説明

ワーク供給装置及びその表裏整合分離装置

【課題】ワーク相互間の断続的な擦れや衝突を防止可能とするワーク供給装置を提供する。
【解決手段】複数のベース・プレートの分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせる前進ステージ部9と、分離及び表裏姿勢の整合が行われたベース・プレートを各別に保持して回転による平面姿勢の整合を行いながら搬送供給するピック・アップ部11とを備え、前進ステージ部9は、複数のベース・プレートを載置させる載置面21を有すると共に該載置面21を変位自在に可動支持されたステージ部本体15と、ステージ部本体15を単衝撃により変位駆動し複数のベース・プレートに浮上力と搬送方向の移動力を付与して前記分離及び反転動作を行わせる駆動部17とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークを分離及び姿勢整合しながら搬送供給するワーク供給装置及びその表裏整合分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の製品を組み立てる生産ラインにおいては、小片状の部品(ワーク)の供給にパーツ・フィーダー(ワーク供給装置)を用いることが多い。
【0003】
一般的なパーツ・フィーダーとしては、例えば、振動ボウルを備えたものがある。このパーツ・フィーダーでは、振動ボウルに多数の部品を投入して高速の連続微細振動を加えると、その振動によって多数の部品が自動的に分離及び姿勢整合しつつ搬送供給できるようになっている。
【0004】
しかし、かかるパーツ・フィーダーでは、振動ボウルに多数の部品を投入して、これに連続微細振動を加える性質上、振動ボウルと部品との間並びに部品相互間で断続的な擦れや衝突が発生し、これによる微細な塵埃であるパーティクル(以下、「コンタミ」とも称することがある)の発生が避けられないものとなっていた。
【0005】
このようなパーツ・フィーダーは、例えば、磁気ディスク装置に取り付けられるヘッド・サスペンションの生産ラインにおいても用いられている。
【0006】
ところが、ヘッド・サスペンションは、近年の磁気ディスク装置の高密度、高容量化に伴って洗浄度が高く求められるようになっており、その生産ライン上で発生するパーティクルも無視できない状況となってきている。
【0007】
かかる状況に鑑みて、例えば特許文献1及び2のように、パーティクルを低減可能なパーツ・フィーダーも提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1及び2に記載のものでも、振動ボウル内での部品相互の断続的な擦れや衝突を防止することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−238912号公報
【特許文献2】特開2003−095420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、複数のワーク相互間の断続的な擦れや衝突を防止することが困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ワーク相互間の断続的な擦れや衝突を防止するために、複数のワークを分離及び姿勢整合して搬送供給するワーク供給装置であって、前記複数のワークの分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせる表裏整合分離部と、前記分離及び表裏姿勢の整合が行われたワークを各別に保持して回転による平面姿勢の整合を行いながら搬送供給する平面整合供給部とを備え、前記表裏整合分離部は、前記複数のワークを載置させる載置面を有すると共に該載置面を変位自在に可動支持された可動部と、前記可動部を単衝撃により変位駆動し前記複数のワークに浮上力と該浮上力に対する交差方向の移動力を付与して前記分離及び反転動作を行わせる駆動部とを備えたことを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のワークに対する連続微振動を行わないので、ワーク相互間の断続的な衝突や擦れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パーツ・フィーダーを示す概略斜視図である(実施例1)。
【図2】ベース・プレートを示す平面図である(実施例1)。
