説明

ワーク保持装置

【課題】ワークの変形を抑制してワークを安定して保持することが可能なワーク保持装置を提供する。
【解決手段】シート状のワークWを保持するワーク保持装置1であって、ワークWの一端を固定する固定手段10と、ワークWの一端を除いた端部に配置されるとともに、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きの張力を発生させる張力発生手段20と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム、ラベル、発泡ウレタン等のシート状のワークを一枚ずつ保持するワーク保持装置がある。
【0003】
ところで、フィルム、ラベル、発泡ウレタン等のシート状のワークは、薄い材料で形成されていることから剛性が低く、取り扱いが非常に困難である。このため、シート状のワークが自重により折れ曲がることのないようシート状のワークを安定して保持することが可能な技術が求められている。
【0004】
このような要求に応えるための技術が検討されており、例えば、特許文献1では、部品の平面部分を吸引する吸引手段と、部品の少なくとも一部を固定するホールド手段と、を備えた部品保持ハンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−264064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、部品を保持する際、吸引手段によって部品の平面部分の中央部を吸引しているため、部品の吸引部以外の部分(部品の周縁部)は部品の自重により折れ曲がってしまう。したがって、部品の変形を抑制して部品を安定して保持することは困難である。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ワークの変形を抑制してワークを安定して保持することが可能なワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、シート状のワークを保持するワーク保持装置であって、前記ワークの一端を固定する固定手段と、前記ワークの前記一端を除いた端部に配置されるとともに、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きの張力を発生させる張力発生手段と、を備えるワーク保持装置を採用する。
【0009】
このような構成を採用することによって、本発明では、張力発生手段によって、ワークの面に平行かつワークに対して外向きの張力が発生する。つまり、シート状のワークは中央部から周縁部に向けて張力を受けることとなる。このため、特許文献1のようにワークの中央部を吸引する構成となっておらず、ワークの周縁部が自重により折れ曲がってしまうことはない。したがって、ワークの変形を抑制してワークを安定して保持することが可能なワーク保持装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記張力発生手段は、前記ワークに対向するノズル形成面に、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きに気体を噴出する複数のノズルを備えるという構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記ワークは平面視矩形であり、前記固定手段は前記ワークの一辺に配置され、前記張力発生手段は前記一辺を除いた前記ワークの三辺に沿って配置されているという構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルが噴出する気体の噴出速度は、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルが噴出する気体の噴出速度よりも大きくなっているという構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルの直径の大きさは、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルの直径の大きさよりも大きくなっているという構成を採用する。
【0014】
また、本発明においては、前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルの数は、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルの数よりも多くなっているという構成を採用する。
【0015】
また、本発明においては、前記張力発生手段は、前記ワークを吸着する吸着手段と、前記吸着手段を、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きに移動させる移動手段と、を備えるという構成を採用する。
【0016】
また、本発明においては、前記ワークは平面視矩形であり、前記固定手段は前記ワークの一辺に配置され、前記張力発生手段は前記固定手段が配置された側とは反対の側の一辺の両端に配置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、張力発生手段によって、ワークの面に平行かつワークに対して外向きの張力が発生する。つまり、シート状のワークは中央部から周縁部に向けて張力を受けることとなる。このため、特許文献1のようにワークの中央部を吸引する構成となっておらず、ワークの周縁部が自重により折れ曲がってしまうことはない。
