説明

一方向弁を備えるフェースマスク

一方向弁を含むフェースマスクが開示される。一方向弁は、マスク及び着用者によって画定される内部気体空間と、フェースマスクの外部の気体空間との間の流体連通を可能にする。一方向弁は、弁の基部に形成される開口部を覆うように位置付けられる、1つ以上の弁フラップを含む。各弁フラップは自由縁部、及び自由縁部とほぼ反対側に位置するヒンジを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェースマスクの内部と、フェースマスクの外部との間で空気を移動させるための一方向弁を備える、フェースマスクを提供する。
【背景技術】
【0002】
汚染された環境で働く人々は、通常、空中の汚染物質を吸入することから自らを保護するためにフェースマスクを着用する。フェースマスクの内部空間からの、暖かく湿った呼気の排出を改善するために、製造者は多くの場合、呼気弁を組み込んで、熱く湿った呼気がマスク内部から迅速に排出されることを可能にする。呼気が迅速に除去されると、マスク内部がより冷たくなり、ひいては、マスク着用者が、フェースマスク内部の熱くて湿った環境を排除するために顔からマスクを取り外す可能性が少なくなるので、作業者の安全性に効果がある。
【0003】
長年にわたって、市販のフェースマスクは、「ボタン型」呼気弁を使用して、呼気をマスク内部から排出してきた。ボタン型弁は典型的には、吐き出された空気をマスク内部から逃がす動的機械要素として、薄くて円形の可撓性フラップを使用している。そのフラップは、中央ポストを通して弁座の中央に取り付けられる。ボタン型弁の例が、米国特許第2,072,516号、同第2,230,770号、同第2,895,472号、及び同第4,630,604号に示されている。人が息を吐き出すとき、フラップの周辺部分が弁座から持ち上げられて、空気がマスク内部から流出することが可能になる。
【0004】
ボタン型弁は着用者の快適感を改善する試みにおける進歩を示しているが、研究者らは別の改善を進めており、その例が米国特許第4,934,362号(Braun)に示される。この特許に記載される弁は、パラボラ型弁座と細長い可撓性フラップを使用する。ボタン型弁と同様に、Braun弁も、中央で取り付けられたフラップ及びフラップ縁部分を有して、これが呼気中に封止表面から持ち上げられて、呼気がマスク内部から流出することが可能になる。
【0005】
Braunによる開発の後、呼気弁技術分野における別の考案が、Japuntichらによりなされた(米国特許第5,325,892号及び同第5,509,436号参照)。Japuntichらの弁は、中心を外して片持ち方式で取り付けられた単一の可撓性フラップを使用して、弁を開くのに必要とされる呼気圧を最小限にする。弁開放圧力が最小限であるとき、弁を操作するのに必要とされる力が少なくなり、このことは、着用者が呼吸時に吐き出した空気をマスク内部から排出するのに同じくらい強く動作する必要がないことを意味する。
【0006】
Japuntichらの弁の後で導入された他の弁もまた、中心を外して取り付けられた片持ち式可撓性フラップを使用している(米国特許第5,687,767号(米国再発行特許第RE37,974E号として再発行)及び同第6,047,698号参照)。この種の構造を有する片持ち式弁は、「フラッパ型」呼気弁と呼ばれることがある。呼吸フェースマスクに関連して使用される一方向弁に関する更なる改善はまた、米国特許第7,013,895号、同第7,028,689号、及び同第7,188,622号(全てMartinら)、加えて、米国特許出願公開第US2007/0144524号(Martin)に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO01/28634号
【特許文献2】米国意匠特許第412,573号
【特許文献3】米国意匠特許第424,688号
【特許文献4】米国意匠特許第431,647号
【特許文献5】米国意匠特許第443,927号
【特許文献6】米国再発行特許第RE37,974E号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0144524号
【特許文献8】米国特許第2,072,516号
【特許文献9】米国特許第2,230,770号
【特許文献10】米国特許第2,895,472号
【特許文献11】米国特許第4,630,604号
【特許文献12】米国特許第4,790,306号
【特許文献13】米国特許第4,807,619号
【特許文献14】米国特許第4,827,924号
【特許文献15】米国特許第4,934,362号
【特許文献16】米国特許第4,971,052号
【特許文献17】米国特許第5,035,239号
【特許文献18】米国特許第5,062,421号
【特許文献19】米国特許第5,325,892号
【特許文献20】米国特許第5,394,568号
【特許文献21】米国特許第5,464,010号
【特許文献22】米国特許第5,509,436号
【特許文献23】米国特許第5,509,436号
【特許文献24】米国特許第5,558,089号
【特許文献25】米国特許第5,617,849号
【特許文献26】米国特許第5,687,767号
【特許文献27】米国特許第5,924,420号
【特許文献28】米国特許第6,047,698号
【特許文献29】米国特許第6,062,221号
【特許文献30】米国特許第6,123,077号
【特許文献31】米国特許第6,125,849号
【特許文献32】米国特許第7,013,895号
【特許文献33】米国特許第7,028,689号
【特許文献34】米国特許第7,188,622号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一方向弁を含むフェースマスクを提供する。一方向弁は、マスク及び着用者によって画定される内部気体空間と、フェースマスクの外部気体空間との間の流体連通を可能にする。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明との関連において使用される一方向弁は、その中に形成される2つ以上の弁フラップを含む隔壁を含んでもよく、各弁フラップは、弁の基部に形成される開口部を覆って位置付けられる。各弁フラップは自由縁部、及び自由縁部とほぼ反対側に位置するヒンジを含む。弁フラップは、ヒンジに沿って隔壁に取り付けられるものとして記載され得る。
【0010】
他の実施形態では、本発明と関連して使用される一方向弁は、2つ以上の弁フラップが同じ方向で開くように構成される2つ以上の弁フラップを含んでもよく、それによって、このような一対の弁フラップを通過する空気(又は他の任意の気体)が、共通の方向に流れるように予め配置される。このような構成では、弁フラップは同じ方向に向けられ、それによって弁フラップの自由縁部が他の弁フラップのヒンジに隣接して位置するものとして記載されてよく、2つ以上の弁フラップのヒンジは、互いに対してほぼ平行である。
【0011】
更に他の実施形態では、本発明と関連して使用される一方向弁は、開口部を覆うように位置する弁フラップを含んでもよく、弁フラップは、弁基部に取り付けられる静止部分と、可動部分とを含み、静止部分と可動部分との間にヒンジが位置する。弁フラップは、弁フラップが封止表面に接触して開口部を閉じる閉鎖位置を含み、弁フラップはまた、気体がフェースマスクの内部気体空間と外部気体空間との間を通過し得るように弁フラップの可動部分が封止表面から浮かび上がる開放位置を有する。弁フラップのヒンジは、好ましくは、弁フラップを通じて形成される1つ以上のヒンジスロット、及びそれによって弁フラップの可動部分が弁フラップの静止部分に接続される1つ以上のランド部分を含み、弁フラップが閉鎖位置にあるとき、1つ以上のヒンジスロットは、封止表面の外側に位置する。
【0012】
使用中、本発明と関連して使用される一方向弁の各弁フラップは、弁フラップが開口部の外辺部の周囲の封止表面と接触して一方向への流れに対して開口部を閉じる閉鎖位置と、気体(例えば、空気)が、反対方向で開口部を通過することができるように、弁フラップの少なくとも一部が封止表面から浮かび上がる開放位置とを含む。
【0013】
本発明の、少なくともいくつかの実施形態の1つの潜在的な利点は、多数の、即ち、2つ以上の弁フラップ(任意により単一の隔壁で)の使用が、許容不可能な圧力低下をもたらすことなく、比較的低い断面を有する一方向弁を提供することができることである。対照的に、従来の「フラッパ型」弁は、典型的には、これを通じて空気が通過する単一の開口部を覆うように位置する単一のフラップを含む。結果として、単一のフラップは、弁にわたって許容不可能な圧力低下を生じることなく、十分な空気が弁を通過することを可能にするように、かなりの程度開かなくてはならない。本発明の一方向弁は、好ましくは、(マスク本体の表面における、同等の面積を占める弁内の同等の圧力低下を達成するために)従来のフラッパ型弁の弁高さの半分以下である弁高さ(即ち、周囲のマスク本体表面から上の高さ)を含み得る。
【0014】
本発明の、少なくともいくつかの低断面一方向弁と関連し得る潜在的な利点は、損傷からの影響をより受け難いこと(より低断面の弁は、物体との不必要な接触などによる損傷をより受け難いため)、着用者のための改善された可視性(マスク全体の視覚が改善され得るため)、例えば、開いた弁を通じて上流へと通過することができる、粒子を生じる粉砕又は他のプロセスからの粒子の浸入に対する改善された耐性(例えば、弁フラップの空間がより小さいため)である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一方向弁は、多数の弁フラップを含み得るため、弁の断面は、弁全体がマスク本体の輪郭形状により緊密に従うように、基部、隔壁、及びカバーを曲げることによって、更に低減させてもよい(少なくともいくつかの実施形態において)。しかしながら、このような湾曲の代わりに、各弁フラップの機能は、弁の湾曲に沿って、封止表面を異なる方向に向けることによって維持されてもよい。
【0016】
一方向弁の更に別の潜在的な利点は、弁フラップが形成される隔壁(1つ又は複数)は、隔壁の基部への物理的取り付け(例えば、溶接、支柱への適合、接着剤などを通して)を必要とすることなく、開口部を覆って適所に維持されることのみを必要とし得るため、製造が簡略化され得ることである。
【0017】
一態様では、本発明は、着用された際に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合されるマスク本体を含む、フェースマスクを提供する。フェースマスクはまた、内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする一方向弁を含む。一方向弁は、マスク本体に取り付けられた基部を含み、基部は2つ以上の開口部を有し、これを介して気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過し得る。2つ以上の開口部の各開口部は、開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれる。静止隔壁は基部に位置付けられ、隔壁は2つ以上の開口部及びそれらの対応する封止表面を覆って延びる。2つ以上の弁フラップが隔壁内に形成され、2つ以上の弁フラップの1つの弁フラップが、2つ以上の開口部の各開口部を覆うように位置する。2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、隔壁にわたって形成される境界スロット、及びそれに沿って弁フラップが隔壁に結合されるヒンジを含む。境界スロットは、弁フラップの自由縁部を画定し、境界スロットは第1端部から第2端部へと延びる。ヒンジは、弁フラップの自由縁部の第1端部と第2端部との間に延びる。2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、弁フラップが開口部の周囲に延びる封止表面に接触し、これを覆うように弁フラップが位置して開口部を閉じる閉鎖位置を有する。各弁フラップはまた、気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過し得るように、弁フラップの少なくとも一部が封止表面から浮かび上がる開放位置を有する。
