説明

ワークの搬送装置及びワークの搬送方法

【課題】加工位置を通ってシート状のワークを搬送する時に、ワークに作用する張力を一定にするとともにワークに作用する張力を抑えて搬送することが可能であって、しかも簡単な構成でコストを安価に抑えることができるワークの搬送装置を提供する。
【解決手段】加工位置Pを通ってテープ状のワークWを搬送するワークの搬送装置1において、ワークの搬送方向D1の加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置され、ワークを把持してワークを搬送方向に搬送する第一の把持部41及び第二の把持部42と、第一の把持部及び第二の把持部をそれぞれ往復移動させるただ一つのシリンダ46と、シリンダの出力を第一の把持部及び第二の把持部に伝える伝達部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状のワークを搬送し、搬送する際に孔空けや印刷等の加工を行うワークの搬送装置及びワークの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワークの搬送装置の一つとして、特許文献1に記載されたものが知られている。このワークの搬送装置では、基板をシート材(ワーク)で洗浄するために、シート材の搬送方向の上流側と下流側に備えられた一対の張架ローラでシート材に一定のテンションを与えている。そして、搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ備えられたモータにより駆動する巻戻しローラと巻取りローラでシート材を搬送するとともに、基板を押圧する押圧体を洗浄している。
また、シート材の素材として様々な種類のものが用いられるようになり、素材がもろくて壊れやすいものや、伸びやすいシート材を搬送する必要が出てきた。
【特許文献1】特開平11−349341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のワークの搬送装置では、ワークを二つのモータで駆動していたので、モータの同期がずれるとワークに大きな張力が作用してワークが破損したり、作用する張力により伸びたワークに対して孔空け加工を行いワークを加工する寸法がずれてしまうことがあった。
また、二つのモータを同期させて制御することも考えられるが、制御が複雑になりコスト高を招いてしまう。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、加工位置を通ってシート状のワークを搬送する時に、ワークに作用する張力を一定にするとともにワークに作用する張力を抑えて搬送することが可能であって、しかも簡単な構成でコストを安価に抑えることができるワークの搬送装置及びワークの搬送方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のワークの搬送装置は、加工位置を通ってテープ状のワークを該ワークの長さ方向に搬送するワークの搬送装置において、前記ワークの搬送方向の前記加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置され、前記ワークを把持して該ワークを前記搬送方向に搬送する第一の把持部及び第二の把持部と、該第一の把持部及び該第二の把持部をそれぞれ往復移動させるただ一つのシリンダと、該シリンダの出力を前記第一の把持部及び前記第二の把持部に伝える伝達部とを備えることを特徴としている。
なお、ここで言う加工位置とは、ワークに孔開けや印刷等の加工を行う位置である。
【0006】
また、本発明のワークの搬送方法は、加工位置を通って搬送されるテープ状のワークの該加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置され、前記ワークを把持して該ワークの長さ方向に搬送する第一の把持部及び第二の把持部と、該第一の把持部及び該第二の把持部をそれぞれ往復移動させるただ一つのシリンダと、該シリンダの出力を前記第一の把持部及び前記第二の把持部に伝える伝達部とを備え、前記ワークを搬送方向に搬送するワークの搬送方法において、前記ワークを前記第一の把持部及び前記第二の把持部で把持する把持工程と、前記シリンダにより該第一の把持部及び該第二の把持部を前記搬送方向に移動させる移動工程とを備えることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、まず、加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置された第一の把持部及び第二の把持部でワークを把持する。そして、伝達部を介して第一の把持部及び第二の把持部をただ一つのシリンダで搬送方向に移動させることにより、ワークを搬送方向に移動させる。このため、第一の把持部及び第二の把持部が移動する同期を確実にとることができ、加工位置を通って搬送されるワークに作用する張力を一定にするとともに、ワークに作用する張力を抑えて搬送することが可能となる。
