説明

ワルファリンカリウム含有医薬組成物とその製造方法

【課題】医療現場ではワルファリンカリウム錠を患者に提供するにあたり投与量を管理しているが、割線を有する裸錠ではワルファリンカリウムの用量調整に限界があるため、投与量の微量調節が容易であり、かつ医薬品としての品質、特に光安定性を確保できる製剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ワルファリンカリウム含有医薬組成物において、ワルファリンカリウムを含有する核と、三ニ酸化鉄及び/または黄色三ニ酸化鉄を含有し、前記核を被覆する被膜とを含む医薬組成物及びその製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワルファリンカリウムを含有する経口用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワルファリンカリウム含有医薬組成物は、日本薬局方(以下、日局とする)にワルファリンカリウム錠として収載されており、血栓塞栓症の治療及び予防に用いられている(非特許文献1)。血栓塞栓症は確実に完治できないケースが多く、血栓塞栓症を発症している患者はほぼ一生継続して服用しなければならず、生命維持上、必要不可欠な医薬品である。また、ワルファリンカリウムに対する感受性は、個体差が大きく、同一個人でも併用薬剤や食事等の影響により変化することがあるため、血液凝固能等を検査して、投与量や投与回数等の投与法をコントロールする必要がある。そこで、治療に使用されているワルファリンカリウム錠は、用量調節ができるように錠剤を2分割するための割線が施された裸錠であり、具体的には1錠中にワルファリンカリウムが0.5mg、1mg、2mg、5mgを含有した錠剤(錠剤重量120mg、200mgまたは250mg)である。
【0003】
また、ワルファリンカリウムは光により含量低下を生じたり、変色することが知られている。しかしながら、ワルファリンカリウム製剤は分割を可能とした裸錠であるため、錠剤に、直接、遮光性を目的としたフィルムコーティングを施すことはできなかった。そこで、医薬品の流通では、アルミピロー包装やアルミ缶、遮光性を有するPTP包装等の遮光及び防湿可能な容器が利用されている。
【0004】
一方、医薬品において薬物の用量調整を容易にする手段としては、散剤、細粒剤、顆粒剤等の剤形が挙げられる。しかしながら、これらの製剤は、比表面積が大きくなるため、光や水分等の保存環境の影響を受けやすい。そこで、これらの製剤が光に対して不安定な薬物を含有する場合は、酸化チタン、タルク、食用黄色5号、黄色三二酸化鉄、食用赤色102号、三二酸化鉄などの光遮断剤または着色剤が利用されている。例えば、セルチンドールを含有する混合末または造粒物を酸化チタンを含有する水溶液をコーティング液としてコーティングすることにより、セルチンドールの光安定性を確保した細粒剤または顆粒剤が開示されている。
さらに酸化チタンとともにタルクを配合することにより、製剤の色調変化も抑制している(特許文献1)。また、ソファルコンとともに食用黄色5号、酸化チタンまたは三二酸化鉄を精製水を用いて湿式造粒することにより、光に対するソファルコンの含量低下を抑制させた細粒剤が開示されている(特許文献2)。
また、ビタミンKを配合してなる核に、中間被膜、さらに三二酸化鉄及び酸化チタンを分散させたメチルセルロース水溶液を転動流動法によりコーティングした顆粒剤(特許文献3)、あるいはアラニジピンを含有する顆粒を酸化チタン、食用黄色5号及び黄色三二酸化鉄を精製水を用いてコーティングすることにより光分解物の生成量を抑制したアラニジピン含有の顆粒剤が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/39752号パンフレット
【特許文献2】特開2000-191516号公報
【特許文献3】特開2002-104960号公報
【特許文献4】特開2003-104887号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本薬局方解説書編集委員会、「第十四改正日本薬局方解説書」廣川書店、平成13年6月27日、第一部医薬品各条、p.C-3728、C-3729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療現場ではワルファリンカリウム錠を患者に提供するにあたり投与量を管理している。しかしながら、割線を有する裸錠ではワルファリンカリウムの用量調整に限界があった。そこで、医療現場では、患者の状態にあわせて、調剤時または服用時に投与量の微量調節が容易なワルファリンカリウム含有医薬組成物が望まれていた。一方、これらのワルファリンカリウムの用量調節が容易な医薬組成物は、例えば、顆粒剤や細粒剤は比表面積が大きくなり保存環境の影響を受けやすくなるため、光安定性を確保する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ワルファリンカリウム含有医薬組成物におけるワルファリンカリウムの光安定性に対して、三二酸化鉄または黄色三二酸化鉄が、酸化チタンや食用黄色4号などの遮光剤や着色剤と比較し、著しい光安定化効果を有していることを見出した。つまり、光に不安定なワルファリンカリウムを含有する核を三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄で被覆することにより、ワルファリンカリウムの含量低下がほとんど認められない医薬組成物並びにその簡便な製造方法を見出した。特に、保存条件の影響を受けやすい比表面積の比較的大きい医薬組成物であっても、ワルファリンカリウム含量を確保し、用量調節を容易にできるワルファリンカリウム含有医薬組成物及びその製造方法を見出した。