【0018】
様々な実施形態において、上記のフェースマスクはまた、以下の特徴の1つ以上を含んでもよい:弁フラップの自由縁部が境界スロットをはさんで対向する隔壁の縁部から離間するように、2つ以上の弁フラップの各弁フラップの自由縁部がスロット幅を有する境界スロットによって画定されてよい;ヒンジが隔壁中に形成される切り込み線を含んでよい;各ヒンジが隔壁を貫いて形成される1つ以上のヒンジスロットを含んでよく、1つ以上のランド部分が弁フラップを隔壁に接続する;2つ以上の開口部を覆うように位置する2つ以上の弁フラップが、同一方向に向けられ、それによって一方の弁フラップの自由縁部が他方の弁フラップのヒンジに隣接するように位置し、弁フラップのヒンジが互いに対してほぼ平行であり得る;各封止表面が平面的な封止表面であってよく、2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる平面的な封止表面が、同一平面又は異なる平面に位置してもよい;2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていてもよく、又は傾いていなくてもよい;2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる封止表面は、弾性封止表面であってよい;マスク本体はフィルターマスク本体であってよい;一方向弁は呼気弁であってよい;など。
【0019】
一方向弁はまた、基部に取り付けられるカバーを含んでもよく、隔壁はカバーと基部との間に位置する。任意のこのようなカバーは、2つ以上の開口部の各開口部のために、通気孔構造を含んでもよく、各通気孔構造は、2つ以上の開口部の各開口部を通過する気体のための、カバーを通じた区別可能な流路を画定する。隔壁の各弁フラップのために、通気孔構造は、隔壁を基部の近位に維持するように位置付けられた縁部を備えるルーバーを含んでもよい。各通気孔構造は、開口部の反対側に位置する主要通気孔、及び開口部の一方の側に位置する側部通気孔を含み得る。
【0020】
別の態様では、本発明は、着用時に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合されるマスク本体と、内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする一方向弁と、を含むフェースマスクを提供することができる。一方向弁は、マスク本体に取り付けられた基部を含んでもよい。基部は、2つ以上の開口部を有してもよく、これを介して気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過してもよく、2つ以上の開口部の各開口部は、開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれていてもよい。弁フラップは、2つ以上の開口部の各開口部を覆うように位置してもよい。各弁フラップは、静止部分及び可動部分を含んでもよく、静止部分と可動部分との間にヒンジが位置する。各弁フラップは、ヒンジの外側の、弁フラップの可動部分の周囲に延びる自由縁部を有する。各弁フラップは、弁フラップの可動部分が、開口部の周囲に延びる封止表面に接触し、これを覆うように弁フラップが位置して開口部を閉じる閉鎖位置を有し、各弁フラップはまた、気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過し得るように、弁フラップの可動部分が封止表面から浮かび上がる開放位置を有する。2つ以上の開口部を覆うように位置する弁フラップは、同一方向に向けられ、それによって一方の弁フラップの自由縁部が、他方の弁フラップのヒンジに隣接するように位置し、弁フラップのヒンジは、互いに対してほぼ平行である。
【0021】
様々な実施形態において、上記のフェースマスクはまた、以下の特徴の1つ以上を含んでもよい:ヒンジは、隔壁中に形成される切り込み線を含んでもよい;弁フラップのヒンジは、弁フラップにわたって形成される1つ以上のヒンジスロット、及びそれによって弁フラップの可動部分が弁フラップの静止部分に接続される1つ以上のランド部分を含んでもよい:各封止表面は平面的な封止表面であってよく、2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる平面的な封止表面は、同一平面又は異なる平面に位置してもよい;2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていてもよく、傾いていなくてもよい;2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる封止表面は、弾性封止表面であってもよい;マスク本体はフィルターマスク本体であってよい;一方向弁は呼気弁であってよい;など。
【0022】
一方向弁は基部に取り付けられるカバーを含んでもよく、弁フラップがカバーと基部との間に位置し、カバーは2つ以上の開口部の各開口部のために、通気孔構造を含んでもよく、更に各通気孔構造は、2つ以上の開口部の各開口部を通過する気体のための、カバーを通じた区別可能な流路を画定してもよい。各弁フラップのために、通気孔構造はルーバーを含んでもよく、弁フラップを基部の近位に維持するように縁部が位置付けられる。各通気孔構造はまた、開口部の反対側に位置する主要通気孔、及び開口部の一方の側に位置する側部通気孔を含み得る。
【0023】
別の態様では、本発明は、着用時に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合されたマスク本体と、内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする一方向弁と、を含む、フェースマスクを提供してもよい。一方向弁は、マスク本体に取り付けられる基部を含んでもよい。基部は、開口部を含み、これを介して気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過してもよい。開口部は、開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれていてもよい。弁フラップは開口部を覆うように位置し、弁フラップは、静止部分及び可動部分を含んでもよく、ヒンジが静止部分と可動部分との間に位置する。弁フラップは、弁フラップが封止表面と接触して開口部を閉じる閉鎖位置を有する。弁フラップはまた、気体が内部気体空間と外部気体空間との間を通過し得るように弁フラップの可動部分が封止表面から浮かび上がる開放位置を有する。ヒンジは、弁フラップにわたって形成される1つ以上のヒンジスロット、及びそれによって弁フラップの可動部分が弁フラップの静止部分に接続される1つ以上のランド部分を含む。ヒンジスロットは、弁フラップが閉鎖位置にあるとき、封止表面の外側に位置する。
【0024】
様々な実施形態において、上記のフェースマスクは、以下の特徴の1つ以上を含み得る;ヒンジスロットは、直線に沿って配置されてもよい;封止表面は、平面的な封止表面であってよい;弁フラップは、閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていても、又は傾いていなくてもよい;封止表面は弾性封止表面であってよい;マスク本体は、フィルターマスク本体であってよい;一方向弁は呼気弁であってよい;など。
【0025】
用語
本発明の説明に用いられる用語は、次の意味を有する。
【0026】
「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、互換的に使用される(したがって、例えば、隔壁(a diaphragm)を含む一方向弁は、1つ以上の隔壁を含み得る。
【0027】
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ若しくは全て又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0028】
「片持ち曲げ比」は、本明細書で説明される片持ち曲げ比試験に関連して定義されるような、撓み対片持ち長さの比を意味する。
【0029】
「清浄空気」とは、濾過されて汚染物質を除去したか、又は他の方法で呼吸しても安全にされた、ある体積の空気又は酸素を意味する。
【0030】
「閉鎖位置」は、弁フラップが封止表面に完全に接触している位置を意味する。
【0031】
「汚染物質」とは、一般的に粒子と考えられていなくてもよいが(例えば、有機蒸気など)、空気中に浮遊できる、粒子及び/又は他の物質を意味する。
【0032】
「呼気」は、濾過フェースマスク着用者が吐き出す空気である。
【0033】
「呼気流」とは、呼気中に呼気弁の開口部を通過する気流を意味する。
【0034】
「呼気弁」は、開いて流体がフェースマスクの内部気体空間から出ることを可能にする弁を意味する。
【0035】
「外部気体空間」は、吐き出された気体が呼気弁を通り、これを超えた後に入る周囲大気空間を意味する。
【0036】
「フェースマスク」とは、着用者の少なくとも鼻及び口を被覆し、空気を濾過することによって着用者に清浄な空気を提供するか、ないしは別の方法で清浄な空気を提供することができる装置(ハーフ及びフルフェースマスク及びフードを含む)を意味する。
【0037】
「弁フラップ」は、移動流体から及ぼされる力に応じて曲がる又は撓むことができる要素を意味しており、この移動流体とは、呼気弁の場合は呼気流れであり、吸気弁の場合は吸気流れである。
【0038】
「曲げ弾性率」は、曲げモードにて負荷された材料についての応力対ひずみの比を意味する。
【0039】
「吸気流れ」は、吸気中に吸気弁の開口部を通過する空気又は酸素の流れを意味する。
【0040】
「吸気弁」とは、開くと、流体が濾過フェースマスクの内部気体空間の中に入れるようにする弁を意味する。
【0041】
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0042】
「マスク本体」とは、人の少なくとも鼻及び口の上にフィットすることができ、外部気体空間から分離された内部気体空間を画定するのを助ける構造体を意味する。
【0043】
「弾性係数」は、試験試料に対して軸荷重を付加し、引張り試験機の使用により荷重及び変形を同時に測定することによって得られる応力/ひずみ曲線の直線部分についての、応力対ひずみの比を意味する。
【0044】
「単層」は、弁フラップに関連して使用されるとき、フラップ構造がその体積全体にわたって実質的に組成的に均一である、即ち、弁フラップに異なる物理特性を呈する2つ以上の層が含まれないことを意味する。
【0045】
「粒子」とは、空気中に浮遊可能ないずれかの液体及び/又は固体物質を意味し、例えば、病原体、細菌、ウィルス、粘液、唾液、血液などがある。
【0046】
「好ましい」及び「好ましくは」とは、一定の状況下において、一定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す(他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下において好ましい場合があり、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0047】
「弾性的」は、曲げ力に応じて変形されても回復が可能であること、及び約15メガパスカル(MPa)未満の引張り係数を有することを意味する。
【0048】
「剛性の」は、封止表面の説明に使用されるとき、0.02ギガパスカル(GPa)を超える硬度を有する封止表面を意味する。
【0049】
「封止表面」は、弁がその閉鎖位置にあるときに、可撓性フラップと接触する表面を意味する。
【0050】