【図3】図1のパーツ・フィーダーの前進ステージ部を示す側面図である(実施例1)。
【図4】図3の前進ステージ部の一部省略底面図である(実施例1)。
【図5】ステージ部本体の突き上げ時のベース・プレートを概念的に示す側面図である(実施例1)。
【図6】ベース・プレートの画像処理に対する概念図である(実施例1)。
【図7】ベース・プレートの洗浄度の実験結果を比較例と共に示すグラフである(実施例1)。
【図8】変形例に係るパーツ・フィーダーの前進ステージ部の要部側面図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ワーク相互間の断続的な擦れや衝突を防止するという目的を、単衝撃による複数のワークの分離及び表裏姿勢の整合と、ワークを各別に保持した搬送供給時に回転による平面姿勢の整合とを行うことで実現した。
【0015】
実施形態としては、駆動部が、可動部を突き上げて該突き上げの単衝撃により少なくとも浮上力を付与する上下駆動部と、前記可動部を前記載置面に沿った方向に前後駆動し該前後駆動の単衝撃により前記移動力を付与する前後駆動部を備える。
【0016】
可動部は、一端側を支点に他端側が回動変位自在に支持され、上下駆動部は、可動部の他端側を突き上げる構成とするのが好ましい。
【実施例1】
【0017】
[パーツ・フィーダーの構成]
図1は、パーツ・フィーダーを示す概略斜視図である。 図1のパーツ・フィーダー1は、複数のワークを分離及び姿勢整合して搬送供給するワーク供給装置である。本実施例では、例えば磁気ディスク装置に取り付けられるヘッド・サスペンションの生産ラインに用いられ、ヘッド・サスペンションのベース・プレートをワーク(部品)として搬送供給する。ただし、パーツ・フィーダー1は、ヘッド・サスペンションの生産ライン以外にも適用可能であり、他の小片状部品をワークとして搬送供給することも可能である。
【0018】
ここで、ワークであるベース・プレート3について図2を参照して説明する。図2(a)〜(d)は、ベース・プレートを示す平面図である。
【0019】
ベース・プレート3は、板状の本体部5及び本体部5の一側面から突出した環状のボス部7を備えている。従って、ベース・プレート3は、ボス部7の有無によって表裏が相違する。なお、本実施例では、ベース・プレート3のボス部7側を表面とする。ベース・プレート3の重心は、本体部5及びボス部7を含めた全体において、板厚方向の裏面側に偏倚している。
【0020】
なお、ベース・プレート3は、ヘッド・サスペンションの大きさや機能等に応じたバリエーションがあり、本実施例のワークとしては、図2(a)〜(d)のように、本体部5の形状が異なるバリエーションがある。
【0021】
このようなベース・プレート3を搬送するパーツ・フィーダー1は、図1のように、表裏整合分離部(表裏整合分離装置)としての前進ステージ部9と、平面整合供給部としてのピック・アップ部11とを備えている。
(前進ステージ部)
図3は、図1のパーツ・フィーダーの前進ステージ部を示す側面図、図4は、図3の前進ステージ部の一部省略底面図である。
【0022】
前進ステージ部9は、図1、図3及び図4のように、複数のベース・プレート3の分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせるものである。この前進ステージ部9は、部品投入ボックス13と、可動部としてのステージ部本体15と、駆動部17とを備えている。
【0023】
部品投入ボックス13は、複数のベース・プレート3が投入されるものであり、搬送方向の後端に位置している。部品投入ボックス13の上方には、部品投入用の開口が設けられ、その搬送方向の前方側は、開閉によって内部のベース・プレート3をステージ部本体15上に所定量排出するようになっている。なお、部品投入ボックス13の開閉は、図示しないコントローラの制御によって所定間隔毎に行われる。
【0024】
ステージ部本体15は、例えばステンレス等の金属からなる矩形板状に形成されている。このステージ部本体15は、その長手方向が搬送方向に沿って略水平に配置されている。ステージ部本体15の一端側は、後述する駆動プレート27側に回転自在に軸支持されている。これにより、ステージ部本体15は、一端側を支点に他端側が回動変位自在となっている。
【0025】
