説明

一方向に配向したポリマーテープを有するファブリックを製造する方法

一方向に配向した、少なくとも1の芯材成分を有するポリマーテープの少なくとも1の層を有するファブリックの製造方法であって、一方向に配向したポリマーテープの少なくとも1の層を織機中で形成する工程であって、該ポリマーテープを縦糸として使用し、かつ結合糸を緯糸として使用するか、または該ポリマーテープを緯糸として使用し、かつ該結合糸を縦糸として使用する工程と、引き続き圧力および熱を使用して少なくとも1の単層を固化する工程を有する方法において、結合糸の融点が、固化温度よりも低く、かつポリマーテープの芯材成分の融点が、固化温度よりも高いことを特徴とする、一方向に配向した少なくとも1のポリマーテープを有するファブリックの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に配向したポリマーテープを有するファブリックを製造する方法および該ファブリックからなる物品に関する。
【0002】
ポリマーテープは通常、ポリマー材料中での歪みのせいで波打っており、そのためポリマーテープの取り扱い、つまり加工は極めて困難である。さらに、該テープの最適な性能が失われる。
【0003】
EP1627719は、多層のポリエチレン材料および該材料から製造される耐衝撃性物品を開示している。この多層材料は、一方向に配向したポリエチレンストリップの複数の単層を有する。この単層は、互いに一定の角度で交差している。第一の単層上に第二の単層が形成される前に、第一の単層は圧力および熱の適用によって固化される。第二の単層のストリップを第一の単層に対して一定の角度で配置した後に、再度圧力および熱を適用することによって二層のマットが形成される。多層材料は、上記のとおりに得られた二層材料を少なくとも2つ固化させることによって得られる。
【0004】
EP1627719に記載の物品を製造する方法では、それぞれの層を固化することが要求されており、そのため極めて時間がかかる。
【0005】
ポリマーテープを製造するための別の方法はUS5,578,370に開示されている。この刊行物は、たとえば製織法によって製造される、互いに交差した延伸部材のマットを開示している。延伸部材は、両面が、中央の層よりも低い軟化温度を有するポリマー材料によって被覆されているポリマーフィルムから製造されていてもよい。
【0006】
このようにして得られた複合材フィルムを細長く切断してテープが形成される。次いで、このテープを織るか、編むことによって、または繊維ウェブをシート状にすることによってマットが形成される。該マットを加熱すると、テープは少なくともその交差部分において溶融してマットが固化される。融着に先だって2以上のマットを積層したものを形成して、少なくとも2つの織りマットまたは編みマットを有する製品が得られてもよい。
【0007】
US5,578,370に開示されている方法は、マットが製織法によって形成されているため、それぞれの層を固化する必要はない。2つ以上のマットを積層したものを、固化の前に形成してもよい。
【0008】
しかし製織法は、不均一な表面につながる。織布中の縦糸と緯糸との交差パターンに基づいて、および糸がファブリック中で隣の交差糸の上下に存在するという事実に基づいて、US5,578,370に開示されているテープは必然的に、湾曲した、つまり波形の形状となる。この結果、直線的かつ平坦な、一方向に配向したテープと比較して、耐衝撃性、たとえば衝撃強さに関してより弱い製品が生じる。
【0009】
従って、従来技術の欠点が少なくとも低減される、一方向に配向したポリマーテープを有するファブリックを製造する方法であって、ファブリックの強度および耐衝撃性を維持するか、または改善しつつ、このようなファブリックを効率的に製造することが可能な方法を提供することが本発明の課題である。
【0010】
この課題は、一方向に配向したポリマーテープの少なくとも1の層を有し、該テープが少なくとも1の芯材成分を有するファブリックを製造する方法であって、織機で一方向に配向したポリマーテープの少なくとも1の層を形成する工程であって、その際、該ポリマーテープは縦糸として使用され、かつ結合糸は緯糸として使用されるか、またはその際、ポリマーテープは緯糸として使用され、かつ結合糸は縦糸として使用される工程と、引き続き、圧力および温度を使用して少なくとも1の単層を固化させる工程を有する方法において、結合糸の融点が固化温度よりも低く、かつポリマーテープの芯材成分の融点が、固化温度よりも高いことを特徴とするファブリックの製造方法により解決される。
