説明

ワークの搬送装置

【課題】重りの調整が不要なワーク同士の接触を防止できる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、搬送方向下流側が下に傾斜した搬送面を有する搬送台2と、前記搬送面に対して直角な揺動軸4を中心にして揺動可能に前記搬送台2に支持され、上流側に上流側ワーク受け部5a、及び、下流側に下流側ワーク受け部5cを有する揺動体5と、を備える。前記下流側ワーク受け部5cに接触しているワーク10を前記揺動体5から離間させると、前記上流側ワーク受け部5aに接触している別のワーク10の重さによって前記揺動体5の前記上流側ワーク受け部5aが外側に揺動し、前記別のワーク10が重さによって下流側に移動する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、傾斜した搬送レールの側面に、側面に対して平行に揺動可能な案内爪を取り付けた搬送装置を開示している。この案内爪は、上流側が扇形の幅広部になっており、かつ、この幅広部には錘が取り付けられている。
【0003】
この構成を備えたことにより、ワークが案内爪の下流側部分に載置されている状態では、幅広部が搬送面上にせり出し、幅広部によって当該ワークと上流側にある別のワークとの接触が阻止される。
【0004】
ワークが搬出されると、錘の重さによって案内爪が揺動し、幅広部が下がって上記せり出しがなくなるとともに、案内爪の下流側部分が搬送面上にせり出す。そして、上流側にある別のワークが、自重によって案内爪の下流側部分を押し下げながら下流側へと移動する。当該別のワークが幅広部を通過した後は、錘の重さによって再び幅広部が搬送面上にせり出し、当該別のワークとその上流側にあるさらに別のワークとの接触が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−226117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の構成によれば、搬送されるワーク同士が接触することはなく、ワーク同士が接触することによる騒音、ワークの傷が防止される。
【0007】
しかしながら、ワークが搬出された後、上流側にある別のワークが自重によって下流へと移動するためには、当該別のワークが錘の重さに対抗して案内爪の下流側部分を押し下げる必要があり、このためには、ワークと錘との重量バランスの調整、錘の取り付け位置の調整が必要であった。
【0008】
すなわち、従来技術の構成では、搬送するワークの重さによって、搬送装置の様々な部分を調整する必要があった。
【0009】
なお、ワークが案内爪の下流側を押し下げることができない場合に搬送レールの傾斜を急にすればワークの搬送が可能になるが、搬送レールの支持台を作り直す必要があり、また、ワークが幅広部に接触した時の衝撃が大きくなるので好ましくない。
【0010】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、ワーク同士の接触を防止できる搬送装置において、上記錘の調整を不要にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様によれば、ワークの搬送装置であって、搬送方向下流側が下に傾斜した搬送面を有する搬送台と、前記搬送面に対して直角な揺動軸を中心にして揺動可能に前記搬送台に支持され、上流側に上流側ワーク受け部、及び、下流側に下流側ワーク受け部を有する揺動体と、を備え、前記下流側ワーク受け部に接触しているワークを前記揺動体から離間させると、前記上流側ワーク受け部に接触している別のワークの重さによって前記揺動体の前記上流側ワーク受け部が外側に揺動し、前記別のワークが自重によって下流側に移動する、ことを特徴とするワークの搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、下流側のワークが搬出された後、揺動体の上流側ワーク受け部が外側に揺動して上流側の別のワークが下流側に移動する。ワーク同士が接触することはなく、ワーク同士が接触することによる騒音、ワークの傷を防止することができる。従来装置で必要であったワークと錘との重量バランスの調整、錘の取り付け位置の調整は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施形態に係るワーク搬送装置の正面図である。
【図1B】本発明の実施形態に係るワーク搬送装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るワーク搬送装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1A、図1Bは、本発明の実施形態に係るワーク10の搬送装置1を示している。本実施形態ではワーク10は底面が平らな円筒形状である。
【0016】
まず、搬送装置1の構成について説明する。搬送装置1は、搬送台2、一対の搬送レール3、複数の揺動軸4、複数の揺動体5、及び、ストッパ6を備える。
【0017】
搬送台2は、水平に対して搬送方向下流側が下に傾斜した上面21を有する。
【0018】
一対の搬送レール3は、搬送台2の上面21に取り付けられ、それぞれ搬送方向に並んだ複数のローラ31を有する。一対の搬送レール3は、水平に対して搬送方向下流側が下に傾斜したワーク10の搬送面を形成する。
【0019】
複数の揺動軸4は、搬送レール3の外側において搬送台2に立設されたピンである。各揺動軸4は、ワーク10の搬送面に対して直角である。
【0020】
複数の揺動体5は、それぞれ、搬送方向に延びる略長方形の平板状部材である。各揺動体5は、中央を揺動軸4によって回転自在に支持され、搬送台2の上面21に対して平行に、かつ、揺動軸4を中心に揺動することができる。
【0021】
各揺動体5は、搬送レール3側に波形の側面を有し、側面には上流から順に、上流側ワーク受け部5a、中央凹部5b、及び、下流側ワーク受け部5cが形成される。本実施形態では、上流側ワーク受け部5a、中央凹部5b、及び、下流側ワーク受け部5cは、いずれもワーク10の側面に沿った形状、すなわち、円弧の一部である。
【0022】
隣り合う揺動体5の距離は、それらの間に配置されるワーク10が、その下流側に配置される一方の揺動体5の上流側ワーク受け部5aに接触すると同時にその上流側に配置される他方の揺動体5の下流側ワーク受け部5cに接触する距離に設定される。
【0023】
これにより、揺動体5の下流側ワーク受け部5cにワーク10が接触している状態では、当該揺動体5の上流側ワーク受け部5aの外側への揺動が規制され、各ワーク10の下流側への移動が制限される。