すなわち、本発明は、(1)ワルファリンカリウムを含有する核と、(2)三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有し、前記核を被覆する被膜とを含む医薬組成物を提供する。本発明の好ましい態様は、前記核は、さらに三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する医薬組成物である。または、前記核は、賦形剤及び結合剤を、さらに含有する医薬組成物である。本発明のさらに好ましい態様は、医薬組成物において、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄の配合量が、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.05〜15質量部である医薬組成物である。特に好ましい態様としては、また、核と被膜を有する医薬組成物であって、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄についての核と被膜への配合比は、核中の三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄1質量部に対して、被膜中の三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄が0.1〜100質量部である。また、本発明の医薬組成物は、核と被膜の間に、さらに中間被膜を含む医薬組成物である。本発明のさらに好ましい態様は、前記医薬組成物は、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である。特に、好ましい態様は、細粒剤または顆粒剤である。
【0009】
また、本発明は、ワルファリンカリウムを含有する医薬組成物の製造方法であって、(a)ワルファリンカリウム、賦形剤および結合剤を含有する核を形成する工程と、(b)前記核を被覆するように、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する被膜を形成する工程と、を備える製造方法を提供する。本発明の好ましい態様は、ワーファリンカリウムを含有する核に、さらに三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含む医薬組成物の製造方法である。本発明のさらに好ましい態様は、前記製造方法において、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄の配合量は、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.05〜15質量部である。本発明のさらに好ましい態様は、前記製造方法において、前記医薬組成物が、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である。
【0010】
さらに、本発明は、ワーファリンカリウムと、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含む医薬組成物である。三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含む被覆層を施していない医薬組成物であっても良い。このとき、好ましい態様としては、ワルファリンカリウムと、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を混合してなる医薬組成物である。さらに好ましい態様としては、ワルファリンカリウム1質量部に対し、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄0.05〜15質量部を混合してなる医薬組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血栓塞栓症の患者にとって必須医薬品であるワルファリンカリウム含有医薬組成物において、患者様の服薬コンプライアンスの向上、医薬品としての品質向上、調剤現場での作業性や管理の軽減を可能にする医薬組成物が提供される。具体的には、患者の状態に併せて、きめ細かな用量水準で、例えば0.1mg単位でワルファリンカリウムを調剤することが可能な薬剤を提供できる。さらに、調剤または服用に際し、錠剤の分割作業を取り除くことができる製剤を提供し、調剤薬剤師や患者の作業を軽減できる。また、調剤の作業環境や医薬品の保存環境の影響を受けにくく、患者が実際に投与するまで高い品質を維持できる製剤を提供できる。さらに、本発明により、錠剤以外にも、ワルファリンカリウムを含有する製剤を提供することができ、投与方法の選択肢を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ワルファリンカリウムを含有する核と、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有し、前記核を被覆する被膜とを含む医薬組成物である。ここで、本発明に用いるワルファリンカリウムは、Monopotassium(RS)‐2‐oxo‐3‐(3‐oxo‐1‐phenylbutyl)‐chromen‐4‐olate(分子式C19H15KO4:346.42)であり、下式に示す。本発明に用いるワルファリンカリウムは、日局に収載されており、例えば、株式会社三和ケミカルの商品名ワルファリンカリウムを使用することができる。医薬組成物中のワルファリンカリウムの配合量は、医薬品の有効成分としての有効量を投与できるのであれば、特に限定されないが、調剤での計量の際に微量調節を容易に行うことができ、かつ容易に服薬できる配合量が望ましく、例えば、医薬組成物100質量部中に0.001〜2質量部である。好ましくは、0.005〜1質量部であり、さらに好ましくは、0.01〜0.5質量部である。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明における医薬組成物は、経口の固形製剤として製することができ、ワルファリンカリウムを含有する核を三二酸化鉄、または黄色三二酸化鉄、あるいはそれらの混合物を含有する皮膜で被覆することができる。または、ワーファリンカリウムを含有する核に、さらに三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含むことができる。あるいは、ワーファリンカリウム、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含む核を、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する被膜を施さずに医薬組成物に供しても良い。例えば、ワルファリンカリウムを含有する核の形態としては、粉末状、細粒状、顆粒状、マイクロカプセル、マイクロスフィアまたはリポソーム等、あるいはこれらを用いて得られるペレットや錠剤様の成型物等であり、その組成には医薬品に供することができる一般の添加物を用いることができる。