説明

一価不飽和脂肪酸またはエステルからオメガ−アミノ酸またはエステルを合成する方法

本発明は、不飽和天然脂肪酸から一価不飽和ジニトリル中間化合物を経由させてω−アミノアルカン酸またはこのエステルを合成する方法に関する。本発明の方法は、他の既知の方法と比較して実施が容易であり、環境制約および反応副生物に起因する経済的欠点を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然一価不飽和脂肪酸から一価不飽和ジニトリルタイプの中間化合物を経由させてω−アミノアルカン酸またはこのエステルを合成する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド産業は、2個のアミド官能基−CO−NH−を分離するメチレン鎖(−CH−)の長さを特徴とする、通常、ナイロンとして既知の長鎖ω−アミノ酸からなるモノマーの全範囲を使用する。一例として、既知であるのは、ナイロン−6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン13などである。
【0003】
これらのモノマーは、例えば、特に、出発材料としてCからCオレフィン、シクロアルカンまたはベンゼンを使用するが、ヒマシ油(ナイロン11)、エルカ油またはレスケロール油(ナイロン13)なども使用する化学合成経路により製造される。
【0004】
環境に関連した目下の各種開発は、エネルギーおよび化学の分野において好まれる再生可能資源に由来する天然の出発材料の使用をもたらしている。こうした理由から、これらモノマーの製造における出発材料として脂肪酸/エステルを使用する方法を工業的に開発するためにいくつかの研究が始められている。
【0005】
このタイプのアプローチは、未だ数種の工業的な例を有するにすぎない。出発材料として脂肪酸を使用する工業的方法の希な例の1つは、Rilsan 11(登録商標)の合成の基礎をなす、ヒマシ油から抽出されたリシノール酸からの11−アミノウンデカン酸の製造方法である。この方法は、文献「石油化学方法」[Petrochemical Processes]by A.Chauvelら、Editions Technip(1986)発行に記載されている。11−アミノウンデカン酸は、幾つかの段階により得られる。第1の段階は、メチルリシノレアートを生成する、塩基性媒体中でのヒマシ油のメタノリシスからなり、続いてこのメチルリシノレアートは熱分解に供され、一方ではヘプタンアルデヒドが、他方ではメチルウンデシレナートが得られる。メチルウンデシレナートは、加水分解により酸形態に変換される。形成された酸は、続いてヒドロ臭素化に供されてω−臭素化酸を生じ、この酸はアミノ化により11−アミノウンデカン酸に変換される。
【0006】
主要な研究調査は、天然由来のオレイン酸からの、ナイロン9の前駆体である9−アミノノナン酸の合成に関連している。
【0007】
この特定のモノマーに関して、ナイロン9に特化した文献「n−ナイロン、その合成、構造、および特性」、1997、J.Wiley and Sons発行、第2.9章(381ページから389ページ)を挙げることができる。この記事は、この対象に関して実施された調製および研究を要約する。この文献の381ページに、Pelargon(登録商標)の商業化をもたらした、旧ソビエト連邦において開発された方法が挙げられる。この文献の384ページに、出発材料としてダイズ油由来のオレイン酸を使用する、日本において開発された方法も挙げられる。対応する記載は、文献A.Ravveによる「高分子の有機化学」(1967)Marcel Dekker,Inc.第15部を参照するが、この文献は、ポリアミドに特化し、279ページにこのような方法の存在を挙げている。
【0008】
この対象の最新技術に関する情報を十分に得るため、Journal of the American Oil Chemists’Societyにおいて1962年から1975年の間にE.H.Prydeらにより発表された多数の論文「植物油のオゾン処理によるアルデヒド材料」、第39巻、496ページから500ページ、「大豆メチルの還元的オゾン分解のための量産試作、プラント設計、および原価分析」、Vol.49、643ページから648ページ、およびR.B.Perkinsら、「不飽和脂肪誘導体からのナイロン−9:調整および特徴」、JAOCS、第52巻、473ページから477ページを挙げるべきである。これらの論文の最初のものも、498ページで、日本国の著者H.OtsukiおよびH.Funahashiにより実施された従前の研究を参照していることに留意すべきである。
【0009】
植物油からのこのタイプの「ナイロン9」の合成を目的としたこの最新技術の部分を要約するため、メタノリシスにより油から抽出されたオレインエステルに適用される以下の簡易化反応機序を記載することができる:
還元的オゾン分解
C−(CH−CH=CH−(CH−COOCH+(O3,)→
HOC−(CH−COOCH+HC−(CH−COH
還元的アミノ化
HOC−(CH−COOCH+(NH,H)→HN−(CH−COOCH+H
加水分解
N−(CH−COOCH+HO→HN−(CH−COOH+CHOH
しかしながら、反応の観点によると極めて魅力的であるこの経路は、特にポリアミドに関するポリマー産業において実際に有益に回収することができない長鎖アルデヒド(合計9個の炭素原子)を第1の段階で生成することからなる顕著な経済的欠点を示す。
【0010】
UKNo.741 739は、この合成に関して、オレイン酸からであるが、オレオニトリル経路を使用するこの同一酸の合成を記載している。この方法のための簡易化反応スキームは以下の通りである。類似の経路は、R.B.Perkinsらによる上記論文p.475に挙げられている。
【0011】
C−(CH−CH=CH−(CH−COOH+NH
C−(CH−CH=CH−(CH−CN+2H
C−(CH−CH=CH−(CH−CN+(O+HO酸化的オゾン分解)→
C−(CH−COOH+NC−(CH−COOH
NC−(CH−COOH+2H→HN−(CH−COOH
この合成は、副生物としてペラルゴン酸HC−(CH−COOHをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第741739号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「石油化学方法」[Petrochemical Processes]A.Chauvelら、Editions Technip(1986)発行
【非特許文献2】「n−ナイロン、その合成、構造、および特性」、1997、J.Wiley and Sons発行、第2.9章(381ページから389ページ)
【非特許文献3】A.Ravve「高分子の有機化学」(1967)Marcel Dekker,Inc.
