説明

一液湿気硬化型靴補修剤及び靴補修方法

【課題】
ゴム、天然皮革及び合成皮革に対する接着性が良好で耐摩耗性に優れ、無溶剤系で常温硬化できる一液湿気硬化型靴補修剤及び該靴補修剤を用いた靴補修方法を提案する。
【解決手段】
ポリテトラメチレングリコール及び/又は変成ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する一液湿気硬化型靴補修剤である。該一液湿気硬化型靴補修剤のSVI値が2以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底等の靴の磨耗した部分や剥がれた部分を容易に補修することができる一液湿気硬化型靴補修剤、及び該靴補修剤を用いた靴補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴底の補修方法として、靴底に型枠をとりつけ、ゴムまたは樹脂を注型することにより補修する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1は、ゴム又は樹脂として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの二液反応型、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの高温溶液、ゴムラテックス、ゴム溶液が記載されており、常温で自然硬化させるか、加熱により硬化させることが開示されている。しかしながら、二液反応型は補修直前に2成分を混合する必要があり作業が煩雑になるという問題があり、加熱硬化は安全面で問題があった。
【0003】
一液型で常温硬化する靴底補修剤として、特許文献2は、ゴムと補強剤と炭化水素溶剤を含有する靴底補修剤を提案している。しかしながら、該靴底補修剤は有機溶剤を用いることから環境面で問題があり、有機溶剤の揮散により硬化物の収縮が起こり、さらに耐摩耗性も十分ではなかった。
【0004】
また、無溶剤の一液型の靴底補修剤として、特許文献3は、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネート化合物とアミン化合物を不活性化した潜在性硬化剤とを主成分とする一液型熱硬化性組成物を開示しているが、該靴底補修剤は熱湯を用いて加熱硬化させる為、安全面で問題があった。
【特許文献1】特開昭52−76149号公報
【特許文献2】特開2002−6052号公報
【特許文献3】特開2006−34882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴム、天然皮革及び合成皮革に対する接着性が良好で耐摩耗性に優れ、無溶剤系で常温硬化できる一液湿気硬化型靴補修剤及び該靴補修剤を用いた靴補修方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、ポリテトラメチレングリコール及び/又は変成ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする。
【0007】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤が、硬化触媒をさらに含むことが好ましい。
また、本発明の一液湿気硬化型靴補修剤が、揺変性付与剤をさらに含むことが好適である。
前記ポリオールが、さらにポリエステルポリオール及び/又は水酸基含有液状ジエン系重合体を含むことが好ましい。
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、SVI値が2以上8以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の靴補修方法は、前記本発明の一液湿気硬化型靴補修剤を用いて、常温で靴を補修することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、有機溶剤を使用せず、一液常温硬化型であるため、環境面、安全面の問題がなく作業性に優れ、さらに、ゴム、天然皮革及び合成皮革に対する接着性が良好で、耐摩耗性に優れる。本発明の靴補修方法によれば、簡便且つ安全に靴を補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0011】
本発明の靴補修剤は、ポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分として含有する一液湿気硬化型組成物であって、前記ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコール及び変成ポリテトラメチレングリコールからなる群から選択される1種又は2種以上を含むものである。
【0012】
前記ポリテトラメチレングリコール及び変成ポリテトラメチレングリコールの総量が、全ポリオールに対して10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。前記ポリテトラメチレングリコールと変成ポリテトラメチレングリコールはいずれか一方のみを用いてもよく、併用してもよいが、作業性の点から変成ポリテトラメチレングリコールを用いることがより好ましい。
【0013】
前記ポリテトラメチレングリコールとしては、公知のテトラヒドロフランの重合体を広く使用可能である。前記ポリテトラメチレングリコールの分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量500〜5000、より好ましくは500〜2000の範囲のものを用いることが好適である。前記ポリテトラメチレングリコールは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記変成ポリテトラメチレングリコールは、テトラメチレンエーテルとアルキレンエーテルの共重合体であり、前記アルキレンエーテルは側鎖を有することが好ましい。前記変成ポリテトラメチレングリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランとの共重合体、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合体、テトラヒドロフランと側鎖を有するアルキレンエーテルとの共重合体等が挙げられる。前記テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランとの共重合体としては、例えば、特開昭63−235320号公報記載のテトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランとの共重合体等が好適な例として挙げられる。
【0015】
