説明

ワーク搬送装置

【課題】洗浄によって高温となったワークに直接触れることなく、ワーク保持治具からワークを取り出す等の作業を行う。
【解決手段】洗浄ステーション14に組み込まれたワーク搬送装置18は、ワークとしてのシリンダヘッド12のバスケット10(ワーク保持治具)までの搬送、バスケット10に収容されたシリンダヘッド12の洗浄装置16への投入、洗浄が終了したシリンダヘッド12の洗浄装置16からの導出、シリンダヘッド12のバスケット10からの取り出しを行うためのものである。シリンダヘッド12をバスケット10から取り出すための払出コンベア28には、取出機構を構成する払出レバー152、引出レバー156等が設けられ、シリンダヘッド12は、これらが変位する際、バスケット10の内部に設けられた案内用ローラ84に案内される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送してワーク保持治具に収容し、この状態で洗浄装置に投入するとともに、洗浄が終了した前記ワークを前記ワーク保持治具から取り出して搬送するためのワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関を構成するシリンダヘッドは、鋳造成形品に対してバリ取り等が施されることによって作製される。このようにして得られたシリンダヘッドには、鋳造時に成形型に塗布された離型材等の油脂分や、バリ取り時に発生した研削粉が付着していることが通例である。そこで、シリンダヘッドを、例えば、特許文献1に記載される洗浄装置に投入し、これら油脂分や研削粉等を除去して清浄化した後、シリンダブロックと連結して内燃機関を組み立てるようにしている。
【0003】
ここで、洗浄装置の内部では、シリンダヘッドが回転される。シリンダヘッドの全体を万遍なく清浄化するためである。しかしながら、シリンダヘッドは一般的に略直方体形状であるので、シリンダヘッドを単体で回転させることは困難である。そこで、特許文献1における丸篭にワークを収容する旨の記載に準拠し、シリンダヘッドを円筒形状の保持治具の内部に収容し、この保持治具ごとシリンダヘッドを回転することが想起される。
【0004】
この種の保持治具としては、例えば、特許文献2においてバレルと呼称されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−43512号公報
【特許文献2】特開平2−285083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されたバレルは、ビスやナット、釘等を洗浄するためのものであるが、このバレルを用いてシリンダヘッドを洗浄する場合、シリンダヘッドをバレルに収容した後、該バレルの両端部を回転円盤で封止することになる。また、洗浄が終了した後は、バレルから回転円盤を取り外し、バレルの内部からシリンダヘッドを導出する必要がある。
【0007】
周知のように、洗浄は高温で行われる。すなわち、特許文献2記載のバレルを用いた場合には、作業者は、高温となったバレル及びシリンダヘッドを扱わなければならなくなるが、高温の物体を取り扱うこと自体、容易なことではない。
【0008】
バレル及びシリンダヘッドを容易に取り扱うためには、これらバレル及びシリンダヘッドを冷却して降温させればよい。しかしながら、そのために待機時間が必要となるので、内燃機関を効率よく組み立てることができなくなるという不具合を招いてしまう。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、作業者がワークに直接触れることなくワークの収容・取り出しを容易に行うことが可能であり、このために洗浄効率を向上させ得るワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、ワークを搬送してワーク保持治具に収容し、この状態で洗浄装置に投入するとともに、洗浄が終了した前記ワークを前記ワーク保持治具から取り出して搬送するためのワーク搬送装置であって、
前記ワーク保持治具は、前記ワークを囲繞する複数本のフレーム部材と、
前記複数本のフレーム部材の一端部が連結され、前記ワークを収容するための挿入入口が形成された第1円盤状部材と、
前記複数本のフレーム部材の残余の一端部が連結され、前記ワークを取り出すための取出口が形成された第2円盤状部材と、
前記第1円盤状部材と前記第2円盤状部材の間に配設され、前記ワークを案内する案内部材と、
前記ワークを前記案内部材側に押圧することで位置決め固定するワーク位置決め固定用押圧部材と、
を有するものであり、
前記ワーク保持治具内の前記ワークを取り出す取出機構は、前記ワークの一端部に当接し、この状態で該取出機構が変位することで前記ワークを前記案内部材の案内作用下に移動させて前記取出口から導出することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明においては、ワーク保持治具の内部に案内手段を設けるようにしている。この案内手段は、ワークをワーク保持治具に収容する際、及びワーク保持治具から取り出す際、ワークを案内する。このため、ワークをワーク保持治具に対して収容又は導出することが容易となる。
【0012】
従って、例えば、ワーク保持治具内のワークに対して取出機構、例えば、フック等を当接させ、この状態で前記フック等を引っ張る(変位させる)ことにより、ワーク保持治具内からワークを容易に導出することができる。このため、作業者は、洗浄によって高温となったワークに直接触れることなくワークをワーク保持治具から取り出し、次工程に送ることができるようになる。従って、各作業を安全に遂行することができる。
【0013】
しかも、この場合、ワーク保持治具内へのワークの収容、及びワーク保持治具からのワークの取り出しを、ワーク保持治具を組み立てないし解体することなく行うことができる。従って、作業効率、ひいてはワークの洗浄効率が大きく向上する。
【0014】
その上、ワーク保持治具が第1円盤状部材及び第2円盤状部材を備えているので、洗浄時には、これら第1円盤状部材及び第2円盤状部材を回転させることにより、ワーク保持治具の全体をワークごと回転させることもできる。従って、ワークを満遍なく洗浄することが可能である。
