説明

ワークの設置装置及びワークの設置方法

【課題】コストを抑制しつつ、簡単かつ短時間でワークを設置することができ、更に適用範囲の広い、新規なワークの設置装置及びワークの設置方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基準面1fに対して略直交するように設けられたプラテン2の近傍に金型Dを昇降可能に吊り下げるクレーン手段4を備え、金型Dの下端面F1がプラテン側面2fから遠ざかるように傾いた状態で金型Dを吊り下げ、金型背面F2がプラテン側面2fと略平行になるように金型Dを設置する金型設置装置であって、金型Dには、金型Dを吊下げた状態における重心位置OMの直下よりもプラテン2側に近い位置に、金型Dの下端F1側から基準面1fに向かって突出するローラ部材5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、射出成形機の金型交換のように、基準面に対して略直交するように設けられた縦壁の近傍に、吊り上げたワークを降下させて、ワークの側面が縦壁の側面と略平行になるように設置させる、ワークの設置装置及びワークの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークを吊り下げると傾いた状態になることがあるが、こうした状態でも、ワークの側面を縦壁の側面と平行になるように当該ワークを設置できる技術としては、例えば、射出成形機の金型交換を目的に、固定側プラテンと可動側プラテンとにそれぞれ、設定の異なるショックアブソーバを設け、ワークである金型が一方のプラテンのショックアブソーバで保持されながら他方のプラテンに倒れると、他方のプラテンのショックアブソーバがその傾きを引き起こすように保持することでワークの側面を縦壁の側面と平行になるように当該ワークを設置させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−7724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術によれば、金型のようなボード状の部材を縦置きに設置しようとすると、当該ワークが固定側プラテンと可動側プラテンとの間で、振り子のように繰り返し移動しながら位置決めが行なわれる場合があり、位置決め作業に時間と手間が掛かるという問題がある。
【0005】
また、従来の技術は、2つのプラテン間を振り子のように移動しながら位置決めを行うため、基準面から起立する縦壁(プラテン)が対をなしていない場合に対応できないことがある。
【0006】
更に、従来の技術は、ショックアブソーバのような精密な器具を用いるため、コスト性に改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、コストを抑制しつつ、簡単かつ短時間でワークを設置することができ、更に適用範囲の広い、新規なワークの設置装置及びワークの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基準面に対して略直交するように設けられた縦壁の近傍にワークを昇降可能に吊り下げるクレーン手段を備え、
ワークの下端面が前記縦壁の側面から遠ざかるように傾いた状態でワークを吊り下げ、当該ワークの側面が前記縦壁の側面と略平行になるように当該ワークを設置するワークの設置装置であって、
ワークには、当該ワークを吊下げた状態における重心位置の直下、又は、当該重心位置の直下よりも縦壁側に近い位置に、ワークの下端側から基準面に向かって突出するローラ部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
こうしたローラ部材としては、例えば、ローラコンベヤのローラや玉軸受け等のように、それ自体がワークに対して移動不能に軸支されるものが挙げられるが、本発明に従えば、これに限定されるものではない。
【0010】
例えば、ワークには、ローラ部材が回転しながら移動可能な移動路を形成することができる。移動路としては、例えば、ローラ部材の側面から突出する軸部を回転可能に軸支する凹溝や貫通孔が挙げられる。この場合、ローラ部材は、ワークに対して移動路に沿って回転しながら移動することができる。
【0011】
また、本発明に従えば、ローラ部材を取り外し可能に設けることができる。こうした取り外しを実現する手段としては、例えば、ローラ部材を回転可能に保持すると共に、ワークに対して着脱可能なローラ保持部材が挙げられる。ワークに対して着脱可能にする構成としては、例えば、永久磁石、ON/OFF制御の可能な電磁石、又は、手動操作の可能なフックに代表される係止手段や、ボルト等の締結手段が挙げられる。