「硬い又は硬度」は、他の構造物からの支持無しでそれだけで片持ちとして水平に支えられて重力に曝されるときに、撓みに抵抗するフラップの能力を意味する。より硬いフラップは、同じように硬くないフラップほど容易に重力に応じて撓まない。
【0051】
「一方向流体弁」は、流体が一方向に通過することを可能にするが、他方には通過不可能とする弁を意味し、また
「傾いていない」は、弁フラップに関連して使用されるとき、可撓性フラップの上にかかるいずれかの機械力又は内部応力により、フラップが封止表面に向かって又はこれに対して押されていないことを意味する。
【0052】
上記概要は、本発明の各実施形態又は全ての実装形態を記載するものではない。むしろ、本発明に対するより完全な理解は、添付図面と共に本発明の下記の「発明を実施するための形態」及び請求項を参照することにより明らかになり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明の代表的な実施形態は、以下に簡潔に記載される図面に関連して、更に記載される。
【図1】本発明に関連して使用され得る、1つの代表的なフェースマスク10の正面図。
【図2】本発明の1つの代表的な一方向性弁の拡大斜視図。
【図3】弁の基部を曝露するために、カバー及び隔壁を取り除かれた、図2の一方向弁の基部の拡大斜視図。
【図4】弁フラップが閉鎖位置にある、基部上の隔壁を曝露するためにカバーが取り除かれた、図2の一方向性弁の拡大斜視図。
【図5】弁フラップが開放位置にある、図4の図。
【図6】弁の下部からとった、図2の一方向弁のカバーの斜視図。
【図7】弁フラップが閉鎖位置にある、図2の線7−7に沿ってとった、図2〜6の一方向弁の一部の拡大断面図。
【図8】弁フラップが開放位置にある、図7の図。
【図9A】隔壁の、1つの別の弁フラップの平面図。
【図9B】弁フラップのヒンジに使用され得る、切り込み線の断面図。
【図10】異なる方向に向けられた、異なる形状の弁フラップを備える、別の隔壁の平面図。
【図11】傾いた弁フラップ、及び傾いた弁フラップが接するように位置する湾曲した封止表面の断面図。
【図12】基部が湾曲し、平面的な封止表面が異なる平面に位置する、別の実施形態の側断面図。
【図13】本発明に関連する用途のための、一方向弁の別の実施形態の一部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の本発明の例示的実施形態の詳細な説明において、説明文の一部をなすと共に本発明を実施することが可能な特定の実施形態を実例として示した添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態が利用されてもよく、並びに構造的変更が行われてもよいことは理解されるであろう。
【0055】
フェースマスク、及びこれらと関連して使用される一方向性弁は、本明細書において、空気の動きを制御するために動作するものとして記載され得るが、フェースマスク及び一方向性弁は、あるいは空気以外の気体で使用されてもよい。しかしながら、単純化のため、本明細書において説明される代表的な実施形態は、空気に関して記載される。
【0056】
図1は、本発明と共に使用され得る、ハーフフェースマスク10の一実施例を例示する。フェースマスク10は、一方向弁20がその上に取り付けられる、カップ形状のマスク本体12を有する。弁は、例えば、米国特許第6,125,849号(Williamsら)、又はPCT国際公開特許WO 01/28634号(Curranら)に記載される技術を含む、任意の好適な技術を使用して、マスク本体12に取り付けられ得る。
【0057】
本発明の一方向弁は、着用者の鼻及び口を覆ってフィットさせたとき、フェースマスク10によって画定される内部気体空間へと入り、出る流れを制御するための能力を提供する。代表的な一方向弁は、本明細書において、主要呼気弁として記載され得るが、同じ構造がまた吸気弁としても機能し得ることが理解されるべきである。呼気弁として使用される場合、弁20は、好ましくはマスク10の内側(内部気体空間内)の圧力の増加に反応して開き、この圧力の増加は着用者が息を吐くときに生じる。呼気弁20は、好ましくは、呼気と吸気の間及び吸気中には閉じたままである。吸気弁として使用される場合、弁20は、好ましくは、着用者が息を吸う(内部気体空間内に低圧力の状態を作る)ときに開く。吸気弁の場合、弁20は次に、好ましくは呼吸の合間、及び息を吐いている間に閉じる。
【0058】
マスク10上の弁20の一実施形態が、図2〜4でより詳細に示されるが、図2は、マスク10から取り除かれた一方向弁20の拡大斜視図であり、これは、基部30、静止隔壁40、及び基部30に取り付けられたカバー50を含む。図3は、弁20の基部30を曝露するために、隔壁40及びカバー50が取り除かれた、一方向弁20の基部30の拡大斜視図である。図4は、隔壁40及び、弁20の基部30とカバー50との間に位置する、隔壁40の関連する弁フラップ42を曝露するために、カバー50が取り除かれた、一方向弁20の拡大斜視図である。基部30及びカバー50は、好ましくは、単一片の一体型本体へと成形され得る、比較的軽量のプラスチックから製造され得る。
【0059】
弁20の基部30は、表面38に3つの開口部32を含み、これを介して空気が、マスク10によって画定される内部気体空間と、外部気体空間との間を通過する。表面38は、好ましくはリップ39によって囲まれ、それによって表面38及びリップ39が、中に隔壁(以下参照)が配置される陥没部を形成してもよい。3つの開口部32は、好ましくは互いに別個であり、区別可能であるが、基部30自体は、マスク本体12に提供される、単一で一体の開口部(図示されない)を覆うように位置してもよい。あるいは、マスク本体12は、基部30内に形成される開口部32に対応する別個の、区別可能な開口部を含んでもよい。図3の実施形態には表されていないが、開口部32は、開口部の形状を安定化させること、弁フラップが開口部を通過するのを防ぐことなどのために、任意により1つ以上の横断部材を含んでもよい。
【0060】
表される弁20は、3つの弁フラップ42、及び関連する開口部32を含むが、内部に形成される複数の弁フラップを含む、本発明の一方向弁の隔壁は、2つのみの弁フラップ、又は4つ以上の弁フラップを含んでもよいこと、及び弁20に関連して表される3つの弁フラップ42は、1つの代表的な実施形態に過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、本発明の弁は、2つ以上の別個の隔壁を含んでもよい。
【0061】
各開口部32は、好ましくは開口部32の外辺部を囲む、別個の、区別可能な封止表面34によって囲まれる。封止表面34は、本明細書において記載されるように、弁フラップがそれに対して封止する、表面を提供する。基部30はまた、好ましくは封止表面34を囲む陥没部36を含んでもよく、陥没部36は、基部30の周囲表面38の高さよりも低く位置する。
【0062】
各開口部32及びその封止表面34は、図3に見られるように前から見た際に、本質的に任意の形状をとることができる。例えば、封止表面34及び開口部32は、正方形、矩形、円形、楕円形などであってよい。封止表面34の形状は、開口部32の形状に対応する必要はなく、逆もまた同様である。例えば、開口部32は正方形であってもよく、封止表面34は円形であってもよい。封止表面34及び開口部32は、しかしながら、好ましくは、流体の流れの方向に対向して見た際に、ほぼ矩形の横断面を有し得る。
【0063】
図4及び図5に表される静止隔壁40は、内部に形成される一連の、別個の、区別可能な弁フラップ42を含み、弁フラップ42の1つが、基部30の各開口部32を覆うように位置する。各弁フラップ42は、隔壁40の厚さにわたって形成される自由縁部44を含む。表される実施形態では、自由縁部44は、隔壁40にわたって形成される、境界スロット45によって画定される。各弁フラップ42はまた、自由縁部44の反対側に位置するヒンジ46を含む。ヒンジ46は、弁フラップ42が隔壁40の残部に取り付けられる、隔壁40の領域に位置するものとして特徴付けられてよい。
【0064】
図4に表されるように、いくつかの実施形態では、隔壁40は、内部に形成される弁フラップ42よりも大きくてよい。特に、弁フラップ42は、隔壁40の対向する縁部43と反対側に位置する自由縁部44を含んでもよい。加えて、境界スロット45(これは、表される実施形態では、弁フラップ42の自由縁部44、及び隔壁40の対向する縁部43を画定する)は、任意の好適な幅を有し得ることに留意すべきである。例えば、いくつかの実施形態では、境界スロット45は実質的に幅を有さなくてもよく、他の実施形態では、この境界スロット45は図4に表されるものよりも、かなり大きな幅を有するように形成されてよい。
【0065】
図4の図では、各弁フラップ42は、閉鎖位置で表され、ここで弁フラップ42は、その対応する開口部32の外辺部の周囲の封止表面34と接触する。そのため、弁フラップ42(自由縁部44及びヒンジ46によって画定される)は、好ましくは、各開口部32の外辺部の周囲に延びる封止表面34よりも大きい。弁フラップ42は、図5では、開放位置で表される。開放位置では、各弁フラップ42(自由縁部44を含む)の少なくとも一部が、封止表面34から上がっており、それによって、空気が、開口部32及び、弁フラップ42と封止表面34との間に位置する隙間を介して、内部気体空間から外部気体空間まで通過することができる。弁フラップ42が開放位置にあるときに、弁フラップ42の少なくとも一部が、ヒンジ46の一方の側において、基部30と接触したままであることが好ましい場合がある。
【0066】
弁フラップ42を特徴付ける別の方法において、これらは、静止部分及び可動部分を有するものとして記載されてもよく、弁フラップ42の静止部分は、使用中に固定又は静止したまま(基部30に対し)であり、可動部分が動いて空気が弁を通過することを可能にする。いくつかの実施形態では、ヒンジ46は、少なくともほぼ、弁フラップ42の静止部分を弁フラップ42の可動部分から分離する位置に位置付けられてよい。
【0067】
弁フラップ42と接触する封止表面34は、好ましくは実質的に均一に平滑であるように作られて、封止表面34と弁フラップ42との間に良好な封止が生じることを確実にする。封止表面34は、好ましくは、封止表面34を囲む基部表面38の残部と平面的に位置合わせ(即ち、同一平面に位置する)されてもよい。封止表面34は、好ましくは、弁フラップ42との封止を形成するために十分に大きな幅を有するが、接着力(例えば、凝縮水分又は排出された唾液によって生じる)が弁フラップ42が開くことを著しくより困難にするほど大きな幅ではない。いくつかの潜在的に好適な封止表面の構造は、米国特許第5,509,436号、及び同第5,325,892号(Japuntichら)に記載され得る。
【0068】
弁フラップ42を特徴付ける1つの方法において、境界スロット45(及び弁フラップ42の対応する自由縁部44)は、第1端部及び第2端部を有するものとして記載されることがあり、ヒンジ46が境界スロット45(及び対応する自由縁部44)の第1端部と第2端部との間に位置する。境界スロット45(及び対応する弁フラップ自由縁部44)はまた、隔壁40の主要表面にわたり、2つの寸法で延びるものとして記載されてもよい。結果として、境界スロット45(及び対応する弁フラップ自由縁部44)は、ヒンジ46と共に、弁フラップ42の形状を画定する。
【0069】
特に必要ではないが、ヒンジ46は、弁フラップ42の後部にわたって延びるヒンジスロット47を含んでもよい。ヒンジスロット47は、好ましくは、隔壁40の厚さにわたって形成され、好ましくは、弁フラップ42の幅にわたって延び得るが、ただし、弁フラップ42と結合したままであり、弁フラップ42の隔壁40との結合を維持する、ランド部分48を除く。ヒンジスロット47の、ランド部分48に対する長さの比率は、弁フラップ42を開くために必要とされる力を増加又は低減させるように調節することができる。
【0070】
