説明

ワイヤー固定具

【課題】壁面緑化システムにおいて使用される植物支持用のワイヤーの中間部分のバタツキを効果的に防止ないし抑制できるワイヤー固定具を提供する。
【解決手段】植物支持用のワイヤー4を両側から挟んで保持しうるように合わせ面側にワイヤー保持用の軸孔20aを形成する一対の保持部材21・22と、この一対の保持部材21・22がワイヤー4を挟持した状態で互いに分離しないように両保持部材21・22を締結する締結部材23とでワイヤー固定具20を構成する。一対の保持部材21・22における軸孔方向の一端側には、中間支持部材3におけるワイヤー挿通孔3bに挿入嵌合可能とされ、かつ、軸孔20aの一端側を形成する挿入部20bを突設する。そして、ワイヤー4を一対の保持部材21・22によって保持した状態で、挿入部20bを中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿入嵌合させることで、ワイヤー4の中間部分のバタツキを抑制ないし防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に沿って張設されるワイヤーに蔓性の植物を絡ませることにより壁面を緑化するシステム(壁面緑化システム)に使用されるワイヤー固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来においては、都市のヒートアイランド現象を緩和する技術の一つとして、上記のようなワイヤーを利用した壁面緑化システムが提案されている。この種の壁面緑化システムの一例は特許文献1に記載されている。そこには、壁面に沿って横方向(水平方向)に上下一対の支持部材を配設し、これらの支持部材にワイヤーの上端および下端をそれぞれ取り付けることによりワイヤーを壁面に沿って張設し、このワイヤーに蔓性の植物を絡ませることにより壁面を緑化するシステムが示されている(同文献中の例えば図4参照)。
【0003】
この種のワイヤーを利用した壁面緑化システムにおいては、上述したように上下一対の支持部材を介して壁面の所定位置にワイヤーの上端部および下端部をそれぞれ取り付けることによってワイヤーを張設状態にする。このため、ワイヤーの全長が長くなればなるほどワイヤーの中間部分が不安定になって風等の外力を受けたときにバタつきやすくなり、その結果、ワイヤーの上下の取付部分に比較的大きな力が作用し、最悪の場合、壁面に取り付けられた上下の支持部材からワイヤーが外れてしまう可能性がある。
【0004】
そこで、このような事態を回避するため、上側の支持部材と下側の支持部材との間にこれらと平行に例えばLアングルからなる中間の支持部材(以下、適宜、「中間支持部材」という。)を設け、この中間部材に所定径のワイヤー挿通孔を形成して、このワイヤー挿通孔にワイヤーを挿通することで、ワイヤーの中間部分のバタツキ(振動)を抑制するようにしている。なお、上下一対の支持部材と平行に配設される中間支持部材の本数は一本とは限らず、ワイヤーの全長が長くなれば当該中間支持部材と上下方向に一定の間隔をあけて更に別の中間支持部材が平行に配設される。
【0005】
【特許文献1】特開2006−36号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ワイヤーの中間部分を中間支持部材で支持するようにした上記のような構造においては、ワイヤーの中間部分の振幅の大きなバタツキは抑えられるものの、ワイヤー挿通孔内における振幅の小さなバタツキまでは防止できない。そのため、例えば比較的強い風が吹いたような場合には、ワイヤーのバタツキによりワイヤー挿通孔の周面部分にワイヤー部分が接触して耳障りな接触音が発生するという問題がある。また、この場合のバタツキは、中間支持部材を設けない場合に比べると振幅の小さなものとはいえ、それでもワイヤーの上下の取付部分に余計な負荷が掛かることは避けられない。
【0007】