また、ただ一つのシリンダで第一の把持部及び第二の把持部を移動させるので、装置の構成を簡単にするとともにコストを安価に抑えることができる。
【0008】
また、所定位置に配置され、前記第一の把持部及び前記第二の把持部により前記ワークを前記搬送方向に移動させる時には該ワークの把持を解消し、前記第一の把持部及び前記第二の把持部が初期位置に戻る時には前記ワークを把持して該ワークが前記搬送方向とは逆方向へ移動することを規制する逆方向移動防止部を備えることがより好ましい。
なお、ここで言う初期位置とは、ワークを搬送方向へ搬送する前に第一の把持部及び第二の把持部が配置されている位置のことである。
この発明によれば、ワークを搬送方向へ搬送した第一の把持部及び第二の把持部が初期位置に戻る時にワークの移動を逆方向移動防止部で規制しているので、ワークを繰り返し搬送方向へ搬送することができる。従って、第一の把持部から第二の把持部までの距離よりも長いワークであっても、ワークに作用する張力を抑えてワークを連続して搬送し加工位置に供給することができる。
【0009】
また、前記第一の把持部、前記第二の把持部及び前記逆方向移動防止部は、前記ワークの厚さ方向両側から該ワークをベルト部材を介して挟むようにそれぞれ把持することがより好ましい。
この発明によれば、ワークを広い面積で両側から把持することができるので、素材がもろくて壊れやすいワークであっても、搬送する際のワークの破損を抑えることができる。
【0010】
また、前記ワークが巻回されたロールを回転させるロール駆動モータと、前記ロールから前記加工位置まで搬送される前記ワークの長さであるワーク搬送長さを検出する検出部と、前記検出部により前記ワーク搬送長さが所定長さより短くなったことを検出した時に、前記ロール駆動モータを駆動させ、前記ロールから前記ワークを所定長さ繰り出すロール制御部とを備えることがより好ましい。
この発明によれば、ロールから供給され第一の把持部に把持されるワークを常にたるませた状態にすることができる。ロールから第一の把持部までのワークの張力にはワーク自身の重力しかかからないので、ワークに作用する張力を抑えることができる。
また、ワーク搬送長さが所定長さより短くなった時にロール駆動モータを駆動させ、ロールからワークを所定長さ繰り出すので、ワークを連続して加工位置に供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワークの搬送装置及びワークの搬送方法によれば、加工位置を通ってシート状のワークを搬送する時に、ワークに作用する張力を一定にするとともにワークに作用する張力を抑えて搬送することと、簡単な構成でコストを安価に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1から図7は、本発明の実施形態のワークの搬送装置の説明図である。図1はワークの搬送装置の正面図、図2はワークの搬送装置の平面図、図3は要部説明図、図4はワークの搬送装置のブロック図である。
なお、図2及び図3は、説明の便宜上一部の部品を取り除いて示してある。また、以下の実施形態ではワークの搬送装置が打抜き装置である場合を例にして説明するが、ワークの搬送装置は打抜き装置に限られるものでなく、ワークWを搬送し印刷する印刷装置等でもよい。
この打抜き装置1は、テープ状のワークWを予め決められた搬送方向D1に搬送するとともに、搬送する途中にワークWを支持するものが無い加工位置Pを設け、その加工位置PでワークWに打抜き加工を行う装置である。
なお本実施形態では、ワークWとしてキャパシタの電極として用いられる小型の部品を打抜くための材料を用いているが、ワークWは電極用材料に限られることなく、印刷用紙や鋼板等でもよい。また、この電極用材料は、ワークWを長さ方向に引張る力、すなわち張力に対して比較的もろい材料となっている。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の打抜き装置1は、ワークWを供給する供給手段3と、供給されたワークWを搬送する搬送手段4と、搬送されるワークWを保護する搬送補助手段6と、ワークWに実際に打抜き加工を行う打抜き手段7と、駆動力を発生させる圧縮空気の圧力を切替える弁切替え部23と、各構成を制御する主制御部22とを備えている。
そして、打抜き装置1は通常の使用時において、搬送方向D1が水平面と平行になるように配置される。
【0014】
図1及び図4に示すように、供給手段3は、ワークWが巻回されたロールW1を回転させるロール駆動モータ31と、ワークWの長さを検出する位置検出センサ32と、加工位置Pに搬送されるワークWの搬送方向D1に所定の張力を作用させる重り33と、重り33が鉛直方向Eのみに移動するように案内するガイドレール34と、ロール駆動モータ31を制御するロール制御部35を有する。そして、ロール駆動モータ31、位置検出センサ32及びガイドレール34は基台21に固定されている。