【0012】
或いは、ワーク又はローラ保持部材に直接、ローラ部材を着脱させるための手段を設けることもできる。こうした手段としては、例えば、上述のように、永久磁石、ON/OFF制御の可能な電磁石、手動操作の可能なフックに代表される係止手段が挙げられる。
【0013】
更に、本発明に従えば、ローラ部材を磁性体で構成すると共に、ワーク又はローラ保持部材に、前記ローラ部材を初期の位置に保持する磁石を設けることができる。
【0014】
また、本発明には、基準面に対して略直交するように設けられた縦壁の近傍に、吊り下げられたワークを降下させて、縦壁の側面とワークの側面とを略平行となるように設置させる方法であって、
ワークに、当該ワークを吊下げた状態における重心位置の直下、又は、当該重心位置の直下よりも縦壁側に近い位置に、ワークの下端面から基準面に向かって突出するローラ部材を設け、
ワークの下端面が、縦壁の側面から遠ざかるように傾いた状態で当該ワークを吊り下げ、
ワークの下降により、ローラ部材が基準面に接触すると共に、ワークを縦壁に近づけて互いの両側面が略平行となるようにローラ部材でガイドすることを特徴とするものが挙げられる。
【0015】
なお、本発明において、「縦壁の側面とワークの側面とを略平行になるように設置する」とは、縦壁の側面及びワークの側面がそれぞれ平坦面である場合のように、縦壁の側面全体及びワークの側面全体が互いに平行になるように設置されることに限定されない。例えば、縦壁の側面又はワークの側面に凹凸や曲面が形成されている場合には、縦壁の側面とワークの側面との少なくとも一部が略平行となるように設置することを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークを下ろすだけで、ワークが起立していくため、1つの縦壁の近傍にワークを設置するような状況でも、ワークの側面が縦壁の側面と平行になるように当該ワークを設置することができる。このため、ショックアブソーバ等の精密な機器を用いる必要がない。
【0017】
従って、本発明によれば、コストを抑制しつつ、簡単かつ短時間でワークを設置することができ、更に適用範囲の広い、新規なワークの設置装置及びワークの設置方法を提供することができる。
【0018】
特に、ローラ部材をワークに直接設ければ、ワークをそのまま用いることで、ワークの設置を更に簡単かつ短時間に行うことができる。
【0019】
また、ローラ部材が回転しながら移動可能な移動路をワークに設ければ、ローラ部材がワークに対して相対移動するため、ワークにローラ部材を取り付けたままでも、ワークがローラ部材に対して自由度をもって動けることで、ワークが比較的安定した状態に起立するようにローラ部材を位置決めすることができる。特に、移動路として、ローラ部材の側面から突出する軸部を回転可能に軸支する凹溝や貫通孔を採用すれば、ローラ部材をスライド可能に保持する構成が簡素化されることで、更なるコストの抑制が実現される。
【0020】
或いは、ワークに、ローラ部材を移動不能に軸支すれば、ローラ部材がワークに対して相対移動しないため、ワークを比較的容易に起立させることができる。これにより、ワークの設置を更に簡単かつ短時間に設置することができる。
【0021】
また、ローラ部材を、ワークに対してローラ保持部材を介して着脱可能にすれば、様々なワークに対応させることができる。また、こうしたローラ保持部材を設ければ、ワークの設置後に取り外すことで、ワークを直接設置することができる。
【0022】
或いは、ワークに直接、ローラ部材を着脱させるための手段を設けても、ワークの設置後にローラ部材を取り外すことで、ワークを直接設置することができる。
【0023】
更に、ローラ部材を磁性体で構成すると共に、ワーク又はローラ保持部材に磁石を設ければ、ローラ部材を磁石によって初期の位置に保持することで、ローラ部材の初期位置に対する設定が可能になる。即ち、ローラ部材の初期位置に対する設定が容易になるので、更に簡単かつ短時間でワークの位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の一形態である金型設置装置であって、金型が射出成形機内のプラテンにセットされる前の段階を模式的に示す側面図及び、本発明に従う金型におけるローラ部材周辺を示す要部斜視図である。
【図2】同形態の装置であって、吊下げられた金型の重心とローラ部材との位置関係を模式的に示す側面図である。
【図3】同形態の装置であって、金型の背面が成形機内のプラテンに設けた位置合わせ部材と接触した状態で、金型を位置合わせ部材側に押える工程を模式的に示す側面図である。