【0015】
ワーク保持治具の取出口には、ワークに対して抜け止めをなすためのストッパが設けられることがある。これにより、洗浄時にワークがワーク保持治具から脱落することが回避されるからである。
【0016】
このような場合には、ワーク搬送装置に、前記ストッパを解除するためのストッパ解除用カムを設けることが好ましい。これにより、作業者がワーク保持治具ないしストッパに触れることなく、ワーク保持治具からワークを取り出すことが可能な状態に設定することができる。
【0017】
ストッパ解除用カムを設ける場合、第1円盤状部材及び第2円盤状部材を回転させることでワーク保持治具を回転させる位相合わせ機構をワーク搬送装置に設けることが好ましい。この位相合わせ機構によって、ストッパを、ストッパ解除用カムで解除することが可能な位相に調整するようにすれば、ストッパを確実に解除し得るようになる。
【0018】
第1円盤状部材及び第2円盤状部材に噛合部が形成されているときには、位相合わせ機構に、この噛合部に噛合する噛合部が形成された歯車を組み込むことが好ましい。このような構成とすることにより、歯車を回転させることに伴って第1円盤状部材及び第2円盤状部材、ひいてはワーク保持治具を容易に回転させることができる。すなわち、位相合わせを容易に行うことができるようになる。
【0019】
さらに、第1円盤状部材及び第2円盤状部材を把持するクランプ機構を設けることが好ましい。クランプ機構で第1円盤状部材及び第2円盤状部材を把持することにより、ワーク保持治具を引き寄せる作業が著しく容易となる。従って、例えば、洗浄が終了したワークをワーク保持治具ごと洗浄装置から容易に取り出すことができる。
【0020】
この種のクランプ機構は、例えば、第1円盤状部材及び第2円盤状部材のそれぞれの側壁に臨んで位置決め固定された位置固定ローラと、第1円盤状部材及び第2円盤状部材のそれぞれに対して接近又は離間する移動ローラとを含めるようにして構成すればよい。この場合、移動ローラが第1円盤状部材及び第2円盤状部材に対して接近したとき、位置固定ローラと移動ローラとの間に第1円盤状部材及び第2円盤状部材のそれぞれを介在させれば、第1円盤状部材及び第2円盤状部材のそれぞれが、位置固定ローラ及び移動ローラによって把持される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワーク保持治具の内部に案内手段を設け、この案内手段の案内作用下に、ワークをワーク保持治具に収容したり、ワーク保持治具から取り出すようにしている。このため、ワークをワーク保持治具に対して収容又は導出することが容易となるので、ワーク保持治具内のワークに対して取出機構(フック等)を当接させ、次に、この状態で前記取出機構を変位させるようにすれば、ワーク保持治具内からワークを容易に導出することができる。
【0022】
すなわち、ワーク保持治具に案内手段を設け、且つワーク搬送装置に取出機構を設けたことにより、作業者は、洗浄によって高温となったワークに直接触れることなくワークをワーク保持治具から取り出すことができる。従って、各作業を安全に遂行することができる。
【0023】
しかも、ワーク保持治具は、第1円盤状部材及び第2円盤状部材を備えているので、例えば、ワーク保持治具の取出口にストッパが設けられている場合であっても、これら第1円盤状部材及び第2円盤状部材を回転させてワーク保持治具の全体を回転させることにより、このストッパを解除するためにストッパとストッパ解除用カムとの位相合わせを行うことも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ワークとしてのシリンダヘッドを洗浄するための洗浄ステーションの要部概略斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るワーク保持治具(バスケット)の全体概略斜視図である。
【図3】前記ワーク保持治具を構成する第2円盤状部材の近傍を示す要部概略斜視図である。
【図4】前記第2円盤状部材の近傍を図3とは別の角度から示す要部概略斜視図である。
【図5】前記洗浄ステーションを構成する洗浄装置に対してシリンダヘッドをワーク保持治具ごと投入・導出するための投入・導出機構の全体概略斜視図である。
【図6】ワーク保持治具を回転させる位相合わせ機構の要部概略斜視図である。
【図7】前記位相合わせ機構を図3とは別の角度から示す要部概略斜視図である。
【図8】ワーク保持治具の第1円盤状部材及び第2円盤状部材を把持するクランプ機構(バスケットクランプ)の要部概略斜視図である。
【図9】洗浄が終了したシリンダヘッドをワーク保持治具から取り出すための払出コンベアに設置された走査用フレームの全体概略斜視図である。
【図10】前記払出コンベアを、図9の走査用フレームを割愛した状態で示す要部概略斜視図である。
【図11】図9に示される払出レバー及び払出フックによってシリンダヘッドを移送する状態を示す要部概略斜視図である。
【図12】シリンダヘッドをワーク保持治具から取り出すための掛合用キーを示す要部概略斜視図である。
【図13】図11に示される状態からシリンダヘッドの移送が終了した状態を示す要部概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るワーク搬送装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、ワーク保持治具としてのバスケット10を使用してワークであるシリンダヘッド12(図2参照)を洗浄するための洗浄ステーション14の要部概略斜視図である。この洗浄ステーション14には、シリンダヘッド12に対して洗浄を行うための洗浄装置16と、前工程のステーションからシリンダヘッド12を洗浄装置16まで搬入するとともに、洗浄が終了したシリンダヘッド12を洗浄装置16から搬出するための本実施の形態に係るワーク搬送装置18が設けられる。
【0027】
なお、図1における参照符号20は、シリンダヘッド12を挿入又は取り出すために洗浄装置16に形成された搬入出口を示す。洗浄装置16としては、例えば、前記特許文献1に開示されたもの等、公知のものを採用すればよい。
