説明

ワーク送り搬送装置、プーリ

【課題】帯状ワークのピッチ搬送に用いられるワーク送り搬送装置に関し、帯状ワークの送り搬送動作を停止したときの帯状ワークの弛みを解消でき、しかも、プーリの回転開始時に帯状ワークにダメージを与えることを回避できる技術の開発。
【解決手段】原動プーリ20と従動プーリ30とを備え、従動プーリ30は、原動プーリ20と同期回転される内側回転体31と、リング状の外側回転体32と、外側回転体32の内側回転体31に対する回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて外側回転体32を回転方向後側へ弾性付勢するスプリング33とを備え、外側回転体32は該外側回転体32に設けられている回転力受け部34が内側回転体31に突設されている回転力伝達部312によって押圧されることで内側回転体31と一体的に回転されるワーク送り搬送装置10、プーリ30を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリードフレームパターンが配列されているリードフレーム条体等の、長尺帯状に形成されている電子部品実装用ワークを送り搬送するためのワーク送り搬送装置、帯状ワークを搬送するための原動プーリに従動回転する従動プーリとして用いて好適なプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームパターンが配列されているリードフレーム条体(以下、単にリードフレームとも言う)等の、長尺帯状に形成されている電子部品実装用ワーク(以下、帯状ワークとも言う)の搬送(送り搬送)は、図8(a)、(b)に示すように、原動プーリ101及び該原動プーリ101に従動回転する従動プーリ102にそれぞれ突設されている係合突起101a、102aを、帯状ワーク103の長手方向に一定ピッチで形成されているピッチ孔103aに挿入して、両プーリ101,102の回転を帯状ワーク103に伝達して行う方式が広く採用されている。従動プーリ102はタイミングベルト104によって原動プーリ101の回転駆動力が伝達されて回転駆動される。
上述のようなリードフレームの送り搬送は、例えば、半導体チップ等の電子部品をリードフレームに実装するための実装装置、リードフレームにおける電子部品の実装状態の外観検査を行うための検査装置(例えば特許文献1)等にて広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−260899公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の構造の送り搬送方式にあっては、高タクトに対応するべく高速且つ高精度のピッチ搬送を行おうとすると、プーリ101、102の慣性モーメントが非常に大きいために、プーリの回転を停止した時に帯状ワーク103に弛みが発生しやすくなる、といった問題があった。すなわち、原動プーリ101の回転が停止されたときに従動プーリ102の回転が直ちに停止しなかった場合、両プーリ101、102の間で帯状ワーク103に弛みが発生する。このため、例えば外観検査装置の場合、両プーリ101、102の間ではセンサ等に対する帯状ワーク103の位置決め精度に影響を与えるといった問題が生じる。
これに鑑みて、帯状ワーク103の弛み発生を防ぐべく、帯状ワーク103にテンションを与えるための機構が設けられる。帯状ワーク103にテンションを与えるための具体的手段としては、トルクモータ又はダンパの使用、テンションローラの使用等であるが、大慣性モーメント環境下において、必要位置決め精度、高速搬送といった条件を満足し、帯状ワークにダメージを与えることなく弛みを解消できるものが従来存在しなかった。トルクモータ、ダンパ、テンションローラは、帯状ワークにテンションを掛けることが可能であるが、プーリが停止状態から回転を開始したときに帯状ワーク103に作用する張力を増大させてしまうものであり、帯状ワークにダメージを与えやすくなる。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みて、帯状ワークの送り搬送動作を停止したときの帯状ワークの弛みを解消でき、しかも、プーリの回転開始時に帯状ワークにダメージを与えることを回避できるワーク送り搬送装置、プーリの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、電子部品実装用の帯状ワークを送り搬送するためのワーク送り搬送装置であって、原動プーリと、該原動プーリに従動回転される従動プーリとを具備し、前記原動プーリ及び前記従動プーリには、それぞれ、前記帯状ワークに形成されているピッチ孔に挿入される係合突起が外周に突設