説明

ワーク位置決め装置およびそれを用いた生産システム

【課題】本発明は、1つの機種で構成され、加工エリアのフットプリントを小さくできるワーク位置決め装置を用いた生産システムを提供する。
【解決手段】水平方向に可動する第1の移動装置と、垂直方向に可動する第2の移動装置と、前記第2の移動装置の上端または下端のいずれか一方に備えられた回転装置を備え、前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する幅に、前記第2の移動装置および前記回転装置が収められたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク位置決め装置およびそれを用いた生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、製造業等において工場内のライン工程に設置してある産業用ロボットが、運ばれてきたワークに対し、正確に同じ繰り返し作業を行うためには、都度決まった位置でワークを固定する必要がある。1つのライン内で多品種のワークの固定に対応するために、従来のワーク位置決め装置は、直交3軸の機構を用いていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−263965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車産業のワークは、自動車のボディ等の場合、ワーク位置決め装置より大きいことが多いため、通常4〜8ユニットが1つのワークの固定を行なう。
しかし、複数の直交3軸のワーク位置決め装置が共同で作業を行う製造ラインでは、省スペース化することが難しく、加工エリアのフットプリントを小さくすることが難しいという問題が生じていた。
また、ワーク位置決め装置は直交3軸機構で構成されているために、ワークの進行方向に対して対向するように配置するには左右勝手違いのユニットを準備する必要もあった。
そこで本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、1つの機種で構成され、加工エリアのフットプリントを小さくできるワーク位置決め装置を用いた生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
本願の発明は、水平方向に可動する第1の移動装置と、垂直方向に可動する第2の移動装置と、前記第2の移動装置の上端または下端のいずれか一方に備えられた回転装置を備え、前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する幅に、前記第2の移動装置および前記回転装置が収められたものである。
第2の発明は、前記第1の移動装置および前記第2の移動装置の少なくともいずれか一方がモータの回転をボールねじで直動に変換する機構により駆動されるものである。
第3の発明は、前記回転装置が、中空アクチュエータから構成され、前記第2の移動装置を内通した配線が前記中空アクチュエータの中空部を通じて連通されたものである。
第4の発明は、前記回転装置の出力軸はフランジ部材を備え、前記フランジ部材が旋回することにより前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する方向について位置決めするものである。
第5の発明は、前記回転装置の出力軸はフランジ部材を備え、前記フランジ部材の初期状態の位置が前記第1の移動装置の移動方向と同方向を向いているものである。
第6の発明は、前記フランジ部材の長手方向の長さが、前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する方向の可動範囲の半分の長さで形成されているものである。
第7の発明は、ワークと、ワークを載置するワーク搬送装置と、ワークを加工する加工装置と、ワークを位置決めするワーク位置決め装置から構成され、前記ワークの移動方向について左右に前記ワーク位置決め装置が配置され、前記ワーク位置決め装置の第1の移動装置の長手方向が前記ワークの移動方向に向くように配置されたものである。
第8の発明は、前記ワーク位置決め装置が、前記ワークの重心位置が中央部となるように前記ワークの移動方向について左右に配置されたものである。
第9の発明は、前記ワーク位置決め装置が、前記ワークの移動方向について左右対称に配置されたものである。
第10の発明は、前記ワークの移動方向について左右に配置された複数台の前記ワーク位置決め装置は、前記ワークに装着する際に、同期して垂直動作するとともに、所定の位置へ位置決めするように前記ワークの位置を調整するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、1つの機種で構成され、加工エリアのフットプリントを小さくできるワーク位置決め装置を用いた生産システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態のワーク位置決め装置の平面図である。
【図2】実施形態のワーク位置決め装置の側面図である。
【図3】実施形態のワーク位置決め装置の正面図である。
【図4】実施形態の生産システムの平面図である。
【図5】実施形態の生産システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例】
【0009】
図1には実施形態の態様のワーク位置決め装置の平面図を示し、図2には実施形態の態様のワーク位置決め装置の正面図を示し、図3には実施形態の態様のワーク位置決め装置の正面図を示す。図1から図3を用いて、実施形態のワーク位置決め装置について説明する。