【0028】
この場合、ワーク搬送装置18は、第1支持基台22に支持されたローラコンベア24と、前記バスケット10を洗浄装置16に投入又は導出するための投入・導出機構26と、第2支持基台27に支持されて前記バスケット10からシリンダヘッド12を取り出して次工程に送るための払出コンベア28とを備える。
【0029】
ローラコンベア24は、上記から諒解されるように、シリンダヘッド12をバスケット10まで搬送するための複数個の搬送用ローラ30を有し、各搬送用ローラ30は、図示しない駆動源の作用下に互いに同期して回転する。
【0030】
バスケット10は、図2に示すように、第1円盤状部材40と第2円盤状部材42の間に複数本の橋架用フレーム部材44が橋架されるとともに、橋架用フレーム部材44、44同士に補強用フレーム部材46が連結されることで構成されている。補強用フレーム部材46は、橋架用フレーム部材44、44同士の間の間隙からシリンダヘッド12が脱落することを防止するための抜け止めとしても機能する。なお、以下においては、これら第1円盤状部材40、第2円盤状部材42、橋架用フレーム部材44及び補強用フレーム部材46によって形成される空間をバスケット10の内部とする。
【0031】
ローラコンベア24に臨む第1円盤状部材40には、その側壁に第1スリット48(噛合部)が形成されるとともに、その端面に、シリンダヘッド12を挿入するための収容入口50が形成される。一方、払出コンベア28に臨む第2円盤状部材42の側壁にも同様に第2スリット52(噛合部)が形成され、且つその端面に、図3に示すように、シリンダヘッド12を取り出すための取出口54が形成される。収容入口50(図2参照)には、第1ストッパであるアンチバックストッパ56が設けられ、取出口54(図3参照)には、第2ストッパである揺動ストッパ58が設けられる。
【0032】
アンチバックストッパ56(図2参照)は、スイッチ形状の進退ストッパ部材60を備え、この進退ストッパ部材60は、該進退ストッパ部材60の一端部をストッパ部材用ブラケット62に軸止する支軸64を支点として揺動する。すなわち、ストッパ部材用ブラケット62にはコイルスプリング(図示せず)が収容されており、このコイルスプリングが、進退ストッパ部材60における残余の一端部をストッパ部材用ブラケット62から離間する方向(図2における上方)に向かって弾発付勢している。
【0033】
従って、進退ストッパ部材60におけるコイルスプリングに支持された一端部に外力が付加されると、進退ストッパ部材60は、コイルスプリングが収縮することに伴って、支軸64を支点としてストッパ部材用ブラケット62内に進入するように揺動する。一方、外力が取り除かれたときには、コイルスプリングの弾発作用下に、支軸64を支点としてストッパ部材用ブラケット62から突出するように揺動する。すなわち、アンチバックストッパ56は、ストッパ部材用ブラケット62から露呈した進退ストッパ部材60の一端部(コイルスプリングに支持された端部)に外力が加わったときにはじめて揺動する。
【0034】
一方の揺動ストッパ58は、図3に示すように、第2円盤状部材42の端面に固定されたストッパ用連結部材66に止めピン68を介して連結された揺動ストッパ部材70を備える。この揺動ストッパ部材70は、シリンダヘッド12がバスケット10内の所定の位置に到達した際に、図4に示す揺動機構72の作用下に自動的に揺動する。なお、図4は、バスケット10を下方から示した要部概略斜視図であり、紙面の奥方向になるにつれてバスケット10の上方に向かう。
【0035】
この揺動機構72は、アーム状カム部材74と、このアーム状カム部材74の一端部に連結回転軸76を介して連結された引張アーム部材78と、該引張アーム部材78から略90°折曲するように取り付けられた揺動レバー80と、該揺動レバー80と揺動ストッパ部材70に連結された引張バー82とを有する。なお、アーム状カム部材74は、連結回転軸76が連結されていない残余の一端部のみがシリンダヘッド12に対して当接可能である。
【0036】
このアーム状カム部材74の一端部にシリンダヘッド12が乗り上げると、該一端部がシリンダヘッド12によって押し下げられ、連結回転軸76を支点に若干揺動する。これに伴って連結回転軸76が若干回転動作することに追従し、引張アーム部材78がアーム状カム部材74と同一方向に揺動することで揺動レバー80を引っ張る。従って、揺動レバー80が降下し、同時に引張バー82が降下する。この引張バー82の降下に追従して、揺動ストッパ部材70が止めピン68を支点として取出口54を閉塞する方向に揺動するようになっている。
【0037】
なお、図3及び図4においては、揺動ストッパ部材70が取出口54を閉塞する前の状態、換言すれば、開放している状態を示している。
【0038】
図2及び図3に示すように、バスケット10の内部には、シリンダヘッド12の下方に対応する位置に、複数個の案内用ローラ84(案内部材)が橋架用フレーム部材44に対して平行に延在するように並列配置されている。案内用ローラ84を保持する保持盤85は、橋架用フレーム部材44に連結されることで位置決め固定されている。
【0039】
図2に示すように、橋架用フレーム部材44中の前記案内用ローラ84と対向するものには貫通孔が形成され、この貫通孔には、把持機構を構成する長尺なクランプ用ハンドル86が通される。このクランプ用ハンドル86の先端部にはねじ部(図示せず)が形成されており、このねじ部は、シリンダヘッド12の長手方向に略直交する方向に延在する固定用押圧部材としてのクランプ用バー88(図3参照)の図示しないねじ部に螺合されている。クランプ用ハンドル86が緊締される方向に螺回されると、クランプ用バー88がシリンダヘッド12の上端面を押圧し、これにより、シリンダヘッド12が案内用ローラ84とクランプ用ハンドル86とで把持される。換言すれば、シリンダヘッド12の位置決め固定がなされる。
【0040】
反対に、クランプ用ハンドル86が弛緩する方向に螺回されると、クランプ用バー88がシリンダヘッド12の上端面から離間する。すなわち、シリンダヘッド12が案内用ローラ84とクランプ用ハンドル86との把持から解放される。
【0041】
