説明

一時停止線検出装置及びプログラム

【課題】一時停止線以外の白線の誤検出を防止して、一時停止線を精度良く検出する。
【解決手段】画素距離変換部20で、画像入力部18により取得した入力画像を2値化し、画素値を画素距離に変換した画素距離画像を生成する。交差パターン検出部22で、画素距離画像を用いてレーンマークを追跡して、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点を検出する。探索領域設定部24で、交点近傍領域を一時停止線を検出するための探索領域に設定し、一時停止線判定部26で、探索領域内の白線の芯線を抽出し、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、芯線に対応する白線を一時停止線と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時停止線検出装置及びプログラムに係り、特に、撮像した画像から、一時停止線を検出する一時停止線検出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDカメラで得た自車両前方画像から前方車両を検出し、その手前に停止線検出ウインドウを設定し、その幅に対して所定の割合以上の長さの白線を白線検出フィルタによって検出する車両用走行制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、道路の横断歩道を検出し、横断歩道を含まないように停止線を検出すべき停止線検出領域を設定し、その停止線検出領域において、水平エッジの線分長及び垂直幅に基づいて停止線を検出する停止線検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、CCDカメラから入力される元画像の下側寄りに予め設定しておいた6つの小領域からなる停止線を認識するための領域のうち、連続する3つの小領域の平均輝度が低輝度→高輝度→低輝度と変化した場合に、一時停止線が存在すると判断する停止線認識装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
また、外界撮像カメラから入力される画像データ上において、自車両の走行路内に、この走行路に沿って伸びる複数の検知ラインを走行路の幅方向に所定間隔をおいて設定し、検知ライン毎に長さ方向における明るさの変化を検知し、その明るさの変化のパターンから一時停止線を検出する車両の路面標識検出装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、カメラ画像を俯瞰画像に変換し、俯瞰画像より一方向加算の強度プロファイルと他方向加算の強度プロファイルとを作成し、強度プロファイルのピーク強度位置を求めることにより、車両に対する停止線の位置を検出する停車位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−190100号公報
【特許文献2】特開2007−66003号公報
【特許文献3】特開2003−85562号公報
【特許文献4】特開2006−24105号公報
【特許文献5】特開2005−341153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、遠方の横断歩道や、一時停止線と同様に水平方向に伸びる一時停止線以外の白線を一時停止線として誤検出し易い、という問題がある。
【0009】
また、特許文献2の技術では、横断歩道を一時停止線と誤検出しないように、横断歩道の手前の領域から一時停止線を検出しているが、交差点の出口部分において、横断歩道と自転車横断帯とが並んで設置されている場合には、横断歩道の手前に自転車横断帯の白線が位置するため、この自転車横断帯を一時停止線と誤検出する場合がある、という問題がある。
【0010】
また、特許文献3の技術では、水平方向に伸びる一時停止線以外の白線を一時停止線として誤検出し易い、という問題がある。また、影や日照領域の通過による輝度値の変化にも反応してしまい、誤検出が生じる可能性がある、という問題がある。
【0011】
また、特許文献4の技術では、自転車横断帯のような水平方向に伸びる直線を全て一時停止線と誤検出する場合がる、という問題がある。また、一時停止線の一部がかすれて消えているような場合には、未検出が多くなる、という問題がある。
【0012】
