説明

一眼レフカメラ

【目的】ファインダや焦点検出センサに導く光量を減らすことなく、被写体の色温度による焦点検出位置の変化(誤差)を小さくする一眼レフカメラを簡易な構成で得る。
【構成】撮影レンズの結像面と光学的に等価な位置にあるピント板から入射した被写体光束をアイピースに向けて反射する複数の反射面を有する反射光学系と、ファインダ視野内に表示すべき情報をファインダ像に重ねて表示させるファインダ内表示装置とを備えた一眼レフカメラにおいて、反射光学系のいずれかの反射面に、ファインダ内表示装置からの光束が入射しかつ撮影レンズからの被写体光束の一部を外方に射出する半透過面を形成し、この半透過面から外方に射出された被写体光束が入射する位置に、色温度検出受光素子を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差方式の焦点検出装置と撮影に関する情報をファインダ像に重ねて表示できるファインダ内表示装置を備えた一眼レフカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一眼レフカメラには、撮影レンズの射出瞳の異なる部分を通過した被写体光束をそれぞれ焦点検出光学系の再結像レンズ系(コンデンサレンズ及びセパレータレンズ)により一対の焦点検出センサ(ラインセンサ)上に結像させ、この一対の焦点検出センサの出力信号の関係に基づいて撮影レンズの合焦状態を検出する焦点検出装置が搭載されている。このような焦点検出装置においては、一対の焦点検出センサ上の第1及び第2の像の間隔が所定長のときに合焦、所定長よりも短いときには撮像面より物体側に焦点を結ぶ前ピン、所定長よりも長いときには撮像面より奥側に焦点を結ぶ後ピンと判定され(位相差検出方式)、合焦位置からのピントずれの量はデフォーカス量として出力される。
【0003】
焦点検出センサとしては、可視光領域及び主として長波長側の可視光領域以外の波長に対して感度を有する受光素子が用いられることがある。この場合、撮影レンズの色収差によって、異なる波長の光に対して異なった焦点検出をしてしまう。可視光領域以外の波長の色収差は可視光領域に比べ大きいため、例えば、被写体を白熱電球に代表されるタングステンランプ等の色温度の低い光源で照明したときと、同じ被写体を昼光や螢光灯等の色温度の高い光源で照明したときとでは、レンズの色収差によって異なった焦点検出が行なわれる。特に、焦点距離の長い撮影レンズではこの色収差が大きい。従って一眼レフカメラに焦点距離の長い交換レンズを装着し、この長焦点レンズを介して入射した被写体光を上述の受光素子によって光電変換し、その光電出力によって被写体の焦点状態を検出すると、色収差による焦点検出誤差が著しく大きくなる。
【0004】
通常は、このような焦点検出誤差を少なくするべく、長波長側の可視光領域以外の波長をカットするフィルタが光路中に挿入されるが、低輝度時に用いる補助投光には被写体が人物である場合に被写体にまぶしさを感じさせないよう近赤外の波長域が利用されるため、この近赤外波長域は透過させるようなフィルタ特性が必要となる。そこで特公平8−3575号公報(特許文献1)では、長波長側の可視光領域以外の波長をカットするフィルタに加えて、近赤外側の波長をカットし可視光のみを透過するフィルタをさらに備え、いずれか一方を光路中に切り替えて挿入する方法が提案されている。
【0005】
また近赤外波長域を透過させることで生じるレンズの色収差によって異なった焦点検出が行なわれることを補正する従来例としては、特公平1−45883号公報(特許文献2)に記載されているものがある。これは被写体からの光束のうち可視光による光電信号を取り出す受光手段(センサ)と、近赤外光による光電信号を個別に取り出す受光手段(センサ)を同一基板に形成し、入射する全ての波長の光により検出される合焦位置に対する所望の波長の光による合焦位置までの補正値を、個別に取り出した光電信号に基づいて定めるようにしている。
【0006】
特許第2666274号公報(特許文献3)には、焦点検出装置の焦点検出のための受光素子面の近傍に被写体の色温度を検出するべく所定のフィルタ手段を持ったセンサ部を焦点検出センサと同一の基板上に配置すること、そして被写体の色温度情報を出力することによってレンズ内に予め記憶された色温度毎の焦点補正情報を用いることによって高精度の焦点検出を実現する構成が示されている。
【0007】
特公平3−73847号公報(特許文献4)には、可視光及び可視光以外の光に対して感度を有する焦点検出部での色温度による検出誤差を、焦点検出部と別体に設けられた色温度測定手段の出力を用いて補正する構成が示されている。