前記変成ポリテトラメチレングリコールの分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量500〜5000、より好ましくは1000〜3000の範囲のものを用いることが好適である。前記変成ポリテトラメチレングリコールは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明において、ポリオール成分として、前記ポリテトラメチレングリコール及び変成ポリテトラメチレングリコール以外のポリオールを配合してもよい。該ポリオールは活性水素基を2個以上有する活性水素含有化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、3官能以上の多価アルコールやジオール、ポリプロピレングリコール(PPG)等の他のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオール等が挙げられ、これらのポリオールは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
特に、繊維、合成皮革及びゴム等への接着性を向上させるために、多価カルボン酸とポリオールとの反応により得られるポリエステルポリオールや、ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等の水酸基を含む液状ジエン系ポリマーを全ポリオール成分に対して1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%配合することが好適である。
【0017】
より具体的には、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、アンモニア、エチレンジアミン等のアミン類の1種または2種以上の存在下にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダムまたはブロック共重合体等のポリエーテルポリオールが挙げられる。またポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールの存在下にアジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸を重縮合させて得られる共重合体等のポリエステルポリオール等があり、その他ビスフェノールA、ヒマシ油のラムエステル等の活性水素基2個以上を有する低分子活性水素化合物が挙げられる。上記化合物としては、通常分子量が100〜7000、1分子中のOH基が2〜4個のものが好ましく使用できる。
【0018】
前記ポリイソシアネート化合物としては、特に限定はなく、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類が挙げられる。前記イソシアネート化合物としては、コスト及び反応性の点からMDIが好ましいが、黄変等の変色を考慮するとXDIの使用が好ましい。
【0019】
前記ポリオール成分と、前記ポリイソシアネート化合物とを反応させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、水酸基(OH)を2個以上有するポリオール成分とイソシアネート基(NCO)を2個以上有するポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となるように、即ちNCO/OH当量比が、1より大となるように反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。
その反応条件としては、特に限定されないが、例えばNCO/OH当量比1.3〜10.0の割合、より好ましくは1.5〜5.0の割合にて、窒素又はドライエアー気流中で70〜100℃で数時間反応させることにより製造される。NCO/OH当量比が1.3未満の場合はプレポリマーの粘度が高くなり作業性に問題が生じ、10を超えると発泡により不具合が生じる場合がある。
【0020】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤には、さらに硬化触媒を配合することが好ましい。前記硬化触媒は、ウレタンプレポリマーの硬化を促進するための触媒であり、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられる。
硬化触媒の配合割合は特に限定されないが、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部配合することが好ましく、0.01〜2質量部配合することがより好ましい。
【0021】
前記有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物;ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛等の有機酸鉛塩;テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物;オクチル酸ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物;有機亜鉛化合物;有機マンガン化合物;有機鉄化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)等の錫系キレート化合物、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物が挙げられる。これらのうち、反応速度が高く、毒性及び揮発性の比較的低い液体である点から有機錫化合物や金属キレート化合物が好ましく、錫系キレート化合物がより好ましい。
【0022】
前記アミン類としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級アミン類、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の第2級アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級、第2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルフォリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類が挙げられる。
【0023】
また、前記1液湿気硬化型靴補修剤に、加水分解によりアミンを生成する化合物等の潜在性硬化剤を配合してもよい。前記加水分解によりアミンを生成する化合物としては、ケチミン化合物、エナミン化合物、及びアルジミン化合物等のアミン類とカルボニル化合物の脱水反応生成物等が好適な例として挙げられ、ポリアミンとアルデヒドの反応生成物であるポリアルジミンがより好ましい。潜在性硬化剤を用いることにより、低温硬化性を向上させることができ、冬場の施工性を更に高めることができる。さらに、潜在性硬化剤を用いることにより発泡抑制効果もある。