また、特許文献5の技術では、輝度の積分に基づくコの字型の白線パターンを検出可能であるが、車道中の一時停止線を検出する場合、周囲の矢印表示や横断歩道の輝度値も積分されてしまうため、一時停止線の判別が困難になる、という問題がある。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、一時停止線以外の白線の誤検出を防止して、一時停止線を精度良く検出することができる一時停止線検出装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一時停止線検出装置は、自車両周辺の道路領域を含む範囲を撮像する撮像手段によって撮像された画像から、前記自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークを検出し、検出されたレーンマーク上の点を始点として該レーンマークから分岐して前記画像の水平方向に伸びる白線を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された水平方向に伸びる白線の一部または全部、及び前記始点を含む領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定する設定手段と、前記設定手段により設定された探索領域に存在する白線を細線化した芯線を抽出し、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、該芯線に対応する白線を一時停止線と判定する判定手段と、を含んで構成されている。
【0015】
本発明の一時停止線検出装置によれば、撮像手段により、自車両周辺の道路領域を含む範囲が撮像されると、検出手段が、この撮像された画像から、自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークを検出し、検出されたレーンマーク上の点を始点としてレーンマークから分岐して画像の水平方向に伸びる白線を検出する。すなわち、検出手段は、レーンマークと水平方向に伸びる白線とが、上記始点を交点として交差する交差パターンを検出する。一時停止線はレーンマークと交差するが、一時停止線以外の白線はレーンマークと交差しないため、この交差パターンを検出することで、一時停止線以外の白線を除外することができる。
【0016】
そして、設定手段が、検出手段により検出された水平方向に伸びる白線の一部または全部、及び始点を含む領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定し、判定手段が、設定手段により設定された探索領域に存在する白線を細線化した芯線を抽出する。一時停止線は、横断歩道等と隣接していないため、芯線が直線状となるが、横断歩道等と隣接している一時停止線以外の白線は、芯線が直線状にならない。そこで、判定手段は、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、芯線に対応する白線を一時停止線と判定する。
【0017】
このように、レーンマーク及びレーンマーク上の点を始点としてレーンマークから分岐して画像の水平方向に伸びる白線、すなわち交差パターンを検出し、その交点である始点の近傍領域を一時停止線を検出するための探索領域として設定し、白線を細線化した芯線を用いて一時停止線を検出するため、一時停止線以外の白線の誤検出を防止して、一時停止線を精度良く検出することができる。
【0018】
また、前記画像の各画素を、画素値が予め定めた閾値以上の第1の画素と、画素値が前記閾値より小さい第2の画素とに分類し、前記第1の画素の各々の画素値を、該第1の画素から最も近い前記第2の画素までの画素距離に変換する変換手段を含み、前記検出手段は、前記変換手段により変換された前記第1の画素の画素距離が所定範囲の値の画素が所定方向に沿って連続している場合に、前記所定方向に沿って連続する画素群を前記レーンマークとして検出し、前記連続する画素群の端及びその延長線上において、画素距離が所定範囲の値を超えた画素位置を前記始点として検出することができる。このように、画素距離変換を行って交差パターンを検出することで、パターンマッチングなどの手法と比較して、簡易な処理で様々な交差パターンを検出することができる。
【0019】
また、前記検出手段は、前記連続する画素群に含まれる画素数が所定数以上の場合に、該連続する画素群を前記レーンマークとして検出することができる。これにより、レーンマークの誤検出を防止することができる。
【0020】
また、前記判定手段は、前記変換手段により変換された前記第1の画素の前記水平方向に伸びる白線に直交する方向において画素距離が最大となる画素を前記芯線として抽出することができる。このように、画素距離変換を行うことで、簡易な処理で白線の芯線を抽出することができる。
【0021】
また、前記検出手段は、前記レーンマークと前記水平方向に伸びる白線を各々検出し、該レーンマークと該水平方向に伸びる白線とが、T字型、十字型、トの字型、及びΓ字型のいずれかの形状で交差している点を前記始点として検出することができる。
【0022】