好ましくは、本発明は、ワルファリンカリウム、賦形剤及び結合剤を含有する核であり、例えば、顆粒や細粒である。ここで、本発明の顆粒とは粒状であり、また本発明の細粒とは微粒状であり、ワルファリンカリウム、賦形剤及び結合剤を粒状または微粒状に造粒して得ることができる。賦形剤及び結合剤は、一般の経口医薬組成物で使用される物質を用いることができる。例えば、賦形剤は、D-マンニト-ル、乳糖(無水乳糖含む)、白糖(精製白糖含む)、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなど、結合剤は、ポピドン、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末などが挙げられるが、特に限定されるものではない。さらに、本発明の細粒または顆粒は、賦形剤や結合剤のほかに、必要に応じて滑沢剤、崩壊剤等の添加物を配合して良い。例えば、滑沢剤として硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウムなど、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等を配合して行っても良いが、これらに限定されるものではない。また、細粒や顆粒を調製する際に、造粒溶媒を使用することができる。これらの造粒溶媒は、特に限定されないが、水や各種有機溶媒など、例えば、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、あるいはそれらの混合液などである。好ましくは、水、エタノール、または、水とエタノールの混液である。
【0015】
本発明のワルファリンカリウムを含有する核は、公知の方法を単独または組み合わせて使用して製造することができる。好ましくは、本発明のワルファリンカリウムを含有する核は、ワルファリンカリウム、賦形剤及び結合剤を用いて核を製造する。例えば、核として細粒や顆粒の製造方法では、造粒方法が主要な操作方法となるが、混合、乾燥、整粒、分級などの操作を組み合わせることができる。造粒方法としては、例えば、粉末に結合剤及び溶媒を加えて造粒する湿式造粒法、粉末を圧縮して造粒する乾式造粒法、加熱溶融する結合剤を加えて加熱して造粒する溶融造粒方法などが利用できる。さらに、これらの造粒法に合わせて、プラネタリーミキサーやスクリュー型混合機などを用いる混合撹拌造粒法、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどを用いる高速混合撹拌造粒法、円筒造粒機、ロータリー型造粒機、スクリュー押し出し造粒機、ペレットミル型造粒機などを用いる押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法、噴霧造粒法などの操作方法を利用できる。また、造粒後、さらに乾燥機や流動層などによる乾燥や、解砕、整粒して細粒や顆粒として使用することができる。より具体的には、本発明の核は、賦形剤及び結合剤を混合機または練合機で混合しながら、ワルファリンカリウムを溶解した水を添加して混合または練合し、さらに押し出し造粒機で造粒して造粒物を得る。押し出し造粒機は、特に、限定されないが、例えば、バスケット式造粒機(円筒造粒機など)などが挙げられる。また、得られた造粒物は、棚式乾燥機や流動層乾燥機などにより乾燥させ、ミルやオシレーターなどで整粒して、細粒や顆粒を得ることができる。また、本発明における核の製造方法は、ローラーコンパクターや、スラッグ打錠機などの乾式加圧圧縮機を用いてワルファリンカリウム、賦形剤及び滑沢剤を攪拌混合しながら、強圧、成形し、さらに適当な大きさに解砕して造粒することができる。これらの造粒機で調製された造粒物は、そのまま本発明の核として用いても良いが、さらにパワーミルやロールグラニュレーター、ロータースピードミルなどで解砕、整粒して細粒や顆粒を得ることができる。
【0016】
本発明における三二酸化鉄(Fe23)及び黄色三二酸化鉄(Fe23・H2O)は、天然に存在する顔料であり、医薬品添加物規格1998(以下、薬添規とする)にも収載され、着色剤としての使用前例がある。例えば、三二酸化鉄は癸巳化成株式会社の商品名三二酸化鉄や、黄色三二酸化鉄は日本カラコン株式会社の商品名黄色酸化鉄カラコンを使用できる。三二酸化鉄は赤色から赤褐色又は暗赤紫色の粉末、黄色三二酸化鉄は黄色から帯褐黄色の粉末であり、水にほとんど溶けない。本発明における三二酸化鉄または黄色三二酸化鉄、あるいはそれらの混合物の配合量は、特に限定されず、例えば、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.05〜15質量部である。好ましくは、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.1〜9質量部であり、さらに好ましくは、0.2〜6質量部である。また、核と被膜を有する医薬組成物の場合には、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄についての核と被膜への配合比は、特に限定されるものではないが、例えば、核中の三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄1質量部に対して、被膜中の三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄が0.1〜100質量部である。好ましくは、その配合比は、1〜40質量部であり、より好ましくは1〜15質量部である。
【0017】
本発明のワルファリンカリウム医薬組成物は三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄のほかに、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用青色1号、食用青色2号(インジゴカルミン)、食用黄色4号アルミニウムレーキなどのタール系色素、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、ウコン抽出液、カラメル、カロチン液、β-カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、リボフラビン、カーボンブラック、薬用炭などの着色剤を含有しても良い。
【0018】