このようなワイヤー挿通孔に挿通されたワイヤーの中間部分の振れを防止する手段として、従来においては、例えば図8に示すように、ワイヤーが挿通された中間支持部材40における水平面部40aの表面側または裏面側に取り付け可能なワイヤー固定具50が提供されている。しかし、このワイヤー固定具50は、ワイヤー60に装着するための切欠き部51aを有する断面(軸方向と直行する方向の断面)C字状の円筒部材51と、この円筒部材51の切欠き部51aの周面方向からネジ込まれるネジ部材52とからなり、中間支持部材40における水平面部40aの表面または裏面に円筒部材51の一端面を接触させた状態で当該円筒部材51およびネジ部材52でワイヤー60を挟持する構成のため、ネジ部材52が少しでも緩むと中間支持部材40に対してワイヤー部分が動くことが可能となってしまう。このため、例えば強風が吹いたような場合にはワイヤー挿通孔内でワイヤー部分がバタついて上記と同様の問題が生じることとなる。
【0008】
本発明は、以上のような問題に対処するもので、壁面緑化システムにおいてワイヤーの中間部分を支持するために設けられる支持部材に当該ワイヤーの中間部分をバタつかないように確実に支持または固定させることができ、ひいてはワイヤーの中間部分が風等で振動する(バタつく)ことによって生ずる当該支持部材との接触音やワイヤー両端の固定部に作用する負荷を抑制ないし軽減できるワイヤー固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、壁面の所定位置に支持部材(中間支持部材)を取り付け、この支持部材に設けられたワイヤー挿通孔に植物支持用のワイヤーを挿通してその両端部を壁面の所定位置に取り付けることにより当該ワイヤーを壁面に沿って張設し、当該ワイヤーに蔓性の植物を絡ませることにより壁面を緑化するシステムに使用されるワイヤー固定具において、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
すなわち、前記ワイヤーを両側から挟んで保持しうるように合わせ面側にワイヤー保持用の軸孔を形成する一対の保持部材と、この一対の保持部材がワイヤーを保持した状態で互いに分離しないように両保持部材を締結する締結部材とを有する。そして、一対の保持部材における軸孔方向の一端側には、前記ワイヤーが当該一対の保持部材によって保持された状態で前記支持部材に支持または固定されるように、前記軸孔の一端側を形成し、かつ、前記支持部材におけるワイヤー挿通孔に挿入嵌合可能とされた挿入部を突設した構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワイヤー固定具は、通常、ワイヤー挿通孔を有する支持部材(中間支持部材)にワイヤーを挿通した状態において、当該ワイヤーの挿通部分のバタツキを防止ないし抑制するために、当該ワイヤーの挿通部分に装着される。その場合、先ず、本発明のワイヤー固定具を構成する一対の保持部材における挿入部を支持部材のワイヤー挿通孔側にした状態で、両保持部材間に形成される軸孔内にワイヤーが位置するように、両保持部材でワイヤーの中間部分を軽く挟む。このようにすると、ワイヤーの中間部分が、緩やかに合わさった両保持部材の前記軸孔内に挿通された状態で保持される。
【0012】
次に、この状態でワイヤー固定具をワイヤーに沿って支持部材におけるワイヤー挿通孔側に移動させて、当該固定具における挿入部をワイヤー挿通孔内に挿入嵌合させ、その状態で、両保持部材を締結部材で締結する。このようにすると、ワイヤー固定具における軸孔にワイヤーが挿通された状態で両保持部材によって挟持ないし保持され、その状態でワイヤー固定具における挿入部が支持部材におけるワイヤー挿通孔内に嵌合されて固定される。こうして、植物支持用のワイヤーは、本発明のワイヤー固定具における一対の保持部材間に挟持ないし保持された状態で支持部材におけるワイヤー挿通孔の位置で確実に支持または固定されることになる。
【0013】
以上のように本発明のワイヤー固定具によれば、壁面緑化システムにおいて壁面に沿って張設される蔓性植物支持用のワイヤーの中間部分を、一対の保持部材間に挟持ないし保持した状態で、壁面の所定位置に取り付けられた支持部材(中間支持部材)におけるワイヤー挿通孔の位置でバタつくことがないように確実に支持または固定することができる。これにより、ワイヤーの中間部分が風等で振動する(バタつく)ことによって生ずる当該支持部材との接触音やワイヤー両端の固定部に作用する負荷を抑制ないし軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のワイヤー固定具は、基本的には、ワイヤーを保持するための一対の保持部材と、この一対の保持部材を所定の状態に締結するための締結部材とで構成される。