図1及び図5に示すように、投入・導出機構26は、基盤90と、基盤90上に立設された第1架台92及び第2架台94と、バスケット10の第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42を把持するクランプ機構としてのバスケットクランプ96と、該バスケットクランプ96に把持されたバスケット10を洗浄装置16の搬入出口20に対して接近又は離間する方向に変位させるための搬入出レバー98とを有する。勿論、バスケット10は、ローラコンベア24の搬送用ローラ30によって搬送されるシリンダヘッド12が収容入口50に挿入可能な高さで、位相合わせ機構100上に保持されている。
【0042】
第1架台92及び第2架台94の間には、支持盤102が配設される。この支持盤102には、長尺な搬入出レバー98を略水平方向に延在するような姿勢に保つための第1支持バー104及び第2支持バー106が傾動自在に設けられる。これら第1支持バー104及び第2支持バー106によって搬入出レバー98の姿勢が略水平方向に保たれるため、作業者は、洗浄装置16の搬入出口20に対して接近又は離間する方向に沿って搬入出レバー98を容易に変位させることができる。
【0043】
ここで、前記位相合わせ機構100につき説明する。この位相合わせ機構100は、第1架台92の上端面上に設けられた主動ギヤ108と、第2架台94の上端面上に設けられた従動ギヤ110とを有する。
【0044】
図6及び図7から諒解されるように、主動ギヤ108を構成する2個の主動歯車112a、112bは、ギヤ回転用ハンドル114の作用下に回転動作する。すなわち、ギヤ回転用ハンドル114に連結された回転シャフト116の側壁には、2個のハンドル側傘歯車118a、118b(図6参照)が外嵌される。これらハンドル側傘歯車118a、118bは、主動歯車112a、112bの端部に設けられた主動歯車側傘歯車120a、120bの図示しない歯部にそれぞれ噛合しており、このため、ギヤ回転用ハンドル114が回転されると、回転シャフト116及びハンドル側傘歯車118a、118bが回転することに追従して主動歯車側傘歯車120a、120b、ひいては主動歯車112a、112bが回転する。
【0045】
主動歯車112a、112bの図示しない歯部は、バスケット10の第2円盤状部材42に形成された第2スリット52に噛合する。その一方で、第1円盤状部材40の第1スリット48には、従動ギヤ110を構成する2個の従動歯車122a、122bの図示しない歯部が噛合する。従って、バスケット10は、上記した順序で主動歯車112a、112bに回転駆動力が伝達されることに伴って主動歯車112a、112bの回転方向とは逆方向に回転し、この際、従動歯車122a、122bを主動歯車112a、112bと同一方向に回転させる。
【0046】
バスケット10は、該バスケット10の所定部位、例えば、クランプ用ハンドル86が略鉛直上方を臨むまで上記のようにして回転され、これにより、位相合わせが行われる。
【0047】
バスケットクランプ96(図1及び図5参照)は、バスケット10を主動ギヤ108及び従動ギヤ110から洗浄装置16の搬入出口20まで前進させる際、又は、洗浄が終了して前記搬入出口20まで搬送され、上記のようにして位相合わせが行われたバスケット10を主動ギヤ108及び従動ギヤ110まで後退させる際に、バスケット10を把持するためのものである。
【0048】
図8に示すように、バスケットクランプ96は、バスケット10の長手方向に沿って延在して2個のクランプ用小ローラ(移動ローラ)124a、124b及び2個のクランプ用大ローラ(位置固定ローラ)126a、126bを保持したローラ保持板128と、搬入出レバー98と略平行に延在して位置調整用ハンドル130が設けられたハンドル保持板132とを有する。
【0049】
この中、ハンドル保持板132の内部には、位置調整用ハンドル130に連結されて伸縮可能な伸縮ロッド(図示せず)が通されている。また、ハンドル保持板132から露呈した伸縮ロッドの先端には、クランプ用小ローラ124a、124b同士を接近又は離間させるための2本の変位用バー134a、134bの各端部が連結されたバー連結ジョイント136が外嵌される。
【0050】
図8に仮想線で示すように、位置調整用ハンドル130が回転されると、前記伸縮ロッドが回転することに追従してバー連結ジョイント136が所定角度だけ回動する。ここで、位置調整用ハンドル130には2個のロック用凸部138a、138bが突出形成され、一方、ハンドル保持板132における位置調整用ハンドル130を臨む側の端部には、4個のロック用凹部140a〜140dが陥没形成される。ロック用凸部138a、138bがロック用凹部140a、140c又はロック用凹部140b、140dのいずれかに嵌合されることにより、バー連結ジョイント136が実線又は仮想線で示される位置のいずれかに固定される。
【0051】
変位用バー134a、134bの各端部には、バー用ブラケット142a、142bが連結されている。さらに、これらバー用ブラケット142a、142bには、それぞれ、ガイドバー144a、144bを介してフック部材146a、146bが保持されている。前記クランプ用小ローラ124a、124bは、第1円盤状部材40又は第2円盤状部材42の各々を臨むようにして、フック部材146a、146bの先端部に回転自在に取り付けられている。なお、フック部材146a、146bは、ローラ保持板128の長手方向両端部近傍に位置する。
【0052】
ローラ保持板128におけるフック部材146a、146bの近傍には、それぞれ、大ローラ用ブラケット148a、148bが固定されている。これら大ローラ用ブラケット148a、148bには、その側壁が前記クランプ用小ローラ124a、124bの側壁に対向するようにして、前記クランプ用大ローラ126a、126bが回転自在に保持されている。
【0053】