【非特許文献4】E.H.Prydeら、「植物油のオゾン処理によるアルデヒド材料」Journal of the American Oil Chemists’Society、第39巻496ページから500ページ
【非特許文献5】E.H.Prydeら、「大豆メチルの還元的オゾン分解のための量産試作、プラント設計、および原価分析」Journal of the American Oil Chemists’Society第49巻、643ページから648ページ
【非特許文献6】R.B.Perkinsら、「不飽和脂肪誘導体からのナイロン−9:調整および特徴」JAOCS、第52巻、473ページから477ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、天然一価不飽和脂肪酸からω−アミノアルカン酸またはこのエステルの全範囲を合成する新規方法を提供することを目的とする。
【0015】
従って、課題は、実施が容易でありながら、一方では上記の環境制約を、他方では反応からの副生物に起因する経済的ハンディキャップを回避する、極めて広範に入手可能であり、従って安価な再生可能出発材料から出発する、式HN−(CH−COOH[式中、nは、3から14の間である。]の種々のω−アミノ酸(およびこのポリマー)を合成する方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、適切な場合にヒドロキシル官能基を含む天然長鎖不飽和脂肪酸からなる出発材料から作業し、第1の段階において、該脂肪酸を一価不飽和ジニトリルに変換し、次いで第2の段階において、酸化的開裂またはアクリレートタイプの化合物とのクロスメタセシス反応のいずれかにより、ジニトリル分子の開裂を生じさせる一価不飽和ジニトリルの二重結合に対する作用によりカルボン酸官能基を最終生成物中に「再挿入」することにより解決される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「天然脂肪酸」は、藻類を含む植物または動物環境から、より一般には植物界から得られ、従って再生可能である酸を意味するものと解される。この酸は、1分子当たり少なくとも10個、好ましくは少なくとも14個の炭素原子から構成され、少なくとも1個のオレフィン性不飽和を含み、酸基に対してx位(デルタx)におけるこの不飽和の位置が最終的なω−アミノ酸の式を決定する。さらに、この天然脂肪酸は、適切な場合にヒドロキシル官能基を含むことができる。
【0018】
このような酸の例として、C10酸のトウハク(シス−4−デカン)酸およびカプロレイン(シス−9−デセン)酸、C12酸のラウロレイン(シス−5−デデセン)酸およびリンデル(シス−4−ドデセン)酸、C14酸のミリストレイン(シス−9−テトラデセン)酸、フィゼテリン(physeteric)(シス−5−テトラデセン)酸およびツズ(シス−4−テトラデセン)酸、C16酸のパルミトレイン(シス−9−ヘキサデセン)酸、C18酸のオレイン(シス−9−オクタデセン)酸、エライジン(トランス−9−オクタデセン)酸、ペトロセリン(シス−6−オクタデセン)酸、バクセン(シス−11−オクタデセン)酸およびリシノール(12−ヒドロキシ−シス−9−オクタデセン)酸、C20酸のガドレイン(シス−9−エイコセン)酸、ゴンド(シス−11−エイコセン)酸、シス−5−エイコセン酸およびレスケロール(14−ヒドロキシ−シス−11−エイコセン)酸ならびにC22酸のセトレイン(シス−11−ドコセン)酸およびエルカ(シス−13−ドデコセン)酸を挙げることができる。
【0019】
本方法は、多価不飽和酸、例えば、リノール(シス,シス−9,12−オクタデカジエンおよびシス,トランス−9,11−オクタデカジエン)酸、α−リノール(シス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエン)酸またはα−エレオステアリン(シス,トランス,トランス−9,11,3−オクタデカトリエン)酸に適用することもできるが、副生物を増すという欠点を伴う。
【0020】
これらの種々の酸は、種々の油性植物、例えば、ヒマワリ、菜の花、トウゴマ、ブラダーポッド(bladderpod)、オリーブ、ダイズ、ヤシの木、アボカド、シーバックソーン、コリアンダー、セロリ、イノンド、ニンジン、ウイキョウ、リムナンテス・アルバ(Limnanthes alba)(メドウフォーム)、コウカまたはカメリナから抽出された植物油から得られる。
【0021】
これらの酸は、陸生または海洋動物界からも得られ、海洋動物の場合においては、一方では魚類または哺乳動物の形態、他方では藻類の形態の両方から得られる。これらの酸は一般に、反芻動物、魚類(例えばタラ)、または海洋哺乳動物(例えばクジラもしくはイルカ)に由来する脂肪である。
【0022】
本発明は、カルボニル官能基をニトリル官能基に変換するアンモニア処理反応段階を含む、式R−CH=CH−(CH−COOR[式中、Rは、Hまたは4から14個の炭素原子を含むアルキル基および適切な場合にヒドロキシル官能基のいずれかであり、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、ならびにpは、2から11の間の整数である。]の一価不飽和脂肪酸(エステル)から出発して、式ROOC−(CH−CH−NH[式中、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、ならびにqは、2から15の間の、pもしくはp+2またはnもしくはn+2のいずれかである整数である。]のω−アミノ酸(エステル)を合成する方法であって:
第1の段階において、不飽和脂肪酸/エステルを式NC−(CH−CH=CH−(CH−CN[式中、nは、R基の性質に応じて3から13の間の整数である。]の不飽和ジニトリルに2連続段階において変換し、第1の段階は、式ROOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの対称不飽和二酸をもたらす脂肪酸のホモメタセシス、または式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOHの不飽和二酸をもたらすこの酸/エステルの発酵(該発酵は、二酸を生じさせ、アルコールを消費する。)のいずれかであり、および第2の段階は、該酸のアンモニア処理であり、次いで