任意の好適な技術又は技術の組み合わせにより、隔壁40は、基部30上の静止位置に維持されて、弁フラップ42が開口部32を覆って位置してもよい。表される実施形態では、隔壁40は、カバー50及び基部30によって、適所に保持される。特に、基部30が、基部表面38及び基部表面38を囲むリップ39を含み、それによって、隔壁40が表面38及びリップ39によって画定される陥没部の内部に位置することが好ましい場合がある。あるいは(又は加えて)、隔壁40は、溶接する、接着剤で取り付ける、支柱に取り付ける、クランピングするなどしてもよい。
【0071】
隔壁及び弁フラップのための潜在的に好適な材料の一例は、3790MPaの弾性率を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの36マイクロメートル厚さのシートであり、ここに境界スロット45及びヒンジスロット47がレーザーを使用して形成される。境界スロット45及びヒンジスロット47は、例えば、約0.1〜約0.3ミリメートルの幅を有してもよい。形成されると、ランド部分48は、好ましくは境界スロット45の端部間の距離のおよそ17%を占め、ヒンジスロット47はヒンジ46の幅の残部を占める。
【0072】
図6は、カバー50の下面の斜視図であり、ここで下面とは、カバーが図2に表される基部と組み合わせられたときに、基部に面する面である。カバー50は、好ましくは、カバー50の主要通気孔55から基部30に向かって下方に延びるルーバー52を含み、隔壁40はその間に位置する。カバー50はまた、カバー50の2つの対向する側部に沿って延びる、任意の側部通気孔56を含み、側部通気孔56は、空気が弁20から逃れるための追加的な流路を提供する。
【0073】
カバー50は、任意の好適な技術又は技術の組み合わせによって、基部30に取り付けられてもよい(図2参照)。カバー50は、溶接接続、接着剤、機械的結合接続(例えば、タブ、スロット、支柱など)、摩擦嵌め接続などを使用して、基部30に取り付けられてよい。図6に表されるカバー50は、基部30とは別個の物品であるが、カバー50は、別の方法として、例えば、リビングヒンジ又は他の構造によって、基部30に取り付けられて提供される場合がある。このような構成では、基部30及びカバー50がクラムシェル構造を形成し、カバー50を基部30へと組み合わせて弁20を形成する前に、その中に隔壁40を位置付けることが好ましい場合がある。
【0074】
ここで弁フラップの追加的な特徴及び動作が、図7及び図8に表される弁20の一部の拡大断面図に関連して記載される。図7に表される弁フラップ42は閉鎖位置にあり、ここで弁フラップ42の表面41は、封止表面34と接触している。隔壁40の残部は、基部30の周囲表面38に接触するように位置している。図8に表される際、弁フラップ42は開放位置にあり、ここで弁フラップ42の表面41の一部が、封止表面34から浮かび上がっており、それによって空気が開口部32を通過することができる(ほぼ、図8の矢印21の方向で)。
【0075】
図7及び図8に見られるように、好ましくはルーバー52が使用されて、それらの縁部53に沿って隔壁上に作用することにより、隔壁40を本明細書において記載される基部30上の適所に維持してもよい。ルーバー52は、ルーバー52の縁部53が、隔壁40の厚さと実質的に等しい距離で基部表面38から離間するようにして作製されることが好ましい場合がある。ルーバー52の縁部53と、基部表面38との間の隙間は、隔壁40が縁部53と基部表面38との間で著しく圧迫されて、これが変形し得ることがないようなものであることが好ましい場合がある。このような変形は、封止表面における弁フラップの適切な配置を阻害することがある。
【0076】
図7に表されるように、弁フラップ42の自由縁部44が、境界スロット45によって画定される。好ましくは境界スロット45は隙間を提供するスロット幅を有し、それによって弁フラップ42の自由縁部44が、隔壁40の対向する縁部43から離間する。好ましくは境界スロット45のスロット幅は、弁フラップ42が開放位置と閉鎖位置との間で動くときに(図7及び図8に見られる)、弁フラップ42の自由縁部44が隔壁40の対向する縁部43と接触しないように、十分な大きさであり得る。
【0077】
境界スロット45は好ましくは、自由縁部44と対向する縁部43との間の干渉を制限するためにスロット幅を有するので、弁フラップ42は、この隙間を提供することのできる、任意の技術によって隔壁40に形成されることが好ましい場合がある。いくつかの潜在的に好適な技術の例としては、フラップを成形又は鋳造して隔壁を形成させることを含む。他の方法として、フラップは、例えば、レーザースリッティング、打抜き、水ジェット切断、放電加工などの技術を使用して、隔壁に形成されてもよい。
【0078】
図7はまた、ヒンジスロット47と隔壁40との間の関係を表す。好ましくはヒンジスロット47もまた隙間を提供するスロット幅を有し、それによって弁フラップ42のヒンジ縁部48が、隔壁40の対向する縁部49から離間する。好ましくはヒンジスロット45のスロット幅は、弁フラップ42が開放位置と閉鎖位置との間で動くときに、弁フラップ42のヒンジ縁部48が隔壁40の対向する縁部49と接触しないように、十分な大きさであり得る。ヒンジスロット47は、境界スロット45に使用される任意の好適な技術によって提供され得る(例えば、成形、鋳造、レーザースリッティング、打抜き、水ジェット切断、放電加工など)。
【0079】
本発明の一方向弁は、例えば、許容可能な圧力低下、空気流量など、様々な要因によって、任意の好適な形状又は大きさをとってよい。図1〜8に表される、ほぼ矩形の弁のいくつかの代表的な寸法は以下の通りであり得る。カバー50及び基部30は、マスク本体12において、約10ミリメートル〜100mmの幅を有する領域を占めてもよい。マスク本体12の弁が占める領域の長さは、約10mm〜約100mmであってよい。カバーの開口部55もまた、任意の許容可能な形状又は大きさをとってよく、例えば、開口部55は、約5mm〜約90mmの幅、及び約1mm〜約20mmの長さを有する矩形であってよい。基部30の開口部32もまた、約4mm〜約80mmの幅、及び約1mm〜約30mmの長さに及ぶ寸法を有する、ほぼ矩形であってよい。本明細書において記載される、開口部を覆うために使用される弁フラップは、これらが覆う開口部よりも僅かに大きく、それによって開口部の適切な密閉を得ることができる。
【0080】
図2〜8の弁に表されるヒンジ46は、本発明に関連して使用され得るヒンジの1つの代表的な実施形態に過ぎない。隔壁を作製するために使用される材料の物理的特性によって、弁フラップの自由縁部を画定する境界スロットの端部の間に、ヒンジを画定する構造を追加することなく、自然にヒンジが形成され得る。例えば、隔壁がより柔軟な材料(例えば、エラストマーポリマーなど)で作製される場合、弁フラップが、十分に低いクラッキング圧力で、閉鎖位置から開放位置に動くために、追加のヒンジ構造が必要とされないことがある。換言すれば、いくつかの材料においては、弁フラップの形状を画定する自由縁部/境界スロットの端部の間に延びる線に沿って、弁フラップヒンジが形成され得る。
【0081】
他の(典型的にはより硬い)材料では、隔壁に一定の構造を提供して、弁フラップを閉鎖位置から開放位置に動かすために必要とされる力を低減するように作用し得るヒンジを画定することが有利であり得る。一定の潜在的に好適なヒンジ構造の1つの例が図4〜7に表されているが、他の構造もまた使用され得る。1つの可能な別の方法が、図9Aに表され、ここで弁フラップ142aは、一対のヒンジスロット147aを含み、これは、境界スロット145aと共に、弁フラップ142aを周囲の隔壁140aと接続する3つのランド部分148aを画定する。
【0082】
更に別の代替的なヒンジ構造が、ヒンジを横断してとった断面図である、図9Bに表される。図9Bに表されるヒンジ構造は、隔壁140b中に形成される切り込み線147bの形態である。切り込み線147bは、隔壁140bの厚さを低減するが、隔壁140bに完全にわたって延びない。このような切り込み線は、弁フラップを形成するために使用される自由縁部/境界スロットの端部の間の距離全体にわたって延びても、延びなくてもよい。換言すれば、切り込み線の長さ、深さ、及び/又は幅は、関連する弁フラップの、所望の開放特徴を提供するために、調節されてもよい。加えて、必要に応じて1つ以上の切り込み線を使用してもよく、及び/又はランド部分に1つ以上の切り込み線を使用して、弁フラップの開放する力を調節してもよい。
【0083】
図7及び図8の断面図に戻ると、カバー50に関連する様々な特徴がまた、ここに表されている。例えば、図7及び図8は、ルーバー52の縁部53が、隔壁40に対して作用し、好ましくは、隔壁40の、基部30の表面38との接触を維持することを補助する構成を表す。いくつかの実施形態では、ルーバー52は、基部30の表面38と共に、隔壁40に圧迫力を提供してもよい。他の実施形態では、しかしながら、ルーバー52は、このような圧迫力を実際に提供しなくてもよく、単に隔壁40が、基部30の表面38から顕著に上がらないように維持してもよい。加えて、ルーバー52の縁部53は、ルーバー52が、弁フラップ42が開くときにその動きを阻害しないように、ヒンジスロット47の外側の隔壁40上に作用することが望ましい。
【0084】
本発明の弁に使用されるカバーは、開口部32を通過する空気のための、カバー50を通じた区別可能な流路を画定する、通気孔構造を含むことがまた望ましい場合もある。図7及び図8に表される実施形態では、例えば、区別可能な流路がルーバー52によって画定され、これが各開口部32を通る流れを、いずれかの隣接する開口部を通過する流れ(図7及び8には示されない)から、効果的に隔離する。開口部32を通る流れは、ルーバー52及び上面54によって、主要通気孔55、又は任意により側部開口部56を通過するように推進される。
【0085】
図7及び図8に見られるように、カバー50の上面54は、好ましくは、主要通気孔55の大きさが制限されるように、弁フラップ42の大部分を覆って延びてもよい。開放位置にあるとき、主要通気孔55と弁フラップ42との間の関係は、開口部32を通じて上流に(空気流に逆らって)移動する粒子を阻止するように、有利に作用し得る。このような粒子は、ルーバー52、カバー50の上面54、及び/又は弁フラップ42の上面若しくは自由縁部に衝突することによって、効果的に阻止され得る。
【0086】
図2〜8に表される弁20の弁フラップ42は同じ方向に向けられ(例えば、図4参照)、それにより、弁フラップヒンジは互いにほぼ平行であるが、このような構成は必須ではない。弁フラップを同じ方向に向けることの1つの潜在的な利点は、開いているときに、弁フラップ開口部が全て同じ方向に向き、それによって開いた弁フラップを通過する空気がほぼ同じ方向で、例えば、着用者の目から離れるように通る。
【0087】
図10は、1つの代替的な構成を表し、異なる形状の弁フラップ、及び異なる方向に向いた弁フラップが使用されてよい。図10に表される隔壁240は、3つの弁フラップ242a、242b、242cを含む。弁フラップ242aは、ほぼ三角形の形状であり、ヒンジ境界スロット245a、及びヒンジ246aによって画定される。表されるヒンジ246aは、隔壁240に形成されるスロットの形態であるが、他の任意のヒンジ構造がスロットの代わりに使用されてよい(又はいくつかの実施形態では、特定のヒンジ構造が全く使用されない)。弁フラップ242aに対するヒンジ246aの構成を考慮すると、弁フラップ242aを通過する空気の大部分が、ほぼ矢印221aの方向に通過し得る。
【0088】
弁フラップ242b及び242cは、弁フラップ242aの三角形の形状とは異なる、ほぼ矩形の形状を有する。加えて、弁フラップ242b及び242cがこれに沿って隔壁240に結合するヒンジ246b及び246cは、互いに、又は弁フラップ242aのヒンジ246aとほぼ平行ではない。弁フラップ242b及び242cの自由縁部はそれぞれ、境界スロット245b及び245cによって画定される。そのため、弁フラップ242b及び242cが、開放位置へと動いた場合、弁フラップ242b及び242cを通過する空気の大部分は、それぞれ、ほぼ矢印221b及び221cの方向に通過し得る。
