説明

ワーク処理装置

【課題】ワークの除給材に伴う容器蓋の開放時に、容器本体内の温度低下を抑制することができると共に容器本体内の温度低下を一定にすることができるワーク処理容器を提供すること。
【解決手段】内部に収容したワークWに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置であって、容器本体21と容器本体21を開閉する容器蓋22とから成り、内部にワークWを収容する圧力容器11と、容器本体21の外周面に添設され、圧力容器11内を加熱する外部ヒータ12と、ワークWの除材から給材に至る容器蓋22の開放時に、容器蓋22に代わって容器本体21を閉塞し容器本体21内の温度を維持する容器閉塞機構14と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容したワークに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力容器(ワーク処理装置)として、容器と、容器を閉塞する蓋と、容器を外囲し、容器に貯留した溶媒を加熱する電気ヒータと、を有するものが知られている(特許文献1参照)。
この圧力容器では、電気ヒータによって試験温度に加熱した溶媒に、試験片(ワーク)を一定期間浸漬することで、溶媒に対する試験片の耐腐蝕性試験(加速試験)を行う。そして、試験終了後に容器を開放して試験片を取り出した後、新しい試験片を浸漬させて容器を閉塞し、溶媒を再び試験温度に加熱して、次の耐腐蝕性試験を行うようになっている。
【特許文献1】特開平5−256369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような腐蝕の加速試験を行う場合には、加熱した溶媒より、加熱・加圧した気体状の溶媒(内部雰囲気)に試験片を曝した方が、試験時間を短縮(加速)することができる。
係る場合、試験片の交換は、蓋を開放したまま行うことになるため、開放時間に応じて高温の内部雰囲気が外部に逃げると共に低温の外気が容器内に侵入する。このため、容器内の温度が低下してしまうと共に、交換時間や外気温度により温度低下が区々となり試験条件が一定しなくなる問題があった。また、再度、容器内を加熱して試験条件にするのに時間がかかり、結果的に試験時間が長くなるという問題があった。
【0004】
本発明は、ワークの除給材に伴う容器蓋の開放時に、容器本体内の温度低下を抑制することができると共に容器本体内の温度低下を一定にすることができるワーク処理装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワーク処理装置は、内部に収容したワークに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置であって、容器本体と容器本体を開閉する容器蓋とから成り、内部にワークを収容する処理容器と、容器本体の外面に添設され、処理容器内を加熱する外部加熱手段と、ワークの除材から給材に至る容器蓋の開放時に、容器蓋に代わって容器本体を閉塞し容器本体内の温度を維持する容器閉塞手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、処理容器が、圧力容器であることが、好ましい。
【0007】
これらの構成によれば、ワークの除材から給材に至る容器蓋の開放時に、容器閉塞手段により容器本体を閉塞することで、容器本体内の内部雰囲気の外部への流出と共に、容器本体内への外気の流入が抑制される。これにより、容器本体の完全開放時間を短くすることができるため、容器本体内の温度低下を抑制することができ、且つ容器本体内の温度低下を一定にすることができる。したがって、処理温度に再加熱する時間を短縮することができるだけでなく、処理開始時の昇温および処理終了時の降温を含め、ワーク処理における温度条件を一定にすることができる。
【0008】
この場合、容器蓋は、下面にワークをセットするワークセット部を有していることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、ワークの除材時に容器蓋の開放に伴ってワークを容器本体から取り出すことができると共に、ワークの給材時に容器蓋の閉塞に伴ってワークを容器本体に投入することができる。すなわち、容器本体に対するワークの出し入れを簡単に行うことができる。
【0010】
この場合、容器閉塞手段は、容器本体の開口端を覆う閉塞位置と開口端から退避する開放位置との間で開閉自在に構成された蓋体と、蓋体を、閉塞位置と開放位置との間で移動させる蓋移動機構と、を有していることが、好ましい。