ワーク位置決め装置15は、床上にX軸フレーム2が固定される。X軸フレームの内部構成は、不図示のボールねじのナットにX軸可動部3が取り付けられ、X軸可動部3をX軸方向に案内するように不図示のガイドレールが配置されている。ボールねじを回転させる駆動源としては、X軸フレーム2の一端で、かつZ軸フレーム5の下部に配置されたコネクタボックス11内部にX軸モータ1が配置されている。
【0010】
Z軸フレーム5は、X軸可動部3上に配置され、かつX軸をX軸可動部3の進行方向とした場合の進行方向に対する幅方向が同一幅もしくはより小さな幅で形成されている。Z軸フレーム5の内部構成は、不図示のボールねじのナットにZ軸可動部6が取り付けられ、Z軸可動部6をZ軸方向に案内するように不図示のガイドレールが配置されている。ボールねじを回転させる駆動源としては、X軸可動部3の進行方向についてZ軸可動部6が取り付けられた反対面、Z軸フレーム5の背面側にZ軸モータ4が配置されている。
【0011】
Z軸可動部6の上端部には、国際公開WO2009/034817号公報に記載されたような中空アクチュエータ7が配置されている。中空アクチュエータ7の直径は、X軸をX軸可動部3の進行方向とした場合の進行方向に対する幅方向が同一直径もしくはより小さな直径で形成されている。
中空アクチュエータ7の出力軸にはフランジ8が取り付けられている。中空アクチュエータ7の原点位置は、フランジ8の長手方向の軸線がX軸をX軸可動部3の進行方向とした場合の進行方向の軸線と同方向となるように位置している。
また、フランジ8の幅方向の長さは、X軸をX軸可動部3の進行方向とした場合の進行方向に対する幅方向が同一幅もしくはより小さな幅で形成されている。さらに、フランジ8の長手方向の長さは、Y軸可動範囲の半分の長さで形成されている。
フランジ8の一端は中空アクチュエータ7の出力軸に固定され、他方端には、接触センサや近接スイッチ等を備えた治具が取り付けられるように開口部を有している。
【0012】
次に、配線構造について説明する。不図示の制御盤から各軸を駆動するモータ1、4および中空アクチュエータ7のケーブルがコネクタボックス11に取り付けられる。X軸ケーブルは直接X軸モータ1のコネクタ部につながり、Z軸モータ4のケーブルは、X軸フレーム2の上部に取り付けてあるX軸ケーブルベア9内を通り、Z軸モータ4のコネクタ部につながる。
中空アクチュエータ7のケーブルは、Z軸モータ4のケーブルと同様にX軸ケーブルベア9内を通り、Z軸フレーム5に固定してあるZ軸ケーブルベア10内を通り、中空アクチュエータ7のコネクタ部につながる。フランジ8に取り付ける治具を動作させるためのケーブルは、中空アクチュエータ7の中空部を通る構造となっている。
【0013】
次に、動作について説明する。
水平動作は、X軸モータ1が駆動したとき、X軸モータとX軸カップリングにより締結されたX軸ボールねじが、X軸可動部3をスライドさせる構造となっている。
昇降動作は、Z軸モータ4が駆動したとき、Z軸モータ側のプーリとZ軸ボールねじ側のプーリを締結させたベルトにより、Z軸ボールねじがZ軸可動部6を昇降させる構造となっている。
回転動作は、中空アクチュエータ7が、その上部に取り付けたフランジ8を回転させ、Y軸方向の移動を可能とする構造となっている。
【0014】
以上説明したワーク位置決め装置は、X軸フレームの幅長さよりも大きくならない装置に構成され、Y軸方向の移動を回転動作により実現したことで、フットプリントを小さくすることが可能となった。
【0015】
本実施形態では、X軸フレーム上にZ軸フレームが配置され、Z軸フレーム上に回転動作を行う中空アクチュエータおよびフランジが配置されていたが、例えば、X軸フレーム上に中空アクチュエータを配置し、中空アクチュエータ上にZ軸フレームが配置され、Z軸フレームの先端にフランジが取り付けられる構成でも実現できる。
また、X軸可動部およびZ軸可動部は、モータとボールねじの構成で説明したが、当然、リニアモータに代替することができるものである。
本実施形態は一形態であって、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0016】
図4および図5を用いて、ワーク位置決め装置を用いた生産システムの例について説明する。生産システムの平面図を図4に示し、側面図を図5に示す。ワーク14として自動車のボディを例にワーク搬送装置15で位置決めする生産システムを説明する。生産システム11は、ワーク14を搬送するワーク搬送装置15がX軸方向に延びており、X軸方向の軸線を中心として対称位置に、ワーク位置決め装置15のX軸フレーム2の長手方向がワーク14の搬送方向、X軸方向に一致するように配置されている。本実施形態では、一側面に3台でX軸方向の軸線12を中心として対称に6台で構成されている。
【0017】
ワーク位置決め装置15は、フランジ8にワーク位置決め治具17が取り付けられており、初期状態では、ワーク位置決め治具17の高さは、ワーク搬送装置16の高さよりも低い位置に配置されている。
また、ワーク位置決め装置15は、X軸フレーム2の長手方向がワーク14の搬送方向、X軸方向に一致するように配置され、中空アクチュエータ7によりフランジ8が回転した際にワーク位置決め治具17がワーク搬送装置16に接さない程度の近傍に配置されている。
【0018】
本実施形態では、対称形状のワークを用いて説明しているので、ワーク位置決め装置は対称位置に配置されるように説明したが、非対称な形状やワーク縁部に空間を備えた形状のワークの場合には、複数個のワーク位置決め装置は、適宜、重心バランスがワーク中央部になるように配置されれば良く、一側面と対称側面のワーク位置決め装置の台数がことなることでも実現できる。
【0019】