また、本発明の一時停止線検出プログラムは、コンピュータを、自車両周辺の道路領域を含む範囲を撮像する撮像手段によって撮像された画像から、前記自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークを検出し、検出されたレーンマーク上の点を始点として該レーンマークから分岐して前記画像の水平方向に伸びる白線を検出する検出手段、前記検出手段により検出された水平方向に伸びる白線の一部または全部、及び前記始点を含む領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定する設定手段、及び前記設定手段により設定された探索領域に存在する白線を細線化した芯線を抽出し、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、該芯線に対応する白線を一時停止線と判定する判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0023】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の一時停止線検出装置及びプログラムによれば、レーンマーク及びレーンマーク上の点を始点としてレーンマークから分岐して画像の水平方向に伸びる白線、すなわち交差パターンを検出し、その交点である始点の近傍領域を一時停止線を検出するための探索領域として設定し、白線を細線化した芯線を用いて一時停止線を検出するため、一時停止線以外の白線の誤検出を防止して、一時停止線を精度良く検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る一時停止線検出装置を示すブロック図である。
【図2】画素距離画像の一部の一例を示すイメージ図である。
【図3】(A)入力画像、及び(B)画素距離が所定の範囲内となる画素群を抽出した画像の一例を示すイメージ図である。
【図4】交差パターンの例を示す図である。
【図5】レーンマークの追跡を説明するための図である。
【図6】(A)左側のレーンマーク、及び(B)右側のレーンマークの追跡を説明するための図である。
【図7】(A)左側の交点及び右側の交点のいずれか一方のみが検出された場合、及び(B)双方の交点が検出された場合における、探索領域の設定を説明するための図である。
【図8】白線の芯線の抽出を説明するための図である。
【図9】(A)一時停止線の場合、及び(B)一時停止線以外の白線の場合における、抽出された芯線の一例を示すイメージ図である。
【図10】本実施の形態に係る一時停止線検出装置のコンピュータにおける一時停止線検出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る一時停止線検出装置10は、車両(図示省略)に搭載され、かつ、道路領域を含む自車両前方を撮像して画像を出力する撮像装置12と、撮像装置12から得られる画像に基づいて、一時停止線を検出し、検出結果を表示装置16に表示させるコンピュータ14とを備えている。
【0028】
撮像装置12は、自車両前方を撮像し、画像の画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成された画像信号をA/D変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。
【0029】
コンピュータ14は、CPUと、RAMと、後述する一時停止線検出処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。コンピュータ14は、撮像装置12により撮像された画像を取得する画像入力部18と、取得した画像の各画素の画素値を画素距離に変換する画素距離変換部20と、レーンマークと水平方向に伸びる白線とが交差する交差パターンを検出する交差パターン検出部22と、一時停止線を検出するための探索領域を設定する探索領域設定部24と、探索領域内から抽出された白線が一時停止線か否かを判定する一時停止線判定部26と、を含んだ構成で表すことができる。
【0030】
画素距離変換部20は、画像入力部18により取得した入力画像を、予め定めた閾値を用いて2値化する。例えば、画素値が閾値以上の画素を{1}、画素値が閾値より小さい画素を{0}に分類する。閾値は、道路上の白線と白線以外の部分とを分類可能な値を定めておく。また、画素距離変換部20は、{1}画素に分類された画素の各々について、{1}画素から最も近い{0}画素までの距離(画素距離)を算出する。画素距離の算出は、シティブロック距離やユークリッド距離等を用いることができる。そして、各{1}画素の画素値を算出した画素距離に変換して、画素距離画像を生成する。
【0031】
図2に、入力画像を画素距離に変換した画素距離画像の一部の一例を示す。1マスが1画素を表し、網掛けで示した画素が{0}画素、白色で示した画素が{1}画素であり、{1}画素内の数値が各{1}画素の画素距離を表している。また、例えば、図3(A)のような入力画像に対して画素距離変換を行い、画素距離が所定の範囲内となる画素群(例えば、図2で画素距離の所定範囲を1〜4とした場合には、1〜4のラベルを付した{1}画素)を抽出した画像を、同図(B)に示す。
【0032】