ステージ部本体15の幅方向両側には、上方に向けて突出する突条のストッパー19a,19bが設けられている。これらのストッパー19a,19b間には、載置面21が区画形成されている。
【0026】
載置面21は、ベース・プレート3を載置させるものであり、ステージ部本体15の上面からなる。この載置面21は、例えばサンドブラスト等によってベース・プレート3の表裏面よりも粗い梨地状となっている。従って、載置面21は、その表面粗度がベース・プレート3の表面粗度とは異なる構成となっている。なお、載置面21は、ベース・プレート3の表理面よりも滑らかにしてもよい。
【0027】
ステージ部本体15の下面側には、他端側に凸球面部23が突設されている。また、ステージ部本体15の他端部下方には、ベース・プレート3の回収用のガーター25が配置されている。
【0028】
このようなステージ部本体15は、駆動プレート27及びリニア・ガイド29を介してベース部31に対して搬送方向前後に移動変位自在に支持されている。
【0029】
駆動プレート27は、ステージ部本体15の下面側に沿って対向配置されている。駆動プレート27の一端には、ステージ部本体15を軸支持する軸支持部33が設けられている。駆動プレート27の他端は、ステージ部本体15の長手方向の中間部に位置し、ステージ部本体15の他端側下面を露出させている。
【0030】
この駆動プレート27が、リニア・ガイド29を介してベース部31に移動変位自在に支持されている。リニア・ガイド29は、例えばガイド・レール及びガイド・レールにスライド係合するスライダ等からなる。
【0031】
前記駆動部17は、ステージ部本体15を単衝撃により変位駆動し、複数のベース・プレート3に浮上力と浮上力に対する交差方向である搬送方向の移動力を付与する。この駆動部17は、上下駆動部35と、前後駆動部37とを備えている。
【0032】
上下駆動部35は、例えばエアシリンダ装置からなり、空気圧(「空圧」とも称する)によりシリンダ39に対してロッド部41が伸縮する。上下駆動部35への空気の供給は、図示しないポンプによって行われ、ポンプと上下駆動部35との間には、図示しない空圧レギュレータが介設されている。
【0033】
これにより、上下駆動部35の動作の安定化と空圧の微調整を可能にしている。空圧調整は、図示しないコントローラによるポンプ及び空圧レギュレータの制御を通じて行われる。なお、上下駆動部35は、油圧シリンダ装置等であってもよい。
【0034】
上下駆動部35は、ステージ部本体15の他端側下方に上下方向に沿って配置されている。この上下駆動部35は、ロッド部41の先端部41aが伸出することで、ステージ部本体15の凸球面部23に衝突する。
【0035】
従って、上下駆動部35は、ステージ部本体15の他端側を突き上げ、このときの単衝撃によりステージ部本体15を回動変位させる。
【0036】
なお、上下駆動部35は、カバーにより覆うことで、そこからの発塵によるコンタミを防止することができる。特に、上下駆動部35では、ロッド部41がステージ部本体15に対して突き上げ衝突することから、その際のコンタミを防止できる点で有効である。
【0037】
前後駆動部37は、モータ43と、カム機構45とからなる。
【0038】
モータ43は、例えばサーボ・モータからなり、回転出力を行う出力軸47を備えている。出力軸47は、駆動プレート27の下方に上下方向に沿って配置さている。モータ43の出力は、図示しないコントローラによって制御される。なお、モータ43としては、ステッピング・モータ等を用いることもできる。
【0039】
このモータ43の出力軸47と駆動プレート27との間には、カム機構45が設けられている。
【0040】
カム機構45は、図3及び図4のように、モータ43の出力軸47に一体に取り付けられたカム・アーム49を備えている。カム・アーム49の先端側には、カム・フォロア軸51が一体に設けられている。カム・フォロア軸51は、カム・アーム49に対して上方に突設され、先端側がカム・フォロア溝53内に係合している。カム・フォロア溝53は、駆動プレート27の下面に幅方向に沿って設けられた凹条溝からなる。
【0041】
このカム機構45は、モータ43の回転駆動力により、カム・アーム49先端側のカム・フォロア軸51がモータ43の出力軸47周りに回転する。これにより、カム・フォロア軸51がカム・フォロア溝53内をスライドしながら搬送方向前後に押圧し、モータ43の回転駆動力を搬送方向の前後駆動力に変換する。
【0042】