【0089】
図10は、本発明と関連して使用され得る弁フラップの、1つの代表的な別の集合を表しているが、他の多くの変形形態もまた可能であり、本発明は、本明細書において表されるこれらの特定の代表的な構成に限定されるべきではない。また、弁は隔壁を含むものとして記載され得るが、弁は2つ以上の隔壁を備えてもよく、その少なくとも1つが、本明細書に記載される弁フラップを2つ以上含むことが理解されるべきである。
【0090】
本発明の隔壁に形成される弁フラップは、弁の基部の開口部を囲む封止表面に対して傾いていても、いなくてもよい。図2〜8に関連して記載される弁20では、基部30の開口部32を囲む封止表面34は、平面的な形状を有するものとして記載され得る。換言すれば、閉鎖位置にあるときに、弁フラップ42がこれに接して位置する封止表面34の表面は、平面に位置する(弁フラップ42の対応する表面41もまた、典型的には平面に位置する)。平面的な封止表面を有する弁が、許容可能な封止を提供するためには、弁フラップ及び封止表面の一方又は両方が、本明細書において記載される弾性の材料を含むことが好ましい場合がある。
【0091】
封止表面に対して傾いている弁フラップの潜在的な利点の例及び説明は、米国特許第5,509,436号、及び同第5,325,892号(Japuntichら)に見出され得る。一般的に、封止表面に対して傾いている弁フラップは、封止表面の形状にぴったりと一致することのできる、より柔軟な材料から作製される弁フラップ(及び隔壁)と、より一般的に関連付けられる。図11に表される、非平面的な封止表面334の一実施例は、弁フラップ342を封止表面334の形状に対応する非平面的な(例えば湾曲した)構成にさせることにより、隔壁340に形成される弁フラップ342が傾いて封止表面334と接触するときに、有利に使用され得る。矢印321の方向の、開口部332を通る空気流に反応して、弁フラップ342は、好ましくは、矢印321の方向で、封止表面334から遠ざかって移動する。このような空気流がないときは、弁フラップ342は、好ましくは図11に見られる位置に戻り、ここでフラップ342封止表面334に対して封止する。
【0092】
本発明の一方向弁における別の可能な変形形態は、図12の断面図に表され、ここで複数の平面的な封止表面434が、平面的な封止表面434が同一平面に位置しないように、基部430上に配置される。これは、例えば、図3に表される基部30の平面的な封止表面34(これら全てが同一平面に位置する)とは対照的である。同一平面に位置しない、平面的な封止表面を提供することの、1つの潜在的な利点は、平面的な封止表面を有する基部430が湾曲を有することができ、これによって、基部430(及びこれと共に形成される対応する弁)が一方向弁が使用され得るフェースマスクの形状により緊密に一致することが可能となり得ることである。この、より適合する形状は、フェースマスクの一方向弁の断面を更に低減させることを助ける場合がある。
【0093】
本発明に関連して使用され得る、一方向弁の更に他の実施形態は、図13に関して記載することができ、これは、2つの別個の弁フラップ542a及び542bがその上に位置付けられる基部530を表す斜視図である。弁フラップ542a及び542bはそれぞれ、周囲の封止表面534(図13に破線で表される)を含む、基部530の開口部532を覆うようにして位置し、本明細書において説明されるように開口部を封止する。図13に表される一方向弁と、上記の弁との構成における違いは、弁フラップ542a及び542bそれぞれが、互いに別個であり、区別可能であることである。換言すれば、弁フラップ542aと542b両方を接続する、共通の隔壁が存在する。
【0094】
図13には表されていないが、多数の弁フラップを含む一方向弁はまた、基部に取り付けられるカバーを含んでもよい(上記の実施形態に関連して表され、記載されたように)。弁フラップは、好ましくはカバーと基部との間に位置し得る。任意のこのようなカバーは、好ましくは、2つ以上の開口部の各開口部に通気孔構造を含んでもよく、各通気孔構造は、上記の2つ以上の開口部の各開口部を通過する気体のために、カバーを通じた区別可能な流路を画定する。加えて、弁の各弁フラップのために、通気孔構造は弁フラップを基部の近位に維持するように位置付けられた縁部を含む、ルーバーを含んでもよい。更に、各通気孔構造は、開口部の反対側に位置する主要通気孔、及び開口部の一方の側に位置する側部通気孔を含み得る。
【0095】
弁フラップ542a及び542bはそれぞれ、弁フラップの静止部分を、弁フラップの可動部分から分離するヒンジ546を含む。弁フラップ542a及び542bの静止部分は、好ましくは封止表面の境界の外側に位置し、一方で弁フラップ542a及び542bの可動部分は、好ましくは、弁の使用中に、封止表面534を覆うように位置付けられて開口部532を閉じる、又は封止する部分である。
【0096】
表されるように、各ヒンジ546は、弁フラップにわたって形成される1つ以上のスロット、及びそれによって弁フラップの可動部分が弁フラップの静止部分に接続される1つ以上のランド部分の形態の、任意の構造を含む。表されるように、1つ以上のヒンジスロットが、弁フラップが閉鎖位置にあるときに、開口部を囲む封止表面の境界の外側に位置することが好ましい場合がある。
【0097】
図13に表される別の特徴は、弁フラップ542a及び542bが同じ方向に向けられ、それによって弁フラップヒンジ546は互いにほぼ平行であり(ここで、ほぼ平行とは、絶対的な平行を必要とするものではない)、ここで弁フラップの少なくとも一方の自由縁部が、別の弁フラップのヒンジの近傍に位置する(これは、図13に表される実施形態では、弁フラップ542aの自由縁部544aが他方の弁フラップ542bのヒンジ546の近傍に位置することを意味する)。弁フラップを同じ方向に向けることの1つの潜在的な利点は、開いているときに、弁フラップ開口部が全て同じ方向に向き、それによって開いた弁フラップを通過する空気がほぼ同じ方向で、例えば、着用者の目から離れるように通る。
【0098】
また、図13に表される弁構造は、2つの弁フラップを含むが、本発明の一方向弁は、いくつかの実施形態では、1つの弁フラップのみを含んでもよい。
【0099】
以下の説明は、本発明のフェースマスクに、任意により含まれ得る材料及び他の特徴を扱う。
【0100】
封止表面の考察
様々な要因により、本発明に関連して使用される封止表面は、一方向弁の全体的な設計によって、剛性又は弾性であってよい。
【0101】
剛性封止表面のいくつかの例、これに好適な材料、及びいくつかの潜在的に好適なフラップの考察が、米国特許出願公開第US2007/0144524(A1)号(Martin)に記載され得る。
【0102】
しかしながら、簡潔に言って、本発明の一方向弁の剛性封止表面を形成するために使用される材料は、好ましくは0.02GPa超の硬度を有し得る。硬質封止表面は、0.05GPa以上の硬度を呈する材料で構成されるのが好ましいことがある。硬度は、本明細書で説明される「ナノくぼみ技術」にしたがって決定されてもよい。
【0103】
剛性封止表面は、基部の一体部分として形成され得る。あるいは、本明細書で説明される硬度の要件を満たす剛性封止表面は、接着、結合、溶接、摩擦係合、2回射出成形など、そのようにするのに本質的に好適な任意の技術を使用して、基部に取り付けることができる。封止表面は、例えば、コーティング、フィルム、リングなどの形態であり得る。
【0104】
基部及び剛性封止表面は、例えば射出成形技術を使用して一体型の単一片の本体に成形される、比較的軽量のプラスチックから一体ユニットとして形成されて、剛性封止表面がこれに接合されることが好ましい場合がある。封止表面の接触領域は、好ましくは、弁フラップと封止を形成するために十分に大きい幅を有するが、接着力(例えば、凝縮水分又は排出された唾液によって生じる)が弁フラップが開くことを著しくより困難にするほど大きな幅ではない。剛性封止表面、又は接触表面の幅は、いくつかの実施形態では、少なくとも約0.2mm、及び場合により約0.25mm〜約0.5mmである。
【0105】
剛性封止表面が作製され得る潜在的に好適ないくつかの材料の例には、セラミックス、ダイヤモンド、ガラス、ジルコニアのような結晶性の高い材料と、ホウ素、黄銅、マグネシウム合金、ニッケル合金、ステンレス鋼、鋼、チタン、及びタングステンのような材料からの金属/箔とが挙げられる。好適な可能性があるポリマー材料には、コポリエステルエーテル、エチレンメチルアクリレートポリマー、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンスチレンポリマー、高密度ポリエチレン、高衝撃ポリスチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリカーボネート、液晶ポリマー、低密度ポリエチレン、メラミン類、ナイロン、ポリアクリレート、ポリアミド−イミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、及びポリフッ化ビニリデンのような熱可塑性樹脂が挙げられる。アシ、紙、並びにブナノキ、シーダー、カエデ、及びトウヒのような木材などの、天然に由来するセルロース材料も有用なことがある。これらの材料のブレンド、混合物、及び組み合わせも使用されてもよい。封止表面のための、いくつかの潜在的に好適な市販の材料の例としては、米国特許出願公開第US2007/0144524号(Martin)の表1に記載される材料を挙げることができる。
【0106】
剛性封止表面を有する一方向弁の1つの代替として、本発明の一方向弁は、いくつかの実施形態では、弾性封止表面を含み得る。弾性封止表面を有する一方向弁、及び弾性封止表面と共に有利に使用され得るフラップは、例えば、米国特許第7,188,622号(Martinら)に記載され得る。
【0107】
本発明のフェースマスクの一方向弁と共に使用される弾性封止表面は、好ましくは、使用中に変形した場合に回復し、約0.02GPa未満の硬度を有し得る。好ましくは、弾性封止表面は、約0.015GPa未満の硬度、より好ましくは約0.013GPa未満の硬度、更により好ましくは約0.01GPa未満の硬度を有し得る。いくつかの実施形態では、弾性封止表面は、約0.006GPa〜約0.001GPaの硬度を有し得る。硬度は更に、0.001GPa未満であり得るが、ただし、表面は変形した際に回復する。硬度は、以下で説明される「ナノくぼみ技術」にしたがって決定されてもよい。
【0108】
弾性封止表面は、接着、結合、溶接、摩擦係合など、そのようにするのに好適な本質的に任意の技術を使用して、弁の基部に固定されてもよい。あるいは、封止表面は、基部の「一体」部分として作製されてもよく、即ち、基部及び弾性封止表面は、後から互いに接合された2つの別個の部分としてではなく、単一のユニットとして作製され得る(例えば、2回射出成形が異なる材料から基部及び弾性封止表面を作製するための有用な方法を提供し得る)。封止表面は、例えば、コーティング、フィルム、Oリングなどのリング、又は、多孔質、独立気泡発泡体などの発泡体の形態であり得る。しかしながら、弁基部の大部分が、例えば射出成形技術を使用して一体型の単一片の本体に成形される、比較的軽量のプラスチックから作製されて、剛性封止表面がこの基部に接合されることが好ましい場合がある。
【0109】
弾性封止表面が作製され得る材料の例としては、弁フラップと封止表面との間の良好な封止を促進するようなものが挙げられる。これらの材料としては、一般的に、エラストマー、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方、及び熱可塑性樹脂/プラストマーが挙げられる。
【0110】