【0015】
一対の保持部材には、両者の合わせ面(ワイヤーを両側から挟んで保持する際に両保持部材を合わせる面)に軸孔形成用の溝状の切欠きをそれぞれ形成し、両保持部材を合わせて本発明のワイヤー固定具を形成したときに、それらの溝状の切欠きがワイヤー保持用の軸孔を形成する構成とする。この場合の軸孔の断面形状(軸孔と直行する方向の断面形状)はワイヤーに対応させて円形とするのが好ましいが、ワイヤーを挟持ないし保持できる形状であれば必ずしも円形である必要はない。一対の保持部材によってワイヤーを保持した状態で軸孔内でワイヤーがバタつかないように、軸孔の径はワイヤーの外径と同等もしくは略同等の寸法とするのが良い。
【0016】
一対の保持部材における軸孔方向の一端側には、壁面の所定位置に取り付けられる支持部材(中間支持部材)のワイヤー挿通孔に挿入されて当該挿通孔に嵌合する筒状の挿入部を突設し、この挿入部が前記軸孔の一端側を形成する構成とする。この場合の挿入部は、通常、その外径ないし幅が、組み合わせた状態の一対の保持部材における当該挿入部以外の部分(以下、適宜、保持部という。)のそれよりも小さくなるように形成する。また、一対の保持部において挿入部の設けられている側の端面は平面状とするが望ましい。そして、一対の保持部材間にワイヤーを保持した状態で支持部材のワイヤー挿通孔に前記挿入部を挿入して嵌合させたときに、前記挿入部側の端面がワイヤー挿通孔の周辺部の支持部材表面に密着し、その状態で両保持部材を締結部材で締結することにより、本発明のワイヤー固定具を介してワイヤーの中間部分を前記支持部材に確実に支持させ又は固定できるようになっている。
【0017】
なお、本発明のワイヤー固定具における挿入部の外径寸法は、当該挿入部が支持部材のワイヤー挿通孔にピッタリと嵌まるような寸法に設定されるが、支持部材(中間支持部材)にワイヤー挿通孔が予め設けられていない場合や、予め形成されていてもその孔径が本発明のワイヤー固定具における挿入部の外径寸法よりも小さい場合には、当該挿入部がピッタリと嵌まるように支持部材におけるワイヤー挿通孔を形成しておく必要がある。
【0018】
一対の保持部材を締結する締結部材としては、通常、一対のネジを使用する。その場合、一方の保持部材には、例えば軸孔を挟んでその両側の位置に前記ネジが挿通されるネジ挿通孔を形成し、これに対応する他方の保持部材の所定位置に前記ネジを螺合させうるネジ孔を形成する。そして、一対の保持部材を合わせた状態で前記ネジをネジ挿通孔に挿通してネジ孔に螺合させることにより、両保持部材が強固に締結される構成とする。
【0019】
なお、締結部材は上記のようなネジに限らず、一対の保持部材に跨がってこれらを結合できる例えばに二股状の金属製クリップ部材等を使用することも可能である。その場合、一対の保持部材にはクリップ部材を係合させるための溝状や孔状等の係合部を設けておくのが望ましい。
【0020】
一対の保持部材を所定の状態に容易に組み合わせられるように、一方の保持部材の合わせ面と、これと組み合わされる他方の保持部材の合わせ面には、それぞれ対応する位置(例えば前記ネジ挿通孔およびネジ孔の位置から挿入部側の端面の方向に所定量だけ変位した位置)に、両保持部材を所定の状態に合わせた際に互いに嵌合する位置決め用の凹部および凸部をそれぞれ設けるのが好ましい。
【0021】
一対の保持部材は、一定の強度を確保できるものであれば材質を問わない。例えば、プラスチック、金属、木などを用いることができるが、軽量性やコストを重視するならばプラスチック製が有利であり、強度や耐久性を重視するならば金属製とするのが有利である。ただし、プラスチック製とする場合でも、締結部材としてネジを使用するときは、耐久性や強度等を考慮して、当該ネジと螺合するネジ孔部分を金属で構成するのが好ましい。このような保持部材は、プラスチックで成形する際にネジ孔形成部分に、例えば内周面を雌メジ部とした金属スリーブを配置して一体成形することによって作製できる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例について説明する。