従って、前後駆動部37は、駆動プレート27を介してステージ部本体15を搬送方向で前後移動変位させる。本実施例では、ステージ部本体15の前後移動変位が、その回動変位と同時に行われる。
【0043】
なお、前後駆動部37も、上下駆動部35と同様にカバーで覆うことで、そこからの発塵によるコンタミを防止することができる。
(ピック・アップ部)
ピック・アップ部11は、図1のように、撮像部55と、判断部としてのピック・アップ・コントローラ57と、保持搬送部としてのピック・アップ・アーム59とからなっている。
【0044】
撮像部55は、例えばCCDカメラ等からなり、前進ステージ部9のステージ部本体15の載置面21を上方から撮像する。本実施例では、ベース・プレート3のピック・アップ領域となる載置面21の他端側を撮像する。撮像部55の撮像画像は、ピック・アップ・コントローラ57に入力される。
【0045】
ピック・アップ・コントローラ57は、コンピューター等の情報処理装置からなり、撮像部55の撮像画像に基づいて載置面21上のベース・プレート3の表裏姿勢及び平面姿勢並びにベース・プレート3相互間の重なりを判断する。判断の際には、撮像画像に対して、載置面21上のベース・プレート3に対する領域分割処理やエッジ検出処理等の画像処理を行う。かかる判断結果に基づき、ピック・アップ・コントローラ57は、ピック・アップ・アーム59を駆動制御する。
【0046】
ピック・アップ・アーム59は、先端にベース・プレート3を吸引保持する軸状に形成されている。このピック・アップ・アーム59は、軸周り回転自在に支持されると共に、搬送方向(図1のX方向)、搬送交差方向(図1のY方向)、及び上下方向(図1のZ方向)に3次元移動自在に支持されている。
【0047】
ピック・アップ・アーム59は、後述するように、表裏姿勢の整合がなされ且つ重なりのないベース・プレート3を吸引保持し、搬送先である溶接治具61に対する搬送供給を行うと共に平面姿勢に応じてベース・プレート3の回転を行う。
[パーツ・フィーダーの作用]
本実施例のパーツ・フィーダー1では、まず図1の前進ステージ部9の部品投入ボックス13内に多数のベース・プレート3を投入しておき、部品投入ボックス13の開閉動作によりステージ部本体15上に複数(多数)のベース・プレート3を所定量供給する。なお、供給量は、後述する画像処理を円滑に行える範囲に設定される。この供給量設定は、次述する複数のベース・プレート3の分離及び表裏姿勢の整合動作時に、コンタミの発生も抑制できる。
【0048】
次いで、ステージ部本体15上で、複数のベース・プレート3を分離させると共に表裏姿勢を整合させる。具体的には、図3のように、駆動部17の上下駆動部35と前後駆動部37とによりステージ部本体15を回動変位させると同時に前後方向に移動変位させる。
【0049】
回動変位の際は、上下駆動部35のロッド部41を伸出させてステージ部本体15を突き上げる。この突き上げによる単衝撃で、ステージ部本体15を回動変位させてステージ部本体15上の複数のベース・プレート3に浮上力を付与する。
【0050】
図5は、ステージ部本体の突き上げ時のベース・プレートを概念的に示す側面図である。
【0051】
ステージ部本体15の突き上げによって浮上力が付与されると、ベース・プレート3がステージ部本体15の載置面21上で浮上しようとする。
【0052】
このとき、図5(a)のようにベース・プレート3の表面側を上方に向けた状態(表裏整合状態)では、ベース・プレート3が裏面全体を安定的に支持され、且つベース・プレート3の重心が低いので支持状態が更に安定している。このため、ベース・プレート3が載置面21上から浮上しにくい、又は浮上しても回転しないことになる。
【0053】
これに対し、図5(b)のようにベース・プレート3の裏面側を上方に向けた状態(表裏不整合状態)では、ベース・プレート3がボス部7の存在により載置面21上で傾斜する。このため、ベース・プレート3は、点接触の不安定な支持になると共にベース・プレート3の重心が高いことからも支持状態が更に不安定となる。
【0054】
この不安定なベース・プレート3は、浮上力の付与によって載置面21上から浮上する。浮上したベース・プレート3は、図5(c)のように、その重心に応じて裏面側を下方とするように反転してこの状態で載置面21上に降着する。
【0055】
このため、複数のベース・プレート3は、反転動作を通じて表裏姿勢が表面を上方に向けて整合されることになる。