エラストマーは、熱可塑性エラストマー又は架橋ゴムのいずれかであってもよく、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ポリアクリレートエラストマー、エチレン−アクリルゴム、加硫性フッ素含有エラストマー類、シリコーンゴム、ポリウレタン、エピクロロヒドリンゴム、プロピレンオキシドゴム、ポリスルフィドゴム、ポリホスファゼンゴム、及びラテックスゴムなどのゴム材料、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、超低密度ポリエチレンエラストマー、コポリエステルエーテルエラストマー、エチレンメチルアクリレートエラストマーエチレンビニルアセテートエラストマー(ethylene methyl acrylate elastomer ethylene vinyl acetate elastomer)、及びポリαオレフィンエラストマー類が挙げられてもよい。これらの材料のブレンド又は混合物も使用されてもよい。場合によって弾性封止表面に使用され得る、いくつかの市販のポリマー材料の例としては、米国特許第7,028,689号(Martinら)の表1に記載される材料が挙げられる。
【0111】
隔壁/弁フラップの考察
本発明の一方向弁で使用される隔壁(及びこれらに形成される弁フラップ)は、多様な材料を使用して、多様な形態で製造され得る。詳細にかかわらず、本発明の一方向弁で使用される隔壁に形成される弁フラップは、好ましくは、一方向の圧力に反応して開き、この圧力が選択される水準を下回ったときに、閉鎖位置に容易に戻るように、動的に曲がるか、又は変形する。
【0112】
弁フラップは、好ましくは、気圧に反応して開かない限り、弁フラップが弁の向きにかかわらず閉鎖位置に留まるように作製される。弁フラップが封止表面より下にあり、その結果、封止表面からフラップを引き離すように重力がフラップに働く場合であっても、弁フラップは、好ましくは封止表面から引き離されない。例えば、弁フラップは好ましくは、着用者がその頭部を床に向かって下方に向けたときなどに、閉鎖位置に留まることができる(弁が呼気弁であって着用者が息を吐き出していない限り)。
【0113】
物理的形状という点において、隔壁及び弁フラップは、2つの表裏をなす主表面と、主表面の間で測定した際の比較的薄い厚さを有する、シート材料から作製されることが好ましい場合がある。これらのシート材料は、押出成形、電気メッキ、射出成形、鋳造、溶媒コーティング、蒸着など、任意の好適な技術で製造することができる。弁フラップは、典型的にはこのような隔壁シート材料から、例えば、レーザースリッティング、水ジェット切断、放電加工、打抜き、などの様々な技術によって形成され得る。
【0114】
隔壁及び弁フラップは、別の方法として、シートに形成されない物品として提供されてもよい。弁フラップは、このような隔壁に、隔壁自体が製造されるときに形成され得るか、又は弁フラップは、隔壁が製造された後に形成され得る(シートベースの隔壁と同様に)シート材料から形成されない隔壁及び弁フラップは、例えば、電気メッキ、射出成形、鋳造、溶媒コーティング、蒸着、鍛造など、任意の好適な技術によって製造され得る。
【0115】
物理的形状と同様に、隔壁はまた、広範な種類の物理的特性を呈する材料から製造され得る。本明細書において説明されるように、弁フラップは、封止表面に対して傾いていてもよく、封止表面に対して傾いていなくてもよい。
【0116】
弁が傾いた弁フラップを含む場合、隔壁材料は、好ましくはより柔軟であるか、又はより弾性であってよい。傾いた弁フラップのために好適であり得る材料及び構成の例は、例えば、米国特許第5,509,436号、及び同第5,325,892号(Japuntichら)、加えて、米国特許第7,028,689号(Martinら)に記載され得る。
【0117】
弁フラップが、封止表面に対して傾いていない場合、弁フラップは、傾いた弁フラップに関連して使用されるものよりも、硬いことが好ましい場合がある。傾いていない弁フラップのより高い硬度は、好ましくは、封止表面へのいかなる顕著な予備圧力、又は偏倚がないときに、封止表面と許容可能な封止を達成するために十分なものである。中立状態で弁が密閉している間にフラップが封止表面に対して押されていることを確実にするための、フラップへの顕著な所定の圧力又は力がないことは、フラップがより容易に開くことを潜在的に可能にする場合があり、したがって呼吸時に弁を動作させるために必要とされる力を低減することができる。
【0118】
更に、隔壁/弁フラップのための材料は、剛性である一方で、好ましくは、弁フラップの作動範囲にわたって弾性的に変形する。隔壁及び弁フラップは、単層構成であってもよく、又はこれらは2つ以上の層が組み合わされる多層構成であり、得られる複合構造体に望ましい物理的特性を提供してもよい。傾いていない弁フラップを提供するために使用され得る、潜在的に好適な材料及び弁フラップ構成は、例えば、米国特許第7,188,622号(Martinら)、米国特許第7,013,895号(Martinら)、及び米国特許出願公開第US2007/0144524号(Martin)に記載され得る。
【0119】
本発明の隔壁及び弁フラップに関連する硬度を特徴付ける1つの方法において、硬度は、隔壁及び弁フラップに使用される材料の弾性率の関数として記載されてもよい。「弾性率」は、応力/ひずみ曲線の直線部分についての応力対ひずみの比であり、この曲線は、試験試料に軸荷重を付加して荷重及び変形を同時に測定することによって得られる。通常は、試験試料には単一軸に荷重がかけられ、荷重及びひずみは、漸増的又は連続的のいずれかで測定される。本発明で使用される材料についての弾性率は、標準化されたASTM試験法を用いて得られてもよい。弾性又はヤング率を決定するために用いられるASTM試験法は、標準状態で分析されるべき材料の種類又は分類によって規定されている。構造材料に対する一般的な試験法は、ASTM E111−97によりカバーされており、並びに荷重をかけた直後に作り出されるひずみ及び弾性挙動と比較して、クリープを無視できる構造材料に対して使用されてもよい。プラスチックの引張り特性を決定するための標準試験方法が、ASTM D638−01に記載されており、並びに非強化及び強化プラスチックを評価するときに使用されてもよい。加硫された熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマーが本発明での使用のために選択される場合には、これらの材料の引張り特性を評価するのに用いられる手順をカバーする、標準試験方法ASTM D412−98aが使用されてもよい。
【0120】
曲げ弾性率は、可撓性フラップの層に使用される材料を定義するのに用いられてもよい別の特性である。プラスチックの場合、曲げ弾性率は、標準試験法ASTM D747−99にしたがって決定されてもよい。
【0121】
弾性率値(Modulus values)は、固有の材料特性を伝えるものであって、正確に比較可能な組成特性を伝えるものではない。これは、異なる部類の材料がフラップに使用されるときに、特に当てはまる。異なる部類の材料がフラップに使用されるときには、当業者は、材料の組み合わせに最も適切な試験法を選定する必要がある。例えば、フラップが、ポリマー(連続相又はマトリックス)中にセラミック粉体(不連続相)を含有する場合、プラスチック部分がフラップの連続相であるならば、プラスチック用のASTM試験法が、より好適な試験方法である可能性がある。
【0122】
弁フラップの厚さは、弁フラップに十分な硬度を提供するために、弾性率を考慮して選択され得る。例えば、隔壁(及びこれに形成される弁フラップ)を構成するために用いられる材料がより高い弾性率を有する場合、隔壁は、弁フラップを開くために必要とされる力が許容可能な水準にあるために、より薄くてもよい。逆に、隔壁を構成するために使用される材料がより低い弾性率を有する場合、偏っていない弁フラップがあらゆる向きにおいて許容可能な封止を提供することを確実にするために、より厚い隔壁を提供することが有利であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、隔壁及び弁フラップ材料の潜在的に許容可能な弾性率の下限は、好ましくは約0.7MPa(メガパスカル)以上、又は約0.8MPa以上、又は約2MPa以上であり得る。範囲の上限では、いくつかの潜在的に好適な隔壁及び弁フラップ材料の弾性率は、約1.1×10MPa以下、約11,000MPa、又は更に5,000MPa以下である。
【0123】
弾性率の範囲の下限に当たり得る、いくつかの潜在的に好適な隔壁及び弁フラップ材料は、弾性ポリマー材料を含み得る。用語が本文書で使用されるとき、「ポリマーの」は、規則的又は不規則に配列された繰返しユニットを含む分子である、ポリマーを含有することを意味する。そのポリマーは、天然でも合成でもよいが、好ましくは有機である。弾力的ポリマー材料には、エラストマー、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂、並びにプラストマー、又はこれらのブレンドが含まれてもよい。隔壁及び弁フラップのポリマー材料は、それら全体又は部分のいずれかにおいて、配向されていても、いなくてもよい。
【0124】
潜在的に好適なエラストマーは、熱可塑性エラストマー又は架橋ゴムのいずれかであってもよく、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ポリアクリレートエラストマー、エチレン−アクリルゴム、加硫性フッ素含有エラストマー類、シリコーンゴム、ポリウレタン、エピクロロヒドリンゴム、プロピレンオキシドゴム、ポリスルフィドゴム、ポリホスファゼンゴム、及びラテックスゴムなどのゴム材料、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマー、超低密度ポリエチレンエラストマー、コポリエステルエーテルエラストマー、エチレンメチルアクリレートエラストマー、エチレンビニルアセテートエラストマー、及びポリαオレフィンエラストマー類が挙げられてもよい。これらの材料のブレンド又は混合物も使用されてもよい。上で説明されたものにブレンドされることがある材料には、例えば、ポリマー類、充填剤類、添加物類、安定剤類などが挙げられてもよい。弾性率の範囲の下限に当たる隔壁及びフラップのための、いくつかの潜在的に好適な材料の例は、米国特許出願公開第US2007/0144524号(Martin)の表2に記載され得る。
【0125】
弾性率の範囲の上限に当たり得る、いくつかの潜在的に好適な隔壁及び弁フラップ材料としては、セラミックス、ダイヤモンド、ガラス、ジルコニアのような結晶性の高い材料と、ホウ素、黄銅、マグネシウム合金、ニッケル合金、ステンレス鋼、鋼、チタン、及びタングステンのような材料からの金属/箔とが挙げられる。好適な可能性があるポリマー材料には、コポリエステルエーテル、エチレンメチルアクリレートポリマー、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンスチレンポリマー、高密度ポリエチレン、高衝撃ポリスチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリカーボネート、液晶ポリマー、低密度ポリエチレン、メラミン類、ナイロン、ポリアクリレート、ポリアミド−イミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、及びポリフッ化ビニリデンのような熱可塑性樹脂が挙げられる。アシ、紙、並びにブナノキ、シーダー、カエデ、及びトウヒのような木材などの、天然に由来するセルロース材料も有用なことがある。これら、及び他の材料のブレンド、混合物、及び組み合わせがまた使用され得る。第2のより硬い層のために好適であり得る、いくつかの市販の材料の例は、米国特許第7,013,895号(Martinら)の表2に記載されている。
【0126】
隔壁及び弁フラップ材料が特徴付けられ得る、更に別の方法は、以下に記載の片持ち曲げ比試験によって決定され得る、片持ち曲げ比の値である。この特徴付けは、隔壁に使用される材料がシートストックであり、それによって片持ち上げ比を決定するための適切な試験試料が得られる場合、より適切であり得る。隔壁及び傾いていない弁フラップに使用される材料の弾性率及び厚さの組み合わせは、好ましくは比較的低い片持ち曲げ比を生じ得る。隔壁及び弁フラップ材料は、可撓性であっても、約0.0050以下、より好ましくは約0.0025以下、及び潜在的により好ましくは約0.0015以下の片持ち曲げ比を呈することが、好ましい場合がある。