本発明における皮膜は、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄、着色剤の他に、さらにコーティング剤、賦形剤、滑沢剤、可塑剤、懸濁剤または乳化剤、着香剤、抗酸化剤、糖衣剤、防湿剤、流動化剤等の添加物を配合しても良いが、これらに限定されるものではない。コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS,メタクリル酸コポリマーL,メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS,2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマなどのアクリル酸系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴールなどの合成高分子物質、プルラン、キトサンなどの多糖類やゼラチン、コハク化ゼラチン、アラビアゴム、セラックなどの天然系高分子物質等が挙げられる。賦形剤としては、D-マンニト-ル、乳糖(無水乳糖含む)、白糖(精製白糖含む)、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなど、滑沢剤としては、硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウムなど、可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコールなど、懸濁剤または乳化剤として、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物など、着香剤として、メントール、はっか油、レモン油、オレンジ油など、抗酸化剤として、アスコルビン酸ナトリウム、L-システイン、亜硫酸ナトリウム、天然ビタミンEなど、糖衣剤としては、白糖、乳糖、水アメ、沈降炭酸カルシウム、アラビアゴム、カルナウバロウ、セラック、ミツロウ、マクロゴール、エチルセルロース、メチルセルロース、ポピドンなど、防湿剤として、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、パラフィン、ヒマシ油、マクロゴール、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラック等、流動化剤として、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、タルク、トウモロコシデンプン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明のワルファリンカリウムを含有する核を、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する皮膜での被覆は、公知の方法を単独または組み合わせて使用して製造することができ、被覆造粒法、フィルムコーティング法、糖衣コーティング法、圧縮コーティング法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、遠心流動型造粒コーティング装置、転動攪拌流動層造粒機や噴霧造粒装置などを用いて、ワルファリンカリウムを含有する核に三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する皮膜の組成物をそのまま添加するか、さらに溶媒を添加しながら被覆造粒することができる。あるいは、ワルファリンカリウムを含有する核に、本発明の皮膜の組成物を溶媒に分散させたコーティング液を添加しながら被覆造粒することができる。ここで、溶媒は、水や有機溶媒、あるいはそれらの混液であり、例えば、水、水とエタノールの混液、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、あるいはそれらの混合液などである。好ましくは、水、エタノール、水とエタノールの混液である。また、本発明の皮膜は、その組成物を水や有機溶媒、あるいは水と有機溶媒の混合液に溶解、分散または乳化させた液を調製したコーティング液をパンや流動層装置を用いて、ワルファリンカリウムを含有する核にスプレーし、さらに溶媒を乾燥などにより除去し、目的の組成物を得ることができる。また、本発明の皮膜は、同一組成の皮膜を多層に被覆しても、皮膜の組成を変えて、多層に被覆しても良い。あるいは、本発明の皮膜で被覆する前後に、必要に応じて、ワルファリンカリウムを含有する核を三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有しない他の皮膜で被覆しても良い。例えば、核の組成物と、皮膜の組成物が接触することにより、例えば薬物の含量低下、変色など医薬組成物の安定性に影響を与える可能性がある場合や本発明の皮膜を被覆しやすくさせる場合など、核と皮膜の間に本発明の皮膜の組成とは異なる中間被膜を施しても良い。具体的には中間被膜として、酸化チタン及び/またはタルクを含有する皮膜でワルファリンカリウムを含有する核を被覆した後、本発明の皮膜で被覆することができる。あるいは、ワルファリンカリウムを含有する核を本発明の皮膜で被覆したのち、最外層に、目的に応じて、セラック等の防湿剤を含有する皮膜、徐放性のコーティング剤を含有する皮膜または水分散性を向上させる分散剤を含有する皮膜などをオーバーコート被膜として被覆しても良い。
【0020】