第2の段階において、この不飽和ジニトリルを式ROOC−[CH=CH]−(CHp,n−CN[式中、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、xは0または1であり、および「p,n」は、第1の段階で選択された経路に応じて数がpまたはnのいずれかであることを意味する。]の酸/エステルニトリルに変換し、この変換を、不飽和ジニトリルの酸化的開裂または不飽和ジニトリルと式CH=CH−COORのアクリレートとのクロスメタセシス反応のいずれかにより実施し、ならびに
第3の段階において、酸/エステルニトリルを水素化して式ROOC−(CH−CHNHのω−アミノ酸(エステル)を生じさせる
ことを特徴とする方法を対象とする。
【0023】
第1の段階でホモメタセシス経路を用いる方法の代替形態においては、ニトリルをもたらすアンモニア処理の段階および第1の段階で脂肪ニトリルに適用してジニトリルに変化させるメタセシスの段階の順序を逆にすることが可能である。
【0024】
次いで、一般的な場合の反応プロセスは、以下の通りである:
1)第1の段階:
ホモメタセシス
2R−CH=CH−(CH−COOH⇔
−CH=CH−R+HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH
または発酵のいずれか
−CH=CH−(CH−COOH(酸化)→HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH
次いで
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH+2NH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+4H
または
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH+2NH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+4H
2)第2の段階:
第1の代替形態(酸化的開裂)
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+(酸化的開裂)→2HOOC−(CH−CN
または
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+(酸化的開裂)→
HOOC−(CH−CN+COOH−(CH−CN
第2の代替形態(クロスメタセシス)
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+2CH=CH−COOR
2ROOC−CH=CH−(CH−CN+CH=CH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+2CH=CH−COOR
OOC−CH=CH−(CH−CN+NC−(CH−CH=CH−COOR+CH=CH
3)第3の段階:
酸化的開裂後の第1の代替形態
2HOOC−(CH−CN+4H→2HOOC−(CH−CHNH
HOOC−(CH−CN+HOOC−(CH−CN+4H
HOOC−(CH−CHNH+HOOC−(CH−CHNH
メタセシス後の第2の代替形態
OOC−CH=CH−(CH−CN+3H→ROOC−(CHp+2−CHNH
OOC−CH=CH−(CH−CN+NC−(CH−CH=CH−COOR+6H
OOC−(CHp+2−CHNH+ROOC−(CHn+2−CHNH
先行の反応スキームにおいて、以下の反応スキームに関しては、反応が化合物の酸形態を伴うことが示されている場合、該反応をこのエステル形態に同じく容易に適用することができる。
【0025】
これらの種々の機序を、詳細な説明において下記の概略図(スキーム1)により説明する。
【0026】
nがpであるオレイン酸に適用する場合、ROOC−(CH−CHNHは、クロスメタセシス経路により得、ROOC−(CH−CHNHは、酸化的開裂経路により得る。
【0027】
二重結合が分子の中央に位置していない酸、例えばパルミトレイン酸に適用する場合、プロセスは以下の通りになる
i)CH−(CH−CH=CH−(CH−COOH+NH
CH−(CH−CH=CH−(CH−CN+2H
2CH−(CH−CH=CH−(CH−CN⇔
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+CH−(CH−CH=CH−(CH−CH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+(酸化的開裂)→
2NC−(CH−COOH+HCHO/HCOOH
NC−(CH−COOH+2H→HOOC−(CH−CHNH
ii)CH−(CH−CH=CH−(CH−COOH+NH
CH−(CH−CH=CH−(CH−CN+2H
2CH−(CH−CH=CH−(CH−CN⇔
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+CH−(CH−CH=CH−(CH−CH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+2CH=CH−COOR
2NC−(CH−CH=CH−COOR+CH=CH
NC−(CH−CH=CH−COOR+3H→ROOC−(CH−CHNH
iii)CH−(CH−CH=CH−(CH−COOH(発酵による酸化)→
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH+2NH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+4H
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+(酸化的開裂)→
HOOC−(CH−CN+HOOC−(CH−CN
HOOC−(CH−CN+2H→HOOC−(CH−CHNH
iv)CH−(CH−CH=CH−(CH−COOH(発酵による酸化)→
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH
HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOH+2NH
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+4H
NC−(CH−CH=CH−(CH−CN+2CH=CH−COOR
NC−(CH−CH=CH−COOR+NC−(CH−CH=CH−COOR+CH=CH
NC−(CH−CH=CH−COOR+3H→ROOC−(CH−CHNH