クランプ用小ローラ124a、124bは、バー連結ジョイント136が回転動作することに伴って変位用バー134a、134b、バー用ブラケット142a、142b、ガイドバー144a、144b及びフック部材146a、146bがローラ保持板128の長手方向に沿って平行移動することに追従し、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42の各々に対して接近又は離間する。勿論、クランプ用小ローラ124a、124bは、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42から最大に離間したときには第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42の第1スリット48、第2スリット52に当接しない位置となり、一方、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42に最大に接近したときには、第1スリット48、第2スリット52を間にしてクランプ用大ローラ126a、126bに対向する。換言すれば、クランプ用小ローラ124a、124bが第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42に接近したとき、第1スリット48、第2スリット52は、クランプ用小ローラ124a、124bとクランプ用大ローラ126a、126bの間に位置する。
【0054】
なお、第1架台92及び第2架台94の上端面には、洗浄装置16の搬入出口20に沿って延在する搬入出用ガイドローラ150a、150bがそれぞれ設けられている(図5参照)。バスケット10の第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42は、該バスケット10が洗浄装置16内に投入される際、又は洗浄装置16から取り出される際、これら搬入出用ガイドローラ150a、150bによって滑動しながら、主動ギヤ108及び従動ギヤ110から洗浄装置16の搬入出口20に、又はその逆方向に案内される。
【0055】
投入・導出機構26の下流側に配設された払出コンベア28(図1参照)には、図9に示すように、取出機構を構成する払出レバー152を走査させるための走査用フレーム154が設置される。バスケット10から取り出されたシリンダヘッド12は、この走査用フレーム154によって形成される内部空間に収容される。
【0056】
走査用フレーム154の図示を省略した図10及び図11に示すように、払出コンベア28には、前記取出機構を構成する引出レバー156が変位自在に設けられる。この引出レバー156の先端部には、互いに平行に延在する搬送用ローラ158、158の間に配設された変位板160が連結されている。すなわち、変位板160は、引出レバー156が作業者によって払出コンベア28の長手方向に沿って変位されることに伴い、搬送用ローラ158、158の延在方向に沿って変位する。
【0057】
図10及び図12に示すように、変位板160の先端部には、前記アンチバックストッパ56(図2参照)と略同様に構成されて前記取出機構を掛合用キー162が設けられる。すなわち、この掛合用キー162は、スイッチ形状の掛合部材164を備え、この掛合部材164は、キー用ブラケット166に収容されたコイルスプリング(図示せず)に支持された一端部に外力が付加されるとキー用ブラケット166内に進入するように揺動し、一方、外力が取り除かれたときには、コイルスプリングの弾発作用下に、キー用ブラケット166から突出するように揺動する。
【0058】
図12から諒解されるように、変位板160の先端部には、掛合用キー162に対して解除用カム部材(ストッパ解除用カム)168が並設される。後述するように、この解除用カム部材168がアーム状カム部材74(図4参照)に当接することにより、揺動ストッパ部材70が取出口54を開放するように元の位置に戻る。
【0059】
走査用フレーム154の上部には、図9に示すように、2本の走査用レール170a、170bが設けられており、各走査用レール170a、170bに跨るようにしてスライダ172a、172bが摺動自在に載置される。スライダ172a、172bには橋架部材174が橋架されるとともに、この橋架部材174の上方に保持された略直方体形状のレバー保持部材176に、前記払出レバー152が連結される。
【0060】
レバー保持部材176及び橋架部材174には、前記取出機構を構成する略丸棒形状の払出フック180(図11参照)が通される貫通孔がそれぞれ形成される。また、レバー保持部材176の両側面には、所定角度で傾斜した係合溝182がそれぞれ形成され、両係合溝182、182には、払出フック180の長手方向に対して略直交する方向に延在するようにして払出フック180に嵌合された係合ピン184が通される。払出フック180の先端部の位置は、この係合ピン184が係合溝182に沿って変位されることによって変化する。
【0061】
すなわち、払出フック180の先端部は、係合ピン184が係合溝182における最も高い位置に移動されたときにはシリンダヘッド12に当接しない位置まで上昇し、一方、係合溝182における最も低い位置に移動されたときには、シリンダヘッド12に当接する位置となる。図11においては、払出フック180の先端部がシリンダヘッド12に当接したときの状態が示されている。
【0062】
本実施の形態に係るワーク搬送装置18は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、バスケット10(ワーク保持治具)との関係で説明する。
【0063】
前工程(例えば、バリ取り工程)を終了したシリンダヘッド12は、油脂分や研削個等が付着した状態で、搬送用ローラ30に案内されながらローラコンベア24に沿ってバスケット10まで搬送される。そして、第1円盤状部材40に形成された収容入口50を通過した後、バスケット10の内部に設けられた案内用ローラ84に受け渡しされ、以降は該案内用ローラ84で案内されることによってバスケット10内に収容される。
【0064】
収容入口50には、上記したように、アンチバックストッパ56が配設されている(図2参照)。シリンダヘッド12は、収容入口50を通過する際、このアンチバックストッパ56を構成する進退ストッパ部材60を上方から押圧し、これにより、支軸64を支点として該進退ストッパ部材60を図2における下方に揺動させる。従って、進退ストッパ部材60によってシリンダヘッド12の収容が妨げられることはない。