【0008】
さらに、特開2009−37139号公報(特許文献5)には、測光センサ上に互いに分光感度特性が異なる2種類の光電変換部を備え、一方を可視光に感度を有する測光センサとして、他方を可視光以外の光に感度を有する色温度測定手段としてそれぞれ用い、測光センサと色温度測定手段の出力比から色温度による検出誤差を補正する構成が示されている。
【0009】
また従来の一眼レフカメラには、撮影に関する情報をファインダ像に重ねて表示(スーパーインポーズ)できるファインダ内表示装置を備えたものがある。ファインダ内表示装置は、例えば特開2000−194052号公報(特許文献6)に記載されているように、ペンタプリズムの第三反射面を半透過面とし、この半透過面に接着した補助プリズムを介してスーパーインポーズ表示光を入射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平8−3575号公報
【特許文献2】特公平1−45883号公報
【特許文献3】特許第2666274号公報
【特許文献4】特公平3−73847号公報
【特許文献5】特開2009−37139号公報
【特許文献6】特開2000−194052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のように機械的な切り替え手段を設けると、焦点検出装置が大型化するだけでなく、駆動部分の信頼性も問題となる。特許文献2のように焦点検出センサと近赤外光を検出するセンサを同一基板上に配置する場合、近赤外光のみを受光するセンサの配置が問題となる。焦点検出センサと近赤外光受光センサは被写体の異なる部分から来る光をそれぞれ受光するため、被写体の構造(近赤外光反射率)によっては全く異なる光を受光することになり、適切な補正ができない可能性がある。また近年、焦点検出点の多点化、さらにエリア化が進み、焦点検出センサが基板上に細密配置され、近赤外光のみを受光するセンサの配置が困難になってきている。特許文献3や4のように焦点検出部と別体に色温度測定手段を設ける場合は、途中で別体に設けた色温度測定手段へ分岐する分岐部分を余計に設ける必要があり、ファインダ側や焦点検出部側へ導く光量が減ってしまうという問題がある。特許文献5のように測光センサの一部を色温度測定手段として用いた場合でも、可視光部の受光面積が減少してしまうため、測光センサの感度が低下するという問題がある。
【0012】
また、特許文献6のようにスーパーインポーズ表示光を入射させるためにペンタプリズムの第三反射面の一部を半透過面とした構成では、逆に、ペンタプリズムに入射した被写体光束の一部が該半透過面を介して外方へ射出されてしまっていた。
【0013】
本発明は、上記問題意識に基づき、位相差方式の焦点検出装置とファインダ内表示装置を備えた一眼レフカメラにおいて、ファインダや焦点検出センサに導く光量を減らすことなく、光源の色温度による焦点検出位置の変化(誤差)を小さくする一眼レフカメラを簡易な構成で得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、スーパーインポーズ表示光を入射させるために設けた半透過面から外方に漏れていた被写体光束、すなわち、撮影レンズからアイピースに導かれる被写体光束のうち今まで利用されていなかった光束を有効活用すれば、ファインダや焦点検出センサに導く光量を減らすことなく、その光束を用いて光源の色温度による焦点位置変化を補正できることに着眼してなされたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、撮影レンズの結像面と光学的に等価な位置にあるピント板から入射した被写体光束をアイピースに向けて反射する複数の反射面を有する反射光学系と、この反射光学系を介して形成されるファインダ像に、ファインダ視野内に表示すべき情報を重ねて表示させるファインダ内表示装置とを備えた一眼レフカメラにおいて、前記反射光学系のいずれかの反射面に、前記ファインダ内表示装置からの光束が入射し、かつ、前記ピント板から入射した光束の一部が射出する半透過面を形成したこと、及び、前記反射光学系の半透過面の外側に、前記ピント板からの光束が入射する色温度検出受光素子を設けたこと、を特徴としている。
【0016】