NC−(CH−CH=CH−COOR+3H→ROOC−(CH−CHNH
形成される唯一の「副生物」は、適切な場合にヒドロキシル官能基を含む長鎖α−オレフィン、およびホルムアルデヒドまたはギ酸である。
【0028】
本方法の第1の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸/エステルのホモメタセシスを最初に実施し、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNの酸ニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化により還元してアミン官能基を生じさせて式ROOC−(CH−CHNHの化合物を得る。
【0029】
本方法の第2の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のホモメタセシスを最初に実施して式ROOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNの酸/エステルニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHの化合物を得る。
【0030】
本方法の第3の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のアンモニア処理を最初に実施し、対応するニトリルをもたらし、次いでニトリルのホモメタセシスによる変換を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの不飽和脂肪ジニトリルを生じさせ、次いでこのジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNの酸ニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化によりアミン官能基に還元して式HOOC−(CH−CHNHの化合物を得る。
【0031】
本方法の第4の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のアンモニア処理を最初に実施し、対応するニトリルをもたらし、次いで、ニトリルのホモメタセシスによる変換を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの不飽和脂肪ジニトリルを生じさせ、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNのエステルニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHの化合物を得る。
【0032】
本方法の第5の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸/エステルの発酵による酸化を最初に実施して式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNおよびHOOC−(CH−CNの2種の酸ニトリルの混合物に変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化によりアミン官能基に還元して式HOOC−(CH−CHNHおよびHOOC−(CH−CHNHの化合物の混合物を得る。
【0033】
本方法の第6の代替的実施形態において、第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸/エステルの発酵による酸化を最初に実施して式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNおよびROOC−[CH=CH]−(CH−CNの2種の酸/エステルニトリルの混合物に変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHおよびROOC−(CHn+2−CHNHの化合物の混合物を得る。
【0034】
関与する種々の反応の操作条件は既知であり、最新技術に記載されている。
【0035】
酸から出発するニトリルの合成のための反応スキームは、以下のように要約することができる:
R−COOH+NH→[R−COONH]→[R−CONH]+HO→RCN+H
本方法は、液相もしくは気相中において回分式で、または気相中において連続的に実施することができる。反応は、>250℃の高温において、一般に金属酸化物であり、酸化亜鉛であることが最も多い触媒の存在下で実施する。形成された水を連続的に除去しながら、未反応アンモニアをさらに同伴させることにより、反応の迅速な完了が可能になる。
【0036】
本方法が発酵による酸化の段階を用いる場合、供給原料の脂肪酸またはエステルの酸化を可能とする微生物、例えば、細菌、真菌または酵母を使用する。好ましくは、酸−COOHまたはエステル−COORタイプの三価の官能基を形成することにより供給原料を酸化することができるオキシゲナーゼタイプの酵素を含む微生物を使用する。
【0037】
この発酵は、例えば、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ酵素、例えば、刊行物W.H.Eschenfeldtら、「Transformation of Fatty Acids Catalyzed by Cytochrome P450 Monooxygenase Enzymes of Candida tropicalis」、Applied and Environmental Microbiology発行、2003年10月、5992−5999頁に掲載、ならびにFR 2 445 374、US 4 474 882、US 3 823 070、US 3 912 586、US 6 660 505、US 6 569 670およびUS 6 254 466に記載のものを含むカンジダトロピカリス(Candida tropicalis)株の存在下で実施することができる。
【0038】
メタセシス反応は、たとえメタセシス反応の産業的用途が比較的限定されるにしても、長きにわたり知られている。脂肪酸(エステル)の変換におけるメタセシス反応の使用に関しては、論文J.C.Molによる、「Catalytic Metathesis of Unsaturated Fatty Acid Esters and Oil」、Topics in Catalysis発行、第27巻、第1号−4号、2004年2月(Plenum Publishing)を参照することができる。