交差パターン検出部22は、画素距離変換部20で生成された画素距離画像を用いて、自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークと、水平方向に伸びる白線とが交差する交差パターンを検出する。一時停止線は、多くの場合、レーンマークと交差するように描画されている。一方、一時停止線以外の白線は、レーンマークと交差していない。そこで、この交差パターンを検出することにより、一時停止線以外の白線を除外する。また、レーンマークと一時停止線との交点部分は、レーンマーク上をタイヤが通過する頻度が少ないことから、かすれて消えることなく残っている場合が多いため、安定して検出することができる。
【0033】
交差パターンは、例えば、図4に示すように、T字型、十字型、トの字型、Γ字型等のパターンであり、それらの左右反転したパターンも含む。なお、上下反転させたパターンは、自転車横断帯や反対車線の一時停止線に該当するため、交差パターンには含まない。
【0034】
交差パターンの検出の具体的な方法は、画素距離画像の左上端の画素を基準としたx方向の画素数i、y方向の画素数jで表される画素座標(i,j)の画素(以下、画素(i,j)ともいう)の画素距離をd(i,j)として、画素距離d(i,j)が、τ≦d(i,j)≦τとなる画素を追跡していく。所定方向にτ≦d(i,j)≦τとなる画素が所定数以上連続する場合には、それらの画素群をレーンマークとして検出する。そして、d(i,j)がτより小さくなった画素、またはτを超えた画素を、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点として検出する。
【0035】
なお、閾値τ及びτは、レーンマーク検出のための閾値であり、画素距離の範囲の上限及び下限を与えるパラメータである。白線の境界付近が追跡対象に含まれるように小さな値を設定しておく。下限の閾値τは、なるべく小さな値を設定するが、小さすぎると画像中の雑音を多く含んでしまうため、2〜4の値を設定するのが最適である。また、上限の閾値τは、白線の両端から内部へ何画素目までを追跡対象とするかを定めるためのパラメータである。この閾値τを設定するのは、一時停止線の上部にレーンマークが続いている場合(図5参照)でも、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点を検出可能にするためである。閾値τが小さすぎるとレーンマークの追跡に失敗し、大きすぎると白線全域が追跡対象となり、交点の検出に失敗する可能性があるため、閾値τよりも2〜4大きな値を設定するのが適切である。
【0036】
例えば、図2に示した画素距離画像を用いて、τ=τ=1、自車両の右側のレーンマークを想定して所定方向を左斜め上方向とした場合、図5に示すように、矢印部分の画素群がレーンマークとして検出され、×印の画素がレーンマークと水平方向に伸びる白線との交点として検出される。これは、この点を始点としてレーンマークから分岐して水平方向に伸びる白線が存在していることを示しており、このようにレーンマーク及び交点を検出することで、交差パターンを検出することができる。
【0037】
交差パターンの検出方法について、より具体的に説明する。図5に示したように、τ≦d(i,j)≦τとなる画素が、レーンマーク上では斜線状となり、水平方向に伸びる白線上では、水平線状となる。従って、画像の下側からτ≦d(i,j)≦τとなる画素を追跡し、その追跡経路が斜め上方向から水平方向に変わった地点を、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点とみなすことができる。
【0038】
画素の追跡は、自車両から見て左側のレーンマーク、及び右側のレーンマークの各々について個別に行う。左側のレーンマークの追跡では、累積画素数をm(i,j)とすると、m(i,j)は動的計画法により、下記(1)式により計算される。また、この追跡の様子を図6(A)に示す。
【0039】
【数1】

【0040】
レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点の判定は、所定の閾値θを用いて、下記(2)式により行う。
【0041】
【数2】

【0042】
この判定式は、レーンマークをθ画素以上斜め上方向に追跡した状態で、それ以上斜め上方向にレーンマークがない場合(d(i,j)<τ)、または横方向から別の白線が交わっている場合(d(i,j)>τ)を表している。(2)式を満たす画素(i,j)を、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点として検出する。
【0043】
右側のレーンマークの追跡では、(1)式に代えて、累積画素数mを下記(3)式により計算する。また、この追跡の様子を図6(B)に示す。
【0044】
【数3】

【0045】