より具体的には、前記ファインダ内表示装置と前記反射光学系の間に、該ファインダ内表示装置から入射した光束を前記アイピースに向けて反射された被写体光束に重ね合わせ、かつ、前記ファインダ光学系の半透過面を透過した被写体光束を外方へ射出する補助プリズムを設け、この補助プリズムから外方に射出された被写体光束が入射する位置に、前記色温度検出素子を設けることが好ましい。補助プリズムから色温度検出受光素子に至る光路中には集光レンズを配置することができる。この態様によれば、被写体の受光エリアを測距エリアに絞り込むことができる。
【0017】
補助プリズムは、ファインダ光学系の半透過面に接着されていることが好ましい。あるいは、反射光学系の半透過面と所定の空気間隔をあけて、該半透過面との対向面が平行になるように配置させることが好ましい。
【0018】
反射光学系は、前記ピント板を透過した被写体光束を、ダハ反射面を除いて最初に反射する反射面を半透過面とした反射光学系であることが好ましい。この態様の反射光学系としては例えば、第三反射面を半透過面としたペンタプリズム、ピント板を透過した被写体光束を最初に反射する第一反射面を半透過面としたトラピゾイドプリズムがある。
【0019】
反射光学系は、別の態様によれば、ダハ反射面を有し、前記ピント板を透過した被写体光束を前記アイピースに向けて最後に反射する反射面を半透過面としたペンタプリズム型の反射光学系であることが好ましい。この態様の反射光学系としては例えば、ペンタプリズム、ペンタミラーがある。
【0020】
色温度検出受光素子は、互いに異なる波長域の光の光量を検出する複数の受光素子からなることが好ましい。この場合には、可視光センサと該可視光センサの検出長波域より長波長域を検出する長波長センサを含んでいることが実際的である。
【0021】
また色温度検出受光素子は、ファインダ光学系からアイピースに向けて反射された光束の一部を受光する測光センサとは異なる波長域の光を検出することが好ましい。測光センサは、色温度検出用の受光素子として用いることができる。よって、測光センサを色温度検出用の受光素子と兼用にすれば、色温度検出受光素子としては測光センサとは異なる波長域の光を検出する受光素子を一つ備えていればよく、構成を簡易化できる。
【0022】
上記一眼レフカメラには、撮影レンズの射出瞳の異なる部分を通過した光束を一対の焦点検出センサ上に結像させ、この対となる像の相対的位置ずれに基づいて合焦位置を検出する焦点検出装置が備えられる。この焦点検出装置により検出した合焦位置を、前記色温度検出素子が検出した被写体の色温度に応じて補正することで、色温度による焦点検出位置の変化を低減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スーパーインポーズ表示光を入射させるために設けた半透過面から外方に漏れる被写体光束が入射する位置に色温度検出素子を設けたので、色温度測定手段への分岐光学系を新たに設けずに済み、ファインダや測光センサ、焦点検出部に導かれる光量を減らすことなく色温度による焦点検出位置の変化(誤差)を小さくする一眼レフカメラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による一眼レフカメラの第1実施形態を示す光学構成ブロック図である。
【図2】ファインダ光学系の周辺の光学構成を示す拡大ブロック図である。
【図3】一眼レフカメラの焦点制御系を示すブロック図である。
【図4】異なる光源の波長特性をグラフで説明する図である。
【図5】撮影レンズの色収差と異なる光源による焦点検出位置との関係をグラフで説明する図である。
【図6】本発明による一眼レフカメラの第2実施形態、特にファインダ光学系の周辺の光学構成を示す拡大ブロック図である。
【図7】本発明による一眼レフカメラの第3実施形態、特にファインダ光学系の周辺の光学構成を示す拡大ブロック図である。
【図8】本発明による一眼レフカメラの第4実施形態、特にファインダ光学系の周辺の光学構成を示す拡大ブロック図である。
【図9】本発明による一眼レフカメラの第5実施形態を示す光学構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態による一眼レフカメラの主要部をブロックで示している。撮影レンズ11からの被写体光束はメインミラー13で反射し、イメージセンサ面(結像面)17と光学的に等価なピント板15上に結像する。ペンタプリズム(反射光学系)19は、このピント板15からの光束を反射するダハ反射面(第一反射面、第二反射面)19aと第三反射面19bとを備えており、第三反射面19bで反射した光束はアイピース21に導かれる。第三反射面19bで反射した光束の一部は、アイピース21の近傍に設けられている不図示の測光センサで受光される。ペンタプリズム19のダハ反射面19aと第三反射面19bは、周知のように、メインミラー13とともに被写体像を正立正像として観察するための反射面を構成する。メインミラー13はその中央部が半透過面からなり、この半透過面を透過した被写体光束がサブミラー23を介して多点測距AFモジュール25に導かれる。
