説明

ワインの処理、その熟成度合いの測定方法および前記方法を実行するための装置

解放あるいは密閉された容器内に保存されたワインの熟成を促進するための方法ならびに装置であって、
処理されるワインを、表面、ならびに、促進され測定されたワインの酸化還元を実行するため定義された組成、を有する、銀/金/銅合金のエレメントに接触させるステップ、を備える。これにより、ワインの熟成度合いを測定し、一番良い状態でワインを味わうことができるようにするための基準を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醸造学の分野に関し、具体的には、ワインの熟成を促進させる方法、ならびに、かかる方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、ワインの熟成度合いは、醸造年度、色、ブドウの種類ならびにワイン製造方法に基づいて推測される。いくつかのワインは、飲む時期が早すぎたり遅すぎたりしていたので、消費者は、最も良い時期にそれらを消費することができなかった。
【0003】
一般に、ワインの熟成は、自体の発酵に続いて行われ、主にワインの還元を行うプロセスである。次に、ワインは、プロのワイン製造者にとって最悪な、過度の酸化を防止し、ワインがその飲み頃に達することを可能にするよう徐々に酸化するための条件を提供するため、酸化防止パッケージあるいは雰囲気中で保存される。用いられている主な酸化防止エレメントは、亜硫酸あるいは硫化物としての硫黄に基づくものであり、ワインがゆっくりとした酸化、一定温度の貯蔵室における熟成による恩恵を受けることを可能にする。
【0004】
一般にワインは、ゆっくりとした酸化還元を確保し、香りを放つとともに、ワインを自体の最高の状態で飲むことを可能にするため、貯蔵室において長い間に熟成するよう製造される。
【0005】
このように、長期の熟成期間が必要とされるため、プロおよび消費者の双方に不都合が生じる。両者ともに、ワインをベストな状態で飲むことを可能するため、長い期間待たなくてはならない。
【0006】
また、かかる長期間による熟成は、新入者のため準備された科学である醸造についての知識の普及を阻害し、専門家によるガイド又は雑誌に掲載された一般的な意見にのみ頼っている、一般的な消費者にとってアクセスしづらいので、さらなる不都合となる。
【0007】
一般に、プロにとっても消費者にとっても、ワインを飲むまで長期間待つ必要がなく、しかも、ワインが貯蔵庫内での熟成に適さなかいことを認識する可能であることが好ましい。
【0008】
また、ワインの評価ならびに熟成度合いについての基準を制定することを可能とする、ワイン醸造専用のツールを有することも望ましい。
【0009】
本発明は、ワイン醸造の世界を広く大衆化(democratize)することを意図しており、より具体的には、誰にでも、つまり、ワインのプロおよび一般の人たちのいずれにも、この伝統的な飲み物の品質の判断について、特に効果的なツールをオファーするものである。
【0010】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、官能で感じるそれ自体の所定の熟成度を確保するため、完全に管理され促進されたワインの酸化還元環境を創り出す方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、完全に管理された酸化還元手段によりワインを処理し、これにより、所定の熟成度合いのワインを得ることを可能にする、簡単で効率的な装置を実現することである。
【0013】
本発明の第三の目的は、ワインの熟成度合いの判断についての基準を作り上げることである。
【0014】
本発明は、解放あるいは密閉された容器内に保存されたワインの熟成の促進方法による手段であって、
処理されるワインを、表面、ならびに、促進され測定されたワインの酸化還元を実行するため定義された組成、を有する、銀/金/銅合金のエレメントに接触させるステップ、を備えたこと、
を特徴とする方法、によってこれらの目的を達成する。
【0015】
これにより、完全に管理され測定された酸化還元動作が行われ、貯蔵庫における熟成と同様の、感覚的な処理(organoleptic processing)が確実に行われる。かかる処理は、そこで所定のワインの熟成度合いを決定したり、あるいは、簡単に言うと、最高の状態においてワインを味わうことが可能となる、多くの適用例を有していてもよい。
【0016】
特定の実施形態において、合金のエレメントは、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金から構成されている。かかる合金は、95パーセントの銅、3パーセントの金および2パーセントの銀を備えて構成されることが好ましい。
【0017】
特定の実施形態において、銅は、打ち出し加工が施されているので、最良の状態において管理された熟成が確保される。