なお、(1)式の更新の順序は、画像左下の(i,j)から画像右上の(i,j)とし、(3)式の更新の順序は、画像右下の(i,j)から画像左上の(i,j)とする。このように更新することで、累積画素数m(i,j)及びm(i、j)が追跡方向に対して順方向に累積され、一度の画像スキャンでm(i,j)及びm(i、j)を求めることができる。
【0046】
右側レーンマークについての交点の検出は、(2)式に代えて、下記(4)式を用いる。
【0047】
【数4】

【0048】
探索領域設定部24は、交差パターン検出部22で検出された交点を示す画素(i,j)の近傍領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定する。具体的には、左側のレーンマーク上の交点、及び右側のレーンマーク上の交点のいずれか一方のみが検出された場合には、図7(A)に示すように、交点を示す画素(i,j)を中心に左右各々に幅i、上下方向の各々に高さjとなる長方形の領域(i−i、j−j)−(i+i、j+j)を探索領域として設定する。iは、画像の横幅全体を包含するように大きな値を設定してもよい。また、左側のレーンマーク上の交点、及び右側のレーンマーク上の交点の双方が検出された場合には、同図(B)に示すように、左側の交点に基づいて設定された探索領域と右側の交点に基づいて設定された探索領域とを包含する領域を探索領域として設定する。
【0049】
一時停止線判定部26は、探索領域設定部24により設定された探索領域から、白線の芯線を抽出する。例えば、探索領域として(i、j)−(i、j)の範囲が設定された場合には、i<i<iを満たす画素について、画素距離d(i,j)が最大となるj(j<j<j)を求め、その座標(i,j)を芯線座標として抽出して、保持する。d(i,j)=0の場合、すなわち白線がない場合には、芯線座標を保持しない。図8に、図2に示した画素距離画像から芯線を抽出した例を示す。画素距離の尾根部分(斜線で示した画素)が芯線座標として抽出され、保持される。
【0050】
また、一時停止線判定部26は、探索領域の幅方向に占める芯線座標の割合が所定の閾値より小さい場合には、抽出された芯線に対応する白線は一時停止線ではないと判定する。探索領域の幅方向に占める芯線座標の割合は、例えば、(抽出された芯線の画素数)/(探索領域の横1ライン分の画素数)として求めることができる。また、この閾値は、横断歩道のような縞模様の誤検出を防止し、また、一部分がかすれて消えている一時停止線の未検出を防止するような値を定めておく。例えば、閾値を0.5以上に設定すると、縞模様の横断歩道が誤検出されることはない。また、消えずに残っている部分の割合が0.5以上であれば、一時停止線として検出することができる。
【0051】
また、一時停止線判定部26は、保持した芯線座標(i,j)の集合を通る直線を最小二乗法により求め、保持した芯線座標と最小二乗法により求めた直線との誤差平均に基づいて、芯線に対応する白線が一時停止線か否かを判定する。誤差平均が所定の閾値を超えた場合は、その白線は一時停止線ではないと判定する。また、誤差平均が所定の閾値以下の場合には、その白線を一時停止線と判定して、最小二乗法により求めた直線の位置を一時停止線の位置として検出する。
【0052】
図9(A)に示すように、白線が一時停止線の場合には、芯線が直線状となるため、最小二乗法により求めた直線との誤差は小さくなる。一方、同図(B)に示すように、白線が横断歩道と交差する自転車横断帯の場合には、横断歩道と交差している影響により、芯線が直線状とならず、最小二乗法により求めた直線との誤差が大きくなる。このように、白線のかすれや細い白線との交差は、芯線の位置にほとんど影響を及ぼさないが、横断歩道のように太い白線との交差は、芯線の位置に影響を及ぼすため、上記の判定により、一時停止線以外の白線を除外することができる。
【0053】
次に、本実施の形態に係る一時停止線検出装置10の作用について説明する。なお、一時停止線検出装置10を搭載した車両の走行中に、自車両の走行レーンの前方の一時停止線を検出する場合を例に説明する。
【0054】
まず、撮像装置12によって、自車両前方の撮像が開始されると、コンピュータ14において、図10に示す一時停止線検出処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0055】
ステップ100で、撮像装置12で撮像された入力画像を取得する。次に、ステップ102で、上記ステップ100で取得した入力画像について、画素値が閾値以上の画素を{1}、画素値が閾値より小さい画素を{0}に分類する。そして、{1}画素に分類された画素の各々について、{1}画素から最も近い{0}画素まで距離(画素距離)を算出し、各{1}画素の画素値を算出した画素距離に変換して、画素距離画像を生成する。
【0056】
次に、ステップ104で、上記ステップ102で生成した画素距離画像の下側から、画素距離d(i,j)が所定範囲内(τ≦d(i,j)≦τ)となる画素を、(1)式及び(3)式を用いて各々追跡することにより、左側のレーンマーク及び右側のレーンマークの各々を追跡する。