【0011】
この方法により、ポリマーテープが平坦かつ直線的に配置された、波打ちのないファブリックが得られ、ひいては多層の製品を形成する場合にそれぞれの層を別々に固化する必要なしに、最適な強度および平坦な表面が得られる。
【0012】
本発明による方法では、ポリマーテープの芯材成分は溶融しないため、その初期特性が維持される。
【0013】
ポリマーテープが1の芯材成分のみを有する場合、これは1のポリマーのみを含むか、または複数のポリマーの均質な混合物を相分離することなく含んでいる。1の芯材成分のみを含有するポリマーテープは、紡糸されたモノフィラメントであってもよい。ここで使用されるモノフィラメントという用語は、個別的に紡糸された、たとえば溶融紡糸またはゲル紡糸により紡糸された任意の単一フィラメントを含む。1の芯材成分のみを含有するテープは、固体の状態の押出(SSE)で、または固体材料から削り出し、引き続き後延伸して製造してもよい。1の芯材成分のみを有するテープは単層フィルムを細長く切断して得られるものであってもよい。
【0014】
織機中で、ポリマーテープは張設されて隣接するテープと実質的に相互に接触する関係で隣り合って配置される。
【0015】
ポリマーテープおよび結合糸は、平織り、繻子織り、綾織りなどに形成されてもよい。
【0016】
有利には結合糸の融点は、ポリマーテープの融点よりも5℃低いが、ただし結合糸の融点は、固化温度よりも低く、かつポリマーテープの融点は固化温度よりも高い。さらに有利には結合糸の融点は、ポリマーテープの融点よりも少なくともも10℃低く、最も有利には結合糸の融点は、ポリマーテープの融点よりも少なくとも20℃低いが、ただし結合糸の融点は、固化温度よりも低く、かつポリマーテープの融点は、固化温度よりも高い。
【0017】
結合糸はモノフィラメントヤーンであっても、マルチフィラメントヤーンであってもよい。結合糸は、結合糸の融点が、固化温度よりも低く、かつポリマーテープの融点が固化温度より高く、従って固化の間に結合糸のみが溶融して分散し、その結果、固化温度より高い融点を有するテープとの接着剤として機能する限りは、四角い断面を含む任意の断面形状を有していてよい。この場合、結合により生じる織布の波打ちは排除される。
【0018】
糸材料は、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリフェニリデンスルフィド、ポリウレタン、エチレンビニルアセテート(EVA)、これらのポリマーのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
有利には本発明による方法で使用されるポリマーテープの引張強さは、少なくとも200MPaである。
【0020】
ポリマーテープの引張強さは、ASTM D638により測定される。
【0021】
少なくとも400MPaの引張強さを有するテープは有利であり、さらに有利にはポリマーテープは少なくとも800MPaの引張強さを有する。
【0022】
ポリマー材料および延伸率に依存して、ポリマーテープは、20GPaまでの引張強さを有していてよい。
【0023】
本発明の文脈で使用されるテープという用語は、実質的に均一な幅と厚さを有し、円形の形以外の任意の形状を有することができる柔軟性のある、延伸された部材を意味する。テープの幅/高さ比は少なくとも2であり、有利には少なくとも5、およびさらに有利には少なくとも20である。有利には本発明の方法によるテープは、実質的に四角い断面を有している。
【0024】
高い引張強さを有するファブリックを得るために、少なくとも1:5の延伸率でポリマーテープを延伸することが有利であり、さらに有利にはポリマーテープは少なくとも1:15の延伸率で延伸される。1:50以上の延伸率が特に有利である。
【0025】
ポリマーテープはシース・コア構造を有していてもよい。シースは、たとえばモノフィラメントをテープとして使用する場合には、シースを芯材材料に沿って溶融紡糸することによって芯材材料に適用されてもよい。シース材料は後の工程で織機中で位置決めする前に、たとえばドクターナイフにより、噴霧により、粉末被覆により、またはテープをポリマー溶液、分散液またはエマルションなどの中に案内することによりコア材料に適用してもよい。シース材料対芯材材料の比率は、0.5/99.5〜50/50質量%である。シース材料の融点は有利には芯材材料の融点よりも低い。さらに有利にはシース材料の融点は、結合糸の融点とほぼ同じである。前記の芯材材料および前記のシース材料は特に、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリフェニリデンスルフィド、これらのポリマーのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