され、前記従動プーリは、前記原動プーリと同期回転される内側回転体と、この内側回転体の外側に該内側回転体に対して相対回転可能に設けられたリング状の外側回転体と、この外側回転体の前記内側回転体に対する該内側回転体の回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて前記外側回転体を前記内側回転体の回転方向後側へ弾性付勢するスプリングとを具備し、前記外側回転体は前記内側回転体の外周に突設されている回転力伝達部が当接される回転力受け部を有し、この回転力受け部が前記原動プーリと同期回転された前記内側回転体の前記回転力伝達部によって押圧されることで前記内側回転体と一体的に回転されることを特徴とするワーク送り搬送装置を提供する。
第2の発明は、前記スプリングは、その一端が前記外側回転体に設けられた第1スプリング受け部に当接され、他端が前記内側回転体の外周部に設けられた第2スプリング受け部に当接されていることを特徴とする第1の発明のワーク送り搬送装置を提供する。
第3の発明は、前記外側回転体にその内周から窪むように形成された凹所に、前記内側回転体の外周に突設され前記回転力伝達部として機能する突出片部が収納され、前記外側回転体の前記凹所には前記内側回転体の回転方向における前記外側回転体の前記突出片部に対する変位を許容するクリアランスが確保され、前記突出片部の先端部に、前記スプリングの前記他端が当接される前記第2スプリング受け部が設けられていることを特徴とする第2の発明のワーク送り搬送装置を提供する。
第4の発明は、前記外側回転体の比重が前記内側回転体の比重に比べて低いことを特徴とする第1〜3のいずれかの発明のワーク送り搬送装置を提供する。
第5の発明は、互いに離隔させて配置された前記原動プーリと前記従動プーリとの間に、前記帯状ワークに電子部品を実装するための実装装置、又は/及び、前記帯状ワークに実装された電子部品の実装状態を検査するための検査装置が設けられていることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明のワーク送り搬送装置を提供する。
第6の発明は、電子部品実装用の帯状ワークを送り搬送するためのワーク送り搬送装置に設けられて、該ワーク送り搬送装置の原動プーリに従動回転される従動プーリとして用いられるプーリであって、前記原動プーリと同期回転される内側回転体と、この内側回転体の外側に該内側回転体に対して相対回転可能に設けられたリング状の外側回転体と、この外側回転体の前記内側回転体に対する該内側回転体の回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて前記外側回転体を前記内側回転体の回転方向後側へ弾性付勢するスプリングとを具備し、前記外側回転体の外周には前記帯状ワークに形成されているピッチ孔に挿入される係合突起が突設されており、前記外側回転体は前記内側回転体の外周に突設されている回転力伝達部が当接される回転力受け部を有し、この回転力受け部が前記原動プーリと同期回転された前記内側回転体の前記回転力伝達部によって押圧されることで前記内側回転体と一体的に回転されることを特徴とするプーリを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワーク送り搬送装置の従動プーリ、本発明に係るプーリは、原動プーリと同期回転される内側回転体と該内側回転体とは別体の外側回転体とを具備する構成であり、内側回転体の回転による慣性モーメントを小さく抑えることができるため、原動プーリの回転停止と同時に内側回転体の回転も停止させることを容易に実現できる。また、前記従動プーリは外側回転体の回転による慣性モーメントも小さく抑えることができるため、内側回転体の回転が停止したときにスプリングの弾性変形によって外側回転体の慣性エネルギーを吸収することによる外側回転体の回転停止を短時間で速やかに実現することが可能であり、しかも、前記スプリングの弾性によって外側回転体と原動プーリとの間に帯状ワークが張設された状態を確保できるため、帯状ワークに弛みが発生することを防止できる。
また、前記ワーク送り搬送装置は、原動プーリ及び従動プーリの回転を開始する際に、従動プーリの前記内側回転体の外周に突設されている回転力伝達部が前記外側回転体に設けられている回転力受け部を押圧することで、内側回転体から外側回転体への回転駆動力の伝達がなされ、前記外側回転体が、前記原動プーリと同期回転された前記内側回転体と一体的に回転する。本発明に係るワーク送り搬送装置の構成は、既述のトルクモータ、ダンパ、テンションローラとは異なり、回転停止状態の原動プーリ及び従動プーリの回転開始時の帯状ワークの張力増大を回避できるものであり、回転開始時の張力増大によって帯状ワークにダメージを与えるといった不都合を生じる心配も無い。