【0026】
上記ペンタプリズム19の第三反射面19bは、アイピース光軸21xを中心とする一定範囲が、スーパーインポーズ表示光(スーパーインポーズ用の光束)をプリズム内部に導く半透過面として構成されている。
【0027】
このペンタプリズム19の第三反射面19bの外側には、アイピース光軸21x上に位置させて、ファインダ内表示装置を構成する視度合わせレンズ33と反射ミラー35が順に配置され、さらに反射ミラー35の反射光路(アイピース光軸21x)上に続けて表示板37及び照明光源39が順に配置されている。すなわち、アイピース光軸21xとスーパーインポーズ光軸(視度合わせレンズ33の光軸)は共軸である。正のパワーの視度合わせレンズ33は、表示板37の位置をピント板15と光学的に等価な位置にする。表示板37は、アイピース光軸21xと直交するもので、この実施形態では多点測距用の複数の測距エリアマスク(情報マスク)を有し、照明光源39は、これらの測距エリアマスクの数に対応させて複数個の選択発光可能なLEDを有している。測距エリアマスクは透光性の領域であり、それ以外の表示板37上の領域は非透光領域として形成されている。
【0028】
視度合わせレンズ33(ファインダ内表示装置)からペンタプリズム19の第三反射面19bに至る光路中には、ファインダ内表示装置からのスーパーインポーズ表示光を入射させ、かつ、撮影レンズ11から入射した被写体光束のうちペンタプリズム19の第三反射面19bの半透過面を通過した光束をペンタプリズム(反射光学系)19の外へ射出する、補助プリズム31が設けられている。
【0029】
補助プリズム31は、ペンタプリズム19と同一材質からなり、ペンタプリズム19の第三反射面19bの半透過面に接着されている。図2に示すように、補助プリズム31の入射側の第一面31aはアイピース光軸21xに直交しており、照明光源39からの光束は、表示板37のいずれかの測距エリアマスクを通過して反射ミラー35に至り、反射ミラー35で反射されて視度合わせレンズ33及び補助プリズム31を介してペンタプリズム19内に入り、ペンタプリズム19の第三反射面19bで反射された被写体光束に重ね合わせられる。これにより、アイピース21を介して、ピント板15上の像(ファインダ像)と共に、スーパーインポーズ像が観察される。
【0030】
上記補助プリズム31の入射側の第一面31aは、同時に、ペンタプリズム19の第三反射面19bの半透過面から進入した被写体光束を反射する反射面として機能する。補助プリズム31の第三面31cは、ペンタプリズム19の第三反射面19bとの接着面であって、スーパーインポーズ表示光及びファインダ光束を透過させる透過面として機能する。よって、ペンタプリズム19の第三反射面19bの半透過面及び補助プリズム31の第三面31cを通過した被写体光束は、補助プリズム31の第一面31aで全反射され、第二面31bから外方に射出される。
【0031】
補助プリズム31の第二面(出射面)31bの近傍には、補助プリズム31の第二面31bから射出された被写体光束が入射する色温度検出素子40が設けられている。色温度検出素子40は、多点測距AFモジュール25により検出した合焦位置を被写体の色温度に応じて補正するために用いられる。
【0032】
色温度検出素子40は、互いに異なる波長域の光の光量を検出する可視光センサ41と長波長センサ(赤外光センサ)42を備えている。図3は、本一眼レフカメラの焦点制御系を示すブロック図である。可視光センサ41は被写体光束(焦点検出に利用されている光束と同一の光束)の中から可視光の光量を検出し、長波長センサ42は同被写体光束中から可視光より長波長領域(例えば近赤外光)の光量を検出する。色温度検出回路43は、可視光センサ41と長波長センサ42が検出した光量から被写体光の色温度(波長分布、可視光と近赤外光の光量比)を検出する。制御回路50は、多点測距AFモジュール25が検出した合焦位置(演算した複数の測距エリア内のデフォーカス量)を入力し、この合焦位置を被写体光の色温度に応じて補正し、補正後のデフォーカス量に基づいてAF駆動系26を駆動させ、選択されている測距エリア内の被写体に合焦させるべく、撮影レンズ11の焦点調節光学系を移動させる。
【0033】