【0011】
また、容器蓋は、容器本体の開口端を覆う蓋本体と、開口端から容器本体内に嵌入される封止蓋部と、から成り、容器閉塞手段は、容器本体の封止蓋部に面する嵌入封止部に臨み、嵌入封止部を閉塞する閉塞位置と嵌入封止部から退避する開放位置との間で開閉自在に構成されたシャッタと、シャッタを、閉塞位置と開放位置との間で移動させるシャッタ移動機構と、を有していることが、好ましい。
【0012】
これらの構成によれば、ワークの除材時に、容器蓋の開放直後に、蓋移動手段(シャッタ移動機構)により蓋体(シャッタ)を開放位置から閉塞位置に移動し、容器本体を閉塞することで、容器本体の完全開放時間を短くすることができ、容器本体内の温度低下をさらに抑制することができる。
【0013】
本発明の他のワーク処理装置は、内部に収容したワークに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置であって、容器本体と、容器本体の開口端から容器本体内に深く嵌入される封止蓋部を有する容器蓋と、開口端近傍に臨み容器本体および容器蓋間を封止するシール部材とから成り、容器蓋の下面でワークを支持する処理容器と、容器本体の外面に添設され、処理容器内を加熱する外部加熱手段と、容器蓋を、容器本体を閉塞する閉塞位置と容器本体の直上に上昇させて容器本体を開放する開放位置との間で開閉させる蓋開閉手段と、処理容器の容器室の直上近傍に臨み、容器蓋の開放時に容器室を開閉自在に且つ気密に閉塞する容器室閉塞手段と、蓋開閉手段および容器室閉塞手段を制御する開閉制御手段と、を備え、ワークの除給材に際し開閉制御手段は、蓋開閉手段により容器蓋と共に上昇してゆくワークが容器室閉塞手段の位置を越えたところで、容器室閉塞手段を閉塞駆動し、蓋開閉手段によりワークと共に下降してゆく容器蓋の下端部がシール部材の位置に達したところで、容器閉塞手段を開放駆動することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、開放に伴って上昇してゆく容器蓋が容器本体を封止している状態で、容器室を封止することができると共に、閉塞に伴って下降してゆく容器蓋が容器本体を封止した後に、容器室を開放することができる。このため、ワークの除給材に際し、容器室への外気の侵入を極端に抑制することができ、容器本体内の温度低下のみならず圧力降下も抑制することができる。しかも、温度低下および圧力降下を一定にすることができる。したがって、処理温度に再加熱・加圧する時間を短縮することができるだけでなく、ワーク処理における温度条件および圧力条件を一定にすることができる。
【0015】
この場合、封止蓋部が嵌入される容器本体の蓋嵌入空間を大気開放する大気開放手段を、更に備え、開閉制御手段は、大気開放手段を制御し、容器室閉塞手段を閉塞駆動した後、さらに上昇してゆく容器蓋の下端部がシール部材の位置に達する前に、蓋嵌入空間を大気開放することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、開放に伴う容器蓋の上昇により容器本体内の圧力が幾分降下するが、その際、容器蓋と容器室閉塞手段との間の蓋嵌入空間を大気開放することで、容器蓋の開放時に発生する内部雰囲気の爆発的流出を防止することができる。
【0017】
この場合、処理容器に試験薬液を導入すると共に試験薬液を飽和蒸気圧状態になるように加熱および加圧し、ワークを試験薬液の雰囲気に曝してワークの耐腐食の加速試験を行うものであることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、ワークの耐腐食の加速試験を連続して行う場合において、ワークの除給材時に、容器本体の温度低下を防止することができる。また、これにより、加速試験における繰返し精度を向上させることができると共に、全体として加速試験の試験時間を短縮することができる。
【0019】
この場合、ワークの処理容器への給材および除材を含む試験温度および試験時間に関する制御テーブルに基づいて、外部加熱手段を制御する制御手段を、更に備えたことが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、試験開始時の昇温および試験終了時の降温を含め温度制御を高精度で行うことができ、耐食試験の繰返し精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明のワーク処理装置を適用したワークの耐食試験装置について説明する。この耐食試験装置は、表面に被膜処理を施した穴開きのワークの耐食試験を行うものであり、このワークが部品として装置に組み込まれたときに接する液体を試験薬液とし、この試験薬液を加熱して飽和蒸気圧状態とした薬液雰囲気に、一定時間ワークを曝すことで加速試験を行うものである。ここでは、先ずワークおよびワーク廻りの構造から説明する。