したがって、本発明に係るワーク送り搬送装置によれば、帯状ワークの送り搬送動作を停止したときの帯状ワークの弛みを解消でき、しかも、プーリの回転開始時に帯状ワークにダメージを与えることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る1実施形態のワーク送り搬送装置を示す正面図(部分断面)である。
【図2】図1のワーク送り搬送装置の原動プーリ及び従動プーリの内側回転体の回転の停止に伴い、従動プーリのスプリング(圧縮コイルばね)が弾性変形(圧縮変形)された状態を示す正面図(部分断面)である。
【図3】図2における従動プーリの外側回転体の回転力受け部(ねじ)が設けられている凹所付近を拡大して示した図である。
【図4】原動プーリ、従動プーリの構成を示す図であって、(a)は原動プーリをその軸心方向に直交する方向から見た構造を示す図、(b)は従動プーリをその軸心方向に直交する方向から見た構造を示す図である。
【図5】帯状ワークの一例を示す斜視図である。
【図6】図1のワーク送り搬送装置に検査装置を設けてなる実装状態検査装置を示す図である。
【図7】原動プーリ、従動プーリの外側回転体の別態様を示す図である。
【図8】従来技術を説明する図であって、(a)は帯状ワークの一例を示す平面図、(b)は従来例のワーク送り搬送装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1実施形態のワーク送り搬送装置、プーリ(従動プーリ)について、図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、前記ワーク送り搬送装置10(以下、単に送り搬送装置とも言う)は、帯状ワーク1(ここでは電子部品(回路素子)を実装済みのリードフレーム)の送り搬送に使用するものであり、原動機2(図4(a)参照)の駆動力によって回転駆動される原動プーリ20と、該原動プーリ20に従動回転される従動プーリ30と、前記原動プーリ20の回転駆動力を前記従動プーリ30に伝達するためのタイミングベルト40とを具備して構成されている。
【0010】
図4(a)に示すように、原動プーリ20は、前記帯状ワーク1の送り搬送用の主プーリ部21に、前記タイミングベルト40が巻き掛けられるベルト用プーリ部22が前記主プーリ部21と同軸に突設された構成の2段プーリとなっている。前記ベルト用プーリ部22は前記主プーリ部21と一体に設けられており、前記ベルト用プーリ部22と前記主プーリ部21とは前記原動機2の駆動力によって一体回転する。
【0011】
図4(a)に示すように、原動プーリ20の前記主プーリ部21は、シャフト状本体23の外周面23aに、例えば図5に示すような帯状ワーク1の長手方向に一定ピッチで形成されているピッチ孔1aに挿入される係合突起24(送り爪)を突設した構成になっている。図4(a)に例示した原動プーリ20の前記主プーリ部21は、図5に例示した帯状ワーク1の送り搬送に対応するべく、シャフト状本体23の外周面23aの幅方向(シャフト状本体23の軸心に沿う方向)中央部においてその周方向の複数箇所に前記係合突起24を突設した構成になっている。
そして、この原動プーリ20は、図4(a)に示すように、前記シャフト状本体23上に設置された帯状ワーク1のピッチ孔1aに前記係合突起24が挿入された状態で、前記帯状ワーク1の送り搬送に用いられる。
【0012】
図5に例示した前記帯状ワーク1(素子実装済みリードフレーム)は、テープ状のリードフレーム本体1bの幅方向中央部を避けた両側に電子部品1c(半導体素子等の回路素子)を実装した構成になっている。前記リードフレーム本体1bの幅方向中央部には、前記ピッチ孔1aが該リードフレーム本体1bの長手方向の複数箇所に形成されている。
【0013】
一方、従動プーリ30は、図1、図4(b)に示すように、前記原動プーリ20と同期回転されるシャフト状の内側回転体31と、この内側回転体31の外側に該内側回転体31に対して相対回転可能に設けられたリング状(円筒状)の外側回転体32(外胴)と、スプリング33(後述)とを備える概略構成になっている。
【0014】
図1、図4(b)に示すように、前記内側回転体31は、前記外側回転体32から突出された端部に、前記タイミングベルト40が巻き掛けられるベルト用プーリ部311を備えており、このベルト用プーリ部311に巻き掛けられた前記タイミングベルト40を介して前記原動プーリ20から回転駆動力が伝達されることで図1矢印Gに示す方向に前記原動プーリ20と同期回転されるようになっている。
【0015】