本発明のワルファリンカリウム含有医薬組成物の剤形は、特に限定されるものではないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、ドライシロップ剤などの経口用固形製剤が挙げられる。好ましくは、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤であり、より好ましくは、細粒剤、顆粒剤である。これらの製剤は、主薬に賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、懸濁剤または乳化剤、着色剤、流動化剤、矯味矯臭剤等などを加えた後、常法(例えば日局の製剤総則に記載されている方法)により製することができる。例えば、ワルファリンカリウム、賦形剤及び結合剤の混合物を練合機で攪拌しながら徐々に水を添加して練合し、次いで、その練合物を円筒造粒機で造粒して細粒または顆粒を調製し、さらに、遠心流動型造粒コーティング装置を用いて、この細粒または顆粒に三二酸化鉄、コーティング剤、賦形剤をエタノールに分散させたコーティング液を添加して被覆造粒して、本発明の細粒剤または顆粒剤を得ることができる。また、本発明の医薬組成物は、それらの細粒剤や顆粒剤をゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを基剤とするカプセルに充填してカプセル剤としても良い。また、ワルファリンカリウムを含有する核を三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する皮膜で被覆した細粒や顆粒に、さらに懸濁化剤、糖類や矯味剤などの添加物を加えてドライシロップ剤を製することができる。あるいは、ワルファリンカリウムを含有する核を三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する皮膜で被覆した顆粒に、滑沢剤や崩壊剤等の添加物を加えて打錠機により圧縮成型することができ、調剤時に小さな応力で崩壊しやすい易崩性錠剤としても良い。あるいは、ワルファリンカリウム、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤の混合末を打錠機で圧縮成型した素錠をさらに本発明の皮膜でフィルムコーティングできるが、好ましくは、調剤時にも計量しやすい小型のミニタブレットが良い。もちろん、本発明の医薬品組成物の剤形及びその製造法はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の医薬組成物は、調剤時または服用時にワルファリンカリウムの投与量の微量調節が容易である。さらに、顆粒剤や細粒剤など、比表面積が大きな剤形の場合でも、従来必須であった遮光包装を用いずに、光に対するワルファリンカリウムの安定性を確保できる医薬組成物である。
【0022】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、医薬品組成物中の添加物は、日局、薬添規日本薬局方外医薬品規格1997、食品添加物公定書第七版等の公定書に適合したもの、または試薬を使用した。
【0023】
(実施例1)
<素顆粒の調製>
以下の方法で核として素顆粒を調製した。滅菌精製水600gにワルファリンカリウム20gを添加し、溶解させた溶液を乳糖8680g、D-マンニトール1000g、ヒドロキシプロピルセルロース-L(以下、HPC-Lとする)300gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。さらに、練合して得られた混合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、22号篩を通過し、42号篩に残留した素顆粒を得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L24g、乳糖796g、タルク100g、酸化チタン80gを無水エタノール10000gに溶解または分散させ、中間被膜用のコーティング液を得た。素顆粒1500gを中間被膜用のコーティング液3300g(中間皮膜として300g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間被膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L96g、乳糖3174g、タルク400g、酸化チタン320g、三二酸化鉄10gを無水エタノール8000g中に溶解または分散させ、皮膜用のコーティング液を得た。中間被膜を施した素顆粒を皮膜用のコーティング液900g(皮膜として300g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0024】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、皮膜用のコーティング液を3600g(皮膜として1200g)を用いて、顆粒剤を得た。
【0025】
(実施例3)
<素顆粒の調製>
滅菌精製水600gにワルファリンカリウム20gを添加し、溶解させた溶液を乳糖8680g、D-マンニトール1000g、HPC-L300gを用い、実施例1と同様の方法で素顆粒を得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L24g、乳糖796g、タルク100g、酸化チタン80gを無水エタノール2000gに溶解または分散させ、中間被膜用のコーティング液を得た。素顆粒1250gを中間被膜用のコーティング液750g(中間皮膜として250g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間被膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L72g、乳糖2358g、タルク300g、酸化チタン240g、三二酸化鉄30gを無水エタノール6000g中に溶解または分散させ、皮膜用のコーティング液を得た。中間被膜で被覆した素顆粒を皮膜用のコーティング液2250g(皮膜として750g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0026】
(実施例4)
実施例3と同様の方法で調製した素顆粒1250g及び中間被膜用のコーティング液750g(中間用皮膜として250g)を用いて得られた中間被膜で被覆した素顆粒を調製し、以下の皮膜用のコーティング液2250g(皮膜として750g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
(皮膜用のコーティング液の調製)
HPC-L72g、乳糖2328g、タルク300g、酸化チタン240g、三二酸化鉄60gの組成比である皮膜を無水エタノール6000g中に溶解または分散させ、コーティング液を得た。
【0027】
(実施例5)
実施例1で調製した素顆粒1250gを実施例3で調製した被膜用のコーティング液750g(皮膜として250g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0028】
(実施例6)
実施例1で調製した素顆粒1250gを実施例3で調製した被膜用のコーティング液2250g(皮膜として750g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0029】