【図4】同形態の装置であって、金型を位置合わせ部材側に押えつつ引き上げた状態から、ローラ保持部材を取り除く工程を模式的に示す側面図である。
【図5】同形態の装置であって、金型を位置合わせ部材側に押えつつ金型を支持部材に載置させる工程を模式的に示す側面図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれ、本発明の他の形態である金型設置装置であって、金型が射出成形機内のプラテンにセットされる前の段階を模式的に示す側面図及び、本発明に従う金型におけるローラ部材周辺を示す要部斜視図である。
【図7】同形態の装置であって、金型の背面が成形機内のプラテンに設けた位置合わせ部材と接触した状態で、金型を位置合わせ部材側に押える工程を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一形態を詳細に説明する。
【0026】
本形態は、射出成形機の金型を交換する際に用いられる金型設置装置である。
【0027】
図面において、1は射出成形機内に配置されたベースである。ベース1の上端面1fは、ワークである金型Dが着座する水平な接地面(基準面)を構成する。ベース1からはプラテン2が起立し、このプラテン2の側面(以下、「プラテン側面」)2fは、ベース1の上端面(以下、「基準面」)1fに対してほぼ垂直な平面として構成されている。
【0028】
金型Dは、基準面1fに対して着座可能な平坦な下端面F1を有し、この下端面F1に直交するように背面(側面)F2が形成されたボード状の部材である。
【0029】
これに対し、プラテン側面2fには、金型背面F2が接触する平行出し部材3が設けられている。平行出し部材3はそれぞれ、その先端面3fがプラテン側面2fから等しい長さL0(図3参照)になるように設定されている。これにより、金型Dは、その背面F2を先端面3fに接触させると、同図に示すように、プラテン側面2fから距離L0だけ離れた、プラテン側面2fの近傍の位置に、プラテン側面2fに対して平行に位置合わせされる。
【0030】
なお、プラテン側面2fには、幅方向に延在する横溝が当該プラテン2の側面から切り欠かれるように形成されている。横溝の切り欠き部分からは、平行出し部材3が当該横溝に着脱可能に嵌合する。これにより、平行出し部材3は、必要に応じてプラテン側面2fから着脱させることができる。
【0031】
即ち、本形態のプラテン側面2fとは異なり、金型Dの背面F2に幅の異なる凹凸面が形成されている場合には、凹凸を避ける場所に先端面3fが当接するように平行出し部材3を配置する。なお、平行出し部材3は、金型Dの背面F2に凹凸形状や湾曲形状が存在するときは勿論、当該背面F2がプラテン側面2fに沿って平行な面であっても採用することができる。
【0032】
4は、金型Dの下端面F1が下側になるように、この金型Dを昇降可能に吊り下げるクレーン手段である。
【0033】
クレーン手段4は、旋回及び伸縮の可能なアーム4aを有し、アーム4aの先端側には、ワイヤやチェーンに代表される変形自在な線状部材4bが垂下している。線状部材4bは、フック等の係止手段により、金型Dの上端側に着脱可能に固定することができる。これにより、クレーン手段4は、図1(a)に示すように、アーム4aを介して線状部材4bを引き出し及び巻き取ることで、金型Dを昇降可能に吊下げ保持することができる。
【0034】
5は、金型Dの下端F1側から基準面1fに向かって突出するローラ部材である。ローラ部材5は、転動面を有する円筒形のローラ本体5aと、このローラ本体5aの側面から突出する軸部5bとを有する。
【0035】
Mは、ローラ部材5を回転可能に保持するローラ保持部材である。ローラ保持部材Mは、図1(b)に示すように、金型Dの下端面F1に着脱可能に装着される。また、ローラ保持部材Mの下端面FMには、図1(b)に示すように、この下端面FMに沿って延在する凹部nが形成されている。
【0036】
また、凹部nを形作る側面Fnにはそれぞれ、図1(b)に示すように、金型Dの背面(以下、「金型背面」)F2から前面(成形面)F3に向かって移動路Msが延在する。移動路Msは、同図に示すように、貫通孔又は凹溝として形成されている。これにより、ローラ部材5は、その軸部5aを移動路Msに挿入することで、移動路Msに沿って回転しながら移動することができる。
【0037】
即ち、本形態では、ローラ保持部材Mを取り付けた状態で金型Dが吊り下げられると、ローラ部材5は、移動路Msに沿って金型背面F2側に移動する。このため、ローラ部材5は、移動路Msの2つの終端縁のうち、金型背面F2側終端縁の長さを調整することで、図1(a)に示すように、金型Dを吊下げた状態における重心OMの位置の直下よりもプラテン2側に近い位置、又は、当該重心OMの直下の位置に、ローラ保持部材Mの下端面FMから基準面1fに向かって突出させることができる。