【0056】
この表裏姿勢の整合時には、上下駆動部35を動作させる空圧が空圧レギュレータを介して微調整され、ベース・プレート3の姿勢整合機能(整列機能)を安定させることができる。
【0057】
また、空圧の微調整により、ステージ部本体15に対する必要以上の衝撃を抑えることができ、パーツ・フィーダー1の装置寿命を延ばすことができる。
【0058】
一方、移動変位の際は、前後駆動部37のモータ43に駆動出力を行わせてステージ部本体15を前後駆動する。この前後駆動によりステージ部本体15が前後移動変位し、このときの単衝撃でステージ部本体15上の複数のベース・プレート3に搬送方向の前方側への移動力を付与する。
【0059】
具体的には、ステージ部本体15は、搬送方向前方側への移動により載置面21上のベース・プレート3に移動力を付与してスライド移動させ、次の搬送方向後方側への移動によりベース・プレート3を移動先で静止させる。
【0060】
この移動により、複数のベース・プレート3を相互に分離させることができる。なお、ベース・プレート3の分離には、ベース・プレート3の浮上も寄与するが、ベース・プレート3の移動と比較して寄与率は少ない。
【0061】
また、浮上したベース・プレート3に対しては、移動力が回転させるようにも作用し、反転動作を確実に行わせることができる。
【0062】
なお、上記動作は、表裏姿勢の整合時にベース・プレート3の重なり等によって浮上しない場合や浮上しても反転しない場合もあり、分離時にベース・プレート3のかたまり具合等によっては不十分となることもある。
【0063】
これは、動作が数回繰り返されることで解消される。ただし、繰り返しによっても解消できない場合は、ベース・プレート3が移動することでステージ部本体15の他端側から落下し、図1のガーター25に回収される。このため、ベース・プレート3の移動量とステージ部本体15の長さとの設定により、ベース・プレート3に対する上記動作の繰り返し回数を調整できる。
【0064】
こうして分離及び表裏姿勢の整合動作が行われた後(繰り返し行われる場合は各繰り返し動作の後)は、ピック・アップ部11によりベース・プレート3を各別に保持して溶接治具61に搬送供給しながら平面姿勢を整合させる。
【0065】
この際には、まず撮像部55がステージ部本体15の載置面21他端側を撮像する。撮像の際には、載置面21がベース・プレート3の表裏面よりも粗い梨地状であるため、両者間のコントラストを明確にすることができる。
【0066】
この撮像画像はピック・アップ・コントローラ57に送られ、ピック・アップ・コントローラ57は画像処理を行ってベース・プレート3の表裏姿勢及び平面姿勢並びにベース・プレート3相互間の重なりを判断する。
【0067】
図6は、ベース・プレートの画像処理に対する概念図である。なお、図6は、図2(a)のベース・プレート3に対するものを示している。
【0068】
図6のように、画像処理においては、各ベース・プレート3が位置する矩形領域R内において、ベース・プレート3のエッジが抽出されている。この処理画像に基づき、ベース・プレート3のボス部7の有無から表裏姿勢を判断し、矩形領域Rの傾きからベース・プレート3の平面姿勢を判断し、矩形領域Rの重なりの有無からベース・プレート3相互の重なりの有無を判断する。
【0069】
判断後は、表面側が上方に向けられ、且つ重なりのないベース・プレート3のみを搬送対象として設定する。その後、搬送対象のベース・プレート3は、ピック・アップ・コントローラ57の駆動制御により、ピック・アップ・アーム59に吸引保持され、搬送先である溶接治具61に対して搬送供給される。このとき、ベース・プレート3は、判断された平面姿勢に応じて回転されて平面姿勢の整合が行われる。
【0070】
このように、本実施例のパーツ・フィーダー1では、上下及び搬送方向前後の単衝撃によって複数のベース・プレート3を分離させ表裏姿勢の整合を行わせ、且つ分離及び表裏姿勢の整合が行われたベース・プレート3ワークを各別に保持して回転による平面姿勢の整合を行いながら搬送供給する。
【0071】
従って、パーツ・フィーダー1では、連続微振動を行わないので、ベース・プレート3相互間の断続的な衝突や擦れによるコンタミの発生を抑制することができる。
[実験結果]
図7は、ベース・プレートの洗浄度の実験結果を比較例と共に示すグラフである。なお、縦軸はパーティクル数を示し、横軸はパーツ・フィーダーの動作時間(分)を示している。