【0022】
図1に示すように、ワークWは、その複数個をワークホルダ2に載置されると共に、試験薬液を含浸させた不織布3を上下に宛がい、全体をワークケース4に収容して耐食試験装置1に導入される。試験片であるワークWは、複数の小孔を有する金属製の方形プレートであり、金属めっきが施されている。試験薬液による耐腐食試験は、主としてこの金属めっきの剥離および亀裂に対する耐性を試験する。
【0023】
ワークホルダ2は、熱伝導性の高いアルミニウム等で格子枠状に形成されており、各ワークWは、各枠内に内向きに突設した支持突起5により支持されるようにして、各枠内に保持されている。すなわち、複数のワークWは、ワークホルダ2の上面にマトリクス状にセットされる。不織布3は、ワークホルダ2の平面形状に合わせて2枚1組とし、ワークホルダ2を上下から挟むように配設されている。この場合、不織布3は、予め一定量の試験薬液を染み込ませた状態で導入される。ワークケース4は、アルミニウム等で構成された方形のケースであり、内部を、試験薬液を加熱して飽和蒸気圧状態とした薬液雰囲気で満たすようになっている。なお、ワークホルダ2に不織布3を添設する部位を設け、ワークケース4を省略するようにしてもよい。
【0024】
図2および図3に示すように、耐食試験装置1は、容器本体21および容器本体21を開閉する容器蓋22から成る金属製の圧力容器(処理容器)11と、容器本体21を外側から包み込むように設けた外部ヒータ(外部加熱手段)12と、外部ヒータ12の外側を覆う断熱材(図示省略)と、容器蓋22を開閉する蓋開閉機構(蓋開閉手段)13と、を備えている。また、耐食試験装置1は、容器蓋22の開放時に容器蓋22に代わって容器本体21の開口端を覆う容器閉塞機構(容器閉塞手段)14(図3参照)と、外部ヒータ12、蓋開閉機構13および容器閉塞機構14を制御する制御装置15(制御手段:開閉制御手段)と、を備えている。詳細は後述するが、この耐食試験装置1では、ワークWの除給材時における容器蓋22の開放時に、容器閉塞機構14により容器本体21を閉塞しておくようになっている。
【0025】
圧力容器11は、法上の小型圧力容器であり、容器本体21と容器蓋22との間にはリング状のシール部材23が介設され、容器本体21の上部に設けロック金具(図示省略)により容器本体21を閉止した容器蓋22が強固に閉塞されるようになっている。容器本体21は、厚肉の金属材により有底の略筒状に形成されており、上部がフランジ状に形成されている。そして、このフランジ状の上部に上記のロック金具が組み込まれている。容器蓋22を取り付けた状態の容器本体21の下部が、容器室24となっており、この容器室24に上記のワークケース4に収容されたワークWが投入される。また、容器室24には、圧力を抜くためのバルブを有する大気開放装置(大気開放手段)16が連通している。容器本体21に対し容器蓋22は深く嵌入され、この嵌入封止部25の下部に上記のシール部材23が装着されている。
【0026】
容器蓋22は、厚肉の金属材により形成されており、容器本体21の開口端を覆う蓋本体31と、開口端から容器本体21の嵌入封止部25に深く嵌入される封止蓋部32と、から構成されている。蓋本体31は、容器本体21のフランジ状の上部に対応してフランジ状に形成され、閉塞時に容器本体21の上面にフランジ接合様に密接する。封止蓋部32は、その外周面が嵌入封止部25と相補的形状に形成されており、平坦に形成された下面には、ワークケース4を着脱自在に装着するためのケースセット部33が設けられている。ケースセット部33は、詳細は図示しないが、例えば一対の係止爪を有し、ワークケース4を水平にセット可能に構成されている。容器蓋22を閉塞すると、封止蓋部32の外周面が上記のシール部材23に密接することよって、容器本体21内が気密に封止されると共に、ワークケース4が容器本体21の容器室24に収容される。
【0027】
蓋開閉機構13は、例えば容器蓋22の上端に連結したリンクやリードねじ等の昇降機構18と、昇降機構18を駆動するモータ19で構成されている。制御装置15は、加速試験終了後の容器蓋22の開放に際し上記の大気開放装置16を駆動して容器室24内を大気圧まで降圧させた後、モータ19を駆動して容器蓋22を上昇させて、容器本体21を開放する。また、逆の手順で容器本体21を閉塞する。蓋開閉機構13による容器蓋22の上昇端位置は、容器蓋22に装着されているワークW(ワークケース4)が、容器本体21の開口端から十分に引き上げられた容器本体21の直上位置となっており、この状態で容器蓋22に対しワークW(ワークケース4)が着脱されるようになっている。