この実施例に係るワイヤー固定具は、例えば図1に示すような壁面緑化システムに適用されるものである。この壁面緑化システムは、壁面Wに沿って横方向(水平方向)に配設された上下一対の断面L状の支持部材1および支持部材2と、これらの支持部材1および支持部材2間の高さ方向の中間に同じく横方向に配設された支持部材(中間支持部材)3と、上下一対の支持部材1および支持部材2に上端部および下端部がそれぞれ連結されて蔓性植物Pを絡ませ得るように両支持部材1・2間に縦方向(垂直方向)に張設された植物支持用のワイヤー4・・・4と、これらのワイヤー4と直交するように設けられた金属(例えばステンレススティール)製のバー5・・・5と、ワイヤー4およびバー5が直交に交差するようにこれらを案内して当該交差状態に保持するプラスチック製のガイド部材6とを有する。各支持部材1〜3は、この実施例では何れもLアングルで構成されており、固定部材7を介して壁面Wの所定位置にそれぞれ固定されている。
【0023】
ワイヤー4の上端部4aには、図2に拡大して示すように、金属製の棒状部材8が取り付けられている。この棒状部材8は、上端部分8aがその下側の軸部分8bよりも大径に形成されている。軸部分8bには、上側の支持部材1における水平面部1aの上面側に位置するようにワッシャ9と、このワッシャ9と前記上端部分8aとにより上端および下端がそれぞれ受止されて棒状部材8を介してワイヤー4を引っ張り方向に付勢するコイルバネ10とが装着されている。そして、軸部分8bの下部側が、上側の支持部材1に設けられた取付孔1bに挿通されていることにより、上側の支持部材1に対してワイヤー4の上端部4aが一定の範囲内で上下方向に変位可能に取り付けられた構成とされている。
【0024】
一方、ワイヤー4の下端部4bには、一端側に雄ねじ部11aを有する軸状部材11が取り付けられている。そして、この軸状部材11の雄ねじ部11aが、下側の支持部材2の水平面部2aに設けられた取付孔2bに挿通され、雄ねじ部11aに螺合された上下一対の六角ナット12・12で下側の支持部材の水平面部2aを挟み込むことで、ワイヤー4の下端部4bが下側の支持部材2に固定される構造となっている。
【0025】
上下の支持部材1・2間の中間に位置する支持部材(中間支持部材)3は、ワイヤー4の中間部分を支持するために設けられている。この中間支持部材3の水平面部3aにはワイヤー4を挿通させるための所定径のワイヤー挿通孔3bが形成されており、このワイヤー挿通孔3bに、本発明に係るワイヤー固定具20が装着されて、これにワイヤー4の中間部分が保持されている。
【0026】
ワイヤー固定具20は、この実施例においては、図2〜図6に示すように、ワイヤー4を保持するための一対の保持部材21・22と、この一対の保持部材21・22を締結して所定の合わせ状態に保持する締結部材としての一対の金属製のキャップスクリュー(六角孔付きネジ)23・23とで構成されている。
【0027】
一対の保持部材21・22には、両者の合わせ面(ワイヤー4を両側から挟んで保持する際に両保持部材21・22を合わせる面)21a・22aに軸孔形成用の溝状の切欠き21b・22bがそれぞれ形成されており、これらの保持部材21・22を所定の状態に合わせたときに、それらの溝状の切欠き21b・22bがワイヤー保持用の断面円形の軸孔20aを形成する構成とされている。また、一対の保持部材21・22によってワイヤー4を保持した状態で軸孔20a内でワイヤー4がバタつくことがないように、軸孔20aの直径はワイヤー4の外径と同等か若しくは略同等の寸法とされている。
【0028】
一対の保持部材21・22のうちの一方の保持部材21には、軸孔20aを挟んでその両側の位置に一対のキャップスクリュー23・23が挿通される一対のネジ挿通孔21c・21cが形成され、これに対応する他方の保持部材22の所定位置にキャップスクリュー23・23を螺合させうる一対のネジ孔22c・22cが形成されている。そして、一対の保持部材21・22を合わせた状態でキャップスクリュー23をネジ挿通孔21cに挿通してネジ孔22cに螺合させることにより、両保持部材21・22が強固に締結されるようになっている。なお、一対の保持部材21・22は、この実施例においては、いずれもプラスチックで構成されているが、キャップスクリュー23と螺合するネジ孔22cの部分だけは、所要の強度確保のため、内周面が雌メジ部とされた金属スリーブ22c’で構成されている。
【0029】
