦流センサ、18:距離検出手段、19:制御部、20:ケーシング、22:本体箱部、23:蝶番、24:上蓋、25:制御ボックス、26:固定金具、27:第1の長尺片、28:第2の長尺片、29:固定プレート、30:取付孔、32:径測定領域部、33:ホール素子、34:磁気測定領域部、35:磁場発生領域部、36:コイル、37:鉄心、38:演算回路部、39:永久磁石、40:A/D変換器、41:外部機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープが隙間を有して挿通される貫通孔が形成された枠体部材と、
前記貫通孔の周囲に3個以上のセンサ部が間隔をあけて設けられ、前記各センサ部で前記貫通孔を挿通する前記ワイヤーロープまでの距離を検知する距離検出手段と、
前記距離検出手段からの信号を基に、前記ワイヤーロープの直径を演算する制御部とを有し、
前記枠体部材は、前記貫通孔を中心に少なくとも2つに分割可能であることを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーロープの径測定装置において、前記センサ部は、渦流センサからなり、前記距離検出手段は該渦流センサの電圧値から前記ワイヤーロープと該渦流センサの距離を検知することを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤーロープの径測定装置において、前記距離検出手段は、対向配置された前記渦流センサを2対以上備えることを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。
【請求項4】
請求項3記載のワイヤーロープの径測定装置において、前記対向配置された渦流センサの各対は、前記貫通孔の軸心方向に異なった位置で配置されることを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイヤーロープの径測定装置において、前記枠体部材には、磁場発生手段と、前記貫通孔の周囲に配置された磁気センサとが設けられ、
前記磁気センサは、前記磁場発生手段によって発生する磁場の大きさを計測することを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。
【請求項6】
請求項5記載のワイヤーロープの径測定装置において、前記磁気センサは、ホール素子からなることを特徴とするワイヤーロープの径測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−174758(P2011−174758A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37722(P2010−37722)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(510050421)株式会社KIM (1)
【Fターム(参考)】