説明

ワークセンタリング装置

【課題】搬送ライン上を送られて来る長尺物ワークのセンタリング作用を自動的に行なわせるようにする。
【解決手段】エンドレスループを形成するものであって搬送方向に平行なように所定の間隔を有した状態で設置される2本の搬送体1、1と、2本の搬送体1、1を同期させた状態で一定の方向へ駆動する駆動装置3と、それぞれの搬送体1、1の表面側に設けられるものであって搬送体1、1の進行方向に対して所定の偏り角(α)をもって回転自在なように、かつ、搬送体1、1の進行方向に直線状に取付けられる複数の転動輪2と、搬送体1、1上を搬送されて来たワーク9の搬送方向への移動を規制するストッパ5と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアライン上を、当該コンベアラインの搬送方向に対して略直角な方向に長さ方向を有する状態で搬送されて来るワークを、当該ワークの長さ方向中心位置をコンベアラインの幅方向中心位置に自動的に合致させるようにしたワークセンタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の長尺物品の整列搬送装置としては、例えば特開2004−26444号公報記載のもの等が挙げられる。
【特許文献1】特開2004−26444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この従来のものは、主に平面視において長方形の形態を有するワークの、その長手方向中心線を、搬送コンベアラインの搬送方向と略平行なように整列させるようにしているものである。これに対して、柱、棒状部材等、径に対して長さの長い長尺物部材(長尺物ワーク)であって搬送ライン上を、搬送方向に対して直角な方向に略平行なように次々と搬送されて来る複数のワーク(長尺物ワーク)を、その長さ方向中心位置が、搬送ラインの幅方向中心線と一致するように整列させるようにした、すなわち、センタリングさせるようにした、長尺物ワークの長さ方向センタリング装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、搬送ライン上を、当該搬送ラインの搬送方向に対して直角な方向に長手方向を有するように搬送されて来るワークを、上記搬送ラインの幅方向中心線とワークの長さ方向中心位置とが一致するように整列させるワークセンタリング装置に関して、エンドレスループを形成するものであって搬送方向に平行なように所定の間隔を有した状態で設置される2本の搬送体と、当該2本の搬送体を同期させた状態で一定の方向へ駆動する駆動装置と、上記それぞれの搬送体表面側に設けられるものであって当該搬送体の進行方向に対して所定の偏り角をもって回転自在なように、かつ、搬送体の進行方向に直線状に取付けられる複数の転動輪と、上記搬送体上を搬送されて来たワークの搬送方向への移動を一時的に規制するストッパと、からなるようにするとともに、上記2本の搬送体の表面側に所定の偏り角をもって取付けられるそれぞれの転動輪の回転軸を、平面視において、上記搬送体の進行方向に向かってハの字を形成させるように設定することとした。
【0005】
また、請求項2記載の発明である第二の発明においては、請求項1記載のワークセンタリング装置に関して、上記搬送体をエンドレスチェーンにて形成させるとともに、上記転動輪を、上記エンドレスチェーンを形成するチェーン駒のところに設けるようにした構成を採ることとした。
【0006】
また、請求項3記載の発明である第三の発明においては、ワークの長さ方向中心位置と搬送ラインの幅方向中心線の位置とを自動的に一致するように整列させるワークセンタリング装置に関して、平面視においてワークの搬送方向に向かって逆ハの字を形成するように設置されるものであって所定の長さを有するとともに、それぞれが同じ回転出力を有し、更に、ワークの搬送方向に向かってワークを送り出す方向に回転運動をするように設置された一対の駆動ローラと、当該一対の駆動ローラ上を搬送されて来たワークの搬送方向への移動を一時的に規制するストッパと、からなるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0007】