したがって、本発明では、ワークの変形を抑制してワークを安定して保持することが可能なワーク保持装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態におけるワーク保持装置の概略構成を示す上面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における張力発生手段の張力発生機構を示す図である。
【図4】図1のB部拡大図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるノズルの配置位置とノズルが噴出する気体の噴出速度との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるノズルの配置位置とノズルの大きさとの関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるワーク保持装置の概略構成を示す底面図である。
【図8】図7のC−C線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態における張力発生手段の張力発生機構を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態における張力発生手段の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるワーク保持装置1の概略構成を示す上面図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図3は、本発明の第1実施形態における張力発生手段の張力発生機構を示す図である。図4は、図1のB部拡大図である。なお、図4において符号Dは、ノズル形成面に形成されたノズルの直径である。
【0021】
ワーク保持装置1は、例えばフィルム、ラベル、発泡ウレタン等の可撓性を有するシート状のワークWを非接触状態で保持するものである。ここでは、シート状のワークとして平面視矩形のワークを例示して説明する。
【0022】
図1に示すように、ワーク保持装置1は、ワークWの一端を固定する固定手段10と、ワークWの一端を除いた端部に配置された張力発生手段20と、固定手段10と張力発生手段20とを把持する把持部30と、を備えている。ワークWの一端は固定手段10によって固定され、ワークWの一端を除いた端部は張力発生手段20によって非接触で保持される。
【0023】
固定手段10は、ワークWの一辺(−X方向側)の中央部に配置されている。固定手段10は、吸着部11と、吸着部11を保持するホルダー部12とを備えている。
【0024】
吸着部11は、ワークWを吸着する吸着面11aを有する。吸着部11は、例えば多孔質のセラミックスからなる真空チャックを用いることができる。吸着部11の気孔径をサブミクロンサイズとすることにより、ワークWが変形することなく均一な吸着が可能となる。
【0025】
ホルダー部12は、吸着面11aと面一のワーク接触面12aを有する。ホルダー部12は、吸着部11の周囲を気密に閉塞して、吸着部11を吸着部11のワークWに対向する吸着面11aが露出した状態で保持する。
【0026】
張力発生手段20は、ワークWの一辺(−X方向側)を除いたワークWの三辺(+Y方向側、+X方向側、−Y方向側)に沿って配置されている。張力発生手段20は、ワークWに対向するノズル形成面23A(図4参照)に、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに気体(例えば空気)を噴射する複数のノズル24を備えている。これにより、張力発生手段20は、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きの張力を発生させるようになっている。
【0027】
具体的には、張力発生手段20は、3つの張力発生部(第1張力発生部20A、第2張力発生部20B、第3張力発生部20C)を備えている。
【0028】
第1張力発生部20Aは、ワークWの固定手段10が配置された一辺と隣接する一辺(+Y方向側の一辺)に沿って配置されている。第1張力発生部20Aは、平面視において一方向(X方向)に長手を有する矩形となっている。第1張力発生部20Aは、ワークWの面に平行かつワークWに対して略+Y方向に気体を噴射し、ワークWの面に平行かつワークWに対して略+Y方向の張力(両端部においては斜め方向の張力)を発生させる(図3参照)。
【0029】
第2張力発生部20Bは、ワークWの固定手段10が配置された一辺と反対の側の一辺(+X方向側の一辺)に沿って配置されている。第2張力発生部20Bは、平面視において一方向(Y方向)に長手を有する矩形となっている。第2張力発生部20Bは、ワークWの面に平行かつワークWに対して略+X方向に気体を噴射し、ワークWの面に平行かつワークWに対して略+X方向の張力を発生させる(図3参照)。
【0030】
第3張力発生部20Cは、ワークWの固定手段10が配置された一辺と隣接する一辺(−Y方向側の一辺)に沿って配置されている。第3張力発生部20Cは、平面視において一方向(X方向)に長手を有する矩形となっている。第3張力発生部20Cは、ワークWの面に平行かつワークWに対して略−Y方向に気体を噴射し、ワークWの面に平行かつワークWに対して略−Y方向の張力(両端部においては斜め方向の張力)を発生させる(図3参照)。