なお、位置検出センサ32は特許請求の範囲の検出部に相当する。
ここで、ロールW1から加工位置Pまで搬送されるワークWの長さをワーク搬送長さと称することにする。すなわち、図1に示すようにワーク搬送長さは、ロールW1の外周上の点Q1から、重り33の外周上の点Q3及び後述するローラ65の外周上の点Q4を通って加工位置Pの点Q2に達するまでのワークWの長さとなる。
【0015】
位置検出センサ32は、重り33の鉛直方向Eの位置を検出することによりワーク搬送長さを検出する。位置検出センサ32として本実施形態では近接センサが用いられているが、タッチセンサ等でもよい。そして、ワーク搬送長さが短くなり、重り33が図1に示す位置Rまで上昇した時に、後述するようにロールW1からワークWが供給される。
また、ガイドレール34には搬送方向D1に直交する鉛直方向Eの溝部が形成され、この溝部と重り33に設けられたが凸部が嵌合することにより、重り33は鉛直方向Eのみに移動するように案内される。
また、ロール制御部35は、図4に示すように位置検出センサ32からの信号を受け、ロール駆動モータ31を制御する。
【0016】
搬送手段4は、図1から図3に示すように、搬送方向D1の加工位置Pに対する上流側と下流側にそれぞれ配置された第一の把持部41及び第二の把持部42と、一対の逆方向移動防止部43と、第一の把持部41及び第二の把持部42が固定された把持部ベース44と、把持部ベース44が搬送方向D1及び搬送方向D1と逆方向である上流方向D2のみに移動するように案内する搬送ガイド45と、把持部ベース44を搬送方向D1及び上流方向D2に往復移動させるただ一つの搬送シリンダ46とを備えている。
なお、搬送シリンダ46は特許請求の範囲のシリンダに、把持部ベース44は伝達部にそれぞれ相当する。
【0017】
また、搬送手段4にはさらに、把持部ベース44の搬送方向D1側のストッパとなる第一のストッパ45aに設けられたストッパピン45cと、把持部ベース44に設けられたベースピン44aの上流方向D2側のストッパとなる第二のストッパ45bを備えている。すなわち、把持部ベース44は搬送シリンダ46の出力を第一の把持部41及び第二の把持部42に伝えるとともに、第一のストッパ45aと第二のストッパ45bの間の搬送ストロークLを搬送方向D1及び上流方向D2に往復移動する。
なお、特許請求の範囲の初期位置とは、図2に示すように把持部ベース44に設けられたベースピン44aが第二のストッパ45bに当接した時の把持部ベース44に固定された第一の把持部41及び第二の把持部42の位置のことである。
図1から図3に示すように、一対の逆方向移動防止部43は、第一の把持部41及び第二の把持部42を挟むように、第一の把持部41及び第二の把持部42と水平面上の同一直線上に配置されている。
また、一対の逆方向移動防止部43、搬送ガイド45、第一のストッパ45a、第二のストッパ45b及び搬送シリンダ46は基台21に固定されている。
【0018】
図5に、図2における切断線X−Xの断面図を示す。図5(a)は第一の把持部41でワークWを把持している状態、図5(b)は第一の把持部41でワークWの把持を解消し開放している状態である。
図2及び図5に示すように、第一の把持部41は、エアーチャック41bと、エアーチャック41bに設けられた接近離隔可能な一対のフィンガ部41cの内側にネジ部材48により固定された一対の把持板41aとを有する。一対のフィンガ部41cと一対の把持板41aは、それぞれ鉛直方向Eに重なるように配置されている。
同様に、第二の把持部42は、エアーチャック42bと、エアーチャック42bに設けられた接近離隔可能な一対のフィンガ部42cの内側にネジ部材48により固定された一対の把持板42aとを有する。
また、一対の逆方向移動防止部43は、それぞれがエアーチャック43bと、エアーチャック43bに設けられた接近離隔可能な一対のフィンガ部43cの内側にネジ部材48により固定された一対の把持板43aとを有する。
【0019】
図2及び図4に示すように、弁切替え部23は、主制御部22からの命令に基づいて、図示しないエアーコンプレッサ又はエアータンク等の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気を図示しない切換え弁により制御して、エアーチャック41b、42b、43b、搬送シリンダ46、及び後述する金型シリンダ73に供給し、フィンガ部41c、42c、43c等を駆動する。
なお、エアーチャック41b、42b、43bとしては、例えばSMC株式会社製のMHZL2−10Dを用いることが好ましい。
【0020】
図1及び図3に示すように、搬送補助手段6は、搬送方向D1に配置された二組の上部プーリ63と、上部プーリ63の下方かつ搬送方向D1に配置された二組の下部プーリ64と、二組の上部プーリ63にそれぞれ巻回された一対の上部ベルト61と、二組の下部プーリ64にそれぞれ巻回された一対の下部ベルト62と、搬送されるワークWを案内するガイドローラ65と、抜き形状を打ち抜かれたワークWを回収する回収箱66とを有する。
