説明

ワーク整列システムおよびワーク移動方法

【課題】整列するワークの種類を容易に変更できるワーク整列システムを提供すること。
【解決手段】ワーク整列システム1は、ナット11が収容された収容装置10と、ナット11が載置される取り出し台30と、この取り出し台30からナット11を把持して取り出して整列するロボット20と、を備える。ロボット20のロボットアーム23の先端には、電磁石53が設けられる。収容装置10は、異なる種類のナット11が収容された複数のバケット131〜134と、複数のバケット131〜134の中から選択された1つを取り出し台30の近傍に移動する送りねじ機構14と、を備える。取り出し台30は、ナット11が載置される載置部31と、載置部31上のナット11を複数のバケット131〜134の中から選択された1つに排出する駆動装置32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク整列システムおよびワーク移動方法に関する。詳しくは、ワークを把持して整列するワーク整列システムおよびワーク移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の製造ラインでは、ロボットにより、ワークに部品をボルトで取り付けることが行われる。このようなボルトは、パーツフィーダにより、ロボットに供給される。
パーツフィーダは、ホッパを備えており、このホッパに作業者がボルトを投入すると、この投入されたボルトを整列して排出するものである(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、1台のパーツフィーダで整列できるボルトは1種類であるため、製造ラインで複数種類のボルトを用いる場合には、複数台のパーツフィーダが必要になる。パーツフィーダは高価であるため、コストが上昇する、という問題があった。
【0004】
そこで、ボルトが供給される取り出し台と、この取り出し台に供給されたボルトを把持して整列するロボットが提案されている。このロボットによれば、どのような種類のボルトが供給されても、このボルトを把持して整列できるので、コストを低減できる。
【特許文献1】特開平6−126555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このロボットでは、ボルトの種類を変更する場合、人手で取り出し台からボルトを除去するか、あるいは、ボルトの種類毎に取り出し台を設ける必要があった。そのため、整列するボルトの種類を変更することが困難であり、稼働率が低下する、という問題があった。
【0006】
本発明は、整列するワークの種類を容易に変更できるワーク整列システムおよびワーク移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク整列システム(例えば、後述のワーク整列システム1)は、ワーク(例えば、後述のナット11)が収容された収容装置(例えば、後述の収容装置10)と、前記ワークが載置される取り出し台(例えば、後述の取り出し台30)と、当該取り出し台から前記ワークを把持して取り出して整列するロボット(例えば、後述のロボット20)と、を備えるワーク整列システムであって、前記ロボットのロボットアーム(例えば、後述のロボットアーム23)の先端には、電磁石(例えば、後述の電磁石53)が設けられ、前記収容装置は、異なる種類のワークが収容された複数のバケット(例えば、後述のバケット131〜134)と、当該複数のバケットの中から選択された1つを前記取り出し台の近傍に位置させる移動装置(例えば、後述の送りねじ機構14)と、を備え、前記取り出し台は、前記ワークが載置される載置部(例えば、後述の載置部31)と、前記載置部上のワークを当該複数のバケットの中から選択された1つに排出する駆動装置(例えば、後述の駆動装置32)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、このワーク整列システムは、以下のように動作する。
まず、整列対象となるワークの種類を選択し、収容装置の移動装置を駆動して、この選択した種類のワークが収容されたバケットを、取り出し台の近傍に位置させる。
次に、この選択したワークが収容されたバケットに、ロボットアームの先端に設けられた電磁石を接近させ、ロボットアームの先端の電磁石によりバケット内部のワークを吸引する。そして、この状態でロボットアームを制御して、取り出し台の載置部の上にワークを搬送し、ロボットでワークを把持して整列する。その後、駆動装置を駆動して、載置部上の余ったワークをバケットに排出する。
【0009】