【0024】
潜在性硬化剤の配合割合は特に限定されないが、ポリアルジミン等、加水分解してアミン類を生成する化合物を用いる場合、加水分解して生ずるアミン類のアミノ基の数と、ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基の数との比が、0.1〜1.0、より好ましくは0.2〜0.6とする事が望ましい。
【0025】
前記1液湿気硬化型靴補修剤にポリアルジミン等の潜在性硬化剤を配合する場合、該潜在性硬化剤の加水分解を促進させる化合物をさらに配合することが好ましい。該加水分解を促進させる化合物としては、例えば、加水分解性エスエル化合物、及びp−トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。2種以上組み合わせて使用する場合、その組み合わせも特に限定されず、例えば、加水分解性エステル化合物とp−トルエンスルホニルイソシアネートを併用しても良い。
前記加水分解性エステル化合物は、水分により加水分解して遊離酸を生じ、アルジミンの加水分解を促進させるものであり、例えば、ギ酸メチル等のエステル類,オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸エステル,シクロヘキサノンジメチルアセタール等のアセタール類が貯蔵安定性の点で好ましい。
【0026】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、靴の補修時の作業性の点からその構造粘性指数(SVI値:Structural Viscosity Index、以下、SVI値と称する。)が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。SVI値の上限は特に限定されないが、8以下であることが好ましい。なお、本発明において、SVI値は下記の方法で算出した場合の数値を意味する。まず、JIS K 6833の6.3粘度に準拠し、B型粘度計(東機産業製、BSローター7番)を用いて、回転数1回転および回転数10回転での120秒後の粘度を測定する(測定温度23℃)。測定された粘度から、下記式(1)により、SVI値を算出する。
S=η1/η2 ・・・(1)
前記式(1)において、S:SVI値、η1:1回転における粘度、η2:10回転における粘度である。
【0027】
SVI値を向上させる方法は特に限定されないが、揺変性付与剤を添加することにより、SVI値を向上させることが好ましい。前記揺変性付与剤として、例えば、表面処理された炭酸カルシウム、微粉末シリカ、脂肪酸アマイド等、各種用いることができる。該揺変性付与剤の配合割合は特に限定されないが、本発明の一液湿気硬化型靴補修剤のSVI値が2以上となるように適宜選択して配合することが好ましい。
【0028】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤には、上記成分に加えて、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、変色防止剤、接着付与剤、物性調整剤、離型剤、滑剤、脱水剤(保存安定性改良剤)、粘着付与剤、垂れ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、ラジカル重合開始剤、高沸点溶剤等の希釈剤などの各種添加剤を配合してもよい。前記着色剤は、靴底や靴の補修部の色に応じた染料や顔料を適宜選択して用いればよい。
【0029】
前記充填剤としては、各種形状の有機又は無機のものがあり、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック;クレー;タルク;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;カオリン;硅藻土;ゼオライト;酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム;硫酸アルミニウム;塩化ビニルペーストレジン;ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン、塩化ビニリデン樹脂バルーン等の無機質バルーン、有機質バルーン等;あるいはこれらの脂肪酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられ、単独で、または混合して使用することができる。上記充填剤としては、透明性を高めるために微粉末シリカを用いることが好ましい。また、ガラスバルーンやシリカバルーン等の無機中空フィラー、及びポリフッ化ビニリデンやポリフッ化ビリニデン共重合体等の有機中空フィラーを用いることが好ましい。該中空フィラーの使用により、本発明の靴補修剤の軽量化を行うことができる。特に、硬化物の柔軟性維持の観点から、例えば、MFL−80GCA(松本油脂製薬(株)製)等の有機中空フィラーが好適である。
【0030】
前記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルアジペート、ジイソデシルフタレート、トリオクチルホスヘート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油等が挙げられ、単独又は混合して使用することができる。
【0031】
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、JIS K 6264に規定するテーバー摩耗試験(試験条件:研磨砥石H22、荷重9.8N、試験回数1000回)で得た摩耗質量が70mg以下であることが好ましい。
また、本発明の一液湿気硬化型靴補修剤は、JIS S 5050に準拠したJIS A硬度が60以上であることが好ましい。
本発明の一液湿気硬化型靴補修剤の硬化物は耐摩耗性に優れ且つ十分な硬度を有しており、靴の補修剤として極めて好適である。
【0032】
本発明の靴補修剤は、一液系であり、空気中の湿気により常温で硬化するため、簡便・容易且つ安全に靴の補修部分を補修することができる。本発明の靴補修剤の使用方法は特に限定はなく、靴底等の靴の磨耗した部分や欠損した部分の修復や剥がれた部分の接着など、靴の破損部分の補修に用いることができる。本発明の靴補修剤を用いて靴底を補修する場合、補修方法は特に制限はないが、例えば、靴の補修部分に本発明の靴補修剤を塗布、注入又は注型し、肉盛り成形し、常温硬化させることにより、靴の補修部分を補修することができる。靴のかかと部分を補修する場合は、靴底に型枠をとりつけ、本発明の靴補修剤を注型し、ヘラ等で成形し、常温で硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0034】