【0072】
比較例には、ステンレスからなる振動ボウルを用いたもの(比較例1)、さらにウレタン・コートをした振動ボウルを用いたもの(比較例2)、ウレタン・コートに代えてフッ素コートをした振動ボウルを用いたもの(比較例3)を採用した。
【0073】
図7から明らかなように、本実施例では、比較例1及び2と比較して大幅にコンタミの発生を抑制することができた。比較例3と比較しても、本実施例では、コンタミの発生を抑制することができた。
【0074】
ただし、比較例3においても、比較例1及び2に対して大幅にコンタミの発生を抑制することはできる。しかし、比較例3の場合は、フッ素コートがパーツ・フィーダーの長期使用によって剥がれコンタミとなる。このため、比較例3では、長期信頼性に問題があり、実際の生産には使用できない。
【0075】
これに対し、本実施例では、コーティングを行わないので、比較例3に対してコンタミの発生を抑制できながら長期信頼性をも確保することができる。
[実施例1の効果]
本実施例のパーツ・フィーダー1では、複数のベース・プレート3の分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせる前進ステージ部9と、分離及び表裏姿勢の整合が行われたベース・プレート3を各別に保持して回転による平面姿勢の整合を行いながら搬送供給するピック・アップ部11とを備え、前進ステージ部9は、複数のベース・プレート3を載置させる載置面21を有すると共に該載置面21を変位自在に可動支持されたステージ部本体15と、ステージ部本体15を単衝撃により変位駆動し複数のベース・プレート3に浮上力と搬送方向の移動力を付与して前記分離及び反転動作を行わせる駆動部17とを備えた。
【0076】
すなわち、パーツ・フィーダー1では、単衝撃による複数のベース・プレート3の分離及び表裏姿勢の整合を行い、ベース・プレート3を各別に保持して搬送供給する際に回転による平面姿勢の整合を行う。
【0077】
従って、パーツ・フィーダー1では、複数のベース・プレート3に対する連続微振動を行うことなく、ベース・プレート3相互間の衝突や擦れによるコンタミの発生を抑制することができる。
【0078】
しかも、ベース・プレート3は、裏面側に重心が偏倚しているため、パーツ・フィーダー1は、裏面側を上方に向けたベース・プレート3のみを浮上により反転させて表裏姿勢に整合させることができる。
【0079】
また、駆動部17は、ステージ部本体15を突き上げて該突き上げの単衝撃により少なくともベース・プレート3に浮上力を付与する上下駆動部35を備えたので、構造の簡素化を図ることができながら、複数のベース・プレート3に対して確実に浮上力を付与することができる。
【0080】
本実施例では、ステージ部本体15が、一端側を支点に他端側が回動変位自在に支持され、上下駆動部35が、ステージ部本体15の他端側を突き上げるので、より構造の簡素化を図ることができる。
【0081】
また、駆動部17は、ステージ部本体15を載置面21に沿った方向に前後駆動し該前後駆動の単衝撃によりベース・プレート3に移動力を付与する前後駆動部を備えたので、複数のベース・プレート3に対して確実に移動力を付与することができる。
【0082】
しかも、本実施例では、ステージ部本体15に対して上下駆動部35による突き上げと前後駆動部37による前後駆動とを同時に行うので、タクトアップを図ることができると共に浮上したベース・プレート3の反転動作を確実に行わせることができる。
【0083】
なお、ステージ部本体15に対する突き上げと前後駆動とは、多少時間差を設けてもタクトアップやベース・プレート3の反転動作を確実に行わせることができるので、この範囲内において行うことを同時に含めることができる。
【0084】
ピック・アップ部11は、ステージ部本体15の載置面21を撮像する撮像部55と、該撮像部55の撮像画像に基づいて少なくともベース・プレート3の表裏姿勢及び平面姿勢を判断するピック・アップ・コントローラ57と、その判断に基づき表裏姿勢の整合がなされたベース・プレート3を保持して搬送供給を行うと共に平面姿勢に応じてベース・プレート3の回転を行わせるピック・アップ・アーム59とを備えた。
【0085】