【0057】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で追跡中のレーンマークと、水平方向に伸びる白線との交点が検出されたか否かを、(2)式及び(4)式を用いて判定する。交点が検出された場合には、ステップ108へ移行し、交点が検出されない場合には、ステップ100へ戻る。
【0058】
ステップ108では、上記ステップ106で検出された交点を示す画素(i,j)の近傍領域を、一時停止線を検出するための探索領域(i、j)−(i、j)として設定する。
【0059】
次に、ステップ110で、上記ステップ108で設定された探索領域において、i<i<iを満たす画素について、画素距離d(i,j)が最大となるj(j<j<j)を求め、その座標(i,j)を芯線座標として保持することで、探索領域内の白線の芯線を抽出する。
【0060】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で抽出された芯線の画素数を、上記ステップ108で設定した探索領域の横1ライン分の画素数で除して、探索領域の幅方向に占める芯線座標の割合を算出し、この芯線座標の割合が所定の閾値以上か否かを判定する。芯線座標の割合が所定の閾値以上の場合には、ステップ114へ移行し、閾値より小さい場合には、抽出された芯線に対応する白線は一時停止線ではないと判定して、処理を終了する。
【0061】
ステップ114では、保持した芯線座標(i,j)の集合を通る直線を最小二乗法により求め、保持した芯線座標と最小二乗法により求めた直線との誤差平均に基づいて、芯線に対応する白線が一時停止線か否かを判定する。誤差平均が所定の閾値以下の場合には、その白線を一時停止線と判定して、ステップ116へ移行する。一方、誤差平均が所定の閾値を超えた場合は、その白線は一時停止線ではないと判定して、処理を終了する。
【0062】
ステップ116では、上記ステップ114で一時停止線と判定された白線の芯線座標に基づいて最小二乗法により求めた直線の位置を、一時停止線の位置として検出し、検出結果として表示装置16に表示させて、処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態の一時停止線検出装置によれば、レーンマークと水平方向に伸びる白線との交点を検出し、その交点の近傍領域を一時停止線を検出するための探索領域として設定し、白線を細線化した芯線を用いて一時停止線を検出するため、一時停止線以外の白線の誤検出を防止して、一時停止線を精度良く検出することができる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、入力画像の各フレームに対して単独で行う場合について説明したが、連続する複数のフレームを用いて処理を行うようにしてもよい。この場合、前フレームの累積画素数m(i,j)及びm(i、j)を保持しておき、追跡方向に対して逆方向の更新順序で画像をスキャンする。つまり、(1)式の更新順序は、画像右上の(i,j)から画像左下の(i,j)とし、(3)式の更新順序は、画像左上の(i,j)から画像右下の(i,j)とする。この方法を用いることで、1つ前のフレームの累積画素数m(i,j)及びm(i、j)を利用することができ、時間連続性を考慮した検出が可能となる。なお、複数フレームを使用する場合には、上記の更新順序を変更するのみで、(2)式及び(4)式を用いた交点の検出等の他の手順は、上記実施の形態と同様である。例えば、自車両が一時停止線に向かって直進している場合、画像中のレーンマークの位置は略定位置であるが、一時停止線は画像の下方向に向かって移動しているように見える。この場合、一時停止線とレーンマークとの交点周辺では、過去フレームの処理により、m(i,j)及びm(i、j)の値が累積されて大きくなっているので、(2)式及び(4)式により、交点を検出することが可能となる。
【0065】
また、上記実施の形態では、入力画像を画素距離変換して交差パターンを検出する場合について説明したが、この方法に限定されず、例えば、ハフ変換を用いて交差パターンを検出するようにしてもよい。この場合、白線上の点をハフ空間に投票し、投票数のピークを探索することにより、白線をなす直線の方程式を求めることができる。そして、得られた複数の直線の方程式を連立させて解くことにより、交点を求めることができる。
【0066】
また、上記実施の形態では、レーンマークの追跡を斜め上方向とする場合について説明したが、これに限定されない。撮像装置の取り付け位置や取り付け角度等を考慮して、画像上のレーンマークの分布を想定して、レーンマークの追跡方向として定めればよい。例えば、レーンマークが画像上で垂直線状に分布することを許してもよい。この場合、道路脇のガードレールや白い支柱をレーンマークと誤検出してしまう場合があるため、レーンマーク以外の垂直線状の白線を予め検出して除外しておくとよい。レーンマーク以外の垂直線状の白線を除外するためには、レーンマークよりも太い白線は存在しないと仮定して、画素距離画像の芯線部分の画素距離が閾値以下である垂直線分を除外するようにするとよい。なお、垂直線状のレーンマークを追跡する場合には、(1)式及び(2)式に代えて、下記(5)式及び(6)式を用いるようにするとよい。