したがって、ロボットアームを制御することにより、自動的に、ワークをバケットから取り出し台に供給して、この取り出し台上のワークを整列できる。
また、ワークの整列が完了するたびに、余ったワークをバケットに返却するので、種類の異なるワークが混入するのを防止して、整列するワークの種類を容易に変更できる。
【0010】
本発明のワーク移動方法は、ワークが収容された収容装置と、前記ワークが載置される取り出し台と、当該取り出し台から前記ワークを把持して取り出して整列するロボットと、を備えるワーク整列システムについて、前記収容装置と前記取り出し台との間で前記ワークを移動するワーク移動方法であって、前記収容装置に異なる種類のワークが収容される複数のバケットを設け、前記ロボットのロボットアームの先端に電磁石を設けて、前記バケットに収容されたワークを前記電磁石で吸引することにより、前記収容装置から前記取り出し台に前記ワークを移動し、前記複数のバケットの中から選択された1つを取り出し台の近傍に位置させて、この状態で、当該選択されたバケットに前記取り出し台から前記ワークを排出することにより、前記取り出し台から前記収容装置に前記ワークを移動することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボットアームを制御することにより、自動的に、ワークをバケットから取り出し台に供給して、この取り出し台上のワークを整列できる。また、ワークの整列が完了するたびに、余ったワークをバケットに返却するので、種類の異なるワークが混入するのを防止して、整列するワークの種類を容易に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るワーク整列システム1の斜視図である。
ワーク整列システム1は、ワークとしての車輪締め付け用のナット11が収容された収容装置10と、ナット11が載置される取り出し台30と、プリセット台40と、取り出し台30からナット11を把持して取り出して、プリセット台に整列するロボット20と、カメラ60と、を備える。
【0014】
ロボット20は、床面上に設けられたロボット本体21と、このロボット本体21に設けられたマニピュレータ22と、を備える。
マニピュレータ22は、7軸であり、ロボット本体21に軸支されるロボットアーム23と、これらロボットアーム23の先端フランジ面24に軸支されたハンド50と、を備える。
【0015】
ロボットアーム23は、ロボット本体21側から順に、第1腕部231、第2腕部232、第3腕部233、第4腕部234、第5腕部235、および、第6腕部236を備える。
【0016】
第1腕部231は、略直線状に延出しており、ロボット本体21に軸支される。ロボット本体21は、略垂直方向を回転中心として、第1腕部231を回転させる。
【0017】
第2腕部232は、略直線状に延出しており、第1腕部231に軸支される。第1腕部231は、図示しない駆動機構により、第1腕部231の延出方向に交差する方向を回転中心として、第2腕部232を回転させる。これにより、第1腕部231の延出方向と第2腕部232の延出方向との成す角度が変化する。
第3腕部233は、略直線状に延出しており、第2腕部232に軸支される。第2腕部232は、図示しない駆動機構により、第2腕部232の延出方向を回転中心として、第3腕部233を回転させる。
【0018】
第4腕部234は、略直線状に延出しており、第3腕部233に軸支される。第3腕部233は、図示しない駆動機構により、第3腕部233の延出方向に交差する方向を回転中心として、第4腕部234を回転させる。これにより、第3腕部233の延出方向と第4腕部234の延出方向との成す角度が変化する。
第5腕部235は、略直線状に延出しており、第4腕部234に軸支される。第4腕部234は、図示しない駆動機構により、第4腕部234の延出方向を回転中心として、第5腕部235を回転させる。
【0019】
第6腕部236は、略直線状に延出しており、第5腕部235に軸支される。第5腕部235は、図示しない駆動機構により、第5腕部235の延出方向に交差する方向を回転中心として、第6腕部236を回転させる。これにより、第5腕部235の延出方向と第6腕部236の延出方向との成す角度が変化する。
【0020】
ハンド50は、ロボットアーム23の先端フランジ面24に軸支された基部51と、この基部51に設けられてナット11を挟持可能な一対の挟持部52と、基部51に設けられた電磁石53と、を備える。
【0021】
収容装置10は、床面に配置されて略水平に延びるスライドレール12と、このスライドレール12上に移動可能に設けられたスライダ13と、このスライダをスライドレール12に沿って移動させる移動装置としての送りねじ機構14と、このスライダ13に並んで設けられた4つのバケット131〜134と、を備える。