第一の発明によれば、2本の搬送体上を搬送されて来たワークは、それがストッパのところに当った状態においては、ワークの下面と搬送体上に設けられた転動輪との間において搬送方向に対して直角の方向にスラスト力が働くこととなる。そして、この場合、本発明のものにおいては、2本の搬送体表面上に設けられる転動輪の回転運動によって形成されるスラスト力は相互に向き合う方向、すなわち、2本の搬送体の幅方向中心線に向かうように形成されるものである。このような状態において、上記ワークが、その長さ方向の中心位置と2本の搬送体間の幅方向中心線の位置とが、ずれた状態で送られて来た場合においては、それぞれの転動輪のところで形成されるスラスト力は、当該転動輪のところに加わるワークからの分担荷重の如何によって変動することとなる。具体的には、ワークの中心位置が2本の搬送体間の幅方向中心線位置からずれている側の搬送体の方が分担荷重が大きくなる。この分担荷重の大きくなった方が大きなスラスト力を発生させることとなる。このような状況がワークのストッパへの接触にて断続的に繰返し形成されることによって、それぞれの搬送体における転動輪のところでの分担荷重及びスラスト力は徐々に等しくなるようになり、最終的には、両転動輪間において平衡状態が形成されることとなる。その結果、ワークの長さ方向中心位置と2本の搬送体間の幅方向中心線位置とが合致するようになり、ワークの長さ方向センタリング作用が行われることとなる。このようにしてワークの長さ方向センタリングが行われた状態において、上記ストッパを解除させることによって、ワークはセンタリングされた状態で下流側へと搬送されることとなる。
【0008】
また、第二の発明においても、上記第一の発明と同様、ワークの長さ方向のセンタリング機能が発揮されることとなる。そして、このようなセンタリング機能を発揮する搬送体が既存のエンドレスチェーンを基礎に形成されることとなるので、搬送体、延いては本センタリング装置の製造コストの低減化が図られるようになる。
【0009】
また、第三の発明においては、上記のものと同様、センタリング機能を有する装置が2本の駆動ローラを主に形成されることとなり、装置全体の構成が簡略化されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態について、図1ないし図5を基に説明する。その第一の実施形態について、図1ないし図4を基に説明する。このものは、図1に示す如く、主に長尺物を形成するワーク9の長さ方向中心位置(O9)と搬送ライン10の幅方向中心線(O1O1)の位置とがずれた状態、すなわち、オフセット(E)を有する状態でワーク9が搬送ライン10上を搬送されて来た場合において、これを自動的に修正して、上記オフセット(E)をゼロ「0」の状態にするワークセンタリング装置に関するものである。そして、その具体的構成は、図1及び図2に示す如く、エンドレスループを形成するものであって搬送方向に平行なように所定の間隔を有した状態で設置される2本の搬送体1、1と、当該2本の搬送体1、1を同期させた状態で一定の方向へ駆動する駆動装置3と、上記それぞれの搬送体1、1の表面側に設けられるものであって当該搬送体1、1の進行方向に対して所定の偏り角(α)をもって回転自在なように、かつ、搬送体1、1の進行方向に直線状に取付けられる複数の転動輪2と、上記搬送体1、1上を搬送されて来たワーク9の搬送方向への移動を一時的に規制するストッパ5と、からなることを基本とするものである。このような構成からなるワークセンタリング装置が搬送ライン10の途中に設けられるようになっているものである。
【0011】
このような基本構成からなるものにおいて、上記搬送体1、1としては、本実施の形態においては、エンドレスチェーンが採用されるようになっているが、必ずしも、このようなチェーンタイプのものに限定されるものでは無い。場合によっては、エンドレスベルトまたは無限履帯等を採用するようにしても良い。なお、本実施の形態においては、搬送体1、1としてエンドレスチェーンを採用することとしたので、このようなエンドレスチェーンを駆動するものとしては、当該エンドレスチェーンと噛合うスプロケット31が用いられるようになっている(図2参照)。そして、このようなスプロケット31が、図1に示す如く、搬送ライン10の幅方向両端部のところに設けられるとともに、このような2つのスプロケット31、31を同期させた状態で駆動する電動モータ等からなる駆動装置3が、上記両端部に設けられた二つのスプロケット31、31間に設置されるようになっているものである(図3参照)。従って、このような駆動装置3の作動によって、上記搬送体を形成する2本のエンドレスチェーン1、1は、上記スプロケット31、31を介して同期した状態で駆動されることとなる。
【0012】
また、このような構成からなるエンドレスチェーン1、1を形成するチェーン駒11のところには、図2及び図3に示す如く、フリーローラ状の転動輪2が設けられるようになっているものである。なお、この転動輪2は、その回転軸(O2O2)が、例えば図1に示す如く、平面視において、搬送方向に向かって所定の偏り角(α)を有するように取付けられるようになっているものである。そして、この偏り角(α)は、左右の転動輪2、2に関して、その回転軸(O2O2)が、図1に示す如く、搬送方向に向かってハの字を形成するように、かつ、左右対称形をなすように設定されるようになっているものである。
【0013】