図1、図4(b)に示すように、前記外側回転体32の外周面32aには、前記帯状ワーク1のピッチ孔1aに挿入される係合突起32b(送り爪)が突設されている。図示例の従動プーリ30の前記外側回転体32は、図5に例示した帯状ワーク1の送り搬送に対応するべく、その外周面32aの幅方向(外側回転体32の内側空間の軸心に沿う方向)中央部においてその周方向の複数箇所に前記係合突起32bを突設した構成になっている。
【0016】
図1に示すように、この従動プーリ30は、前記外側回転体32にその内周から窪むように形成された凹所32cに、前記内側回転体31の外周に突設された突出片部312が収納され、前記原動プーリ20からタイミングベルト40を介して伝達された回転駆動力によって前記内側回転体31が回転されたときに、前記突出片部312が前記凹所32cに設けられている回転力受け部34を押圧することで前記外側回転体32が前記内側回転体31と一体的に回転されるようになっている。
【0017】
前記外側回転体32の凹所32cは、前記外側回転体32の内周面32dの周方向の複数箇所(図示例では3箇所)に形成されている。
前記内側回転体31の前記突出片部312は、内側回転体31の外周面31aの周方向の複数箇所(図示例では3箇所)に突設されており、それぞれその先端部が前記外側回転体32の凹所32c内に挿入されている。
【0018】
図示例の従動プーリ30にあっては、前記回転力受け部34は具体的には外側回転体32に固定して凹所32c内に突出状態に設けられたねじ341である。このねじ341は、外側回転体32の複数(3つ)の凹所32cのうちのひとつのみに突出するように設けられている。なお、外側回転体32の複数の凹所32cのうち、前記ねじ341が設けられている凹所に図中符号32c1を付す。また、この凹所32c1に先端部が挿入されている突出片部312に図中符号312Aを付す。
【0019】
図3は、従動プーリ30の前記凹所32c1付近を拡大して示した図である。
図3に示すように、前記ねじ341は、その長手方向片端に六角穴あるいは四角穴である工具係合穴341aが形成されている頭部無し穴付きねじである。また、このねじ341にはその長手方向全長にわたってねじ山が形成されている。
このねじ341は、外側回転体32において前記凹所32c1から該外側回転体32の回転方向(帯状ワーク1の送り搬送時の回転方向。図1中矢印G)前側に位置する壁部に固定された固定部品342に貫設されている雌ねじ孔342aにねじ込んで前記固定部品342に螺着して設けられている。また、このねじ341は、前記固定部品342から前記凹所32c1とは反対の側に突出された部分(後端側突出部)に螺着されたナット343の締め付けによって固定部品342に固定されている。
前記ねじ341は、前記ナット343の締め付けを緩めた状態で、前記工具係合穴341aに工具を嵌め込んで回転操作することで、前記固定部品342から前記凹所32c1側(すなわち、固定部品342から外側回転体32の回転方向後側)へ突出された部分(突出部341b)の突出長を調整できる。
前記凹所32c1に挿入されている内側回転体31の前記突出片部312Aは、外側回転体32の回転方向において、前記ねじ341の前記突出部341bの後側に配置されている。
【0020】
そして、この従動プーリ30にあっては、前記原動プーリ20からタイミングベルト40を介して伝達された回転駆動力によって前記内側回転体31が回転されたときに、内側回転体31の前記突出片部312Aの先端部312aが、前記ねじ341の突出部341bを回転方向前側へ押圧することで、前記内側回転体31の回転駆動力が前記ねじ341を介して外側回転体32に伝達され、これにより、外側回転体32が前記内側回転体31と一体的に回転される。前記突出片部312Aは、内側回転体31の回転駆動力を外側回転体32へ伝達ための回転力伝達部として機能する。
なお、前記突出片部312Aの先端部312aには、前記ねじ341の突出部341bに当接される部分に当接部突起313が突設されており、具体的には、この当接部突起313が前記ねじ341の突出部341bを回転方向前側へ押圧することで、前記内側回転体31の回転駆動力が前記ねじ341を介して外側回転体32に伝達される。
【0021】
前記ねじ341の前記突出部341bの突出長は、前記原動プーリ20からタイミングベルト40を介して伝達された回転駆動力によって前記内側回転体31が回転され、前記内側回転体31の前記突出片部312Aが前記突出部341bに当接したときに、外側回転体32の複数の凹所32cのうち、前記回転力受け部34(ねじ341)が設けられている凹所32c1以外の凹所32cに挿入されている突出片部312Aが凹所32c内面に接触しないように調整されている。