なお、上部ベルト61及び下部ベルト62は特許請求の範囲のベルト部材に相当する。
また、上部プーリ63及び下部プーリ64はそれぞれ基台21に回転可能に固定されているが、上部プーリ63に巻回された上部ベルト61の下面と下部プーリ64に巻回された上部ベルト61の上面との間隔は、ワークWの厚さよりわずかに広い程度に設定されている。
【0021】
また、二組の下部プーリ64を構成する四個の下部プーリ64のうち加工位置Pを挟んで隣り合う二個の下部プーリ64の間隔が、二組の上部プーリ63を構成する四個の上部プーリ63のうち加工位置Pを挟んで隣り合う二個の上部プーリ63の間隔より短くなるように配置されていることが好ましい。
一般的にプーリにはベルトの脱落防止用のつばが設けられているのでプーリを密着させて配置することが困難となる。さらに加工位置Pを挟んで隣り合う二個の下部プーリ64の間隔を狭くした方が、より広い範囲にわたって下部ベルト62によりワークWを下方から支持することができるので、搬送する際のワークWの破損をより効果的に抑えることができる。
【0022】
図5に示すように、第一の把持部41のエアーチャック41bは、弁切替え部23から供給される圧縮空気を駆動力として、上部ベルト61及び下部ベルト62を介して把持板41aでワークWの厚さ方向、すなわち鉛直方向E両側からワークWを挟むように把持することと、ワークWの把持を解消して開放することが可能になっている。
図示はしないが同様に、第二の把持部42のエアーチャック42bは、弁切替え部23から供給される圧縮空気を駆動力として、上部ベルト61及び下部ベルト62を介して把持板42aで鉛直方向E両側からワークWを挟むように把持することと、ワークWの把持を解消して開放することが可能になっている。また、一対の逆方向移動防止部43のエアーチャック43bは、それぞれが弁切替え部23から供給される圧縮空気を駆動力として、上部ベルト61及び下部ベルト62を介して把持板43aで鉛直方向E両側からワークWを挟むように把持することと、ワークWの把持を解消して開放することが可能になっている。
【0023】
また、把持板41a、42a、43aは図2及び図5に示すように、上部ベルト61及び下部ベルト62を介してできるだけ広い面積でワークWを把持するような形状に設定されている。すなわち、図2の平面図で示した把持板41a、42a、43aの形状は略矩形であり、搬送方向D1及び上流方向D2に往復移動する把持板41aと隣り合う把持板43aの間隔、及び把持板42aと隣り合う把持板43aの間隔を詰めた位置に配置されている。そして、図5に示すように、把持板41a、42a、43aの搬送方向D1及び鉛直方向Eにそれぞれ直交する方向の幅は、上部ベルト61、下部ベルト62及びワークWより広く設定されている。
このように、上部ベルト61及び下部ベルト62を介して、広い面積の把持板41a、42a、43aで両側からワークWを把持することができるので、素材がもろくて壊れやすいワークであっても、搬送する際のワークの破損を抑えることができる。
【0024】
図1に示すように、打抜き手段7は加工位置Pに設けられていて、組になってワークWに抜き形状を打抜く上部金型71及び下部金型72と、弁切替え部23から供給される圧縮空気により上部金型71を鉛直方向Eに往復移動させる金型シリンダ73とを備えている。
【0025】
次に、このように構成された打抜き装置によるワークの打抜き方法について説明する。図6はワークの打抜き方法のフローチャート、図7はワークの打抜き方法のタイミングチャートである。
図7の縦軸は、以下に説明するように第一の把持部41の一対のフィンガ部41c等の位置を示し、図7の横軸は経過時間を示す。そして図7中には、図6に示す各工程が行われる各期間(T1、‥、T7)を示している。
【0026】
第一の把持部41の全閉位置とは、エアーチャック41bの一対のフィンガ部41cが全閉状態となり、図5(a)に示すようにワークWを把持する位置にあることを示す。一方全開位置とは、一対のフィンガ部41cが全開状態となり、図5(b)に示すようにワークWの把持を解消して開放する位置にあることを示す。
第二の把持部42及び逆方向移動防止部43についても同様なので省略する。
また、把持部ベース44の戻り端位置とは、図2に示すように把持部ベース44に設けられたベースピン44aが第二のストッパ45bに当接する位置のことであり、把持部ベース44の送り端位置とは、図2に示す位置から把持部ベース44が搬送方向D1に移動して把持部ベース44が第一のストッパ45aに設けられたストッパピン45cに当接する位置のことである。
また、上部金型71の下降端位置とは、図1に示すように上部金型71が下降して下部金型72に当接しワークWを打抜いた位置のことであり、上部金型71の上昇端位置とは、図1に示す位置から上部金型71が鉛直方向Eの上向きに移動して上部金型71と下部金型72の間のワークWをセットするために待機している位置のことである。