【0024】
ストッパ6は、搬送台2の最下流に設けられる棒状の部材であり、最下流位置にあるワーク10に接触する。ストッパ6の位置は、当該ワーク10がストッパ6に接触すると同時に最下流に配置される揺動体5の下流側ワーク受け部5cに接触する位置である。
【0025】
次に、搬送装置1の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0026】
説明の便宜上、最下流に配置される揺動体5を第1揺動体5−1、その上流側に配置される揺動体5を第2揺動体5−2という。また、図2(a)に示される3つのワーク10を下流側から順に第1ワーク10−1、第2ワーク10−2、第3ワーク10−3という。
【0027】
まず、第1ワーク10−1を搬出し、第1ワーク10−1が第1揺動体5−1の下流側ワーク受け部から離間すると(図2(a))、第2ワーク10−2の重さによって第1揺動体の上流側ワーク受け部が外側に揺動し、第2ワーク10−2が自重によって下流側に移動する(図2(b))。
【0028】
第2ワーク10−2はその後、第1揺動体5−1の中央凹部に案内されながらさらに下流へと移動する。第2ワーク10−2が第2揺動体5−2の下流側ワーク受け部から離間すると、第3ワーク10−3の重さによって第2揺動体5−2の上流側ワーク受け部も外側に揺動し、第3ワーク10−3も自重によって下流側へと移動する(図2(b)〜図2(c))。
【0029】
第2ワーク10−2及び第3ワーク10−3が下流に移動していくと、今度は第1揺動体5−1及び第2揺動体5−2の下流側ワーク受け部がそれぞれ外側に揺動し、第2ワーク10−2及び第3ワーク10−3の下流側へのさらなる移動を可能にする(図2(d))。
【0030】
最終的に、第2ワーク10−2は、ストッパ6に接触して停止し、第1揺動体5−1の下流側ワーク受け部が第2ワーク10−2に接触する。また、第3ワーク10−3は、第2揺動体5−2の上流側ワーク受け部に接触して停止する(図2(e))。
【0031】
第2ワーク10−2及び第3ワーク10−3が停止した状態は、図2(a)の状態と同じである。したがって、この状態から第2ワーク10−2が搬出されると、図2(b)〜(e)の動作が再び行われる。
【0032】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0033】
本実施形態によれば、ワーク10を搬出すれば、上流側のワーク10が順次下流側に移動する。搬送時に、ワーク10同士が接触することはなく、ワーク10同士が接触することによる騒音、ワーク10の傷は防止される。従来装置で必要であったワークと錘との重量バランスの調整、錘の取り付け位置の調整は不要である(請求項1〜3に対応する作用効果)。
【0034】
また、本実施形態のように、揺動体5を搬送方向に複数並べて配置すれば、複数のワーク10を互いに接触させることなく連続して搬送させることができる(請求項2に対応する作用効果)。
【0035】
また、本実施形態のように、揺動体5の上流側ワーク受け部5aをワーク10の側面に沿った形状としたことにより、揺動体5の上流側に配置されるワーク10の重さを上流側ワーク受け部5a全体で受け止め、揺動体5の上流側ワーク受け部5aを確実に外側に揺動させることができる(請求項3に対応する効果)。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的に限定する趣旨ではない。
【0037】
例えば、上記実施形態ではワーク10が円筒形状であるとして説明したが、ワーク10の形状はこれに限定されず、搬送装置1が機能する範囲において異なる形状、例えば、多角形であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、揺動体5を搬送レール3の両側に設けているが、搬送レール3の片側だけに揺動体5を設けても同様に機能する。すなわち、揺動体5を搬送レール3の両側に設けることは本発明の必須の構成ではない。
【0039】
また、揺動体5の数は本実施形態で示した数に限定されず、これよりも少なくても多くても構わない。揺動体5は上記の通り搬送レール3の片側にだけ設けても機能するので、揺動体5の最小数は1である。
【0040】
また、揺動軸4は搬送台2ではなく揺動体5側に立設されていてもよい。すなわち、揺動軸4と揺動体5とが一体となって揺動する構成であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態によれば、従来装置のようなワークと錘との重量バランスの調整、錘の取り付け位置の調整は不要であるが、本発明は揺動体に錘を取り付けることを排除するものではなく、必要に応じて揺動体に錘を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送装置
2 搬送台
4 揺動軸
5 揺動体
5a 上流側ワーク受け部
5b 中央凹部
5c 下流側ワーク受け部
10 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの搬送装置であって、
搬送方向下流側が下に傾斜した搬送面を有する搬送台と、
前記搬送面に対して直角な揺動軸を中心にして揺動可能に前記搬送台に支持され、上流側に上流側ワーク受け部、及び、下流側に下流側ワーク受け部を有する揺動体と、
を備え、
前記下流側ワーク受け部に接触しているワークを前記揺動体から離間させると、前記上流側ワーク受け部に接触している別のワークの重さによって前記揺動体の前記上流側ワーク受け部が外側に揺動し、前記別のワークが自重によって下流側に移動する、
ことを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの搬送装置であって、
前記揺動体は、搬送方向に並んで複数設けられ、
隣り合う揺動体の距離は、それらの間に位置する前記ワークが、下流側に配置される一方の揺動体の前記上流側ワーク受け部に接触するとともに上流側に配置される他方の揺動体の前記下流側ワーク受け部に接触する距離である、
ことを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワークの搬送装置であって、
前記上流側ワーク受け部は、前記ワークの側面に沿った形状である、
ことを特徴とするワークの搬送装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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