【0038】
金型Dに対して着脱可能にする構成としては、例えば、ローラ保持部材Mの上端面に永久磁石を設け、金型Mの下端面F1に固定するものが挙げられる。この場合、ローラ保持部材Mが金型Dの下端面F1から自重によって脱落しない程度の磁力を発生するものを選択すれば、手作業による金型Dからの着脱が可能になる。また、磁石を用いる場合には、ON/OFF制御の可能な電磁石を選択すれば、金型Dからの着脱が容易になり、作業性が向上する。
【0039】
更に、金型Dに対して着脱可能にする構成としては、手動操作の可能な係止手段が挙げられる。係止手段としては、例えば、金型Dに引っ掛かることで係止可能なフック部材が挙げられる。金型Dの凹凸は、金型Dそのものの形状として存在するものは勿論、係止手段の一部として、専用に設けたものとすることも可能である。フック部材は、その反対側に操作部を有し、ローラ保持部材Mに対して揺動可能に設ける。これにより、操作部を押し下げて、或いは、引き上げることで、金型Dからの着脱が可能になる。
【0040】
次に、本形態である設置装置を用いて、金型Dをプラテン2と略平行になるようにベース1に設置する方法を説明する。
【0041】
先ず第1の工程として、クレーン手段4を用いて金型Dを吊り上げ、金型Dの下端面F1にローラ保持部材Mを取り付ける。このとき、金型Mの重心OMが移動することで、図1(a)に示すように、金型Dの下端面F1がプラテン側面2fから遠ざかるように傾くと、ローラ部材5は、その自重により、移動路Msに沿って金型背面F2側に移動する。これにより、ローラ部材5は、ローラ保持部材Mを金型Dに取り付けて吊り上げるだけで、金型Dに対する初期位置が同図に示す位置を初期位置として位置決めされる。
【0042】
次いで、第2の工程として、クレーン手段4を用いて金型Dを基準面1fに向かって下ろす。金型Dを下ろすと、図2に示すように、プラテン2に設けられた平行出し部材3のうち、上側にある平行出し部材3の上側縁部3pと金型Mの背面F2とが接触すると共に、ローラ部材5が基準面1fに接触する。
【0043】
このとき、ローラ部材5の転動軸心Orの位置は、同図に示すように、ベース1と金型Dとの間にあって、プラテン側面2fから寸法L1だけ離れた、金型Dの吊下げ時における重心OMよりもプラテン2側に近い寸法L2だけ離れた位置の直下、又は、当該重心OMの直下となる。
【0044】
すると、上側にある平行出し部材3の上側縁部3pが支点となり、金型Mの自重の一部が水平分力としてローラ部材5に与えられるため、ローラ部材5は、基準面1fに沿って金型前面F3側に向かって転動すると共に、ローラ保持部材Mを介してローラ部材5に載せ置かれた金型Dも、ローラ部材5の転動に伴いプラテン2側に向かって移動する。
【0045】
これにより、金型Dは、図3に示すように、下側にある平行出し部材3の先端面3fに接触するまで、上側にある平行出し部材3の上側縁部3pを支点に、下側にある平行出し部材3の先端面3fに接近し、金型背面F2が平行出し部材3の先端面3fそれぞれに接触することで、プラテン側面2fに対して平行に配置されることになる。
【0046】
なお、本形態では、基準面1f上に、金型Dを載置するための支持部材(平行出し部材)6が配置される。支持部材6の上端面6fは、ローラ保持部材Mを取り外すことなく、金型Dを設置する場合には、ローラ保持部材Mの下端面FMを基準面1fに着座させたとき、金型Mの背面F2がプラテン2に対して平行になるように、例えば、平面に構成すればよいが、本形態では、従来の如く、ローラ保持部材Mを取り外して金型Dを設置することから、金型Dの下端面F1を基準面1fに着座させたとき、金型背面F2がプラテン2に対して平行になるように、例えば、平面に構成されている。
【0047】
金型Dをプラテン2に対して平行に配置した後は、第3の工程として、図3の破線に示すように、押え部材7を基準面1f上に設置する。押え部材7は、金型Dの前面F3を押える側面7fを有し、図4に示す如く、金型Dを平行出し部材3の先端面3fに対して押える。
【0048】
なお、押え部材7は、基準面1f上に着脱可能にすることができる。また、本形態では、支持部材6を予め、基準面1f上に載置したが、第3の工程の際に、押え部材7と共に支持部材6を配置することもできる。即ち、支持部材6は基準面1fに予め載置しておくことは勿論、第3の工程として、基準面1fに載置することもできる。
【0049】
これに次いで、第4の工程として、図4に示すように、クレーン手段4を用いて金型Dを若干、矢印Dの方向に吊り上げた後、同図の破線に示すように、第5の工程として、金型Dの下端面F1から当該下端面F1に取り付けたローラ保持部材Mを取り除く。