【0027】
なお、ワークの打抜き方法の各工程が開始される前に、一対の逆方向移動防止部43のエアーチャック43bは全閉位置にあり、ワークWは一対の逆方向移動防止部43によりワークWが壊れない程度の弱い張力を作用させて把持されている。また、第一の把持部41及び第二の把持部42のエアーチャック41b、42bは全開位置にあり、把持部ベース44は戻り端位置に、上部金型71は上昇端位置にそれぞれ配置されている。
【0028】
まず、把持工程(ステップS1、期間T1)において、主制御部22は弁切替え部23によりエアーチャック41b、42bを全開位置から全閉位置にしてワークWを第一の把持部41及び第二の把持部42で把持する。次に、解放工程(ステップS2、期間T2)において、一対のエアーチャック43bを全閉位置から全開位置にして逆方向移動防止部43によるワークWの把持を解消する。
次に、移動工程(ステップS3、期間T3)において、主制御部22は弁切替え部23により搬送シリンダ46を駆動して把持部ベース44を介して第一の把持部41及び第二の把持部42を搬送方向D1に所定時間だけ移動させその後停止させる。これにより、把持部ベース44は第一のストッパ45aに設けられたストッパピン45cに当接した送り端位置で位置決めされ、ワークWは搬送方向D1に搬送ストロークLだけ移動する。
次に、打抜き工程(ステップS4、期間T4)において、主制御部22は金型シリンダ73により上昇端位置に配置されている上部金型71を下降端位置まで下降させてワークWを打抜いた後、再び上部金型71を上昇端位置まで上昇させる。
次に、第二の把持工程(ステップS5、期間T5)において、主制御部22は弁切替え部23により一対のエアーチャック43bを全開位置から全閉位置にしてワークWを一対の逆方向移動防止部43で把持することにより、ワークWが上流方向D2へ移動することを規制する。次に、第二の解放工程(ステップS6、期間T6)において、エアーチャック41b、42bを全閉位置から全開位置にして第一の把持部41及び第二の把持部42によるワークWの把持を解消する。
最後に、第二の移動工程(ステップS7、期間T7)において、主制御部22は搬送シリンダ46により把持部ベース44を介して第一の把持部41及び第二の把持部42を上流方向D2に所定時間だけ移動させその後停止させる。これにより、把持部ベース44に設けられたベースピン44aは第二のストッパ45bに当接した戻り端位置で位置決めされるとともに、第一の把持部41及び第二の把持部42は初期位置に戻る。
【0029】
以上、ワークの打抜き方法の各工程を説明したが、ワークWを再度打抜く必要がある場合には、上記の把持工程から第二の移動工程までを必要な回数だけ繰り返す。
こうして、ワークWを搬送方向D1へ搬送した第一の把持部41及び第二の把持部42が初期位置に戻る時、すなわち把持部ベース44が戻り端位置に戻る時にワークWの上流方向D2への移動を逆方向移動防止部43で規制しているので、ワークWを繰り返し搬送方向D1へ搬送することができる。従って、第一の把持部41から第二の把持部42までの距離よりも長いワークWであっても、ワークWに作用する張力を抑えてワークWを連続して搬送し加工位置Pに供給することができる。
【0030】
また、ただ一つの搬送シリンダ46で第一の把持部41及び第二の把持部42を搬送方向D1及び上流方向D2に移動させるので、第一の把持部41及び第二の把持部42が移動する同期を確実にとることができ、加工位置Pを通って搬送されるワークWに作用する張力を一定にするとともに、ワークWに作用する張力を抑えて搬送することが可能となる。
また、ただ一つの搬送シリンダ46で第一の把持部41及び第二の把持部42を移動させるので、打抜き装置1の構成を簡単にするとともにコストを安価に抑えることができる。
【0031】
また、ロール制御部35は、位置検出センサ32によりワーク搬送長さが所定長さより短くなったことを検出した時、すなわち重り33が図1に示す位置Rまで上昇した時に、ロール駆動モータ31を駆動させ、ロールW1からワークWを所定長さ繰り出す。従って、ワークWを連続して加工位置Pに供給することができる。
また、ワークWに作用する張力は、重り33に作用する重力とワークWの自重だけとなり、ワークWに作用する張力を抑えて搬送することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態の搬送手段4の構成から一対の逆方向移動防止部43を無くしてもよい。テープ状のワークWの長さが第一の把持部41から第二の把持部42までの距離程度の長さの場合には、ワークWを繰り返し搬送方向D1へ搬送する必要が無いからである。
【0033】
また、上記実施形態から搬送補助手段6を無くしてもよい。第一の把持部41から第二の把持部42までの距離が短い場合や、把持板41a、42a、43aにより充分広い面積でワークWを把持できる場合には、上部ベルト61及び下部ベルト62が無くても搬送する際のワークWの破損を抑えることができるからである。