【0018】
本発明は、ワインの熟成を加速させるだけでなく、完全に管理する醸造装置を実現する。かかる装置は、酸化について中性なサポートエレメント、ならびに、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金という組成を有するエレメントを備えている。
【0019】
銅には打ち出し加工が施され、前記合金の組成は、95パーセントの銅、3パーセントの金および2パーセントの銀で構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、本発明は、測定エレメント、あるいは、あるワインの熟成度合いを測定するのに用いられる基準、を実現する。
【0021】
特定の実施形態において、本装置は、熟成度合いの測定精度を向上させるため、警告回路と組み合わせられた、浸漬時間を測定する電子回路を備えている。
【0022】
本発明の他の特徴目的ならびに効果は、これに限定する意図ではなく例示として示す、以下の説明および図面を参照することにより、明らかにされる。
【好ましい実施形態の説明】
【0023】
本発明にかかる方法ならびに装置の動作を理解するため、一般に、ワインが3つの要素、すなわち、構成(structure), 香り(aroma) およびグリース(grease)から構成されていることに注意すべきである。
【0024】
通常、ワインは、ある湿度および温度特性(a given hygrometry and temperature characteristics)を有する適切な貯蔵庫において実行される、ワインの酸化還元を管理することで熟成する。
【0025】
驚いたことに、一定の酸化還元能力および所定の接触面を有する合金とワインを接触状態にすることにより、完全に管理された酸化還元動作、ならびに、貯蔵庫で行われる自然熟成プロセスと同じ性質を有する、加速された熟成効果を得ることができることが知られていた。
【0026】
合金の組成とともにかかる合金エレメントの接触面を賢く選択し、試行錯誤を通じて、ワインの熟成度合いを測定するための基準を認識することが可能である。
【0027】
好ましい実施形態において、酸化エレメント合金(oxidying element alloy) は、3つのコンポーネント、すなわち、銅、銀ならびに金を備えている。既知のように、これら3つのコンポーネントは、メンデレーエフの周期律表Mendeleev's table)によると同じ分類に属し、他のものの自己酸化能力と結合するそれら自身の自己酸化能力を有している。
【0028】
これら3つのコンポーネントが接触すると、具体的には、特定の組み合わせになると、ワインの組成についてならびにワインの熟成について完全に管理する効果を生じさせる。
【0029】
より具体的には、銅、銀ならびに金のエレメントは、そのエレメント中のいくつかのリエゾン(liaisons)を分解することにより、硫黄をワイン中に存する亜硫酸あるいは硫化物に変える。したがって、還元状態において、硫黄エレメントの酸化を可能にし、これにより前記エレメントによって保持されていた香りが放出される。前記3つの合金エレメントが一緒に作用すると、これらによる効果は相互に強まり、貯蔵庫でなされるのと同じように香りが放出される。
【0030】
ここで、プロフェッショナルのワイン製造者および醸造学者(oenologists)だけでなく消費者にとってもとても有用で、かなり効果的なツールの製造を可能にする、本発明に基づく方法について2つの特定実施形態について説明する。
【0031】
図1は、加速されているが、それが接触している場合は完全に管理されたワインの熟成を可能にするツールの形により、特に簡易で安価に製造可能な、本発明の第一の実施形態を示している。
【0032】
このツールは、その内部に、表面を有し、銅、金および銀の3つの金属によって構成された合金エレメント2が設けられている、片1の形状である。
【0033】
エレメント2は、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金を備えた、サーキュラードロップ(circular drop)形状であることが好ましい。かかるドロップは、3ミリメートルから50ミリメートルの範囲の直径を有している。
【0034】
前記ドロップの特定の組成により、その酸化能力およびそれに接触するワインの熟成についての加速レートが正確に決定される。エレメント2の表面を正確に選択することにより、例えば、1年の熟成をさせるためにはドロップの半分を接触させる等の熟成基準を実現することが可能となる。
【0035】
前記ドロップには、95%の銅、3%の銀ならびに2%の金という組成を正確に適用することが好ましい。かかるドロップは、約6ミリメートルの直径を有する。
【0036】
前記ツールの形状は、ボトル内に保存されたワインと直接接触できるように、十分狭く伸長している(sufficiently elongated and narrow)ことが好ましい。