制御回路50は、照明光源39の制御手段としても機能する。照明光源39の色は、ピント板15上の被写体像と重ねたとき目視可能な色、例えば赤色(波長;約600nm)とすることができる。
【0034】
色温度検出及び焦点位置情報の補正方法の実施例について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、代表的な3つの光源である太陽光、白熱電球及び蛍光灯の波長特性を示す分光分布グラフである。図4において、縦軸は比エネルギー(%)、横軸は波長である。可視光センサ41及び長波長センサ42の波長による感度特性がフラットな場合、図4の可視光領域及び可視光領域よりも長波長領域(近赤外)の光量がそれぞれの積分値(グラフの面積)として二つの可視光センサ41及び長波長センサ42により測光される。このとき代表的な3つの光源における光量比、長波長領域のエネルギー/可視光領域のエネルギーは概略以下のような値になる。
蛍光灯;0%
太陽光;40%
白熱電球;90%
これらの光量比から光源を推定し、撮影レンズの色収差に対応させて焦点位置のズレ量を計算し、補正値を掛けることにより、光源が異なることによる焦点位置のずれを補正できる。
【0035】
図5は撮影レンズの色収差を示す一例である。図5において、縦軸はデフォーカス量、横軸は波長である。イメージセンサーは通常、可視光領域のみに感度を持つ為、焦点検出も通常、可視光領域の合焦位置が基準となる。蛍光灯のように可視光領域のみに光エネルギーを持つ光源下での焦点検出においては、撮影レンズの長波長領域の色収差の影響を受けない為、補正の必要はない。一方、太陽光や白熱電球の場合は長波長領域まで光のエネルギーがある為、この領域の撮影レンズの大きなプラス方向の色収差の影響を受け、イメージセンサー上で最適な合焦位置からプラス方向(撮影レンズから遠ざかる方向)にデフォーカスしてしまう。このときのデフォーカス量は撮影レンズが持つ色収差と光源の波長特性(長波長領域のエネルギー/可視光領域のエネルギー)により決まる。撮影レンズが持つ色収差の情報は、撮影レンズ内のメモリーに予め持たせることが可能である。例えば補助投光波長におけるデフォーカス補正量などが利用できる。そして先の可視光センサ41及び長波長センサ42の情報と合わせて計算することで、適切な補正量が算出可能である。例えば図5の条件の場合は、
太陽光の補正量=0.3×補助投光補正量
白熱電球補正量=0.6×補助投光補正量
とすることで算出可能である。
【0036】
このように第1実施形態では、被写体の色温度(可視光と近赤外光の光量比)を検出するために、補助プリズム31の第二面(出射面)31bの近傍に色温度検出素子40を配置している。この色温度検出素子40の位置は、撮影レンズ11からペンタプリズム19に入射した被写体光束のうちアイピース21に向かう光束以外の光束、すなわち、従来では利用されていなかった光束を利用するものであるから、ファインダ表示装置や焦点検出装置への悪影響は全くない。よって、色温度検出素子40で検出した可視光量及び近赤外光量に基づいて被写体の色温度が得られ、この色温度による焦点検出位置の誤差を低減できる。
【0037】
図6は、本発明による一眼レフカメラの第2実施形態を示している。この実施形態では、補助プリズム31の向きを第1実施形態とは図示上下逆向きにした実施形態であり、視度合わせレンズ33(ファインダ内表示装置)の下方に補助プリズム31を配置し、視度合わせレンズ33からの光束が補助プリズム31の上方の第二面31bより入射し、第一面31aで全反射されてペンタプリズム19との接着面である第三面31c側へ直進し、該第三面31cからペンタプリズム19の第三反射面19bに入射するように構成した。すなわち、撮影レンズ11からペンタプリズム19に入射した光束は、ダハ反射面19aで反射され、その一部が第三反射面19bを介して補助プリズム31に入射し、該補助プリズム31の第一面31aを通過して外方へ射出する。色温度検出素子40は、補助プリズム31の第一面31aの近傍に、該第一面31aを通過した被写体光束を受光できる位置で設けられている。
【0038】
図7は、本発明による一眼レフカメラの第3実施形態を示している。この実施形態は、第2実施形態の一眼レフカメラにおいて、補助プリズム31の第一面31aの近傍に、該第一面31aを通過した被写体光束を色温度検出素子40上に集める集光レンズ60を配置している。補助プリズム31と色温度検出素子40の間に集光レンズ60を備えることで、被写体の受光エリアを測距エリアに絞り込むことができる。
【0039】