【0028】
外部ヒータ12は、マントルヒータやラバーヒータで構成した上部ヒータ41、下部ヒータ42および底部ヒータ43から成り、圧力容器11全体を加熱する。この場合、制御装置15内には、試験開始時の昇温および試験終了時の降温を含む試験温度および試験時間に関する制御テーブルが用意されており、制御装置15は、この制御テーブルに倣って外部ヒータ12を制御する。これにより、容器室24が所定の温度に昇温され、ワークケース4の内部が加熱される。ワークケース4の内部が加熱されると、不織布3に浸み込ませた試験薬液が飽和蒸気圧状態となり薬液雰囲気に変化する。そして、薬液雰囲気は、加熱されたワークWに対し反応する。
【0029】
図3に示すように、容器閉塞機構14は、容器本体21の開口端を覆う閉塞位置と開口端から退避する開放位置との間で開閉自在に構成された蓋体51と、蓋体51を、閉塞位置と開放位置との間で水平移動させる蓋移動機構52と、を有している。蓋移動機構52は、例えば蓋体51を支持する回動アーム(図示省略)と、回動アームを閉塞位置と開放位置との間で水平姿勢のまま回動させるモータ(図示省略)等で構成されている。この場合、開放位置は、蓋体51や回動アームが閉塞状態の容器蓋22に干渉しない位置になっている。蓋体51の下面には、シールパッキンが設けられており(図示省略)、閉塞位置において、容器本体21の開口端を閉止する。
【0030】
蓋移動機構52は、制御装置15を介して上記の蓋開閉機構13とリンクしており、ワークWの除材時において、容器蓋22が上昇端位置に移動して容器本体21が完全開放された直後に、蓋移動機構52が駆動して容器本体21を閉塞する。また、ワークWが容器蓋22にセット(給材)され、蓋開閉機構13による容器蓋22の閉塞動作(下降)直前に、蓋移動機構52を駆動して容器本体21を開放する。
【0031】
これにより、容器蓋22を開放してワークWを交換している間、容器本体21を閉塞しておくことができる。よって、容器本体21が完全開放している時間を極端に短くすることができ、容器本体21内の温度低下の抑制および温度低下を一定にすることができる。したがって、エネルギー消費を抑制することができると共に、制御テーブルによる容器室24の温度制御を精度良く行うことができる。なお、蓋移動機構52は、蓋体51を水平姿勢で進退(開閉)させる構造、或いは蓋体51を、ヒンジを介して上下に開閉する構造であってもよい。
【0032】
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る耐食試験装置1ついて説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる箇所のみ記載する。この耐食試験装置1は、嵌入封止部25に臨み、嵌入封止部25を閉塞する閉塞位置と嵌入封止部25から退避する開放位置との間で開閉自在に構成されたシャッタ61と、シャッタ61を、閉塞位置と開放位置との間で移動させるシャッタ移動機構62と、を有している。シャッタ移動機構62は、例えば嵌入封止部25より大きく形成されたシャッタを水平姿勢で開閉する進退アーム(図示省略)と、進退アームを閉塞位置と開放位置との間で水平姿勢のまま進退させる進退動機構と、進退動機構に連結したモータ(いずれも図示省略)等で構成されている。すなわち、シャッタ61は、いわゆるゲートバルブの形態を有している。
【0033】
シャッタ61は、容器本体21に形成した間隙に内蔵されており、容器本体21内で進退する。一方、進退アームは、容器本体21から外部に突出すると共に適宜シールされている。そして、進退動機構およびモータは、容器本体21の外部に配設されている。この場合もシャッタ61は、シールパッキン付のものとすることが好ましい(但し、この場合には、上下の周縁部に設ける)。
【0034】
シャッタ移動機構62は、制御装置15を介して上記の蓋開閉機構13とリンクしており、ワークWの除材時において、容器蓋22(ワークケース4)がシャッタ61を通過した直後に、シャッタ移動機構62が駆動して嵌入封止部25を閉塞する。また、ワークWが容器蓋22にセット(給材)され、蓋開閉機構13による容器蓋22の閉塞動作(下降)において、容器蓋22(ワークケース4)がシャッタ61の位置に達する直前に、シャッタ移動機構62を駆動して嵌入封止部25を開放する。
【0035】