(参考例1)
実施例1の素顆粒1500gを、HPC-L22.5g、乳糖592.5g、タルク75g、酸化チタン60gを無水エタノール1500g中に溶解または分散させた被膜用のコーティング液で遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0030】
(試験例1)
<保存試験>
実施例1、実施例2で得た顆粒を用いて保存試験を行った。各顆粒3gをそれぞれ別の透明なシャーレに均一に広げ、120万lx・hの光照射条件下(25℃60%RH)で保存した。また、各顆粒約10gをそれぞれ別の遮光ガラスビンに充填し密閉して冷所保存した。保存後、ワルファリンカリウム含量の定量及び製剤の外観評価を以下の方法で行った。比較として、参考例1及び実施例1で調製した素顆粒も同様に試験を実施した。
<定量法>
ワルファリンカリウムの定量は、以下の方法で行った。
<試料溶液の調製>
(1)ワルファリンカリウム1mg相当分の顆粒を精密に量り、50mLの褐色のメスフラスコに入れた。(2)精製水を約40mL加えて、スターラーで約15分間攪拌した。(3)スターラーバーを取り除き、精製水を加えて正確に50mLにし、その後よく振り混ぜた。(4)(3)で調製した液約10mLを10000rpmで10分間遠心分離した。(5)(4)の上澄を5mLのシリンジに入れ、0.45μmのフイルターで濾過し、初流1mLを除いたろ液を試料溶液とした。
<標準溶液の調製>
ワルファリンカリウム約50mgを精密に量り、精製水を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、完全に溶解したことを目視確認した。さらに、ワルファリンカリウム濃度が0.02mg/mLになるように精製水で希釈した。
<HPLC条件>
波長:283nm、カラム(推奨):ODS-A、4.6×75mm、3μm、YMC、移動相:水/メタノール/リン酸(460/540/1)、カラム温度:35℃付近の一定温度流速:1.0mL/min、注入量:50μL。
(外観評価)
目視観察を行い、冷所保存品と比較して、5段階で評価した。
(-):変化なし
(±):僅かに変化が認められる
(+):変化が認められる
(2+):大きく変化が認められる
(3+):著しく変化が認められる
【0031】
試験例1の結果を表1に示した。三二酸化鉄で被覆したワルファリンカリウムを含有した顆粒剤は、光照射及び湿度による含量低下は少なく、外観上も僅かに変化した程度であり、医薬品としての品質を十分に確保できることが判った。一方、本発明に用いる三二酸化鉄を含有した被膜で被覆していない素顆粒、あるいは酸化チタンのみで被覆した参考例1では、ワルファリンカリウムの含量低下が大きく医薬品としての品質確保を期待できるものではなかった。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例7)
<素顆粒の調製>
以下の方法で核として素顆粒を調製した。滅菌精製水810gにワルファリンカリウム24gを添加し、溶解させた溶液を乳糖11460g、D-マンニトール1320g、HPC-L396gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。さらに、この練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、22号篩を通過し、42号篩に残留したものを素顆粒として得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L36g、乳糖1194g、タルク150g、酸化チタン120gを無水エタノール3000gに溶解または分散させ、中間被膜用のコーティング液を得た。素顆粒1265gを中間被膜用のコーティング液1035g(中間皮膜として345g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間被膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L72g、乳糖2338g、タルク300g、酸化チタン240g、黄色三二酸化鉄50gを無水エタノール6000g中に溶解または分散させ、被膜用のコーティング液を得た。中間被膜で被覆した素顆粒を皮膜用のコーティング液690g(皮膜として230g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒し、さらに60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
【0034】
(実施例8)
実施例7と同様の方法で、被膜用コーティング液2070g(皮膜として690g)を用いて、顆粒剤を得た。
【0035】
(実施例9)
実施例7と同様の方法で、中間被膜で被覆した素顆粒を調製し、さらに、以下に示す三二酸化鉄及び黄色三二酸化鉄を含有するコーティング液690g(皮膜として230g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒した。さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
<被膜用のコーティング液の調製>
HPC-L72g、乳糖2348g、タルク300g、酸化チタン240g、三二酸化鉄4g、黄色三二酸化鉄36gの組成比である皮膜を無水エタノール6000g中に溶解または分散させ、コーティング液を得た。
【0036】
(実施例10)
実施例9と同様の方法で、被膜用のコーティング液として2070g(皮膜として690g)を用いて顆粒剤を得た。
【0037】
(参考例2)
実施例7と同様の方法で、中間被膜で被覆した素顆粒を調製し、さらに、以下に示す食用黄色5号を含有するコーティング液2070g(皮膜として690g)を用いて遠心流動型造粒コーティング装置で被覆造粒した。さらに棚式乾燥機で60℃で乾燥させ、22号篩を通過し、42号篩に残留させて、顆粒剤を得た。
<被膜用のコーティング液の調製>
HPC-L72g、乳糖2378g、タルク300g、酸化チタン240g、食用黄色5号10gの組成比である皮膜を無水エタノール6000g中に溶解または分散させ、コーティング液を得た。
(参考例3)