【0031】
張力発生手段20は、第1張力発生部20Aの一端部(+X方向側)と第2張力発生部20Bの一端部(+Y方向側)とが接続されるとともに、第2張力発生部20Bの他端部(−Y方向側)と第3張力発生部20Cの一端部(+X方向側)とが接続されることにより、平面視略U字状になっている。
【0032】
把持部30は、ジョイント部31と、ホールド部32と、を備えている。把持部30は、ジョイント部31の中央部とホールド部32の端部(+X方向側)とが接続されることにより、平面視T字状になっている。
【0033】
ジョイント部31は、固定手段10と、張力発生手段20と、を把持するものである。ジョイント部31の中央部には固定手段10が接続されている。ジョイント部31の一端部(+Y方向側)には、ワークWからはみ出た第1張力発生部20Aの他端部(−X方向側)が接続されている。ジョイント部31の他端部(−Y方向側)には、ワークWからはみ出た第3張力発生部20Cの他端部(−X方向側)が接続されている。
【0034】
ホールド部32は、保持されたワークWを搬送する際の掴み部として機能する。例えば、ホールド部32を手で掴んでワークWを搬送したり、ホールド部32に多間接の搬送アーム等の搬送手段を接続してワークWを機械的に搬送したりすることができる。
【0035】
以下、張力発生部20A,20B,20Cの具体的な構成について説明する。なお、ここでは、便宜上、張力発生部として第1張力発生部20A、第2張力発生部20B、第3張力発生部20Cのうち第2張力発生部20Bを例に挙げて説明する。
【0036】
第2張力発生部20Bは、気体噴出部21と、複数のノズル24が形成されたノズル板23と、を備えている。
【0037】
気体噴出部21は、断面視凹状となっている。気体噴出部21には、気体供給源(図示略)が設けられている。気体噴出部21とノズル板23とで内部流路22が形成されている。気体噴出部21は、気体供給源から気体(例えば空気)を取り込む。気体噴出部21によって取り込まれた気体は、内部流路22を経由して複数のノズル24に向けて噴出される。
【0038】
ノズル板23は、平面視において気体噴出部21と略同じ大きさに形成されている。ノズル板23のノズル形成面23Aには複数のノズル24が形成されている。ノズル24はノズル板23の厚み方向(Z方向)に対して傾いて形成されている。ノズル24は、ノズル板の長手方向(Y方向)に沿って間隔を空けて計3つ設けられている(図3参照)。なお、ノズル板23に設けるノズル数は任意に変更可能である。
【0039】
気体噴出部21によって噴出された気体は、ノズル板23に対して斜めに形成されたノズル24を通ってノズル形成面23AとワークWとの間に噴出される。ノズル24が噴出する気体は、ワークWの面に平行かつワークWに対して略+X方向に、ノズル形成面23AとワークWとの隙間を高速で流れる。これにより、ベルヌーイ効果によりワークWの上面(ノズル形成面23Aと対向する面)に負圧が発生し、ワークWが吸引される。一方、ワークWがノズル形成面23Aに接近すると、ワークWにはノズル24からの気体の流れによる反発力が作用する。したがって、ワークWは非接触で第2張力発生部20Bに吸引保持される。
【0040】
図5は、本発明の第1実施形態におけるノズルの配置位置とノズルが噴出する気体の噴出速度との関係を示す図である。なお、図5においては、便宜上、張力発生部として第1張力発生部20A、第2張力発生部20B、第3張力発生部20Cのうち第2張力発生部20Bを例に挙げて説明する。図5において、横軸は第2張力発生部20Bのノズル24の配置位置、縦軸は第2張力発生部20Bのノズル24が噴出する気体の噴出速度である。
【0041】
図5に示すように、第2張力発生部20Bに設けられた複数のノズル24のうち第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度よりも大きくなっている。
【0042】
例えば、第2張力発生部20Bにおいて、気体供給源の配置位置を気体噴出部21の両端部に配置する。すると、気体噴出部21の両端部に対応する位置のノズル24は気体供給源に近接し、気体噴出部21の中央部に対応する位置のノズル24は気体供給源から遠ざかる。つまり、気体噴出部21の両端部に対応する位置のノズル24には、気体供給源から気体が直ぐに導かれることとなり、気体噴出部21の中央部に対応する位置のノズル24には、気体供給源から供給された気体が内部流路22を経由した後に導かれることとなる。これにより、気体噴出部21の中央部に対応する位置のノズル24が噴出する気体の噴出速度は相対的に小さくなる。さらに速度差を設ける場合は、内部流路22内に気体の流れを邪魔する例えば板状の構造部材を設けてもよい。よって、第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度を、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度よりも大きくすることができる。これにより、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0043】
図6は、本発明の第1実施形態におけるノズルの配置位置とノズルの大きさとの関係を示す図である。なお、図6においては、便宜上、張力発生部として第1張力発生部20A、第2張力発生部20B、第3張力発生部20Cのうち第2張力発生部20Bを例に挙げて説明する。図6において、横軸は第2張力発生部20Bのノズル24の配置位置、縦軸は第2張力発生部20Bのノズル24の直径D(図4参照)である。