さらに、シース材料はエチレンアルキルアクリレートコポリマー(EAA)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレンブチルアクリレートコポリマー(EBA)、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMA)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LPDE)からなる群から選択されていてもよい。ポリイソブテン(PIB)またはポリウレタン(PU)をシース材料として使用することも可能である。これらのポリマーは、極めて柔軟であり、かつ高い伸び率を有する。シース材料は上記の材料の1つまたは上記のシース材料の混合物を含んでいてよい。
【0027】
本発明による方法で使用されるポリマーテープは、多層ポリマーフィルムを切断または細長く切断することによって製造してもよい。ポリマーフィルム、つまり芯材ポリマーの1表面または両方の表面は、芯材ポリマーよりも低い融点を有する樹脂により被覆されるか、該樹脂と共に押し出されていてもよい。
【0028】
モノフィラメントである四角いテープは有利には幅1.5mm〜10mmおよび厚さ20μm〜1500μmであってよい。フィルムを細長く切断することにより得られる四角いテープは、幅2mm〜300mmであり、かつ層の数に依存して、厚さ1μm〜1000μm、有利には4μm〜50μmであってよい。
【0029】
本発明による方法では、一方向に配向したポリマーテープの少なくとも2つの層を、織機で形成するが、その際、ポリマーテープは縦糸として使用され、かつ結合糸は緯糸として使用されるか、またはポリマーテープは緯糸として使用され、かつ結合糸は縦糸として使用されてもよい。一方向に配向したポリマーテープの少なくとも2つの層は、上下に積層され、その際、隣接する層のポリマーテープは一定の角度で交差され、かつ積層された層は、圧力および熱を使用して固化される。
【0030】
有利には該層は互いにほぼ垂直に交差する。しかしこれらの層は90゜とは異なる角度で積層されていてもよい。
【0031】
本発明によるファブリックは、2以上、たとえば3、4または25までの、または50まで、もしくは100までの、織機で形成された、一方向に配向されたポリマーテープの層を有していてもよく、その際、該ポリマーテープは縦糸として使用されても緯糸として使用されてもよく、かつ結合糸が緯糸として使用されても縦糸として使用されてもよい。
【0032】
本発明による方法ではさらに、一方向に配向されたポリマーテープの第一の層を織機で形成し、その際、該ポリマーテープを縦糸として使用し、かつ結合糸を緯糸として使用し、かつ第二の層を織機で形成し、その際、ポリマーテープを緯糸として使用し、かつ結合糸を縦糸として使用し、第一および第二の層は交互に積層され、その際、隣接する層のポリマーテープは一定の角度で交差し、かつ積層された層は圧力および熱を使用して固化される場合に有利である。このようにして第一および第二の層を交互に100層まで積層してもよい。
【0033】
上記の方法により、一方向に配向されたポリマーテープの第一の層が織機で形成され、その際、該ポリマーテープは縦糸として使用され、かつ結合糸は緯糸として使用され、かつ第二の層が織機で形成され、その際、ポリマーテープは緯糸として使用され、かつ結合糸は縦糸として使用されるように層が形成される場合は、固化は連続的な方法で行うことができる。第一の層および第二の層のポリマーテープは、第一および第二の層が単に織機の方向で積層されている場合には、すでに交差されている。というのも、第一の層中でテープは縦方向で織られており、かつ第二の層中で該テープは横方向で織られているからである。
【0034】
もう1つの有利な実施態様では、層がファブリックの片面もしくは両面で支持体層と接触するか、または層の間でサンドイッチ状に積層されている。支持体層はフィルム、スクリム、不織布などの形であってよい。
【0035】
支持体層はファブリックの固化温度よりも低い融点を有するポリマー材料からなる。支持体層は強化材料として機能してもよい。スクリムまたは不織布は、強化材料として有利である。
【0036】
これに加えてさらに、所望の場合には、その他の任意の適切な材料の保護層が設けられていてもよい。