【0127】
上記のように、隔壁及び弁フラップの厚さは、一方向弁の適切な動作を生じる、望ましい物理的特性を得るように選択されてもよい。単に代表的な値として、隔壁及び弁フラップの厚さは、約10マイクロメートル(μm)〜約2000μm、好ましくは約20μm〜約700μm、及びより好ましくは約25μm〜約600μmであってよいが、この範囲外の厚さを有する隔壁及び弁フラップもまた、依然として本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0128】
フェースマスクの構成
本発明の一方向弁を含むフェースマスクは、例えば、ハーフ及びフルフェースマスク及びフードを含む、様々な形態をとり得る。本明細書において記載されるように、一方向弁はフェースマスクと関連する吸気又は呼気弁のいずれかとして使用され得る。
【0129】
図1は、本明細書において記載される一方向弁フラップが共に使用され得る、1つの代表的なフェースマスクを例示する。表される実施形態では、マスク本体12は、着用者の顔とマスク本体の内面との間に内部気体空間又は空隙を作り出すように着用者の顔と離間した関係で、人の鼻及び口を覆ってフィットするように適合されている。マスク本体12は、いくつかの実施形態では、フィルターマスク本体であってよく、これ自体が流体透過性であり、マスク本体自体を通じて内部気体空間に入る空気を濾過するために使用される。フィルターマスク本体は、典型的には開口部(図示されない)を備えてもよく、これは、一方向呼気弁20がマスク本体12に取り付けられる場所に位置し、それによって吐き出された空気が、マスク本体12を通過することを必要とせずに、弁20を通じて内部気体空間を出ることができる。マスク本体12が流体透過性である場合、これは、例えば米国特許第7,028,689号(Martinら)に記載される材料の多層で構成され得る。
【0130】
マスク本体12における、呼気弁開口部の、1つの可能な好ましい位置は、マスクが着用されたときに、着用者の口がある場所の直ぐ前である。この位置に開口部を、ひいては弁20を置くことによって、マスク10の着用者が生成する呼気圧に反応して、弁がより容易に開くことが可能になる。図1に示される種類のマスク本体12の場合、本質的に、マスク本体12の全露出表面が、吸気に対して流体透過性であり得る。
【0131】
マスク本体12は、図1に示されるように、湾曲した半球形状を有することができ(米国特許第4,807,619号(Dyrudら)も参照)、又はこれは所望される他の形状をとってもよい。例えば、マスク本体は、米国特許第4,827,924号(Japuntich)に開示されるフェースマスクのような構成を有する、カップ形状のマスクであり得る。マスクはまた、三つ折り構成を有することができ、これは使用されていないときは平らに折り畳まれるが、着用中はカップ状構成へと開くことができる(米国特許第6,123,077号(Bostockら)、加えて米国意匠特許第431,647号(Hendersonら)、及び米国意匠特許第424,688号(Bryantら)参照)。本発明のフェースマスクはまた、米国意匠特許第443,927号(Chen)に開示されている平らに二つ折りされるマスクのような他の多くの構成をとってもよい。マスク本体は又、流体不透過性であり、米国特許第5,062,421号(Burns及びReischelら)に示されるマスクのように、これに取り付けられるフィルターカートリッジを有することもできる。
【0132】
加えて、マスク本体は又、今説明した負圧マスクとは対照的に、正圧の空気取入口と共に使用するように適合させることもできる。正圧マスクの例は、米国特許第5,924,420号(Grannisら)、及び同第4,790,306号(Braunら)に示される。例えば、米国特許第5,035,239号、及び同第4,971,052号に開示されるように、フィルターフェースマスクのマスク本体はまた、内蔵型呼吸装置に接続されてもよく、これは、着用者に清浄な空気を供給する。
【0133】
マスク本体は、着用者の鼻及び口のみを被覆する(「ハーフマスク」と称される)のみではなく、また、目も被覆してもよく(「フルフェース」と称される)、着用者の呼吸系に加えて着用者の視覚に保護を提供するように構成されてもよい(例えば、米国特許第5,924,420号(Reischelら)参照)。マスク本体は、着用者の顔から離間していてもよく、又はマスク本体は、着用者の顔と同一平面上に、又は近接して位置してもよい。いずれの場合にも、マスクは、内部気体空間を画定する助けをしており、呼気がその中に入ってから、呼気弁を通ってマスク内部を離れる。マスク本体はまた、その周辺部に示温性のフィット表示シールを有して、適切なフィットが確立されているか否かを着用者が容易に確認できるようにすることができる(米国特許第5,617,849号(Springettら)参照)。
【0134】
フェースマスクを着用者の顔にぴったり合わせて保持するために、マスク本体は、ストラップ15、結び紐、又はマスクを着用者の顔に支持するためにこれに取り付けられた他の任意の好適な手段などの、留め具を有することができる。好適であり得るマスク留め具の例が、米国特許第5,394,568号及び同第6,062,221号(Brostromら)並びに米国特許第5,464,010号(Byram)に示されている。
【0135】
アルミニウムなどの金属の曲げやすく非常に柔らかいバンドを含む鼻クリップ16をマスク本体12の上に設けて、着用者の鼻の上でフェースマスクを所望のフィット関係に保持するように成形可能にすることができる。好適な鼻クリップの例が、米国特許第5,558,089号及び意匠特許第412,573号(Castiglione)に示されている。
【0136】
試験装置及び方法
硬度測定
ナノくぼみ技術を用いて、弁座に使用される材料の硬度を決定した。ナノくぼみ技術により、封止表面用途に使用するための未加工材料試料、又は弁組立品の一部として組み込まれたときの封止表面のいずれをも試験することが可能になった。この試験は、37839テネシー州オークリッジのナノインスツルメンツ・イノベーションセンター(Nano Instruments Innovation Center 1001 Larson Drive, Oak Ridge, Tenn. 37839)のMTSシステムズ社(MTS Systems Corp.)から入手可能な微小くぼみ装置、MTSナノXPマイクロメカニカル試験機(MTS Nano XP Micromechanical Tester)を使用して実施された。この装置を使用して、65度の半円錐角(half cone angle)を有するバーコビッチ(Berkovich)角錐ダイヤモンド圧子の押し込み深さが、最大荷重までの付加力の関数として測定された。公称負荷速度は、40%の表面接近感度及び最大0.8nm/sに設定された空間ドリフト設定点で、毎秒10ナノメートル(nm/s)であった。溶融シリカ較正標準を除き全ての試験について、一定ひずみ速度試験が深さ5,000nmまで使用され、溶融シリカの場合、一定ひずみ速度が最終荷重100,000マイクロニュートンまで使用された。ひずみ速度、調和(harmonic)変位、及びポアソン比についての目標値は、それぞれ0.05s−1、45Hz、及び0.4であった。試験試料をホルダーに固定して、試験すべき対象表面が、装置のビデオスクリーンを通す包括的な視野から位置決めされた。試験装置の100倍のビデオ倍率で試験領域を局所的に選定して、試験された領域が、所望のサンプル材料の代表である、即ち、空隙、介在物、又はくずがないことを確実にした。試験手順の中で、各試験実施に対する「証人」として、溶融石英標準について1回の試験が実施される。繰返し方法による試験の前に、顕微鏡光学軸と圧子軸の間の軸整列が、溶融石英標準に試験くぼみが作られた場所で、チェック及び較正され、試験装置のソフトウエアによる誤差修正がなされる。試験システムは、連続剛性測定(Continuous Stiffness Measurement:CSM)モードで操作された。メガパスカル(MPa)又はギガパスカル(GPa)で報告される硬度は、試料の塑性流動の開始についての閾値接触応力として定義され、次のように与えられる。
【0137】
H=硬度
P=荷重
A=接触面積
片持ち曲げ比
片持ち曲げ試験を用いて、試料がそれ自体の質量で曲がる長さを測定することによって、材料の薄いストリップの硬度を表示することができる。試験試料は、0.794cm幅の材料ストリップを約5cmの長さに切断することにより調製される。試料が、水平表面の90度縁部の上をその長さ寸法に平行な方向に滑らされる。材料1.5cmが縁部を超えて延びる後で(延び長さ)、試料の撓みが、ストリップ端における最下方縁から水平表面までの垂直距離として測定される。試料の撓みがその延び長さにより割り算されて、片持ち曲げ比として報告される。1に近い片持ち曲げ比であれば、ゼロに近い片持ち曲げ比よりも高いレベルの可撓性を表す。
【0138】
特許の開示一式、特許文献、及び本明細書に引用された公報の内容全体を、それぞれが個々に援用されたように、参照として本明細書に援用する。
【0139】
本発明の代表的な実施形態が論じられ、そして本発明の範囲内で可能な変形が参照される。本発明におけるこれら及び他の変形及び改変は本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかであり、本発明が本明細書に記載される例示的実施形態に限定されないことは理解されるべきである。したがって、本発明は、以下に提供されている請求項及びその同等物によってのみ制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェースマスクであって、
着用された際に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合される、マスク本体と、
前記内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする、一方向弁と、を含み、前記一方向弁は、
前記マスク本体に取り付けられた基部であって、前記基部は、2つ以上の開口部を有し、これを介して気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過してもよく、前記2つ以上の開口部の各開口部は、前記開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれる、基部と、
前記基部に位置付けられる静止隔壁であって、前記隔壁は2つ以上の開口部及びそれらの対応する封止表面を覆って延びる、隔壁と、
前記隔壁内に形成される2つ以上の弁フラップであって、前記2つ以上の弁フラップの1つの弁フラップが、前記2つ以上の開口部の各開口部を覆うように位置し、前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、前記隔壁にわたって形成される境界スロット、及びそれに沿って前記弁フラップが前記隔壁に結合されるヒンジを含み、前記境界スロットは第1端部から第2端部に延びる前記弁フラップの自由縁部を画定し、前記ヒンジは前記弁フラップの前記自由縁部の前記第1端部と前記第2端部との間に延びる、弁フラップと、を含み、
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップは、前記弁フラップが前記開口部の周囲に延びる前記封止表面に接触し、これを覆うように前記弁フラップが位置して前記開口部を閉じる閉鎖位置を含み、前記弁フラップはまた、気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過し得るように、前記弁フラップの少なくとも一部が前記封止表面から浮かび上がる開放位置を含む、弁フラップを含む、一方向弁と、を含む、フェースマスク。
【請求項2】