【0067】
【数5】

【0068】
また、上記実施の形態では、一時停止線の検出結果を表示装置に表示する場合について説明したが、検出された一時停止線に基づいて自車両の車両運動を制御するように、車両運動制御装置に検出結果を出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 一時停止線検出装置
12 撮像装置
14 コンピュータ
16 表示装置
18 画像入力部
20 画素距離変換部
22 交差パターン検出部
24 探索領域設定部
26 一時停止線判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の道路領域を含む範囲を撮像する撮像手段によって撮像された画像から、前記自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークを検出し、検出されたレーンマーク上の点を始点として該レーンマークから分岐して前記画像の水平方向に伸びる白線を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された水平方向に伸びる白線の一部または全部、及び前記始点を含む領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された探索領域に存在する白線を細線化した芯線を抽出し、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、該芯線に対応する白線を一時停止線と判定する判定手段と、
を含む一時停止線検出装置。
【請求項2】
前記画像の各画素を、画素値が予め定めた閾値以上の第1の画素と、画素値が前記閾値より小さい第2の画素とに分類し、前記第1の画素の各々の画素値を、該第1の画素から最も近い前記第2の画素までの画素距離に変換する変換手段を含み、
前記検出手段は、前記変換手段により変換された前記第1の画素の画素距離が所定範囲の値の画素が所定方向に沿って連続している場合に、前記所定方向に沿って連続する画素群を前記レーンマークとして検出し、画素距離が所定範囲の値を超えた画素位置を前記始点として検出する
請求項1記載の一時停止線検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記連続する画素群に含まれる画素数が所定数以上の場合に、該連続する画素群を前記レーンマークとして検出する請求項2記載の一時停止線検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記変換手段により変換された前記第1の画素の前記水平方向に伸びる白線に直交する方向において画素距離が最大となる画素を前記芯線として抽出する請求項2または請求項3記載の一時停止線検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記レーンマークと前記水平方向に伸びる白線を各々検出し、該レーンマークと該水平方向に伸びる白線とが、T字型、十字型、トの字型、及びΓ字型のいずれかの形状で交差している点を前記始点として検出する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の一時停止線検出装置。
【請求項6】
コンピュータを、
自車両周辺の道路領域を含む範囲を撮像する撮像手段によって撮像された画像から、前記自車両の走行レーンの境界を示すレーンマークを検出し、検出されたレーンマーク上の点を始点として該レーンマークから分岐して前記画像の水平方向に伸びる白線を検出する検出手段、
前記検出手段により検出された水平方向に伸びる白線の一部または全部、及び前記始点を含む領域を、一時停止線を検出するための探索領域として設定する設定手段、及び
前記設定手段により設定された探索領域に存在する白線を細線化した芯線を抽出し、抽出された芯線が直線状かつ所定の長さ以上の場合に、該芯線に対応する白線を一時停止線と判定する判定手段
として機能させるための一時停止線検出プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の一時停止線検出装置を構成する各手段として機能させるための一時停止線検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−150595(P2012−150595A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7864(P2011−7864)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】