【0065】
シリンダヘッド12がバスケット10に収容されて進退ストッパ部材60を通過すると、該進退ストッパ部材60は、前記コイルスプリングの弾発作用下に支軸64を支点として揺動し、ストッパ部材用ブラケット62から突出する。この突出した部分が、シリンダヘッド12を堰止する。この堰止により、シリンダヘッド12が収容入口50から脱落することが防止される。
【0066】
以上から諒解されるように、アンチバックストッパ56によって、シリンダヘッド12の収容入口50からの抜け止めがなされる。
【0067】
シリンダヘッド12がバスケット10内部の所定位置まで到達すると、該シリンダヘッド12は、揺動機構72を構成するアーム状カム部材74(図4参照)の一端部に乗り上げる。これに伴って該一端部が連結回転軸76を支点に押し下げられるようにアーム状カム部材74が若干揺動し、その結果、連結回転軸76が若干回転動作して引張アーム部材78がアーム状カム部材74と同一方向に揺動される。
【0068】
これにより揺動レバー80が引っ張られて降下し、同時に、引張バー82が降下する。この降下に追従して、揺動ストッパ部材70が止めピン68を支点として取出口54を閉塞する方向に略90°揺動する。この揺動した揺動ストッパ部材70がシリンダヘッド12を堰止することにより、シリンダヘッド12の取出口54からの脱落防止、換言すれば、抜け止めがなされる。
【0069】
このようにしてバスケット10内にシリンダヘッド12が収容された後、次に、作業者は、クランプ用ハンドル86(図2参照)を螺回し、クランプ用バー88(図3参照)をシリンダヘッド12側に変位させる。最終的に、クランプ用バー88の端面をシリンダヘッド12の上端面に着座させ、さらに螺回を続行して、クランプ用バー88と案内用ローラ84とでシリンダヘッド12を堅牢に挟持する。この挟持により、シリンダヘッド12が位置決め固定される。すなわち、バスケット10内でシリンダヘッド12が移動することが防止される。
【0070】
次に、作業者は、投入・導出機構26(図5参照)を構成する搬入出レバー98を洗浄装置16の搬入出口20側に向かって押圧する。なお、この作業に先んじて、バスケット10の位相合わせ(後述)を行うようにしてもよいが、この時点では位相合わせを行わなくとも差し支えは特にない。また、クランプ用大ローラ126a、126bとクランプ用小ローラ124a、124bで第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42をクランプする必要も特にないが、これらクランプ用大ローラ126a、126bとクランプ用小ローラ124a、124bで第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42をクランプするようにしてもよいことは勿論である。
【0071】
搬入出レバー98が洗浄装置16の搬入出口20側に向かって押圧されると、該搬入出レバー98が搬入出口20側に変位し、大ローラ用ブラケット148a、148bを介してローラ保持板128に保持されたクランプ用大ローラ126a、126bが第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42を押圧する。この押圧によって、主動ギヤ108及び従動ギヤ110と第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42との各噛合が解かれ、シリンダヘッド12を収容したバスケット10が搬入出口20に向かって変位し始める。
【0072】
バスケット10は、搬入出用ガイドローラ150a、150bに受け渡され、その後、この搬入出用ガイドローラ150a、150bに案内されながら変位して搬入出口20に到達し、洗浄装置16の内部に設けられて該搬入出口20で待機するリフタに受け渡される。この段階で作業者が搬入出レバー98を引っ張ることにより、該搬入出レバー98が元の位置に戻る。
【0073】
以降、バスケット10は、前記リフタ(図示せず)によって高温の洗浄液に浸漬され、且つシリンダヘッド12ごと回転される。この回転によって洗浄が実施され、シリンダヘッド12から油脂分や研削粉が除去される。しかも、バスケット10は略円筒形状をなしているため、洗浄中に容易に回転する。このため、シリンダヘッド12が効率よく洗浄される。
【0074】
以上の動作及び洗浄に関しては前記特許文献1に詳述されており、従って、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0075】
上記したように、シリンダヘッド12は、クランプ用バー88及び案内用ローラ84で挟持されることで位置決め固定されている。従って、洗浄の最中、シリンダヘッド12が移動することが防止される。
【0076】
仮に、何らかの原因でクランプ用バー88が弛緩し、シリンダヘッド12がバスケット10内を移動した場合であっても、アンチバックストッパ56及び揺動ストッパ58によってシリンダヘッド12が堰止される。このため、シリンダヘッド12が収容入口50又は取出口54から脱落することが回避される。
【0077】
所定時間が経過して洗浄が終了すると、前記リフタの作用下に、バスケット10が搬入出口20に到達する。バスケット10及びシリンダヘッド12は、高温の洗浄液に浸漬されたため、高温となっている。
【0078】
次に、作業者は、搬入出レバー98を再押圧し、バスケットクランプ96を構成するクランプ用大ローラ126a、126bを第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42に近接させる。そして、位置調整用ハンドル130(図8参照)をバスケット10から離間する方向に引っ張り、これにより前記伸縮ロッドを伸張させ、ロック用凸部138a、138bをロック用凹部140a、140cから離脱させる。
【0079】