【0050】
ローラ保持部材Mを取り除いた後は、第6の工程として、図5に示すように、クレーン手段4を用いて金型Dを矢印の方向に再度下ろすことで、金型Dの下端面F1を支持部材6の上端面6fに着座させる。これにより、射出成形機内に、金型Dがプラテン2に対して平行になるように設置される。
【0051】
なお、本形態では、ベース1及びプラテン2にそれぞれ、水平出し部材3及び支持部材6をそのまま残しているが、必要に応じて、ベース1及びプラテン2からそれぞれ取り除くこともできる。
【0052】
上述のとおり、本形態によれば、金型Dを下ろすだけで、金型Dが基準面1fに沿ってプラテン2に接近しながら起立していくため、1つのプラテン2の近傍に金型Dを設置するような状況でも、金型背面F2がプラテン側面2fと平行になるように当該金型Dを設置することができる。このため、ショックアブソーバ等の精密な機器を用いる必要がない。
【0053】
従って、本形態によれば、コストを抑制しつつ、簡単かつ短時間で金型Dを設置することができ、更に適用範囲の広い、新規な金型設置装置及び金型Dの設置方法を提供することができる。
【0054】
また、本形態の如く、ローラ部材5が回転しながら移動可能な移動路Msをローラ保持部材Mに設ければ、ローラ部材5が金型Dに対して相対移動するため、金型Dにローラ部材5を取り付けたままでも、金型Dがローラ部材5に対して自由度をもって動くことができる。これにより、金型Dが比較的安定した状態に起立するようにローラ部材5を位置決めすることができる。特に、本形態の如く、移動路Msとして、ローラ部材5の軸部5bを回転可能に軸支する凹溝や貫通孔を採用すれば、ローラ部材5をスライド可能に保持する構成が簡素化されることで、更なるコストの抑制が実現される。
【0055】
或いは、本発明に従えば、他の形態として、移動路Msを設けることなく、ローラ保持部材Mに直接、ローラ部材5を移動不能に軸支することも可能である。この場合、ローラ部材5が金型Dに対して相対移動しないため、金型Dを比較的容易に起立させることができる。これにより、金型Dの設置を更に簡単かつ短時間に設置することができる。
【0056】
また、本形態の如く、ローラ部材5を、金型Dに対してローラ保持部材Mを介して着脱可能にすれば、様々な金型Dに対応させることができる。また、こうしたローラ保持部材Mを設ければ、金型Dの設置後に取り外すことで、金型Dを直接設置することができる。
【0057】
或いは、本発明に従えば、更に他の形態として、ローラ部材5を金型Dに直接設けることができる。この場合、金型Dをそのまま用いることで、金型Dの設置を更に簡単かつ短時間に行うことができる。特にこの場合、金型Dに直接、ローラ部材5を着脱させるための手段を設ければ、金型Dの設置後にローラ部材5を取り外すことで、金型Dを直接設置することができる。こうした手段としては、例えば、上述のように、永久磁石、ON/OFF制御の可能な電磁石、手動操作の可能なフックに代表される係止手段が挙げられる。
【0058】
なお、ローラ部材5は、金型Dに直接設ける場合も、ローラ保持部材Mを介して取り付けられる場合と同様、金型Mに対し、移動不能に軸支し、或いは、移動路を設けて移動可能に軸支することもできる。
【0059】
また、支持部材6は、図6及び図7に示すように、ローラ保持部材Mに対して予め一体に設けることもできる。この場合、支持部材6は、例えば、図7に示すように、金型Dが基準面1fに対して垂直に起立するよう、ローラ保持部材Mの下端から突出させることができる。
【0060】
具体例としては、金型下端面F1からローラ部材5の下端(接地点)までの寸法h5と、金型下端面F1から支持部材6の下端(接地面)までの寸法h6とが等しくなるように設定する。この場合、基準面1fが水平面であれば、当該基準面1fに対してローラ部材5及び支持部材6を接地させることにより、金型Dを基準面1fに対して垂直に起立させることができる。即ち、射出成形機内に金型Dを設置するときも、支持部材6を別体として設けた場合と同様、基準面1fとの平行度を保ちつつ、安定して立設できる。
【0061】
なお、本発明に従えば、上述した構成において、ローラ保持部材Mの下端を基点に設定した場合も同様である。また、ローラ保持部材Mを設けることなく、金型下端に直接ローラ部材5を設けた場合も同様で、この場合、支持部材6は、金型下端面F1に対して一体に設ける。
【0062】
更に、本発明に従えば、ローラ部材5を磁性体で構成すると共に、金型D又はローラ保持部材Mに磁石を設けることも可能である。この場合、ローラ部材5を磁石によって初期の位置に保持することで、ローラ部材5の初期位置に対する設定が可能になる。即ち、ローラ部材5の初期位置に対する設定が容易になるので、更に簡単かつ短時間で金型Dの位置決めを行うことができる。