【0037】
その機能性を全く無視し美的観点から考えると(説明の明確化のため図1に図示せず)、図1のツールを、どのような形状にでも製造可能であることに注意すべきである。同様に、前記ドロップも、ワインと接触する酸化合金の接触面から構成される自体の機能性と全く関係なく、どのような特定形状に仕上げることもできる。
【0038】
明らかなように、図1のツールは、本発明無しでは達し得なかった3つの適用例を可能にする、完全に管理された酸化還元動作を実行することができる。
【0039】
1)量が激減した場合(in the event of massive reduction)に、ワインを瓶詰めする(rack the wine)どうかを製造者のために決定すること。
【0040】
2)高い潜在能力を有するワインのため、ワインのテースティングならびにサービス条件を改良すること。
【0041】
3)貯蔵されるワインの容量を特定すること。前記ドロップの接触面を賢く選択することにより、以下の測定ユニットを用いることが可能となる:10センチリットル(cl)の量のワインに対し、ドロップの半分が接触することが、1年分の熟成と等しくなること。
【0042】
この3番目のアプリケーションにおいて、本発明に基づく装置は、ワインの熟成度合いの基準を正確に測定する装置を提供することに注意すべきである。
【0043】
特に簡易で安価に製造可能なこの第一の好ましい実施形態によると、消費者は、特定の熟成段階でワインを味わうことができ、あるいは、貯蔵庫内のワインの熟成度合いを判断することができる。
【0044】
本発明に基づく方法は、電気タイマーとうまく組み合わされている。実際には、合金の組成が与えられると、ワインに生じる酸化還元効果は、時間の関数に相当し、ツールは、グラス内で浸かったままで残され、あるいは、いずれかのワイン容器内にあり、かかる時間は、ツールに組み込まれている電子システムによって適切に測定される。
【0045】
図2は、温度計のように見え、プロのワイン製造者又は消費者がワイングラス内に浸けることで完全に管理された酸化還元を生じさせることができる、新しいツール形式の実施形態を示している。ある特定の実施形態において、かかるツールは、ゲージド合金ドロップ(gauged alloy drop)22、および、その概要図が図3に示されている電子回路23を備えた、サポートエレメント21形状である。電子回路23は、前記ドロップの表面にうまく適用されるタイマーエレメント24、ならびに、ツールがワインに浸けられていることを検出するための検出エレメント25を備えている。回路23は、さらに、ツール上に、所望の熟成年数に対応するパルスを生成することが可能な押しボタン26等のユーザー入力エレメント、ならびに、音声又は視覚による示唆を発するアラームエレメント27を備えている。前記タイマーエレメントは、本発明の目的の一部を構成しない補助的機能を実行するので、ここではこれ以上の言及を避けるが、必要に応じ、メモリエレメントに関連するVLSI(超大規模集積)回路等の集積回路の形式によりマイクロプロセッサに置き換えることができる。
【0046】
ユーザーがプロのワイン製造者あるいは消費者のいずれの場合でも、タイマーエレメントがカウントを開始し、ユーザーによって生成されるパルスの数に対応する適切な時間が経過すると、アラームエレメントは、彼/彼女がワインの容器から前記ツールを抜き出してもよいことを知らせる。
【0047】
これにより、ワインについて完全に管理された熟成効果を得るのに特に効果的なツールを実現することが可能である。本発明に基づくドロップに電子回路を組み込むことにより、注目に値する精度を達成することが可能になる。
【0048】
様々な実施形態の下で本発明を適用する方法は多数あり、ワインのプロならびに消費者を対象としている。ワインのプロは、彼らのワインの品質ならびに熟成度合いをテストすることができる。消費者は、彼らのワインをすぐに最高の状態で味わうことができるので、貯蔵庫の中にワインを長期間保存する必要がない。
【0049】
厳格なプロトコルに基づいて用いた場合、この方法により、ワインへのメルカプタン(あるいはチオアルコール)の混入を防止し又は除去することにより製品の質を改良することが可能となる。このことは、醸造学者ならびにワイン製造者によるブドウ酒の瓶詰めの判断を補助する手段でもある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、ワインの熟成を管理し促進を実行する装置の好ましい実施形態を示している。
【図2】図2は、浸積時間を測定する電子回路を備えた、本発明の第二の実施形態を示している。を示す。
【図3】図3は、時間測定のための電子回路の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワインの官能特性(organoleptic properties)を修正することにより、解放あるいは密閉された容器内に貯蔵されたワインを処理する方法であって、