次に、動作について説明する。ワーク14はワーク搬送装置16に載置され、搬送される。ワーク搬送装置16は、例えば、コンベアや移動台車等である。ワークが所定の位置にワーク搬送装置16で搬送されると、中空アクチュエータ7が所定の角度に回転し、ワーク位置決め治具17がワーク14の下面に配置される。次に、X軸可動部3が駆動して水平動作することにより、ワーク位置決め治具17がワーク14の取り付け位置の下面に配置される。次に、Z軸可動部6が駆動して垂直動作することにより、ワーク位置決め治具17がワーク14の取り付け位置に装着される。
また、各々のワーク位置決め装置15は、必要の応じて、不図示のコントローラからの指令に従って、設定された位置にX可動部2、Z可動部6、中空アクチュエータ7が駆動することにより、ワーク14の位置が調整され、位置決めされる。
本実施形態で用いた6台のワーク位置決め装置は、ワーク位置決め治具のワークへの装着までの一連の動作を順次行い、ワーク位置決め治具がワークに装着されるZ軸可動部の動作は同期して行い、ワークへのワーク位置決め治具が、ほぼ同時に装着されるように動作するものである。その結果、ワーク14はワーク位置決め装置15により位置決めされる。
【0020】
このように動作することにより、非対称な形状やワーク縁部に空間を備えた形状のワークの場合でも、複数個のワーク位置決め装置は、適宜、重心バランスがワーク中央部になるようにワークを位置決めできる。
【0021】
ワークは位置決めされた後、周辺に配置された溶接ロボットやシーリングロボット等により作業され、作業完了後に、ワーク位置決め装置はワークから取り外され、ワーク搬送装置により次の工程へ移送される。
【0022】
以上の通り、ワーク位置決め装置を配置して、ワークを位置決めする生産システムを構成することにより、生産システムはフットプリントを小さくすることができる。また、ワーク位置決め装置が、ワークの移送方向に対する水平面内で直交する方向(Y軸方向)の移動を回転機構により実現したことで、1機種で対応することが可能となった。
【符号の説明】
【0023】
1 X軸モータ
2 X軸フレーム
3 X軸可動部
4 Z軸モータ
5 Z軸フレーム
6 Z軸可動部
7 中空アクチュエータ
8 フランジ
9 X軸ケーブルベア
10 Z軸ケーブルベア
11 生産システム
12 軸線
14 ワーク(自動車ボディ)
15 ワーク位置決め装置
16 ワーク搬送装置
17 ワーク位置決め治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に可動する第1の移動装置と、垂直方向に可動する第2の移動装置と、前記第2の移動装置の上端または下端のいずれか一方に備えられた回転装置を備え、前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する幅に、前記第2の移動装置および前記回転装置が収められたことを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記第1の移動装置および前記第2の移動装置の少なくともいずれか一方がモータの回転をボールねじで直動に変換する機構により駆動されることを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記回転装置は、中空アクチュエータから構成され、前記第2の移動装置を内通した配線が前記中空アクチュエータの中空部を通じて連通されたことを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記回転装置の出力軸はフランジ部材を備え、前記フランジ部材が旋回することにより前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する方向について位置決めすることを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
前記回転装置の出力軸はフランジ部材を備え、前記フランジ部材の初期状態の位置が前記第1の移動装置の移動方向と同方向を向いていることを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項6】
前記フランジ部材の長手方向の長さは、前記第1の移動装置の移動方向に水平面内で直交する方向の可動範囲の半分の長さで形成されていることを特徴とする請求項4記載のワーク位置決め装置。
【請求項7】
ワークと、ワークを載置するワーク搬送装置と、ワークを加工する加工装置と、ワークを位置決めするワーク位置決め装置から構成され、
前記ワークの移動方向について左右に前記ワーク位置決め装置が配置され、
前記ワーク位置決め装置の第1の移動装置の長手方向が前記ワークの移動方向に向くように配置されたことを特徴とする生産システム。
【請求項8】
前記ワーク位置決め装置は、前記ワークの重心位置が中央部となるように前記ワークの移動方向について左右に配置されたことを特徴とする請求項7記載の生産システム。
【請求項9】
前記ワーク位置決め装置は、前記ワークの移動方向について左右対称に配置されたことを特徴とする請求項7記載の生産システム。
【請求項10】
前記ワークの移動方向について左右に配置された複数台の前記ワーク位置決め装置は、前記ワークに装着する際に、同期して垂直動作するとともに、所定の位置へ位置決めするように前記ワークの位置を調整することを特徴とする請求項7記載の生産システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−121111(P2012−121111A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275312(P2010−275312)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】