この状態で、位置調整用ハンドル130を回転させれば、前記伸縮ロッド及びバー連結ジョイント136が所定角度だけ回動する。この回動に追従してバー用ブラケット142a、142b、ガイドバー144a、144b、及びフック部材146a、146bがハンドル保持板132の長手方向に沿って第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42に接近する方向に平行移動し、最終的に、クランプ用小ローラ124a、124bが、該クランプ用小ローラ124a、124bとクランプ用大ローラ126a、126bの間に第1円盤状部材40が介在する位置に配置される。
【0080】
このようにしてクランプ用小ローラ124a、124bが変位した後、伸縮ロッドを短縮させるとともに、ロック用凸部138a、138bをロック用凹部140b、140dに係合させる。これにより、クランプ用小ローラ124a、124bが上記の位置で位置決め固定される。
【0081】
従って、作業者が搬入出レバー98を引っ張ると、クランプ用小ローラ124a、124bが第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42にそれぞれ当接し、さらに、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42を主動ギヤ108及び従動ギヤ110側に向かって押圧する。これにより、バスケット10が搬入出用ガイドローラ150a、150bを滑動して主動ギヤ108及び従動ギヤ110まで変位するとともに、第2円盤状部材42の第2スリット52が主動ギヤ108を構成する主動歯車112a、112bに噛合し、且つ第1円盤状部材40の第1スリット48が従動ギヤ110を構成する従動歯車122a、122bに噛合する。
【0082】
すなわち、バスケットクランプ96でバスケット10を把持することにより、該バスケット10を洗浄装置16の搬入出口20から取り出し、位相合わせ機構100まで搬送することが容易となる。
【0083】
次に、バスケット10に対して位相合わせを行う。すなわち、アーム状カム部材74と解除用カム部材168との位相を合わせる。
【0084】
具体的には、作業者は、ギヤ回転用ハンドル114(図6及び図7参照)を把持して回転させる。この回転により、回転シャフト116の側壁に外嵌されたハンドル側傘歯車118a、118b、及び該ハンドル側傘歯車118a、118bに噛合する主動歯車側傘歯車120a、120bが回転し、その結果、主動歯車112a、112bが回転する。
【0085】
上記したように、主動歯車112a、112bは、第2円盤状部材42に形成された第2スリット52に噛合している。このため、主動歯車112a、112bが回転することに追従して第2円盤状部材42が回転し始める。勿論、第1円盤状部材40の第1スリット48に噛合した従動歯車122a、122bも回転し、結局、バスケット10全体がシリンダヘッド12ごと回転する。
【0086】
アーム状カム部材74と解除用カム部材168の位置は、クランプ用ハンドル86が鉛直上方を向いたときに一致する。従って、作業者は、この状態となったときにギヤ回転用ハンドル114の回転を終了すればよい。
【0087】
次に、シリンダヘッド12を払出コンベア28まで移送する。具体的には、図9に示される引出レバー156をバスケット10側(投入・導出機構26側)に変位することで変位板160を変位させ、アーム状カム部材74を解除用カム部材168(図12参照)に当接させるとともに、掛合用キー162をシリンダヘッド12の下端面に当接させてキー用ブラケット166に収容される方向に掛合部材164を揺動させる。
【0088】
解除用カム部材168にアーム状カム部材74(図4参照)が当接すると、該アーム状カム部材74及び引張アーム部材78が上記とは逆方向に揺動し、揺動レバー80及び引張バー82が上昇する。その結果、揺動ストッパ部材70が止めピン68を支点として取出口54を開放する方向に略90°揺動する。
【0089】
一方、掛合部材164(図12参照)は、シリンダヘッド12の下端面の所定部位に形成された陥没に位置すると、キー用ブラケット166から突出する方向に揺動する。その結果、該掛合部材164が陥没に掛合する。
【0090】
この状態で、作業者が引出レバー156を把持してバスケット10から離間する方向(投入・導出機構26から離間する方向)に変位させると、シリンダヘッド12が案内用ローラ84に案内されながら取出口54に移動し、バスケット10の取出口54から導出される。上記したように、掛合部材164が陥没に掛合するとともに、揺動ストッパ部材70が取出口54を開放する方向に揺動しているからである。
【0091】
次に、走査用レール170a、170bに沿って払出レバー152が走査用フレーム154の図11における右端まで移動される。勿論、この際には、係合ピン184が係合溝182における最も高い位置に移動されることで、払出フック180の先端部がシリンダヘッド12に当接しない位置まで上昇されている。
【0092】
払出レバー152が走査用フレーム154の図11における右端まで移動された後、係合ピン184が係合溝182に沿って該係合溝182の最も低い位置に移動される。これに伴い、払出フック180の先端部が下降する。
【0093】
以降は、払出レバー152を把持し、該払出レバー152を走査用レール170a、170bに沿って図11における左方向に移動させれば、払出フック180の先端部がシリンダヘッド12に当接して押圧するようになる。この押圧によって、シリンダヘッド12が搬送用ローラ30に案内されながら、図11における左方向にさらに移動する。これにより、図13に示すようにシリンダヘッド12が払出コンベア28の最左端に位置し、次工程に搬送する準備が整う。
【0094】
以上から諒解されるように、本実施の形態によれば、バスケット10の内部に案内用ローラ84を設け、バスケット10にシリンダヘッド12を収容する際、及びバスケット10からシリンダヘッド12を導出する際、この案内用ローラ84で案内するようにしている。従って、作業者は、高温となったシリンダヘッド12及びバスケット10に触れることなく、洗浄装置16へのバスケット10の搬入・搬出や、バスケット10からのシリンダヘッド12の取り出し、さらには、シリンダヘッド12の払出コンベア28への移送を行うことができる。このため、各作業を安全に遂行することができる。
【0095】