【0044】
図6に示すように、第2張力発生部20Bに設けられた複数のノズル24のうち第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24の直径Dは、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24の直径Dよりも大きくなっている。これにより、第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量よりも大きくなる。これにより、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0045】
また、第2張力発生部20Bに設けられた複数のノズル24のうち第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24の数を、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24の数よりも多くしてもよい。このような構成であっても、第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量よりも大きくなる。これにより、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0046】
したがって、本実施形態では、張力発生手段20によって、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きの張力が発生する。つまり、シート状のワークWは中央部から周縁部に向けて張力を受けることとなる。このため、特許文献1のようにワークの中央部を吸引する構成となっておらず、ワークの周縁部が自重により折れ曲がってしまうことはない。したがって、ワークWの変形を抑制してワークWを安定して保持することが可能なワーク保持装置1を提供することができる。
【0047】
また、本実施形態では、張力発生手段20がワークWに対向するノズル形成面23Aに、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに気体を噴出する複数のノズル24を備えている。このため、ベルヌーイ効果によってワークWの上面(ノズル形成面23Aと対向する面)に負圧が発生し、ワークWが吸引される。一方、ワークWがノズル形成面23Aに接近すると、ワークWにはノズル24からの気体の流れによる反発力が作用する。よって、ワークWは非接触で張力発生手段20に吸引保持される。したがって、粘着面を有するワークWを保持することができる。また、ワークWが接触で傷が付き易い軟弱部材の場合であっても、ワークWに傷をつけることなくワークWを保持することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ワークWが平面視矩形であり、固定手段10がワークWの一辺(−X方向側)の中央部に配置され、張力発生手段20が前記一辺を除いたワークWの三辺に配置されている。このため、平面視矩形のワークWが自重により折れ曲がることのないよう、ワークWの変形を抑制してワークWを安定して保持することができる。
【0049】
また、本実施形態では、ワークWの三辺に沿って配置された張力発生手段20の複数のノズル24のうちワークWの一辺の両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度は、ワークWの一辺の中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出速度よりも大きくなっている。つまり、平面視矩形のワークWにおいて特に撓みやすいワークWの四隅に噴出される気体の噴出速度が相対的に大きくなる。したがって、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ワークWの三辺に沿って配置された張力発生手段20の複数のノズル24のうちワークWの一辺の両端部に位置するノズル24の直径Dは、ワークWの一辺の中央部に位置するノズル24の直径Dよりも大きくなっている。これにより、第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量よりも大きくなる。したがって、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第2張力発生部20Bに設けられた複数のノズル24のうち第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24の数は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24の数よりも多くなっている。これにより、第2張力発生部20Bの両端部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量は、第2張力発生部20Bの中央部に位置するノズル24が噴出する気体の噴出量よりも大きくなる。これにより、平面視矩形のワークW(特にワークWの四隅)が自重により折れ曲がることのないよう、ワークWを安定して保持することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、固定手段10がワークWの一辺(−X方向側)の中央部に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定手段がワークWの一辺に沿って配置されていてもよい。すなわち、固定手段は、少なくともワークWの一端に配置されていればよい。
