説明

ワイヤ結束具

【課題】専用の工具を用いることなく容易、かつ、迅速にワイヤの結束が行なえると共に、コンパクトで、しかも、確実な結束保持力を確保する。
【解決手段】中央部位の垂直部3と、その垂直部3の下端から左右へ向け水平方向へ延長された後、垂直方向、水平方向の順に中心線上に沿って屈曲され上向き開放空間5と、下向き開放空間7とを交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部9及び垂直部11と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部13とからなる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ同志を一体に結束するのに適するワイヤ結束具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ等を固定する手段として、例えば、ワイヤ締付け装置が知られている。
【0003】
ワイヤ締付け装置の概要は、器体内にワイヤを通すための貫通孔が設けられ、その貫通孔内に貫通されたワイヤを固定又は固定解除する楔状体が内装されている。
【0004】
楔状体は、特殊な専用工具により器体の外から操作することでワイヤを固定する固定位置とその固定を解除する固定解除位置とにスライド可能な構造となっている。
【特許文献1】特許第3220162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のワイヤ締付け装置は、器体内に固定位置と固定解除位置とに楔状体を組入れるところから、複雑な構造となり加工性、組付性の面で望ましくなく、しかも、特殊な専用工具を必要とする。
【0006】
また、ワイヤを通した後、専用工具を用いて締付けるため締付けが完了するまで時間がかかる等作業性の面でも望ましくない。
【0007】
さらに器体は、ワイヤとワイヤの端末同志を結束として一本の連続するワイヤの結束手段として使用する時に、その結束部位は外方へ大きく張り出す張りだし突起部となって現れる。このため、器体によって結束した一本の長いワイヤを、例えば、スパイラルのトンネル状に形成されたスパイラルハンガ内に通す際に、引掛かって作業性を悪くする等の不具合をかかえる。
【0008】
そこで、本発明は専用の工具を用いることなく容易かつ迅速にワイヤの結束が行えると共に、コンパクトで、しかも、確実な結束保持力が得られるワイヤ結束具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にあっては第1に、中央部位の垂直部と、その垂直部の下端から左右へ向け水平方向へ延長された後、垂直方向、水平方向の順に中心線上に沿って屈曲され上向き開放空間と、下向き開放空間とを交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部及び垂直部と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部とからなる形状となっていることを特徴とする。
【0010】
第2に、水平方向、垂直方向、水平方向、垂直方向の順に中心線上に沿って屈曲され、下向き開放空間と上向き開放空間を交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部及び垂直部と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部となからなる形状となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1、第2のワイヤ結束具によれば、例えば、ワイヤとワイヤの端末同志を一体に結束する時、あるいは、ワイヤの一端をリング状に形成してその端末部をワイヤに沿って固定支持する時に、一方のワイヤの端末部を、左右の内の一方の閉空間部に通した後、垂直部の前面、後面、前面、後面というように通していき、最終の閉空間部まで工具等を用いずに縫うように順次迅速に掛け通すことができる。
【0012】
一方、他方のワイヤにあっては、先のワイヤが最後に通った閉空間部側から端末部を通した後、下向き開放空間、上向き開放空間の順にスパイラル状に巻付けていき最後に先のワイヤが最初に通った閉空間部まで、工具等を用いずにスパイラル状に迅速に巻付けることができる。
【0013】
この結果、ワイヤ同志を大きく張り出すことなく結束することができると共に、長手方向の引張りに対してワイヤは、各垂直部に喰い込むよう作用することで確実で高い結束保持力を得ることができる。
【0014】
また、中央部位に設けられた垂直部は、その垂直部を中心として一方は右巻きのスパイラルに、他方は左巻きのスパイラルにそれぞれ巻付けることが可能となり、ワイヤのS撚り(左巻き)、あるいは、Z撚り(右巻き)の撚り方向に何ら影響されることなく強い結束保持力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1には、前記垂直部、水平部、閉空間部を、屈曲可能な一本の連続した線材で作り、コストを安く抑えると共に外方へ大きく張り出すことなく高い結束保持力を確保する。
【0016】
第2には、中央部位の垂直部を、両サイドの垂直部より背を高くする形状とする。又は、中央部位の垂直部に左右に拡がった張り出し頭部を設け、中央部位の垂直部にかかるワイヤが容易に上方から外れ出ないようにする。
【実施例1】
【0017】
以下、図1乃至図5の図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明にかかるワイヤ結束具の正面図を示している。
【0019】
ワイヤ結束具1は、中央部位の垂直部3と、その垂直部3の下端から左右へ向けて水平方向へ延長された後、垂直方向、水平方向の順に屈曲され、上向き開放空間5と下向き開放空間7を交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部9及び垂直部11と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部13とからなり、中央部位の垂直部3を挟んで左右対称の形状となっていて全体が大きく曲がる可撓性となっている。
【0020】
垂直部11、水平部9、閉空間部13は屈曲可能なステンレスの材質で1本の連続した線材が用いられ、中心線X上に沿って順次屈曲させることで作られている。
【0021】
これにより、材料コストを安く抑えると共に、加工も、屈曲加工によって簡単に、かつ、コンパクトに作られるようになっている。
【0022】
中央部位の垂直部3は、両サイドの垂直部11より背の高い形状となっている。
【0023】