一方の保持部材21の合わせ面21aと、これと組み合わされる他方の保持部材22の合わせ面22aとには、それぞれ対応するように位置決め用の凸部21dと凹部22dとが、前記ネジ挿通孔21cおよびネジ孔22cの下方側にそれぞれ形成されている。これらの凸部21dおよび凹部22dは、一対の保持部材21・22を締結させるべく合わせた際に互いに嵌合することで、両保持部材21・22の組み付けを容易にする。
【0030】
一対の保持部材21・22における軸孔方向の一端側には、両保持部材21・22を合わせた状態で軸孔20aの一端側を形成する円筒状(両保持部材が分離状態にあるときの形態は半円筒状)の挿入部20bが突出形成されている。この挿入部20bは、各保持部材21・22の下面側に突設された半円筒部21e・22eによって形成され、その外径は、挿入部20bの上側に位置する略直方体状の部分の短手方向(図4において上下方向)の幅および長手方向(図4において左右方向)の幅のいずれよりも小さく、かつ、中間支持部材3におけるワイヤー挿通孔3bに当該挿入部20bがピッタリと嵌まるような寸法に設定されている。そして、一対の保持部材21・22間にワイヤー4を保持した状態で中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿入部3bを挿入して嵌合させたときに、前記の略直方体状の部分における挿入部3b側の端面が中間支持部材3の水平面部3aにおけるワイヤー挿通孔3bの周辺部分に密着し、その状態で両保持部材21・22をキャップスクリューで締結することで、ワイヤー4の中間部分がバタつかないようにワイヤー固定具20で保持した状態で中間支持部材3に支持または固定されるようになっている。
【0031】
上記のように構成されたワイヤー固定具20によれば、図7に示すように、中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿通されたワイヤー部分に当該ワイヤー固定具20を装着することで、壁面緑化システムにおいて上下一対の支持部材1・2間に張設された植物支持用のワイヤー4のバタツキを以下のようにして抑えることができる。なお、以下においては、中間支持部材3におけるワイヤー挿通孔3bにワイヤー固定具20の挿入部20bがピッタリと嵌まるように、当該ワイヤー挿通孔3bの寸法または挿入部20bの寸法の少なくとも一方が設定されているものとして説明するが、そうでない場合には、当該挿入部20bがピッタリと嵌まるように中間支持部材3に所定径のワイヤー挿通孔3bを形成しておく必要がある。例えば、ワイヤー4の直径が4mmで、使用するワイヤー固定具20の挿入部の外径が8mmであるような場合には、中間支持部材3には孔径(図7(a)に符号fで示す)が8〜8.5mmのワイヤー挿通孔3bを予め形成しておく。
【0032】
図7(a)〜(d)に示すように、中間支持部材3の水平面部3aに形成されたワイヤー挿通孔3bに植物支持用のワイヤー4を挿通した状態で、その挿通したワイヤー部分にワイヤー固定具20を装着する。その際先ず、図7の(a)および(b)に示すように、一対の保持部材21・22によって形成される挿入部20bを下側にした状態で、かつ、両保持部材21・22間に形成される軸孔内にワイヤー4が位置するように、両保持部材21・22で、ワイヤー挿通孔3bの上方側に位置するワイヤー部分を軽く挟む。このようにすると、両保持部材21・22の合わせ面に形成されている位置決用の一対の凹部21dおよび凸部22dが互いに嵌合するので、両保持部材21・22は所定の合わせ状態(図6に示すように軸孔20a内にワイヤー4が挿通保持された状態)に容易に結合される。
【0033】
次に、上記の状態で両保持部材21・22をワイヤー4に沿って下方側に移動させて、図7の(c)に示すように挿入部20bを中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿入して嵌合させる。そして、この状態で、両保持部材21・22をキャップスクリュー23で締結する。このようにすると、図7の(d)に示すように、中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿通されたワイヤー4は、当該ワイヤー挿通孔3bに挿通部20bが嵌合されたワイヤー固定具20に保持された状態で、中間支持部材3に支持されることになる。