【0053】
また、本実施形態では、張力発生手段20が3つの張力発生部(第1張力発生部20A、第2張力発生部20B、第3張力発生部20C)を備えている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、張力発生手段20が1つまたは2つの張力発生部を備えていてもよいし、4つ以上の張力発生部を備えていてもよい。すなわち、張力発生手段20を構成する張力発生部の配置数は必要に応じて適宜変更することができる。例えば、ワークWのサイズが小さい場合には張力発生部の配置数を少なくし、ワークWのサイズが大きい場合には張力発生部の配置数を多くすることができる。なお、ワークWのサイズが大きい場合には、複数の張力発生部が互いに接続できるよう、両端部にジョイント機構を備えた張力発生部を用いるのがよい。これにより、複数の張力発生部を組み替えて接続することでワークWのサイズの大型化に対応することができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るワーク保持装置2の構成について、図7〜10を用いて説明する。図7は、本発明の第2実施形態におけるワーク保持装置2の概略構成を示す底面図である。図8は、図7のC−C線に沿った断面図である。図9は、本発明の第2実施形態における張力発生手段の張力発生機構を示す図である。図10は、本発明の第2実施形態における張力発生手段の要部拡大図である。なお、図10における矢印は、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きの張力である。
【0055】
ワーク保持装置2は、例えばフィルム、ラベル、発泡ウレタン等の可撓性を有するシート状のワークWを接触状態で保持するものである。ここでは、シート状のワークとして平面視矩形のワークを例示して説明する。
【0056】
図7に示すように、ワーク保持装置2は、ワークWの一端を固定する固定手段110と、ワークWの一端を除いた端部に配置された張力発生手段140と、固定手段110と張力発生手段140とを接続するジョイント部120と、固定手段110を把持する把持部130と、を備えている。ワークWの一端は固定手段110によって固定され、ワークWの一端を除いた端部は張力発生手段140によって接触して保持される。
【0057】
固定手段110は、ワークWの一辺(−X方向側)に沿って配置されている。固定手段110は、吸着部111と、ホルダー部112と、位置決めピン113と、を備えている。
【0058】
吸着部111は、ワークWを吸着する吸着面111aを有する。吸着部111は、例えば多孔質のセラミックスからなる真空チャックを用いることができる。吸着部111の気孔径をサブミクロンサイズとすることにより、ワークWが変形することなく均一な吸着が可能となる。
【0059】
ホルダー部112は、吸着面111aと面一のワーク接触面112aを有する。ホルダー部112は、吸着部111の周囲を気密に閉塞して、吸着部111を、吸着部111のワークWに対向する吸着面111aが露出した状態で保持する。
【0060】
位置決めピン113は、ジョイント部120の一端部(−X方向側)に挿通されている。位置決めピン113は、張力発生手段140のX方向の位置決めの基準となる。
【0061】
張力発生手段140は、固定手段110が配置された側とは反対の側のワークWの一辺(+X方向側)の両端に配置されている。張力発生手段140は、ワークWを吸着する吸着手段150と、吸着手段150をワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに移動させる移動手段160と、を備えている。これにより、張力発生手段140は、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きの張力を発生させるようになっている。
【0062】
具体的には、張力発生手段140は、2つの張力発生部(第1張力発生部140A、第2張力発生部140B)を備えている。
【0063】
第1張力発生部140Aは、ワークWの固定手段110が配置された側とは反対の側の一辺(+X方向側)の一端(+Y方向側)に配置されている。第1張力発生部140Aは、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに斜め方向(+X方向及び+Y方向)の張力を発生させる(図9参照)。
【0064】
第2張力発生部140Bは、ワークWの固定手段110が配置された側とは反対の側の一辺(+X方向側)の他端(−Y方向側)に配置されている。第2張力発生部140Bは、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに斜め方向(+X方向及び−Y方向)の張力を発生させる(図9参照)。
【0065】
把持部130は、固定手段110の中央部に接続されている。把持部130は、保持されたワークWを搬送する際の掴み部として機能する。例えば、把持部130を手で掴んでワークWを搬送したり、把持部130に多間接の搬送アーム等の搬送手段を接続してワークWを機械的に搬送したりすることができる。