(合成例1〜11)プレポリマーA〜Kの合成
プレポリマーの組成を表1及び2に示す。温度計を備えた攪拌機にポリオール成分を所定量添加し脱水処理した後、イソシアネート成分を所定量添加し、窒素雰囲気下70〜90℃で5時間反応させて、ウレタンプレポリマーA〜Kを得た。得られたウレタンプレポリマーの末端イソシアネート含有量をあわせて表1及び2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1及び2における配合物質の配合量は質量部で示され、*1〜10は次の通りである。
*1)変成ポリテトラメチレングリコール:保土谷化学工業(株)製、商品名PTG−L2000、テトラメチレンエーテルと側鎖を有する変成テトラメチレンエーテルのランダム共重合体からなる鎖状のジオール、分子量2000。
*2)変成ポリテトラメチレングリコール:旭化成(株)製、商品名PTXG−1800、テトラメチレンエーテルとネオペンチルグリコールとのランダム共重合体からなる鎖状のジオール、分子量1800。
*3)ポリテトラメチレングリコール:保土谷化学工業(株)製、商品名PTG−2000、分子量2000。
*4)ポリプロピレングリコール:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名アクトコールP−23、分子量3000、2官能。
*5)ポリエステルポリオール:(株)クラレ製、商品名クラレポリオールP−2010、アジピン酸系ポリエステルポリオール。
*6)ポリブタジエングリコール:日本曹達(株)製、商品名NISSO PB G−1000。
*7)XDI:キシリレンジイソシアネート
*8)MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
*9)ポリプロピレングリコール:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名アクトコールDiol2000、分子量2000、2官能。
*10)ポリプロピレングリコール:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名アクトコール79−56、分子量3000、3官能。
【0038】
(実施例1〜8及び比較例1〜3)
表3に示す配合にて、窒素気流下常温でウレタンプレポリマー及び揺変性付与剤を撹拌混合した後、硬化触媒を加え窒素気流下常温にて撹拌混合を行い、一液湿気硬化型組成物を得た。
【0039】
【表3】

【0040】
表3における配合物質の配合量は質量部で示され、*11〜23は次の通りである。
*11〜21)ウレタンプレポリマーA〜K:前記合成例1〜11で得たウレタンプレポリマー。
*22)揺変性付与剤:日本アエロジル(株)製、商品名アエロジルRY200S、ヒュームドシリカ。
*23)硬化触媒:三共有機合成(株)製、商品名STANN BL、ジオクチル錫ジバーサテート。
【0041】
前記得られた一液湿気硬化型組成物に対して下記試験を行った。結果を表4に示す。
1.接着性試験
前記一液湿気硬化型組成物を用いて、幅25mm、表4に示す材質の被着材同士を貼り合わせ、23℃50%RH7日後に180°剥離試験を実施した。評価基準は下記の通りである。
◎:はく離強度0.6N/25mm以上又は被着材の破壊。
○:はく離強度0.3N/25mm以上0.6N/25mm未満。
△:はく離強度0.1N/25mm以上0.3N/25mm未満。
×:はく離強度0.1N/25mm未満。
【0042】
2.耐摩耗性
前記一液湿気硬化型組成物を用いて厚さ2〜3mmのシートを作成し、JIS K 6264に規定するテーバー摩耗試験にて摩耗質量を測定した。なお、試験条件は、研磨砥石H22を用い、9.8Nの荷重にて試験回数1000回とした。
【0043】
3.SVI値の測定
JIS K 6833の6.3粘度に準拠し、B型粘度計(東機産業製、BSローター7番)を用いて、回転数1回転および回転数10回転での120秒後の粘度を測定し(測定温度23℃)、下記式(1)により、SVI値を算出した。
S=η1/η2 ・・・(1)
前記式(1)において、S:SVI値、η1:1回転における粘度、η2:10回転における粘度である。
【0044】
4.硬度測定
JIS S 5050に準拠し、前記一液湿気硬化型組成物の23℃50%RH7日後の硬化物に対して、JIS A硬度を測定した。
【0045】
【表4】

【0046】
表4に示した如く、実施例1〜8の組成物は、ゴム(NR,NBR)、天然皮革(牛革)及びプラスチック(EVA,軟質塩ビ)のいずれの材質に対しても優れた接着性を有しており、ゴム、天然皮革及び合成皮革の材質の靴の補修剤として好適なことがわかった。また、実施例1〜8の組成物の硬化物は摩耗質量70mg以下及び硬度60以上を達成しており、優れた耐摩耗性及び硬度を有していた。
【0047】
また、実施例1〜3並びに比較例1及び3の一液湿気硬化型組成物に対して、靴の補修テストを行った。具体的には、靴底がすり減った革靴の靴底の側面に型枠を設置し、実施例1〜3並びに比較例1及び3の組成物を注型し補修を行い、室温で72時間放置した。その後、補修を行った革靴を3ヶ月間使用し、状態を確認した。実施例1〜3の靴の補修部分は摩耗することなく良好な状態を維持したが、比較例1及び3の靴の補修部分は摩耗が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラメチレングリコール及び/又は変成ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする一液湿気硬化型靴補修剤。
【請求項2】
SVI値が2以上8以下であることを特徴とする請求項1記載の一液湿気硬化型靴補修剤。
【請求項3】
硬化触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載の一液湿気硬化型靴補修剤。
【請求項4】
揺変性付与剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の一液湿気硬化型靴補修剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の一液湿気硬化型靴補修剤を用いて、常温で靴を補修することを特徴とする靴補修方法。

【公開番号】特開2008−6042(P2008−6042A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179049(P2006−179049)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】