これにより、容器蓋22を開放してワークWを交換している間、嵌入封止部25を閉塞しておくことで、容器本体21が完全開放している時間を短くすることができ、容器本体21内の温度低下の抑制および温度低下を一定にすることができる。したがって、エネルギー消費を抑制することができると共に、制御テーブルによる容器室24の温度制御を精度良く行うことができる。なお、シャッタ61を回動させる構造であってもよい(図示省略)。
【0036】
次に、図5を参照して、第3実施形態に係る耐食試験装置1ついて説明する。この耐食試験装置1では、容器蓋22により容器本体21が完全開放される前に容器室24を閉塞するようになっている。このため、嵌入封止部25の下端部に、第2実施形態の容器閉塞機構14と同様の容器室閉塞手段(容器室閉塞機構71)が配設されている。また、シール部材23が、容器蓋22における封止蓋部32の下端部に装着されている。さらに、上記の大気開放装置16が、封止蓋部32が嵌入される容器本体21の蓋嵌入空間72に連通している。
【0037】
容器室閉塞機構71は、第2実施形態の容器閉塞機構14と同様に、容器室24を気密に閉塞する閉塞位置と容器室24から退避する開放位置との間で開閉自在に構成された密閉シャッタ73と、密閉シャッタ73を、閉塞位置と開閉位置との間で移動させる密閉シャッタ移動機構74と、から構成されている。そして、密閉シャッタ移動機構74は、第2実施形態のシャッタ移動機構62と同一の構造を有している(説明は省略する)。
【0038】
この場合も、密閉シャッタ移動機構74は、制御装置15を介して上記の蓋開閉機構13とリンクしている。試験終了後(図5(a)参照)、ワークWの除材時において、容器蓋22(ワークケース4)が密閉シャッタ73の位置を越えた直後に、容器室閉塞機構71が駆動して容器室24を閉塞する(図5(b)参照)。この状態において、容器蓋22の上昇(開放動作)は継続しているが、シール部材23により容器本体21(容器室24)は閉塞されている。ここで、大気開放装置16により、蓋嵌入空間72の圧力を抜く。その後、上昇する容器蓋22により、蓋嵌入空間72が開放される(図5(c)参照)。すなわち、容器蓋22が容器本体21から離れた状態(完全開放)では、密閉シャッタ73により容器室24が封止されると共に、蓋嵌入空間72が開放された状態となる。
一方、ワークWが容器蓋22にセット(給材)され、蓋開閉機構13による容器蓋22の閉塞動作(下降)において、容器蓋22(ワークケース4)が密閉シャッタ73の位置に達したところで、大気開放装置16のバルブを閉止すると共に、容器室閉塞機構71を駆動して容器室24を開放する。
【0039】
以上の構成によれば、容器蓋22の開放動作開始直後からワークWの交換を経て容器蓋22の閉塞動作終了直前まで、容器室24を閉塞しておくことができる。よって、容器室24の温度低下を抑制することができ、且つ容器室24の温度低下を一定にすることができる。したがって、より一層、エネルギー消費を抑制することができると共に、制御テーブルによる容器室24の温度制御を精度良く行うことができる。
【0040】
なお、容器閉塞機構14(容器室閉塞機構71)が開閉駆動するタイミングは、開放および閉塞開始時間から所定時間経過後に開閉駆動するようにしてもよいし、容器閉塞機構14(容器室閉塞機構71)を制御装置15に接続しないで、手動により行ってもよい。また、容器閉塞機構14(容器室閉塞機構71)の近傍にセンサを設けておき、センサがワークケース4を検出してから数秒後に閉塞駆動するようにし、センサがワークケース4を検出したところで、容器蓋22の閉塞動作を一端停止させ、容器閉塞機構14(容器室閉塞機構71)の開放駆動終了後、容器蓋22の閉塞動作を再開するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ワークを収容したワークケースの分解斜視図である。
【図2】耐食試験装置の模式的断面図である。
【図3】第1実施形態に係る耐食試験装置の模式的断面図である。
【図4】第2実施形態に係る耐食試験装置の模式的断面図である。
【図5】第3実施形態に係る耐食試験装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…耐食試験装置 11…圧力容器 12…外部ヒータ 14…容器閉塞機構 15…制御装置 16…大気開放装置 21…容器本体 22…容器蓋 23…シール部材 24…容器室 25…嵌入封止部 31…蓋本体 32…封止蓋部 33…ケースセット部 51…蓋体 52…蓋移動機構 61…シャッタ 62…シャッタ移動機構 71…容器室閉塞装置 72…蓋嵌入空間 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容したワークに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置であって、