【0066】
以下、張力発生部140A,140Bの具体的な構成について説明する。なお、ここでは、便宜上、張力発生部として第1張力発生部140A、第2張力発生部140Bのうち第1張力発生部140Aを例に挙げて説明する。
【0067】
第1張力発生部140Aは、ワークWを吸着する吸着手段150と、吸着手段150をワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに移動させる移動手段160と、を備えている。
【0068】
吸着手段150は、吸着部151と、吸着部151を保持するホルダー部152と、吸着部151の吸着面151aの水平面(ワークWの上面)に対する傾きを変位自在とするベローズ管153と、吸着面151aから吸引を行う吸引手段154と、を備えている。
【0069】
吸着部151は、ワークWを吸着する吸着面151aを有する。吸着部151は、例えば多孔質のセラミックスからなる真空チャックを用いることができる。吸着部151の気孔径をサブミクロンサイズとすることにより、ワークWが変形することなく均一な吸着が可能となる。
【0070】
ホルダー部152は、吸着面151aと面一のワーク接触面152aを有する。ホルダー部152は、吸着部151を囲う有低円筒形状となっている。ホルダー部152は、吸着部151の周囲を気密に閉塞して、吸着部151を吸着部151のワークWに対向する吸着面151aが露出した状態で保持する。ホルダー部152の中央部には、吸着部151の取り付け空間に連通する吸引口152bが貫通して形成されている。
【0071】
ベローズ管153は、一端部(−Z方向側)が吸引手段154と連通し、他端部(+Z方向側)がホルダー部152の吸引口152bと連通するよう設けられている。ベローズ管153は、ホルダー部152を吊下して支持する構成となっている。ベローズ管153は、任意の方向に自由な曲げが可能な柔軟性を有する。ベローズ管153は、例えば柔軟性の有る樹脂材から形成されている。
【0072】
移動手段160は、円板を中心からずらして回転させる偏心カム161と、偏心カム161を回転させつつ偏心カム161の回転角度を検出するエンコーダ付モーター162と、吸着手段150(吸引手段154)を支持するガイドブロック163と、偏心カム161の回転により移動するガイドピン164と、ガイドブロック163を一方向に案内するガイドレール165と、ガイドレール165を支持するベース部166と、コイルバネ167と、コイルバネ167の引張力を調整する引張力調整部168と、引張力調整部168をベース部166に固定するロックナット169と、を備えている。
【0073】
コイルバネ167は、一端が吸着手段150に接続され、他端が引張力調整部168に接続されている。コイルバネ167は、常態で吸着手段150をワークWの面に平行かつワークWに対して内向き(図10に示す矢印の向きと反対の方向)に付勢する構成となっている。
【0074】
ガイドブロック163の上部に固定されたガイドピン164は、偏心カム161に当接している。これにより、コイルバネ167によってワークWの面に平行かつワークWに対して内向きに付勢された吸着手段150は、前記内向きに引き込まれないようになっている。つまり、吸着手段150は、コイルバネ167から前記内向きに常時付勢力を受けているものの、所定の位置で静止しうる構成となっている。
【0075】
吸着手段150は、偏心カム161の回転により、ガイドレール165に案内されて、ワークWの面に平行かつワークWに対して外向き(図10に示す矢印の向き)に移動する。このような構成により、吸着手段150をワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに微小な力で移動させることができる。なお、吸着手段150を移動させる際の引張力は、ワークWの材質に応じて、偏心カム161の回転角度、コイルバネ167の引張力等を適宜変更することにより設定することができる。
【0076】
したがって、本実施形態では、張力発生手段140がワークWを吸着する吸着手段150と、吸着手段150をワークWの面に平行かつワークWに対して外向きに移動させる移動手段160と、を備えている。このため、ワークWは接触状態で張力発生手段140に吸引保持される。したがって、ワークWの変形を抑制してワークWを安定して保持することが可能なワーク保持装置2を提供することができる。
【0077】
また、本実施形態では、ワークWが平面視矩形であり、固定手段110がワークWの一辺(−X方向側)に配置され、張力発生手段140が固定手段110の配置された側とは反対の側のワークWの一辺の両端に配置されている。このため、平面視矩形のワークWが自重により折れ曲がることのないよう、ワークWの変形を抑制してワークWを安定して保持することができる。また、張力発生手段140を計2つ設けるだけでよいので、装置の簡素化を図ることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、固定手段110がワークWの一辺(−X方向側)に沿って配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定手段がワークWの一辺の両端に配置されていてもよい。すなわち、固定手段は、少なくともワークWの一端に配置されていればよい。
【0079】