【0039】
メタセシス反応の触媒は、極めて多くの研究および複雑な触媒系の開発の対象を形成している。例えば、Schrockら、J.Am.Chem.Soc.、108(1986)、2771またはBassetら、Angew.Chem.,Ed.Engl.、31(1992)、628により開発されたタングステン錯体を挙げることができる。より最近になって、ルテニウム−ベンジリデン錯体である「Grubbs」触媒が出現した(Grubbsら、Angew.Chem.,Ed.Engl.、34(1995)、2039およびOrganic Lett.、1(1999)、953)。これらの触媒は、均一系触媒に関する。アルミナまたはシリカ上に堆積された金属、例えばレニウム、モリブデンおよびタングステンをベースとする不均一系触媒も開発されてきた。最後に、固定化触媒、即ち活性原理が均一系触媒、特にルテニウム−カルベン錯体の活性原理であるが、不活性支持体上に固定化されている触媒の調製に関する研究が実施されてきた。これらの研究の課題は、一緒に用いられる反応物質間の副反応、例えば「ホモメタセシス」に対してクロスメタセシス反応の選択性を高めることである。これらの副反応は、触媒の構造だけでなく、導入され得る反応媒体および添加物の効果にも関連する。
【0040】
任意の活性および選択性メタセシス触媒を、本発明の方法において使用することができる。しかしながら、好ましくはルテニウムベース触媒を使用する。
【0041】
アクリレートタイプの化合物とのクロスメタセシス反応は、十分に既知の条件下で実施する。反応温度は、例えば、ルテニウムベース触媒の存在下で、ほぼ大気圧(1から10bar)の圧力において20から100℃の間である。反応時間は、用いられる反応物質に応じて、また、可能な限り反応の平衡近くに達するように選択される。
【0042】
ルテニウム触媒は、好ましくは、一般式:
(X1)(X2)Ru(カルベンC)(L1)(L2)
[式中、
・a、b、cおよびdは、整数であり、aおよびbは、0、1または2であり、ならびにcおよびdは、0、1、2、3または4であり;
・X1およびX2は、同一であるか、または異なり、それぞれ、荷電または非荷電のモノまたはマルチキレート配位子を表し;例として、ハロゲン化物、サルフェート、カルボネート、カルボキシレート、アルコキシド、フェネート、アミド、トシレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ビストリフリルアミド、テトラフェニルボレートおよび誘導体を挙げることができる。X1またはX2は、Y1もしくはY2、または(カルベンC)に結合してルテニウム上で二座配位子(またはキレート)を形成していてよく;ならびに
・L1およびL2は、同一であるか、または異なり、電子供与配位子、例えば、ホスフィン、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、アルシン、スチルベン、オレフィンまたは芳香族、カルボニル化合物、エーテル、アルコール、アミン、ピリジンもしくは誘導体、イミン、チオエーテルまたは複素環カルベンであり、
L1またはL2は、「カルベンC」に結合して二座配位子またはキレートを形成していてよい。]の荷電または非荷電触媒から選択される。
【0043】
「カルベンC]は、一般式:C_(R1)_(R2)[式中、R1およびR2は、同一であるか、または異なり、例えば、水素または任意の他の飽和もしくは不飽和の環式、分枝鎖もしくは直鎖、もしくは芳香族ヒドロカルボニル基である。]により表すことができる。例として、ルテニウムのアルキリデンまたはクムレン錯体、例えばビニリデンRu=C=CHRまたはアレニリデンRu=C=C=CR1R2またはインデニリデンを挙げることができる。
【0044】
イオン性液体中でルテニウム錯体の滞留を改善することを可能とする官能基を、配位子X1、X2、L1もしくはL2の少なくとも1個またはカルベンCにグラフトすることができる。この官能基は、荷電または非荷電であってよく、例えば、好ましくは、エステル、エーテル、チオール、酸、アルコール、アミン、窒素含有複素環、スルホネート、カルボキシレート、第4級アンモニウム、グアニジニウム、第4級ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、モルホリニウムまたはスルホニウムであってよい。
【0045】
二重結合の2個の炭素上で酸官能基の形成をもたらす二重結合に対する酸化的開裂反応も、それ自体が既知である。
【0046】
酸化的開裂は、「Organic Chemistry」L.G.Wade Jr.ら、第5版、第8章,Reactions of Alkenesに記載の通り、強力な酸化剤、例えば、濃縮形態のKMnOにより、および加熱により実施することができる。
【0047】
酸化的開裂は、GB 743 491に記載の通り、過酸化水素水溶液により実施することができる。F.Drawertらによる、Chem.Mikrobiol.Technol.Lebensm.1,158−159(1972)に記載の論文は、ヒマワリ油の放射線照射による代替的経路を記載している。さらに、G.S.Zhangらによる、Chinese Chemical Letters,第5巻、第2号、105−108頁,1994に記載の論文は、酸化的開裂をオレイン酸の対応するジオールから出発して実施することが可能であることを示している(表のEntry29を参照のこと)。この酸化的開裂は、酸化剤としてアンモニウムクロロクロマートを使用して実施する。この開裂に関して、ジオールは、オレイン酸をエポキシ化し、次いでエポキシ橋を加水分解することにより得る。
【0048】
酸化的開裂は、他の酸化剤、例えば過酸化水素水溶液、さらに特定するとオゾンにより実施することができる。
【0049】
酸化剤としてのオゾンの使用に関する多数の研究が実施されている。さらに、上記のAngew.Chem.文献において、ペラルゴン酸およびアゼライン酸へのオレイン酸の酸化的開裂は、オゾン分解の最も重要な産業的用途であることが挙げられている。
【0050】
US 2 813 113は、特に、脂肪酸、例えばオレイン酸を酸化的オゾン分解するにあたり、第1の段階において、該酸を、オゾンと組み合わせた酸素により処理してオゾニドを形成し、次いで、第2の段階において、オゾニド化合物を酸素により酸化する方法を記載している。このタイプの反応においては、より最近になって重要な研究の対象を形成している還元的オゾン分解として既知のケトンまたはアルデヒドの段階において酸化プロセスを遮断する化合物は使用されない。