従って、本実施例では、分離及び表裏姿勢の整合が行われたベース・プレート3のみに対して平面姿勢の整合を行って搬送供給することができる。このため、搬送先である溶接治具61に対する姿勢整合を確実に行わせることができる。
【0086】
ピック・アップ・コントローラ57は、撮像画像に基づいてベース・プレート3相互間の重なりを判断し、ピック・アップ・アーム59は、表裏姿勢の整合がなされ且つ重なりがないベース・プレート3に対して搬送供給を行う。
【0087】
従って、本実施例では、重なりのあるベース・プレート3に対する特別な動作をなくしてタクトアップを図ることができる。このようにしても、本実施例では、その後の分離及び表裏姿勢の整合動作の繰り返しにより、ベース・プレート3の重なりを解消できる。
【0088】
ステージ部本体15の載置面21は、その表面粗度がベース・プレート3の表面粗度とは異なる。本実施例では、ステージ部本体15の載置面21が、ベース・プレート3の表裏面よりも粗い梨地状である。
【0089】
従って、本実施例では、撮像部55による撮像の際に、ベース・プレート3と載置面21とのコントラストを明確にすることができ、画像処理の負担を低減することができながら、ベース・プレート3の姿勢判断を確実に行わせることができる。
[変形例]
図8は、変形例に係るパーツ・フィーダーの前進ステージ部の要部側面図である。
【0090】
実施例1のパーツ・フィーダー1では、図8のように、ステージ部本体15を傾斜配置する変形をしてもよい。
【0091】
この場合は、ステージ部本体15の突き上げにより、浮上力と移動力との双方を付与することができ、前後駆動部37を省略して構造の簡素化を図ることができる。
【0092】
加えて、変形例でも、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
[その他]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の変更が可能である。
【0093】
例えば、上下駆動部35は、ロッド部41をステージ部本体15の下面に結合して、突き上げずにステージ部本体15を駆動する構成としてもよい。この場合は、上下駆動部35の設定により、突き上げ時と同等の加速度でベース・プレート3に浮上力を付与できるようにすればよい。
【0094】
また、ステージ部本体15は、一端側が回転自在に支持されていたが、これに代えて全体として上下に移動自在に支持してもよい。
【0095】
また、前後駆動部は、上下駆動部35と同様に、ステージ部本体15を突き出す構成としてもよい。この場合は、弾性体によってステージ部本体15が初期位置に復帰するように付勢すればよい。
【0096】
また、ステージ部本体15は、幅方向に振動させて、前後駆動によるベース・プレート3の分離を補助する構成としても良い。
【0097】
また、上記実施例では、ステージ部本体15に対して上下駆動部35による突き上げと前後駆動部37による前後駆動とを同時に行っていたが、別々に行ってもよい。具体的には、突き上げ又は前後駆動の何れか一方が完了した後に、同他方を行わせてもよい。
【0098】
また、上記実施例では、重心が板厚方向で裏面側に偏倚したベース・プレート3をワークとしていたが、重心が板厚方向の中心に位置するものをワークとすることも可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 パーツ・フィーダー(ワーク供給装置)
3 ベース・プレート(ワーク)
5 本体部
7 ボス部
15 ステージ部本体(可動部)
21 載置面
35 上下駆動部
37 前後駆動部
55 撮像部
57 ピック・アップ・コントローラ(判断部)
59 ピック・アップ・アーム(保持搬送部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを分離及び姿勢整合して搬送供給するワーク供給装置であって、
前記複数のワークの分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせる表裏整合分離部と、
前記分離及び表裏姿勢の整合が行われたワークを各別に保持して回転による平面姿勢の整合を行いながら搬送供給する平面整合供給部とを備え、
前記表裏整合分離部は、前記複数のワークを載置させる載置面を有すると共に該載置面を変位自在に可動支持された可動部と、前記可動部を単衝撃により変位駆動し前記複数のワークに浮上力と該浮上力に対する交差方向の移動力を付与して前記分離及び反転動作を行わせる駆動部とを備えた、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク供給装置であって、