次に、このような構成からなる搬送体を形成するエンドレスチェーン1、1のスプロケット31、31と噛合うところには、図1及び図2に示す如く、ストッパ5が設けられるようになっている。このストッパ5は、図2に示す如く、フリーローラ状のものであって、このようなストッパ5が、図1に示す如く、エンドレスチェーン1、1の搬送方向終端部近傍部のところに、それぞれ設けられるようになっているものである。具体的には、図1に示す如く、搬送ライン10上を搬送されて来たワーク(主に長尺物ワーク)9を、ここのところで一時的に搬送を停止させるようにしているものである。なお、このストッパ5は、一定時間だけ上記搬送ライン10の表面上に突出するようになっているものであり、所定の時間経過後、すなわち、ワーク9のセンタリング作用が完了した後には、下方へ後退して、上記センタリングされたワーク9を下流側へと流すようになっているものである。
【0014】
次に、このような構成からなる本実施の形態のものについての、その作動態様について、図4を基に説明する。まず、図1に示す如く、搬送ライン10上を搬送されて来た長尺物ワーク9がストッパ5に当接(接触)した状態において、ワーク(主に長尺物ワーク)9が、例えば図4の(A)に示す如く、2本の搬送体1、1間に形成される中心線(O1O1)に対して、左側へ大きくずれた状態にあるとすると、そのときの搬送体1上に設けられる転動輪2への分担荷重は左側のもの(P1)の方が右側のもの(P2)よりも大きな値を呈することとなる。すなわち、P1>P2の関係式が成り立つ。その結果、2本の搬送体1、1間に形成される中心線(O1O1)方向へ向うスラスト力の値も、F1の方がF2よりも大きくなる。すなわち、F1>F2の関係式が成り立つ。ところで、上記ストッパ5のところに当接した状態のワーク(主に長尺物ワーク)9が、このような状況下におかれるとともに、所定の時間経過をした後には、当該長尺物ワーク9は、図4の(C)に示す如く、左右の分担荷重(P)及び左右のスラスト力(F)が、ともに等しい状態となる。すなわち、平衡状態下におかれることとなる。
【0015】
一方、これとは逆に、図4の(B)に示す如く、右側へオフセットした状態、すなわち、右側へのオフセット(E)を有した状態で搬送ライン10上を搬送されて来てストッパ5のところに当接(接触)した状態のワーク(主に長尺物ワーク)9は、右側の搬送体1を形成する転動輪2への分担荷重(P2)の方が左側の分担荷重(P1)よりも大きな値を呈することとなる。その結果、右側からのスラスト力(F2)の方が左側からのスラスト力(F1)よりも大きな値となる。すなわち、P1<P2、F1<F2の関係式が成り立つようになる。ところで、上記ワーク(主に長尺物ワーク)9がこのような状況下に置かれるとともに一定時間が経過した後には、図4の(C)に示すように、左右の転動輪2、2上において平衡状態が形成されることとなる。その結果、ワーク(主に長尺物ワーク)9のセンタリング作用が行われることとなる。
【0016】
このように本実施の形態のものにおいては、ワーク(主に長尺物ワーク)9が、図1において搬送ライン10上を、その幅方向中心線(O1O1)から左右いずれかの方向にずれた状態、すなわち、オフセット(E)を有した状態で搬送されて来たとしても、ワーク(主に長尺物ワーク)9がストッパ5のところに接触(当接)した状態において、左右の転動輪2、2によって形成されるスラスト力(F1,F2)は、いずれ平衡化して、同じ値となるように変化をすることとなる。従って、ストッパ5のところに当接した状態で所定時間が経過した後には、ワーク(主に長尺物ワーク)9の長さ方向中心位置(O9)は、2本の搬送体1、1の幅方向中心線(O1O1)位置と一致するようになる。すなわち、ワーク(主に長尺物ワーク)9のセンタリング作用が行われることとなる。そして、このようにしてワーク(主に長尺物ワーク)9のセンタリング作用が完了した後には、上記ストッパ5を下方側へ後退させて、上記センタリングされたワーク9を下流側へと搬送させるようにする。なお、このストッパ5の搬送ライン10表面上への突出操作、更にはセンタリング作用完了後におけるストッパ5の下方部への後退操作等は、別途設けられた制御手段からの指令等に基づいて自動的に行なわれるようになっているものである。
【0017】
次に、本発明に関する第二の実施形態について、図5を基に説明する。このものの特徴とするところは、搬送ライン10の幅方向空間部内に設けられるものであって、平面視において逆ハの字状に設けられた一対の駆動ローラを基礎に形成されるようになっていることである。その具体的構成は、図5に示す如く、搬送ライン10の幅方向空間部内に設けられるものであって、平面視においてワーク(主に長尺物ワーク)9の搬送方向に向かって逆ハの字を形成するように設置され、かつ、所定の長さを有するとともにワーク(主に長尺物ワーク)9の搬送方向に向かってワーク(主に長尺物ワーク)9を送り出す方向に回転運動をするように設置された一対の駆動ローラ6、6と、当該一対の駆動ローラ6、6上を搬送されて来たワーク(主に長尺物ワーク)9の搬送方向への移動を一時的に規制するものであって適宜上下動をするように形成されたストッパ5と、からなることを基本とするものである。