図8は、本発明による一眼レフカメラの第4実施形態を示している。この実施形態は、ファインダ光学系として上記ペンタプリズム19の替わりに、ペンタミラー20を備えた構成である。ペンタミラー20は、ピント板15からの光束を反射するダハミラー20aと、該ダハミラー20aで反射された光束の一部及び視度合わせレンズ33(ファインダ内表示装置)からの光束を透過させる半透過ミラー20bからなる。この構成では上述の補助プリズムが不要となる。視度合わせレンズ33と半透過ミラー20bの間には、スーパーインポーズ用の光束をペンタミラー20内に入射させる反射ミラー36を設ける。照明光源39からの光束は、表示板37のいずれかの測距エリアマスクを通過して反射ミラー35に至り、反射ミラー35で反射され、視度合わせレンズ33及び反射ミラー36を介して半透過ミラー20bに入射して透過し、これによって、撮影レンズ11から入射してダハミラー20a及び半透過ミラー20bで反射された被写体光束と重ね合わせられる。撮影レンズ11からの被写体光束は、その大部分がダハミラー20a及び半透過ミラー20bで反射されるが、残りの一部は半透過ミラー20bを通過して外方へ射出する。色温度検出素子40は、半透過ミラー20bの近傍に、該半透過ミラー20bを通過した被写体光束を受光できる位置で設けられている。
【0040】
図9は、本発明による一眼レフカメラの第5実施形態を示している。この実施形態は、ファインダ光学系として上記ペンタプリズム19の替わりに、トラピゾイドプリズム70を備えた実施形態である。撮影レンズ11からの被写体光束はメインミラー13で反射し、イメージセンサ面(結像面)17と光学的に等価なピント板15上に結像する。トラピゾイドプリズム70には、ピント板15からの光束がコンデンサレンズ71を介して入射し、第一反射面70a、第二反射面70b及び第三反射面70cで反射された光束がリレー光学系72を介してアイピース21に導かれる。本実施形態ではリレー光学系72によって像を正立化している。トラピゾイドプリズム70の第一反射面70aは、その一定範囲が、スーパーインポーズ用の光束をプリズム内部に導く半透過面として構成されている。ピント板15からの光束は、大部分が第一反射面70aから第二反射面70bへ反射され、第二反射面70bから第三反射面70cへ反射され、第三反射面70cでアイピース21の光軸21xと一致するように反射されてリレー光学系72へ入射するが、残りの一部は第一反射面70aを介して補助プリズム31に入射する。補助プリズム31は、トラピゾイドプリズム70の第一反射面70aに接着されており、その接着面である第三面31cを介して入射した被写体光束を第一面31aから外方へ射出する。第一面31aの近傍には、該第一面31aを透過した光束を受光できる位置に、色温度検出素子40が設けられている。一方、補助プリズム31の第二面31bには、表示板37及び反射ミラー35を介して照明光源39からの光束が入射する。この入射した照明光源39からの光束は、第一面31aで反射されてトラピゾイドプリズム70の第一反射面70aの半透過面からトラピゾイドプリズム70内に入射し、被写体光束と重ね合わせられる。
【0041】
第4実施形態を除く各実施形態では、補助プリズム31をペンタプリズム19またはトラピゾイドプリズム70の半透過面に接着して設けたが、この半透過面に対して平行に、かつ、半透過面との間にわずかな空気間隔をあけて対向する向きで、補助プリズムを配置してもよい。
【0042】
各実施形態では、可視光センサ41と長波長センサ42の二つを色温度検出用の受光素子として備えているが、ファインダ内に設けられている不図示の測光センサを色温度検出用の受光素子として兼用し、この測光センサとは異なる波長域の光の光量を検出する受光素子を一つ備える構成としてもよい。また、デジタルカメラでは、色温度検出素子40をホワイトバランス調整用に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
11 撮影レンズ
13 メインミラー
15 ピント板
17 フィルム面(結像面)
19 ペンタプリズム
19a ダハ反射面(第1の反射面)
19b 第三反射面(第2の反射面)
20 ペンタミラー
20a ダハミラー(第1の反射面)
20b 透過ミラー(第2の反射面)
21 アイピース
21x アイピース光軸
23 サブミラー
25 多点測距AFモジュール
26 AF駆動系
31 補助プリズム
31a 第一面
31b 第二面
31c 第三面(接着面)
33 視度合わせレンズ
35 反射ミラー
36 反射ミラー
37 表示板
39 照明光源
40 色温度検出素子
41 可視光センサ
42 長波長センサ
43 色温度検出回路