【0037】
本発明による方法で製造されるファブリックは、複合材構造となっていてもよい。本発明による方法で製造されるファブリックは、軟質の、および硬質の耐衝撃性構造となっていてもよい。
【0038】
特別な実施態様では、本発明による耐衝撃性構造が1以上の耐衝撃性材料を備えている場合に特に有利であり、この耐衝撃性材料は有利には、金属、合金、ガラス、玄武岩ファイバー、ガラスファイバー、セラミックまたはその他の耐衝撃性材料、たとえばアラミドまたは超高分子ポリエチレンファイバーからなる群からの1以上の材料から選択されている。耐衝撃性材料の層は、ファブリックの個々の層の両面に、またはこれらの層の間にサンドイッチ構造となって備えられていてもよい。
【0039】
耐衝撃性構造は、壁、ドア、板、ベストまたはベストのインサート、軍用の適用、たとえば戦闘用ヘルメット、護身用具、地上用車両のための装甲板、航空機の機体および航空機のドアもしくはボルトであってよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向した、少なくとも1の芯材成分を有するポリマーテープの少なくとも1の層を有するファブリックの製造方法であって、一方向に配向したポリマーテープの少なくとも1の層を織機中で形成する工程であって、その際、該ポリマーテープを縦糸として使用し、かつ結合糸を緯糸として使用するか、またはその際、該ポリマーテープを緯糸として使用し、かつ結合糸を縦糸として使用する工程と、引き続き圧力および熱を使用して少なくとも1の単層を固化する工程を有する方法において、結合糸の融点が、固化温度よりも低く、かつポリマーテープの芯材成分の融点が、固化温度よりも高いことを特徴とする、一方向に配向した少なくとも1のポリマーテープを有するファブリックの製造方法。
【請求項2】
ポリマーテープがモノフィラメントであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマーテープがシース・コアテープであり、シースの融点はコアの融点よりも低いことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリマーテープの引張強さが、少なくとも200MPaであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
一方向に配向したポリマーテープの少なくとも2の層を織機で形成し、その際、該ポリマーテープを縦糸として使用し、かつ結合糸を緯糸として使用するか、またはその際、該ポリマーテープを緯糸として使用し、かつ結合糸を縦糸として使用し、一方向に配向したポリマーテープの少なくとも2つの層は、上下に積層されており、その際、隣接する層のポリマーテープは一定の角度で交差し、かつ積層された層は圧力および熱を使用して固化されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
一方向に配向されたポリマーテープの第一の層を織機で形成し、その際、該ポリマーテープを縦糸として使用し、かつ結合糸を緯糸として使用し、かつ第二の層を織機で形成し、その際、該ポリマーテープを緯糸として使用し、かつ結合糸を縦糸として使用し、第一および第二の層は交互に積層され、その際、隣接する層のポリマーテープは一定の角度で交差し、かつ積層された層は圧力および熱を使用して固化されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法で製造されたファブリックを有する、軟質または硬質の耐衝撃性構造。

【公表番号】特表2010−506054(P2010−506054A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530790(P2009−530790)
【出願日】平成19年9月29日(2007.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008499
【国際公開番号】WO2008/040510
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507335414)ノファメーア ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【氏名又は名称原語表記】Novameer B.V.
【住所又は居所原語表記】Kennedeylaan 10, NL−5466 AA Veghel, Netherlands
【Fターム(参考)】