参考例2の被膜用のコーティング液における食用黄色5号10gの代わりに食用赤色102号10gを用いてコーティング液を得た。さらに、参考例2と同様の方法で顆粒剤を得た。
【0038】
(試験例2)
試験例1と同様な保存方法並びに評価方法を用いて、実施例7〜8、参考例2〜3を評価した。評価結果を表2に示した。その結果、黄色三二酸化鉄、あるいは黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する皮膜で被覆したワルファリンカリウム含有医薬組成物はワルファリンカリウム含量及び製剤の外観変化は少なく、光安定性に優れていた。一方、タール系色素で被覆した医薬組成物は、三二酸化鉄や黄色三二酸化鉄を含有した医薬組成物と比較して、光安定性に対する効果は低く、さらに外観観察では、商品性や識別性に影響を与えるほど著しい退色が認められた。
【0039】
【表2】

【0040】
(実施例11)
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を予め乳糖と三二酸化鉄を比率49:1の割合で粉砕機を用いて粉砕した混合物800g、乳糖9624g、D-マンニトール1200g、HPC-L360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過した。22号篩を通過し、42号篩に残留した顆粒をワルファリンカリウム及び三二酸化鉄を含有する顆粒剤として得た。
【0041】
(実施例12)
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を予め乳糖と三二酸化鉄を比率49:1の割合で粉砕機を用いて粉砕した混合物2400g、乳糖8024g、D-マンニトール1200g、HPC-L360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過した。22号を通過し、42号篩に残留した顆粒をワルファリンカリウム及び三二酸化鉄を含有する顆粒剤として得た。
【0042】
(実施例13)
三二酸化鉄を含有する核に、さらに三二酸化鉄を含有する被覆層を施した顆粒剤を以下の方法で得た。
<素顆粒の調製>
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を予め乳糖と三二酸化鉄を比率49:1の割合で粉砕機を用いて粉砕した混合物2400g、乳糖8024g、D-マンニトール1200g、HPC-L360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過させ、22号を通過し、42号篩に残留した顆粒を得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L7.2g、タルク22.8gを90%(重量比)含水エタノール480gに溶解または分散させ、中間皮膜用のコーティング液を得た。素顆粒450gを中間皮膜用のコーティング液510g(固形分として30g)を用いて、遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間皮膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L3.0g、乳糖103.2g、タルク12.0g、三二酸化鉄1.8gを90%(重量比)含水エタノール300gに溶解または分散させ、被膜用のコーティング液を得た。中間皮膜被膜を施した顆粒を被膜用のコーティング液420g(固形分として120g)を用いて遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、さらに同装置を用いて60℃で乾燥させた。その後、22号篩を通過し、42号篩に残留した顆粒にタルク3.0g、アエロジル3.0gを添加し、混合させて顆粒剤を得た。
【0043】
(実施例14)
三二酸化鉄を含有する核に、さらに三二酸化鉄を含有する被覆層を施した顆粒剤を以下の方法で得た。
<素顆粒の調製>
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を予め乳糖と三二酸化鉄を比率49:1の割合で粉砕機を用いて粉砕した混合物2400g、乳糖8024g、D-マンニトール1200g、HPC-L360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過させ、22号を通過し、42号篩に残留した顆粒を得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L7.2g、タルク22.8gを90%(重量比)含水エタノール480gに溶解または分散させ、中間皮膜用のコーティング液を得た。素顆粒450gを中間皮膜用のコーティング液510g(固形分として30g)を用いて、遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間皮膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L3.0g、乳糖101.4g、タルク12.0g、三二酸化鉄3.6gを90%(重量比)含水エタノール300gに溶解または分散させ、被膜用のコーティング液を得た。中間皮膜被膜を施した顆粒を被膜用のコーティング液420g(固形分として120g)を用いて遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、さらに同装置を用いて60℃で乾燥させた。その後、22号篩を通過し、42号篩に残留した顆粒にタルク3.0g、アエロジル3.0gを添加し、混合させて顆粒剤を得た。
【0044】
(実施例15)
複数の被覆層を有する顆粒剤を以下の方法で調製した。
<素顆粒の調製>
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を予め乳糖と三二酸化鉄を比率49:1の割合で粉砕機を用いて粉砕した混合物2400g、乳糖8024g、D-マンニトール1200g、HPC-L360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過させ、22号を通過し、42号篩に残留した顆粒を得た。
<中間被膜で被覆した素顆粒の調製>
HPC-L7.2g、タルク22.8gを90%(質量比)含水エタノール480gに溶解または分散させ、中間皮膜用のコーティング液を得た。素顆粒450gを中間皮膜用のコーティング液510g(固形分として30g)を用いて遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、素顆粒に中間皮膜を施した。