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップのための前記境界スロットが、前記弁フラップの前記自由縁部が前記境界スロットをはさんで対向する前記隔壁の縁部から離間するようにスロット幅を含む、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項3】
前記フラップの少なくとも1つの前記ヒンジが、前記隔壁内に形成される切り込み線を含む、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項4】
前記弁フラップの少なくとも1つの前記ヒンジが、前記隔壁を貫いて形成される1つ以上のヒンジスロットと、前記弁フラップを前記隔壁に接続する1つ以上のランド部分とを含む、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項5】
前記2つ以上の開口部を覆うように位置する2つ以上の弁フラップが、同一方向に向けられ、それによって一方の弁フラップの自由縁部が、他方の弁フラップの前記ヒンジに隣接するように位置し、前記弁フラップの前記ヒンジは、互いに対してほぼ平行である、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項6】
各封止表面が、平面的な封止表面を含み、前記2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる前記平面的な封止表面が、同一平面に位置する、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項7】
各封止表面が、平面的な封止表面を含み、前記2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる前記平面的な封止表面が、異なる平面に位置する、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項8】
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップが、前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていない、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項9】
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップが、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いている、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項10】
前記2つ以上の開口部の各開口部周囲に延びる前記封止表面が、弾性封止表面を含む、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項11】
前記マスク本体は、フィルターマスク本体を含み、前記一方向弁は呼気弁を含む、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項12】
前記一方向弁が、前記基部に取り付けられるカバーを更に含み、前記隔壁が前記カバーと前記基部との間に位置し、前記カバーは前記2つ以上の開口部の各開口部のための通気孔構造を含み、各通気孔構造は、前記2つ以上の開口部の各開口部を通過する気体のための、前記カバーを通じた区別可能な流路を画定する、請求項1に記載のフェースマスク。
【請求項13】
前記隔壁の各弁フラップのために、前記通気孔構造が、前記隔壁を前記基部の近位に維持するように位置付けられた縁部を含むルーバーを含む、請求項12に記載のフェースマスク。
【請求項14】
各通気孔構造が、前記開口部と反対側に位置する主要通気孔、及び前記開口部の一方の側に位置する側部通気孔を含む、請求項12に記載のフェースマスク。
【請求項15】
フェースマスクであって、
着用された際に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合される、マスク本体と、
前記内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする、一方向弁と、を含み、前記一方向弁は、
前記マスク本体に取り付けられた基部であって、前記基部は、2つ以上の開口部を有し、これを介して気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過してもよく、前記2つ以上の開口部の各開口部は、前記開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれる、基部と、
前記2つ以上の開口部の各開口部を覆うように位置する弁フラップであって、各弁フラップは静止部分及び可動部分を含み、ヒンジが前記静止部分と前記可動部分との間に位置し、各弁フラップは、前記ヒンジの外側の前記弁フラップの前記可動部分の周囲に延びる自由縁部を含む、弁フラップと、を含み、
各弁フラップは、前記弁フラップの前記可動部分が前記開口部の周囲に延びる前記封止表面に接触し、これを覆うように前記弁フラップが位置して前記開口部を閉じる閉鎖位置を含み、前記弁フラップはまた、気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過し得るように、前記弁フラップの前記可動部分が前記封止表面から浮かび上がる開放位置を含み、
更に、前記2つ以上の開口部を覆うように位置する前記弁フラップは、同一方向に向けられ、それによって一方の弁フラップの前記自由縁部が、他方の弁フラップの前記ヒンジに隣接するように位置し、前記弁フラップの前記ヒンジは、互いに対してほぼ平行である、弁フラップを含む、一方向弁とを含む、フェースマスク。
【請求項16】
前記弁フラップの少なくとも1つの前記ヒンジが、切り込み線を含む、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項17】
前記弁フラップの少なくとも1つの前記ヒンジが、前記弁フラップにわたって形成される1つ以上のヒンジスロット、及びそれによって前記弁フラップの前記可動部分が前記弁フラップの前記静止部分に接続される1つ以上のランド部分を含む、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項18】
各封止表面が、平面的な封止表面を含み、前記2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる前記平面的な封止表面が、同一平面に位置する、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項19】
各封止表面が、平面的な封止表面を含み、前記2つ以上の開口部の各開口部の周囲に延びる前記平面的な封止表面が、異なる平面に位置する、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項20】
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップが、前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていない、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項21】
前記2つ以上の弁フラップの各弁フラップが、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いている、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項22】
前記2つ以上の開口部の各開口部周囲に延びる前記封止表面が、弾性封止表面を含む、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項23】
前記マスク本体が、フィルターマスク本体を含み、前記一方向弁が、呼気弁を含む、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項24】
前記一方向弁が、前記基部に取り付けられるカバーを更に含み、前記弁フラップが前記カバーと前記基部との間に位置し、前記カバーは前記2つ以上の開口部の各開口部のための通気孔構造を含み、各通気孔構造は、前記2つ以上の開口部の各開口部を通過する気体のための、前記カバーを通じた区別可能な流路を画定する、請求項15に記載のフェースマスク。
【請求項25】
各弁フラップのために、前記通気孔構造が、前記弁フラップを前記基部の近位に維持するように位置付けられた縁部を含むルーバーを含む、請求項24に記載のフェースマスク。
【請求項26】
各通気孔構造が、前記開口部と反対側に位置する主要通気孔、及び前記開口部の一方の側に位置する側部通気孔を含む、請求項24に記載のフェースマスク。
【請求項27】
フェースマスクであって、
着用された際に、人の、少なくとも鼻及び口を覆ってフィットし、内部気体空間を画定することを助けるように適合される、マスク本体と、
前記内部気体空間と外部気体空間との間の流体連通を可能にする、一方向弁と、を含み、前記一方向弁は、
前記マスク本体に取り付けられた基部であって、前記基部は、開口部を含み、これを介して気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過してもよく、前記開口部は、前記開口部の周囲に延びる封止表面によって囲まれる、基部と、
前記開口部を覆うように位置する弁フラップであって、前記弁フラップは、静止部分及び可動部分を含み、ヒンジが前記静止部分と前記可動部分との間に位置する、弁フラップと、を含み、
前記弁フラップは、前記弁フラップが前記封止表面に接触して前記開口部を閉じる閉鎖位置を含み、前記弁フラップはまた、気体が前記内部気体空間と前記外部気体空間との間を通過し得るように前記弁フラップの前記可動部分が前記封止表面から浮かび上がる開放位置を有し、
更に前記ヒンジは、前記弁フラップを通じて形成される1つ以上のヒンジスロット、及びそれによって前記弁フラップの前記可動部分が前記弁フラップの前記静止部分に接続される1つ以上のランド部分を含み、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるとき、前記1つ以上のヒンジスロットは前記封止表面の外側に位置する、フェースマスク。
【請求項28】
前記ヒンジスロットが、直線に沿って配置される、請求項27に記載のフェースマスク。
【請求項29】
前記封止表面が、平面的な封止表面を含む、請求項27に記載のフェースマスク。
【請求項30】
前記弁フラップが、前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いていない、請求項27に記載のフェースマスク。
【請求項31】
前記弁フラップが、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるときに、その封止表面に対して傾いている、請求項27に記載のフェースマスク。
【請求項32】
前記封止表面が、弾性封止表面を含む、請求項27に記載のフェースマスク。
【請求項33】
前記マスク本体が、フィルターマスク本体を含み、前記一方向弁が、呼気弁を含む、請求項27に記載のフェースマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−504786(P2011−504786A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536031(P2010−536031)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/079693
【国際公開番号】WO2009/088545
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】