中央部位の垂直部3は、2つの機能を有し、1つは図2に示すように垂直部3にかかるスパイラル状のワイヤW−1が上方から容易に抜け出るのを防ぐためとなっている。
【0024】
この場合、図3に示すように垂直部3に左右に拡がる張り出し頭部3aを設けるようにすることで、その張り出し頭部3aによってワイヤW−1が上方から抜け出るのをより確実に阻止することが可能となる。
【0025】
もう1つは、図2(矢印1点鎖線)で示すように中央部位の垂直部3を中心として、例えば、一方(図左側)に右巻きのスパイラルを、他方(図右側)に左巻きのスパイラルをそれぞれ作るためである。
【0026】
これは、ワイヤを構成する芯線の撚りに関係しているもので、ワイヤにはS撚り(左巻き)とZ撚り(右巻き)があり、例えば、S撚りのワイヤを左巻きのスパイラルに巻付けると、その撚りと巻付け方向が同期したかたちとなり結束保持力の低下につながることが実験の結果認められたものである。
【0027】
この場合、S撚りのワイヤの時は、その撚りと逆らうように右巻きのスパイラル状に、Z撚りのワイヤの時は、左巻のスパイラル状に巻付けることで高い結束保持力が得られるようになるが、その撚りは外からは被覆によって直接見ることができないのが現状となっている。
【0028】
そこで、ワイヤをスパイラル状に巻付ける時に、中央の垂直部3を挟んで、左巻きスパイラル領域と右巻きスパイラル領域を作ることで一方にワイヤの撚りと逆らう方向のスパイラルが必ず確保されるようにすることで、ワイヤの撚りに何ら影響されることなく、常に高い結束保持力が得られるようにするためのものである。
【0029】
中央部位の独立した垂直部3は、ワイヤの撚りが確認できない時に有効に結束保持力を発揮するようになるが、ワイヤの撚りが予めわかっている時には、例えば、図6に示すように水平方向、垂直方向、水平方向、垂直方向の順に中心線X上に沿って屈曲され、上向き開放空間15と下向き開放空間17を交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部19及び垂直部21と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部23とからなるワイヤ結束具1とすることも可能である。
【0030】
この場合、材質や線径を変えると共に、水平部9と垂直部11の数を増やすことで、良い高い結束保持力が得られるようになる。
【0031】
このように構成されたワイヤ結束具1において、例えば、ワイヤW−1とワイヤW−2の端末同志を一体に結束する時には、図1鎖線で示すように一方のワイヤW−2の端末部を、例えば、右側の閉空間部13に通した後、各垂直部11の前面、後面、前面、後面というように通していき、他方となる最終の閉空間部13まで縫うように順次掛け通す。この時、工具等を用いることなく迅速に通すことが可能となる。
【0032】
次に、他方のワイヤW−1の端末部を、先のワイヤが最後に通った閉空間部13(左側)側から通した後、下向き開放空間7、上向き開放空間5の順に例えば、右巻きスパイラル状に巻付けていき、中央部位の垂直部3を境として今度は左巻きのスパイラル状に巻付けることで、ワイヤ同志の結束状態が得られる。この時、工具等を用いることなく迅速に巻付けることができると共に、中央部位の垂直部3にかかるワイヤW−1は背の高い垂直部3によって外れることはない。
【0033】
また、撚り方向のわからないワイヤに対してワイヤW−1の巻付き方向は必ず中央部の垂直部3を境にして右巻き領域、左巻領域にできる。
【0034】
したがって、長手方向の引張り荷重F・F1に対して各ワイヤW−1,W−2は各垂直部11に喰い込むよう作用することで、確実で高い結束保持力が確保される。この時、結束領域となるワイヤ結束具1は外方へ大きく張り出すことはない。
【0035】
したがって、ワイヤの端末同志の結束を始めとして、図5に示すように、ワイヤW−3の端末部にリング状の眼25(輪)を作る場合でも、コンパクトに、確実、かつ、迅速に結束することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るワイヤ結束具の正面図。
【図2】中央部位の垂直部の拡大説明図。
【図3】中央部位の垂直部の別の実施形態を示した拡大説明図。
【図4】ワイヤ同志を一本の連続した状態に結束した説明図。
【図5】ワイヤの端末部をリング状に結束して眼を作った状態の説明図。
【図6】中央部位の独立した垂直部のない別の実施形態を示したワイヤ結束具の正面図。
【符号の説明】
【0037】
3 中央部位の垂直部
3a 張り出し頭部
5 上向き開放空間
7 下向き開放空間
9 水平部
11 垂直部
13 閉空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部位の垂直部と、その垂直部の下端から左右へ向け水平方向へ延長された後、垂直方向、水平方向の順に中心線上に沿って屈曲され上向き開放空間と、下向き開放空間とを交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部及び垂直部と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部とからなる形状となっていることを特徴とするワイヤ結束具。
【請求項2】
水平方向、垂直方向、水平方向、垂直方向の順に中心線上に沿って屈曲され、下向き開放空間と上向き開放空間を交互に作る長手方向に沿って連続し合う水平部及び垂直部と、その左右両端に作られるリング状の閉空間部とからなる形状となっていることを特徴とするワイヤ結束具。
【請求項3】
前記垂直部、水平部、閉空間部は、屈曲可能な一本の連続した線材で作られていることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤ結束具。
【請求項4】
前記中央部位の垂直部は、両サイドの垂直部より背が高い形状となっていることを特徴とする請求項1,3のいずれかに記載のワイヤ結束具。
【請求項5】
前記中央部位の垂直部は、左右に拡がる張り出し頭部を有していることを特徴とする請求項1,3,4のいずれかに記載のワイヤ結束具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−132719(P2006−132719A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324230(P2004−324230)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(591102660)協栄線材株式会社 (24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】