したがって、内側回転体31から外側回転体32の回転駆動力の伝達は、回転力受け部34(ねじ341)を介した伝達に限定されている。
【0022】
図1、図2に示すように、前記スプリング33は、外側回転体32において前記凹所32cから該外側回転体32の回転方向後側に位置する壁部に固定されたスプリング受け部材35(第1スプリング受け部)と、前記内側回転体31の前記突出片部312の前記凹所32cに挿入されている先端部312aとの間に介在配置されている。
【0023】
前記スプリング33及びスプリング受け部材35は、外側回転体32の複数の凹所32cのそれぞれに対応して設けられている。図示例の従動プーリ30は、前記スプリング受け部材35が、外側回転体32の3つの凹所32cに対応して外側回転体32の3箇所に設けられ、また、凹所32cに対応して設けられた計3つの前記スプリング33がそれぞれ、前記内側回転体31の前記突出片部312の前記凹所32cに挿入されている先端部312aとスプリング受け部材35との間に介在配置された構成になっている。
【0024】
なお、この従動プーリ30に設けられている複数のスプリング受け部材35の区別のため、図1〜図3において、符号32c1の凹所に対応して設けられているスプリング受け部材35に符号351、他のスプリング受け部材35に符号352を付記した。また、この従動プーリ30に設けられている複数のスプリング33について、符号32c1の凹所に対応して設けられているスプリング33に符号331、他のスプリング33に符号332を付記した。
【0025】
図示例の従動プーリ30において、前記スプリング33は具体的には圧縮コイルばねである。
図3に示すように、符号32c1の凹所に対応して設けられているスプリング331は、その一端を、前記スプリング受け部材351に螺着されているねじ36の前記スプリング受け部材35から凹所32c1側に突出されている部分(先端側突出部361)に外挿して前記スプリング受け部材351に当接させ、他端を前記突出片部312Aに突設されている突起314(以下、スプリングずれ防止用突起とも言う)に外挿して前記突出片部312A(具体的にはその先端部312a)に当接させて設けられている。前記ねじ36の先端側突出部361、前記突出片部312Aのスプリングずれ防止用突起は、スプリング受け部材35、突出片部312Aに対するスプリング331の端部の位置ずれ防止の機能を果たす。
前記突出片部312Aの先端部312aは本発明に係る第2スプリング受け部として機能する。
【0026】
図3に示すように、前記ねじ36は、具体的には、その長手方向片端に六角穴あるいは四角穴である工具係合穴341aが形成されている頭部無し穴付きねじである。また、このねじ36にはその長手方向全長にわたってねじ山が形成されている。このねじ36は、前記スプリング受け部材351に貫設されている雌ねじ孔351aにねじ込んで前記スプリング受け部材351に螺着されており、また、前記スプリング受け部材351を介して凹所32c1とは反対の側に突出された部分(後端側突出部)に螺着されたナット37の締め付けによって前記スプリング受け部材351に固定されている。
また、このねじ36は、前記ナット37の締め付けを緩めた状態で、前記工具係合穴341aに工具を嵌め込んで回転操作することで、前記スプリング受け部材351から前記凹所32c1側へ突出された先端側突出部361の突出長を調整できる。この突出長は、タイミングベルト40から伝達された回転駆動力によって回転駆動された内側回転体31の回転駆動力が回転力受け部34を介して外側回転体32に伝達され内側回転体31と外側回転体32とが一体的に回転している状態において、ねじ36(詳細には先端側突出部361)と内側回転体31の突出片部312(詳細にはその先端部312aの突起314)との間にクリアランスが確保されるように調整される。
【0027】
図1、図2に示すように、この従動プーリ30の複数の凹所32cのうち、符号32c1の凹所以外の凹所32cに対応して設けられているスプリング受け部材352は、ブロック状の本体352aにスプリング332の片端(軸心方向片端)が外挿される突起352bが突設された構成になっている。
前記内側回転体31の複数の突出片部312のうち、前記凹所32c1以外の凹所32cに挿入されている突出片部312の先端部312aには、前記凹所32c1に挿入されている突出片部312の先端部312aと同様に前記スプリングずれ防止用突起314が突設されている。
符号32c1の凹所以外の凹所32cに対応して設けられているスプリング332は、その一端をスプリング受け部材352の突起352bに外挿してスプリング受け部材352(詳細には本体352a)に当接させ、他端を前記スプリングずれ防止用突起314に外挿して突出片部312の先端部312aに当接させて、突出片部312の先端部312aとスプリング受け部材352との間に介装されている。