50 制御回路
60 集光レンズ
70 トラピゾイドプリズム
70a 第一反射面(第1の反射面)
70b 第二反射面
70c 第三反射面(第2の反射面)
71 コンデンサレンズ
72 リレー光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの結像面と光学的に等価な位置にあるピント板から入射した被写体光束をアイピースに向けて反射する複数の反射面を有する反射光学系と、この反射光学系を介して形成されるファインダ像に、ファインダ視野内に表示すべき情報を重ねて表示させるファインダ内表示装置とを備えた一眼レフカメラにおいて、
前記反射光学系のいずれかの反射面に、前記ファインダ内表示装置からの光束が入射し、かつ、前記ピント板から入射した光束の一部が射出する半透過面を形成したこと、及び、
前記反射光学系の半透過面の外側に、前記ピント板からの光束が入射する色温度検出受光素子を設けたこと、
を特徴とする一眼レフカメラ。
【請求項2】
請求項1記載の一眼レフカメラにおいて、前記ファインダ内表示装置と前記反射光学系の間に、該ファインダ内表示装置から入射した光束を前記アイピースに向けて反射された被写体光束に重ね合わせ、かつ、前記反射光学系の半透過面を透過した被写体光束を射出する補助プリズムを設け、この補助プリズムから射出された被写体光束が入射する位置に、前記色温度検出素子を設けた一眼レフカメラ。
【請求項3】
請求項2記載の一眼レフカメラにおいて、前記補助プリズムから前記色温度検出受光素子に至る光路中に、集光レンズを配置した一眼レフカメラ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の一眼レフカメラにおいて、前記補助プリズムは、前記反射光学系の半透過面に接着されている一眼レフカメラ。
【請求項5】
請求項2または3に記載の一眼レフカメラにおいて、前記補助プリズムは、前記反射光学系の半透過面と所定の空気間隔をあけて、該半透過面との対向面が平行になるように配置させた一眼レフカメラ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、前記反射光学系は、前記ピント板を透過した被写体光束を、ダハ反射面を除いて最初に反射する反射面を半透過面とした反射光学系である一眼レフカメラ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、前記反射光学系は、ダハ反射面を有し、前記ピント板を透過した被写体光束を前記アイピースに向けて最後に反射する反射面を半透過面としたペンタプリズム型の反射光学系である一眼レフカメラ。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、前記反射光学系は、前記ピント板を透過した被写体光束を最初に反射する第1の反射面を半透過面としたトラピゾイドプリズムである一眼レフカメラ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、前記色温度検出受光素子は、互いに異なる波長域の光の光量を検出する複数の受光素子からなる一眼レフカメラ。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、前記色温度検出受光素子は、前記反射光学系からアイピースに向けて反射された光束の一部を受光する測光センサとは異なる波長域の光を検出する一眼レフカメラ。
【請求項11】
請求項9記載の一眼レフカメラにおいて、前記複数の受光素子は、可視光センサと前記可視光センサの検出波長域より長波長域を検出する長波長センサを含んでいる一眼レフカメラ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の一眼レフカメラにおいて、撮影レンズの射出瞳の異なる部分を通過した光束を一対の焦点検出センサ上に結像させ、この対となる像の相対的位置ずれに基づいて合焦位置を検出する焦点検出装置を備え、この焦点検出装置により検出した合焦位置を、前記色温度検出素子が検出した被写体の色温度に応じて補正する一眼レフカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−32444(P2012−32444A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169507(P2010−169507)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】