<顆粒剤の調製>
HPC-L3.0g、乳糖89.4g、タルク12.0g、酸化チタン12.0g、三二酸化鉄3.6gを90%(重量比)含水エタノール300gに溶解または分散させ、第1層の被膜用のコーティング液を得た。中間皮膜被膜を施した顆粒を第1層の被膜用のコーティング液420g(固形分として120g)を用いて遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、中間皮膜被覆で被覆した顆粒に第1層の被膜を施した。続いて、HPC-L3.0g、乳糖102g、タルク12.0g、黄色三二酸化鉄3.0gを90%(重量比)含水エタノール300gに溶解または分散させ、第2層の被膜用のコーティング液を得た。第1層の被膜を施した顆粒を第2層の被膜用のコーティング液420g(固形分として120g)を用いて遠心流動型コーティング装置で被覆造粒し、さらに同装置を用いて60℃で乾燥させた。その後、22号篩を通過し、42号篩に残留した顆粒にタルク3.0gを添加し、混合させて顆粒剤を得た。
【0045】
(参考例4)
滅菌製精水740gにワルファリンカリウム16gを添加し、溶解させた溶液を乳糖10424g、D-マンニトール1200gヒドロキシプロピルセルロース360gの混合物に練合機で攪拌しながら徐々に添加して練合した。次に、その練合物を円筒造粒機で0.5mmのスクリーンを用いて円柱状に造粒し、さらに流動層乾燥機で60℃で乾燥させた後、篩過し、22号を通過し、42号篩に残留した顆粒を三二酸化鉄を含有しない顆粒剤として得た。
【0046】
(試験例3)
試験例1と同様な保存方法並びに評価方法を用いて、実施例11〜15、参考例4を評価した。評価結果を表3に示した。その結果、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄を含有するワルファリンカリウムを含有する医薬組成物は、参考例4と比べてワルファリンカリウムの含量変化は少なく、光安定性に優れていた。なお、参考例4は、保存試験により試験前と比較し退色し白色化したが、一方、実施例11〜14は、色調変化を認めなかった。本試験により被覆層を有さない顆粒剤、つまり、本発明の核に三二酸化鉄を含有しただけの製剤でも効果を認めた。
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ワルファリンカリウムを含有する核と、(2)三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有し、前記核を被覆する被膜とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記核は、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を、さらに含有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記核は、賦形剤及び結合剤を、さらに含有する請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄の配合量が、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.05〜15質量部である請求項1ないし請求項3のうち何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記核と前記被膜の間に、さらに中間被膜を含む請求項1ないし請求項4のうち何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ワルファリンカリウムと、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄とを含む医薬組成物。
【請求項7】
ワルファリンカリウム1質量部に対し、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄0.05〜15質量部を混合してなる請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物は、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である請求項1ないし請求項7のうち何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ワルファリンカリウムを含有する医薬組成物の製造方法であって、(a)ワルファリンカリウムを含有する核を形成する工程と、(b)前記核を被覆するように、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を含有する被膜を形成する工程と、を備える製造方法。
【請求項10】
前記工程(a)において、三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄を、さらに含有する請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
三二酸化鉄及び/または黄色三二酸化鉄の配合量は、ワルファリンカリウム1質量部に対して0.05〜15質量部である請求項9または請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
医薬組成物は、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である請求項9ないし請求項11のうち何れか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−126906(P2011−126906A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54708(P2011−54708)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【分割の表示】特願2005−41102(P2005−41102)の分割
【原出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】