また、本実施形態では、張力発生手段140が2つの張力発生部(第1張力発生部140A、第2張力発生部140B)を備えている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、張力発生手段140が1つの張力発生部を備えていてもよいし、3つ以上の張力発生部を備えていてもよい。すなわち、張力発生手段140を構成する張力発生部の配置数は必要に応じて適宜変更することができる。例えば、ワークWのサイズが小さい場合には張力発生部の配置数を少なくし、ワークWのサイズが大きい場合には張力発生部の配置数を多くすることができる。
【0080】
また、本実施形態では、移動手段160が偏心カム161と、エンコーダ付モーター162と、ガイドブロック163と、ガイドピン164と、ガイドレール165と、ベース部166と、コイルバネ167と、引張力調整部168と、ロックナット169と、を備えている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、移動手段としては、一軸アクチュエーター(ボールねじ、スライドガイド、サポートユニットが一体となった直動案内機構)を用いてもよい。
【0081】
なお、上記実施形態では、シート状のワークとして、フィルム、ラベル、発泡ウレタン等を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、セラミックス、カーボン、金属や樹脂材料からなる薄膜フィルム、ウェハ、ガラス基板、さらには二次電池を構成する電極やセパレータなど、必要に応じて様々なシート状の部材に適用することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、シート状のワークとして、平面視矩形のワークを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、平面視円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形など、必要に応じて様々な形状の部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,2…ワーク保持装置、10,110…固定手段、20,140…張力発生手段、23A…ノズル形成面、24…ノズル、150…吸着手段、160…移動手段、D…ノズルの直径、W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のワークを保持するワーク保持装置であって、
前記ワークの一端を固定する固定手段と、
前記ワークの前記一端を除いた端部に配置されるとともに、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きの張力を発生させる張力発生手段と、
を備えることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記張力発生手段は、前記ワークに対向するノズル形成面に、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きに気体を噴出する複数のノズルを備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記ワークは平面視矩形であり、
前記固定手段は前記ワークの一辺に配置され、
前記張力発生手段は前記一辺を除いた前記ワークの三辺に沿って配置されていることを特徴とする請求項2に記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルが噴出する気体の噴出速度は、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルが噴出する気体の噴出速度よりも大きくなっていることを特徴とする請求項3に記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルの直径の大きさは、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルの直径の大きさよりも大きくなっていることを特徴とする請求項3または4に記載のワーク保持装置。
【請求項6】
前記ワークの三辺に沿って配置された前記張力発生手段の前記複数のノズルのうち前記ワークの一辺の両端部に位置するノズルの数は、前記ワークの一辺の中央部に位置するノズルの数よりも多くなっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のワーク保持装置。
【請求項7】
前記張力発生手段は、
前記ワークを吸着する吸着手段と、
前記吸着手段を、前記ワークの面に平行かつ前記ワークに対して外向きに移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項8】
前記ワークは平面視矩形であり、
前記固定手段は前記ワークの一辺に配置され、
前記張力発生手段は前記固定手段が配置された側とは反対の側の一辺の両端に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のワーク保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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