【0028】
この送り搬送装置10を用いて帯状ワーク1の送り搬送を行う際には、図1、図4(a)、(d)に示すように、原動プーリ20の前記シャフト状本体23上、及び従動プーリ30の前記外側回転体32上に、帯状ワーク1をそのピッチ孔1a内に前記係合突起24、32bが挿入された状態で設置する。このとき、原動プーリ20の係合突起24、従動プーリ32の外側回転体32の係合突起32bを挿入する帯状ワーク1のピッチ孔1aの選択は、原動プーリ20と従動プーリ30との間にて帯状ワーク1に弛みが生じないようにする(すなわち、スプリング33がスプリング受け部材35と突出片部312Aの先端部312aとに当接された状態にする)。また、このピッチ孔1aの選択によって前記スプリング33を若干押し縮めた状態とし、前記スプリング33の弾性によって、前記帯状ワーク1の原動プーリ20と従動プーリ30との間に位置する部分の張力を与えるようにすることも可能である。
【0029】
内側回転体31の突出片部312Aの先端部312a(具体的には当接突起313)は、外側回転体31の回転力受け部34(具体的にはねじ341の突出部341bの先端)に略当接(前記回転受け部34に当接、あるいは微小なクリアランスを介して前記回転受け部34に近接配置)されるようにする。このような前記突出片部312Aの先端部312aと外側回転体31の回転力受け部34との位置関係(原動プーリ20及び従動プーリ30が回転駆動されていないときの位置関係)は、ねじ341の突出部341bの固定部品342からの突出長の調整によって、容易に設定できる。
【0030】
この送り搬送装置10の原動プーリ20及び従動プーリ30に前記帯状ワーク1を図1、図3(a)、(b)に示すようにセットして前記帯状ワーク1のピッチ搬送を行う場合、回転停止状態の原動プーリ20及び従動プーリ30の回転開始時には、既述のように、内側回転体31の前記突出片部312Aの先端部312aが前記回転力受け部34として機能するねじ341を回転方向前側へ押圧することで、前記内側回転体31の回転駆動力が前記ねじ341を介して外側回転体32に伝達される。これにより、原動プーリ20と従動プーリ30の外側回転体32とが同期回転されて帯状ワーク1の送り搬送が開始される。
この送り搬送装置10は、回転停止状態の原動プーリ20及び従動プーリ30の回転開始時に、原動プーリ20と従動プーリ30との間における帯状ワーク1の張力の変動を生じさせることなく、帯状ワーク1の送り搬送を開始できる構成になっている。
【0031】
また、この送り搬送装置10は、回転駆動中の原動プーリ20及び従動プーリ30の回転を停止して帯状ワーク1の送り搬送を停止するとき、原動プーリ20の回転駆動が停止されると同時に、従動プーリ30の内側回転体31の回転も該内側回転体の回転抵抗(あるいは送り搬送装置10に設けたブレーキの作動)によって停止する。図2、図3に示すように、従動プーリ30の外側回転体32は、その慣性モーメント(慣性エネルギー)によって前記スプリング33を押し縮めつつ内側回転体31に対して回転方向前側への若干の相対回転を生じた後、スプリング33の弾性によって内側回転体31に対して回転方向後側へ弾性付勢されて、内側回転体31に対して回転方向後側へ相対回転され(図2中、矢印B方向へ押し戻される)、内側回転体31に対して図1に示す位置(内側回転体31の軸回り方向における相対位置。以下、初期位置とも言う)に復帰する。外側回転体32が内側回転体31に対して初期位置に復帰することで、原動プーリ20と従動プーリ30との間に帯状ワーク1が張設された状態が確保され、帯状ワーク1に弛みが生じることを防ぐことができる。
回転状態の内側回転体31の回転が停止したとき、従動プーリ30の外側回転体32の慣性モーメント(慣性エネルギー)が前記スプリング33の弾性変形によって吸収される。
なお、帯状ワークのピッチ搬送を実現するべく原動プーリ20の回転駆動及び回転停止を行うための構成は従来周知の構成を採用でき、特に限定は無い。
【0032】
既述のように、この送り搬送装置10の従動プーリ30は内側回転体31と外側回転体32とを具備する構成である。したがって、この送り搬送装置10にあっては、内側回転体31の慣性モーメントを小さく抑えることができるため、全体が一体構成の従動プーリに比べて、回転状態の内側回転体31の回転を原動プーリ20の回転停止と同時に停止させることは容易である。このため、原動プーリ20の回転停止と同時に内側回転体31の回転も確実に停止させることができる。
【0033】