処理されるワインを、表面、ならびに、促進され測定された(accelerated and gauged)ワインの酸化還元を実行するため定義された組成を有する、銀/金/銅合金のエレメントに接触させるステップ、を備えたこと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1にかかるワイン処理方法であって、合金エレメントは、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金を備えて構成されること、
を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2にかかるワイン処理方法であって、前記合金エレメントは、95パーセントの銅、3パーセントの銀および2パーセントの金を備えて構成されること、
を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2にかかるワイン処理方法であって、銅は、打ち出し加工が施されていている(beaten)こと、
を特徴とする方法。
【請求項5】
ワインの熟成の促進を可能にする醸造用装置であって、
酸化について中性である支持(support)エレメント、および
管理され促進された熟成処理を実現するため、所定の接触面および所定の酸化還元能力を有するエレメント、を備えたこと、
を特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5にかかる装置であって、前記酸化エレメントは、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金を備えて構成されること、
を特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6にかかる装置であって、前記酸化エレメントは、95パーセントの銅、3パーセントの銀および2パーセントの金を備えて構成されること、
を特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7にかかる装置であって、銅は、打ち出し加工が施されていること、
を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれかにかかる装置であって、前記装置は、ワインボトルのネック、あるいは、樽(cask)の開口に係合するような形状を有すること、
を特徴とする装置。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれかにかかる装置であって、前記装置は、正確かつ測定された熟成動作を実現するため、所定の浸漬時間を測定する電子回路を備えたこと、
を特徴とする装置。
【請求項11】
ワインの熟成度合いを測定する器具であって、
酸化について中性である、第一サポートエレメント、および
管理され促進された熟成処理を実現するため、所定の接触面および所定の酸化還元能力を有するエレメント、を備えたこと、
を特徴とする器具。
【請求項12】
請求項11にかかる測定器具であって、前記酸化エレメントは、60から99.9パーセントの銅、0.05から20パーセントの銀および0.05から20パーセントの金を備えて構成されること、
を特徴とする測定器具。
【請求項13】
請求項12にかかる測定器具であって、前記酸化エレメントは、95パーセントの銅、3パーセントの金および2パーセントの銀を備えて構成されること、
を特徴とする測定器具。
【請求項14】
ワインの品質ならびにその熟成度合いの目安を示す醸造用装置であって、中性のサポートエレメント、ならびに、ワインの酸化還元の均衡を修正することを可能にする合金のドロップから構成されること、
を特徴とする装置。
【請求項15】
請求項5にかかる装置であって、60から99.9パーセント、好ましくは95パーセントの打ち出し加工を施した銅、0.05から20パーセント、好ましくは3パーセントの銀、および、0.05から20パーセント、好ましくは2パーセントの金の組成を備えて構成されること、
を特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−525989(P2007−525989A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501301(P2007−501301)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000523
【国際公開番号】WO2005/095574
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506294174)
【出願人】(506294347)
【Fターム(参考)】