【0051】
脂肪酸ニトリルからの脂肪ω−アミノ酸(エステル)の合成の段階は、慣用の水素化からなる。多くの触媒が存在するが、好ましくは、Raneyニッケルおよびコバルトを使用する。第1級アミンの形成を促進するため、水素化はアンモニア分圧を用いて実施する。最後に、ニトリル官能基を還元して第1級アミンを生じさせることは、当業者に周知である。
【0052】
本発明の方法において、脂肪酸は、この酸形態またはこのエステル形態のいずれかで処理することができる。メタノリシス、エステル化または加水分解による一方の形態から他方の形態への全く一般的な変化は、本方法の意味における化学的変換を構成しない。
【0053】
以下に記載の機序の全ては、説明を容易にするために酸の合成を説明する。しかしながら、メタセシスは、エステルについても有効であり、より有効には、媒体は一般的にさらに無水性である。同一の手法において、スキームは、酸(またはエステル)のシスモノマーとの反応を説明し;機序は、トランス異性体に十分等しく適用可能である。
【0054】
この反応の反応機序を、以下のスキーム1で説明する。
【0055】
【化1】

【0056】
本発明はさらに、一般式NH−(CH−COOR[式中、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基のいずれかである。]の再生可能物由来のアミノ酸またはアミノエステルに関する。
【0057】
用語「再生可能物由来のアミノ酸またはアミノエステル」は、再生可能物由来の炭素を含むアミノ酸またはアミノエステルを意味すると理解される。
【0058】
本発明の方法を用いることにより、4−アミノテトラン酸から17−アミノヘプタデカン酸までのω−アミノ酸の全範囲を合成することが可能である。
【0059】
4−アミノテトラン酸は、トウハク酸、リンデル酸およびツズ酸から得ることができる。
【0060】
5−アミノペンタン酸は、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、シス−5−エイコセン酸およびフィジテリン(physiteric)酸から得ることができる。
【0061】
6−アミノヘキサン酸は、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸およびペトロセレン(petroselenic)酸から得ることができる。
【0062】
7−アミノヘプタン酸は、ラウロレイン酸、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、フィジテリン酸、シス−5−エイコセン酸およびバクセン酸から得ることができる。
【0063】
8−アミノオクタン酸は、トウハク酸、リンデル酸およびペトロセレン酸から得ることができる。
【0064】
9−アミノノナン酸は、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、フィジテリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、リシノール酸およびエルカ酸から得ることができる。
【0065】
10−アミノデカン酸は、リンデル酸およびツズ酸から得ることができる。
【0066】
11−アミノウンデカン酸は、カプロレイン酸、ミリストレイン酸、フィジテリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リシノール酸、レスケロール酸、ガドレイン酸およびエルカ酸から得ることができる。
【0067】
12−アミノドデカン酸は、ツズ酸およびペトロセレン酸から得ることができる。
【0068】
13−アミノトリデカン酸は、バクセン酸、ガドレイン酸、レスケロール酸およびエルカ酸から得ることができる。
【0069】
14−アミノテトラデカン酸は、ペトロセレン酸から得ることができる。
【0070】
15−アミノペタンデカン酸は、エルカ酸およびシス−5−エイコセン酸から得ることができる。
【0071】
17−アミノヘプタデカン酸は、シス−5−エイコセン酸から得ることができる。
【0072】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例1】
【0073】
本実施例は、二酸を生成する、オレイン酸の発酵による第1の段階を説明する。本実施例においては、少なくとも1種のオキシゲナーゼ酵素を含む酵母を使用する。酵母をソルビトール、微量元素、尿素およびオレイン酸を含む脱イオン水培地中でpH=7において培養する。続いて、混合物を120℃において15分間滅菌する。続いて、酵母株を培養培地中に接種する。培養物を30℃に維持する。水酸化ナトリウム溶液を連続的に添加して培地をpH7.0から7.5に保持する。48時間培養した後、ジエチルエーテルを抽出することにより不飽和二酸を回収する。溶媒を蒸発により除去し、結晶を回収し、再結晶させた後、この結晶は69℃の融点、即ち、9−オクタデセン二酸について記載した融点に相当する融点を有する。
【実施例2】
【0074】
本実施例は、オレイン酸のホモメタセシスを実施して式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOHの9−オクタデセン二酸の対称二酸を生じさせる第1の段階を説明する。
【0075】
この段階のため、以下の式ベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムに対応する、Sigma Aldrich(カタログ照会番号569747)から入手したメタセシス触媒を使用する。この触媒は、第二世代Grubbs触媒、および第二世代Hoveyda−Grubbs触媒の名称で既知である。
【0076】
本実験において、オレイン酸の脂肪酸エステル(メチルオレアート)2.5gを使用する。テトラデカンを内部標準として使用する。反応混合物を50℃において撹拌し、アルゴンにより脱気する。触媒(1mol%)を溶媒を添加せずに溶液に添加する。反応生成物の試料をクロマトグラフィーにより分析する。半時間反応させた後、98mol%の変換率と、100%のホモメタセシス収率を得る。
【実施例3】
【0077】
本実施例は、実施例1または2から得た不飽和二酸を不飽和ジニトリルに変換するアンモニア処理段階を説明する。
【0078】