容器本体と前記容器本体を開閉する容器蓋とから成り、内部に前記ワークを収容する処理容器と、
前記容器本体の外面に添設され、前記処理容器内を加熱する外部加熱手段と、
前記ワークの除材から給材に至る前記容器蓋の開放時に、前記容器蓋に代わって前記容器本体を閉塞し前記容器本体内の温度を維持する容器閉塞手段と、を備えたことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項2】
前記処理容器が、圧力容器であることを特徴とする請求項1に記載のワーク処理装置。
【請求項3】
前記容器蓋は、下面に前記ワークをセットするワークセット部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク処理装置。
【請求項4】
前記容器閉塞手段は、前記容器本体の開口端を覆う閉塞位置と前記開口端から退避する開放位置との間で開閉自在に構成された蓋体と、
前記蓋体を、前記閉塞位置と前記開放位置との間で移動させる蓋移動機構と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク処理装置。
【請求項5】
前記容器蓋は、前記容器本体の開口端を覆う蓋本体と、前記開口端から前記容器本体内に嵌入される封止蓋部と、から成り、
前記容器閉塞手段は、前記容器本体の前記封止蓋部に面する嵌入封止部に臨み、前記嵌入封止部を閉塞する閉塞位置と前記嵌入封止部から退避する開放位置との間で開閉自在に構成されたシャッタと、
前記シャッタを、前記閉塞位置と前記開放位置との間で移動させるシャッタ移動機構と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク処理装置。
【請求項6】
内部に収容したワークに対し加熱および加圧を行うワーク処理装置であって、
容器本体と、前記容器本体の開口端から前記容器本体内に深く嵌入される封止蓋部を有する容器蓋と、前記開口端近傍に臨み前記容器本体および前記容器蓋間を封止するシール部材とから成り、前記容器蓋の下面で前記ワークを支持する処理容器と、
前記容器本体の外面に添設され、前記処理容器内を加熱する外部加熱手段と、
前記容器蓋を、前記容器本体を閉塞する閉塞位置と前記容器本体の直上に上昇させて前記容器本体を開放する開放位置との間で開閉させる蓋開閉手段と、
前記処理容器の容器室の直上近傍に臨み、前記容器蓋の開放時に前記容器室を開閉自在に且つ気密に閉塞する容器室閉塞手段と、
前記蓋開閉手段および前記容器室閉塞手段を制御する開閉制御手段と、を備え、
前記ワークの除給材に際し前記開閉制御手段は、前記蓋開閉手段により前記容器蓋と共に上昇してゆく前記ワークが前記容器室閉塞手段の位置を越えたところで、前記容器室閉塞手段を閉塞駆動し、前記蓋開閉手段により前記ワークと共に下降してゆく前記容器蓋の下端部が前記シール部材の位置に達したところで、前記容器閉塞手段を開放駆動することを特徴とするワーク処理装置。
【請求項7】
前記封止蓋部が嵌入される前記容器本体の蓋嵌入空間を大気開放する大気開放手段を、更に備え、
前記開閉制御手段は、前記大気開放手段を制御し、前記容器室閉塞手段を閉塞駆動した後、さらに上昇してゆく前記容器蓋の下端部が前記シール部材の位置に達する前に、前記蓋嵌入空間を大気開放することを特徴とする請求項6に記載のワーク処理装置。
【請求項8】
前記処理容器に試験薬液を導入すると共に前記試験薬液を飽和蒸気圧状態になるように加熱および加圧し、前記ワークを前記試験薬液の雰囲気に曝して前記ワークの耐腐食の加速試験を行うものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のワーク処理装置。
【請求項9】
前記ワークの前記処理容器への給材および除材を含む試験温度および試験時間に関する制御テーブルに基づいて、前記外部加熱手段を制御する制御手段を、更に備えたことを特徴とする請求項8に記載のワーク処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−78405(P2010−78405A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245691(P2008−245691)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】