また、この従動プーリ30にあっては、回転された外側回転体32の慣性モーメント(慣性エネルギー)も小さくて済む。このため、内側回転体31の回転を停止したときのスプリング33の弾性変形量、すなわち回転が停止された内側回転体31に対する回転方向前側への外側回転体32の回転量を抑えることが容易であり、その結果、内側回転体31の回転の停止から外側回転体32の回転停止、初期状態への復帰完了までの時間の短縮も容易に実現できる。したがって、高速且つ高精度のピッチ搬送にも容易に対応できる。
【0034】
したがって、この送り搬送装置10によれば、帯状ワーク1のピッチ搬送において、原動プーリ20及び従動プーリ30の回転による帯状ワーク1の搬送を停止したときに帯状ワーク1に弛みを生じさせることがなく、しかも、搬送停止状態から搬送を開始する際に、原動プーリ20と従動プーリ30との間における帯状ワーク1の張力の変動を生じさせることがないため帯状ワーク1にダメージを与えることを回避できる。
つまり、本発明に係るワーク送り搬送装置の構成は、帯状ワークのテンションを確保することを目的に例えばトルクモータ、ダンパ、テンションローラを用いる構成とは異なり、回転停止状態の原動プーリ及び従動プーリの回転開始時の帯状ワークの張力増大を回避できるものであり、トルクモータ、ダンパ、テンションローラといった特殊な装置を用いることなく、簡単な構成により、搬送を停止したときの帯状ワーク1の弛み防止と、搬送開始時の張力増大の防止(帯状ワーク1にダメージを与えることの回避)とを実現できるものである。
【0035】
なお、本発明に係る送り搬送装置は、例えば図6に例示するように前記送り搬送装置10に、前記帯状ワーク1に実装された電子部品の実装状態を検査するための検査装置50(具体的には撮像機)を設けた構成(実装状態検査装置10A)や、前記送り搬送装置10に、リードフレーム等の帯状ワークに電子部品を実装するための実装装置を設けた構成(電子部品実装設備)、検査装置50と実装装置とを設けた構成(電子部品実装検査装置)も含む。
【0036】
図6に例示した実装状態検査装置10Aは、前記検査装置50(具体的には撮像機)を支柱等の支持部材(図示略)に固定して、帯状ワーク1の、前記送り搬送装置10の互いに離隔させて配置された前記原動プーリ20と前記従動プーリ30との間に張設される部分の上方となる位置に設けたものであり、原動プーリ20及び従動プーリ30の回転駆動によって帯状ワーク1を従動プーリ30側から原動プーリ20側へ送り搬送(ピッチ搬送)し、検査装置50によって、帯状ワーク1の長手方向複数箇所に実装されている電子部品についてその実装状態の検査を順次行っていくようになっている。検査装置50は、前記原動プーリ20と前記従動プーリ30との間に張設される帯状ワーク1上の電子部品を横方向から検査可能なように、帯状ワーク1の、送り搬送装置10の原動プーリ20と従動プーリ30との間に張設される部分に対して水平方向に離隔した位置(側方位置)に設置しても良い。
前記送り搬送装置10に実装装置を設ける場合、実装装置と検査装置とを設ける場合も、実装装置や検査装置は、帯状ワーク1の原動プーリ20と従動プーリ30との間に張設される部分の上方位置あるいは側方位置となるように設置する。
【0037】
本発明に係る送り搬送装置を用いて送り搬送する対象の帯状ワークとしては、図5に例示した前記帯状ワーク1(素子実装済みリードフレーム)に限定されない。例えば、電子部品を実装していないリードフレーム条体も採用可能である。
また、図8(a)に例示したリードフレームのように、その幅方向両側にピッチ孔が形成されているものも採用可能である。この場合は、原動プーリの主プーリ部、従動プーリの外側回転体として、図7に示すように、円筒面の外周面61aを有する部材61の前記外周面61aの幅方向両側に、帯状ワーク62の幅方向両側のピッチ孔62aに挿入される係合突起61bが突設されている構成のものを用いる。
また、帯状ワークとしては、電子部品実装用の帯状部材であり、その長手方向の複数箇所にピッチ孔が形成されているものであれば良く、必ずしもリードフレームに限定されるものでは無い。
【0038】