9−オクタデセン二酸をアンモニア処理反応させて式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの不飽和ジニトリルを形成することは、酸に対して大モル過剰のアンモニアを導入し、300℃の温度において大気圧(気相中)において酸化亜鉛触媒の存在下で回分式で実施する。反応器は100℃において凝縮器を備える。従って、アンモニアを連続的に6時間注入する。形成された水を連続的に除去することにより、過剰のアンモニアを同伴させ、反応の迅速な完了を可能とする。反応収率をクロマトグラフィーにより計測すると、酸に対して86%である。
【実施例4】
【0079】
本実施例は、一連の反応:オレイン酸をアンモニア処理し、次いでこうして得られた不飽和ニトリルのホモメタセシスの1種により不飽和ジニトリルを生じさせることを説明する。
【0080】
オレイン酸のアンモニア処理反応は、9−オクタデセン二酸を用いる実施例3の条件に類似の条件下で実施する。
【0081】
メタセシス反応は、大気圧において80℃でルテニウムベース触媒[RuCl(=CHPh)(IMesH)(PCy)]存在下、溶媒としてトルエンを使用して実施する。収率は、クロマトグラフィー分析により測定する。反応完了時(6時間)、C18オレフィンを真空蒸留によりジニトリルから分離する。
【実施例5】
【0082】
本実施例は、式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの(対称または非対称)不飽和ジニトリルを酸化的オゾン分解により酸化的開裂させて式CN−(CH−COOHの酸ニトリルを形成することを説明する。
【0083】
Welsbach T−408オゾン発生器により得られたオゾンを、青色が観察されるまでペンタン25ml中にバブリングする。ペンタン溶液をアセトン/ドライアイス浴により−70℃に保持する。ジニトリル20mgを0℃に冷却されたペンタン5ml中に溶解させ、オゾン溶液に添加する。続いて、過剰のオゾンを除去し、青色が消失する。5分後、ペンタンを乾燥窒素流により蒸発させる。この段階で、溶液の温度を0℃未満に保持する。ペンタンを蒸発させた後、−70℃に冷却されたメタノール3mlを反応器に添加しながら、反応器を再加熱してオゾニドの溶解を可能とする。
【実施例6】
【0084】
本実施例は、実施例2および4の段階から得たジニトリルとメチルアクリレートとをクロスメタセシス反応させて式NC−(CH−CH=CH−COOHの酸ニトリルを形成することを説明する。
【0085】
この段階のため、第二世代Grubbs触媒および第二世代Hoveyda−Grubbs触媒として既知のSigma Aldrich(カタログ照会番号569755)から入手した触媒を使用する。この式は、以下の通りである:[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム。
【0086】
本実験において、脂肪オレインジニトリル2.5gを過剰のメチルアクリレートと混合する(モル比10/1)。テトラデカンを内部標準として使用する。反応混合物を50℃において撹拌し、アルゴンにより脱気する。触媒(0.1mol%)を、溶媒を添加せずに溶液に添加する。反応生成物の試料をクロマトグラフィーにより分析する。半時間反応させた後、99%の変換率と、99%のクロスメタセシス収率を得る。
【実施例7】
【0087】
本実施例は、二重結合およびニトリル官能基の水素化を説明する。水素化は、Raneyニッケルから構成される触媒の存在下で実施する。
【0088】
実施例3に従って得られた式NC−(CH−COOHの酸ニトリル1gをメタノールによりエステル化する。酸ニトリル1g、メタノール1.2g、ベンゼン1.2gおよび濃硫酸数滴を、反応器中に導入する。水/アルコール/ベンゼン共沸混合物を塔頂において除去する。硫酸を連続的に添加して反応進行を保持する。続いて、ベンゼンおよびアルコールをフラッシュ蒸留してエステルニトリル:1.02gを回収する。
【0089】
合成されたエステルニトリルを、撹拌子付15mlオートクレーブ中に装入し、96%エタノール2.5g、液体アンモニア2.5gおよびコバルト3重量%を含むRaneyニッケル触媒0.125gをこのオートクレーブに添加する。混合物を90℃において水素150bar(全圧210bar)下で4時間加熱する。メチルエステルを水銀0.5mmの真空下で蒸留する。澄明な留出物0.97gを回収する。この留出物は、90%のアミノエステルを含む。
【実施例8】
【0090】
本実施例は、以下の反応スキームによるオレオニトリルとメチルアクリレートとの間のクロスメタセシスを説明する。
【0091】
【化2】

【0092】
ナトリウム/ベンゾフェノン上で蒸留された9−オクタデセンニトリル(0.5mmol)132mg、メチルアクリレート(2mmol)172mgおよびトルエン10mlを、窒素によりパージされた50mlのSchlenkチューブに入れる。混合物を100℃に加熱し、次いで磁気撹拌しながら、トルエン2ml中に溶解させた第二世代Hoveyda−Grubbs触媒(Aldrich)0.15mg(2.5×10−4mmol)をシリンジおよびシリンジポンプにより4時間にわたり添加する。添加の終了時、混合物を100℃において2時間反応させておく。反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し:
− 9−オクタデセンニトリルの変換率は93%であり、
− メチル10−シアノ−2−デセノアートの収率は80%である。
【0093】
収率は、関与するC11ニトリルのモル数に対する、得られたエステルニトリルのモル数で表現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル官能基をニトリル官能基に変換するアンモニア処理反応段階を含む、式R−CH=CH−(CH−COOR[式中、Rは、Hまたは4から14個の炭素原子を含むアルキル基および適切な場合にヒドロキシル官能基のいずれかであり、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、ならびにpは、2から11の間の整数である。]の一価不飽和脂肪酸(エステル)から出発して、式ROOC−(CH−CH−NH[式中、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、ならびにqは、2から15の間の、pもしくはp+2またはnもしくはn+2のいずれかである整数である。]のω−アミノ酸(エステル)を合成する方法であって:
第1の段階において、不飽和脂肪酸/エステルを式NC−(CH−CH=CH−(CH−CN[式中、nは、R基の性質に応じて3から13の間の整数である。]の不飽和ジニトリルに2連続段階において変換し、第1の段階は、式ROOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの対称不飽和二酸をもたらす脂肪酸のホモメタセシス、または式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COOHの不飽和二酸をもたらすこの酸/エステルの発酵のいずれかであり、および第2の段階は、該酸のアンモニア処理であり、次いで
第2の段階において、この不飽和ジニトリルを式ROOC−[CH=CH]−(CHp,n−CN[式中、Rは、Hまたは1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、xは0または1であり、および「p,n」は、第1の段階で選択された経路に応じて数がpまたはnのいずれかであることを意味する。]の酸/エステルニトリルに変換し、この変換を、不飽和ジニトリルの酸化的開裂または不飽和ジニトリルと式CH=CH−COORのアクリレートとのクロスメタセシス反応のいずれかにより実施し、ならびに
第3の段階において、酸/エステルニトリルを水素化して式COOR−(CH−CHNHのω−アミノ酸(エステル)を生じさせる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のホモメタセシスを最初に実施し、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNの酸ニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化により還元してアミン官能基を生じさせて式ROOC−(CH−CHNHの化合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のホモメタセシスを最初に実施して式ROOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNの酸/エステルニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHの化合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のアンモニア処理を最初に実施し、対応するニトリルをもたらし、次いでニトリルのホモメタセシスによる変換を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの不飽和脂肪ジニトリルを生じさせ、次いでこのジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNの酸ニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化によりアミン官能基に還元して式HOOC−(CH−CHNHの化合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸(エステル)のアンモニア処理を最初に実施し、対応するニトリルをもたらし、次いで、ニトリルのホモメタセシスによる変換を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの不飽和脂肪ジニトリルを生じさせ、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNの酸/エステルニトリルに変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHの化合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸/エステルの発酵による酸化を最初に実施して式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、酸化的開裂により式HOOC−(CH−CNおよびHOOC−(CH−CNの2種の酸/エステルニトリルの混合物に変換し、最後に、第3の段階において、ニトリル官能基を水素化によりアミン官能基に還元して式HOOC−(CH−CHNHおよびHOOC−(CH−CHNHの化合物の混合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の段階で、式R−CH=CH−(CH−COORの脂肪酸/エステルの発酵による酸化を最初に実施して式HOOC−(CH−CH=CH−(CH−COORの二酸/エステルを得、次いで、得られた脂肪二酸/ジエステルのアンモニア処理を実施して式NC−(CH−CH=CH−(CH−CNの脂肪ジニトリルを得、次いで、第2の段階において、このジニトリルを、アルキルアクリレートCH=CH−COORとのクロスメタセシスにより式ROOC−[CH=CH]−(CH−CNおよびROOC−[CH=CH]−(CH−CNの2種の酸/エステルニトリルの混合物に変換し、最後に、第3の段階において、二重結合およびニトリル官能基を水素化により同時に還元してアミンを生じさせて式ROOC−(CHp+2−CHNHおよびROOC−(CHn+2−CHNHの化合物の混合物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
メタセシスをルテニウムベース触媒の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
発酵による酸化を、好ましくは、オキシゲナーゼタイプの酵素を含む微生物により実施することを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化的開裂をオゾン分解により実施することを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項11】
クロスメタセシス反応を、メチルアクリレートを用いて実施することを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−516882(P2012−516882A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548755(P2011−548755)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050186
【国際公開番号】WO2010/089512
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】