【0034】
また、上記実施形態で供給手段3が有する重り33とガイドレール34を無くし、ロールW1から供給され第一の把持部41に把持されるワークWを常にたるませた状態にしておいてもよい。ロールW1から第一の把持部41までのワークWの張力にはワークW自身の重力しかかからないので、ワークWに作用する張力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の打抜き装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態の打抜き装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態の打抜き装置の要部拡大図である。
【図4】本発明の実施形態の打抜き装置のブロック図である。
【図5】図2おける切断線X−Xの断面図である。
【図6】本発明の実施形態のワークの打抜き装方法のフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態のワークの打抜き装方法のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 打抜き装置(ワークの搬送装置)
31 ロール駆動モータ
32 位置検出センサ(検出部)
35 ロール制御部
41 第一の把持部
42 第二の把持部
43 逆方向移動防止部
44 把持部ベース(伝達部)
46 搬送シリンダ(シリンダ)
61 上部ベルト(ベルト部材)
62 下部ベルト(ベルト部材)
D1 搬送方向
P 加工位置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工位置を通ってテープ状のワークを該ワークの長さ方向に搬送するワークの搬送装置において、
前記ワークの搬送方向の前記加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置され、前記ワークを把持して該ワークを前記搬送方向に搬送する第一の把持部及び第二の把持部と、
該第一の把持部及び該第二の把持部をそれぞれ往復移動させるただ一つのシリンダと、
該シリンダの出力を前記第一の把持部及び前記第二の把持部に伝える伝達部とを備えることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの搬送装置において、
所定位置に配置され、前記第一の把持部及び前記第二の把持部により前記ワークを前記搬送方向に移動させる時には該ワークの把持を解消し、前記第一の把持部及び前記第二の把持部が初期位置に戻る時には前記ワークを把持して該ワークが前記搬送方向とは逆方向へ移動することを規制する逆方向移動防止部を備えることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワークの搬送装置において、
前記第一の把持部、前記第二の把持部及び前記逆方向移動防止部は、前記ワークの厚さ方向両側から該ワークをベルト部材を介して挟むようにそれぞれ把持することを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか記載のワークの搬送装置において、
前記ワークが巻回されたロールを回転させるロール駆動モータと、
前記ロールから前記加工位置まで搬送される前記ワークの長さであるワーク搬送長さを検出する検出部と、
前記検出部により前記ワーク搬送長さが所定長さより短くなったことを検出した時に、前記ロール駆動モータを駆動させ、前記ロールから前記ワークを所定長さ繰り出すロール制御部とを備えることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項5】
加工位置を通って搬送されるテープ状のワークの該加工位置に対する上流側と下流側にそれぞれ配置され、前記ワークを把持して該ワークの長さ方向に搬送する第一の把持部及び第二の把持部と、該第一の把持部及び該第二の把持部をそれぞれ往復移動させるただ一つのシリンダと、
該シリンダの出力を前記第一の把持部及び前記第二の把持部に伝える伝達部とを備え、前記ワークを搬送方向に搬送するワークの搬送方法において、
前記ワークを前記第一の把持部及び前記第二の把持部で把持する把持工程と、
前記シリンダにより該第一の把持部及び該第二の把持部を前記搬送方向に移動させる移動工程とを備えることを特徴とするワークの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−203025(P2009−203025A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47889(P2008−47889)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】