従動プーリに設けられるスプリングとしては、外側回転体の前記内側回転体に対する該内側回転体の回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて前記外側回転体を前記内側回転体の回転方向後側へ弾性付勢するものであれば良く、圧縮コイルばねに限定されず、引きばねを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…帯状ワーク、1a…ピッチ孔、1b…リードフレーム本体、1c…電子部品(回路素子)、10…ワーク送り搬送装置,10A…ワーク送り搬送装置(実装状態検査装置)、20…原動プーリ、23a…外周面、24…係合突起、30…従動プーリ、プーリ、31…内側回転体、31a…外周面、312、312A…回転力伝達部、第2スプリング受け部(突出片部)、312a…先端部、32…外側回転体、32a…外周面、32b…係合突起、32c、32c1…凹所、32d…内周面、33、331、332…スプリング、34…回転力受け部、341…回転力受け部(ねじ)、35…スプリング受け部材(第1スプリング受け部)、40…タイミングベルト、50…検査装置、61…(円筒面の外周面を有する)部材、61a…係合突起、62…帯状ワーク、62a…ピッチ孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品実装用の帯状ワークを送り搬送するためのワーク送り搬送装置であって、
原動プーリと、該原動プーリに従動回転される従動プーリとを具備し、前記原動プーリ及び前記従動プーリには、それぞれ、前記帯状ワークに形成されているピッチ孔に挿入される係合突起が外周に突設され、
前記従動プーリは、前記原動プーリと同期回転される内側回転体と、この内側回転体の外側に該内側回転体に対して相対回転可能に設けられたリング状の外側回転体と、この外側回転体の前記内側回転体に対する該内側回転体の回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて前記外側回転体を前記内側回転体の回転方向後側へ弾性付勢するスプリングとを具備し、
前記外側回転体は前記内側回転体の外周に突設されている回転力伝達部が当接される回転力受け部を有し、この回転力受け部が前記原動プーリと同期回転された前記内側回転体の前記回転力伝達部によって押圧されることで前記内側回転体と一体的に回転されることを特徴とするワーク送り搬送装置。
【請求項2】
前記スプリングは、その一端が前記外側回転体に設けられた第1スプリング受け部に当接され、他端が前記内側回転体の前記回転力伝達部に設けられた第2スプリング受け部に当接されていることを特徴とする請求項1記載のワーク送り搬送装置。
【請求項3】
前記外側回転体にその内周から窪むように形成された凹所に、前記内側回転体の外周に突設され前記回転力伝達部として機能する突出片部が収納され、前記外側回転体の前記凹所には前記内側回転体の回転方向における前記外側回転体の前記突出片部に対する変位を許容するクリアランスが確保され、前記突出片部の先端部に、前記スプリングの前記他端が当接される前記第2スプリング受け部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のワーク送り搬送装置。
【請求項4】
前記外側回転体の比重が前記内側回転体の比重に比べて低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク送り搬送装置。
【請求項5】
互いに離隔させて配置された前記原動プーリと前記従動プーリとの間に、前記帯状ワークに電子部品を実装するための実装装置、又は/及び、前記帯状ワークに実装された電子部品の実装状態を検査するための検査装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワーク送り搬送装置。
【請求項6】
電子部品実装用の帯状ワークを送り搬送するためのワーク送り搬送装置に設けられて、 該ワーク送り搬送装置の原動プーリに従動回転される従動プーリとして用いられるプーリであって、
前記原動プーリと同期回転される内側回転体と、この内側回転体の外側に該内側回転体に対して相対回転可能に設けられたリング状の外側回転体と、この外側回転体の前記内側回転体に対する該内側回転体の回転方向前側への相対回転によって弾性変形されて前記外側回転体を前記内側回転体の回転方向後側へ弾性付勢するスプリングとを具備し、前記外側回転体の外周には前記帯状ワークに形成されているピッチ孔に挿入される係合突起が突設されており、
前記外側回転体は前記内側回転体の外周に突設されている回転力伝達部が当接される回転力受け部を有し、この回転力受け部が前記原動プーリと同期回転された前記内側回転体の前記回転力伝達部によって押圧されることで前記内側回転体と一体的に回転されることを特徴とするプーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−208785(P2010−208785A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55741(P2009−55741)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(591132955)株式会社秋田新電元 (29)
【Fターム(参考)】