【0018】
このような基本構成からなるものにおいて、上記駆動ローラ6、6は、主に電動モータ66等にて駆動されるものか、あるいは内蔵モータ等にて自転運動をするように形成されたモータローラ等からなるものである。そして、このような駆動ローラ6、6は、図5に示す如く、平面視において搬送方向に向って逆ハの字を形成するように、具体的には偏り角(β)を有した状態で設置されるようになっているものである。なお、このように設置される各駆動ローラ6、6の回転出力は、左右で同じ値となるように制御されるとともに、その回転方向も、図5に示す如く、お互いに巻き込み合う方向に設定されるようになっているものである。
【0019】
このような回転運動をさせることよって、一対の駆動ローラ6、6上に搭載されたワーク(主に長尺物ワーク)9の下面には、図5に示す如く、搬送方向への分力である駆動力(W)と、中心線(O1O1)方向への分力であるスラスト力(F)とが、働くようになる。このような状態でワーク(主に長尺物ワーク)9は搬送方向へ搬送されて、ストッパ5のところに当接(接触)することとなる。このような状態においては、上記第一の実施の形態のところで述べたのと同様、具体的には、図4に示す作用に基づいて、ワーク(主に長尺物ワーク)9は、その長さ方向中心位置(O9)が、搬送ライン10の幅方向中心線(O1O1)と一致するようになる。すなわち、ワーク(主に長尺物ワーク)9のセンタリング作用が行われることとなる。そして、このようにしてワーク9のセンタリング作用が完了した状態において、上記第一の実施の形態のものと同様、上記ストッパ5を下方部に後退させて、センタリングされたワーク(主に長尺物ワーク)9を下流側へと流す(搬送させる)ようにしているものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明にかかる第一の実施形態の主要部をなす搬送体及び転動輪周りの全体構成を示す側面図である。
【図3】第一の実施形態にかかるものの搬送体の駆動機構を示す立面図及び一部断面図である。
【図4】本発明にかかるもののセンタリング機能を説明する説明図である。
【図5】本発明にかかる第二の実施形態の全体構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 搬送体(エンドレスチェーン)
10 搬送ライン
11 チェーン駒
2 転動輪
3 駆動装置
31 スプロケット
5 ストッパ
6 駆動ローラ
66 電動モータ
9 ワーク(長尺物ワーク)














【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスループを形成するものであって搬送方向に平行なように所定の間隔を有した状態で設置される2本の搬送体と、当該2本の搬送体を同期させた状態で一定の方向へ駆動する駆動装置と、上記それぞれの搬送体表面側に設けられるものであって当該搬送体の進行方向に対して所定の偏り角をもって回転自在なように、かつ、搬送体の進行方向に直線状に取付けられる複数の転動輪と、上記搬送体上を搬送されて来たワークの搬送方向への移動を規制するストッパと、からなるとともに、上記2本の搬送体の表面側に所定の偏り角をもって取付けられるそれぞれの転動輪の回転軸を、平面視において、上記搬送体の進行方向に向かってハの字を形成するように設定するようにしたことを特徴とするワークセンタリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のワークセンタリング装置において、上記搬送体をエンドレスチェーンにて形成するとともに、上記転動輪を、上記エンドレスチェーンを形成するチェーン駒のところに設けるようにした構成からなることを特徴とするワークセンタリング装置。
【請求項3】
平面視においてワークの搬送方向に向かって逆ハの字を形成するように設置されるものであって所定の長さを有するとともに、それぞれが同じ回転出力を有し、更に、ワークの搬送方向に向かってワークを送り出す方向に回転運動をするように設置される一対の駆動ローラと、当該一対の駆動ローラ上を搬送されて来たワークの搬送方向への移動を規制するストッパと、からなるようにしたことを特徴とするワークセンタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−151664(P2006−151664A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348244(P2004−348244)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(595163951)株式会社イケミズ (2)
【出願人】(597018576)東邦機械工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】