【0063】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明に従えば、位置合わせ部材3を省略することで、金型背面F2を直接、プラテン側面2fに接触させることができる。また、本発明に従えば、上述した形態の各構成要素は、用途等に応じて適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明である、ワークの設置装置及びワークの設置方法は、基準面に対して略直立するように設けられた縦壁の近傍に、吊り上げたワークを降下させて、縦壁の側面とワークの側面とを略平行になるように設置するためであれば、ワークの種類は金型に限定されることなく、様々なものに採用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ベース
1f 基準面
2 プラテン
2f プラテン側面
3 平行出し部材
3f 平行出し部材の先端面
3p 平行出し部材の上側縁部(支点)
4 クレーン手段
4a アーム
4b 線状部材
5 ローラ部材
5a ローラ部材本体
5b ローラ部材軸部
6 支持部材(平行出し部材)
6f 支持部材の上端面
7 押え部材
7f 押え部材の側面
1 金型下端面
2 金型背面
3 金型前面
M ローラ保持部材下端面
M ローラ保持部材
S 移動路
M 金型重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対して略直交するように設けられた縦壁の近傍にワークを昇降可能に吊り下げるクレーン手段を備え、
ワークの下端面が前記縦壁の側面から遠ざかるように傾いた状態で前記ワークを吊り下げ、当該ワークの側面が前記縦壁の側面と略平行になるように当該ワークを設置するワークの設置装置であって、
前記ワークには、当該ワークを吊下げた状態における重心位置の直下、又は、当該重心位置の直下よりも縦壁側に近い位置に、前記ワークの下端側から前記基準面に向かって突出するローラ部材が設けられていることを特徴とするワークの設置装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ワークに、前記ローラ部材が回転しながら移動可能な移動路を形成したことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項3】
請求項1において、前記ワークに、前記ローラ部材を移動不能に軸支したことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記ワークに、前記ローラ部材を着脱させるための手段を設けたことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項5】
請求項1において、前記ローラ部材を回転可能に保持すると共に、前記ワークに着脱可能なローラ保持部材を備えることを特徴とするワークの設置装置。
【請求項6】
請求項5において、前記ローラ保持部材に、前記ローラ部材が回転しながら移動可能な移動路を形成したことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項7】
請求項5において、前記ローラ保持部材に、前記ローラ部材を移動不能に軸支したことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記ローラ保持部材に、前記ローラ部材を着脱させるための手段を設けたことを特徴とするワークの設置装置。
【請求項9】
基準面に対して略直交するように設けられた縦壁の近傍に、吊り下げられたワークを降下させて、前記縦壁の側面と前記ワークの側面とを略平行となるように設置させる方法であって、
前記ワークに、当該ワークを吊下げた状態における重心位置の直下、又は、当該重心位置の直下よりも縦壁側に近い位置に、前記ワークの下端面から前記基準面に向かって突出するローラ部材を設け、
前記ワークの下端面が、前記縦壁の側面から遠ざかるように傾いた状態で当該ワークを吊り下げ、
前記ワークの下降により、前記ローラ部材が前記基準面に接触すると共に、前記ワークを前記縦壁に近づけて互いの両側面が略平行となるように前記ローラ部材でガイドすることを特徴とするワークの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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