しかも、バスケット10内へのシリンダヘッド12の収容、及びバスケット10からのシリンダヘッド12の取り出しを、バスケット10を組み立てないし解体することなく行うことができる。従って、作業を効率よく進行させることができる。結局、シリンダヘッド12の洗浄効率が格段に向上するという利点が得られる。
【0096】
なお、上記した実施の形態では、バスケット10(ワーク保持治具)に保持されるワークとしてシリンダヘッド12を例示して説明したが、ワークがこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0097】
また、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42に第1スリット48及び第2スリット52を設けることなく、且つ主動歯車112a、112b及び従動歯車122a、122bに代替してピンチローラを採用し、第1円盤状部材40及び第2円盤状部材42を前記ピンチローラで回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10…バスケット 12…シリンダヘッド
14…洗浄ステーション 16…洗浄装置
18…ワーク搬送装置 20…搬入出口
24…ローラコンベア 26…投入・導出機構
28…払出コンベア 40…第1円盤状部材
42…第2円盤状部材 44…橋架用フレーム部材
46…補強用フレーム部材 48…第1スリット
50…収容入口 52…第2スリット
54…取出口 56…アンチバックストッパ
58…揺動ストッパ 70…揺動ストッパ部材
72…揺動機構 84…案内用ローラ
86…クランプ用ハンドル 88…クランプ用バー
96…バスケットクランプ 98…搬入出レバー
100…位相合わせ機構 108…主動ギヤ
110…従動ギヤ 112a、112b…主動歯車
114…ギヤ回転用ハンドル 122a、122b…従動歯車
124a、124b…クランプ用小ローラ
126a、126b…クランプ用大ローラ
128…ローラ保持板 130…位置調整用ハンドル
132…ハンドル保持板 138a、138b…ロック用凸部
140a〜140d…ロック用凹部 152…払出レバー
154…走査用フレーム 156…引出レバー
160…変位板 162…掛合用キー
164…掛合部材 168…解除用カム部材
180…払出フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送してワーク保持治具に収容し、この状態で洗浄装置に投入するとともに、洗浄が終了した前記ワークを前記ワーク保持治具から取り出して搬送するためのワーク搬送装置であって、
前記ワーク保持治具は、前記ワークを囲繞する複数本のフレーム部材と、
前記複数本のフレーム部材の一端部が連結され、前記ワークを収容するための挿入入口が形成された第1円盤状部材と、
前記複数本のフレーム部材の残余の一端部が連結され、前記ワークを取り出すための取出口が形成された第2円盤状部材と、
前記第1円盤状部材と前記第2円盤状部材の間に配設され、前記ワークを案内する案内部材と、
前記ワークを前記案内部材側に押圧することで位置決め固定するワーク位置決め固定用押圧部材と、
を有するものであり、
前記ワーク保持治具内の前記ワークを取り出す取出機構は、前記ワークの一端部に当接し、この状態で該取出機構が変位することで前記ワークを前記案内部材の案内作用下に移動させて前記取出口から導出することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク搬送装置において、前記ワーク保持治具として、前記ワークに対して抜け止めをなすためのストッパが前記取出口に設けられたものを使用するときに、前記ストッパを解除するためのストッパ解除用カムを備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載のワーク搬送装置において、さらに、前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材を回転させることで前記ワーク保持治具を回転させ、前記ストッパを、前記ストッパ解除用カムで解除することが可能な位相に調整する位相合わせ機構を備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載のワーク搬送装置において、前記位相合わせ機構は、前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材に噛合部が形成されているときに、該噛合部に噛合する噛合部が形成された歯車を有することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置において、さらに、前記ワーク保持治具の前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材を把持するクランプ機構を備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載のワーク搬送装置において、前記クランプ機構は、前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材のそれぞれの側壁に臨んで位置決め固定された位置固定ローラと、前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材のそれぞれに対して接近又は離間する移動ローラとを有し、前記移動ローラが前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材に対して接近したときに、前記位置固定ローラと前記移動ローラとの間に前記第1円盤状部材及び前記第2円盤状部材のそれぞれが介在することを特徴とするワーク搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−264343(P2010−264343A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115931(P2009−115931)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】