前記駆動部は、前記可動部を突き上げて該突き上げの単衝撃により少なくとも前記浮上力を付与する上下駆動部を備えた、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項3】
請求項2記載のワーク供給装置であって、
前記可動部は、一端側を支点に他端側が回動変位自在に支持され、
前記上下駆動部は、前記可動部の他端側を突き上げる、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載のワーク供給装置であって、
前記駆動部は、前記可動部を前記載置面に沿った方向に前後駆動し該前後駆動の単衝撃により前記移動力を付与する前後駆動部を備えた、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項5】
請求項4記載のワーク供給装置であって、
前記駆動部は、前記上下駆動部による前記可動部の突き上げと前記前後駆動部による前後駆動とを同時に行う、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のワーク供給装置であって、
前記平面整合供給部は、前記可動部の載置面を撮像する撮像部と、該撮像部の撮像画像に基づいて少なくとも前記ワークの表裏姿勢及び平面姿勢を判断する判断部と、前記判断に基づき前記表裏姿勢の整合がなされたワークを保持して搬送供給を行うと共に前記平面姿勢に応じて前記ワークの回転を行わせる保持搬送部とを備えた、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項7】
請求項6記載のワーク供給装置であって、
前記判断部は、前記撮像画像に基づいて前記ワーク相互間の重なりを判断し、
前記保持搬送部は、前記表裏姿勢の整合がなされ且つ重なりがないワークに対して前記搬送供給を行う、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のワーク供給装置であって、
前記可動部の載置面は、その表面粗度が前記ワークの表面粗度とは異なる、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項9】
請求項8記載のワーク供給装置であって、
前記可動部の載置面は、前記ワークの表面よりも粗い梨地状である、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のワーク供給装置であって、
前記ワークは、板状ワークであり、重心が板厚方向で表裏の何れか一方側に偏倚している、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載のワーク供給装置であって、
前記ワークは、磁気ヘッドを支持するヘッド・サスペンションのベース・プレートであり、
前記ベース・プレートは、板状の本体部及び該本体部の表面に突設された環状のボス部を備えた、
ことを特徴とするワーク供給装置。
【請求項12】
複数のワークを分離及び姿勢整合して搬送供給するワーク供給装置に用いられ前記複数のワークの分離と共に反転動作を通じて表裏姿勢の整合を行わせる表裏整合分離装置であって、
前記複数のワークを載置させる載置面を有すると共に該載置面を変位自在に可動支持された可動部と、
前記可動部を単衝撃により変位駆動し前記複数のワークに浮上力と該浮上力に対する交差方向の移動力を付与して前記分離及び反転動作を行わせる駆動部とを備えた、
ことを特徴とする表裏整合分離装置。
【請求項13】
請求項12記載の表裏整合分離装置であって、
前記駆動部は、前記可動部を突き上げて該突き上げの単衝撃により少なくとも前記浮上力を付与する上下駆動部を備えた、
ことを特徴とする表裏整合分離装置。


【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−218930(P2012−218930A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89609(P2011−89609)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】