こうして、ワイヤー4は、中間支持部材3のワイヤー挿通孔3bに挿通されたワイヤー部分がバタつくことがないように、ワイヤー固定具20を介してワイヤー挿通孔3bに確実に支持され又は固定されることとなる。その結果、ワイヤー4の中間部分が風等で振動する(バタつく)ことによって生ずる当該支持部材3との接触音やワイヤー両端の固定部に作用する負荷を抑制ないし軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るワイヤー固定具が適用される壁面緑化システムの一例を示すもので、壁面の所定位置に取り付けられた支持部材(中間支持部材)のワイヤー挿通孔に植物支持用のワイヤーを挿通して当該ワイヤーを壁面に沿って張設した状態を示す正面図である。
【図2】図1におけるワイヤーの上部、中間部および下部の各周辺部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】支持部材(中間支持部材)のワイヤー挿通孔に挿通されたワイヤー部分に装着されるワイヤー固定具を分解した状態で示す斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線で切断して矢印方向に見た拡大端面図である。
【図5】図4のV−V線で切断して矢印方向に見た縦断正面図である。
【図6】図5のVI−VI線で切断して矢印方向に見た縦断側面図である。
【図7】本発明に係るワイヤー固定具をワイヤーに装着してワイヤー挿通孔に取り付ける作業を説明するために使用した工程図である。
【図8】従来のワイヤー固定具の一例を示すもので、ワイヤーに当該固定具を取り付けた状態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0035】
3 支持部材(中間支持部材)
4 植物支持用のワイヤー
20 ワイヤー固定具
20a 軸孔
20b 挿入部
21・22 一対の保持部材
21a 一方の保持部材の合わせ面
21c ネジ挿通孔
21d 位置決め用の凸部
22d 位置決め用の凹部
22a 他方の保持部材の合わせ面
22c ネジ孔
23 締結部材(キャップスクリュー)
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の所定位置に支持部材を取り付け、この支持部材に設けられたワイヤー挿通孔に植物支持用のワイヤーを挿通してその両端部を壁面の所定位置に固定することにより当該ワイヤーを壁面に沿って張設し、当該ワイヤーに蔓性の植物を絡ませることにより壁面を緑化するシステムに使用されるワイヤー固定具であって、
ワイヤーを両側から挟んで保持しうるように合わせ面側にワイヤー保持用の軸孔を形成する一対の保持部材と、
この一対の保持部材がワイヤーを挟持した状態で互いに分離しないように両保持部材を締結する締結部材とを有し、
一対の保持部材における軸孔方向の一端側には、前記ワイヤーが当該一対の保持部材によって保持された状態で前記支持部材に支持または固定されるように、前記軸孔の一端側を形成し、かつ、前記支持部材におけるワイヤー挿通孔に挿入嵌合される挿入部が突設されていることを特徴とするワイヤー固定具。
【請求項2】
締結部材は一対のネジであり、これらのネジによって一対の保持部材が締結されるように、一方の保持部材には当該ネジが挿通されるネジ挿通孔が、他方の保持部材には当該ネジを螺合させうるネジ孔が、それぞれ軸孔を挟んでその両側の対応する位置に形成されている、請求項1記載のワイヤー固定具。
【請求項3】
一方の保持部材の合わせ面および他方の保持部材の合わせ面には、両保持部材を所定の状態に合わせる際に互いに嵌合する位置決め用の凹部および凸部がそれぞれ設けられている、請求項1または2記載のワイヤー固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−68787(P2010−68787A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243247(P2008−243247)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(598038197)株式会社ふじわら (2)
【Fターム(参考)】