【0022】
スライドレール12は、取り出し台30の近傍を通過するように延びている。
4つのバケット131〜134は、第1バケット131、第2バケット132、第3バケット133、および第4バケット134で構成され、それぞれ、上面が開口された箱状である。これら4つのバケット131〜134には、それぞれ、異なる種類のナット11が収容されている。
【0023】
送りねじ機構14は、スライダ13の底面に螺合する送りねじ141と、この送りねじ141を回転させるモータ142と、を備える。この送りねじ機構14によれば、モータ142を駆動することにより、送りねじ141を回転させて、スライダ13を移動させ、4つのバケット131〜134の中の任意の1つを取り出し台30の近傍に位置させることができる。
【0024】
取り出し台30は、ナット11が載置される載置部31と、この載置部31の位置や姿勢を変化させる駆動装置32と、を備える。
載置部31は、円盤形状の載置部本体311と、この載置部本体311の周縁に立設された壁部312と、を備える。この載置部本体311の周縁部分の収容装置10側には、ナット11が通過可能な大きさの切り欠き313が形成されている。
【0025】
駆動装置32は、床面に設けられた平板状の支持部35と、この支持部35に設けられて載置部31を支持する第1シリンダ機構33および第2シリンダ機構34と、を備える。
【0026】
図2は、駆動装置32の側面図である。
第1シリンダ機構33は、支持部35の収容装置10側に固定されて略鉛直方向に延びるシリンダ331と、このシリンダ331に摺動可能に収容されたピストン332と、を備える。このピストン332の先端には、ピン333が設けられ、このピン333は、載置部31の底面に形成された貫通孔314に回動可能に連結されている。
【0027】
第2シリンダ機構34は、支持部35の収容装置10側とは反対側に固定されて略鉛直方向に延びるシリンダ341と、このシリンダ341に摺動可能に収容されたピストン342と、を備える。このピストン342の先端には、ピン343が設けられ、このピン343は、載置部31の底面に形成された長孔315にスライド可能に連結されている。
【0028】
駆動装置32は、第1シリンダ機構33のピストン332を下降させるとともに、第2シリンダ機構34のピストン342を上昇させる。すると、第2シリンダ機構34のピン343が長孔315に対してスライドし、第1シリンダ機構33のピン333を中心として載置部31が回動して、載置部31が傾斜する。
また、駆動装置32は、第1シリンダ機構33のピストン332と第2シリンダ機構34のピストン342とを同期させて昇降させることで、載置部31を上下に振動させる。
【0029】
図1に戻って、プリセット台40は、床面に設けられたプリセット台本体41と、このプリセット台本体41の上に設けられた円盤状の載置部42と、を備える。
載置部42には、ナット11が挿入される挿入穴421が周縁部に沿って複数形成されている。
【0030】
カメラ60は、ロボット20を上方から撮影するカメラ本体61と、床面に設けられてこのカメラ本体61を支持する固定台62と、を備える。
【0031】
以上のワーク整列システム1は、以下のように動作する。
まず、整列対象となるナット11の種類を選択し、収容装置10の送りねじ機構14を駆動して、この選択した種類のナット11が収容された収容装置10のバケットここでは第3バケット133を、取り出し台30の近傍に移動する。
次に、カメラ60の撮影映像に基づいて、この第3バケット133に、ロボットアーム23の先端に設けられた電磁石53を接近させる。
【0032】
次に、図3に示すように、ロボットアーム23の先端の電磁石53により、第3バケット133の内部のナット11を吸引する。そして、この状態でロボットアーム23を制御して、取り出し台30の載置部31の上にナット11を搬送する。
この状態では、ナット11同士が重なり合っており、カメラ60で各ナット11の位置および姿勢をセンシングすることが困難である。
【0033】
そこで、図4(a)に示すように、取り出し台30の駆動装置32を駆動して、載置部31を上下に昇降させる。これにより、ナット11に振動を加えて、図4(b)に示すように、載置部31の上のナット11の位置を分散させる。よって、載置部31上のナット11を重ならないように適度にばらけさせて、カメラ60により、ナット11の位置および姿勢を容易にセンシングできる。
【0034】
次に、カメラ60の撮影映像に基づいて、ロボット20の挟持部52でナット11を把持してプリセット台40に整列する。具体的には、カメラ60によりセンシングしたナット11の位置および姿勢の情報に基づいて、把持しやすいナット11から順番に順位を付けて、この順位に従って、ナット11を把持してプリセット台40の複数の挿入穴421に整列してゆく。
その後、図5に示すように、取り出し台30の駆動装置32を駆動して、載置部31を第3バケット133に向かって傾斜させる。これにより、載置部31の上の余ったナット11を載置部31の切り欠き313に向かって移動させて、この切り欠き313を通して第3バケット133に返却する。
【0035】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ロボットアーム23を制御することにより、自動的に、ナット11を第3バケット133から取り出し台30に供給して、この取り出し台30上のナット11をプリセット台40に整列できる。
また、ナット11の整列が完了するたびに、余ったナット11をバケット131〜134に返却するので、種類の異なるナット11が混入するのを防止して、ナット11の種類を容易に変更できる。
また、載置部31の上のナット11の量を一定にできるので、カメラ60のナット11の認識率を向上でき、ワーク整列システム1の稼働率を向上できる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、ワークとしてナット11を用いたが、これに限らず、ボルトでもよい。
また、本実施形態では、載置部31を傾斜させることにより、ワークを切り欠きに向かって移動させたが、これに限らず、取り出し台の載置部にワイパー機構を設け、このワイパー機構を駆動することにより、ワークを切り欠き側に移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク整列システムの斜視図である。
【図2】前記実施形態に係るワーク整列システムの駆動装置の側面図である。
【図3】前記実施形態に係るワーク整列システムの取り出し台上にワークを搬送する手順を説明するための斜視図である。
【図4】前記実施形態に係るワーク整列システムのワークの位置を分散させる手順を説明するための斜視図である。
【図5】前記実施形態に係るワーク整列システムの余ったワークを返却する手順を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワーク整列システム
10 収容装置
11 ナット(ワーク)
14 送りねじ機構(移動装置)
20 ロボット
23 ロボットアーム
30 取り出し台
31 載置部
32 駆動装置
53 電磁石
131 第1バケット
132 第2バケット
133 第3バケット
134 第4バケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが収容された収容装置と、前記ワークが載置される取り出し台と、当該取り出し台から前記ワークを把持して取り出して整列するロボットと、を備えるワーク整列システムであって、
前記ロボットのロボットアームの先端には、電磁石が設けられ、
前記収容装置は、異なる種類のワークが収容された複数のバケットと、当該複数のバケットの中から選択された1つを前記取り出し台の近傍に位置させる移動装置と、を備え、
前記取り出し台は、前記ワークが載置される載置部と、前記載置部上のワークを当該複数のバケットの中から選択された1つに排出する駆動装置と、を備えることを特徴とするワーク整列システム。
【請求項2】
ワークが収容された収容装置と、前記ワークが載置される取り出し台と、当該取り出し台から前記ワークを把持して取り出して整列するロボットと、を備えるワーク整列システムについて、前記収容装置と前記取り出し台との間で前記ワークを移動するワーク移動方法であって、
前記収容装置に異なる種類のワークが収容される複数のバケットを設け、前記ロボットのロボットアームの先端に電磁石を設けて、前記バケットに収容されたワークを前記電磁石で吸引することにより、前記収容装置から前記取り出し台に前記ワークを移動し、
前記複数のバケットの中から選択された1つを取り出し台の近傍に位置させて、この状態で、当該選択されたバケットに前記取り出し台から前記ワークを排出することにより、前記取り出し台から前記収容装置に前記ワークを移動することを特徴とするワーク移動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220230(P2009−220230A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68524(P2008−68524)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】